説明

走行装置及びその制御方法

【課題】 簡単な手段で旋回走行時にも安定な車両の制御を行う。
【解決手段】 ロータ角度検出部を有する右車輪駆動モータ17、左車輪駆動モータ18はそれぞれ駆動回路19、20を介して演算装置21に接続される。またバッテリー16からの電力が演算装置21及び駆動回路19、20に供給されると共に、駆動回路19、20への電力供給路には非常停止スイッチ25が設けられる。さらに、演算装置21には搬送装置の姿勢状態(ジャイロによる角速度検出軸ピッチ、ヨー、ロール、加速度センサーによる加速度検出軸X、Y、Z)を検出する姿勢検出センサーユニット22、ハンドル角度検出センサー23、旋回操作レバー24が接続される。そしてこれらの信号から、演算装置21は所定の走行状態を維持するための信号を算出して駆動回路19、20に出力し、右車輪駆動モータ17、左車輪駆動モータ18を介して車輪を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば同一軸心線上に配置された2個の車輪を備えた同軸二輪車に適用して好適な走行装置及びその制御方法に関する。詳しくは、旋回走行時の車体の傾きを求めて、走行装置の制御が良好に行われるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
例えば人間を搭乗させて二輪で走行する乗り物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6288505号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、人間を搭乗させて二輪で走行する乗り物としては、上記の特許文献1に記載のような装置が提案されている。このような装置において、車両を旋回走行させようとする場合には、車両の全体を旋回走行しようとする方向に傾けて、その傾きをセンサーによって検出し、その検出値に基づいて車両が旋回走行するように制御が行われる。
【0005】
ところが、上述の車両の傾きを、例えばピッチ傾斜角を角速度センサーの積分を用いて計測している場合には、旋回走行によるヨーレートがピッチ角速度に混入し、このままでは正しいピッチ角が測定できなくなる。そして、旋回面に対して傾いたピッチ角速度センサーでは正しいピッチ角度を測定することができないため、平行2輪車のバランスを保持できなくなってしまう恐れがある。
【0006】
これに対して従来の技術では、正しいピッチ角を測定するにはピッチ角を測定する角速度センサーを旋回面に対して精確に垂直に取り付けなければいけないため、車体の設計に制約が生じる。また、平行2輪車においてはピッチ軸の傾きを利用してバランスを取るため、ロール軸の角速度センサーを旋回面に対して常に垂直に維持することが不可能であり、ロール軸の傾斜角を角速度センサーによって計測することが原理上不可能となる。
【0007】
この出願はこのような点に鑑みて成されたものであって、解決しようとする問題点は、従来の技術では、ピッチ角を測定する角速度センサーを旋回面に対して精確に垂直に取り付けなければいけないために車体の設計に制約が生じ、また、ロール軸の傾斜角を角速度センサーによって計測することが事実上できなかったというものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明においては、ハンドルの傾斜角と装置の緒元に基づいて旋回面と車体の成す角度を求めるようにしたものであって、こうして求められた旋回面と車体の成す角度を用いることによって、旋回走行時にも安定な車両の制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、それぞれが独立に駆動される2つの車輪が平行に設けられ、2つの車輪の間で前後の安定を保つように制御されて走行される走行装置であって、運転者の搭乗するステッププレートから植立されたハンドルを傾斜させることにより旋回運動を行わせている場合に、ハンドルの傾斜角と装置の緒元に基づいて旋回面と車体の成す角度を求める手段を有することにより、旋回走行時にも安定な車両の制御を行うことができるものである。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、走行の制御を行うための少なくともピッチ角速度センサーを有している場合に、旋回面と車体の成す角度と旋回速度とからピッチ角速度センサーに混入するヨーレートを求め、ピッチ角速度センサーで計測されるピッチ角度を較正する手段を設けることにより、較正されたピッチ角度を用いて良好な車両の制御を行うことができるものである。
