説明

走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラム

【課題】ユーザに快適な走行環境を提供することを可能とした走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】車両の走行予定経路を取得し(S2)、ユーザの操作に基づいて複数の事象候補の中から事象を選択するとともに事象の閾値及び出発希望時刻を入力し(S3〜S5)、走行予定経路に含まれる判定リンクの事象の状態を取得し(S7)、ユーザにより入力された出発希望時刻の範囲内であって、且つ走行予定経路に含まれる全ての判定リンクについてのユーザにより選択された事象の状態が、同じくユーザにより入力された閾値未満となる出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する(S8、S9)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が出発地を出発することを推奨する時刻を案内する走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行案内を行い、運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにしたナビゲーション装置が車両に搭載されていることが多い。ここで、ナビゲーション装置とは、GPS受信機などにより自車の現在位置を検出し、その現在位置に対応する地図データをDVD−ROMやHDDなどの記録媒体またはネットワークを通じて取得して液晶モニタに表示することが可能な装置である。更に、かかるナビゲーション装置には、所望する目的地を入力すると、自車位置から目的地までの最適経路を探索する経路探索機能を備えており、ディスプレイ画面に誘導経路を表示するとともに、交差点に接近した場合等には音声による案内をすることによって、運転者を所望の目的地まで確実に案内するようになっている。
【0003】
また、従来のナビゲーション装置では、目的地への到着希望時刻に基づいて、出発地を出発することを推奨する時刻を案内することも行われていた。例えば、特開2002−181553号公報(特許文献1)には、ユーザによって目的地と目的地への到着希望時刻が入力された場合に、現在位置から目的地までの経路を探索するとともに、入力された到着希望時刻に目的地へと到着するために出発すべき出発予定時刻を算出し、算出した出発予定時刻を案内する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−181553号公報(第2頁〜第4頁、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した特許文献1に記載された技術では、目的地への到着時刻を考慮した出発時刻を案内することができるが、車両走行時の道路区間の事象の状態については考慮していなかった。ここで、事象の状態としては、例えば渋滞、道路の冠水、積雪、路面凍結、視界不良などの状態があり、これらの事象の状態は車両の走行環境を大きく左右する。また、これらの道路区間の事象の状態は、時間経過によって変化する。従って、同じ道路区間を走行する場合でも走行する時刻によって事象の状態、即ち車両の走行環境は大きく変化する。
【0006】
そして、前記した特許文献1に記載された技術では、目的地までの経路において走行時に渋滞中の道路区間や道路が冠水している等の事象の状態が悪い道路区間が含まれる場合には、渋滞中の道路区間や冠水中の道路区間等を走行するのに必要な時間を考慮して、通常より早めの時刻を出発予定時刻として算出し、案内することは可能であるが、それぞれの道路区間が渋滞する時刻や冠水する時刻を回避して走行する為の出発予定時刻を案内することができなかった。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、目的地までの経路に含まれる道路区間の事象の状態を考慮することにより、目的地までの経路において渋滞する虞のある道路区間や道路が冠水する虞のある道路区間等が含まれる場合であっても、それぞれの道路区間が渋滞する時刻や冠水する時刻等の事象の状態が悪くなる時刻を回避して走行する為の出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することが可能であり、ユーザに快適な走行環境を提供することを可能とした走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る走行案内装置(1)は、出発地から目的地へと至る走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段(13)と、車両が前記出発地を出発する出発予定時刻を取得する出発予定時刻取得手段(13)と、前記車両が前記出発予定時刻に前記出発地を出発した場合において、前記走行予定経路に含まれる道路区間への到着予定時刻を区間毎に取得する到着予定時刻取得手段(13)と、前記到着予定時刻取得手段により取得された到着予定時刻における前記道路区間の事象の状態を区間毎に取得する事象状態取得手段(13)と、前記事象状態取得手段により取得した全ての前記道路区間の事象の状態が閾値未満の状態である場合に、前記出発予定時刻取得手段により取得した前記出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する案内手段(13)と、を有することを特徴とする。
ここで、「事象の状態」とは、時間変化に伴い状態が変化する道路上の事象の状態であり、例えば渋滞、道路の冠水、積雪、路面凍結、視界などの状態がある。
【0009】
