説明

走行支援内容決定装置、走行支援内容決定方法および走行支援内容決定プログラム

【課題】多様な実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を効率的に管理し、精度情報を容易に選択する技術の提供。
【解決手段】車両の状態および前記車両の周囲の状態に基づいて、プログラムによって実行可能な複数の機能から実行対象となる実行対象機能を選択し、前記プログラムで利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を複数の要素毎に記録した記録媒体を参照し、前記実行対象機能に対応する要素を前記複数の要素から選択し、選択された要素の前記精度情報を前記記録媒体から取得し、当該精度情報に基づいて、前記実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定し、前記信頼度に応じて前記実行対象機能を実行するか否かを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の信頼度に応じて走行支援を実行するか否かを決定する走行支援内容決定装置、走行支援内容決定方法および走行支援内容決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実行対象プログラムで利用される情報の精度を定義する技術として各種の技術が知られている。例えば、特許文献1には、地図情報のバージョンに応じて信頼度を特定する技術や、マップマッチング履歴から求められる車両の走行履歴経路と地図情報から特定される経路とのずれに基づいて信頼度を特定する技術が開示されている。また、当該特許文献1には信頼度に基づいて車速制御やバッテリ回生制御、車線逸脱防止制御等の走行支援を行う技術が開示されている。
特許文献2には、地図情報の位置精度、地図情報の最新の調査時からの建物等の経年変化、建物等について地図情報が示す情報と実際との一致率に対応した情報精度、に基づいて地図情報の信頼度を特定する技術が開示されている。また、当該特許文献2には信頼度に基づいて停止制御、速度制限通知等の走行支援を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−147713号公報
【特許文献2】特開2007−225498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両において行われる走行支援は制動補助や経路案内、注意喚起など多岐にわたっており、信頼度を特定するために参照する精度情報も車両の走行履歴の精度や地図情報の位置精度など多岐にわたっている。従って、多岐にわたる走行支援を一台の車両において実現する構成を想定した場合、多岐にわたる精度情報から走行支援に応じた精度情報を抽出して信頼度を特定することは極めて煩雑である。
【0005】
従来の技術においては、走行支援のそれぞれに対応した信頼度の特定法や精度情報の定義が開示されているが、各文献においては特定の走行支援についての信頼度の特定法や精度情報の定義を開示するのみである。従って、多岐にわたる精度情報から走行支援に応じた適切な精度情報を抽出して信頼度を特定することはできない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、多様な走行支援を行う際に利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を効率的に管理し、精度情報を容易に選択する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明においては、プログラムで利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を複数の要素毎に定義して記録媒体に記録する。また、実行対象プログラムによって実行可能な複数の機能から、車両の状態および車両の周囲の状態に基づいて実行対象機能を選択する。さらに、当該実行対象機能に対応する要素を複数の要素から選択し、選択された要素の精度情報に基づいて、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定する。そして、信頼度に応じて実行対象機能を実行するか否かを決定する。すなわち、精度情報は複数の要素毎に定義され、実行対象機能に対応する要素が選択されることによって信頼度を特定するために参照すべき要素が特定され、当該要素によって参照すべき精度情報が特定されるように構成した。
【0007】
この構成によれば、プログラム毎に精度情報を定義することなく、各プログラムで共通の情報群として定義された精度情報に基づいて信頼度を特定することが可能になり、精度情報の容量を抑制することができる。また、実行対象プログラムで利用される情報の精度を複数の要素毎に定義しているため、要素を選択することによって、参照すべき精度情報を特定することが可能になる。さらに、実行対象機能に対応する要素を特定することによって、信頼度を特定するために参照すべき精度情報を特定することができるため、参照すべき精度情報を容易に特定することができる。また、信頼度を特定するために参照する必要がない精度情報を参照することなく必要十分な処理によって信頼度を特定することができる。以上のように、本発明によれば、多様な走行支援を行う際に利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を効率的に管理し、精度情報を容易に選択することが可能になる。
【0008】
さらに、本発明においては、精度情報に基づいて、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度が特定され、信頼度に応じて走行支援を実行するか否かを決定することができる。すなわち、実行対象プログラムで利用される情報が誤っている場合には、当該情報を利用して走行支援を行うと誤制御となるなど、走行支援が適切に実行されない可能性がある。しかし、信頼度に応じて走行支援を実行するか否かを決定することができれば、実行対象プログラムで利用される情報が誤っている場合に生じる悪影響を許容範囲内に抑制しつつ走行支援を行うことができる。
【0009】
ここで、記録媒体に記録される精度情報は、プログラムで利用される情報の信頼度を特定するために利用され、当該プログラムで利用される情報の精度を複数の要素毎に示していればよい。すなわち、車両制御や注意喚起などの各種の走行支援を行う際には当該走行支援を行うための実行対象機能に応じて車両の位置を示す情報や地図情報など、実行対象プログラムで利用される情報が特定されるが、これらの実行対象プログラムで利用される情報の全てを誤差なく規定することは現実的に不可能である。例えば、車両の位置は車両の位置を特定するセンサの精度に依存し、地図情報は地図情報作成作業の精度や新しい道路を的確に反映している度合いに依存する。そこで、本発明においては、プログラムで利用される情報の精度を精度情報として規定することとする。
【0010】
さらに、プログラムで利用される情報の精度は、種々の視点で定義することができるため、予め複数の要素を定義しておき、当該複数の要素のそれぞれについて精度を示す情報を定義して精度情報とする。すなわち、プログラムで利用される情報のそれぞれに対して複数の要素が対応づけられ、各要素について精度情報が定義される。精度情報は、プログラムで利用される情報の正確さを示す情報であり、数値の誤差を示す値であっても良いし、正確さを示す指標(例えば、複数段階で正確さを示す情報)であっても良い。
【0011】
複数の要素は、プログラムで利用される情報の精度を低下させる要因に対応した精度の分類であればよく、種々の視点で定義することができるが、各要素は独立であることが好ましい。すなわち、ある要素の精度が低下すると他の要素の精度も低下するなどの依存関係にないことが好ましい。この構成によれば、複数の要素の精度情報を総合的に考慮して信頼度を特定する際に、最小限の数の要素を考慮することによって信頼度を特定することが可能になる。また、精度情報を修正する際に、要素毎に情報を修正するのみで修正が完了するように構成することが可能である。
【0012】
走行支援は、特定の理想状態を達成目標として運転者の運転を補助することによって実現され、プログラムは当該理想状態の達成を補助するための複数の機能を実行可能である。また、本発明においては、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度によって品質が変動する走行支援をプログラムによって実行する構成を想定している。従って、車両制御への介入、補助、警告、注意喚起等の案内など各種の走行支援を想定することができる。
【0013】
機能選択手段は、実行対象プログラムを特定し、特定された実行対象プログラムによって実行可能な複数の機能から、車両の状態および車両の周囲の状態に基づいて実行対象機能を選択することができればよく、任意の実行対象プログラムについて、車両の状態および車両の周囲の状態から当該車両の運転者に対して適切な補助を行うように実行対象機能を選択できるように構成されていればよい。選択される実行対象機能は1個であっても良いし複数個であってもよい。実行対象機能は車両の状態および車両の周囲の状態に基づいて選択される。すなわち、車両の車速や車両に作用する加速度が異なり、車両の周囲の道路の形状が異なれば、運転者が必要とする走行支援の程度は異なる。例えば、横滑りを防止するための支援を行うプログラムにおいて、横滑りが生じない車速まで減速させる走行支援と、横滑りを防止するための案内を行う走行支援とでは、前者において減速介入を行い、後者において減速介入は行わない点で支援の程度が異なる。そこで、車両の状態および車両の周囲の状態に応じて運転者が必要とする走行支援の程度を予め特定しておき、車両の状態および車両の周囲の状態と実行対象機能とを対応付けておけば、当該対応関係に基づいて実行対象機能を選択することが可能になる。
【0014】
要素選択手段は、実行対象機能に対応する要素を選択することができればよい。すなわち、実行対象機能が異なれば、実行対象プログラムで利用される情報の精度を特定するために参照すべき要素は異なる。そこで、実行対象機能と精度情報の要素とを予め対応付けておき、当該対応に基づいて要素を選択する。この構成により、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定するために参照すべき要素を的確に特定することが可能になる。
【0015】
信頼度特定手段は、選択された要素の精度情報に基づいて、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定することができればよい。すなわち、精度情報から、実行対象プログラムで利用される情報の正確さを示す信頼度を特定することができればよい。実行対象プログラムで利用される情報の信頼度は、当該情報を利用して走行支援を行った場合に車両に与える悪影響が許容できるか否かに基づいて定義されていればよい。
【0016】
実行決定手段は、信頼度に応じて走行支援を実行するか否かを決定することができればよい。すなわち、実行対象機能は車両の状態および車両の周囲の状態に基づいて特定されているが、走行支援を実行した場合の制御量や制御タイミングは実行対象プログラムで利用される情報に基づいて決定する。このため、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度が低い場合には、走行支援による制御が誤制御となる。そこで、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度が低い場合に走行支援を実行せず、信頼度が高い場合に走行支援を実行する構成とすることで、走行支援を行うことによる悪影響が発生することを抑制することができる。
【0017】
さらに、プログラムで利用される情報が車両の位置を示す情報を含む構成において、精度情報が車両の周囲の地物と車両との相対関係によって特定される車両の位置を示す情報の精度を示す情報を含むように構成してもよい。この構成によれば、例えば、横断歩道や道路、道路上の白線など車両の周囲の地物を特定し、当該地物と車両との相対関係が特定の関係である場合に制動や注意喚起を行う走行支援を行う際に利用する車両の位置を示す情報の信頼度を特定することが可能になる。
【0018】
