説明

走行管理システム、サーバ装置及び端末装置

【課題】それぞれが独立して走行している利用者間で、走行体験をリアルタイムで共有するためのシステムを提供する。
【解決手段】システムは、サーバ装置と複数の端末装置とを含み、各端末装置は、走行距離及び走行速度を計測して、計測時刻、走行距離及び走行速度を含む走行情報をサーバ装置に送信し、サーバ装置は、複数の端末装置から受信する走行情報を管理し、各端末装置に、走行距離の差が所定値未満の端末装置の走行情報を送信し、端末装置は、サーバ装置から取得する他の端末装置の走行情報と、自装置の走行情報に基づき、他の利用者に追い抜かれる時刻又は他の利用者を追い抜く時刻を計算し、他の利用者を追い抜くこと又は他の利用者に追い抜かれることを、前記計算した時刻に又は前記計算した時刻の所定時間前に自装置の利用者に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の利用者の走行情報を管理し、加工し、配信する走行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の端末装置に搭載されているセンサ機能を利用して、個々の利用者の走行情報をサーバ装置で収集し、各利用者に配信する構成が開示され、また、実際に使用されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1、参照。)。
【0003】
特許文献1によると、各ランナーにGPS端末を取付け、サーバ装置は、各GPS端末から取得する位置情報に基づきランナーの位置、順位、タイムを含むレース情報を生成し、生成したレース情報をあらかじめ登録した利用者の携帯電話にプッシュ配信している。また、非特許文献1に記載の構成によれば、各利用者の携帯端末は、搭載されているGPS端末等を用いて現在位置及び走行距離を記録してサーバ装置に送信し、サーバ装置は、各携帯端末から収集する情報に基づき、現在、走っている利用者数と全利用者の走行距離の合計値を計算して各利用者に配信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−271611号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“au Smart Sports Run&Walk”、[online]、KDDI株式会社、[平成20年12月12日検索]、インターネット<URL:http://run.auone.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成は、マラソン等のレースにおいて、沿道の観戦者にレース情報を提供するものであり、地理的に広範囲に散らばり、それぞれが、独立してジョギング等を行う利用者に対して、他の利用者との走行体験を共有させるものではない。また、非特許文献2に記載の構成は、現在走行している利用者数及び全利用者の走行距離の合計値を各利用者に配信するものであるが、他の利用者と走行体験をリアルタイムで共有するといった臨場感を提供するものではない。
【0007】
したがって、本発明は、それぞれが独立して走行している利用者間で、走行体験をリアルタイムで共有するためのシステム、サーバ装置及び端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における端末装置によれば、
走行距離及び走行速度を取得する手段と、走行距離及び走行速度を取得した時刻、該時刻における走行距離及び走行速度を含む走行情報をサーバ装置に送信する手段と、サーバ装置から取得する他の端末装置の利用者の走行情報と、自装置の走行情報に基づき、他の利用者に追い抜かれる時刻又は他の利用者を追い抜く時刻を計算する手段と、他の利用者を追い抜くこと又は他の利用者に追い抜かれることを、前記計算した時刻に又は前記計算した時刻の所定時間前に自装置の利用者に通知する手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明におけるサーバ装置によれば、
複数の端末装置から受信する、時刻、該時刻における走行距離及び走行速度を含む走行情報を管理する手段と、各端末装置に、走行距離の差が所定値未満の端末装置の走行情報を送信する手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明のおけるシステムによれば、
上記サーバ装置と、複数の上記端末装置とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
