説明

走行道路推定システム

【課題】車両がこれから走行する可能性のある道路を推定する精度を向上させ、現在位置を道路データ上に同定するマップマッチング処理及び車両制御や情報通知を適切に行う。
【解決手段】車両ナビゲーション装置1は、現在位置が同定された道路データに対応する道路である推定基準道路に接続している道路毎に車速や信号機の状態や走行レーンの状態等に基づいて車両が走行可能であるか否かを判定し、車両が走行不可能であると判定した道路を推定対象から除外し、車両が走行可能であると判定した道路だけを推定対象として車両がこれから走行する可能性のある道路だけを推定走行道路として推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の位置方位と道路データとを対応付けて現在位置を道路データ上に同定し、その現在位置が同定された道路データに対応する道路を推定基準道路として特定し、その特定した推定基準道路に接続している道路のうち車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定可能な走行道路推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両がこれから走行する道路を推定するシステムにおいては、推定精度が不十分であるが故にシステムにとって好ましくない動作をすることがあった。例えば特許文献1に記載されている方法では、現在位置が同定された道路データに対応する道路に接続している道路のうち道路の方位と車両の方位との差分又は現在位置からの距離が所定範囲内に含まれる道路を新たな現在位置の候補を設定する対象として抽出し、車両がこれから走行する道路を推定するようにしていた。
【0003】
又、特許文献2に記載されている方法では、現在位置が同定された道路データに対応する道路に接続している全ての道路列のパターンを抽出し、車両がこれから走行する道路を推定するようにしていた。又、特許文献3に記載されている方法では、過去の走行履歴に基づいて車両がこれから走行する道路を推定するようにしていた。更に、公知の方法として、案内経路を算出した状態においては、その算出した案内経路を走行する可能性が最も高いとして、車両がこれから走行する道路を推定するようにもしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−152345号公報
【特許文献2】特開2009−276224号公報
【特許文献3】特開2003−4466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した方法では、車速や信号機や走行レーン等の状態により実際には車両が走行不可能な(走行が困難であると判定されるような)道路であっても、上記した条件に合致すれば、車両がこれから走行する可能性が高い道路として推定してしまうという問題があった。又、特許文献3に記載されている方法では、あくまでも過去の走行履歴に基づいて車両がこれから走行する道路を推定するので、過去の走行履歴と異なるような走行をした場合には誤って推定してしまう可能性があった。
【0006】
このようにして車両がこれから走行する道路を推定する方法では、現在位置を道路データ上に同定するマップマッチング処理において、実際には車両が走行不可能な道路上に現在位置の候補を設定し、その候補に対する評価及びその他の候補との比較を実行しなければならなくなり、処理負荷や必要とするメモリサイズが増加すると共に、不要な候補を誤って選択してしまうリスクが増加し、現在位置を特定する精度の劣化にもつながりかねないという問題があった。又、車両がこれから走行する可能性が高いと判定した道路に対して車両制御や警告等の情報通知を行うシステムにおいては、分岐点以降(分岐点から先)の道路の走行可能性が低下することで、車両制御や情報通知を行えなかったり、本来であれば車両制御や情報通知を必要としない道路に対して誤った車両制御や情報通知を行ってしまったりすることが考えられる。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両がこれから走行する可能性のある道路を推定する精度を向上させることで、現在位置を道路データ上に同定するマップマッチング処理を適切に行うことができ、又、車両制御や情報通知を適切に行うことができる走行道路推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、位置方位取得手段は、車両の位置方位を取得し、道路データ取得手段は、道路データを記録可能な道路データ記録手段から道路データを取得し、マップマッチング手段は、位置方位取得手段により取得された車両の位置方位と道路データ記録手段から道路データ取得手段により取得された道路データとを対応付けて現在位置を道路データ上に同定する。推定基準道路特定手段は、マップマッチング手段により現在位置が同定された道路データに対応する道路を推定基準道路として特定し、走行道路推定手段は、推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路を推定対象とし、車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定可能である。