また、プログラムで利用される情報が地図情報を含む構成において、精度情報が地物に関する値を示す地図情報の誤差を示す情報と当該値の更新頻度を示す情報とを含むように構成してもよい。この構成によれば、例えば、道路上に設定されたノードや形状補間点の位置、道路の曲率半径などの地物に関する値に基づいて制動タイミングや制動量を特定する走行支援を行う際に利用する地図情報の信頼度を特定することが可能になる。
【0019】
さらに、実行対象機能を選択するための構成例として、車両の状態および車両の周囲の状態から特定される物理量に基づいて当該実行対象機能を選択する構成を採用しても良い。例えば、車両の状態および車両の周囲の状態に基づいて車両に作用させる減速度を算出し、当該減速度の大きさ(減速度の絶対値)に基づいて実行対象機能を選択する構成を採用可能である。すなわち、特定の理想状態を達成目標としたプログラムにおいて、当該特定の理想状態を実現するために車両に作用させるべき減速度が小さい場合には案内を行うことが当該特定の理想状態を実現するための支援として充分である場合が多い。一方、特定の理想状態を実現するために車両に作用させるべき減速度が大きい場合には、当該特定の理想状態を実現するために早急に減速を開始すべきである場合が多い。このように、減速度に応じて運転者に対する実行対象機能は異なってくるため、当該減速度を算出すれば、車両において実行すべき実行対象機能を容易かつ適切に選択することが可能である。
【0020】
なお、当該減速度が大きくなるほど走行支援が誤りであった場合の影響が大きくなるため、大きい減速度に対応した実行対象機能である場合には、実行対象プログラムで利用される情報の正確さを厳密に評価できるような要素を選択するように構成することが好ましい。
【0021】
さらに、複数の要素は精度情報を選択する際の指標となれば良く、並列関係にある複数の要素を定義するとともに実行対象機能に応じて並列関係にある複数の要素のいずれかを選択する構成としても良い。この構成によれば、実行対象機能に応じて、並列関係にある複数の要素のいずれかを選択すればよいため、多数の要素から実行対象機能に応じた適切な要素を容易に選択することが可能になる。
【0022】
さらに、並列関係にある複数の要素のそれぞれに細分化された複数のサブ要素を対応づけても良い。この構成においては、実行対象機能に応じて並列関係にある複数の要素から特定の要素を選択し、さらに、当該選択された要素に対応づけられたサブ要素から、実行対象プログラムで利用される情報の特定法に応じたサブ要素を選択する。すなわち、実行対象プログラムで利用される情報を特定するために複数の情報の演算処理が必要になる場合があるが、この類の演算が複雑な演算であるほど演算誤差が増大し、演算を行うことなく直接的に利用可能な情報であれば演算誤差は存在しない。
【0023】
従って、実行対象プログラムで利用される情報の特定法が異なれば、精度を低下させる要因として考慮すべき要素も異なる。そこで、並列関係にある複数の要素をサブ要素に分類し、実行対象プログラムで利用される情報の特定法に応じた要素で当該サブ要素を構成すれば、実行対象プログラムで利用される情報を算出する際の特定法に応じてサブ要素を選択することができる。また、選択されたサブ要素が示す精度情報に基づいて的確に信頼度を特定することが可能になる。
【0024】
さらに、本発明のように信頼度を特定するための精度情報を実行対象機能に対応した要素に基づいて選択する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】走行支援内容決定装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】走行支援内容決定処理を示すフローチャートである。
【図3】プログラムnの実行判断処理を示すフローチャートである。
【図4】カーブ区間の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(1−1)精度情報:
(1−2)走行支援内容決定処理:
(2)実施例:
(3)他の実施形態:
【0027】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる走行支援内容決定装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして走行支援内容決定プログラム21および複数のプログラムを実行可能である。走行支援内容決定プログラム21はナビゲーション装置10の記録媒体30に記録された走行支援を行うためのプログラムを選択してそのいずれかを実行対象プログラム22とし、実行対象プログラム22において実行すべき実行対象機能を選択し、信頼度に基づいて実際に実行するか否かを決定する機能を備えている。なお、本実施形態において、複数のプログラムはカーブ区間を走行する車両の走行支援を行うための処理を実行するプログラムであり、センサによって特定される車両の位置を示す情報や地図情報30aの信頼度に対応する各種の処理を実行する機能を備えている。
【0028】
なお、地図情報30aは、車両の位置の特定や車両の経路案内に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物(道路上の白線や横断歩道など)を示すデータ等を含んでいる。また、ノードデータには、隣接ノード間の道路上の車線数を示す情報が含まれている。本実施形態において、地図情報30aは区画(メッシュ)毎に定義されている。なお、地図情報30aは地図情報の管理者によって情報センターで管理される。すなわち、管理者は、計測者が計測した地物を示す情報、未計測の区画については頒布された地図(出典と呼ぶ)が示す情報に基づいて地図情報30aを作成して情報センターの記録媒体に蓄積する。さらに、ナビゲーション装置10が製造された時点での最新の地図情報が地図情報30aとして記録媒体30に記録される。また、利用者所望のタイミングで可搬記録媒体や通信によって地図情報30aを更新することができる。
【0029】
本実施形態における車両(ナビゲーション装置10が搭載された車両)は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とカメラ44と変速部45と制動部46とユーザーI/F部47とを備えている。これらの各部と制御部20とが協働することによって走行支援内容決定プログラム21による機能や複数のプログラムによる機能を実現する。
【0030】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の速度を取得する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の走行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43は、GPS受信部41の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するなどのために利用される。また、車両の現在位置は、当該車両の走行軌跡に基づいて適宜補正される。
【0031】
カメラ44は、車両の後方の道路を視野に含むように車両に対して取り付けられており、撮影した画像を示す画像データを出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの画像データを取得して画像変換し、道路上の地物を検出して当該地物と車両との相対的な距離を特定する。
【0032】
変速部45は、前進について計6速、後進について計1速等の複数の変速段を有する有段のトルクコンバータを備えており、各変速段に対応した変速比で回転数を調整しながらエンジンの駆動力を車両の車輪に伝達することができる。制御部20は図示しないインタフェースを介して変速段を切り替えるための制御信号を出力し、変速部45は当該制御信号を取得して変速段を切り替えることが可能である。本実施形態においては、前進1速〜前進6速のように変速段がハイギアになるにつれて変速比が小さくなるように構成されている。
【0033】
制動部46は、車両の車輪に搭載されたブレーキによる減速の程度を調整するホイールシリンダの圧力を制御する装置を含み、制御部20は当該制動部46に対して制御信号を出力してホイールシリンダの圧力を調整させることが可能である。従って、制御部20が当該制動部46に対して制御信号を出力してホイールシリンダの圧力を増加させると、ブレーキによる制動力が増加し、車両が減速される。
【0034】
ユーザーI/F部47は、運転者の指示を入力し、また運転者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイやスイッチ、スピーカ等を備えている。制御部20は、ユーザI/F部47に対して制御信号を出力することによって各種の案内を出力させる。
【0035】
制御部20は、走行支援内容決定プログラム21を実行することにより、実行対象プログラムを特定し、当該実行対象プログラムによって実現する実行対象機能を選択し、信頼度に応じて当該実行対象機能を実行するか否かを決定する。このために、走行支援内容決定プログラム21は、機能選択部21aと要素選択部21bと信頼度特定部21cと実行決定部21dとを備えた構成となっており、記録媒体30には予め精度情報30bが記録されている。
【0036】
(1−1)精度情報:
精度情報30bは、プログラムの処理によって車両の実行対象プログラムで利用される情報の精度を複数の要素毎に示す情報であり、本実施形態においては、実行対象プログラムで利用される情報の精度を低下させる要因に対応するように精度を分類して要素としている。また、本実施形態においては、複数の要素に階層を対応付け、複数の要素によって階層構造を構成しており、最下位階層の要素に対して精度情報が対応付けられる。精度情報は、実行対象プログラムで利用される情報の正確さを示す情報であればよく、数値の誤差を示す値であっても良いし、正確さを示す指標(例えば、複数段階で正確さを示す情報)であっても良い。
【0037】
表1は、精度情報30bの一例を示す表であり、左側に上位の階層が位置するように配置してプログラムで利用される情報に対応付けられる要素を示すとともに最下位階層の各要素に対応付けられる精度情報の特定単位を示している。すなわち、本実施形態においては、同表1に示すように車両の位置を示す情報と地図情報とによってプログラムで利用される情報を構成している。また、本実施形態において、車両の位置を示す情報は、車両の周囲の地物と車両との相対関係によって特定される情報であり、各種のセンサの測定値に基づいて特定される。具体的には、道路上の構造物や横断歩道などの地物から車両までの距離を示す情報と、車両が走行している走行車線を示す情報と、マッチング処理で特定される道路を示す情報とが、車両の位置を示す情報である。そこで、精度情報30bにおいては、「地物から車両までの距離の精度」と、「車両が走行している走行車線の特定精度」と、「マッチング処理で特定される道路の特定精度」とを精度情報の要素とし、各要素に対して精度情報を対応付けている。
【0038】
また、地図情報は上述の地図情報30aが示す各種の情報であり、地図情報の更新頻度と地図情報の誤差が精度情報30bとなるが、本実施形態においては、要素を階層化することによってより細分化している。すなわち、地図情報の更新頻度は地図情報に対応付けられた要素であるとともに当該要素がさらに細分化され、「情報の収集頻度」と、「情報センターにおける情報の修正頻度」と、「車両における情報の修正頻度」と、「情報変更の可能性」とが精度情報の細分化された要素となっている。そして、「情報の収集頻度」と、「情報センターにおける情報の修正頻度」と、「車両における情報の修正頻度」と、「情報変更の可能性」との各要素に対して精度情報を対応付けている。さらに、地図情報の誤差は「平均誤差」と「最大誤差」とに細分化され、さらに「平均誤差」と「最大誤差」とのそれぞれは「現地計測時の誤差」と「出典情報の誤差」と「情報入力時の誤差」と「演算誤差」と「情報表現形式による誤差」とに細分化され、細分化された各要素に対して精度情報を対応付けている。
【表1】

【0039】
