説明

走行車両用キャビンのドア取付支柱

【課題】ドア取付支柱とドアの取り付け基部後縁部からの雨水浸入を防止する。
【解決手段】 ドア取付支柱が筒形状に形成されていて、ドア取付面96に上下ヒンジ90を介してドア35が取り付けられており、前記ドア取付面96には上下ヒンジ90間にドア35側に膨出してドア35との間隙を小さくする膨出部99が形成され、該膨出部99の外面は、前記ドアの閉状態におけるドアの外面と略同一に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両用キャビンのドア取付支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりトラクタ等の走行車両に設けられたキャビンには、キャビンの出入りをするためにドアが設けられている。ドアはキャビンの骨格をなすキャビンフレームの支柱にヒンジを介して取り付けられている(例えば特許文献1)。
この種のドア取付支柱では、ドアを取り付けるドア取付面の上下両端部にヒンジが取り付けられており、この上下ヒンジを介してドアが取り付けられている。
【特許文献1】特開2003−34272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のドア取付支柱では、ドアを取り付けたとき、上下ヒンジ間におけるドアの取付基部の後縁部を覆う物がなく前記後縁部が露出状態となるので、ドア取付支柱と後縁部との間から雨水等がキャビン内に入る恐れがあった。
そこで、上下ヒンジ間における後縁部が露出状態とならないように、上下ヒンジ間のドア取付支柱の取付面にドアの後縁部に沿って防水プレート等を設けることで、ドア取付支柱とドアの後縁部とにおける防水性を確保することが考えられる。しかしながら、防水プレートを設けることで製造コストが上がると共に、防水プレートの取付作業が非常に面倒であった。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、簡単な構成でしかも安価にドアとの防水性を確保できる走行車両用キャビンのドア取付支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。即ち筒形状に形成されていて、ドア取付面に上下ヒンジを介してドアが取り付けられており、前記ドア取付面には上下ヒンジ間にドア側に膨出してドアとの間隙を小さくする膨出部が形成されている点にある。
これによれば、上下ヒンジ間に膨出部を設けることで、ドアと支柱との間隙を小さくすることができるので、ドアと支柱とにおける防水性を向上させることができる。しかも、支柱のドア取付面をドア側に膨出させているだけなので、製造が非常に簡単であり、防水プレートを設ける必要がないので、製造コストも低減することができる。
【0006】
本発明における課題解決のための他の技術的手段は、前記ドア取付面の膨出部の外面は、前記ドアの閉状態におけるドアの外面と略同一に設定されている点にある。
本発明における課題解決のための他の技術的手段は、前記ドア取付面から膨出部を膨出するための起立面は、前記ドアの周囲縁のシール部材がドア取付面に当接したときに近接する位置に形成されている点にある。
本発明における課題解決のための他の技術的手段は、キャビン内面側の内面部材とキャビン外面側の外面部材とを接合してキャビン内空気調整用のエア通路を有する筒状に形成されており、前記外面部材に膨出部を有するドア取付面が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
簡単な構成でしかも安価にドアとの防水性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図4において、1はトラクタの車体で、エンジン2、ミッションケース3等を直結して構成され、車体1の前側に、エンジン2等を覆うボンネット5が設けられると共に、左右一対の前輪6が設けられ、車体1の後部側に左右一対の後輪7が設けられると共に、後輪7を覆う図示省略の左右一対の後輪フェンダが設けられている。また、車体1の後部にはキャビン9が搭載されている。
図4〜図10において、キャビン9は骨組みとなるキャビンフレーム11を備える。このキャビンフレーム11は、箱形枠形状を呈しており、前部に配置された左右一対の前支柱12と、後部に配置された左右一対の後支柱13とを備えると共に、左右一対の前支柱12の上端部間を連結する上前枠15と、左右一対の後支柱13の上端部間を連結する上後枠16と、左右の同じ側にある前後支柱12,13の上端部間を連結する左右一対の上側枠17と備える。なお、上前枠15と上後枠16と左右一対の上側枠17とで上枠部材を構成している。
