説明

走行装置

【課題】坂道登坂時に、車両が後退することを確実に防止し、安定した坂道停車及び坂道発進を実現することのできる走行装置を提供すること。
【解決手段】逆入力遮断クラッチ(32)により高速走行用駆動ユニット(16)及び高トルク走行用駆動ユニット(18)による走行を切替可能なクローラ走行装置(8)を備えたクローラロボット(1)において、坂道停車時に逆入力遮断クラッチが遮断状態となった場合(S1〜S3)、ブレーキ(26)を作動させてクローラロボットを停止させ(S4〜S6)、発進時には逆入力遮断クラッチが接続状態になったことを確認した後にブレーキを解除する(S7〜S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速用及び高トルク用等の複数の回転駆動源を備え、それらを逆入力遮断クラッチにより切り換えて走行を行う走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、クローラ式の走行装置を備えた車両やロボットにおいて、平地等で高速走行を行うための高速用の回転駆動源と、坂道や悪路等にて高トルク走行を行うための高トルク用の回転駆動源を備え、これら高速走行及び高トルク走行をクラッチにより切り換える構成がある。
具体的には、クローラロボットのホイール内に、減速比の小さい減速器と連設された高速用モータ、及び減速比の大きい減速器と連設された低速用モータとを備え、当該低速用モータに減速器を介して逆入力遮断クラッチを設けた構成が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
この逆入力遮断クラッチは、低速用モータが回転駆動されていないときには遮断位置となり、低速用モータが回転駆動されることで接続される構成をなしている。また、当該逆入力遮断クラッチは、低速用モータ側に駆動力が伝達されると、即ち出力軸から入力軸へ駆動力が伝達されると、遮断位置となるよう構成されている。
このような構成の逆入力遮断クラッチを備えたクローラロボットにおいて、高速走行時には、低速用モータを停止させることで逆入力遮断クラッチを遮断させ、高速用モータのみでの走行を行い、低速走行時には、低速用モータを回転駆動し逆入力遮断クラッチを接続させ低速用モータで走行するとともに高速用モータを同期運転するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−97719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、坂道登坂時等でも車両を停止させると、低速用モータが停止し逆入力遮断クラッチが遮断状態となる。このため、停車時には負荷の少ない高速用モータのみがクローラに接続された状態となり、坂道が急勾配であると停車を維持できず坂道を後退するおそれがある。また、坂道発進時は、逆入力遮断クラッチが接続されるまでは高速用モータのみの低トルク走行となり、この場合もトルク不足により坂道を後退してしまうという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、坂道登坂時に、車両が後退することを確実に防止し、安定した坂道停車及び坂道発進を実現することのできる走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1の走行装置では、第1の回転体及び第2の回転体の少なくともいずれか一方が駆動体となって走行する走行装置において、前記第1の回転体を回転駆動する第1の回転駆動源と、前記第1の回転駆動源よりも高いトルクを出力し、前記第2の回転体を回転駆動する第2の回転駆動源と、前記第2の回転駆動源と前記第2の回転体との間に設けられ、前記第2の回転駆動源からの駆動力が伝達されると接続状態となり、前記第2の回転駆動源停止時または前記第2の回転体から前記第2の回転駆動源への駆動力が伝達されると駆動力の伝達を遮断する逆入力遮断クラッチと、前記駆動体の回転を停止するよう作動するブレーキ手段と、走行路の勾配を検出する勾配検出手段と、前記勾配検出手段により検出された勾配が所定のしきい値以上であるときに、前記逆入力遮断クラッチが遮断状態となった場合には、前記ブレーキ手段を作動させ、前記第2の回転駆動源の駆動力を発生させて前記逆入力遮断クラッチを接続させるよう制御する走行制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2の走行装置では、請求項1において、前記走行制御手段は、前記勾配検出手段により検出された勾配が所定のしきい値以上であって、前記逆入力遮断クラッチが遮断状態となったことで、前記ブレーキ手段により前記回転体の回転を停止させるとともに、前記第2の回転駆動源の駆動力を発生させて前記逆入力遮断クラッチを接続させる際、前記逆入力遮断クラッチが接続されるまでは、前記第1の回転駆動源の駆動を禁止することを特徴としている。