また、請求項2に係る走行案内装置(1)は、請求項1に記載の走行案内装置であって、前記出発予定時刻取得手段(13)は、車両が前記出発地から出発する出発予定時刻を複数取得し、前記事象状態取得手段(13)は、到着予定時刻における前記道路区間の事象の状態を前記複数の出発予定時刻毎(13)に取得し、前記案内手段(13)は、前記出発予定時刻取得手段により取得された複数の出発予定時刻の内、前記事象状態取得手段により取得した全ての前記道路区間の事象の状態が閾値未満の状態となる出発予定時刻を特定する出発予定時刻特定手段(13)を備え、前記出発予定時刻特定手段により特定された出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る走行案内装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の走行案内装置であって、複数の事象候補から事象を選択する事象選択手段(13)を有し、前記事象状態取得手段(13)は、前記判定地点の前記事象選択手段により選択された事象の状態を取得することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る走行案内方法は、出発地から目的地へと至る走行予定経路を取得する走行予定経路取得ステップと、車両が前記出発地を出発する出発予定時刻を取得する出発予定時刻取得ステップと、前記車両が前記出発予定時刻に前記出発地を出発した場合において、前記走行予定経路に含まれる道路区間への到着予定時刻を区間毎に取得する到着予定時刻取得ステップと、前記到着予定時刻取得ステップにより取得された到着予定時刻における前記道路区間の事象の状態を区間毎に取得する事象状態取得ステップと、前記事象状態取得ステップにより取得した全ての前記道路区間の事象の状態が閾値未満の状態である場合に、前記出発予定時刻取得手段により取得した前記出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する案内ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
更に、請求項5に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、出発地から目的地へと至る走行予定経路を取得する走行予定経路取得機能と、車両が前記出発地を出発する出発予定時刻を取得する出発予定時刻取得機能と、前記車両が前記出発予定時刻に前記出発地を出発した場合において、前記走行予定経路に含まれる道路区間への到着予定時刻を区間毎に取得する到着予定時刻取得機能と、前記到着予定時刻取得機能により取得された到着予定時刻における前記道路区間の事象の状態を区間毎に取得する事象状態取得機能と、前記事象状態取得機能により取得した全ての前記道路区間の事象の状態が閾値未満の状態である場合に、前記出発予定時刻取得手段により取得した前記出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する案内機能と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を有する請求項1に係る走行案内装置では、目的地までの経路に含まれる道路区間の事象の状態を考慮することにより、目的地までの経路において渋滞する虞のある道路区間や道路が冠水する虞のある道路区間等が含まれる場合であっても、それぞれの道路区間が渋滞する時刻や冠水する時刻等の事象の状態が悪くなる時刻を回避して走行する為の出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することが可能となる。それにより、ユーザに快適な走行環境を提供することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に係る走行案内装置では、複数の出発候補時刻の中から、目的地までの経路に含まれる各道路区間の事象の状態が悪くなる時刻を回避して走行することができる出発予定時刻を選択できる。それにより、ユーザが希望する出発希望時刻の内で、ユーザに最も快適な走行環境を提供できる出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することが可能となる。
【0015】
また、請求項3に係る走行案内装置では、複数の事象候補の内から選択された事情の状態が悪くなる時刻を回避して目的地まで走行する為の出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することが可能となる。それにより、ユーザの要望に沿った快適な走行環境を提供することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に係る走行案内方法では、目的地までの経路に含まれる道路区間の事象の状態を考慮することにより、目的地までの経路において渋滞する虞のある道路区間や道路が冠水する虞のある道路区間等が含まれる場合であっても、それぞれの道路区間が渋滞する時刻や冠水する時刻等の事象の状態が悪くなる時刻を回避して走行する為の出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することが可能となる。それにより、ユーザに快適な走行環境を提供することが可能となる。
【0017】
更に、請求項5に係るコンピュータプログラムでは、目的地までの経路に含まれる道路区間の事象の状態を考慮することにより、目的地までの経路において渋滞する虞のある道路区間や道路が冠水する虞のある道路区間等が含まれる場合であっても、それぞれの道路区間が渋滞する時刻や冠水する時刻等の事象の状態が悪くなる時刻を回避して走行する為の出発予定時刻を推奨出発時刻としてコンピュータに案内させることが可能となる。それにより、ユーザに快適な走行環境を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】事象状態DBに記憶されるデータの一例を示した図である。
【図3】本実施形態に係る出発予定時刻案内処理プログラムのフローチャートである。
【図4】液晶ディスプレイに表示される事象回避出発時刻案内ボタン選択画面を示した図である。
【図5】液晶ディスプレイに表示される事象選択画面を示した図である。
【図6】液晶ディスプレイに表示される閾値入力画面を示した図である。
【図7】液晶ディスプレイに表示される希望出発時刻入力画面を示した図である。
【図8】車両が出発地から目的地までの走行予定経路を走行する際に特定される判定リンクの一例を示した図である。
【図9】本実施形態に係る推奨出発時刻特定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図10】本実施形態に係る閾値判定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図11】回避対象とする事象として『渋滞』が選択された場合の出発予定時刻案内処理プログラムによる推奨出発時刻の算出例を示した図である。
【図12】回避対象とする事象として『渋滞』が選択された場合の出発予定時刻案内処理プログラムによる推奨出発時刻の算出例を示した図である。