【0009】
また、キャビンフレーム11は、左右一対の後支柱13の下端部間を連結する下後枠21と、左右の同じ側にある前後支柱12,13の下端部間を連結する左右一対の下側枠22と、左右一対の前支柱12の下部間に配置したフロントパネル23と、前支柱12の下端部とフロントパネル23とを連結する左右一対の下連結枠24と、上後枠16と下後枠21とを連結する左右一対の後連結枠25と、下後枠21から前下がり方向に下方突出した左右一対の下傾斜枠27と、左右の同じ側にある下連結枠24と下傾斜枠27とをそれぞれ連結する左右一対の下支持枠28とを備える。左右一対の下側枠22は、後輪フェンダの上面に沿うように円弧状に形成された円弧枠体22aと、円弧枠体22aの前端部と前支柱12の下端部とを連結する前枠体22bとを有している。フロントパネル23は、キャビンフレーム11の前面側下部の左右方向中央側に配置され、エンジン2側(ボンネット5内) と後述するキャビン室43側(キャビン9の室内と室外)とを仕切る隔壁とされている。
【0010】
キャビンフレーム11の底部に、鋼板によって形成されたフロアシート31が設けられ、フロアシート31の左右両側に、後輪フェンダの内側に配置される左右一対のサイドパネル32が設けられている。
左右一対の前支柱12は、上下方向両端から上下方向中央に行くに従って徐々に左右方向外方に向かうように外側方膨出状に湾曲され、左右一対の前支柱12の上下方向中央よりも上部側が、上端に行くに従って徐々に後方に向かうように後方傾斜状に湾曲されている。左右一対の後支柱13は、一対の前支柱12の上半部に対応して、上端から下端に行くに従って左右方向外方に向かうように湾曲されている。
【0011】
上前枠15は、左右方向両端から左右方向中央に行くに従って上方に向かうように上方膨出状に湾曲され、左右一対の上側枠17は、前後方向両端から前後方向中央に行くに従って左右外方に向かうように外側方膨出状に湾曲されている。上後枠16はその左右両端部が、左右方向外方に行くに従って徐々に大きく前方に向かうように湾曲されている。下後枠21は、上後枠16に対応してその左右両端部が、左右方向外方に行くに従って徐々に大きく前方に向かうように湾曲されている。
上側枠17の両端部は中央部に比べて幅広に形成され、上側枠17の両端部の上下幅はそれぞれ前後支柱12、13に近づくにしたがってその上側枠17の両端部の下面が下側に向かうように広がっている。また、上側枠17の前端側の左右幅は、前支柱12に近づくにしたがって上側枠17の内側が左右方向内側に向かうように広がっている。
【0012】
即ち、図10、11に示すように、上側枠17は上下壁17a,17bを側壁17cで連結して断面略コ字形に形成されている。下壁17bの両端部は下方に屈曲していて前後支柱12、13に近づくにしたがって中途部よりも左右に広がっていると共に、側壁17cの両端部は前後支柱12、13に近づくにしたがって中途部よりも上下に広がっており、これにより、側面視で略三角形状の縦リブ38が形成されている。上壁17aの前端部は前支柱12に近づくにしたがって中途部よりも左右に広がっており平面視で略三角形状の横リブ46が形成されている。
【0013】
したがって、上側枠17が縦リブ38及び横リブ46を有しているために補強部材を介さなくても上側枠17を前後支柱12、13や上前枠15に強固に取り付けることが可能となる。
上後枠16の両端部は中央部に比べて幅広に形成され、上後枠16の両端部の上下幅は、それぞれ後支柱13に近づくにしたがってその上後枠16の両端部の下面が下側に向かうように広がっている。即ち、上後枠16も上記上側枠17と同様に断面略コ字形に形成されており、上後枠16を構成する下壁の両端部は下方に屈曲していて側面視で略三角形状の縦リブ38が形成されている。
【0014】
フロアシート31は、前側の水平板部31aと後側の傾斜板部31bとを有し、水平板部31aは左右一対の下支持枠28上に水平に配置され、傾斜板部31bは左右一対の下傾斜枠27間に配置されて、水平板部31bの後端からから後上がりに傾斜されている。傾斜板部31bの左右両端部は左右一対の下傾斜枠27上に重合されて、下傾斜枠27に固着されている。フロアシート31の水平板部31aは左右一対の下支持枠28に固着され、水平板部31aの左右両端部は、左右一対のサイドパネル32の下端部にそれぞれ固着されると共に、下側枠22の前枠体22bに固着されている。水平板部31aの前端部は左右一対の下連結枠24に固着されている。左右一対のサイドパネル32は、下側枠22の円弧枠体22a、下後枠21の外側部、下支持枠28の後部にそれぞれ固着されている。
