説明

走行車両の建屋の支持フレーム

【課題】走行車両の作動時に支持フレームに作用する荷重の低減を図り、もって支持フレームの変形や損傷を抑制して、支持フレームの耐久性を向上させる。
【解決手段】センタービーム10に立設した前後の柱21,21と、それらの上端部を架け渡した梁22とからなる支持フレーム20において、梁22を途中で分割した分割梁22a,22bとなし、両分割梁22a,22bを弾性部材24aを有する弾性連結部材24で連結するようになし、その連結位置は、柱21への連結部から等距離とはなっておらず、分割梁22a,22bの長さは異なっており、支持フレーム20は弾性連結部材24の位置を中心として前後に非対称となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の建屋等のように、走行車両に設置される建屋の骨組構造として機能する支持フレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行車両として、例えば建設機械の代表例として、油圧ショベルは下部走行体に旋回装置を介して上部旋回体を設置したものからなり、上部旋回体には、オペレータが搭乗して機械を操作するための運転室が設けられている。また、上部旋回体には、土砂等の掘削作業手段等と共に、建屋が設けられており、この建屋の内部にはエンジン,油圧ポンプ,コントロールバルブ等の機器類が設置されている。
【0003】
建屋は、例えば特許文献1に示されているような構成となっている。即ち、上部旋回体を構成する旋回フレームの所要箇所に立設した複数の柱と、複数の柱間に架け渡した梁や桁から建屋の骨組構造が構成され、この骨組構造にサイドカバー及びルーフカバー装着され、また必要に応じて開閉カバーやアンダーカバーが設けられる。そして、前述した機器類は建屋の内部空間に設置される。これら各種のカバー部材は金属の薄板から構成され、建屋における支持フレーム等に取り付けられることになる。ここで、柱と梁とは概略直交する方向に延在されており、これら柱や梁はそれぞれ独立の部材から構成し、若しくはロッド状の部材を曲げ加工することにより一体的に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−204595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建設機械は不整地を走行するものであり、掘削作業手段により土砂の掘削等の作業が行われるものである。走行したり、作業を行ったりする間には、上部旋回体は振動することになる。振動は、主に、上部旋回体の左右方向の軸回りに回転振動するピッチング振動や、上部旋回体の前後方向の軸回りに回転振動するローリング振動であり、またこれらの振動が複合的に発生する。このために、支持フレームには圧縮、引っ張り、曲げ、捩じれ等、様々な方向に変形させようとする荷重が作用する。特に、支持フレームには、カバー部材が連結されており、従って支持フレームに対して所定の重量を支持している。支持フレームには、この状態で、大きな荷重が繰り返し頻繁に作用することになる。
【0006】
以上の結果、支持フレームに金属疲労を生じさせる等により、支持フレームを変形させたり、損傷を生じさせたりするおそれがある。特に、エンジンルームを構成する支持フレームのように、梁が架け渡されている柱と柱との間の間隔が大きいときには、振動により支持フレームが大きく揺れることになり、特に柱と梁との間のコーナー部分に集中的な荷重が作用して変形や損傷を発生するおそれがある。
【0007】
以上のことから、支持フレームの強度を向上させるために、支持フレームそのものの剛性を高くすることが考えられる。しかしながら、支持フレームの剛性を高くすると、支持フレームが大型化し、また重量化するといった問題点がある。ところで、支持フレームに角材をクロスさせて設けることにより筋交いを構成し、この筋交いを補強部材とすれば、支持フレームの保形性が向上することになり、支持フレームの変形や損傷を抑制することができる。しかしながら、建屋内に設置される機器類として、エンジンのような大型の機器の設置部にはこのエンジンを跨ぐようにして筋交いを設けることができない等というように、筋交いのような機構を設置するスペースが得られない場合がある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、走行車両の作動時に支持フレームに作用する荷重の低減を図り、もって支持フレームの変形や損傷を抑制して、支持フレームの耐久性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は、走行車両の走行フレームに立設され、建屋の骨組構造を構成し、複数の柱と、2本乃至それ以上の数の柱の間に架け渡すように設けられる梁とを含む支持フレームであって、前記梁は、その長さ方向の途中位置で分割した分割梁となし、この分割梁の間を連結部材で相対変位可能に連結する構成となし、前記各分割梁の前記柱への連結部から前記連結部材までの長さ寸法が相互に異なっていることをその特徴とするものである。