なお、本実施形態においては、要素が階層化されているため、ある要素の下位階層に相当する要素を当該ある要素のサブ要素とも呼ぶ。また、本実施形態における精度情報30bにおいては、車両の位置を示す情報の精度を示す精度情報が地物に対応付けて定義されている。例えば、「地物から車両までの距離の精度」を示す精度情報は、精度を示す対象となる地物に対応付けて定義され、「車両が走行している走行車線の特定精度」および「マッチング処理で特定される道路の特定精度」を示す精度情報は精度を示す対象となる道路に対応付けて定義されている。さらに、本実施形態における精度情報30bにおいては、地図情報の精度を示す精度情報が区画に対応付けて定義されている。すなわち、地図情報30aは区画毎に定義されているため、精度情報30bにおいても当該地図情報30aにおける区画に合わせて当該区画毎に精度情報が定義される。以上のように、精度情報30bは地図情報30aに対応付けて定義されている。
【0040】
表1においては、各精度情報の特定単位を示しており、1/mはメートルを単位とした誤差の逆数で精度情報が定義され、%は確率によって精度情報が定義され、候補道路数は車両から所定距離以内に存在するマッチング候補となる道路の個数によって精度情報が定義されることを示している。また、mはメートルを単位とした誤差で精度情報が定義され、日は日を単位とした情報の更新頻度によって精度情報が定義され、有/無は情報変更の可能性の有無を示す数値によって精度情報が定義されることを示している。
【0041】
具体的には、「地物から車両までの距離の精度」に対応する精度情報は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とによる車両の位置の誤差(m)と、カメラ44による地物認識距離の誤差(m)との和の逆数を示す情報である。すなわち、地物から車両までの距離の誤差は、地物の位置の誤差と車両の位置の誤差との双方を含むため、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43との出力信号に基づいて車両の位置を特定する場合の誤差を予め特定する。また、カメラ44にて撮像された画像に基づいて地物の位置を特定する場合の誤差を予め特定する。そして、双方の誤差の和の逆数を特定し、「地物から車両までの距離の精度」の精度情報とする。
【0042】
「車両が走行している走行車線の特定精度」に対応する精度情報は、走行車線が正しく特定される確率を示す情報である。すなわち、ある道路上で1以上の車線が存在する場合、車両の周囲の車線と車両との相対関係に基づいて車両が走行している走行車線を確定、あるいは特定の車線を走行している確率を特定することができる。例えば、道路の端に存在する車線の境界線が実線であり、車線間の境界線が破線である場合、車両の両側に存在する境界線の双方が実線である場合や、境界線の一方が実線で他方が破線である場合には走行車線を確定することができる。また、車両の両側に存在する境界線の双方が破線である場合、その道路の車線数が3である場合には中央の車線を走行していることが確定し、車線数が4以上である場合には走行車線の候補が2以上になり、特定の車線を走行している確率が特定されるのみである。
【0043】
例えば、車両の両側に存在する境界線の双方が破線あり、かつ、車線数が4である場合、中央に位置する2本の車線のいずれかを走行していることになる。また、車両の両側に存在する境界線が実線、破線のいずれであるのかは、カメラ44にて撮像された画像に基づいて特定される。そこで、本実施形態においては、車両が走行している可能性のある車線候補の数の逆数とカメラ44による車線の境界線の認識率とを乗じた値が「車両が走行している走行車線の特定精度」に対応する精度情報であるとし、道路上の車線に対応付けて精度情報30bとする。例えば、車両が走行している走行車線が左端あるいは右端である場合には、走行車線の特定精度は車線候補の数の逆数(1)×認識率(Aとする)でAとなり、4車線の道路において車両が走行している走行車線が中央に位置する2本のいずれかである場合には、走行車線の特定精度は車線候補の数の逆数(1/2)×認識率(A)でA/2となる。
【0044】
「マッチング処理で特定される道路の特定精度」に対応する精度情報は、車両の走行軌跡と道路の形状との一致度合いに基づいて車両が走行している道路を特定するマッチング処理の正確さを示す情報である。本実施形態においては、車両の周囲にマッチング候補が存在する数が多いほどマッチング精度が低くなるとみなしている。そこで、車両の位置から所定距離以内にマッチング候補となる候補道路が存在する場合に当該候補道路の数を「マッチング処理で特定される道路の特定精度」の精度情報とする。
【0045】
「情報の収集頻度」に対応する精度情報は、ナビゲーション装置10の地図情報30aを管理する管理者が地図情報の計測を行う頻度(例えば、計測者が計測を行う頻度)を示す情報である。すなわち、1回の計測が行われるまでの平均期間を日数で特定し、「情報の収集頻度」の精度情報とする。
【0046】
「情報センターにおける情報の修正頻度」に対応する精度情報は、地図情報を所定の記録媒体に蓄積する情報センターにおいて、新たに収集された地図情報によって記録媒体に記録された既存の地図情報を修正する作業を行う頻度を示す情報である。すなわち、1回の修正が行われるまでの平均期間を日数で特定し、「情報センターにおける情報の修正頻度」の精度情報とする。
【0047】
「車両における情報の修正頻度」に対応する精度情報は、新たに収集された地図情報によって記録媒体30に記録された既存の地図情報30aを車両において修正する作業を行う頻度を示す情報である。すなわち、車両においては可搬記録媒体や通信によって記録媒体30に記録された地図情報30aを修正可能であり、過去の修正作業の履歴を蓄積している。そこで、1回の修正が行われるまでの平均期間を日数で特定し、「車両における情報の修正頻度」の精度情報とする。
【0048】
「情報変更の可能性」に対応する精度情報は、道路工事や道路の新設を行うことによって道路形状が変化する可能性を当該可能性の有無として示す情報である。すなわち、道路工事や道路の新設を行うことによって道路形状が変化する確率が所定値以上の場合に「可能性有り」、所定値よりも小さい場合に「可能性無し」と特定し、「情報変更の可能性」の精度情報とする。
【0049】
さらに、精度情報30bにおいては、地図情報30aが示す地物の位置や長さ等の値の誤差を「平均誤差」と「最大誤差」とに分けて定義している。「平均誤差」は上述の区画内における誤差の平均値であり、「最大誤差」は上述の区画内における誤差の最大値である。「現地計測時の誤差」に対応する精度情報は、上述の計測者によって作成された地図情報30aに関する誤差であり、計測者が地物の位置や長さ等を測定したときの測定値と、基準となる測地系での当該地物の位置や長さとのずれを示す情報である。すなわち、当該ずれを区画内の「平均誤差」と「最大誤差」とのそれぞれについて計算し、それぞれを「現地計測時の誤差」の「平均誤差」と「最大誤差」を示す精度情報とする。
【0050】
「出典情報の誤差」に対応する精度情報は、上述の出典が示す情報に基づいて作成された地図情報30aに関する誤差を示す情報であり、出典が示す情報について出典の提供者が明示している「平均誤差」と「最大誤差」のそれぞれを特定し、それぞれを「出典情報の誤差」の「平均誤差」と「最大誤差」を示す精度情報とする。
【0051】
「情報入力時の誤差」に対応する精度情報は、地図情報30aが示す地物の情報の定義付けを行う際の入力誤差を示す情報である。すなわち、地図情報30aにおいては、地物の予め決められた部位を基準にして位置や長さを定義する。例えば、道路上の停止線の中央や端部など特定の部位を基準とし、当該基準についての位置や基準からみた長さ等を定義する。従って、計測者による計測結果等と地物の位置を対応付ける際に、予め決められた基準の位置を誤ってしまうと地物の位置が正確な位置を示していないことになる。そこで、予めこのような誤差について「平均誤差」と「最大誤差」のそれぞれを特定し、それぞれを「出典情報の誤差」の「平均誤差」と「最大誤差」を示す精度情報とする。
【0052】
「演算誤差」に対応する精度情報は、地図情報30aに基づいて演算処理を行う際に生じる誤差を示す情報である。例えば、道路上に設定された形状補間点の位置から曲率半径を算出する際に、当該演算に起因して誤差が生じる。そこで、本実施形態においては、各種の演算を行った場合に発生する誤差を予め特定し、上述の区画内における「平均誤差」と「最大誤差」のそれぞれを特定する。そして、それぞれの誤差を演算による各情報の特定法毎(例えば、四則演算の実行回数)に対応付けて「演算誤差」の「平均誤差」と「最大誤差」を示す精度情報とする。
【0053】
「情報表現形式による誤差」に対応する精度情報は、地図情報30aが示す地物の位置や長さの桁数に依存する誤差を示す情報である。すなわち、本実施形態においては、人口密集地域と過疎地域など、地域によって地図情報30aの情報量が異なるように構成しており、地図情報30aの桁数が区画毎に異なっている。そこで、予め区画毎に桁数が異なることによって生じる「平均誤差」と「最大誤差」のそれぞれを特定し、それぞれを「情報表現形式による誤差」の「平均誤差」と「最大誤差」を示す精度情報とする。
【0054】
以上のような精度情報30bにおいて、各要素に対応する精度情報は互いに独立になることを主眼にして各要素が分類されている。例えば、現地計測時の誤差と出典情報の誤差の一方が変動することによって他方が変動することはない。従って、精度情報30bを修正する際には、要素毎に情報を修正するのみで充分であり、また、複数の要素の精度情報30bを総合的に考慮して信頼度を特定する際に、最小限の数の要素を考慮することによって信頼度を特定することが可能になる。
【0055】
(1−2)走行支援内容決定処理:
次に、走行支援内容決定プログラム21による走行支援内容決定処理を説明する。走行支援内容決定プログラム21は、所定の期間(例えば、100ms)毎に実行される。図2は走行支援内容決定プログラム21が実行する走行支援内容決定処理を示すフローチャートである。
【0056】
機能選択部21aは、車両の状態および車両の周囲の状態に基づいて実行対象プログラムによって行う実行対象機能を選択する機能を制御部20に実現させるモジュールである。走行支援内容決定処理において、まず制御部20は、機能選択部21aの処理により、車両の現在位置を取得し(ステップS100)、車両の前方の道路を示す地図情報を取得する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43との出力信号および地図情報30aに基づいて車両の現在位置を特定する。さらに、制御部20は、地図情報30aを参照し、当該車両の現在位置の前方における所定範囲に存在する道路を示す地図情報を取得する。
【0057】
次に、制御部20は、当該取得した地図情報に基づいて車両の前方の所定範囲にカーブ区間が存在するか否かを判定し(ステップS110)、車両の前方の所定範囲にカーブ区間が存在すると判定されない場合にはステップS115以降の処理をスキップして走行支援内容決定処理を終了する。すなわち、本実施形態においてカーブ区間に関して実行可能な複数のプログラムは、カーブ区間を走行する車両の走行支援を行うプログラムであるため、カーブ区間が存在しない場合には処理を終了する。
【0058】
一方、ステップS110において、車両の前方の所定範囲にカーブ区間が存在すると判定された場合、制御部20は、プログラムnの実行判断処理を行う(ステップS115)。ここで、nは2以上の整数であり、実行可能な複数のプログラムのそれぞれに対応した番号であるとともにその最大値は実行可能な複数のプログラムの数に相当する。ステップS115においては、n個のプログラムの中から実行対象プログラムを1個特定し、特定した実行対象プログラムの実行対象機能を選択する処理を行う。
【0059】
図3は、当該プログラムnの実行判断処理を示すフローチャートである。この処理において、制御部20は、機能選択部21aの処理により、複数のプログラムのそれぞれに対応した上述の番号nを1に初期化する(ステップS200)。次に、制御部20は、機能選択部21aの処理により、番号nのプログラムが実行対象となっているか否かを示すフラグFn(Fn=1のとき実行対象であり、Fn=0のとき実行対象でないことを示す)を0に初期化する(ステップS205)。
【0060】