【0015】
左右一対の前支柱12と上前枠15と左右一対の下連結枠24とフロントパネル23とで囲まれ空間に、フロントガラス34が設けられ、左右の同じ側にある前支柱12と後支柱13と上側枠17と下側枠22とで囲まれた空間に、左右一対の乗降ドア35がそれぞれ設けられ、左右の同じ側にある上後枠16の外側部と下後枠21の外側部と後支柱13と後連結枠25とで囲まれた空間に、左右一対のサイドガラス36がそれぞれ設けられ、上後枠16の中央部と下後枠21の中央部と左右一対の後連結枠25とで囲まれた空間に、リヤガラス37が設けられている。
【0016】
乗降ドア35は、前支柱12、後支柱13、上側枠17及び下側枠22の形状に対応して三次元的(上下にも左右にも湾曲していることを言う)に湾曲形成されている。リヤガラス37は、上後枠16の中央部、下後枠21の中央部及び後連結枠25の形状に対応して二次元的(左右に湾曲し上下には湾曲していないことを言う)に湾曲形成されている。
サイドガラス36は、上後枠16の外側部、下後枠21の外側部、後支柱13及び後連結枠25の形状に対応して二次元的に湾曲形成されている。サイドガラス36は平面視で略L字状に形成されており、その中途部が左右外方に小さく湾曲している。
【0017】
フロントガラス34は、前支柱12、上前枠15、下連結枠24及びフロントパネル23の形状に対応して三次元的に湾曲形成されている。
キャビンフレーム11の上部にはルーフ39が設けられており、このルーフ39は、インナールーフ40とアウタールーフ41とを備え、インナールーフ40は内側に配置されて後述するキャビン室43内の天井部を構成し、アウタールーフ41は、インナールーフ40の上方に配置され、インナールーフ40とアウタールーフ41との間に中空部42が形成されている。
【0018】
而して、キャビン9の内部にルーフ39、フロントガラス34、フロントパネル23、乗降ドア35、サイドガラス36、リヤガラス37、サイドパネル32及びフロアシート31等に取り囲まれたキャビン室43が形成されている。このキャビン室43の後部側に運転席44が設けられ、キャビン室43の前部側に、ステアリングハンドル45が設けられている。運転席44はキャビン室43の左右方向の中央であって、後輪フェンダ間に配置され、ステアリングハンドル45は運転席44の前方に配置されている。
なお、図4に示すように、左右一対の下支持枠28の前部に防振部材47を介して前取付部材48が突設され、左右一対の下傾斜枠27の下部に、防振部材49を介して後取付部材50が突設されており、前取付部材48を車体1のミッションケース3の外側面に固定すると共に、後取付部材50を車体1の後車軸ケースに固定することにより、キャビン9を車体1に装着するようにしている。
【0019】
キャビン9の左右側部内面が、前後方向両端から前後方向中央に行くに従って徐々に左右方向外方に向かうように外側方膨出状に湾曲されている。即ち、乗降ドア35乃至サイドガラス36が、前後方向両端から前後方向中央に行くに従って徐々に左右方向外方に向かうように外側方膨出状に湾曲されている。
キャビン9の左右側部内面の後端部が、それぞれキャビン9の後部内面の左右両端部に連続すべく、後方に行くに従って徐々に大きく左右方向内方に向かうように湾曲されている。即ち、左右一対のサイドガラス36の後端部が、それぞれリヤガラス37の左右両端部に連続すべく、後方に行くに従って徐々に大きく左右方向内方に向かうように湾曲されている。
【0020】
また、キャビン9の後部内面の上部側が、上端から上下方向中途部に行くに従って徐々に後方に向かうように傾斜されている。即ち、リヤガラス37の上部側が、上端から上下方向中途部に行くに従って徐々に後方に向かうように傾斜されている。
フロントガラス34の上端部が、キャビンフレーム11の上前枠15よりも前方突出して下方に曲がるように湾曲形成され、フロンガラス34の前記上端部よりも下方側が、キャビンフレーム11の上前枠15よりも前方に配置されている。
なお、図7に示すように、インナールーフ40の前端部は、上前枠15に対応して、左右方向両端から左右方向中央に行くに従って上方に向かうように上方膨出状に湾曲されている。