【0010】
車両が走行し、また作業手段により作業を行っている際には、梁が振動することになるが、この梁に作用する振動は走行車両の走行フレームに立設した柱から伝達されるものである。前後に設けた柱と、これら両柱間に架け渡されている梁とが一体物として構成されていると、振動は支持フレーム全体に及ぶことになり、支持フレーム全体が左右方向、前後方向若しくは捩じれ方向に大きく振動することになる。
【0011】
一方の柱から伝達される振動と、他方の柱から伝達される振動との間で共振等を生じないようにする。このために、梁を分割して、分割梁の一方を他方に対して相対変位可能に連結する。この分割梁の分割位置は、それぞれが連結されている柱からの距離が等しくない位置とし、従って梁の分割位置を中心としたときに、非対称となるように分割した構成となっている。これによって、それぞれ柱から伝達される分割梁の動きにおいて、一方側の分割梁の動きと他方側の分割梁の動きとに差が生じ、共振することはない。そして、この両分割梁の動きの差により相互の動きが干渉することになって、連結部材により吸収される。
【0012】
従って、連結部材は両分割梁の相対変位を許容することが必要となる。連結部材をゴム等の弾性部材で構成すれば、制限された範囲で圧縮方向や、引っ張り方向及び剪断方向に相対変位可能となり、効率的に振動が吸収される。ここで、連結部材を弾性連結部材として構成するにしても、支持フレームに荷重や衝撃が作用したときにも、支持フレーム全体としての強度及び保形性を確保する必要がある。従って、連結部材はある程度の硬度を持たせる必要がある。ただし、連結部材を構成する弾性部材の硬度をあまり高くすると、振動の吸収機能が低下することになる。
【0013】
ところで、分割梁の部位において、支持フレームの強度及び剛性が必要なのは、連結部材を剪断する方向である。そこで、連結部材の剪断方向の動きの許容範囲を規制することによって、弾性部材の硬度を低下させても、支持フレームとしての強度及び剛性を確保することができる。このためには、連結部材と一体的に、若しくは連結部材とは別部材として、弾性連結部材の剪断方向への変位量を規制する振動規制部材を設けるようにすることができる。
【0014】
ここで、支持フレームのうち、振動によりダメージを受ける可能性が最も高いのは、柱と梁と間のコーナー部分である。そして、このコーナー部分にダメージを与える大きい負荷が作用するのは、梁が連結されている両側の柱が相互に近接・離間する方向の動きであり、このときには分割梁の連結部に対して圧縮されたり、引っ張られたりする方向の力が加わることになる。そこで、連結部材を構成する分割梁の動きの許容方向としては、分割梁が近接・離間する方向のみとし、それ以外の方向については、剛性を持たせるようにすることができる。例えば、筒状若しくは軸状部材に分割梁の端部に連結したスライド部材と、両スライド部材間に介装したばねとから構成するか、またばねに代えてオイルやエア等の流体を封入する構成としたダンパから構成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
走行車両の建屋を構成する支持フレームにおいて、走行車両が作動時にこの支持フレームに作用する荷重が低減されるようになり、支持フレームの変形や損傷が抑制されて、支持フレームとしての耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】走行車両の一例としての油圧ショベルを示す外観図である。
【図2】図1の油圧ショベルにおける上部旋回体に設置される建屋の骨組構造を示す外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の一形態を示す支持フレームの外観斜視図である。
【図4】図3の支持フレームの正面図である。
【図5】分割梁の連結部材としての弾性連結部材の分解斜視図である。
【図6】本発明における分割梁間の連結部材に関する第2の実施の形態を示す外観斜視図である。
【図7】図6の分解斜視図である。
【図8】本発明における分割梁間の連結部材に関する第3の実施の形態を示す外観斜視図である。
【図9】図8の分解斜視図である。
