説明

起泡用亜酸化窒素供給装置および起泡用亜酸化窒素供給方法

【課題】 起泡性クリーム体調製用の容器に対して起泡用亜酸化窒素を安全に供給するのに適し、且つ、起泡用亜酸化窒素の供給量を調節するのに適した、装置および方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の供給装置10は、亜酸化窒素ボンベ30から起泡性クリーム体調製用の容器20に対して起泡用の亜酸化窒素をガスの状態で供給するためのものであり、亜酸化窒素ボンベ30からの亜酸化窒素ガスを、設定圧力以下の圧力で通過させるための圧力制限手段11と、圧力制限手段11の下流側にて亜酸化窒素ガスが設定圧力を超える圧力を有する場合に当該亜酸化窒素ガスの圧力を設定圧力以下に降下させるための降圧手段12とを、亜酸化窒素ボンベ30と容器20との間の供給ラインに備える。本発明の供給方法では、例えばこのような装置10を使用して、起泡性クリーム体調製用の容器20に対し、起泡用の亜酸化窒素を、液相を含まないガスの状態で供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホイップクリームなどの起泡性クリーム体を噴射して調製するための容器に対し、噴射剤ないし起泡剤として機能する亜酸化窒素を供給するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、最近、いわゆるホイップクリーム類において亜酸化窒素を食品添加物として使用することが認可された。これに対し、米国および所定のEU諸国等では、従来より、亜酸化窒素は、食品添加物の認可を受けており、例えばホイップクリーム調製用噴射剤として、高い泡立ち性や風味の良さ等が評価されて広く使用されている。ホイップクリーム調製用噴射剤としての亜酸化窒素の使用においては、亜酸化窒素は、ホイップクリーム原料と共に耐圧容器に充填される。そして、当該容器からホイップクリーム原料が亜酸化窒素(噴射剤)と共に噴射されることにより、泡立ちを伴ったホイップクリームが容器外にて調製される。
【0003】
米国および所定のEU諸国等では、所定の耐圧缶にホイップクリーム原料と亜酸化窒素とが予め充填されてなる市販品が存在する一方、レストランや家庭等にて新鮮なホイップクリームを調製すべく、料理人等が自ら、耐圧性の所定の調製用容器にホイップクリーム原料を入れた後に亜酸化窒素を充填する場合がある。この場合、亜酸化窒素充填に際し、調製用容器の有する亜酸化窒素供給口と、液化亜酸化窒素が封入された小型ボトルとが、当該封入状態を破って連結される。そのような調製用容器および小型ボトルは、例えば下記の非特許文献1に掲載されている。非特許文献1には、具体的には、1リットルタイプの調製用容器(内容積1.25リットル)および0.5リットルタイプの調製用容器(内容積0.71リットル)、並びに、8gの液化亜酸化窒素が封入された小型ボトルなどが、掲載されている。
【0004】
【非特許文献1】“製品(Products)”および“使用方法(Applications)”、[online]、アイ エス アイ(iSi)、[平成17年5月1日検索]、インターネット〈URL:http://www.espumas.at/?lang=gb〉
【0005】
しかしながら、非特許文献1に掲載されているような液化亜酸化窒素入り小型ボトルを用いての調製用容器への亜酸化窒素充填作業では、部分的に液相を含む亜酸化窒素を直接的に調製用容器に供給しなければならず、このような充填作業は、安全面で問題を有する。例えば、1リットルタイプの調製用容器に対して1リットルのホイップクリーム原料を入れた場合の当該容器内の空き容積は0.25リットル程度であり、8gの液化亜酸化窒素入りの小型ボトルを用いて当該容器に対して亜酸化窒素の充填作業を行うと、充填完了後における調製用容器内圧力は1.27MPa(常温)程度にまで達してしまう。この圧力は、相当程度に高圧であって日本の高圧ガス保安法における「高圧ガス」に該当してしまい、一般使用者の取り扱い上、障害となる。また、非特許文献1に掲載されているような液化亜酸化窒素入り小型ボトルを用いての調製用容器への亜酸化窒素充填作業では、一度のホイップクリーム調製において、使用者が恣意的に又は誤って多数の小型ボトルから調製用容器に対して過剰の亜酸化窒素を充填してしまいやすく、調製用容器内圧力が当該容器の耐圧を超えやすい。調製用容器内圧力が当該容器の耐圧を超えると、調製用容器が破裂してしまう場合がある。
【0006】