【図13】回避対象とする事象として『道路の冠水』が選択された場合の出発予定時刻案内処理プログラムによる推奨出発時刻の算出例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る走行案内装置をナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0020】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(走行予定経路取得手段、出発予定時刻取得手段、到着予定時刻取得手段、事象状態取得手段、案内手段、出発予定時刻特定手段、事象選択手段)13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して地図等の情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、交通情報センタやプローブセンタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、から構成されている。
【0021】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、地磁気センサ22、車速センサ23、ステアリングセンサ24、ジャイロセンサ25、高度計(図示せず)等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ23は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の車輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより車輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0022】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31、事象状態DB32、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0023】
ここで、地図情報DB31は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。
また、地図データは、具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、施設に関する施設データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。尚、一部のリンクに関するリンクデータには、車両の進行方向に関する情報も含まれる。例えば、中央分離帯を有する大型の道路では、車両の進行方向(上り、下り)毎に対応付けられた複数本のリンクから構成される。
【0024】
一方、事象状態DB32は、車両の走行予定経路に含まれるリンク(道路区間)の内、後述の閾値判定を行う対象となるリンク(以下、判定リンクという)毎の事象の状態及び該判定リンクに進入してから次回の判定リンクに進入するまでの旅行時間(以下、判定リンク間旅行時間という)が記憶される記憶部である。そして、事象状態DB32に記憶される判定リンク毎の事象の状態及び判定リンク間旅行時間は、後述のようにVICSセンタやプローブセンタから取得される。ここで、“事象の状態”とは、時間変化に伴い状態が変化する道路上の事象の状態であり、例えば渋滞、道路の冠水、積雪、路面凍結、視界などの状態がある。また、事象状態DB32には、現在時刻の事象の状態に加えて、推定される今後の事象の状態(例えば、現在時刻から3時間後まで10分経過毎の状態)についても記憶される。
そして、例えば渋滞の状態を特定する情報としては、判定リンク毎の渋滞度(『渋滞』、『混雑』、『渋滞無し』のいずれか)がVICSセンタやプローブセンタから取得され、事象状態DB32に記憶される。また、道路の冠水の状態を特定する情報としては、判定リンク毎の水位(○○cm)がVICSセンタやプローブセンタから取得され、事象状態DB32に記憶される。また、積雪の状態を特定する情報としては、判定リンク毎の積雪量(○○cm)がVICSセンタやプローブセンタから取得され、事象状態DB32に記憶される。また、路面凍結の状態を特定する情報としては、判定リンク毎の路面凍結の有無(『凍結あり』、『凍結なし』のいずれか)がVICSセンタやプローブセンタから取得され、事象状態DB32に記憶される。また、視界の状態を特定する情報としては、判定リンク毎の視認可能距離(○○m)がVICSセンタやプローブセンタから取得され、事象状態DB32に記憶される。
【0025】
例えば、図2は事象状態DB32に記憶される判定リンク毎の事象の状態の内、判定リンクの一つであるリンクAの特に渋滞の状態に関する情報を示した図である。
図2に示すように、事象状態DB32に記憶される判定リンクの事象の状態は、現在時刻からの経過時間毎に、その状態が記憶される。例えば、図2に示す例では現在時刻から10分経過毎の渋滞度(『渋滞』、『混雑』、『渋滞無し』のいずれか)が事象状態DB32に記憶される。
そして、ナビゲーションECU13は、事象状態DB32に記憶された判定リンク毎の事象の状態を用いて、リンクが渋滞する時刻や冠水する時刻等の事象の状態が悪くなる時刻を回避して走行する為の出発予定時刻を特定する。
【0026】
尚、事象状態DB32に記憶される判定リンク毎の事象の状態は、ナビゲーションECU13が算出する構成としても良い。例えば、渋滞度については、車両の過去の走行履歴(渋滞履歴)から算出することが可能である。また、道路の冠水の水位については、センタから取得した予想降水量や地図情報DB31から取得した地形情報等に基づいて算出することが可能である。また、積雪量や路面凍結の有無については、センタから取得した予想降雪量、予想気温、地図情報DB31から取得した地形情報、事故履歴等に基づいて算出することが可能である。また、視認可能距離については、センタから取得した天気予報、予想気温、地図情報DB31から取得した地形情報等に基づいて算出することが可能である。
【0027】
また、事象状態DB32に記憶される判定リンク毎の判定リンク間旅行時間についても、ナビゲーションECU13が算出する構成としても良い。例えば、次の判定リンクまでの経路を構成する各リンクの事象の状態(渋滞度、道路冠水の水位、積雪量、路面凍結の有無、視認可能距離)や各リンクの平均旅行時間等から算出することが可能である。
【0028】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの走行予定経路を設定する走行予定経路設定処理、走行予定経路に含まれる全ての判定リンクの事象の状態が閾値未満となる出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する出発予定時刻案内処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、出発予定時刻案内処理プログラム(図3、図9、図10参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0029】