【図10】本発明における分割梁間の連結部材に関する第4の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1において、建屋を有する走行車両の一例として、油圧ショベルを示す。なお、本発明はこの油圧ショベルに限定されるものではなく、要は建屋を有する走行車両一般に適用できるものである。図中において、1はクローラ式の走行手段を設けた下部走行体であり、この下部走行体1には旋回装置2を介して上部旋回体3が設けられている。
【0018】
上部旋回体3は、旋回フレーム4にオペレータが搭乗して油圧ショベルの操作を行うための運転室5が設けられ、また作業手段としての掘削作業手段6が装着されている。これら運転室5及び掘削作業手段6は旋回フレーム4の前方側に設けられており、旋回フレーム4の後部にはカウンタウエイト7が設置されている。さらに、運転室5及び掘削作業手段6とカウンタウエイト7との間の位置には建屋8が設けられている。
【0019】
掘削作業手段6は、ブーム6aと、アーム6b及びバケット6cから構成されており、作業の種類によっては、バケット6cに代えて、ブレーカ等、他のアタッチメントが交換して装着されることになる。ブーム6aは上部旋回体3の旋回フレーム4に俯仰動作可能に設けられており、アーム6bはブーム6aの先端において、上下方向に回動可能となっている。バケット6cはアーム6bにリンク機構を介して連結されており、これらブーム6a,アーム6b及びバケット6cは、それぞれ油圧シリンダにより駆動される。
【0020】
図2に旋回フレーム4及び建屋8との骨組構造の概略構成を示す。まず、旋回フレーム4は、左右一対設けたセンタービーム10,10と、これらセンタービーム10と平行に設けたサイドフレーム11と、センタービーム10,10間及びセンタービーム10とサイドフレーム11との間に架け渡すようにして設けた複数の横ビーム12とを有するものである。掘削作業手段6はセンタービーム10の前方位置に装着されており、またセンタービーム10の後方にカウンタウエイト7が設置されている。
【0021】
建屋8は図1に示したように周囲と上面部とはカバー部材13により覆われている。これらカバー部材13は骨組構造部14等に支持される構成としている。建屋8の骨組構造部14のうち、エンジン(図示せず)が設置されているエンジンルーム15における骨組構造の部分の構成を図3及び図4に示す。
【0022】
エンジンルーム15の骨組構造としては、2本のセンタービーム10,10にそれぞれ立設した支持フレーム20,20を有し、これら両支持フレーム20,20は、各支持フレーム20の前後の位置に立設した柱21,21と、両柱21,21間に架け渡して設けた梁22とから構成されている。また、両支持フレーム20,20間には、各柱21間と、各梁22間とを架け渡すようにして桁23が設けられている。そして、これら支持フレーム20を構成する柱21,梁22,桁23には建屋8の壁面を構成するカバー部材が適宜固定されることになる。
【0023】
油圧ショベルは建設工事現場等といった不整地を走行するものであり、また掘削作業手段6により土砂の掘削等の作業が行われる。さらに、掘削作業手段6により土砂の掘削を行い、バケット6cに土砂を取り込んだ状態で、旋回装置2を作動させて、上部旋回体3を旋回させて、ダンプトラックに土砂を積載し、再び掘削位置まで旋回させる等といった動作が行われる。従って、油圧ショベルの稼働中は、上部旋回体3には、繰り返して、ピッチング振動やローリング振動が生じ、しかもこれらが同時に複合的に生じることになる。特に、センタービーム10には、その前方部位に掘削作業手段6が設けられており、後方部位にはカウンタウエイト7が設置されているので、繰り返し様々な方向に振動することになる。
【0024】
ここで、センタービーム10は、垂直板10aと、この垂直板10aの上下に固着した所定幅を有する水平板10b,10cとからなる断面がI型の構成からなり、前後方向に長手となっている。従って、掘削作業手段6のバケット6cを接地させたときには、その反力でカウンタウエイト7が沈み込んだり浮き上がったり、土砂を掬い上げる際にはカウンタウエイト7が沈み込むというように、センタービーム10にはピッチング振動が発生する。また、車両は不整地を走行することから、地面の突起部を乗り越えたとき等にも、同様、センタービーム10にピッチング振動が発生することになる。また、カウンタウエイト7が左右に揺動すること等から、このカウンタウエイト7が設置されているセンタービーム10がその長手方向の軸回りに振動するローリング振動も発生する。
【0025】
これらの振動は、センタービーム10に取り付けられている支持フレーム20にも伝達される。支持フレーム20における前後一対の柱21,21は、センタービーム10に所定の間隔をもって固定され、梁22は柱21,21の上端部間を架け渡すようにして設けられている。従って、センタービーム10が振動すると、この振動は支持フレーム20にまで伝達され、この支持フレーム20の全体が曲げられたり、捩じられたりすることになり、また柱21が前後に揺動することにより梁22が圧縮されたり、引っ張られたりすることになる。