【0021】
以上のキャビン9の構成によれば、図6に示すように前支柱12間の左右幅を基準としてキャビンの前後幅が決められて三次元的に矩形状(長方形状)となる従来の仮想キャビンCに対し、本発明のキャビン9は三次元的に略卵形の形状としたもので、そのキャビン9の左右側面全体は仮想キャビンCの左右側面全体に対して三次元的に左右外方に湾曲し、キャビン9の前後面全体は仮想キャビンCの前後面全体に対して三次元的に小さく左右外方に湾曲している。
アウタールーフ41の左側部に、外側方に突出した突出部53が設けられ、この突出部53の下面に外気取入れ口54が設けられ、突出部53に外気取入れ口54を塞ぐようにフィルター55が設けられ、キャビン9の外側方の外気を、フィルター55を介して外気取入れ口54からルーフ39の中空部42内に取り入れるように構成されている。
【0022】
運転席44の下方に、L字状に屈曲した収納室形成板57が設けられ、この収納室形成板57は、サイドパネル32間に配置されて、収納室形成板57の後端はフロアシート31の傾斜板部31bに密着固定され、収納室形成板57の前部下端はフロアシート31の水平板部31aに密着固定され、収納室形成板57の左右両端は左右一対のサイドパネル32に密着固定され、これにより、運転席44の下方側に、収納室形成板57と一対のサイドパネル32とフロアシート31とで取り囲まれたエアコン本体収容室59を密閉状に形成し、このエアコン本体収容室59にエアコン本体60を収容している。
【0023】
エアコン本体収容室59を構成する壁部である収納室形成板57の上壁部に、内気取入れ口62が設けられ、収納室形成板57の内気取入れ口62の開口縁部にフィルター63が内気取入れ口62を塞ぐように設けられ、これにより、内気取入れ口62を通して、キャビン室43内の空気をエアコン本体収容室59内にフィルター63を介して取り入れるように構成されている。
エアコン本体60は、冷媒を気化させて周囲から熱を奪って周囲を低温状態とするエバポレータを収納し、エアコン本体60の背面側にエアコン本体収容室59内の空気を導入する内気導入口65が設けられ、内気導入口65に近接するエアコン本体60の側部に外気導入口66が設けられ、外気導入口66は内気導入口65の近傍に配置されている。
【0024】
なお、ボンネット5内等には、冷媒を圧縮するコンプレッサーと、このコンプレッサーで圧縮された冷媒を放熱させながら凝縮・液化させる放熱器(コンデンサー)と、この放熱器で液化された冷媒を減圧して気化し易い状態とする膨張弁等とが収納されており、前記エアコン本体60のエバポレータは、膨張弁で減圧された冷媒を気化させた後、コンプレッサーへともどすように、コンプレッサー及び膨張弁とパイプ、ホース等を介して接続されている。
キャビン室43の後端部の左側の下部に、外気流通ダクト68が設けられ、この外気流通ダクト68は、フロアシート31の傾斜板部31bに沿って配置され、外気流通ダクト68の上端は左側の後支柱13の下端に図示省略の連結ダクトを介して連結され、外気流通ダクト68の下端部は、収納室形成板57を貫通して、エアコン本体60の外気導入口66に接続され、外気導入口66は外気流通ダクト68の下端側に連通されている。
【0025】
図9に示すように、エアコン本体60内に切替ダンパ70が設けられている。この切替ダンパ70は、内気導入口65を塞いで外気を導入する外気導入状態Aと外気導入口66を塞いで内気を導入する内気導入状態Bとに切り替え可能に構成されている。
エアコン本体60から送出される空調空気を案内する第1の送出側ダクト73と第2の送出側ダクト74とが、キャビン9のフロアシート(底部)31に沿ってエアコン本体60から前方に延出されている。第1の送出側ダクト73の後端部はエアコン本体60に連結されている。
【0026】
ステアリングハンドル45の近傍に吹出側ダクト76が設けられ、フロントパネル23の前面側に中継ダクト77が設けられている。中継ダクト77は、筒状又は後側が開口した箱形に形成されてキャビン9の前面外側に配置され、吹出側ダクト76と第1の送出側ダクト73とを連通している。吹出側ダクト76はフロントパネル23の上端部から二股状に分かれて前側に突出され、前側に一対の吹出口79を有すると共に、側方に左右一対の吹出口80を有している。