次に、制御部20は、機能選択部21aの処理により、プログラムnにおける目標位置および最大横加速度を取得する(ステップS210)。本実施形態におけるプログラムnは、目標位置において車両に作用する横加速度が最大横加速度以下になっている状態を理想状態として車両の制御や運転者への案内を行うプログラムであり、プログラムの番号n毎に異なる目標位置および最大横加速度が予め設定されている。すなわち、複数のプログラムのそれぞれは、車両の状態を所定の理想状態とすることを目的として各種の実行対象機能を行うプログラムであり、プログラム毎に理想状態は異なっている。また、当該目標位置および最大横加速度を示す情報はプログラム情報30cとして予め記録媒体30に記録されている。そこで、制御部20は、プログラム情報30cを参照して、番号nのプログラムnにおける目標位置および最大横加速度を特定する。
【0061】
次に、制御部20は、機能選択部21aの処理により、車両の現在車速を取得する(ステップS215)。すなわち、制御部20は、車速センサ42の出力信号に基づいて車両の現在車速を取得する。むろん、現在車速は他にも種々の構成によって取得可能であり、例えば、マッチング処理において、車両が走行した任意の道路に対して車両の現在位置が適合した時刻と適合が終了した時刻とに基づいてマッチング期間を特定し、道路の長さをマッチング期間で除した値を車両の現在車速としても良い。
【0062】
次に、ステップS220は、機能選択部21aの処理により、車両の状態を理想状態とするために車両に作用させる減速度を目標位置および最大横加速度と現在車速に基づいて取得する(ステップS220)。すなわち、各プログラムは、車両の状態を理想状態とするために車両を減速させる走行支援を行う機能を備えており、目標位置において車両に最大横加速度が作用した状態において当該車両が一定車速で走行することを想定し、車両の現在車速を減速させて目標位置において当該一定車速とする際に必要となる減速度を取得する。例えば、目標位置において車両に最大横加速度Gmが作用した状態で一定車速で走行する車速を目標車速V0とする場合、曲率半径をRとすると目標車速V0は(Gm・R)1/2である。そこで、等加速度運動を想定し、車両の現在位置と目標位置との距離Lcにて車両の現在車速Vcを目標車速V0とするための減速度Gr(自車両の進行方向を正とした場合の負の加速度)をGr=(V02−Vc2)/(2Lc)などとして取得する。
【0063】
そして、制御部20は、機能選択部21aの処理により、当該減速度に基づいてプログラムnによる実行対象機能を特定する(ステップS225)。すなわち、本実施形態においては、各プログラムにおいて複数の機能が実行可能であり、各機能のそれぞれに対して減速度の大きさ(減速度の絶対値)が予め対応付けられているとともに、当該対応関係を示す情報がプログラム情報30cとして記録媒体30に記録されている。そこで、制御部20は、当該プログラム情報30cを参照して減速度に対応する機能を特定して実行対象機能とする。なお、減速度の全値域にわたってプログラムにて実行可能な機能が対応付けられている必要はなく、減速度に対応する機能が対応付けられていない場合にはステップS225以降を省略してステップS250を実行する構成とすればよい。
【0064】
要素選択部21bは、実行対象機能に対応する要素を複数の要素から選択する機能を制御部20に実現させるモジュールであり、ステップS225にて実行対象機能が特定されると、制御部20は、要素選択部21bの処理により、精度情報30bを参照して実行対象機能に対応する要素を複数の要素から選択する(ステップS230)。すなわち、実行対象機能が異なれば、信頼度評価に要求される厳密性が異なるため、参照すべき要素が異なる。また、実行対象プログラムで利用される情報が異なれば、当該実行対象プログラムで利用される情報の精度を特定するために参照すべき要素が異なる。そこで、本実施形態においては、前者のような実行対象機能毎に要求される信頼度評価の厳密性に対応した要素の選択を実現するため、実行対象機能と精度情報の要素とを予め対応付けておき、ステップS230において、当該対応に基づいて精度情報30bの中から参照すべき要素を選択する。
【0065】
具体的には、特定の理想状態を達成目標としたプログラムにおいて、当該特定の理想状態を実現するために車両に作用させるべき減速度が小さい場合には案内を行うことによって当該特定の理想状態を実現するための支援として充分である場合が多い。一方、特定の理想状態を実現するために車両に作用させるべき減速度が大きい(減速度の絶対値が大きい)場合には、当該特定の理想状態を実現するために早急に減速を開始すべきである場合が多い。また、減速度が大きくなると走行支援が誤りであった場合の影響が大きくなる。
【0066】
そこで、本実施形態においては、大きい減速度に対応した実行対象機能と小さい減速度に対応した実行対象機能とで比較した場合に、前者においては後者よりも厳密に信頼度を評価できるような要素が選択されるように構成されている。例えば、精度情報30bが示す「最大誤差」は誤差があると仮定した場合の最大値であるため、誤差の程度を評価する際に「最大誤差」を参照すれば、それ以上の誤差が発生し得ない状態で誤差の程度を評価することができる。一方、「平均誤差」は誤差の平均であるため、誤差の程度を評価する際に「平均誤差」を参照すると、それ以上の誤差が発生し得る状態で誤差の程度を評価することになる。そこで、本実施形態においては、実行対象機能が大きい減速度に対応した機能である場合に「最大誤差」を精度情報の要素として選択し、実行対象機能が小さい減速度に対応した機能である場合に「平均誤差」を精度情報の要素として選択する構成としてある。
【0067】
さらに、走行支援を行った結果、理想状態が実現できなかった場合において実現された状態と理想状態との差異を想定した場合に、許容される差異の程度が小さい場合には正確な走行支援を行うことが要求される。そこで、本実施形態においては、許容される差異の程度が小さい実行対象機能である場合には、実行対象プログラムで利用される情報の正確さを厳密に評価できるような要素を選択する。すなわち、「最大誤差」を精度情報の要素として選択する。また、許容される差異の程度が大きい実行対象機能である場合には、「平均誤差」を精度情報の要素として選択する。
【0068】
さらに、実行対象機能が、極めて高い正確性の要求される内容である場合には、「情報変更の可能性」を精度情報の要素として選択し、誤った地図情報に基づいて走行支援を行うことがないように構成する。一方、実行対象機能が、極めて高い正確性の要求される内容でない場合には、「情報変更の可能性」を精度情報の要素として選択しない。以上のように、制御部20は、ステップS230において、実行対象機能毎に要求される信頼度評価の厳密性が異なることに対応した要素の選択を行う。
【0069】
信頼度特定部21cは、選択された要素の精度情報に基づいて、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定する機能を制御部20に実現させるモジュールであり、本実施形態においては、実行対象プログラムで利用される情報の精度を特定するために参照すべき要素であって、ステップS230にて選択されていない要素を選択し、ステップS230にて選択された要素とともにその精度情報を取得して信頼度を特定する(ステップS235)。すなわち、ステップS230にて実行対象機能に対応する要素が選択されると、次に、制御部20は、ステップS235において、番号nのプログラムの処理によって実行対象プログラムで利用される情報を特定する。そして、制御部20は、実行対象プログラムで利用される情報のそれぞれについて信頼度を特定するために参照すべき要素であって、ステップS230にて選択されなかった要素を特定する。そして、当該要素とステップS230にて選択された要素について精度情報30bを参照し、当該精度情報30bに基づいて実行対象プログラムで利用される情報のそれぞれについて信頼度を特定する。
【0070】
なお、本実施形態においては、精度情報30bが示す要素が階層構造になっているため、各階層において考慮すべき精度情報を予め決められた基準に従って評価してより上位の階層の精度を総合評価する作業を繰り返すことによって各要素の総合評価を行って信頼度を特定する構成としている。
【0071】
より具体的には、精度情報30bが示す「地物から車両までの距離の精度」と、「車両が走行している走行車線の特定精度」と、「マッチング処理で特定される道路の特定精度」との各要素については、これらの要素が最下位階層の要素である。そこで、選択された要素の精度情報と閾値とを比較して当該選択された要素について複数段階の評価値を特定し、その組み合わせから車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値を特定する。
【0072】
表2は、当該評価値の例を示している。
【表2】

同表2においては、左側に要素毎の評価値、右側に各要素の評価値の組み合わせから特定される車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値を示している。
【0073】
この例において、「地物から車両までの距離の精度」については表1に示す精度情報である誤差の逆数と閾値とを比較することによって0〜3の4段階で評価値が特定され、「車両が走行している走行車線の特定精度」については表1に示す精度情報である確率と閾値とを比較することによって0〜3の4段階で評価値が特定される。「マッチング処理で特定される道路の特定精度」については表1に示す精度情報である候補道路数と閾値とを比較することによって0〜2の3段階で評価値が特定される。なお、ここでは、候補道路数が1個より少ない(すなわち車両がマッチングしていない)場合に評価値を0とし、候補道路数が2個以上である場合に評価値を1とし、候補道路数が1個である場合に評価値を2としている。
【0074】
さらに、表2においては、「マッチング処理で特定される道路の特定精度」の評価値が0,1の場合に車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値が0,1となるように設定してある。また、「マッチング処理で特定される道路の特定精度」の評価値が2の場合に「地物から車両までの距離の精度」や「車両が走行している走行車線の特定精度」を考慮して、車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値が2〜5となるように設定してある。従って、候補道路数が1個であるような、「マッチング処理で特定される道路の特定精度」が極めて正確な場合に限り他の要素(「地物から車両までの距離の精度」や「車両が走行している走行車線の特定精度」)を加味して車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値が2以上の値になるように設定していることになる。
【0075】
なお、「地物から車両までの距離の精度」」と「車両が走行している走行車線の特定精度」とのいずれの要素も考慮する必要がない場合、本実施形態においては、車両の位置を示す情報の精度を示す要素として「マッチング処理で特定される道路の精度」のみが選択される。この場合、「マッチング処理で特定される道路の精度」の評価値が0である場合に、車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値が0であるとし、「マッチング処理で特定される道路の精度」の評価値が1である場合に、車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値が1であるとし、「マッチング処理で特定される道路の精度」の評価値が2である場合に、車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値が5であるとする。
【0076】
また、精度情報30bが示す「情報の収集頻度」と、「情報センターにおける情報の修正頻度」と、「車両における情報の修正頻度」との各要素については、これらの要素が最下位層であるため、各要素の精度情報を総合評価して上位階層の要素である「地図情報の更新頻度」の評価値を特定する。本実施形態においては、地図情報が新しいと見なせる状態を評価値1、地図情報が古いと見なせる状態を評価値0としている。具体的には、「情報の収集頻度」と、「情報センターにおける情報の修正頻度」と、「車両における情報の修正頻度」との中で最少の日数が最も早い地図情報30aの更新頻度である。そこで、「情報の収集頻度」と、「情報センターにおける情報の修正頻度」と、「車両における情報の修正頻度」との中で最少の日数をD1,利用者が可搬記録媒体や通信によって地図情報30aを更新した最近の日からの経過日数をD0とする。そして、1−(D0/D1)が正の場合に「地図情報の更新頻度」を総合評価するための評価値が1、1−(D0/D1)が負の場合に「地図情報の更新頻度」を総合評価するための評価値が0となるように設定する。