各利用者は、それぞれが独立して走行しているが、追い抜く又は追い抜かれるといった走行体験をリアルタイムで共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるシステムの構成図である。
【図2】本発明による端末装置の構成図である。
【図3】本発明によるサーバ装置の構成図である。
【図4】走行情報管理部の管理データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明によるシステムの構成図である。図1に示す様に、本発明によるシステムは、複数の端末装置1と、ネットワーク2と、サーバ装置3とを備えている。端末装置1は、例えば、移動通信網規格に準拠した無線チャネルによりネットワーク2との間に無線リンクを確立して、他の端末装置1やサーバ装置3等、ネットワーク2と接続する他の装置と通信する機能を備えている。
【0015】
図2は、本発明による端末装置1の構成図であり、図3は、本発明によるサーバ装置の構成図である。図2に示す様に、端末装置1は、測定部11と、送受信部12と、推定部13と、比較部14と、通知部15とを備えている。また、図3に示す様に、サーバ装置3は、送受信部31と、走行情報管理部32と、配信データ判定部33とを備えている。
【0016】
測定部11は、現在位置又は走行速度を取得する機能を有しており、現在位置の変化又は走行速度から、利用者の走行開始からの走行距離及び現在の走行速度を求め、求めた時刻である計測時刻と、この計測時刻における走行速度及び走行距離を、走行情報として周期的に記録する。なお、現在位置の取得又は走行速度の取得には、GPS端末や、加速度センサを使用することができ、走行開始は利用者が端末装置1に入力を行うことにより端末装置1は認識する。また、送受信部12は、記録した最新の走行情報を、利用者の識別子と共に、周期的な時間間隔又は非周期的な時間間隔にてサーバ装置3に送信する。ここで、周期的な時間間隔は、例えば、走行情報を記録する度に送信する様な場合であり、非周期的な時間間隔とは、例えが、走行距離が所定の距離の整数倍に達する度に送信する様な場合を意味している。
【0017】
サーバ装置3の送受信部31は、各端末装置1から受信する走行情報と利用者の識別子を走行情報管理部32に出力する。走行情報管理部32は、各利用者の最新の走行情報を管理データとして管理しており、送受信部31から利用者の識別子及び走行情報を取得した場合、利用者識別子で特定される利用者の走行情報を更新する。図4は、走行情報管理部32の管理データを示す図である。図4によると、端末装置M01を使用しており識別子がU0035である利用者の最新の走行情報は、計測時刻が18時50分10秒であり、走行距離が2200m、走行速度が5.5m/sであることが記録されている。
【0018】
また、端末装置から走行情報を受信した場合、配信データ判定部33は、走行情報を送信した端末装置の最新の走行距離と、その走行距離の差が閾値以下又は未満の他の利用者を管理データから抽出し、抽出した利用者の走行情報を、その利用者の識別子と共に、走行情報を送信した端末装置に送受信部31経由で送信する。例えば、閾値を200mとし、図4の端末装置M01から最新の走行情報を受信した場合、配信データ判定部33は、走行距離が2000m〜2400mの範囲である端末装置M03、M04及びM05を抽出し、これら抽出した端末装置の走行情報を、それぞれ、これら端末装置の利用者の識別子と共に端末装置M01に送信する。
【0019】
サーバ装置から他の端末装置の走行情報及び利用者識別子を受信した端末装置は、受信したデータを推定部13に出力する。推定部13は、サーバ装置から受信した他の端末装置の走行距離と、走行速度及び計測時刻と現在の時刻の差に基づき、受信した時刻における各端末装置の利用者の走行距離を推定する。例えば、上述した様に、端末装置M01が、図4に示す端末装置M03、M04、M05の走行情報を18時50分12秒に受信した場合、端末装置M03の走行距離を2207m、端末装置M04の走行距離を2321m、端末装置M05の走行距離を2212mと推定する。また、現在の自装置の走行距離を最新の走行状態に基づき2211mと推定する。なお、自装置の走行距離に関して最新の実測値があればそれを使用しても良い。
【0020】
比較部14は、推定部13が推定した現在時刻における各端末装置の走行距離と、サーバ装置から受信した走行情報に含まれる走行速度と自装置の走行速度の差から、他の端末装置の利用者を追い抜く時刻、或いは、他の端末装置の利用者に追い抜かれる時刻を計算する。例えば、上述した様に、端末装置M01の推定走行距離から端末装置M03の推定走行距離を引いた値は4mであり、端末装置M03の速度から端末装置M01の速度を引いた値は0.5m/sであるため、端末装置M01の利用者は、8秒後に端末装置M3の利用者に追い抜かれると判定する。同様に、端末装置M01の利用者は、5秒後に端末装置M05の利用者を追い抜き、20秒後に端末装置M04の利用者を追い抜くと判定する。
