説明

走行装置清浄機能を有する舗装機械

【課題】 従来の舗装機械は、走行装置の清浄をその都度作業員の手で行っていたため、手間が掛かっていた。
【解決手段】 アスファルトフィニッシャ1は、前輪6L,6Rの舗装面Rと接触する接地面6aおよび後輪7L,7Rの舗装面Rと接触する接地面7aにノズル30,31の噴出口が向けられた舗装材付着防止剤または清浄剤を撒布する撒布機構を備える。このため、接地面6a,7aに舗装材付着防止剤または清浄剤が撒布されることで、接地面6a,7aが洗浄され、また、これら各部に舗装材が付着するのが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を走行させる走行装置を備えた舗装機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の走行装置を備えた舗装機械としては、例えばアスファルトフィニッシャがある。アスファルトフィニッシャは、車輪またはクローラからなる走行装置により車体を舗装面上に支えると共に、原動機からの駆動力を舗装面に伝えて車体を走行させる。車体に備えられたホッパには、前方を走行するダンプトラックからアスファルト合材が投入される。ホッパに投入された合材はコンベヤにより後方へ搬送されて舗装面に落下させられ、スクリュで舗装面幅方向に撒き拡げられる。撒き拡げられた合材は、スクリード装置前方のデフレクタおよびストライクオフにより供給量が調整されて、タンパ装置に供給される。タンパ装置は、タンパモータの駆動によりタンパエッジを上下動させて、路面に撒かれた合材を突き固める。突き固められた合材はスクリードプレートで敷き均される。
【0003】
ストライクオフおよびスクリードプレートは、例えば、特許文献1に開示されるように、加熱装置によって加熱されるため、舗装面が平滑にアイロン仕上げされると共に、合材が付着するのが防止される。また、ストライクオフおよびスクリードプレートの加熱の際の余熱によりタンパエッジも加熱されて、タンパエッジに合材が付着するのも防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−252012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のアスファルトフィニッシャは、ストライクオフやタンパエッジに合材が付着するのは防止されるが、ダンプトラックやホッパから舗装面上に零れ落ちた合材が、走行装置の舗装面と接触する接地面に付着してしまう。そして、走行装置の接地面に付着した合材がアスファルトフィニッシャの走行に伴って雪だるま式に増加すると、車体に接触するなどして走行できなくなってしまう。このため、従来、作業員が走行装置の接地面に付着防止剤や清浄剤を手で撒布することにより、走行装置の接地面に合材が付着するのが予め防止されたり、付着した合材が取り除かれていた。従って、上記従来のアスファルトフィニッシャは、走行装置の清浄をその都度作業員の手で行っていたため、手間が掛かっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
前方を走行する舗装材運搬車から供給される舗装材を収容するホッパと、
ホッパを備えた車体を舗装面上に支えると共に、原動機からの駆動力を舗装面に伝えて車体を走行させる走行装置と、
走行装置の舗装面と接触する接地面に噴出口が向けられて車体に設けられたノズルを有し、ノズルから接地面に舗装材付着防止剤または清浄剤を撒布する撒布機構と
を備えて、走行装置清浄機能を有する舗装機械を構成した。
【0007】
この構成によれば、車体に設けられたノズルから走行装置の舗装面と接触する接地面に舗装材付着防止剤または清浄剤が撒布機構によって撒布されることで、走行装置の接地面に舗装材が付着するのが防止され、または付着した舗装材が取り除かれる。このため、従来のように、作業員が走行装置に付着防止剤や清浄剤を手で撒布する手間を掛けることなく、走行装置の清浄が行える。
【発明の効果】
【0008】
この結果、本発明による走行装置清浄機能を有する舗装機械によれば、走行装置の舗装面と接触する接地面を清浄したり、舗装材の付着防止をする保守に、手間が掛からなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるホイール式のアスファルトフィニッシャの構成を示す側面図である。
【図2】(a)は図1に示すアスファルトフィニッシャの車体の左方側の平面図、(b)はその側面図である。
【図3】図1に示すアスファルトフィニッシャが備える撒布機構の構成を示したブロック図である。
【図4】(a)は本発明の変形例によるクローラ式のアスファルトフィニッシャの車体の左方側の平面図、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明による走行装置清浄機能を有する舗装機械をホイール式のアスファルトフィニッシャに適用した場合における、本発明を実施するための一形態について説明する。