【0009】
ここで、走行可否判定手段は、推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路を判定対象とし、車両が走行可能であるか否かを判定する。そして、走行道路推定手段は、推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路のうち車両が走行不可能であると走行可否判定手段により判定された道路を推定対象から除外し、車両が走行可能であると走行可否判定手段により判定された道路を推定対象として車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定する。
【0010】
これにより、現時位置が同定された道路データに対応する道路である推定基準道路に接続している道路のうち車両が走行不可能であると判定した道路を推定対象から除外し、車両が走行可能であると判定した道路だけを推定対象とすることで、車両がこれから走行する可能性のある道路だけを推定走行道路として推定するよう構成したので、これから走行する可能性のある道路を推定する精度を向上させることで、現在位置を道路データ上に同定するマップマッチング処理を適切に行うことができ、又、車両制御や情報通知を適切に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載した発明によれば、走行道路推定手段は、推定対象とした道路毎に車両がこれから走行する可能性の確率を算出する。これにより、車両がこれから走行する可能性を定量的に判定することができる。
【0012】
請求項3に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、車速を取得する車速取得手段と、現在位置から車両進行方向直近の分岐点までの距離を取得する距離取得手段とを備え、車速取得手段により取得された車速と、距離取得手段により取得された現在位置から車両進行方向直近の分岐点までの距離と、車両が旋回可能な角速度の最大値である最大旋回可能角速度とに基づいて車両が分岐点に到達した時点で旋回し得る旋回可能方位角度を算出し、車両が走行可能であるか否かを推定基準道路に対する接続角度と当該算出した旋回可能方位角度との関係に基づいて判定し、推定基準道路に対する接続角度が旋回可能方位角度を超えない道路を車両が走行可能であると判定し、推定基準道路に対する接続角度が旋回可能方位角度を超える道路を車両が走行不可能であると判定する。
【0013】
これにより、車両が走行可能であるか否かを推定基準道路に対する接続角度と旋回可能方位角度との関係に基づいて判定することができ、推定基準道路に対する接続角度が旋回可能方位角度を超えない道路を車両が走行可能であると判定することができ、一方、推定基準道路に対する接続角度が当該算出した旋回可能方位角度を超える道路を車両が走行不可能であると判定することができる。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、予め設定された固定値を最大旋回可能角速度として用い、車両が走行可能であるか否かを判定する。これにより、旋回可能方位角度を固定することができ、車両が走行可能であるか否かを推定基準道路に対する接続角度と固定値である旋回可能方位角度との関係に基づいて判定することができる。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、角速度を取得する角速度取得手段を備え、予め設定された固定値を最大旋回可能角速度として用い、角速度取得手段により取得された角速度が最大旋回可能角速度を超えた場合には当該取得された角速度を新たな最大旋回可能角速度として用い、角速度取得手段により取得された角速度が最新の最大旋回可能角速度を超える毎に当該取得された角速度を新たな最大旋回可能角速度として用い、車両が走行可能であるか否かを判定する。これにより、旋回可能方位角度を逐一更新することができ、車両が走行可能であるか否かを推定基準道路に対する接続角度と逐一更新され得る値である旋回可能方位角度との関係に基づいて判定することができる。
【0016】
請求項6に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、右旋回時の最大旋回可能角速度と左旋回時の最大旋回可能角速度とを別々に用い、車両が走行可能であるか否かを判定する。これにより、車両が右旋回する場合と左旋回する場合とを区別し、車両が走行可能であるか否かを推定基準道路に対する接続角度と旋回可能方位角度との関係に基づいて判定することができる。
【0017】
請求項7に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、車両進行方向の信号機の状態を取得する信号機状態取得手段を備え、車両が走行可能であるか否かを信号機状態取得手段により取得された車両進行方向の信号機の状態に基づいて判定する。これにより、車両が走行可能であるか否かを車両進行方向の信号機の状態に基づいて判定することができ、例えば車両が十字路の交差点に進入する場合に当該交差点に設置されている信号機の状態が青点灯であれば、左折方向及び直進方向の道路を車両が走行可能な道路であると判定し、一方、右折方向の道路を車両が走行不可能な道路であると判定して推定対象から除外する等することできる。