【0011】
請求項3の発明によれば、走行の制御を行うための少なくともピッチ角速度センサーを有している場合に、旋回面と車体の成す角度からピッチ角速度センサーの傾きを推定し、傾いたピッチ角速度センサーの感度低下を補償して正しいピッチ角度を算出する手段を設けることにより、算出されたピッチ角度を用いて良好な車両の制御を行うことができるものである。
【0012】
請求項4の発明によれば、走行の制御を行うためにさらにロール角速度センサーを有している場合に、求められたピッチ角度を元に傾いたロール角速度センサーに混入するヨーレート成分を相殺し、この相殺により正しいロール角度を算出する手段を設けることにより、傾斜面や段差のある走路においても良好な車両の制御を行うことができるものである。
【0013】
さらに請求項5の発明によれば、それぞれが独立に駆動される2つの車輪が平行に設けられ、2つの車輪の間で前後の安定を保ちつつ走行される走行装置の制御方法であって、運転者の搭乗するステッププレートから植立されたハンドルを傾斜させることにより旋回運動を行わせている場合に、ハンドルの傾斜角と装置の緒元に基づいて旋回面と車体の成す角度を求めることにより、旋回走行時にも安定な車両の制御を行うことができるものである。
【0014】
また、請求項6の発明によれば、走行の制御を行うための少なくともピッチ角速度センサーを有している場合に、旋回面と車体の成す角度と旋回速度とからピッチ角速度センサーに混入するヨーレートを求め、ピッチ角速度センサーで計測されるピッチ角度を較正することにより、較正されたピッチ角度を用いて良好な車両の制御を行うことができるものである。
【0015】
請求項7の発明によれば、走行の制御を行うための少なくともピッチ角速度センサーを有している場合に、旋回面と車体の成す角度からピッチ角速度センサーの傾きを推定し、傾いたピッチ角速度センサーの感度低下を補償して正しいピッチ角度を算出することにより、算出されたピッチ角度を用いて良好な車両の制御を行うことができるものである。
【0016】
請求項8の発明によれば、走行の制御を行うためにさらにロール角速度センサーを有している場合に、求められたピッチ角度を元に傾いたロール角速度センサーに混入するヨーレート成分を相殺し、この相殺により正しいロール角度を算出することにより、傾斜面や段差のある走路においても良好な車両の制御を行うことができるものである。
【0017】
これによって、従来の装置では、ピッチ角を測定する角速度センサーを旋回面に対して精確に垂直に取り付けなければいけないために車体の設計に制約が生じ、また、ロール軸の傾斜角を角速度センサーによって計測することが事実上できなかったものを、本発明によればこれらの問題点を容易に解消することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず始めに、本発明が適用される本願出願人が先に提案(特願2005-117365号)した新規な同軸二輪車について、図7、図8を参照して説明する。ただし、本発明はこの先願の同軸二輪車に限定されるものではない。
【0019】
〔走行装置構成の概要〕
図7には走行装置(同軸二輪車)の外観を正面図及び側面図で示し、図8にはその要部を拡大して示す。この図7において、走行装置100には、平行に配置された一対の車輪1A、1Bと、車輪1A、1Bを独立に回転駆動する駆動手段2A、2Bと、これらの駆動手段2A、2Bを支持し搭乗者が搭乗するステッププレート3A、3Bを有する左右それぞれのステップユニット4A、4Bが設けられる。
【0020】
また、これらのステップユニット4A、4Bには、左右それぞれのステップユニット4A、4Bを互いに平行に可動可能に連結するための、上下に分割された車体が設けられ、この車体上部5が回転支持ピン6A、6Bを介してステッププレート3A、3Bに連結され、また車体下部7も回転支持ピン8A、8Bを介してステッププレート3A、3Bに連結されて、平行リンクを形成している。
【0021】
さらにハンドルポスト11も、回転支持ピン9(図8のピン12を含む)、及び回転支持ピン10を介して車体上部5、及び車体下部7に連結され、ステップユニット4A、4Bと平行に可動する。この時、ハンドルポスト11が自立するよう上下に分割された車体上部5と車体下部7との間にはバネ35が配置され、図7の状態を保っている。