【0009】
請求項3の走行装置では、請求項1または2において、前記回転体は、該第1のホイール及び第2のホイールに架け渡された無端状の履帯からなり、前記第1の回転駆動源は前記第1のホイールに接続され、前記第2の回転駆動源は前記逆入力遮断クラッチを介して前記第2の回転体と接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いる本発明の請求項1の走行装置によれば、走行制御手段は、走行路の勾配が所定のしきい値以上の坂道であるときに、逆入力遮断クラッチが遮断状態となり、比較的高トルクの第2の回転駆動源による駆動力が遮断された場合、ブレーキ手段に回転体を停止させるとともに、逆入力遮断クラッチを接続させる。
これにより、高トルクが必要な坂道登坂時において、逆入力遮断クラッチが遮断された場合でも、ブレーキ作動により車両の後退を確実に防止した上で、第2の駆動源による駆動力を発生させて逆入力遮断クラッチを接続させることで、十分なトルクを発揮させることができ、安定した坂道停車及び坂道発進を実現させることができる。
【0011】
請求項2の走行装置によれば、坂道で逆入力遮断クラッチが遮断された場合に、ブレーキ手段を作動し、第2の回転駆動源の駆動力を発生させて前記逆入力遮断クラッチを接続させる際に、第1の回転駆動源の駆動を禁止することで、回転体から第2の回転駆動源への駆動力伝達を防止し、逆入力遮断クラッチが遮断されることを防止することができる。これにより、より安定的な坂道停車及び坂道発進を実現することができる。
【0012】
請求項3の走行装置によれば、回転体を、第1のホイール及び第2のホイールに架け渡された無端状の履帯からなる、所謂クローラ走行装置とし、第1のホイールに第1の回転駆動源を、第2のホイールに逆入力遮断クラッチを介して第2の回転駆動源をそれぞれ接続した構成とする。
これにより、悪路等も走行可能であるとともに、坂道も良好に走行可能なクローラ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る走行装置を備えたクローラロボットの概略側面図である。
【図2】本発明に係る走行装置を備えたクローラロボットの左側クローラ走行装置の内部を示す概略上面視図である。
【図3】本発明に係る走行装置のシステム構成図である。
【図4】本発明に係る走行装置の坂道走行制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1には本発明に係る走行装置を備えたクローラロボットの概略側面図、図2には当該クローラロボット左側内部を示す概略上面図がそれぞれ示されている。
図1、2に示すクローラロボット1は、悪路等も良好に走行可能なクローラ走行装置付きの無人車両であり、操縦者の遠隔操作に応じて動作するものである。
【0015】
クローラロボット1は、車体部2に遠隔操縦装置4からの走行指令信号を受信する通信装置6が設けられている。また、車体部2の幅方向両側にはクローラ走行装置8(左側のみ図示)が設けられている。
左右両クローラ走行装置8は、車体前部及び後部に位置して回転可能に支持されたホイール10、12(第1のホイール、第2のホイール)が設けられており、当該ホイール10、12を囲むようにして無端状のクローラベルト14(履帯)が架け渡されている。当該各ホイール10、12の回転に応じてクローラベルト14が回転することで、クローラロボット1が走行する。
【0016】
車体前部のホイール10には高速走行を行うための高速走行用駆動ユニット16が設けられており、車体後部のホイール12には高トルク走行を行うための高トルク走行用駆動ユニット18が設けられている。
詳しくは、図2に示すように、高速走行用駆動ユニット16は、高速用モータ20(第1の回転駆動源)に高速用減速器22が接続され、当該高速用減速器22の出力軸24がブレーキ26(ブレーキ手段)を介してホイール10に接続されている。当該ブレーキ26は出力軸24の回転を抑止する電磁ブレーキであり、当該出力軸24の回転を抑止させることで、ホイール10を介してクローラベルト14による走行を停止させるものである。
【0017】
一方、高トルク走行用駆動ユニット18は、高トルク用モータ28(第2の回転駆動源)に高トルク用減速器30が接続されており、さらに当該高トルク用減速器30に逆入力遮断クラッチ32が接続され、当該逆入力遮断クラッチ32の出力軸34がホイール12に接続されている。なお、高速用減速器22は高速走行を行うために減速比が低く、高トルク用減速器30は高トルク走行を行うために減速比が高く設定されている。
【0018】