【0077】
なお、「情報変更の可能性」は、実行対象機能が極めて高い正確性の要求される機能である場合に選択される要素であり、「情報変更の可能性」が選択された場合、「情報の収集頻度」と、「情報センターにおける情報の修正頻度」と、「車両における情報の修正頻度」は選択されない。そして、「情報変更の可能性」が選択された場合、精度情報が「可能性有り」を示している場合に評価値が1、精度情報が「可能性無し」を示している場合に評価値が0となるように設定する。
【0078】
一方、精度情報30bが示す「平均誤差」と「最大誤差」の要素については、実行対象機能に応じていずれかの要素のみが選択されるため、選択された要素についてのみ評価値を特定する。ここで、「平均誤差」と「最大誤差」についてはより下位階層の要素であるサブ要素が対応付けられているため、制御部20は「平均誤差」あるいは「最大誤差」のうち、実行対象プログラムで利用される情報の特定法に応じたサブ要素を選択する。すなわち、実行対象プログラムで利用される情報を特定するために複数の情報の演算処理が必要になる場合には、演算が複雑であるほど演算誤差が増大し、演算を行うことなく直接的に利用可能な情報であれば演算誤差は存在しない。
【0079】
そこで、本実施形態においては、車両の位置を示す情報を特定するために複数の情報の演算処理が必要になる場合に「平均誤差」あるいは「最大誤差」のサブ要素として「演算誤差」を含むサブ要素を選択する。また、車両の位置を示す情報を特定するために演算処理が必要ではない場合に「演算誤差」を除外してサブ要素を選択する。
【0080】
そして、「現地計測時の誤差」の精度情報をE1、「出典情報の誤差」の精度情報をE2、「情報入力時の誤差」の精度情報をE3、「演算誤差」の精度情報をE4、「情報表現形式による誤差」の精度情報をE5とし、演算処理が必要になる場合には1/(E1+E2+E3+E4+E5)と4段階の閾値とを比較することによって「地図情報の誤差」に関する総合評価を示す5段階の評価値(評価値0〜4)を特定する。一方、演算処理が必要ではない場合には1/(E1+E2+E3+E5)と4段階の閾値とを比較することによって「地図情報の誤差」に関する総合評価を示す5段階の評価値(評価値0〜4)を特定する。
【0081】
以上の処理によって同じ階層の要素である「地図情報の更新頻度」と「地図情報の誤差」とのそれぞれについての総合評価を示す評価値が特定されると、地図情報の精度を総合評価するための評価値を特定する。
【0082】
表3は、地図情報の精度を総合評価するための評価値の例を示している。
【表3】

同表3においては、左側に「地図情報の更新頻度」と「地図情報の誤差」とに関する要素毎の評価値を示し、右側に地図情報の精度を総合評価するための評価値を示している。
【0083】
この例において、「地図情報の更新頻度」については上述のように評価値が0あるいは1で特定されており、「地図情報の誤差」については上述のように評価値が0〜4のいずれかに特定されている。表3においては、「地図情報の更新頻度」の評価値が0の場合に地図情報の精度を総合評価するための評価値が0となるように設定してある。また、「地図情報の更新頻度」の評価値が1の場合に地図情報の精度を総合評価するための評価値が1〜5となるように設定してある。従って、地図情報が新しいと見なせる状態である場合に限り「地図情報の誤差」を加味して地図情報の精度を総合評価するための評価値が1以上の値になるように設定していることになる。
【0084】
以上のようにして、車両の位置を示す情報の精度を総合評価するための評価値(表2)と地図情報の精度を総合評価するための評価値(表3)とが特定されると、制御部20はこれらの評価値の組み合わせから、信頼度特定対象となっている情報の信頼度を特定する。すなわち、各評価値の組み合わせと信頼度との対応関係は予め規定されており、制御部20は、当該対応関係に基づいて信頼度を特定する。なお、表4は当該対応関係の例を示す表である。
【表4】

【0085】
実行決定部21dは、信頼度に応じて、ステップS225にて特定された実行対象機能を実行するか否かを決定する機能を制御部20に実現させるモジュールであり、ステップS235にて信頼度を特定すると、制御部20は、実行決定部21dの処理により、当該実行対象機能を実行するか否かを判定する(ステップS240)。すなわち、信頼度が所定の閾値よりも高い場合には当該実行対象機能を実行すべきとみなし、制御部20は、実行決定部21dの処理により、番号nのプログラムが実行対象となっているか否かを示すフラグFnを1に設定する(ステップS245)。また、信頼度が所定の閾値以下である場合には当該実行対象機能を実行すべきではないとみなしてステップS245をスキップする。
【0086】
ステップS240,S245においてプログラムnについて車両の状態および車両の周囲の状態に応じた実行対象機能を実行するか否かを特定すると、制御部20は、機能選択部21aの処理により、全ての番号nについてステップS205〜S245の処理が終了したか否かを判定し(ステップS250)、全ての番号nについて処理が終了したと判定されない場合には、番号nをインクリメントして(ステップS255)ステップS205以降の処理を繰り返す。
【0087】
ステップS250にて、全ての番号nについて処理が終了したと判定された場合には、図2に示すフローチャートに復帰する。すなわち、制御部20は、実行決定部21dの処理により、フラグFn=1を満たすnが存在するか否かを判定する(ステップS120)。ステップS120において、フラグFn=1を満たすnが存在すると判定されない場合には、ステップS125以降の処理をスキップして走行支援内容決定処理を終了する。ステップS120において、フラグFn=1を満たすnが存在すると判定された場合、制御部20は、実行決定部21dの処理により、フラグFn=1を満たす番号nが複数個存在するか否かを判定する(ステップS125)。
【0088】
そして、ステップS125にて、フラグFn=1を満たす番号nが複数個存在すると判別された場合、制御部20は、実行決定部21dの処理により、予め決められた優先度に基づいて実行対象を特定する(ステップS130)。また、ステップS125にて、フラグFn=1を満たす番号nが複数個存在すると判別されない場合、制御部20はステップS130をスキップする。すなわち、本実施形態において、カーブ区間を走行する車両の走行支援を行うための処理は複数個存在するが、1カ所のカーブ区間において実行されるプログラムが1個となるように予め優先度が規定されている。従って、高い優先度のプログラムを実行対象とすることにより、実行対象を1個に限定することができる。なお、本実施形態においては、安全性を高める効果が高いプログラムの優先度が高くなるように設定されている。
【0089】
以上のようにして、実行対象プログラムが1個に特定されると、制御部20は、当該実行対象プログラムについてステップS225にて選択された実行対象機能を実行する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、実行対象プログラムによって実行対象機能を実行する(図1の実行対象プログラム22は当該実行対象プログラムが実行されている状態を示している)。
【0090】
以上のように、本実施形態において、精度情報30bは、実行対象機能のそれぞれに特有の定義がなされているわけではなく、各実行対象機能に応じて選択可能な共通の情報群として定義されている。従って、各実行対象機能で共通の情報群に基づいて信頼度を特定することが可能になり、実行対象機能毎に精度情報を定義する構成と比較して精度情報30bの容量を抑制することができる。また、精度情報30bにおいては、プログラムで利用される情報の精度を複数の要素毎に定義しているため、要素を選択することによって参照すべき精度情報を特定することが可能になる。さらに、実行対象機能に対応する要素を特定することによって信頼度を特定するために参照すべき精度情報を特定することができるため、参照すべき精度情報を容易に特定することができる。また、信頼度を特定するために参照する必要がない精度情報を参照することなく必要十分な処理によって信頼度を特定することができる。以上のように、本発明によれば、多様な走行支援を行う際に利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を効率的に管理し、精度情報を容易に選択することが可能になる。
【0091】
さらに、信頼度に応じて走行支援を実行するか否かを決定することができれば、誤制御を防止し、誤制御が発生した場合の影響を予め把握した上で走行支援を行うか否かを決定することができる。従って、実行対象プログラムで利用される情報が誤っている場合に生じる悪影響を許容範囲内に抑制しつつ走行支援を行うことができる。
【0092】
(2)実施例:
次に、ナビゲーション装置10において、カーブ区間を走行する車両の走行支援を行うための処理を実行する複数のプログラムとして、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムとカーブ区間を快適に走行するための支援プログラムとを実行可能な構成を例にして走行支援内容決定プログラム21による処理を説明する。表5は、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムとカーブ区間を快適に走行するための支援プログラムを説明するための表である。
【表5】

【0093】
同表5に示すように、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムは、目標位置である一定曲率区間の開始位置において車両に作用する最大横加速度を0.4G以下にすることが理想状態として設定されており、当該理想状態を実現することによって車両が横方向に滑ることを防止することを目的としたプログラムである。また、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムにおいては、減速制御あるいは注意喚起のいずれかの実行対象機能を実行することが可能である。本例において、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムが実行可能な減速制御は、車両の現在位置から目標位置の間において車両を減速させる機能である。また、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムが実行可能な注意喚起は、現在位置から目標位置の間においてブレーキによって車両を減速させるように促す機能である。
【0094】
一方、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムは、目標位置であるクロソイド区間の各位置において車両に作用する最大横加速度を0.2G以下にすることが理想状態として設定されており、当該理想状態を実現することによって車両に過度の横加速度が作用しない状態で車両を快適に走行させることを防止することを目的としたプログラムである。また、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムにおいては、減速制御、減速タイミング通知、注意喚起のいずれかの実行対象機能を実行することが可能である。本例において、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムが実行可能な減速制御は、車両の現在位置から目標位置の間において車両を減速させる機能である。また、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムが実行可能な減速タイミング通知は、現在位置から目標位置の間においてアクセルをオフすることによって車両を減速させるタイミングを通知する機能であり、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムが実行可能な注意喚起は、現在位置から目標位置の間においてカーブ区間の存在を示す注意喚起を行う機能である。
【0095】