【0022】
また、図8は側面より見た断面図であって、車体下部7の内部には、走行装置本体の走行時の角速度及び加速度を検出して走行装置本体の角速度及び走行加速度を制御するための、ピッチ軸、ヨー軸、ロール軸の少なくともいずれかの軸の角速度を検出するジャイロセンサーと、X軸、Y軸、Z軸の少なくともいずれかの軸の加速度を検出する加速度センサーからなる姿勢センサーユニット13が設けられている。
【0023】
そして、姿勢センサーユニット13の各姿勢検出センサーからの信号から、演算装置14を介して所定の走行状態を維持するための信号を車体上部5の内部に配置された駆動回路15に出力し、駆動手段2A(2B)によって車輪1A(1B)を駆動する走行装置100が形成される。なお、ハンドルポスト11下端付近には、走行装置100全体の電力源となるバッテリー16が配置されている。
【0024】
本発明による走行装置及びその制御方法は、上記の走行装置100に適用される。そこで、以下に図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明を適用した走行装置100の回路構成を示すブロック図である。
【0025】
〔装置構成〕
すなわち図1において、ロータ角度検出部を有する右車輪駆動モータ17、左車輪駆動モータ18は、それぞれ駆動回路19、20を介して、演算回路(CPU)及び記憶装置(メモリー)の内蔵された演算装置21に接続される。なお、バッテリー16からの電力が演算装置21及び駆動回路19、20に供給されると共に、駆動回路19、20への電力供給路には、例えば図7に示したハンドルグリップ31に内蔵される非常停止スイッチ25が設けられる。
【0026】
さらに、演算装置21には搬送装置の姿勢状態(ジャイロによる角速度検出軸ピッチ、ヨー、ロール、加速度センサーによる加速度検出軸X、Y、Z)を検出する姿勢検出センサーユニット22、ハンドル角度検出センサー23、旋回操作レバー24が接続される。そしてこれらの信号から、演算装置21は所定の走行状態を維持するための信号を算出して駆動回路19、20に出力し、右車輪駆動モータ17、左車輪駆動モータ18を介して車輪(図示せず)を駆動する。
【0027】
〔走行時の車両状態〕
さらに図2には、このような走行装置100の旋回走行時の車両状態を示す。この図2において、搭乗者(図示せず)がハンドル30及び上体を旋回中心側(内側)に傾斜させる事により、ステップユニット4A、4Bと車輪2A、2Bはハンドル30(ハンドルポスト11)と平行に傾斜し、搭乗者を含めた車両全体が遠心力に対抗する状態になる。
【0028】
そこで図2に示すような傾斜姿勢をとって旋回を行った場合には、図1の姿勢センサーユニット22が旋回面に対して傾くことになり、旋回成分がヨー軸の角速度検出センサーだけでなくピッチ軸、ロール軸の角速度検出センサーに対しても感度を与えてしまう。その結果、旋回を続けていると「ピッチ軸が傾いた」という偽の信号を出力し、前後のバランスが取ることができなくなってしまうような望ましくない現象が発生する。
【0029】
〔姿勢計測方法〕
この望ましくない現象の発生を抑制するため、角速度検出センサーの傾きに応じて出力信号を補正し、この補正された信号を元にピッチ軸、ロール軸の角度を求める。すなわち平行リンク機構を車体構造とする平行2輪車において、図2に示すような傾斜姿勢をとった場合に、これを車体後方から見たときの車体の各構成部品間の角度と位置関係は図3のように模式化でき、下記のような関係が求められる。
【0030】
この図3において、ヨー軸に対するピッチ角ジャイロの傾きをθ、図1のハンドル角度センサー23で検出した傾きをα、α=0の時のθをθ(ピッチ軸ジャイロの取り付け誤差)、両タイヤの中心軸間(トレッド)の半分をTr、左右リンクからタイヤの中心軸までの幅をWとすると、次に示す〔数1〕という式が成り立つ。
【0031】
【数1】

【0032】
そして、この〔数1〕において、値Trと値Wは設計時に決定される定数であるから、値αを計測する図1のハンドル角度センサー23の出力を用いて〔数1〕の演算を行うことにより、旋回面と姿勢検出センサーユニット22のピッチ角速度センサーの成す角度θを求めることができる。
【0033】