【0018】
請求項8に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、車両進行方向の走行レーンの状態を取得する走行レーン状態取得手段を備え、車両が走行可能であるか否かを走行レーン状態取得手段により取得された車両進行方向の走行レーンの状態に基づいて判定する。これにより、車両が走行可能であるか否かを車両進行方向の走行レーンの状態に基づいて判定することができ、例えば車両が十字路の交差点に進入する場合に当該交差点に設置されている交通標識が左折方向及び直進方向からの進出を許可し且つ右折方向からの進出を禁止していれば、左折方向及び直進方向の道路を車両が走行可能な道路であると判定し、一方、右折方向の道路を車両が走行不可能な道路であると判定して推定対象から除外する等することできる。
【0019】
請求項9に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路が高速道路や有料道路を除く一般道路であることを条件として車両が走行可能であるか否かを判定する。これにより、高速道路や有料道路に分岐点が殆ど存在しないことを考慮し、実情に沿ったシステムを構築することができる。
【0020】
請求項10に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路にランプが含まれている場合に、車両が走行可能であるか否かを判定しない。これにより、ランプを道路データ上では走行不可能であると判定するが現実的には走行可能であることを考慮し、道路データと実際の道路形状との差異から生じ得る誤判定を未然に回避することができる。
【0021】
請求項11に記載した発明によれば、走行可否判定手段は、推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路に道路長が所定距離未満の道路が含まれている場合に、当該道路長が所定距離未満の道路を判定対象から除外し、当該道路長が所定距離以上の道路を判定対象として車両が走行可能であるか否かを判定する。これにより、道路長が所定距離未満の道路を道路データ上では走行不可能であると判定するが現実的には走行可能であることを考慮し、道路データと実際の道路形状との差異から生じ得る誤判定を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す機能ブロック図
【図2】フローチャート
【図3】図2相当図
【図4】推定走行道路を判定する態様を示す図
【図5】図4相当図
【図6】図4相当図
【図7】道路データと実際の道路形状との関係を示す図
【図8】図7相当図
【図9】本発明の第2の実施形態を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。
車両ナビゲーション装置1(本発明でいう走行道路推定システム)は、制御部2、GPS受信機3、速度センサ4、角速度センサ5及び距離センサ6を備えて構成されている。制御部2は、周知のマイクロコンピュータを有し、制御プログラムを実行することで装置全体の動作を制御し、その機能毎に、位置方位取得部10(本発明でいう位置方位取得手段)、地図データ取得部11(本発明でいう地図データ取得手段)、マップマッチング部12(本発明でいうマップマッチング手段)、推定基準道路特定部13(本発明でいう推定基準道路特定手段)、走行道路推定部14(本発明でいう走行道路推定手段)、走行可否判定部15(本発明でいう走行可否判定手段、車速取得手段、距離取得手段、角速度取得手段、信号機状態取得手段、走行レーン状態取得手段)、画像処理部16、車両制御部17、警告制御部18、音声出力制御部19及び表示制御部20を備えて構成されている。
【0024】
GPS受信機3は、GPS衛星から送信されたGPS信号に格納されている各種パラメータを抽出し、その抽出した各種パラメータに基づいて位置を演算し、その演算した位置を位置方位取得部10に出力する。速度センサ4は、車両の速度(車速)を検知し、その検知した車速を位置方位取得部10に出力する。角速度センサ5は、車両の角速度を検知し、その検知した車両の角速度を位置方位取得部10に出力する。距離センサ6は、車両の移動距離を検知し、その検知した車両の移動距離を位置方位取得部10に出力する。
【0025】
地図データベース7(本発明でいう道路データ記憶手段)は、道路に関する道路データや施設に関する施設データ等を含む地図データを格納している。インフラ受信機8は、道路上に設置されているインフラ設備と例えば狭域無線通信を行うことで、インフラ設備から信号機の状態を示す信号機状態信号や走行レーンの状態を示す走行レーン状態信号を受信し、インフラ設備から信号機状態信号や走行レーン状態信号を受信すると、それら受信した信号機状態信号や走行レーン状態信号から信号機の状態や走行レーンの状態を抽出し、それら抽出した信号機の状態や走行レーンの状態を走行可否判定部15に出力する。車載カメラ9は、車両前方(進行方向)の景色を撮影し、その撮影した画像を画像処理部16に出力する。車載カメラ9が撮影する景色には信号機や交通標識等が含まれる。