フロントパネル23のキャビン室43内側にデフロスタダクト82が設けられている。デフロスタダクト82は左右一対の側部分83と該左右一対の側部分83の上端同志を連結する上部分84とから門型状に形成されていて、フロントパネル23に取付固定されている。第2の送出側ダクト74の後端部はエアコン本体60に連結され、第2の送出側ダクト74の前端部はデフロスタダクト82の左側端部に連結されており、エアコン本体60から送出される空調空気をデフロスタダクト82に案内するようになっている。デフロスタダクト82の外周に複数の吹出口85が設けられ、複数の吹出口85は外周方に向けて開口しており、各吹出口85からフロントガラス34や上方及び側方に向けて空調空気を吹き出すようになっている。なお、デフロスタダクト82の左側の端部は閉塞されている。
【0027】
デフロスタダクト82にインストルメントパネル87が取り付けられ、インストルメントパネル87は、ステアリングハンドル45を支持するステアリングポスト88、吹出側ダクト76、デフロスタダクト82等を後側から覆っている。なお、インストルメントパネル87に、吹出側ダクト76の各吹出口79,80及びデフスタダクト82の各吹出口85に対応して空調空気をキャビン室43内側に送出させるための開口がそれぞれ設けられている。
キャビン9の底部を構成するフロアーシート31の水平板部31aの前部に、上方側から凹まされた凹部が形成されており、凹部に第1の送出側ダクト73及び第2の送出側ダクト74を収容できるようになっている。
【0028】
図1〜5に示すように、前記後支柱13の上下両端部には上下ヒンジ90が設けられ、上下ヒンジ90に乗降ドア35の後端部が取り付けられいる。
上下ヒンジ90は、乗降ドア35を取り付ける後支柱13(ドア取付支柱91)の外側面(キャビン9の外面を構成する部分)にボルト等の固定具92によって固定されたブラケット93と、ブラケット93に枢支軸94を介して上下軸芯廻りに回動自在に支持された回動部材95とから構成されており、回動部材95の前側に乗降ドア35の後部がボルト等により固定されている。
【0029】
ドア取付支柱91は異形の筒状に形成され、ドア取付支柱91の外側面には乗降ドア35を取り付けるドア取付面96が形成されている。
ドア取付面96は、ブラケット93を取り付ける上下一対のブラケット取付部97と、このブラケット取付部97よりも外側(乗降ドア35の外面側)に膨出した膨出部99とを有している。
膨出部99は、上下ブラケット取付部97間(上下ヒンジ90間)の上下間を乗車ドア35側に膨出させたもので、膨出部99を形成させるべく上下ヒンジ90間で上下ブラケット取付部97よりも外側に起立した起立面100は、乗降ドア35の縁部に設けたシール部材101に後側から近接している。
【0030】
即ち、乗降ドア35を閉めた状態で、上下ヒンジ90間におけるドア取付支柱91と乗降ドア35の後縁部との間隙が小さくなるように、ドア取付面96には膨出部99が形成されており、これにより、乗降ドア35を閉めた状態では起立面100と乗降ドアの後縁部(シール部材101)との間から雨水等が入らないようにしている。このとき、乗降ドア35を閉めた際に、シール部材101と起立面100とが密着接触するように膨出部99を膨出させるのが好ましく、特に膨出部99の起立面100の上端から下端に亘ってそのシール部材101が密着するのがよい。
【0031】
即ち、膨出部99を形成させるための起立面100は、乗降ドア35に設けられたシール部材101がドア取付面96(上下ブラケット取付部97)に当接したときに近接する位置に形成されている。
膨出部99は、その外面が乗降ドア35の閉状態において乗降ドア35の外面と略同一となるように形成されている。即ち、ドア取付面96の膨出部99の外面は、乗降ドア35の閉状態における乗降ドア35の外面と略同一に設定されている。
膨出部99には、上下ブラケット取付部97に取り付けたブラケット93の後部を後側から覆うように、上下方向に突出した上下突出部98が形成されている。この上下突出部98は上下ブラケット取付部97よりも外側に突出しており、これにより、上下ブラケット取付部97に取り付けられたブラケット93がトラクタ1の後方から見えにくくなっている。
【0032】
ドア取付面96において膨出部99よりも後部側にはサイドガラス36の前端部側が当接可能な当接部42が形成されており、当接部42にサイドガラス36の縁部に設けたシール部材102が当接している。