【0026】
センタービーム10に作用する振動のうち、最大のものはピッチング振動であり、このときには支持フレーム20は、図4に仮想線で示したように、柱21が前後に大きく揺動することになる。その結果、両柱21,21間を架け渡している梁22が圧縮する方向に変形したり、引っ張り力が作用したりする結果、梁22と柱21との間のコーナー部分に応力が集中して、亀裂が生じる等といった損傷を受けるおそれがある。
【0027】
以上の振動による負荷を軽減するために、梁22を一体物で構成するのではなく、中間で分割することにより、分割梁22a,22bを構成している。しかも、分割梁22a,22b間は連結部材により連結されており、この連結部材は弾性連結部材24となっている。即ち、図5に示したように、分割梁22a,22bの相対向する端部には、それぞれ端板25が固着して設けられており、これらの端板25にはボルト挿通孔25aが板厚を貫通する状態に穿設されている。弾性連結部材24は、ゴム等の弾性部材をブロック状に形成した弾性部材24aを有し、この弾性部材24aの両端部には取付板24b,24bが固着して設けられており、この取付板24bにはボルト26が外方に向けて突出するように設けられている。これら両取付板24bは、端板25に設けたボルト挿通孔25aに挿通させるようにして取付板24bに当接させ、端板25の外側からナット27をボルトに螺合させることにより弾性連結部材24は分割梁22a,22b間に固定される。
【0028】
梁22の分割位置は、その柱21への連結部から等距離とはなっておらず、分割梁22a,22bの長さは異なっている。従って、支持フレーム20は弾性連結部材24の位置を中心として前後に非対称となっている。なお、本実施の形態では、後方側の分割梁22bが長尺となっているが、前方側の分割梁22aを長尺にすることもできる。また、両分割梁22a,22bの長さ寸法に極端な差を持たせたり、寸法差が殆どないように設定したりするのではなく、ある程度の寸法差、例えば長い方の分割梁を短い方の分割梁の1.2〜1.5倍程度とするのが望ましい。
【0029】
油圧ショベルの作動中には、センタービーム10に振動が発生する。センタービーム10には支持フレーム20が設けられているので、センタービーム10の振動は支持フレーム20に伝達される。支持フレーム20を構成する前後の柱21,21は、間隔をあけて設けられており、様々な方向に振動したり、揺動したりする。支持フレーム20にピッチング振動が発生すると、梁22の両端が連結されている柱21,21が前後方向及び斜め方向に振動することになる。ここで、梁22は弾性連結部材24を設けた分割梁22a,22bから構成されており、弾性連結部材24は伸縮可能であり、また剪断方向にも弾性変形可能である。従って、支持フレーム20にピッチング振動が生じても、弾性連結部材24の弾性部材24aが弾性変形してずれが生じる。その結果、柱21と梁22との間のコーナー部分等における応力集中が低減され、この部位に亀裂や損傷等が発生するおそれは少なくなる。
【0030】
ここで、ピッチング振動を吸収するために、梁22を分割して分割梁22a,22bとしており、これら分割梁22a,22bの先端部間は弾性連結部材24により弾性的に連結されている。このために、支持フレーム20に作用する振動に基づいて分割梁22a,22bが共振状態になると、その振動の振幅が大きくなる可能性がある。しかしながら、分割梁22aと分割梁22bとでは柱21への連結部からの長さが異なっているので、先端が振動するにしろ、少なくともその振幅が一致せず、また振動周波数も異なるものとなる。従って、分割梁22a,22bが共振することはなく、むしろ相互の動きを打ち消す方向に作用することになる。
【0031】
ところで、支持フレーム20は、両側の柱21,21とその間に架け渡した梁22とから構成されるものであって、梁22を分割梁22a,22bとし、その間に弾性連結部材24を介在させていることから、弾性連結部材24を構成する弾性部材24aはある程度の硬度を持たせるにしても、支持フレーム20の強度なり保形性が低下して、荷重が作用すると、例えば梁22を上方から押圧する力が作用すると、弾性部材24aが剪断する方向に変形して、その本来の形状を維持できなくなって、梁22の中央部分が凹状に湾曲変形するおそれがある。また支持フレーム20のいずれかの部位に衝撃的荷重が作用すると、柱21と分割梁22a,22bとの間のコーナー部分が変形してしまうおそれもある。そこで、弾性連結部材24の弾性部材24aの剪断方向への変位量を規制する振動規制部材30を備えている。
【0032】