以上の構成において車両の走行中に図2に示す走行支援内容決定処理が実行され、車両の前方の所定範囲内にカーブ区間が存在する場合、ステップS110の判別を経てステップS115が実行され、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムとカーブ区間を快適に走行するための支援プログラムとのそれぞれについて実行判断処理が行われる。図4は、車両Cの前方に存在するクロソイド区間および一定曲率区間を含むカーブ区間の例を示す図であり、同図4においては、一定曲率区間の前後に設けられたクロソイド区間を破線で示す矢印L0,L1、一定曲率区間を一点鎖線で示す矢印L2で示している。また、図4においては、一定曲率区間に到達する以前のクロソイド区間の開始位置をP0、一定曲率区間の開始位置P1(クロソイド区間の終了位置)として示している。ここでは、当該図4の例に則して説明する。
【0096】
ステップS200において、番号nが一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムを示す値になっている状態で図3に示す処理が行われると、ステップS210において、制御部20は理想状態の目標位置が一定曲率区間の開始位置P1であり、最大加速度が0.4Gであることを取得する(表5参照)。次に、制御部20は、ステップS215において車両の現在車速を取得し、ステップS220において車両に作用させる減速度を取得する。すなわち、一定曲率区間の開始位置P1において車両に最大横加速度0.4Gを作用させて一定車速で走行する際の目標車速を曲率半径Rから特定し、現在位置から一定曲率区間の開始位置P1までの区間で現在車速を目標車速に減速させるための減速度を取得する。
【0097】
この結果取得された減速度が0.6G以上である場合に、制御部20は、ステップS225において、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムにて実行すべき実行対象機能が減速制御であるとする。また、取得された減速度が0.2以上かつ0.6Gより小さい場合に一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムにて実行すべき実行対象機能が注意喚起であるとする。なお、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムにおいて、減速度が0.01以上かつ0.2Gより小さい場合に実行すべき実行対象機能は存在しない。
【0098】
さらに、制御部20は、ステップS230において、実行対象機能に対応する要素を選択する。表5においては、実行対象機能に対応する要素を明示している。本例においては同表5に示すように実行対象機能が減速制御である場合に、制御部20は、精度情報30bを参照して「最大誤差」と「情報変更の可能性」とを選択する。一方、実行対象機能が注意喚起である場合に、制御部20は、精度情報30bを参照して「平均誤差」と「情報の収集頻度」と「情報センターにおける情報の修正頻度」と「車両における情報の修正頻度」と(表5においては、これらの要素をまとめて「収集頻度/修正頻度」として示している)を選択する。
【0099】
すなわち、減速制御は注意喚起よりも車両に作用させる減速度が大きい場合に実行される走行支援である。そこで、本例においては、注意喚起よりも減速制御の方が実行対象プログラムで利用される情報の正確さを厳密に評価できるように減速制御の場合に「最大誤差」および「情報変更の可能性」を要素として選択し、注意喚起では「平均誤差」および「情報の収集頻度」と「情報センターにおける情報の修正頻度」と「車両における情報の修正頻度」を選択する構成としている。
【0100】
次に、制御部20は、ステップS235において、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定する。このとき、制御部20は、実行対象プログラムで利用される情報を特定し、実行対象プログラムで利用される情報のそれぞれについて信頼度を特定するために参照すべき要素であって、ステップS230にて選択されなかった要素を特定する。そして、当該要素とステップS230にて選択された要素とに対応する精度情報30bを特定して信頼度を特定する。
【0101】
具体的には、実行対象機能が減速制御である場合、上述のようにして特定された減速度で減速を行うように制御部20が変速部45および制動部46に制御信号を出力する。従って、実行対象機能が減速制御である場合、減速度を取得するために参照した情報である、一定曲率区間の開始位置P1と一定曲率区間の曲率半径Rと車両の現在位置とが、実行対象プログラムで利用される情報であるとみなして信頼度を評価する。
【0102】
なお、本実施形態においては、減速度を特定するために車両の現在位置と目標位置である一定曲率区間の開始位置P1とを参照するが、車両の現在位置の精度は「マッチング処理で特定される道路の精度」で評価可能である。そこで、「マッチング処理で特定される道路の精度」と地図情報を特定するための要素とを組み合わせて一定曲率区間の開始位置P1の信頼度を評価する。さらに、一定曲率区間の開始位置P1を示す情報は、地図情報30aに含まれるとともに演算を行うことなく直接的に特定されるため、誤差に関するサブ要素として「演算誤差」を示す要素は選択されない。
【0103】
従って、制御部20は、ステップS230にて精度情報30bを参照し、「情報変更の可能性」、「最大誤差」を選択する。また、制御部20は、ステップS235にて精度情報30bを参照し、一定曲率区間の開始位置P1に関する要素として、「マッチング処理で特定される道路の精度」、「最大誤差」に対応付けられた「現地計測時の誤差」、「出典情報の誤差」、「情報入力時の誤差」、「情報表現形式による誤差」を選択する。
【0104】
次に、制御部20は、各要素の精度情報に基づいて信頼度を特定するため、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43との出力信号に基づいて車両の現在位置を特定し、車両が現在走行している道路(すなわちマッチング処理で特定された道路)の周辺に候補道路が存在するか否かを判定する。そして、制御部20は、精度情報30bを参照して候補道路の数に対応する「マッチング処理で特定される道路の特定精度」精度情報を特定し、「マッチング処理で特定される道路の特定精度」の評価値を0〜2のいずれかに特定する。そして、制御部20は、「車両の位置を示す情報」の精度を総合評価するための評価値を0,1あるいは5に特定する。
【0105】
さらに、制御部20は、地図情報30aを参照して車両の現在位置が存在する区画を特定し、精度情報30bを参照して当該区画における「情報変更の可能性」の精度情報から「地図情報の更新頻度」を総合評価するための評価値を0あるいは1に特定する。
【0106】
さらに、制御部20は、精度情報30bを参照して「最大誤差」に対応する「現地計測時の誤差」の精度情報E1、「出典情報の誤差」の精度情報E2、「情報入力時の誤差」の精度情報E3、「情報表現形式による誤差」の精度情報E5を特定する。そして、1/(E1+E2+E3+E5)と4段階の閾値とを比較することによって「地図情報の誤差」を総合評価するための評価値を0〜4のいずれかに特定する。
【0107】
さらに、制御部20は、以上のようにして特定された「地図情報の更新頻度」を総合評価するための評価値と「地図情報の誤差」を総合評価するための評価値と表3に基づいて「地図情報の精度」を総合評価するための評価値を特定する。さらに、制御部20は、「車両の位置を示す情報」の精度を総合評価するための評価値と「地図情報の精度」を総合評価するための評価値と表4に基づいて、一定曲率区間の開始位置P1の信頼度を特定する。
【0108】
一方、本実施形態においては、目標車速を特定するために一定曲率区間の曲率半径Rを参照する。ここで、曲率半径Rは車両が走行する走行車線によって異なるが、走行車線の正確性は「車両が走行している走行車線の特定精度」と「マッチング処理で特定される道路の精度」とによって評価可能である。そこで、「車両が走行している走行車線の特定精度」と「マッチング処理で特定される道路の精度」と地図情報を評価するための要素とを組み合わせて曲率半径Rの信頼度を評価する。さらに、曲率半径Rは、地図情報30aが示す隣接する3カ所の形状補間点から、当該3カ所の形状補間点を通る円の半径として特定される。すなわち、演算によって特定される。
【0109】
従って、制御部20は、ステップS230にて精度情報30bを参照し、「情報変更の可能性」、「最大誤差」を選択する。また、制御部20は、ステップS235にて精度情報30bを参照し、曲率半径Rに関する要素として、「車両が走行している走行車線の特定精度」、「マッチング処理で特定される道路の精度」、「最大誤差」に対応付けられた「現地計測時の誤差」、「出典情報の誤差」、「情報入力時の誤差」、「演算誤差」、「情報表現形式による誤差」を選択する。
【0110】
このため、誤差に関する要素に「演算誤差」が含まれている点が上述の一定曲率区間の開始位置P1の信頼度を特定するための処理と異なっており、制御部20は、精度情報30bを参照して「最大誤差」に対応する「現地計測時の誤差」の精度情報E1、「出典情報の誤差」の精度情報E2、「情報入力時の誤差」の精度情報E3、「演算誤差」の精度情報E4、「情報表現形式による誤差」の精度情報E5を特定する。そして、1/(E1+E2+E3+E4+E5)と4段階の閾値とを比較することによって「地図情報の誤差」に関する総合評価を示す5段階の評価値を0〜4のいずれかに特定する。
【0111】
また、車両の位置を示す情報に「車両が走行している走行車線の特定精度」が含まれる点も上述の一定曲率区間の開始位置P1の信頼度を特定するための処理と異なっており、制御部20は、地図情報30aに基づいて車両が現在走行している道路の車線数を特定する。なお、図4に示す道路は、車線数1の道路である。そして、制御部20は精度情報30bを参照し、特定された道路の車線数1に関する「車両が走行している走行車線の特定精度」の精度情報を特定し、「車両が走行している走行車線の特定精度」の評価値を0〜3のいずれかに特定する。そして、制御部20は「マッチング処理で特定される道路の精度」の評価値を0〜2のいずれかに特定し、表2に基づいて「車両の位置を示す情報」の精度を総合評価するための評価値を0〜5のいずれかに特定する。他の演算に関しては一定曲率区間の開始位置P1の信頼度を特定するために実行される処理と同様であり、当該処理の結果、曲率半径Rについての信頼度が特定される。
【0112】
以上のようにして、一定曲率区間の開始位置P1および一定曲率区間の曲率半径Rについての信頼度が特定されると、両者の平均によって実行対象機能が減速制御である場合に実行対象プログラムで利用される情報の信頼度が特定される。そして、制御部20は、ステップS240,S245において当該信頼度に応じてフラグFnの値を設定する。
【0113】
一方、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムの実行対象機能が注意喚起である場合、制御部20は、ユーザーI/F47に対して制御信号を出力し、カーブ区間に到達する前にブレーキによる減速を行うべきであることを案内する。当該注意喚起は上述の減速度が0.2G以上かつ0.6Gよりも小さい場合に選択される実行対象機能であるため、ここでも、減速度を取得するために参照した情報である、一定曲率区間の開始位置P1と一定曲率区間の曲率半径Rと車両の現在位置とが、実行対象プログラムで利用される情報とみなして信頼度を評価する。
【0114】
なお、実行対象機能が注意喚起である場合、車両に対する制御介入が行われないため、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を評価する際の厳密性は実行対象機能が減速制御である場合よりも低い。そこで、実行対象機能が注意喚起である場合には、車両の現在位置を評価するための要素として「車両が走行している走行車線の特定精度」は考慮しない。
【0115】