ドア取付支柱91は、キャビン9の内面側を構成する内面部材105と、キャビン9の外面側を構成する外面部材106とを接合して異形の筒状に形成され、内面部材105及び外面部材106は長尺状の板材を屈曲して構成されている。内面部材105及び外面部材106の幅方向両端部(前後方向両端部)には、互いの部材を接合するためのフランジ部107が設けられ、内面部材105及び外面部材106のそれぞれのフランジ部107を溶接等により接合することによりドア取付支柱91は異形の筒状となっている。
【0033】
外面部材106の外面は前記ドア取付面96とされ、外面部材106を屈曲することにより外面部材106のドア取付面96に膨出部99、上下突出部98及びブラケット取付部97等が形成されている。
左側のドア取付支柱91の上端部はインナールーフ40を貫通して、その上端開口はルーフ39の中空部42に連通されており、左側のドア取付支柱91の内部はキャビン9内の空気調整用のエア通路108とされている。
即ち、左側のドア取付支柱91は外気流通路として兼用され、外気取り入れ口54からルーフ39の中空部42に入った外気を左側のドア取付支柱91を通してキャビン室43の下方側に送出するように構成されている。
【0034】
以上、ドア取付支柱91によれば、ドア取付面96における上下ヒンジ90間を乗降ドア35側に膨出して乗降ドア35との間隙を小さくする膨出部99を形成したので、従来のように防水プレートを取り付けることなく防水性を向上させることができる。また、ドア取付支柱91の外面を屈曲させるだけで膨出部99を形成することができるためその形成が非常に簡単でしかも安価に形成することが可能となる。
膨出部99よりもブラケット93を取り付ける上下ブラケット取付部97が内側に没入しているために、ブラケット93が目立たなくなり意匠性も向上すると共に、上下ブラケット取付部97における乗降ドア35とドア取付支柱35との防水性を向上させることができる。
【0035】
図11〜13は他の実施形態を示し、左右一対の後支柱13が前記実施の形態の場合に比べて後方に配置されて、左右一対の後支柱13がサイドパネル23の後端部に上方突設され、上後枠16及び下後枠21の左右両端部が前方側に湾曲されることなく左右方向外方に真っ直ぐ突出されて左右一対の後支柱13にそれぞれ連結されている。そして、左右一対の後連結枠25を省略すると共に、左右一対のサイドガラス36を省略するようにしている。また、エアコン本体60からの空調空気を送出する左右一対の送出ダクト111,112が、運転席44の側方に設けられた後輪フェンダ上に延長されて、後輪フェンダ上方から空調空気を吐き出すように、前記送出ダクト111,112の吹出口113,110が後輪フェンダ上方に配置されている。
【0036】
後支柱13は乗降ドア35が取り付けできるドア取付支柱91とされており、このドア取付支柱91は運転席44の後方に配置されている。
ドア取付支柱91は、キャビン9の内面側を構成する内面部材105と、キャビン9の外面側を構成する外面部材106とを接合して異形の筒状に形成され、内面部材105及び外面部材106は長尺状の板材を屈曲して構成されている。内面部材105及び外面部材106の幅方向両端部(前後方向両端部)には、互いの部材を接合するためのフランジ部107が設けられ、内面部材105及び外面部材106のそれぞれのフランジ部107を溶接等により接合することによりドア取付支柱91は異形の筒状となっている。
【0037】
外面部材106の外面は前記ドア取付面96とされ、外面部材106を屈曲することにより外面部材106のドア取付面96に膨出部99、上下突出部98及びブラケット取付部97が形成されている。
内面部材105及び外面部材106のそれぞれのフランジ部107の先端部は、それぞれ前後方向に向けられている。言い換えれば、フランジ部107の突出方向が前後方向にとなるようにフランジ部107は形成されており、運転席44に座った人が後方(リアガラス37側)を見たときに、フランジ部107がその視界を邪魔しないようになっている。
【0038】
即ち、内面部材105及び外面部材106をフランジ部107を介してその前後面で合わすことで、後方視界を出来るだけ良好にしている。また、内面部材105及び外面部材106の後側のフランジ部107を利用してライトステーを取り付けることが可能となる。その他の点は前記実施の形態の場合と同様の構成である。