操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、本実施形態では、目的地までの走行予定経路をナビゲーション装置1において設定した際に、回避対象とする事象(渋滞、道路の冠水、積雪、路面凍結、視界)を選択する為の選択手段、事象の状態の閾値及び出発予定時刻の範囲を入力する入力手段としても用いられる。
【0030】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの走行予定経路、走行予定経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、本実施形態では、目的地までの走行予定経路をナビゲーション装置1において設定した際に、回避対象とする事象(渋滞、道路の冠水、積雪、路面凍結、視界)の選択や、事象の状態の閾値及び出発希望時刻の範囲を入力する画面についても表示される。
【0031】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて走行予定経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0032】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB31の更新等が行われる。
【0033】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
更に、本実施形態に係る通信モジュール18は、目的地までの走行予定経路をナビゲーション装置1において設定した際に、VICSセンタやプローブセンタに対して設定された走行予定経路に関する情報を送信する。そして、送信した走行予定経路に対応する判定リンク毎の事象の状態及び判定リンク間旅行時間をVICSセンタやプローブセンタから受信する。
尚、判定リンク毎の事象の状態及び判定リンク間旅行時間については既に図2を用いて説明したので、説明は省略する。
【0034】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1において実行する出発予定時刻案内処理プログラムについて図3に基づき説明する。図3は本実施形態に係る出発予定時刻案内処理プログラムのフローチャートである。ここで、出発予定時刻案内処理プログラムはナビゲーション装置1において走行予定経路が設定された場合、又は操作部14においてユーザの所定の操作を受け付けた場合に実行され、ユーザの選択した事象(渋滞、道路の冠水、積雪、路面凍結、視界)の状態が閾値以上の状態となることを回避して走行予定経路を走行する為の出発予定時刻を推奨出発時刻として案内するプログラムである。尚、以下の図3、図9、図10にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーションECU13が備えているRAM42、ROM43等に記憶されており、CPU41により実行される。
【0035】
先ず、出発予定時刻案内処理プログラムでは、ステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41はナビゲーション装置1において車両の走行予定経路が設定されているか否か判定する。ここで、走行予定経路は、例えば、操作部14の操作により目的地が入力された場合において、経路探索の結果により設定された車両の現在位置から目的地までの経路がある。尚、経路探索に関しては既に公知であるのでその説明は省略する。
【0036】
そして、走行予定経路が設定されていると判定された場合(S1:YES)には、S2へと移行する。一方、走行予定経路が設定されていないと判定された場合(S1:NO)には、当該出発予定時刻案内処理プログラムを終了する。
【0037】
次に、S2でCPU41は、ナビゲーション装置1において設定されている走行予定経路を車両の走行予定経路として取得する。
【0038】
続いて、S3でCPU41は、液晶ディスプレイ15に対して事象選択画面、閾値入力画面、希望出発時刻入力画面を順に表示する。そして、液晶ディスプレイ15に表示された事象選択画面、閾値入力画面、希望出発時刻入力画面において、ユーザは回避対象とする事象(渋滞、道路の冠水、積雪、路面凍結、視界)の選択や、事象の状態の閾値及び出発希望時刻の範囲を入力する。
【0039】
ここで、図4〜図7は液晶ディスプレイ15に表示される事象回避出発時刻案内ボタン選択画面、事象選択画面、閾値入力画面、希望出発時刻入力画面を示した図である。
【0040】
先ず、図4に示すようにS3に移行すると液晶ディスプレイ15には事象回避出発時刻案内ボタン選択画面が表示される。そして、事象回避出発時刻案内ボタン選択画面では事象回避出発時刻案内ボタン51が配置される。
【0041】
その後、事象回避出発時刻案内ボタン51が押下されると、図5に示すように液晶ディスプレイ15には事象選択画面52が表示される。尚、事象選択画面52には、事象選択ボタン53〜56が表示される。ここで、事象選択ボタン53が押下されると、回避対象とする事象として「渋滞」が選択される。また、事象選択ボタン54が押下されると、回避対象とする事象として「道路の冠水」が選択される。また、事象選択ボタン55が押下されると、回避対象とする事象として「積雪、路面凍結」が選択される。また、事象選択ボタン56が押下されると、回避対象とする事象として「視界」が選択される。
尚、回避対象とする事象として複数の事象を選択可能に構成しても良い。
【0042】
そして、事象選択ボタン53〜56のいずれかが押下されると、次に、事象の状態の閾値を入力する閾値入力画面57が液晶ディスプレイ15に表示される。例えば、図6にはユーザが回避対象とする事象として「道路の冠水」が選択された場合の閾値入力画面57を示す。そして、閾値入力画面57に表示された閾値入力ボタン58を操作することによって、閾値が入力される。また、後述のようにCPU41は、走行予定経路中に含まれる全ての判定リンクの事象の状態が閾値入力画面57で入力された閾値未満となる出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する。例えば、道路の冠水が10cmであることが事象の状態の閾値として入力された場合には、走行予定経路中に含まれる全ての判定リンクの冠水が10cm未満となる出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する。