【0011】
図1は、この一実施の形態によるアスファルトフィニッシャ1の側面図である。
【0012】
アスファルトフィニッシャ1は、車体の前部にホッパ2が設けられている。このホッパ2には、前方を走行するダンプトラックなどの舗装材運搬車からアスファルト加熱混合物であるアスファルト合材(以下、合材という)が舗装材として供給され、ホッパ2は供給される合材を収容する。ホッパ2の底には、ホッパ2に供給された合材を搬送するコンベヤ3(図2参照)が設けられており、コンベヤ3の後方の車体下部にはスクリュが設けられている。スクリュは、スクリュ軸の外周にスクリュ羽根が形成されており、スクリュ軸が定速回転するのに伴いスクリュ羽根が旋回し、コンベヤ3から供給されて舗装面R上に落下した合材を舗装面Rの幅方向に撒き拡げる。車体の後方には、撒き拡げた合材を敷き均して舗装面を平滑に仕上げるスクリード装置5が設けられている。アスファルトフィニッシャ1は、車体の前方に一対の前輪6L,6R、車体の後方に一対の後輪7L,7Rが設けられている。前輪6L,6Rおよび後輪7L,7Rは、ホッパ2を備えた車体を舗装面R上に支えると共に、車体に備えられた図示しない原動機からの駆動力を舗装面Rに伝えて車体を走行させる走行装置を構成している。アスファルトフィニッシャ1は、この走行装置によって進行方向である同図左方に走行し、スクリード装置5を牽引する。また、車体上部の運転席8には操作部9が設けられており、操作部9には、アスファルトフィニッシャ1の走行を操作する走行スイッチや、スクリード装置5を操作する操作レバーや操作スイッチなどが設けられている。
【0013】
図2(a)は、アスファルトフィニッシャ1の車体の機械中心線Cから左方側の平面図であり、同図(b)は、その側面図である。なお、図2において図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0014】
アスファルトフィニッシャ1の車体には洗浄液タンク21が搭載されている。この洗浄液タンク21には洗浄液が収納されており、この洗浄液は、前輪6L,6Rおよび後輪7L,7Rの舗装面Rと接触する接地面6a,7aに合材が付着するのを防止する舗装材付着防止剤、および付着した合材を除去して清浄する清浄剤として用いられる。同図(b)にのみ示す洗浄液タンク21にはポンプ22が設けられており、ポンプ22にはホース23を介してバルブ24が接続されている。バルブ24には、ホース25を介して配管26、ホース27を介して配管28が接続されている。車体後方のフレームに設けられた配管26には、後輪7Lの舗装面Rと接触する接地面7aに噴出口が向けられたノズル30が設けられている。また、車体前方のフレームに設けられた配管28には、前輪6Lの舗装面Rと接触する接地面6aに噴出口が向けられたノズル31が設けられている。各ノズル30,31は、洗浄液タンク21に収納されている洗浄液を撒布する。なお、図示していないアスファルトフィニッシャ1の車体の機械中心線Cから右方側にも、上述した車体の左方側と左右対象に、配管26およびノズル30、並びに配管28およびノズル31が設けられている。ここで、ノズル30は、後輪7Rの舗装面Rと接触する接地面7aに噴出口が向けられ、ノズル31は、前輪6Rの舗装面Rと接触する接地面6aに噴出口が向けられている。洗浄液タンク21、ポンプ22、ホース23、バルブ24、ホース25,27、配管26,28およびノズル30,31は、前輪6L,6Rの接地面6aおよび後輪7L,7Rの接地面7aに舗装材付着防止剤および清浄剤を撒布する撒布機構を構成している。
【0015】
図3(a)は、アスファルトフィニッシャ1が備える上述した撒布機構の構成を示したブロック図である。なお、図3において図2と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0016】
洗浄液タンク21に収納されている洗浄液は、ポンプ22が発生する送圧力によってホース23を介してバルブ24へ送出される。バルブ24は、通常閉じていてホース23からの洗浄液の流れを阻止している。ポンプ22と洗浄液タンク21との間には、バルブ24が開いていない状態において、洗浄液をポンプ22から洗浄液タンク21に戻し、洗浄液タンク21とポンプ22との間で循環させるリリーフ経路33が設けられている。バルブ24は、運転席8の操作部9などに備えられたスイッチ32の操作に応じて、ホース23からの洗浄液を流路を切り換えて流す。つまり、スイッチ32の操作により、後輪7L,7Rの接地面7aに洗浄液を撒布する信号を受けると、バルブ24は、ホース23からの洗浄液をホース25側に切り換えて流し、配管26に設けられた各ノズル30から後輪7L,7Rの接地面7aに洗浄液を噴霧して撒布させる。また、スイッチ32の操作により、前輪6L,6Rの接地面6aに洗浄液を撒布する信号を受けると、バルブ24は、ホース23からの洗浄液をホース27側に切り換えて流し、配管28に設けられた各ノズル31から前輪6L,6Rの接地面6aに洗浄液を噴霧して撒布させる。また、スイッチ32の操作により、前輪6L,6Rの接地面6a、および後輪7L,7Rの接地面7aに洗浄液を撒布する信号を受けると、バルブ24は、ホース23からの洗浄液をホース25,27の双方に流し、各配管26,28に設けられた各ノズル30,31から前輪6L,6Rの接地面6a、および後輪7L,7Rの接地面7aに洗浄液を噴霧して撒布させる。