従って、制御部20は、ステップS230にて精度情報30bを参照し、「情報の収集頻度」、「情報センターにおける情報の修正頻度」、「車両における情報の修正頻度」、「平均誤差」を選択する。また、制御部20は、ステップS235にて精度情報30bを参照し、一定曲率区間の開始位置P1について、「マッチング処理で特定される道路の精度」、「平均誤差」に対応付けられた「現地計測時の誤差」、「出典情報の誤差」、「情報入力時の誤差」、「情報表現形式による誤差」を選択する。また、制御部20は、ステップS235にて精度情報30bを参照し、一定曲率区間の曲率半径Rについて、「マッチング処理で特定される道路の精度」、「平均誤差」に対応付けられた「現地計測時の誤差」、「出典情報の誤差」、「情報入力時の誤差」、「演算誤差」、「情報表現形式による誤差」を選択する。
【0116】
このため、一定曲率区間の開始位置P1および一定曲率区間の曲率半径Rのそれぞれにおいて、実行対象機能が減速制御である場合と比較して、「地図情報の更新頻度」に関する要素が「情報の収集頻度」、「情報センターにおける情報の修正頻度」、「車両における情報の修正頻度」である点と「地図情報の誤差」に関する要素が「平均誤差」である点が異なる。
【0117】
そこで、制御部20は、地図情報30aを参照して車両の現在位置が存在する区画を特定し、精度情報30bを参照して当該区画における「情報の収集頻度」,「情報センターにおける情報の修正頻度」,「車両における情報の修正頻度」の精度情報を特定し、最少の日数D1を特定する。さらに、制御部20は、利用者が可搬記録媒体や通信によって地図情報30aを更新した日からの経過日数D0を特定する。そして、制御部20は1−(D0/D1)が正の場合に「地図情報の更新頻度」を総合評価するための評価値が1、1−(D0/D1)が負の場合に「地図情報の更新頻度」を総合評価するための評価値が0となるように設定する。なお、誤差に関しては、参照される要素が「平均誤差」である点を除き、上述の「最大誤差」についての評価値と同様の手法で評価値が特定される。他の演算に関しては実行対象機能が減速制御である場合の信頼度を特定するために実行される処理と同様であり、当該処理の結果、一定曲率区間の開始位置P1および曲率半径Rについての信頼度が特定される。
【0118】
なお、実行対象機能が注意喚起である場合も、以上のようにして、一定曲率区間の開始位置P1および一定曲率区間の曲率半径Rについての信頼度が特定されると、両者の平均によって実行対象機能が注意喚起である場合に実行対象プログラムで利用される情報の信頼度が特定される。そして、制御部20は、ステップS240,S245において当該信頼度に応じてフラグFnの値を設定する。
【0119】
以上のようにして、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムに関して実行対象機能を選択し、当該一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムを実行するか否かを示すフラグFnを特定すると、次に、制御部20は、ステップS255において、番号nを変更して番号nがカーブ区間を快適に走行するための支援プログラムを示す値になっている状態とし、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムについて同様の処理を行う。
【0120】
すなわち、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムに関しては、図3のステップS210〜S220において制御部20が、理想状態の目標位置がクロソイド区間の各位置であり、最大加速度が0.2Gであることを取得し、車両の現在車速に基づいて車両に作用させる減速度を取得する。
【0121】
この結果、制御部20は、ステップS225において、減速度に応じてカーブ区間を快適に走行するための支援プログラムにて実行すべき実行対象機能を選択する。すなわち、制御部20は、減速度が0.2G以上である場合に、実行対象機能が減速制御であるとし、減速度が0.1以上かつ0.2Gより小さい場合に実行対象機能がアクセルオフのタイミングを通知する減速タイミング通知であるとし、減速度が0.01以上かつ0.1Gより小さい場合に実行対象機能がカーブ区間の存在を示す注意喚起であるとする(表5参照)。
【0122】
さらに、制御部20は、ステップS230において、実行対象機能に対応する要素を選択する。本例においては同表5に示すように、実行対象機能が減速制御である場合に、制御部20は、ステップS230にて精度情報30bを参照し、「最大誤差」と「情報の収集頻度」と「情報センターにおける情報の修正頻度」と「車両における情報の修正頻度」とを選択する。また、実行対象機能が減速タイミング通知、注意喚起である場合に、制御部20は、ステップS230にて精度情報30bを参照し、「平均誤差」と「情報の収集頻度」と「情報センターにおける情報の修正頻度」と「車両における情報の修正頻度」とを選択する。
【0123】
すなわち、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムにおいても、減速制御を実行する場合には、誤制御による不適切な減速を防止するため、誤差に関する要素として「最大誤差」を選択し、減速タイミング通知と注意喚起とを実行する場合には、誤差に関する要素として「平均誤差」を選択する。一方、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムは理想状態における最大横加速度が0.2Gであり、横滑りが発生する横加速度(例えば0.6G)から充分にマージンを持たせた値となっているため、車両に作用する横加速度が0.2Gから多少変動したとしても、横滑りが発生するなど、車両の安全性を低下させる状況にはならない。そこで、本例においては、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムにおいては、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムの減速制御よりも「地図情報の更新頻度」を厳密に評価する必要はないとみなし、実行対象機能がいずれの機能であっても「地図情報の更新頻度」に関する要素として「情報の収集頻度」と「情報センターにおける情報の修正頻度」と「車両における情報の修正頻度」を選択する構成としている。
【0124】
さらに、ステップS235において、実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定する。このとき、制御部20は、ステップS230で選択された要素以外の要素も選択し、当該選択された要素とステップS230で選択された要素とに対応する精度情報30bを特定して信頼度を特定する。
【0125】
具体的には、実行対象機能が減速制御である場合、制御部20は、車両の現在位置からクロソイド区間の開始位置までの間において、上述のようにして特定された減速度で減速を行うように制御部20が変速部45および制動部46に制御信号を出力する。さらに、クロソイド区間の各位置においては、当該各位置における曲率半径の区間を一定車速で走行する際の車速を目標車速として現在車速を当該目標車速に減速させるための減速度を取得し、当該減速度で減速を行うように制御部20が変速部45および制動部46に制御信号を出力する。従って、実行対象機能が減速制御である場合、目標位置としてのクロソイド区間の各位置とクロソイド区間の各位置における曲率半径と車両の現在位置とが、実行対象プログラムで利用される情報であるとみなして信頼度を評価する。なお、クロソイド区間の終了位置と一定曲率区間の開始位置P1とは一致するため、ここでは、クロソイド区間の終了位置まで減速制御を行うことにより、一定曲率区間の開始位置P1において一定曲率区間を一定車速で走行する際の車速を目標車速とした減速制御が行われることになる。
【0126】
本例においても、車両の現在位置の精度は「マッチング処理で特定される道路の精度」で評価可能である。そこで、「マッチング処理で特定される道路の精度」と地図情報を特定するための要素とを組み合わせてクロソイド区間の各位置の信頼度を評価する。さらに、クロソイド区間の各位置を示す情報(形状補間点)は、地図情報30aに含まれるとともに演算を行うことなく直接的に特定されるため、誤差に関するサブ要素として「演算誤差」を示す要素は選択されない。クロソイド区間の各位置における曲率半径は、地図情報30aに含まれる形状補間点に基づいて演算によって特定されるため、誤差に関するサブ要素として「演算誤差」を示す要素が選択される。
【0127】
従って、制御部20は、ステップS235にて精度情報30bを参照し、クロソイド区間の各位置に関する要素として、「マッチング処理で特定される道路の精度」、「平均誤差」に対応付けられた「現地計測時の誤差」、「出典情報の誤差」、「情報入力時の誤差」、「情報表現形式による誤差」を選択する。この結果、制御部20は、選択された要素の精度情報30bに基づいてクロソイド区間の各位置の信頼度を特定する。
【0128】
一方、制御部20は、ステップS235にて精度情報30bを参照し、クロソイド区間の各位置における曲率半径に関する要素として、「車両が走行している走行車線の特定精度」、「マッチング処理で特定される道路の精度」、「平均誤差」に対応付けられた「現地計測時の誤差」、「出典情報の誤差」、「情報入力時の誤差」、「演算誤差」、「演算誤差」、「情報表現形式による誤差」を選択する。この結果、制御部20は、選択された要素の精度情報30bに基づいてクロソイド区間の各位置の曲率半径の信頼度を特定する。
【0129】
以上のようにして、クロソイド区間の各位置およびクロソイド区間の各位置における曲率半径についての信頼度が特定されると、両者の平均によって実行対象機能が減速制御である場合に実行対象プログラムで利用される情報の信頼度が特定される。そして、制御部20は、ステップS240,S245において当該信頼度に応じてフラグFnの値を設定する。
【0130】
一方、実行対象機能が減速タイミング通知である場合、ユーザーI/F47に対して制御信号を出力し、カーブ区間を快適に走行するための支援プログラムにおける減速制御と同様に減速度を特定し、減速の必要があるタイミングでアクセルをオフにすべきであることを案内する。このため、本例において実行対象プログラムで利用される情報はカーブ区間を快適に走行するための支援プログラムにおける減速制御と同様である。従って、減速制御を行う場合と比較すると、減速タイミング通知は、誤差に関して参照される要素が「平均誤差」である点のみが上述の減速制御と異なることになる。ステップS235における信頼度の演算やステップS240,S245における信頼度に対応するフラグFnの値の設定は、記述の処理と同様である。
【0131】
さらに、実行対象機能が注意喚起である場合、車両の前方にカーブ区間が存在することを一定曲率区間の曲率半径に基づいて特定し、ユーザーI/F47に対して制御信号を出力してカーブ区間が存在することを案内する。このため、本例において実行対象プログラムで利用される情報は一定曲率区間の曲率半径であり、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムにおいて実行対象機能が注意喚起である場合と同様の要素が選択されて信頼度が特定される。また、ステップS240,S245においては当該信頼度に応じてフラグFnの値が設定される。
【0132】
以上のようにして、一定曲率区間における横滑り防止支援プログラムとカーブ区間を快適に走行するための支援プログラムとにおける実行対象機能が特定され、各プログラムを実行すべきか否かを示すフラグFrが特定されると、制御部20は、ステップS120〜S130を経て優先度に基づいて実行対象プログラムを1個に特定する。そして、制御部20は、ステップS135により、特定された実行対象プログラムの実行対象機能を実行する。
【0133】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、信頼度を特定するための精度情報を実行対象機能に対応した要素に基づいて選択する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、実行対象プログラムは車両内に存在する制御部によって実行されて車両の走行支援を実現することができればよい。走行支援は、特定の理想状態を達成目標として運転者の運転を補助することによって実現され、実行対象プログラムが当該理想状態の達成を補助するための複数の機能を実行可能であればよい。また、走行支援は、実行対象プログラムで利用される情報の精度によって品質が変動する支援であればよい。従って、車両制御への介入、補助、警告、注意喚起等の案内など各種の走行支援を想定することができる。
【0134】