尚、ユーザが回避対象とする事象として「渋滞」が選択された場合には、閾値入力画面57において渋滞度(『渋滞』、『混雑』、『渋滞無し』のいずれか)を閾値として選択する構成とする。また、ユーザが回避対象とする事象として「積雪、路面凍結」が選択された場合には、閾値入力画面57において積雪量(○○cm)や路面凍結の有無(『凍結あり』、『凍結なし』のいずれか)を閾値として入力する構成とする。また、ユーザが回避対象とする事象として「視界」が選択された場合には、閾値入力画面57において視認可能距離(○○m)を閾値として入力する構成とする。
【0043】
続いて、事象の状態の閾値が入力されると、出発地から出発することを希望する時刻の範囲を入力する出発希望時刻入力画面59が液晶ディスプレイ15に表示される。図7には出発希望時刻入力画面59を示す。そして、出発希望時刻入力画面59に表示された時刻入力ボタン60を操作することによって、出発希望時刻の範囲が入力される。尚、本実施形態では入力可能な出発希望時刻は10分単位とする。また、時刻の範囲ではなく希望する出発時刻を複数個入力させる構成としても良い。そして、後述のようにCPU41は、入力された出発希望時刻の範囲内(具体的には、入力された出発希望時刻の範囲内に含まれる10分毎の時刻)で、走行予定経路中に含まれる全ての判定リンクの事象の状態が閾値入力画面57で入力された閾値未満となる出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する。
【0044】
尚、事象の状態の閾値は、閾値入力画面57を用いてユーザに入力させるのではなく、プローブ情報としてプローブセンタから取得する構成としても良い。ここで、プローブセンタが事象の状態の閾値を設定する場合には、リンク毎に事象の状態と車両の通行量とを比較し、車両が快適に走行することが可能であると判定した事象の状態の下限を閾値に設定することが望ましい。
【0045】
その後、S4においてCPU41は、液晶ディスプレイ15に表示された事象選択画面、閾値入力画面、希望出発時刻入力画面において、回避対象とする事象(渋滞、道路の冠水、積雪、路面凍結、視界)の選択、事象の状態の閾値及び出発希望時刻の範囲の入力がそれぞれ完了したか否か判定する。
【0046】
そして、回避対象とする事象の選択、事象の状態の閾値及び出発希望時刻の範囲の入力がそれぞれ完了したと判定された場合(S4:YES)には、S5へと移行する。それに対して、回避対象とする事象の選択、事象の状態の閾値及び出発希望時刻の範囲の入力が完了していないと判定された場合(S4:NO)には、完了するまで待機する。
【0047】
S5でCPU41は、事象選択画面において選択された事象、閾値入力画面において入力された事象の状態の閾値、希望出発時刻入力画面において入力された出発希望時刻の範囲をそれぞれ取得する。
【0048】
続いて、S6においてCPU41は、前記S2で取得された車両の走行予定経路に含まれる判定リンクを特定する。ここで、判定リンクは後述の閾値判定を行う対象となるリンクである。具体的には、(a)出発地を含むリンク、(b)交差点に接続されているリンク、(c)曲がり角に接続されているリンク、(d)過去の履歴から事象の状態の変化量や変化頻度が高いリンク(例えば、一週間以内に渋滞度が『渋滞無し』から『渋滞』へと所定回数以上変化しているリンク、1年内に道路の冠水が所定回数以上起きているリンク、1年以内に積雪量が10cm以上となることが所定回数以上あるリンク、1年以内に視認可能距離が50m以下となることが所定回数以上あるリンク等)である。
【0049】
例えば、図8は車両70が出発地71から目的地72までの走行予定経路73を走行する際に特定される判定リンクの一例を示した図である。図8に示す例では、出発地を含むリンクとしてリンクAが判定リンクに特定され、曲がり角に接続されているリンクとしてリンクBが判定リンクに特定され、交差点に接続されているリンクとしてリンクCが判定リンクに接続され、一週間以内に渋滞度が『渋滞無し』から『渋滞』へと所定回数以上変化しているリンクとしてリンクDが判定リンクに特定される。
尚、走行予定経路を構成する全てのリンクを判定リンクに特定しても良い。また、出発地から所定距離(例えば1km)ごとにあるリンクを判定リンクに特定しても良い。
【0050】
その後、S7においてCPU41は、前記S6で特定された判定リンクについてリンク毎に事象の状態及び該判定リンクに進入してから次回の判定リンクに進入するまでの旅行時間(判定リンク間旅行時間)を取得する。具体的には、VICSセンタやプローブセンタに対して前記S2で取得した車両の走行予定経路や前記S6で特定された判定リンクに関する情報を送信し、該当する判定リンクの事象の状態及び判定リンク間旅行時間を要求する。そして、要求に応じてVICSセンタやプローブセンタから配信された判定リンクの事象の状態及び判定リンク間旅行時間をリンク毎に取得する。尚、判定リンクの事象の状態については現在時刻の状態に加えて、推定される今後の事象の状態(例えば、現在時刻から3時間後まで10分経過毎の状態)についても取得する。また、事象の状態については、出発希望時刻の開始時刻から3時間後まで10分経過毎の状態を取得するように構成しても良い。
また、VICSセンタやプローブセンタは、現在の判定リンクの事象の状態、判定リンクの過去の事象の状態の履歴、地形等に基づいて今後の事象の状態を推定する。尚、前記S7で取得された判定リンク毎の事象の状態及び判定リンク間旅行時間については、事象状態DB32に記憶される。
【0051】
その後、S8においてCPU41は、後述の推奨出発時刻特定処理(図9)を実行する。尚、推奨出発時刻特定処理は、ユーザにより入力された出発希望時刻の範囲内であって、且つ走行予定経路に含まれる全ての判定リンクについてのユーザにより選択された事象の状態が、同じくユーザにより入力された閾値未満となる出発予定時刻を推奨出発時刻として特定する処理である。
【0052】
続いて、S9においてCPU41は、前記S8で特定された推奨出発時刻を案内する。例えば、前記S8において推奨出発時刻が現在時刻の10分後から20分後までの間に特定された場合には、「事象を回避できる出発時刻は現在時刻から10分後〜20分後の間です。」や「事象を回避できる出発時刻は×:××〜×:××です。」との文章を液晶ディスプレイ15に表示したり、同内容の音声をスピーカ16から出力する。