【0017】
このような本実施形態によるアスファルトフィニッシャ1によれば、上記のように、スイッチ32が操作されてポンプ22から送出される洗浄液がバルブ24によりホース25,27の双方に流されると、ノズル30から後輪7L,7Rの接地面7a、およびノズル31から前輪6L,6Rの接地面6aに舗装材付着防止剤または清浄剤が上述した撒布機構によって撒布されることで、前輪6L,6Rの接地面6a、および後輪7L,7Rの接地面7aに舗装材が付着するのが防止され、または付着した舗装材が取り除かれる。このため、従来のように、作業員が前輪6L,6Rおよび後輪7L,7Rに付着防止剤や清浄剤を手で撒布する手間を掛けることなく、前輪6L,6Rおよび後輪7L,7Rの清浄が行える。この結果、本発明による走行装置清浄機能を有する舗装機械によれば、前輪6L,6Rの接地面6a、および後輪7L,7Rの接地面7aを清浄したり、舗装材の付着防止をする保守に、手間が掛からなくなる。
【0018】
なお、上記実施形態では、ポンプ22を駆動状態にしておき、スイッチ32の操作に応じてバルブ24を開いて、洗浄液の流路を切り換えて各ノズル30,31から洗浄液を撒布する構成としたが、本発明はこれに限られることはない。例えば、図3(b)に示すように、スイッチ32をポンプ22に接続し、バルブ24を開いた状態にしておき、スイッチ32の操作に応じてポンプ22を駆動制御するように構成してもよい。この構成では、スイッチ32がオン操作されるとポンプ22から洗浄液が送出されてホース23を経由してバルブ24へ送出され、各ノズル30,31から洗浄液が撒布される。この構成によっても、上記実施形態と同様な作用・効果が奏される。
【0019】
また、上記実施形態では、走行装置が前輪6L,6Rおよび後輪7L,7Rからなるホイール式のアスファルトフィニッシャ1に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られることはない。例えば、図4に示すように、走行装置が、複数のクローラシューが連結された左右で一対のクローラ41,41からなる、クローラ式のアスファルトフィニッシャ1’に本発明を適用してもよい。なお、図4において図2と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。このクローラ式のアスファルトフィニッシャ1’においては、クローラ41,41が無限軌道を描くため、車体後方のフレームに設けられた配管26にのみノズル30が設けられており、車体前方のフレームにはノズルが設けられていないが、設けてもよい。同図(b)にのみ示す洗浄液タンク21に収納された洗浄液は、ポンプ22により、ホース23,バルブ24,ホース25,および配管26を介してノズル30からクローラ41,41の舗装面Rと接触する接地面に撒布される。このため、本構成によっても上記実施形態と同様な作用・効果が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0020】
上記の実施形態においては、本発明による走行装置清浄機能を有する舗装機械をアスファルトフィニッシャに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、リミキサやリペーバといった路上表層再生機などの舗装機械に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…アスファルトフィニッシャ
6L,6R…前輪
7L,7R…後輪
6a,7a…接地面
21…洗浄液タンク
22…ポンプ
23,25,27…ホース
24…バルブ
26,28…配管
30,31…ノズル
32…スイッチ
33…リリーフ経路
41…クローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方を走行する舗装材運搬車から供給される舗装材を収容するホッパと、
前記ホッパを備えた車体を舗装面上に支えると共に、原動機からの駆動力を舗装面に伝えて前記車体を走行させる走行装置と、
前記走行装置の舗装面と接触する接地面に噴出口が向けられて前記車体に設けられたノズルを有し、前記ノズルから前記接地面に舗装材付着防止剤または清浄剤を撒布する撒布機構と
を備える走行装置清浄機能を有する舗装機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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