逆入力遮断クラッチ32は、高トルク用モータ28の回転が停止し、逆入力遮断クラッチ32の入力軸の回転が0であるときには駆動力の伝達を遮断する遮断状態となり、高トルク用モータ28が回転し、逆入力遮断クラッチ32の入力軸が回転すると、ホイール12への駆動力の伝達を行う接続状態となるよう構成されている。また、逆入力遮断クラッチ32は、ホイール12の回転を受けて出力軸34から駆動力が伝達された場合にも、遮断状態となるよう構成されている。
【0019】
以下、このように構成されたクローラロボット1の走行装置に関するシステム構成を説明する。
クローラロボット1には、各種演算処理等を行うクローラ制御装置40(走行制御手段)が設けられている。
当該クローラ制御装置40は、上記通信装置6と接続されており、遠隔操縦装置4からの走行指令を受信する。また、クローラ制御装置40は、高速走行用駆動ユニット16及び高トルク走行用駆動ユニット18と接続されており、受信した走行指令に応じてこれら各駆動ユニット16、18を制御する。具体的には、走行指令としては、走行速度に関する指令や操舵方向に関する指令が含まれており、クローラ制御装置40は、当該指令内容に応じて高速用モータ20や高トルク用モータ28に回転速度指令値を送り、ブレーキ26を作動させる際にはブレーキ指令を送ることで、クローラロボット1の所望の走行を実現する。また、クローラ制御装置40は、各モータ20、28の駆動状態を監視するため、各モータ20、28が出力する実際の回転速度値情報を取得する。
【0020】
また、クローラ制御装置40には、車両のピッチ角(以下、車両傾斜角という)を検出する車両傾斜センサ42(勾配検出手段)が接続されており、当該車両傾斜センサ42により検出された車両傾斜角情報を取得し、走行路の勾配を算出する。
さらに、クローラ制御装置40には、計時を行うタイマ44が接続されている。
以下、このように構成されたクローラ制御装置40の走行制御について説明する。
【0021】
例えば、遠隔操縦装置4から高速走行となる走行指令が指示された場合、クローラ制御装置40は、当該走行指令内容に応じた回転速度指令値を高速用モータ20に送るとともに、高トルク用モータ28に対しては回転速度0の回転速度指令値を送る。これにより、高トルク用モータ28は停止し、逆入力遮断クラッチ32は遮断され、高速用モータ20のみによる高速走行が行われる。
【0022】
一方、遠隔操縦装置4から高トルク走行となる走行指令が指示された場合、クローラ制御装置40は、当該走行指令内容に応じた回転速度指令値を高トルク用モータ28に送るとともに、高速用モータ20に対しては高トルク用モータ28によるクローラ駆動の負荷とならないような回転速度指令値を送る。具体的には、クローラ制御装置40が受信する各モータ20、28の回転速度値情報と各減速器22、30の減速比に基づき、下記式(1)が成立するように、高速用モータ20に対する回転速度指令値を決定する。
【0023】
高速用モータ回転速度×高速用減速比=高トルク用モータ回転速度×高トルク用減速比・・・(1)
これにより、逆入力遮断クラッチ32が接続されて高トルク用モータ28による高トルク走行が行われ、高速用モータ20は高トルク用モータ28との同期運転により当該高トルク走行の負荷を軽減する。
【0024】
また、クローラ制御装置40は、クローラロボット1が坂道を登坂走行している場合の停車時及び発進時に、坂道を後退するのを防止する坂道走行制御を行う。
以下、本発明に係る走行装置のクローラ制御装置40において実行される坂道走行制御について説明する。
図4を参照すると、本発明に係る走行装置の坂道走行制御ルーチンを示すフローチャートが示されており、以下当該フローチャートに沿って説明する。
【0025】
まず、クローラ制御装置40は、ステップS1として、車両傾斜センサ42からの車両傾斜角情報を取得する。
続くステップS2において、取得した車両傾斜角が予め設定された所定角A(例えば20deg)以上であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち車両傾斜角が所定角A未満であり、平地等の勾配の緩い走行路である場合には当該ルーチンをリターンする。一方、当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち車両傾斜角が所定角A以上の比較的急勾配の坂道を走行している場合には、ステップS3に進む。
【0026】
ステップS3では、クローラ制御装置40は、高トルク走行用駆動ユニット18の逆入力遮断クラッチ32が遮断状態であるか否かの判定を行う。
これは、高速走行用駆動ユニット16が高トルク走行用駆動ユニット18との同期運転を行っているか否かによって判定する。坂道走行で高トルク走行を行っている場合、上述したように高速用モータ20は同期運転を行っているが、クローラロボット1を停止させる走行指令が送られると、各モータ20、28の回転速度が0となる。高トルク用モータ28の回転速度が0になれば、逆入力遮断クラッチ32は遮断される。つまり、逆入力遮断クラッチ32が遮断された時点で、クローラベルト14に対して高速用モータ20のみが接続された状態となり、高速用モータ20のみの回転となることから上記式(1)は成立しなくなる。