なお、前記実施の形態では、左右一対の前支柱12を、上下方向両端から上下方向中央に行くに従って徐々に左右方向外方に向かうように外側方膨出状に湾曲し、また、左右一対の上側枠17を、前後方向両端から前後方向中央に行くに従って左右外方に向かうように外側方膨出状に湾曲することによって、キャビン室43の上下方向中央部の作業空間が外方に広がるように、キャビンフレーム11の一部を、外方膨出状に湾曲しているが、外方膨出状に湾曲する部材は、左右一対の前支柱12又は左右一対の上側枠17に限定されず、これらに代え又はこれらに加えて、キャビンフレーム11の上前枠15を、左右方向両端から左右方向中央に行くに従って徐々に前方に向かうように前方膨出状に湾曲するようにしてもよいし、また、キャビンフレーム11の上後枠16を左右方向両端から左右方向中央に行くに従って徐々に後方に向かうように後方膨出状に湾曲するようにしてもよい。また、キャビンフレーム11の左右一対の前支柱12を、上下方向両端から上下方向中央に行くに従って徐々に前方に向かうように前方膨出状に湾曲するようにしてもよい。さらに、キャビンフレーム11の一部でなく全部を、外方膨出状に湾曲するようにしてもよい。
【0039】
前記の実施の形態では、ブラケット93の後部側を上下突出部98で覆っていたが、図16に示すように、ブラケット93の上側又は下側を覆うように、上下突出部98をさらに上方又は下方に延設した後に前方に屈曲突出させてもよい。これにより、ブラケット93の上下側及び後部側が膨出部99で囲まれることとなり、乗降ドア35とドア取付支柱91との防水性を向上させることができる。なお、この場合は、上下突出部98の屈曲部前面98a(前側起立面)が前記起立面100と同様にシール部材101に密着接触するように上下突出部98を屈曲させるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のドア取付支柱を有するキャビンの左側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】トラクタの側面図である。
【図5】キャビンの斜視図である。
【図6】キャビンの平面図である。
【図7】キャビンの正面図である。
【図8】キャビンの左側面断面図である。
【図9】エアコン本体の平面断面図である。
【図10】キャビンの左側前支柱付近を外側から見た斜視図である。
【図11】キャビンの左側前支柱付近をキャビンの内側から見た斜視図である。
【図12】運転席からステアリングハンドルを見た正面図である。
【図13】他の実施の形態のドア取付支柱を取り付けたキャビンの斜視図である。
【図14】キャビンの平面図である。
【図15】左側ドア取付支柱の断面図である。
【図16】ドア取付支柱の膨出部の変形例を示すキャビンの左側面図である。
【符号の説明】
【0041】
35 乗降ドア
90 上下ヒンジ
91 ドア取付支柱
96 ドア取付面
99 膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状に形成されていて、ドア取付面に上下ヒンジを介してドアが取り付けられており、前記ドア取付面には上下ヒンジ間にドア側に膨出してドアとの間隙を小さくする膨出部が形成されていることを特徴とする走行車両用キャビンのドア取付支柱。
【請求項2】
前記ドア取付面の膨出部の外面は、前記ドアの閉状態におけるドアの外面と略同一に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の走行車両用キャビンのドア取付支柱。
【請求項3】
前記ドア取付面から膨出部を膨出するための起立面は、前記ドアの周囲縁のシール部材がドア取付面に当接したときに近接する位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行車両用キャビンのドア取付支柱。
【請求項4】
キャビン内面側の内面部材とキャビン外面側の外面部材とを接合してキャビン内空気調整用のエア通路を有する筒状に形成されており、前記外面部材に膨出部を有するドア取付面が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の走行車両用キャビンのドア取付支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−35960(P2006−35960A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216254(P2004−216254)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】