建屋8においては、エンジンルーム15を構成する部位では、上方に開放可能なエンジンカバー16が装着されている関係から、胴縁31が設けられる。振動規制部材30は、この胴縁31の部位に設けられており、支持フレーム20の保形機能を発揮させることができる。即ち、図3から明らかなように、前後の柱21,21の高さ方向の中間位置に分割胴縁31a,31bを設けて、一方の分割胴縁31aと他方の分割胴縁31bとの間を所定の長さ分だけ重なり合うようにする。そして、両分割胴縁31a,31bの重畳部にゴム等の緩衝部材32を介在させて連結する。ここで、緩衝部材32は薄いシート状のものとする。これによって、胴縁31は、緩衝部材32の伸縮量に応じて限定された範囲内で上下方向に曲げは可能であるものの、分割胴縁31a,31bを重ね合わせたことにより分割梁22a,22bに上方から押圧力が作用しても、緩衝部材32の撓み量を越えて凹状に湾曲するのを防止でき、弾性連結部材24の剪断方向の変位量を規制して、支持フレーム20全体の保形性が確保される。
【0033】
ここで、支持フレーム20の分割胴縁31a,31b間の連結部において、センタービーム10の振動等を吸収することにより緩衝機能を発揮させ、しかも振動規制機能を発揮させる機能を持たせることができる。このためには、連結部材を図6及び図7に示したように構成する。即ち、弾性連結部材24における取付板24bと、端板25との間に、振動規制部材40を介在させる。
【0034】
振動規制部材40は、雌側規制部41と雄側規制部42とから構成され、雌側規制部41は端板25と取付板24bとの間に挟持される鉛直板部41aと、この鉛直板部41に高さ方向に位置を違えて設けた一対の挟持板部41b,41cとから構成され、下側の挟持板部41cには、その張り出し先端部を上方に向けて直角に曲折させた抱持用延在板部41dが設けられている。
【0035】
一方、雄側規制部42は、端板25と取付板24bとの間に挟持される鉛直板部42aと、この鉛直板部42aの下端部を90度曲折することにより形成した規制板部42bとから構成されている。そして、この規制板部42bは雌側規制部41の上下の挟持板部41b,41cの間に挿入されるようにして組み込まれている。従って、雌側規制部41の挟持板部41b,41c間の間隔は雄側規制部42の規制板部42bの厚みより広くなっており、その間にシート状の弾性部材43,43を介装させている。従って、分割梁22a,22bが上下にずれる方向への相対移動範囲、つまり弾性連結部材24の弾性部材24aを剪断する方向の動きが、雌側規制部41の挟持板部41b,41cの間での雄側規制部42の規制板部42bの上下動の可能範囲に規制される。
【0036】
また、抱持用延在板部41dは、雄側規制部42の鉛直板部42aを回り込んで、この鉛直板部42aの背面と所定の間隔をもって対面している。従って、雌側規制部41と雄側規制部42とは、相互に近接・離間する方向の動き、つまり弾性連結部材24の弾性部材24aの伸縮方向への動きが、抱持用延在板部41dと鉛直板部42aの背面との間の間隔及び雄側規制部42の規制板部42bの端面と鉛直板部41aとの間の間隔に規制されることになる。
【0037】
なお、雌側規制部41及び雄側規制部42の各鉛直板部41a,42aにはボルト挿通用の凹溝44,44が設けられており、取付板24bに突設したボルト26はこの凹溝44を介して端板25のボルト挿通孔25aに挿通されることになる。
【0038】
このように構成することによって、支持フレーム20に様々な方向への振動等が生じても、弾性連結部材24が弾性変形することにより吸収されて、柱21と梁22との間のコーナー部分等に亀裂や損傷等が発生するのを防止できる。しかも、荷重の作用による梁22の撓みや変形は振動規制部材40の作用で抑制され、支持フレーム20の形状を安定させることができる。
【0039】
さらに、図8及び図9のように、振動規制部材50を有する連結部材として構成することもできる。この振動規制部材50は、図6,図7の構成と同様、雌側規制部51と雄側規制部52とから構成されている。雌側規制部51は鉛直板部51aの下端部に水平方向に延在されている延在板部51bが設けられ、この延在板部51bには立ち上がり壁51c,51dが設けられている。さらに、延在板部51bの先端側立ち上がり壁51dの上端部は内向きに90度曲折した規制板部51eが形成されている。一方、雄側規制部52は鉛直板部52aと、この鉛直板部52aの下端部に90度曲折した規制板部52bとを有するものである。
【0040】