一方、この時に走行装置100が旋回速度YRにて旋回を行っているとすると、姿勢検出センサーユニット22のピッチ軸角速度センサーからは、本来の旋回面に対するピッチ角速度にYR・sinθを加えた値が検出されることになる。従って、センサーで検出された値からYR・sinθを引くことにより、補正されたピッチ角速度を求めることができる。なお、旋回速度YRは演算装置21にて求められる値である。
【0034】
従って、上述した本発明による走行装置及びその制御方法によれば、ハンドルの傾斜角と装置の緒元に基づいて旋回面と車体の成す角度を求めることができる。これにより、求められた旋回面と車体の成す角度を用いて、旋回走行時にも安定な車両の制御を行うことができる。
【0035】
すなわち、求められた旋回面と車体の成す角度を用いてピッチ角速度の補正を行うことができ、従来の技術では、ピッチ角を測定する角速度センサーを旋回面に対して精確に垂直に取り付けなければいけないために車体の設計に制約が生じるなどしていた問題点を、本発明によれば容易に解決することができるものである。
【0036】
なお、傾きαの測定法としては、例えばポテンショメータ、光学式エンコーダなどの角度を求めるセンサーをハンドルポスト11に基部に設けて直接的に角度を測定する方法の他に、図7の車体上部5と車体下部7との間のスライド量を測定するセンサーを設ける、あるいは、バネ35にかかる力や変位を測定することによって、間接的に測定することも可能である。
【0037】
さらに、上述した本発明の走行装置及びその制御方法によれば、図4A、4Bに示すように、片輪段差乗り上げやカント路面等ロール軸方向(進行方向に対し左右方向)の路面変化の場合で、直進走行時搭乗者がハンドル30を垂直に保つことによりステッププレート3A、3Bは左右に傾かず、水平のまま左右のステッププレート3A、3Bの高さ方向で吸収出来、乗車状態が立位姿勢等重心の高い状態でも上体が左右に振られず安定して操縦および走行が可能となる。
【0038】
ところがこの場合に、旋回速度成分をロール軸の検出角を元に決定している場合には、旋回をしようとするとロール軸の検出角が狂ってしまい、車体を傾けているのに旋回が止まってしまう、車体を傾けていないのに旋回が止まらなくなってしまう、などの望ましくない現象が発生する。
【0039】
そこで上述したように求めた精確なピッチ角度βを用いると、旋回中に傾いたロール角速度センサーに混入するヨーレートが-YR・sinβとなることが求められる。これを引くことにより真実のロール角速度を求めることができ、これを積分することで真実のロール角度を計測することが可能となる。
【0040】
あるいはピッチ角速度センサーがロール軸まわりに傾いているために、センサーの感度はcosθに低下している。すなわち、真実のピッチ角速度は上記補正を行ったピッチ角速度をcosθで割ったものとなり、これを積分することで真実のピッチ角度を計測することが可能となる。
【0041】
このようにして、カント路面や片輪段差乗り上げ等ロール軸方向(進行方向に対し左右方向)の路面変化では、ステッププレートは左右に傾かず、水平のまま左右のステッププレートの高さ方向で吸収することが出来、乗車状態が立位姿勢等重心の高い状態でも上体が左右に振られず安定して操縦および走行が可能である。しかも、斜め方向から段差を乗り上げようとした場合、歩行時の段差上りの如く左右の足にかける重心移動を行うことにより少ない駆動パワーで段差上りが可能である。
【0042】
なお図5には、旋回走行時と、カント路面あるいは片輪段差乗り上げ走行時とにおけるハンドル倒れ角度(位置センサー検出)と車体傾斜角度(姿勢センサー検出)の関係を示す。
【0043】
以上述べたように、本発明は平行に配置された2輪で走行する走行装置における車体構造で、走行性能の向上を実現する場合において下記のような走行を実現するために必要な車体の姿勢を計測するときに有効な演算アルゴリズムである。このアルゴリズムによる補正を行わないまま旋回走行を行った場合には車体が傾いてしまい、バランスの保持が困難になり、転倒の恐れも生じる。
【0044】
例えば、ハンドルを右側に10°倒して時速5.65[km/h]の速度で半径10[m]の円周の上を旋回走行したとする。このときの車両の速度は約1.57[m/sec]、ヨーレートは0.157[rad/sec]となる。ここで、ハンドルが右側に10°傾いたときに車両の左側への傾きが3°となるような車体寸法で設計されている場合にピッチ軸角速度センサーに混入するヨーレートはsin(3°)*0.157=0.0082[rad/sec]である。この数値は、約21秒で車体が10°傾くということを示している。車体が10°も傾いてしまうと乗員は車体の上に立っていることが困難になり、無理に旋回走行を続けると転倒に至ることになる。