【0053】
次に、上記S8の推奨出発時刻特定処理のサブ処理について図9に基づき説明する。図9は推奨出発時刻特定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0054】
以下の、S11〜S14の処理は、ユーザにより入力された出発希望時刻の範囲に含まれる複数の時刻に対して実行される。具体的には、ユーザにより入力された出発希望時刻の範囲の開始時刻から順に所定時間n分(例えば10分)経過毎の時刻を出発予定時刻として処理対象とし、S11〜S14の処理を繰り返し実行する。そして、ユーザにより入力された出発希望時刻の範囲に含まれる全ての出発予定時刻に対する処理が完了した後に当該推奨出発時刻特定処理のサブ処理プログラムを終了する。
【0055】
従って、CPU41は、先ずRAM42から変数iを読み出し、i=0を初期値として入力する。
【0056】
その後、S11においてCPU41は、後述の閾値判定処理(図10)を実行する。尚、閾値判定処理は、処理対象となる出発予定時刻(出発希望時刻の範囲の開始時刻からi分後)に車両が出発した場合に、走行予定経路に含まれる各判定リンクの到達時における該リンクのユーザに選択された事象の状態が、ユーザに入力された閾値未満の状態であるか否かをリンク毎に判定する処理である。
【0057】
そして、S12においてCPU41は、前記S11の閾値判定処理の結果に基づいて、処理対象となる出発予定時刻に車両が出発した場合において、走行予定経路に含まれる全ての判定リンクの到達時におけるユーザに選択された事象の状態が、ユーザに入力された閾値未満の状態であるか否か判定する。
【0058】
その結果、処理対象となる出発予定時刻に車両が出発した場合において、走行予定経路に含まれる全ての判定リンクの到達時におけるユーザに選択された事象の状態が、ユーザに入力された閾値未満の状態であると判定された場合(S12:YES)、具体的にはRAM42から読み出した後述の閾値超過判定フラグ“f”が「0」の場合には、S13へと移行する。それに対して、処理対象となる出発予定時刻に車両が出発した場合において、走行予定経路に含まれるいずれかの判定リンクの到達時におけるユーザに選択された事象の状態が、ユーザに入力された閾値以上の状態にあると判定された場合(S12:NO)、具体的にはRAM42から読み出した後述の閾値超過判定フラグ“f”が「1」の場合には、S14へと移行する。
【0059】
S13においてCPU41は、現在処理対象である出発予定時刻を推奨出発時刻として特定し、RAM42に記憶する。尚、RAM42に記憶された出発予定時刻は、S9で推奨出発時刻として案内される。
【0060】
その後、S14においてCPU41は、現在処理対象である出発予定時刻を更新する。具体的には、変数iに対して所定時間n分(例えば10分)を加算する。その後、更新した出発予定時刻に対してS11以降の処理を実行する。
【0061】
尚、ユーザにより入力された出発希望時刻の範囲に含まれる全ての出発予定時刻に対する処理が完了した後には、当該推奨出発時刻特定処理のサブ処理プログラムを終了し、S9へと移行する。
【0062】
次に、上記S11の閾値判定処理のサブ処理について図10に基づき説明する。図10は閾値判定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0063】
以下の、S21〜S26の処理は、前記S6で特定された車両の走行予定経路に含まれる各判定リンクに対して実行される。具体的には、前記S6で特定された判定リンクの内、出発地に最も近い判定リンクから順に処理対象とし、S21〜S26の処理を繰り返し実行する。そして、前記S6で特定された全ての判定リンクに対する処理が完了した後、又は後述の閾値超過判定フラグ“f”が「1」となった時点で当該閾値判定処理のサブ処理プログラムを終了する。
【0064】
従って、CPU41は、先ずRAM42から変数j、kを読み出し、それぞれ初期値であるj=1、k=iを代入する。また、RAM42から閾値超過判定フラグ“f”を読み出して「0」を代入する(フラグをOFFする)。尚、変数jは現在処理対象にある判定リンクを識別する値であり、また、変数kは出発希望時刻の範囲の開始時刻からi分後に車両が出発した場合において、出発希望時刻の範囲の開始時刻から現在処理対象である判定リンクに到達するまでの時間を示す値である。また、閾値超過判定フラグ“f”は、走行予定経路に含まれるいずれかの判定リンクの到達時におけるユーザに選択された事象の状態が、ユーザに入力された閾値以上の状態にあるか否かを示すフラグである。
【0065】
その後、S21においてCPU41は、事象状態DB32に記憶された判定リンク毎の事象の状態の内から、処理対象となる判定リンクの到着予定時刻(即ち、出発希望時刻の範囲の開始時刻からk分後)のユーザに選択された事象の状態を取得する。
【0066】
続いて、S22においてCPU41は、前記S21で取得した事象の状態がユーザに入力された閾値未満であるか否か判定する。
【0067】
そして、前記S21で取得した事象の状態がユーザに入力された閾値以上の状態であると判定された場合(S22:NO)には、S23へと移行する。S23においてCPU41は、出発希望時刻の範囲の開始時刻からi分後に車両が出発した場合において、走行予定経路に含まれるいずれかの判定リンクの到達時におけるユーザに選択された事象の状態が、ユーザに入力された閾値以上の状態にあると判定し、RAM42から読み出した閾値超過判定フラグ“f”に「1」を代入する(フラグをONする)。その後、当該閾値判定処理のサブ処理プログラムを終了し、S12へと移行する。
【0068】
一方、前記S21で取得した事象の状態がユーザに入力された閾値未満であると判定された場合(S22:YES)には、S24へと移行する。S24においてCPU41は、事象状態DB32に記憶された判定リンク間旅行時間から、現在処理対象であるj番目の判定リンクから次の処理対象となるj+1番目の判定リンクまでの判定リンク間旅行時間を取得する。
【0069】
続いて、S25においてCPU41は、RAM42から変数kを読み出し、前記S24で取得した判定リンク間旅行時間を加算する。その結果、次の処理対象となるj+1番目の判定リンクへの到着予定時刻が算出される。
【0070】
その後、S26においてCPU41は、現在処理対象である判定リンクを更新する。具体的には、現在処理対象の判定リンクの次に出発地に近い判定リンクを新たな処理対象の判定リンクに設定する。その後、更新した判定リンクに対してS21以降の処理を実行する。