【0026】
位置方位取得部10は、GPS受信機3から位置を入力し、速度センサ4から車速を入力し、角速度センサ5から車両の角速度を入力し、距離センサ6から車両の移動距離を入力すると、それら入力した位置、車速、車両の角速度及び車両の移動距離を相互補完し(補正処理し)、車両の位置方位を算出(取得)し、その算出した車両の位置方位をマップマッチング部12に出力する。この場合、位置方位取得部10は、相対ベクトル表現された走行軌跡をもマップマッチング部12に出力する。又、位置方位取得部10は、速度センサ4から入力した車速及び角速度センサ5から入力した車両の角速度を補正し、それら補正した車速及び車両の角速度を走行可否判定部15に出力する。
【0027】
地図データ取得部11は、地図データベース7から道路データや施設データ等を含む地図データを読出(取得)し、その読出した地図データをマップマッチング部12、走行道路推定部14及び走行可否判定部15に出力する。
【0028】
マップマッチング部12は、位置方位取得部10から車両の位置方位を入力し、地図データ取得部11から地図データを入力すると、それら入力した車両の位置方位と地図データに含まれる道路データとを対応付けて現在位置を道路データ上に同定(マップマッチング)し、その現在位置が同定された道路データを推定基準道路特定部13に出力する。
【0029】
推定基準道路特定部13は、マップマッチング部12から現在位置が同定された道路データを入力すると、その入力した道路データに対応する道路を推定基準道路として特定し、その特定した推定基準道路を走行道路推定部14及び走行可否判定部15に出力する。画像処理部16は、車載カメラ9から画像を入力すると、その入力した画像を画像処理アルゴリズムにしたがって画像処理し、その画像処理結果を走行可否判定部15に出力する。
【0030】
走行可否判定部15は、推定基準道路特定部13から推定基準道路を入力し、地図データ取得部11から地図データを入力すると、それら入力した推定基準道路と地図データに含まれる道路データとに基づいて当該推定基準道路に接続している道路を判定対象とし、判定対象とした道路毎に車両が走行可能であるか否かを判定する。具体的には、走行可否判定部15は、判定対象とした道路毎に車両が走行可能であるか否かを、速度センサ4から位置方位取得部10を通じて入力した車速、角速度センサ5から位置方位取得部10を通じて入力した車両の角速度、地図データ取得部11から入力した地図データ、インフラ受信機8から入力した信号機の状態や走行レーンの状態及び画像処理部16から入力した画像処理結果に基づいて判定し、その判定結果を走行道路推定部14に出力する。
【0031】
走行道路推定部14は、推定基準道路特定部13から推定基準道路を入力し、地図データ取得部11から地図データを入力すると、それら入力した推定基準道路と地図データに含まれる道路データとに基づいて当該推定基準道路に接続している道路を推定対象とし、車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定し、その推定した車両制御部17及び警告制御部18に出力する。この場合、走行道路推定部14は、推定基準道路に接続している全ての道路を推定対象とするのではなく、走行可否判定部15から判定結果を入力することで、推定基準道路に接続している全ての道路のうち判定結果に基づいて選択した道路だけを推定対象として車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定する。
【0032】
車両制御部17は、走行道路推定部14から推定走行道路を入力すると、その入力した推定走行道路を制御対象とした車両制御を車両制御装置21にて実施させる。車両制御としては、例えば車両がこれから走行する道路にカーブ形状が含まれる場合にカーブ手前で減速する制御等が挙げられる。
【0033】
警告制御部18は、走行道路推定部14から推定走行道路を入力すると、その入力した推定走行道路を音声出力制御部19及び表示制御部20に出力する。音声出力制御部19は、警告制御部18から推定走行道路を入力すると、その入力した推定走行道路を制御対象とした音声出力制御を音声出力装置22にて実施させる。表示制御部20は、警告制御部18から推定走行道路を入力すると、その入力した推定走行道路を制御対象とした表示制御を表示装置23にて実施させる。警告等の情報通知としては、例えば車両がこれから走行する道路に一時停止や踏切等が存在する場合にその旨を音声出力させたり表示させたりする機能等が挙げられる。
【0034】
次に、上記した構成の作用について、図2乃至図6を参照して説明する。図2及び図3は制御部2が本発明に関連して行う処理をフローチャートとして示している。