さらに、選択される実行対象機能は1個であっても良いし複数個であってもよい。例えば、大きい減速度であるほど減速度に対応した実行対象機能の個数が多くなるように構成してもよい。より具体的には、大きい減速度に対応した実行対象機能として減速制御と注意喚起との双方を実行するように構成し、小さい減速度に対応した実行対象機能として注意喚起のみを実行するように構成してもよい。また、実行対象機能は車両の状態および車両の周囲の状態に基づいて選択される構成であればよく、車両に作用する加速度の他、車両の車速や、車両の周囲の道路の形状等によって運転者が必要とする走行支援の程度が異なる場合に当該走行支援の程度に応じて選択される構成であっても良い。すなわち、車両の状態および車両の周囲の状態に応じて運転者が必要とする走行支援の程度を予め特定しておき、車両の状態および車両の周囲の状態と実行対象機能とを対応付けておけば、当該対応関係に基づいて実行対象機能を選択する構成としても良い。
【0135】
さらに、プログラムで利用される情報が車両の位置を示す情報を含む構成において、精度情報が車両の周囲の地物と車両との相対関係によって特定される車両の位置を示す情報の精度を示す情報を含むように構成してもよい。この構成によれば、例えば、横断歩道や道路、道路上の白線など車両の周囲の地物を特定し、当該地物と車両との相対関係が特定の関係である場合に制動や注意喚起を行う走行支援を行う際に利用する車両の位置を示す情報の信頼度を特定することが可能になる。
【0136】
また、プログラムで利用される情報が地図情報を含む構成において、精度情報が地物に関する値を示す地図情報の誤差を示す情報と当該値の更新頻度を示す情報とを含むように構成してもよい。この構成によれば、例えば、道路上に設定されたノードや形状補間点の位置、道路の曲率半径などの地物に関する値に基づいて制動タイミングや制動量を特定する走行支援を行う際に利用する車両の位置を示す情報の信頼度を特定することが可能になる。
【0137】
さらに、精度情報30bは、上述の構成以外にも種々の構成を採用可能である。例えば、上述の構成においては、「車両の位置を示す情報」の精度を示す要素として、実行対象プログラムで利用される情報の態様に直接的に対応した要素(例えば、地物から車両までの距離)を精度情報30bに含める構成としたが、「車両の位置を示す情報」の精度をセンサの精度によって表現する構成としても良い。例えば、GPS受信部と車速センサ42とジャイロセンサ43とによって車両の位置を特定する際の精度や加速度センサによって加速度を測定する際の精度を、「車両の位置を示す情報」の精度を示す要素に含める構成としても良い。
【0138】
さらに、上述の精度情報30bには、「地物から車両までの距離」の精度を示す要素と精度情報が含まれているが、当該精度情報は、地図情報30aに含まれない地物の位置を参照した走行支援を行う際に参照される。例えば、地図情報30aに開始位置や形状補間点等の詳細な情報が含まれていない細街路を初めて走行した場合にカメラ44で取得した画像に基づいて道路上の地物の位置を特定し、次回以降、当該地物の位置と車両との相対距離が所定の距離となった時点で走行支援を行うプログラムを想定する。そして、当該プログラムについての実行対象機能を選択し、当該プログラムを実行するか否かを判定する場合に、「地物から車両までの距離」の精度を示す要素と精度情報を利用すればよい。むろん、「車両の位置を示す情報」の精度は他にも各種の情報が想定し得る。例えば、車両における進行方向の位置を示す情報として、GPS受信部41の出力信号に基づいて特定される車両の位置を示す情報や車速センサ42の出力信号に基づいて特定される基準位置からの走行距離(観測パルス数)等についての精度を規定して精度情報30bに含める構成としても良い。
【0139】
さらに、上述の実施形態においては、安全性を高める効果が高いプログラムの優先度が高くなるように設定し、当該優先度に基づいて実行対象プログラムを1個に限定する構成としていたが、実行対象プログラムは他にも種々の指標に基づいて特定可能である。例えば、変速部、制動部など、プログラムによる制御対象毎に優先度を対応付けておき、当該優先度に従って実行対象プログラムを特定する構成としても良い。
【0140】
さらに、プログラムは、上述の実施形態における例の他にも種々のプログラムを採用可能である。例えば、制御部20によって変速部45に制御信号を出力して変速比を調整することによって減速や加速の支援を行うプログラムに本発明を適用しても良い。より具体的には、目標位置を車両前方の所定距離(例えば150m)の位置とし、最大横加速度を所定の加速度(例えば0.2G)とし、車両が当該車両の現在位置から前方の所定距離に到達した時点での車速が、最大横加速度0.2Gで一定車速の旋回を行うことが可能な車速となるようにカーブ区間において減速させる走行支援を想定する。当該走行支援において、当該減速を行うための減速度が大きい場合に変速部45によって変速比を変更し、減速度が小さい場合に変速タイミングを通知する構成とする。この構成において、実行対象機能に応じて要素を選択し、選択された要素の精度情報に基づいて信頼度を特定すれば、以上のような変速比を調整するプログラムに対して本発明を適用することが可能になる。
【0141】
さらに、信頼度を特定する際に、実行対象プログラムで利用される情報の重要度に応じて信頼度のそれぞれを重み付け加算し、得られた信頼度の和に基づいて実行対象機能を実行するか否かを決定する構成としても良い。すなわち、走行支援を行う際に複数の情報を利用する場合、当該情報の重要度は実行対象機能によって異なることが多い。例えば、カーブ区間における減速制御において、安全確保を目的とした減速と走行時の快適性確保を目的とした減速とを比較すると、双方とも減速度を決めるための情報を利用して減速制御が行われる。しかし、安全確保を目的とした減速においては制御目的が達成されなかった場合に運転に与える影響が大きく、快適性確保を目的とした減速においては制御目的が達成されなかった場合に運転に与える影響は小さい。従って、安全確保を目的とした減速においては減速度を決めるための情報(例えば曲率半径)の重要度が高く、快適性確保を目的とした減速においては減速度を決めるための情報の重要度は低い。そこで、実行対象プログラムで利用される情報の重要度に応じて信頼度を重み付け加算し、加算結果に基づいて走行支援を実行するか否かを決定すれば、実行対象プログラムで利用される情報の重要度に応じて走行支援を実行するか否かを決定することができる。
【0142】
さらに、上述の実施形態においては、制御部20にて実行対象機能を実行するか否かを決定するとともに、当該制御部20にて実行対象プログラムを実行して当該実行対象機能を実現していたが、実行対象プログラムは制御部20と異なる他の制御部によって実行されても良い。すなわち、実行対象プログラムは当該他の制御部によって実行される構成となっており、走行支援内容決定装置において特定された実行対象機能を示す情報を当該他の制御部に提供することにより、当該他の制御部によって実行対象プログラムを実行して実行対象機能が実現されるように構成する。この構成は、例えば、実行対象機能を決定する制御部20がナビゲーション装置10の制御部であり、実行対象プログラムであるブレーキ制御プログラムを他の制御部によって実行する構成等によって実現可能である。
【符号の説明】
【0143】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…走行支援内容決定プログラム、21a…機能選択部、21b…要素選択部、21c…信頼度特定部、21d…実行決定部、22…プログラム、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…精度情報、30c…プログラム情報、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…カメラ、45…変速部、46…制動部、47…ユーザーI/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムで利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を複数の要素毎に記録した記録媒体と、
実行するプログラムを実行対象プログラムとして特定し、当該実行対象プログラムによって実行可能な複数の機能から、車両の状態および前記車両の周囲の状態に基づいて、実行対象となる実行対象機能を選択する機能選択手段と、
前記実行対象機能に対応する要素を前記複数の要素から選択する要素選択手段と、
選択された要素の前記精度情報に基づいて、前記実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定する信頼度特定手段と、
特定された信頼度に応じて前記実行対象機能を実行するか否かを決定する実行決定手段と、
を備える走行支援内容決定装置。
【請求項2】
前記プログラムで利用される情報は、前記車両の位置を示す情報と地図情報とを含み、
前記精度情報は、
前記車両の周囲の地物と前記車両との相対関係によって特定される前記車両の位置を示す情報の精度を示す情報と、
地物に関する値を示す前記地図情報の誤差と更新頻度とを示す情報とを含む、
請求項1に記載の走行支援内容決定装置。
【請求項3】
前記機能選択手段は、前記車両の状態および前記車両の周囲の状態に基づいて前記車両に作用させる減速度を算出し、当該減速度の大きさに基づいて前記実行対象機能を選択する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の走行支援内容決定装置。
【請求項4】
前記複数の要素には、並列関係にある複数の要素が含まれ、
前記要素選択手段は、前記実行対象機能に応じて並列関係にある前記複数の要素のいずれかを選択する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の走行支援内容決定装置。
【請求項5】
前記並列関係にある前記複数の要素のそれぞれには細分化された複数のサブ要素が対応づけられており、
前記要素選択手段は、並列関係にある前記複数の要素から選択された要素に対応づけられた前記サブ要素から、前記実行対象プログラムで利用される情報の特定法に応じた前記サブ要素を選択する、
請求項4に記載の走行支援内容決定装置。
【請求項6】
実行するプログラムを実行対象プログラムとして特定し、当該実行対象プログラムによって実行可能な複数の機能から、車両の状態および前記車両の周囲の状態に基づいて、実行対象となる実行対象機能を選択する機能選択工程と、
プログラムで利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を複数の要素毎に記録した記録媒体を参照し、前記実行対象機能に対応する要素を前記複数の要素から選択する要素選択工程と、
選択された要素の前記精度情報を前記記録媒体から取得し、当該精度情報に基づいて、前記実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定する信頼度特定工程と、
特定された信頼度に応じて前記実行対象機能を実行するか否かを決定する実行決定工程と、
を備える走行支援内容決定方法。
【請求項7】
実行するプログラムを実行対象プログラムとして特定し、当該実行対象プログラムによって実行可能な複数の機能から、車両の状態および前記車両の周囲の状態に基づいて、実行対象となる実行対象機能を選択する機能選択機能と、
プログラムで利用される情報の信頼度を特定するための精度情報を複数の要素毎に記録した記録媒体を参照し、前記実行対象機能に対応する要素を前記複数の要素から選択する要素選択機能と、
選択された要素の前記精度情報を前記記録媒体から取得し、当該精度情報に基づいて、前記実行対象プログラムで利用される情報の信頼度を特定する信頼度特定機能と、
特定された信頼度に応じて前記実行対象機能を実行するか否かを決定する実行決定機能と、
をコンピュータに実現させる走行支援内容決定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−39683(P2011−39683A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184840(P2009−184840)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】