【0071】
尚、前記S6で特定された車両の走行予定経路に含まれる全ての判定リンクに対して処理が完了した後には、当該閾値判定処理のサブ処理プログラムを終了し、S12へと移行する。
【0072】
ここで、図11及び図12は図8に示す走行予定経路73を車両70が走行する場合において、ユーザにより回避対象とする事象として『渋滞』が選択され、閾値として『渋滞』が入力され、出発希望時刻の範囲として現在時刻から0分後〜30分後の時刻が入力された場合に、上記出発予定時刻案内処理プログラムによる推奨出発時刻の算出例を示した図である。
【0073】
例えば、ユーザによって入力された出発希望時刻の範囲の開始時刻に出発地を出発した場合には、判定リンクAの到達時(即ち、現在時刻)の渋滞度は『渋滞無し』と推定され、判定リンクBの到着時(開始時刻から10分経過後)の渋滞度は『渋滞無し』と推定され、判定リンクCの到着時(開始時刻から20分経過後)の渋滞度は『渋滞』と推定され、判定リンクDの到着時(開始時刻から50分経過後)の渋滞度は『混雑』と推定される。従って、出発希望時刻の範囲の開始時刻に出発地を出発すると、判定リンクCの走行時において判定リンクCの事象の状態が閾値以上となるので、開始時刻は推奨出発時刻として選択されない。
また、開始時刻から10分後に出発地を出発した場合には、判定リンクAの到達時(開始時刻から10分経過後)の渋滞度は『渋滞無し』と推定され、判定リンクBの到着時(開始時刻から20分経過後)の渋滞度は『混雑』と推定され、判定リンクCの到着時(開始時刻から40分経過後)の渋滞度は『混雑』と推定され、判定リンクDの到着時(開始時刻から60分経過後)の渋滞度は『混雑』と推定される。従って、出発希望時刻の範囲の開始時刻から10分後に出発地を出発すると、全ての判定リンクA〜Dの走行時において各判定リンクの事象の状態が閾値未満となるので、開始時刻から10分後は推奨出発時刻として選択される。
【0074】
以上の処理を出発希望時刻の範囲の開始時刻から20分後に出発地を出発した場合及び開始時刻から30分後に出発地を出発した場合についても繰り返し行う。
その結果、図11及び図12に示す例では、開始時刻(現在時刻)から10分後〜20分後の時刻が推奨出発時刻として案内される。
【0075】
また、図13は図8に示す走行予定経路73を車両70が走行する場合において、ユーザにより回避対象とする事象として『道路の冠水』が選択され、閾値として『60cm』が入力され、出発希望時刻の範囲として現在時刻から0分後〜30分後の時刻が入力された場合に、上記出発予定時刻案内処理プログラムによる推奨出発時刻の算出例を示した図である。
【0076】
例えば、ユーザによって入力された出発希望時刻の範囲の開始時刻に出発地を出発した場合には、判定リンクAの到達時(即ち、開始時刻)の水位は『10cm』と推定され、判定リンクBの到着時(開始時刻から10分経過後)の水位は『20cm』と推定され、判定リンクCの到着時(開始時刻から20分経過後)の水位は『30cm』と推定され、判定リンクDの到着時(開始時刻から40分経過後)の水位は『40cm』と推定される。従って、出発希望時刻の範囲の開始時刻から0分後に出発地を出発すると、全ての判定リンクA〜Dの走行時において各判定リンクの事象の状態が閾値未満となるので、開始時刻は推奨出発時刻として選択される。
また、開始時刻から20分後に出発地を出発した場合には、判定リンクAの到達時(開始時刻から20分経過後)の水位は『30cm』と推定され、判定リンクBの到着時(開始時刻から30分経過後)の水位は『40cm』と推定され、判定リンクCの到着時(開始時刻から40分経過後)の水位は『70cm』と推定され、判定リンクDの到着時(開始時刻から60分経過後)の水位は『40cm』と推定さる。従って、出発希望時刻の範囲の開始時刻から20分後に出発地を出発すると、判定リンクCの走行時において判定リンクCの事象の状態が閾値以上となるので、開始時刻から20分後は推奨出発時刻として選択されない。
【0077】
以上の処理を出発希望時刻の範囲の開始時刻から10分後に出発地を出発した場合及び開始時刻から30分後に出発地を出発した場合についても繰り返し行う。
その結果、図13に示す例では、開始時刻(現在時刻)から0分後〜10分後の時刻が推奨出発時刻として案内される。
【0078】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による走行案内方法及びナビゲーション装置1のナビゲーションECU13により実行されるコンピュータプログラムでは、車両の走行予定経路を取得し(S2)、ユーザの操作に基づいて複数の事象候補の中から事象を選択するとともに事象の閾値及び出発希望時刻を入力し(S3〜S5)、走行予定経路に含まれる判定リンクの事象の状態を取得し(S7)、ユーザにより入力された出発希望時刻の範囲内であって、且つ走行予定経路に含まれる全ての判定リンクについてのユーザにより選択された事象の状態が、同じくユーザにより入力された閾値未満となる出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する(S8、S9)ので、目的地までの経路において渋滞する虞のある道路区間や道路が冠水する虞のある道路区間等が含まれる場合であっても、それぞれの道路区間が渋滞する時刻や冠水する時刻等の事象の状態が悪くなる時刻を回避して走行する為の出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することが可能となる。それにより、ユーザに快適な走行環境を提供することが可能となる。
また、複数の出発候補時刻の中から、目的地までの経路に含まれる各道路区間の事象の状態が悪くなる時刻を回避して走行することができる出発予定時刻を選択できる(S13)ので、ユーザが希望する出発希望時刻の内で、ユーザに最も快適な走行環境を提供できる出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することが可能となる。
また、複数の事象候補の内からユーザにより選択された事情の状態が悪くなる時刻を回避して目的地まで走行する為の出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することができるので、ユーザの要望に沿った快適な走行環境を提供することが可能となる。