制御部2は、車両ナビゲーション装置1が電源投入されている状態で定常処理を開始すると、車両の位置方位を位置方位取得部10にて取得する位置方位取得処理を位置方位取得部10にて行い(ステップS1)、位置方位取得処理により取得した車両の位置方位と道路データとを対応付けて現在位置を道路データ上に同定するマップマッチング処理をマップマッチング部12にて行う(ステップS2)。
【0035】
次いで、制御部2は、マップマッチング処理により現在位置が同定された道路データに対応する道路を推定基準道路として特定する推定基準道路特定処理を推定基準道路特定部13にて行い(ステップS3)、推定基準道路及び地図データに基づいて当該推定基準道路に接続している道路を推定対象とし、車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定する走行道路推定処理を走行道路推定部14にて行う(ステップS4)。
【0036】
制御部2は、走行道路推定処理を開始すると、推定基準道路に接続している道路を取得する(ステップS11)。次いで、制御部2は、取得した道路の個々を判定対象とし、推定基準道路に接続している道路毎に車両が走行可能であるか否かを判定する走行可否判定処理を走行可否判定部15にて行う。ここで、制御部2は、車両が走行不可能であると判定すると、その車両が走行不可能であると判定した道路を推定対象から除外し、車両が走行可能であると判定した道路を推定対象として車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定する走行道路推定処理を走行道路推定部14にて行う。そして、推定基準道路に接続している全ての道路を判定対象として走行可否判定処理を終了すると(ステップS12〜S16)、走行道路推定処理を終了して定常処理にリターンする。
【0037】
ここで、走行可否判定処理について具体的に説明する。図4に示すように、走行可否判定処理を実施する時点での車速をv[m/s]、車両進行方向(前方)直近の分岐点までの距離をl[m]、車両が旋回可能な最大角速度(最大旋回可能角速度)をYmax[deg/s]とし、このとき、車速をv[m/s]、最大角速度をYmax[deg/s]としたままで分岐点に向かって前進したとし、説明を簡単にするため、本来は車両がクロソイド曲線上に進行するはずだが、前方直近の分岐点に車両が到達するまでの時間をl/v[s]であると仮定すると、分岐点に到達するまでに旋回可能な角度θ[deg]は、以下の計算式で表すことができる。
【0038】
θ[deg]=l[m]×Ymax[deg/s]/v[m/s]
ここで、走行道路可否判定処理において、推定基準道路に対する接続角度がθ[deg]を超えない道路を車両が走行可能な道路であると判定し、一方、推定基準道路に対する接続角度がθ[deg]を超える道路を車両が走行不可能な道路であると判定して推定対象から除外する。図4では、推定基準道路に接続している道路A乃至Dのうち推定基準道路に対する接続角度がθ[deg]を超えない道路である道路B及びCを車両が走行可能な道路であると判定して推定対象から除外することなく、一方、推定基準道路に対する接続角度がθ[deg]を超える道路である道路A及びDを車両が走行不可能な道路であると判定して推定対象から除外する。
【0039】
又、車両が走行可能であるか否かを信号機の状態に基づいて判定しても良い。即ち、図5(a)に示すように、走行可否判定処理を実施する時点での分岐点に設置されている信号機の状態が青点灯である場合には、推定基準道路に接続している道路A乃至Cのうち車両進行方向が左折方向である道路A及び車両進行方向が直進方向である道路Bを車両が走行可能な道路であると判定して推定対象から除外することなく、一方、車両進行方向が右折方向である道路Cを車両が走行不可能な道路であると判定して推定対象から除外する。
【0040】
又、図5(b)に示すように、走行可否判定処理を実施する時点での信号機の状態が赤点灯で且つ右折矢印点灯である場合には、車両進行方向が右折方向である道路Cを車両が走行可能な道路であると判定して推定対象から除外することなく、一方、車両進行方向が左折方向である道路A及び車両進行方向が直進方向である道路Bを車両が走行不可能な道路であると判定して推定対象から除外する。
【0041】
又、車両が走行可能であるか否かを走行レーンの状態に基づいて判定しても良い。即ち、図6(a)に示すように、走行可否判定処理を実施する時点での分岐点での走行レーンの状態(分岐点に設置されている交通標識)が左折方向及び直進方向からの進出を許可し且つ右折方向からの進出を禁止する場合には、推定基準道路に接続している道路A乃至Cのうち車両進行方向が左折方向である道路A及び車両進行方向が直進方向である道路Bを車両が走行可能な道路であると判定して推定対象から除外することなく、一方、車両進行方向が右折方向である道路Cを車両が走行不可能な道路であると判定して推定対象から除外する。
【0042】
又、図6(b)に示すように、走行可否判定処理を実施する時点での走行レーンの状態が右折方向からの進出を許可し且つ左折方向及び直進方向からの進出を禁止する場合には、車両進行方向が右折方向である道路Cを車両が走行可能な道路であると判定して推定対象から除外することなく、一方、車両進行方向が左折方向である道路A及び車両進行方向が直進方向である道路Bを車両が走行不可能な道路であると判定して推定対象から除外する。