【0021】
通知部15は、比較部14が求めた時刻又は時刻の前に、追い抜き又は追い抜かれることに対応する音を鳴らすことで、端末装置の利用者に他の利用者との相対的な走行状況を通知する。つまり、例えば、上述した例においては、18時50分17秒に端末装置M05の利用者を追い抜くことを、18時50分20秒に端末装置M03の利用者に追い抜かれることを、18時50分32秒に端末装置M04の利用者を追い抜くことを音で通知する。さらに、ディスプレイ等に追い抜き又は追い抜かれる利用者の識別子や、走行速度を表示しても良い。また、追い抜き又は追い抜かれることに対応する音に代えて、又は、加えて、追い抜き又は追い抜かれる利用者との走行速度差等を音声にて通知する形態であっても良い。
【0022】
以上の処理により、各利用者は、それぞれが独立して走行しているが、走行体験をリアルタイムで共有することができる。なお、上述した実施形態においては、端末装置1が最新の走行情報を送信したときに、サーバ装置3は、走行距離差が閾値以内又は未満の他の利用者の走行情報を、走行情報を送信した端末装置1に送信していたが、端末装置1による最新の走行情報の送信にかかわらず、定期的に配信する形態であっても良い。さらに、走行距離差が閾値以内又は未満の全利用者の走行情報を配信するのではなく、各端末装置1の利用者をグループ分けし、サーバ装置の管理データにグループを示すグループ識別子を含め、走行距離差が閾値以内又は未満であり、かつ、同一グループの利用者の走行情報のみを配信する形態であっても良い。
【0023】
なお、本発明によるサーバ装置3は、コンピュータを図3の各部として機能させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。更に、本発明は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 端末装置
11 測定部
12 送受信部
13 推定部
14 比較部
15 通知部
2 ネットワーク
3 サーバ装置
31 送受信部
32 走行情報管理部
33 配信データ判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行距離及び走行速度を取得する手段と、
走行距離及び走行速度を取得した時刻、該時刻における走行距離及び走行速度を含む走行情報をサーバ装置に送信する手段と、
サーバ装置から取得する他の端末装置の利用者の走行情報と、自装置の走行情報に基づき、他の利用者に追い抜かれる時刻又は他の利用者を追い抜く時刻を計算する手段と、
他の利用者を追い抜くこと又は他の利用者に追い抜かれることを、前記計算した時刻に又は前記計算した時刻の所定時間前に自装置の利用者に通知する手段と、
を備えている端末装置。
【請求項2】
複数の端末装置から受信する、時刻、該時刻における走行距離及び走行速度を含む走行情報を管理する手段と、
各端末装置に、走行距離の差が所定値未満の端末装置の走行情報を送信する手段と、
を備えているサーバ装置。
【請求項3】
サーバ装置と、複数の端末装置とを含むシステムであって、
各端末装置は、
走行距離及び走行速度を取得する手段と、
走行距離及び走行速度を取得した時刻、該時刻における走行距離及び走行速度を含む走行情報をサーバ装置に送信する手段と、
サーバ装置から取得する他の端末装置の利用者の走行情報と、自装置の走行情報に基づき、他の利用者に追い抜かれる時刻又は他の利用者を追い抜く時刻を計算する手段と、
他の利用者を追い抜くこと又は他の利用者に追い抜かれることを、前記計算した時刻に又は前記計算した時刻の所定時間前に自装置の利用者に通知する手段と、
を備えており、
サーバ装置は、
複数の端末装置から受信する前記走行情報を管理する手段と、
各端末装置に、走行距離の差が所定値未満の端末装置の走行情報を送信する手段と、
を備えているシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−166949(P2010−166949A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9693(P2009−9693)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)