【0079】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では図5に示す事象選択画面52において、複数の事象候補の内から回避対象とする事象をいずれか一つユーザに選択させる構成としているが、複数の事象を選択させる構成としても良い。また、現在の天候やリンクの状況からナビゲーションECU13が選択する構成としても良い。更に、自動的に全ての事象候補を回避対象として設定する構成としても良い。
【0080】
また、本実施形態では図7に示す出発希望時刻入力画面59において、ユーザに希望の出発時刻の範囲を入力させる構成としているが、希望の到着時刻の範囲を入力させる構成としても良い。そして、ナビゲーションECU13は、希望の到着時刻の範囲が入力された場合には、入力された範囲内に目的地に到着する条件を満たす出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する。
【0081】
また、本実施形態では走行予定経路を設定する度に事象の選択や、閾値の入力、出発希望時刻の範囲の入力(S3〜S5)を実行しているが、予め走行予定経路の設定前にナビゲーション装置1においてそれらの選択や値の入力を行わせ、その選択結果や入力値を用いてS6以降の処理を実行することとしても良い。それにより、S3〜S5の処理を省略することが可能となる。
【0082】
また、出発予定時刻案内処理プログラム(図3)を実行した結果、ユーザにより入力された出発希望時刻の範囲内であって、且つ走行予定経路に含まれる全ての判定リンクについてのユーザにより選択された事象の状態が、同じくユーザにより入力された閾値未満となる出発予定時刻が存在しないと判定された場合には、目的地までの別ルートを探索しても良い。そして、新たに探索された別ルートを走行予定経路として再度出発予定時刻案内処理プログラムを実行しても良い。また、複数の走行予定経路を対象として出発予定時刻案内処理プログラムを実行することも可能である。
【0083】
また、ナビゲーション装置1と携帯電話機等の携帯端末とを通信可能に構成し、前記S8で特定された推奨出発時刻をユーザの携帯端末に送信するように構成しても良い。また、出発予定時刻案内処理プログラム(図3)は、車両の駐車中においてナビゲーションECU13が車両周辺の道路が冠水する虞があると判定した場合に実行する構成としても良い。更に、その際の車両の走行予定経路は、車両の現在位置から指定の避難地域までの経路とすることが望ましい。また、回避対象とする事象としては『道路の冠水』をナビゲーションECU13が選択する構成とする。
【符号の説明】
【0084】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
31 地図情報DB
41 CPU
42 RAM
43 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地へと至る走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、
車両が前記出発地を出発する出発予定時刻を取得する出発予定時刻取得手段と、
前記車両が前記出発予定時刻に前記出発地を出発した場合において、前記走行予定経路に含まれる道路区間への到着予定時刻を区間毎に取得する到着予定時刻取得手段と、
前記到着予定時刻取得手段により取得された到着予定時刻における前記道路区間の事象の状態を区間毎に取得する事象状態取得手段と、
前記事象状態取得手段により取得した全ての前記道路区間の事象の状態が閾値未満の状態である場合に、前記出発予定時刻取得手段により取得した前記出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する案内手段と、を有することを特徴とする走行案内装置。
【請求項2】
前記出発予定時刻取得手段は、車両が前記出発地から出発する出発予定時刻を複数取得し、
前記事象状態取得手段は、到着予定時刻における前記道路区間の事象の状態を前記複数の出発予定時刻毎に取得し、
前記案内手段は、
前記出発予定時刻取得手段により取得された複数の出発予定時刻の内、前記事象状態取得手段により取得した全ての前記道路区間の事象の状態が閾値未満の状態となる出発予定時刻を特定する出発予定時刻特定手段を備え、
前記出発予定時刻特定手段により特定された出発予定時刻を推奨出発時刻として案内することを特徴とする請求項1に記載の走行案内装置。
【請求項3】
複数の事象候補から事象を選択する事象選択手段を有し、
前記事象状態取得手段は、前記判定地点の前記事象選択手段により選択された事象の状態を取得することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行案内装置。
【請求項4】
出発地から目的地へと至る走行予定経路を取得する走行予定経路取得ステップと、
車両が前記出発地を出発する出発予定時刻を取得する出発予定時刻取得ステップと、
前記車両が前記出発予定時刻に前記出発地を出発した場合において、前記走行予定経路に含まれる道路区間への到着予定時刻を区間毎に取得する到着予定時刻取得ステップと、
前記到着予定時刻取得ステップにより取得された到着予定時刻における前記道路区間の事象の状態を区間毎に取得する事象状態取得ステップと、
前記事象状態取得ステップにより取得した全ての前記道路区間の事象の状態が閾値未満の状態である場合に、前記出発予定時刻取得手段により取得した前記出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する案内ステップと、を有することを特徴とする走行案内方法。
【請求項5】
コンピュータに搭載され、
出発地から目的地へと至る走行予定経路を取得する走行予定経路取得機能と、
車両が前記出発地を出発する出発予定時刻を取得する出発予定時刻取得機能と、
前記車両が前記出発予定時刻に前記出発地を出発した場合において、前記走行予定経路に含まれる道路区間への到着予定時刻を区間毎に取得する到着予定時刻取得機能と、
前記到着予定時刻取得機能により取得された到着予定時刻における前記道路区間の事象の状態を区間毎に取得する事象状態取得機能と、
前記事象状態取得機能により取得した全ての前記道路区間の事象の状態が閾値未満の状態である場合に、前記出発予定時刻取得手段により取得した前記出発予定時刻を推奨出発時刻として案内する案内機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−164419(P2010−164419A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6756(P2009−6756)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】