【0043】
そして、制御部2は、このようにして推定基準道路に接続している全ての道路を推定対象とするのではなく、推定基準道路に接続している全ての道路のうち判定結果に基づいて選択した道路だけを推定対象として車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定すると、車両制御を車両制御装置21により実施する車両制御処理を車両制御部17にて行い(ステップS5)、音声出力制御を音声出力装置22により実施する音声出力制御処理を音声出力制御部19にて行い(ステップS6)、表示制御を表示装置23により実施する表示制御処理を表示制御部20にて行い(ステップS7)、定常処理を終了してリターンする。
【0044】
ところで、推定基準道路に接続している道路にランプが含まれている場合に、車両が走行可能であるか否かを判定しないようにしても良い。即ち、図7に示すように、推定基準道路に接続している道路Aがランプであり、道路Bが本線であると、道路データ上では道路Aの推定基準道路に対する接続角度が略直角であるので、車速が速ければ、道路Aを車両が走行不可能であると判定するが、現実的には速度を下げることなく、推定基準道路から道路Aに進入することが可能である。そのため、道路Aを車両が走行不可能であると判定してしまうと、推定基準道路から道路Aに進入した場合に、これ以降のマップマッチング処理を正確に行えなくなるが、推定基準道路に接続している道路にランプが含まれている場合に、車両が走行可能であるか否かを判定しないようにすれば、上記したような問題を未然に回避することができる。
【0045】
又、推定基準道路に接続している道路に道路長が所定距離未満の道路が含まれている場合に、道路長が所定距離未満の道路を判定対象とすることなく、道路長が所定距離以上の道路を判定対象として車両が走行可能であるか否かを判定するようにしても良い。即ち、図8に示すように、推定基準道路に道路C、D及びEが接続していると、道路データ上では道路Eの推定基準道路に対する接続角度が略直角であるので、車速が速ければ、道路Eを車両が走行不可能であると判定するが、現実的には速度を下げることなく、推定基準道路から道路Eを経由して道路Bに進入することが可能である。そのため、道路Eを車両が走行不可能であると判定してしまうと、推定基準道路から道路Eを経由して道路Bに進入した場合に、これ以降のマップマッチング処理を正確に行えなくなるが、道路長が所定距離未満である道路Eを判定対象とすることなく、道路長が所定距離以上の道路を判定対象とするようにすれば、上記したような問題を未然に回避することができる。
【0046】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、車両ナビゲーション装置1において、現在位置が同定された道路データに対応する道路である推定基準道路に接続している道路
毎に車速や信号機の状態や走行レーンの状態等に基づいて車両が走行可能であるか否かを判定し、車両が走行不可能であると判定した道路を推定対象から除外し、車両が走行可能であると判定した道路だけを推定対象として車両がこれから走行する可能性のある道路だけを推定走行道路として推定するよう構成したので、これから走行する可能性のある道路を推定する精度を向上させることで、現在位置を道路データ上に同定するマップマッチング処理を適切に行うことができ、車両制御や情報通知を適切に行うことができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図9を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。上記した第1の実施形態は車両ナビゲーション装置1が単体で処理を行う構成であるが、第2の実施形態は車両ナビゲーション装置とセンター装置(サーバ)とが広域無線通信網を通じて広域無線通信を行うことで両者が連携(分担)して処理を行うものである。
【0048】
即ち、車両ナビゲーション装置31は、制御部32、GPS受信機3、速度センサ4、角速度センサ5及び距離センサ6を備えて構成されている。制御部32は、第1の実施形態で説明した位置方位取得部10、マップマッチング部12、画像処理部16、車両制御部17、警告制御部18、音声出力制御部19及び表示制御部20を備えると共に、
広域無線通信網を行う通信装置34を制御する通信制御部33を備えて構成されている。
【0049】
一方、サービスセンターに設置されているセンター装置35は、地図データ取得部36(本発明でいう地図データ取得手段)、推定基準道路特定部37(本発明でいう推定基準道路特定手段)、走行道路推定部38(本発明でいう走行道路推定手段)及び走行可否判定部39(本発明でいう走行可否判定手段、車速取得手段、距離取得手段、角速度取得手段、信号機状態取得手段、走行レーン状態取得手段)を備えると共に、広域無線通信網を行う通信部40を備えて構成されている。地図データ取得部36、推定基準道路特定部37、走行道路推定部38及び走行可否判定部39は、第1の実施形態で説明した地図データ取得部11、推定基準道路特定部13、走行道路推定部14及び走行可否判定部15と同等の機能を有する。