【0045】
そこで、上記アルゴリズムを用いて精確なピッチ角度を求めることができれば、ステッププレートとハンドルを旋回内側ロール軸方向に傾斜させることにより安定した旋回走行をすることができ、遠心力に対向し立位姿勢等重心の高い状態でも安定して操縦および走行が可能となる。またこの時、ステッププレート部に車軸および車輪を取り付けることにより、車輪も旋回内側にキャンバー角を生じタイヤに掛かる横力を低減させ安定したグリップが得られる。
【0046】
さらに図6には、上述した全ての処理を含む全体の処理の流れを機能ブロック図で示す。すなわち図6において、加速度センサー61で検出されたX、Y、Z軸の加速度が、角度演算部62に供給されてピッチ及びロールの角度が算出される。また、車輪速度検出部63で検出された左右の車輪速度が、車両速度及び旋回速度演算部64に供給されて車両速度及び旋回速度が算出される。
【0047】
そして、車両速度及び旋回速度演算部64で算出された車両速度が、微分演算部65に供給されて車両加速度が算出され、この車両加速度と、車両速度及び旋回速度演算部64からの車両速度及び旋回速度が、加速度補正及び遠心力補正演算部66に供給されて、角度演算部62で算出されたピッチ及びロールの角度の値が補正される。さらにこれらの補正されたピッチ及びロールの角度の値がフィルタ演算部67に供給される。
【0048】
一方、角速度センサー68でピッチ及びロールの角速度が検出される。また、ハンドル傾斜角検出部69で検出されたハンドル傾斜角がリンク角演算部70に供給され、算出されたリンク角と、車両速度及び旋回速度演算部64で算出された旋回速度が旋回補正演算部71に供給されて、角速度センサー68で検出されたピッチ及びロールの角速度の旋回補正が行われる。
【0049】
さらに、旋回補正演算部71で旋回補正されたピッチの角速度が、斜面補正演算部72に供給され、車両速度及び旋回速度演算部64で算出された旋回速度によって斜面補正が行われる。この斜面補正演算部72で斜面補正されたピッチの角速度と、旋回補正演算部71で旋回補正されたロールの角速度とが積分演算部73に供給される。そして、上述のフィルタ演算部67との間で相互に補正が行われる。
【0050】
これにより、積分演算部73からはピッチ角度・ピッチ角速度、ロール角度・ロール角速度が取り出される。また、車両速度及び旋回速度演算部64で算出された旋回速度はヨー角速度として取り出される。なお積分演算部73からロール角度・ロール角速度が斜面補正演算部72に供給されて、ピッチの角速度の斜面補正に用いられる。以上の処理によって、ピッチ、ロール及びヨーの角速度と、ピッチ及びロールの角度の補正が行われる。
【0051】
こうして本発明の走行装置によれば、それぞれが独立に駆動される2つの車輪が平行に設けられ、前記2つの車輪の間で前後の安定を保つように制御されて走行される走行装置であって、運転者の搭乗するステッププレートから植立されたハンドルを傾斜させることにより旋回運動を行わせている場合に、ハンドルの傾斜角と装置の緒元に基づいて旋回面と車体の成す角度を求める手段を有することにより、簡単な手段で旋回走行時にも安定な車両の制御を行うことができるものである。
【0052】
また、本発明の走行装置の制御方法によれば、それぞれが独立に駆動される2つの車輪が平行に設けられ、前記2つの車輪の間で前後の安定を保ちつつ走行される走行装置の制御方法であって、運転者の搭乗するステッププレートから植立されたハンドルを傾斜させることにより旋回運動を行わせている場合に、ハンドルの傾斜角と装置の緒元に基づいて旋回面と車体の成す角度を求めることにより、容易に旋回走行時にも安定な車両の制御を行うことができるものである。
【0053】
なお本発明は、上述の説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱することなく種々の変形が可能とされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による走行装置及びその制御方法を適用した走行装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】その説明のための線図である。