【0027】
このことから、逆入力遮断クラッチ32の遮断を検出すべく、クローラ制御装置40は、上記式(1)に基づく下記式(2)により同期運転割合ηを演算する。
同期運転割合η=(高トルク用モータ回転速度×高トルク用減速比)/(高速用モータ回転速度×高速用減速比)・・・(2)
当該同期運転割合ηが所定値αから所定値βの所定範囲にあるとき、即ちα<|η|<βが成立するとき、減速器22、30による減速を加味した高トルク用モータ28と高速用モータ20の回転速度が近く、同期運転中であり、逆入力遮断クラッチ32が接続状態であると判断できる。一方、同期運転割合ηが所定範囲外となれば、同期運転が成立せず、逆入力遮断クラッチ32が遮断されたと判断できる。なお、当該ステップS3と上記ステップS2の判定を行う順序は逆にしても構わない。
【0028】
ステップS3では、以上の方法で逆入力遮断クラッチ32が遮断されたか否かを判定する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち逆入力遮断クラッチ32が接続状態である場合は、高トルク用モータ28もクローラベルト14に接続された状態であり、坂道であっても十分な負荷が生じて停止を維持できるとともに、発進時にも十分なトルクを発生させることができることから、当該ルーチンをリターンする。一方、当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち逆入力遮断クラッチ32が遮断された場合は、クローラロボット1が坂道を後退するのを防止すべくステップS4に進む。
【0029】
ステップS4では、クローラ制御装置40は、高速走行用駆動ユニット16のブレーキ26にブレーキ作動指令を送るとともに、遠隔操縦装置4からの走行指令の受付を停止する。これにより、クローラベルト14の回転を停止させ、高速用モータ20の回転速度も0に維持する。
そして、ステップS5においてタイマ44を駆動し、続くステップS6においてタイマ44の計時時間が所定期間B(例えば3秒)経過したか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である間は、当該ステップS6の判定を繰り返し、真(Yes)となったとき、即ち所定期間B経過したときには、ステップS7に進む。当該所定期間Bはクローラロボット1が停止するのに十分な期間に設定されており、当該期間は遠隔操縦装置4からの走行指令の受付が停止されている。つまり、ここでクローラロボット1を確実に停止させる。
【0030】
ステップS7では、遠隔操縦装置4からの走行指令の受付を再開し、走行指令に応じた高トルク用モータ28への回転速度値を演算し、当該回転速度値を高トルク用モータ28に送ることで、高トルク用モータ28を駆動させ、逆入力遮断クラッチ32の接続を開始させる。一方、高速用モータ20への回転速度値は0に維持し、当該高速用モータ20の駆動を禁止する。これにより、高速用モータ20の駆動力が、車体前部のホイール10、クローラベルト14、車体後部のホイール12を介して、出力軸34へと伝達され、逆入力遮断クラッチ32が遮断されることを防止する。
【0031】
そして、ステップS8では、逆入力遮断クラッチ32が接続されたか否かを検出する。逆入力遮断クラッチ32が接続されていない場合は、高トルク用モータ28は無負荷で回転し、高トルク用モータ28から出力される回転は指令した回転速度値に応じた所望の速度で回転することとなる。したがって、このような場合は、当該判別結果は偽(No)となり、上記ステップS7に戻る。
【0032】
一方、逆入力遮断クラッチ32が接続されると、このとき高速走行用駆動ユニット16のブレーキ26が作動しているために、高トルク用モータ28の負荷が急激に増し、出力される回転速度が急激に低下する。このことから、例えば高トルク用モータ28へ指令した回転速度値に対して、高トルク用モータ28から出力される回転速度値の低下割合が所定割合C(例えば5%)より低下したときに、逆入力遮断クラッチ32が接続されたと判定する。こうして、逆入力遮断クラッチ32が接続されたと判定された場合には、ステップS8の判別結果は真(Yes)となり、ステップS9に進む。
【0033】
ステップS9では、クローラ制御装置40は高速走行用駆動ユニット16のブレーキ26に作動解除指令を送る。なお、ブレーキ解除とともに高速用モータ20への走行指令も再開し、通常の走行制御に復帰した上で、当該ルーチンをリターンする。