【0050】
上記した構成では、車両ナビゲーション装置31とセンター装置35とが広域無線通信網を通じて広域無線通信を行うことで両者が連携し、第1の実施形態で説明した位置方位取得処理(ステップS1)、マップマッチング処理(ステップS2)、車両制御処理(ステップS5)、音声出力制御処理(ステップS6)及び表示制御処理(ステップS7)を車両ナビゲーション装置31にて行い、推定基準道路特定処理(ステップS3)及び走行道路推定処理(ステップS4)をセンター装置35にて行う。
【0051】
以上に説明したように第2の実施形態によれば、車両ナビゲーション装置31とセンター装置35とが連携することで上記した第1の実施形態と同等の作用効果を得ることができる。尚、このように車両ナビゲーション装置31とセンター装置35とが連携する構成では、センター装置35が他の車両ナビゲーション装置から情報を収集することができ、例えば所定の交差点において他の車両がどのように走行したかという履歴を走行履歴データとして蓄積し、その走行履歴データを走行可否判定処理にて利用することで走行道路を推定するという車両ナビゲーション装置31が単体で処理を行う構成では実現し得ない機能を新たに実現することができる。
【0052】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形又は拡張することができる。
推定対象とした道路毎に車両がこれから走行する可能性の確率を算出するようにしても良く、このように構成すれば、車両がこれから走行する可能性を定量的に判定することができる。
車両が走行可能であるか否かを推定基準道路に対する接続角度と旋回可能方位角度との関係に基づいて判定する場合に、予め設定された固定値を最大旋回可能角速度として用いて旋回可能方位角度を計算しても良いし、角速度が最新の最大旋回可能角速度を超える毎に更新しながら旋回可能方位角度を計算しても良い。又、車両が右旋回する場合と左旋回する場合とを区別し、車両が右旋回する場合の最大旋回可能角速度と左旋回する場合の最大旋回可能角速度とを別々に用い、旋回可能方位角度を計算しても良い。
【0053】
推定基準道路が高速道路や有料道路を除く一般道路であることを条件として車両が走行可能であるか否かを判定するようにしても良く、このように構成すれば、高速道路や有料道路に分岐点が殆ど存在しないことを考慮し、実情に沿ったシステムを構築することができる。
外部から信号機の状態や走行レーンの状態を取得する構成としては、路上機から送信された信号を受信する(路車間通信を行う)構成に限らず、他の車両に搭載されている車載機から送信された信号を受信する(車々間通信を行う)構成であっても良い。
【符号の説明】
【0054】
図面中、1は車両ナビゲーション装置(走行道路推定システム)、10は位置方位取得部(位置方位取得手段)、11は地図データ取得部(地図データ取得手段)、12はマップマッチング部(マップマッチング手段)、13は推定基準道路特定部(推定基準道路特定手段)、14は走行道路推定部(走行道路推定手段)、15は走行可否判定部(走行可否判定手段、車速取得手段、距離取得手段、角速度取得手段、信号機状態取得手段、走行レーン状態取得手段)、31は車両ナビゲーション装置(走行道路推定システム)、35はセンター装置(走行道路推定システム)、36は地図データ取得部(地図データ取得手段)、37は推定基準道路特定部(推定基準道路特定手段)、38は走行道路推定部(走行道路推定手段)、39は走行可否判定部(走行可否判定手段、車速取得手段、距離取得手段、角速度取得手段、信号機状態取得手段、走行レーン状態取得手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置方位を取得する位置方位取得手段と、
道路データを記録可能な道路データ記録手段から道路データを取得する道路データ取得手段と、
前記位置方位取得手段により取得された車両の位置方位と前記道路データ記録手段から前記道路データ取得手段により取得された道路データとを対応付けて現在位置を道路データ上に同定するマップマッチング手段と、
前記マップマッチング手段により現在位置が同定された道路データに対応する道路を推定基準道路として特定する推定基準道路特定手段と、
前記推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路を推定対とし、車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定可能な走行道路推定手段と、を備えた走行道路推定システムにおいて、
前記推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路を判定対象とし、車両が走行可能であるか否かを判定する走行可否判定手段を備え、