【図3】その動作のアルゴリズムの説明のための線図である。
【図4】その説明のための線図である。
【図5】その説明のための線図である。
【図6】その全ての処理を行う場合の処理の流れを示す機能ブロック図である。
【図7】本願出願人が先に提案した新規な同軸二輪車の説明のための図である。
【図8】本願出願人が先に提案した新規な同軸二輪車の説明のための図である。
【符号の説明】
【0055】
16…バッテリー、17…右車輪駆動モータ、18…左車輪駆動モータ、19,20…駆動回路、21…演算装置、22…姿勢検出センサーユニット、23…ハンドル角度検出センサー、24…旋回操作レバー、25…非常停止スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが独立に駆動される2つの車輪が平行に設けられ、前記2つの車輪の間で前後の安定を保つように制御されて走行される走行装置であって、
運転者の搭乗するステッププレートから植立されたハンドルを傾斜させることにより旋回運動を行わせている場合に、
前記ハンドルの傾斜角と装置の緒元に基づいて旋回面と車体の成す角度を求める手段を有する
ことを特徴とする走行装置。
【請求項2】
請求項1記載の走行装置において、
前記走行の制御を行うための少なくともピッチ角速度センサーを有している場合に、
前記旋回面と車体の成す角度と旋回速度とから前記ピッチ角速度センサーに混入するヨーレートを求め、前記ピッチ角速度センサーで計測されるピッチ角度を較正する手段を設ける
ことを特徴とする走行装置。
【請求項3】
請求項1記載の走行装置において、
前記走行の制御を行うための少なくともピッチ角速度センサーを有している場合に、
前記旋回面と車体の成す角度から前記ピッチ角速度センサーの傾きを推定し、前記傾いたピッチ角速度センサーの感度低下を補償して正しいピッチ角度を算出する手段を設ける
ことを特徴とする走行装置。
【請求項4】
請求項2、3のいずれかに記載の走行装置において、
前記走行の制御を行うためにさらにロール角速度センサーを有している場合に、
求められた前記ピッチ角度を元に傾いた前記ロール角速度センサーに混入するヨーレート成分を相殺し、この相殺により正しいロール角度を算出する手段を設ける
ことを特徴とする走行装置。
【請求項5】
それぞれが独立に駆動される2つの車輪が平行に設けられ、前記2つの車輪の間で前後の安定を保ちつつ走行される走行装置の制御方法であって、
運転者の搭乗するステッププレートから植立されたハンドルを傾斜させることにより旋回運動を行わせている場合に、
前記ハンドルの傾斜角と装置の緒元に基づいて旋回面と車体の成す角度を求める
ことを特徴とする走行装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の走行装置の制御方法において、
前記走行の制御を行うための少なくともピッチ角速度センサーを有している場合に、
前記旋回面と車体の成す角度と旋回速度とから前記ピッチ角速度センサーに混入するヨーレートを求め、前記ピッチ角速度センサーで計測されるピッチ角度を較正する
ことを特徴とする走行装置の制御方法。
【請求項7】
請求項5記載の走行装置の制御方法において、
前記走行の制御を行うための少なくともピッチ角速度センサーを有している場合に、
前記旋回面と車体の成す角度から前記ピッチ角速度センサーの傾きを推定し、前記傾いたピッチ角速度センサーの感度低下を補償して正しいピッチ角度を算出する
ことを特徴とする走行装置の制御方法。
【請求項8】
請求項6、7のいずれかに記載の走行装置の制御方法において、
前記走行の制御を行うためにさらにロール角速度センサーを有している場合に、
求められた前記ピッチ角度を元に傾いた前記ロール角速度センサーに混入するヨーレート成分を相殺し、この相殺により正しいロール角度を算出する
ことを特徴とする走行装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−45330(P2007−45330A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232210(P2005−232210)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】