以上のように、クローラ制御装置40は、坂道での停車時に逆入力遮断クラッチ32が遮断状態となった場合、ブレーキ26を作動させ確実にクローラロボット1を停止させ、クローラロボット1の後退を確実に防止する。そして、発進時には、逆入力遮断クラッチ32が接続状態になったことを確認した後に、ブレーキ26を解除することで、高トルク用モータ28による十分なトルクで発進することができる。
【0034】
これらのことから、本発明に係る走行装置では、高トルク走行が必要な坂道走行時において、逆入力遮断クラッチ32が遮断された場合でも、車両の後退を確実に防止し、安定した坂道停車及び坂道発進を実現させることができる。
以上で本発明に係る走行装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
【0035】
例えば、上記実施形態では、操縦者の遠隔操作に応じて動作するクローラ走行装置付き無人車両であるクローラロボット1に本発明に係る走行装置を適用しているが、当該走行装置の適用はこれに限られるものではない。例えば自律走行型のクローラロボットにも適用は可能である。
また、上記実施形態は車体前部及び後部のホイール10、12それぞれに駆動ユニット16、18を設け、いずれか一方を駆動ホイールとしてクローラベルトを回転させる構成であるが、例えば、高速走行用駆動ユニット及び高トルク走行用駆動ユニットを共通のホイールに接続し、当該ホイールを駆動ホイールとしてクローラベルトを回転させる構成のクローラ走行装置にも適用可能である。
【0036】
また、上記実施形態はクローラ式の走行装置であるが、クローラ式でなくタイヤ車輪により駆動する車両においても適用可能であり、例えば前輪に高速走行用駆動ユニット、後輪に高トルク走行用駆動ユニットを備えた走行装置であっても構わない。
また、上記実施形態では、ブレーキは電磁ブレーキであり、出力軸24の回転を直接抑止するものであるが、ブレーキ手段はこれに限られるものではなく、例えばクローラベルトの回転を停止する可動式のくさび機構であっても構わない。
【符号の説明】
【0037】
1 クローラロボット
4 遠隔操縦装置
8 クローラ走行装置
10 ホイール(第1のホイール)
12 ホイール(第2のホイール)
14 クローラベルト(履帯)
16 高速走行用駆動ユニット
18 高トルク走行用駆動ユニット
20 高速用モータ(第1の回転駆動源)
22 高速用減速器
26 ブレーキ(ブレーキ手段)
28 高トルク用モータ(第2の回転駆動源)
30 高トルク用減速器
32 逆入力遮断クラッチ
40 クローラ制御装置(走行制御手段)
42 車両傾斜センサ(勾配検出手段)
44 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転駆動源及び該第1の回転駆動源よりも高いトルクを出力する第2の回転駆動源の少なくともいずれか一方により回転体を駆動して走行する走行装置において、
前記第2の回転駆動源と前記回転体との間に設けられ、前記第2の回転駆動源からの駆動力が伝達されると前記第2の回転駆動源と前記回転体との間で駆動力を伝達する接続状態となり、前記第2の回転駆動源停止時または前記回転体から前記第2の回転駆動源へ駆動力が伝達されると前記第2の回転駆動源と前記回転体との間の駆動力を遮断する遮断状態となる逆入力遮断クラッチと、
前記回転体の回転を停止させるブレーキ手段と、
走行路の勾配を検出する勾配検出手段と、
前記勾配検出手段により検出された勾配が所定のしきい値以上であるときに、前記逆入力遮断クラッチが遮断状態となった場合には、前記ブレーキ手段により前記回転体の回転を停止させるとともに、前記第2の回転駆動源による駆動力を発生させて前記逆入力遮断クラッチを接続させるよう制御する走行制御手段と、
を備えることを特徴とする走行装置。
【請求項2】
前記走行制御手段は、前記勾配検出手段により検出された勾配が所定のしきい値以上であって、前記逆入力遮断クラッチが遮断状態となったことで、前記ブレーキ手段により前記回転体の回転を停止させるとともに、前記第2の回転駆動源の駆動力を発生させて前記逆入力遮断クラッチを接続させる際、前記逆入力遮断クラッチが接続されるまでは、前記第1の回転駆動源の駆動を禁止することを特徴とする請求項1記載の走行装置。
【請求項3】
前記回転体は、第1のホイール及び第2のホイールに架け渡された無端状の履帯からなり、
前記第1の回転駆動源は前記第1のホイールに接続され、
前記第2の回転駆動源は前記逆入力遮断クラッチを介して前記第2の回転体と接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−121552(P2011−121552A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282933(P2009−282933)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】