前記走行道路推定手段は、前記推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路のうち車両が走行不可能であると前記走行可否判定手段により判定された道路を推定対象から除外し、車両が走行可能であると走行可否判定手段により判定された道路を推定対象として車両がこれから走行する可能性のある道路を推定走行道路として推定することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行道路推定手段は、推定対象とした道路毎に車両がこれから走行する可能性の確率を算出することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、車速を取得する車速取得手段と、現在位置から車両進行方向直近の分岐点までの距離を取得する距離取得手段とを備え、前記車速取得手段により取得された車速と、前記距離取得手段により取得された現在位置から車両進行方向直近の分岐点までの距離と、車両が旋回可能な角速度の最大値である最大旋回可能角速度とに基づいて車両が分岐点に到達した時点で旋回し得る旋回可能方位角度を算出し、車両が走行可能であるか否かを推定基準道路に対する接続角度と当該算出した旋回可能方位角度との関係に基づいて判定し、推定基準道路に対する接続角度が旋回可能方位角度を超えない道路を車両が走行可能であると判定し、推定基準道路に対する接続角度が旋回可能方位角度を超える道路を車両が走行不可能であると判定することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項4】
請求項3に記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、予め設定された固定値を最大旋回可能角速度として用い、車両が走行可能であるか否かを判定することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項5】
請求項3に記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、角速度を取得する角速度取得手段を備え、予め設定された固定値を最大旋回可能角速度として用い、前記角速度取得手段により取得された角速度が最大旋回可能角速度を超えた場合には当該取得された角速度を新たな最大旋回可能角速度として用い、前記角速度取得手段により取得された角速度が最新の最大旋回可能角速度を超える毎に当該取得された角速度を新たな最大旋回可能角速度として用い、車両が走行可能であるか否かを判定することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れかに記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、右旋回時の最大旋回可能角速度と左旋回時の最大旋回可能角速度とを別々に用い、車両が走行可能であるか否かを判定することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、車両進行方向の信号機の状態を取得する信号機状態取得手段を備え、車両が走行可能であるか否かを前記信号機状態取得手段により取得された車両進行方向の信号機の状態に基づいて判定することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、車両進行方向の走行レーンの状態を取得する走行レーン状態取得手段を備え、車両が走行可能であるか否かを前記走行レーン状態取得手段により取得された車両進行方向の走行レーンの状態に基づいて判定することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、前記推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路が高速道路や有料道路を除く一般道路であることを条件として車両が走行可能であるか否かを判定することを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、前記推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路にランプが含まれている場合に、車両が走行可能であるか否かを判定しないことを特徴とする走行道路推定システム。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載した走行道路推定システムにおいて、
前記走行可否判定手段は、前記推定基準道路特定手段により特定された推定基準道路に接続している道路に道路長が所定距離未満の道路が含まれている場合に、当該道路長が所定距離未満の道路を判定対象から除外し、当該道路長が所定距離以上の道路を判定対象として車両が走行可能であるか否かを判定することを特徴とする走行道路推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−202977(P2011−202977A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67903(P2010−67903)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】