規制板部52bは雌側規制部51の延在板部51bと規制板部51eとの間の間隔内に位置していることから、分割梁22aと分割梁22bとは、その間の間隔分だけ上下方向に相対移動可能となり、弾性連結部材24の弾性部材24aを剪断する方向の動きが規制される。また、鉛直板部52aの背面は雌側規制部51の立ち上がり壁51bと所定の間隔を置いて対面しており、分割梁22aと分割梁22bとが近接・離間する方向の動きは、この間隔分に規制される。その結果、支持フレーム20の保形性が確保される。
【0041】
既に説明したように、支持フレームに作用する負荷に対しては、柱と梁とを連結するコーナー部分に応力が集中し、その結果この部位に損傷や変形が生じる可能性が高くなるために、センタービームに作用するピッチング振動によって、柱が前後方向に揺動することになる。従って、梁を分割して、前後の分割梁を前後方向に相対移動可能とすることによって、支持フレームの柱と梁との間のコーナー部分に応力が集中するのを緩和するが、これ以外の方向については、つまり、上下方向の動きに対しては、必ずしも緩衝性を持たせる必要はなく、曲げに対する強度を高めて、保形性を良好にすることもできる。このために、分割梁22aと分割梁22bとの間の連結部材としては、図10に示したように構成することができる。
【0042】
即ち、分割梁22aと分割梁22bとの間を離間させるように配置し、これら分割梁22a及び分割梁22bに軸挿通部材60,60を固定して設ける構成となし、軸挿通部材60には挿通孔60aが貫通するように穿設されている。挿通孔60aには軸部材61が摺動可能に挿通されており、この軸部材61は、分割梁22aに設けた軸挿通部材60から分割梁22bに設けた軸挿通部材60の挿通孔60aに挿通させている。また、軸部材61の両端部には、ばね受けフランジ62,62が設けられており、両ばね受けフランジ62と軸挿通部材60の端面との間と軸挿通部材60,60間とにそれぞればね63が介装されている。
【0043】
以上のように構成することによって、一方の柱21とこの柱21に連結されている分割梁22aとが振動したときには、この分割梁22aに固定して設けた軸挿通部材60と軸部材61の端部に設けたばね受けフランジ62との間に設けたばね63と、分割梁22bに固定して設けた軸挿通部材60との間のばね63とが伸縮する結果、その間で振動の吸収及び緩衝作用が発揮される。また、分割梁22b側でも、この分割梁22bに設けた軸挿通部材60の両端に作用するばね63の伸縮により振動の吸収及び緩衝作用が行われ、これら分割梁22a,22bに圧縮力や引っ張り力が作用するのを防止できる。従って、分割梁22a,22bと柱21との間の曲折部の損傷や変形が防止される。
【0044】
そして、支持フレーム20に作用するカバー部材等の重量物による押圧力や外部からの物体の衝突等による衝撃力が支持フレーム20のいずれかの部位に作用しても、梁22は、分割梁22aから軸部材61を介して他方の分割梁22bと実質的に一体物を構成しているので、変形や潰れ等を生じることはない。挿通孔60aの孔径と軸部材61の外径との径差は、少なくとも軸部材61が摺動変位可能なようになし、また多少の径差を持たせると、分割梁22aと分割梁22bとの間に上下方向にずれが生じても、この径差分で吸収できるようになる。
【符号の説明】
【0045】
1 下部走行体 3 上部旋回体
6 掘削作業手段 7 カウンタウエイト
8 建屋 10 センタービーム
14 骨組構造 20 支持フレーム
21 柱 22 梁
22a,22b 分割梁 24 弾性連結部材
24a 弾性部材 24b 取付板
25 端板 26 ボルト
27 ナット 31 胴縁
31a,31b 分割胴縁 32 緩衝部材
40,50 振動規制部材 41,51 雌側規制部
42,52 雄側規制部 60 軸挿通部材
61 軸部材 63 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両の走行フレームに立設され、建屋の骨組構造を構成し、複数の柱と、2本乃至それ以上の数の柱の間に架け渡すように設けられる梁とを含む支持フレームであって、
前記梁は、その長さ方向の途中位置で分割した分割梁となし、この分割梁の間を連結部材で相対変位可能に連結する構成となし、
前記各分割梁の前記柱への連結部から前記連結部材までの長さ寸法が相互に異なっている
ことを特徴とする走行車両の建屋の支持フレーム。
【請求項2】
前記連結部材は弾性連結部材で連結する構成したことを特徴とする請求項1記載の走行車両の建屋の支持フレーム。
【請求項3】
前記両分割梁を連結している前記弾性連結部材の少なくとも剪断する方向への弾性変形量を規制する振動規制部材を備えていることを特徴とする請求項2記載の走行車両の建屋の支持フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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