加えて、非特許文献1に掲載されているような液化亜酸化窒素入り小型ボトルを用いての調製用容器への亜酸化窒素充填作業は、調製用容器への亜酸化窒素の供給量を調節するのに困難性を有する。非特許文献1に掲載されている小型ボトルは、それが封入する液化亜酸化窒素の実質的に全量を調製用容器に充填するための使い切りタイプのものであり、当該小型ボトルから調製用容器への亜酸化窒素供給は、小型ボトル内の圧力と調製用容器内の圧力とが等しくなるまで継続されてしまうからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものであり、起泡性クリーム体調製用の容器に対して起泡用亜酸化窒素を安全に供給するのに適し且つ起泡用亜酸化窒素の供給量を調節するのに適した装置および方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によると亜酸化窒素供給装置が提供される。本装置は、液化亜酸化窒素が封入された亜酸化窒素ボンベから起泡性クリーム体調製用の容器(調製用容器)に対して起泡用の亜酸化窒素をガスの状態で供給するためのものであり、亜酸化窒素ボンベからの亜酸化窒素ガスを、設定圧力以下の圧力で通過させるための圧力制限手段と、圧力制限手段の下流側にて亜酸化窒素ガスが設定圧力を超える圧力を有する場合に当該亜酸化窒素ガスの圧力を設定圧力以下に降下させるための降圧手段とを、亜酸化窒素ボンベと調製用容器との間の供給ラインに備える。
【0009】
本装置の使用時には、当該装置の提供する供給ラインの一端に、起泡用の液化亜酸化窒素が封入された亜酸化窒素ボンベが接続され、且つ、他端に調製用容器が接続されている。また、本装置の稼働時には、亜酸化窒素ボンベから送出される亜酸化窒素ガスは、供給ラインにおける上述の圧力制限手段を通過し、そして、上述の降圧手段を経た後に調製用容器へと注入される。圧力制限手段には、亜酸化窒素ボンベから当該圧力制限手段に至った亜酸化窒素について通過を許容する所望の上限圧力(設定圧力)が設定され、且つ、降圧手段は、圧力制限手段を通過した亜酸化窒素ガスが万一上述の設定圧力を超える圧力を有する場合に当該亜酸化窒素ガスの圧力を設定圧力以下に降下させる機能を有する。したがって、本装置によると、調製用容器に対する起泡用亜酸化窒素の充填作業ないし供給作業において、液相を含む亜酸化窒素を直接的に調製用容器に供給することを回避することができ、且つ、所望に設定した設定圧力以下で亜酸化窒素ガスを調製用容器に供給することができる。そのため、本装置によると、圧力制限手段における設定圧力を調製用容器の耐圧以下に設定することにより、調製用容器内圧力が不当に高圧となることを回避することができ、また、調製用容器内圧力が当該容器の耐圧を超えることに起因して調製用容器が破裂等してしまうことを回避することができる。このように、本装置は、調製用容器に対して起泡用亜酸化窒素を安全に供給するのに適している。
【0010】
加えて、本装置は、調製用容器に対する起泡用亜酸化窒素の供給量を調節するのに適している。上述のように、本装置によると、液相を含まないガスの状態で起泡用亜酸化窒素を調製用容器に供給することができる。また、調製用容器内の空き容積(またはクリーム体原料体積)と、所定圧力で調製用容器内に供給される亜酸化窒素ガスの量との相関性は、相当程度に高い。したがって、本装置を使用して行う亜酸化窒素供給作業においては、調製用容器内に予め入れておくクリーム体原料の体積と、圧力制限手段に設定される設定圧力とをパラメータとして、調製用容器に対する起泡用亜酸化窒素の供給量を調節することが可能である。
【0011】
以上のように、本発明の第1の側面に係る起泡用亜酸化窒素供給装置は、調製用容器に対して起泡用亜酸化窒素を安全に供給するのに適し、且つ、起泡用亜酸化窒素の供給量を調節するのに適しているのである。
【0012】
好ましくは、圧力制限手段は、設定圧力を変更することが可能な減圧弁(第1の減圧弁)、または、設定圧力が固定された減圧弁(第2の減圧弁)である。第1の減圧弁を採用する場合、圧力制限手段における設定圧力を本装置の使用者が適宜決定することができる。第2の減圧弁の採用は、圧力制限手段における設定圧力を使用者が恣意的に又は誤って過大とすることを防止するうえで好適である。
【0013】
好ましくは、降圧手段は、圧力制限手段を通過した亜酸化窒素ガスの圧力が上述の設定圧力以上に至ったときに開状態となる逆止弁機構を含む。このような構成によると、圧力制限手段を通過した亜酸化窒素ガスが万一設定圧力を超える圧力を有する場合、逆止弁機構が開状態となって当該亜酸化窒素ガスの圧力を設定圧力以下に降下させた後、当該逆支弁機構は再び閉状態となる。したがって、本構成によると、圧力制限手段を通過した亜酸化窒素ガスが設定圧力を超える圧力を有する場合が生じても、圧力制限手段(逆止弁機構)の繰り返し使用が可能であり、亜酸化窒素供給作業を継続的に実施することができる。
【0014】
本発明の第2の側面によると起泡用亜酸化窒素供給方法が提供される。本方法では、起泡性クリーム体調製用の容器に対し、起泡用の亜酸化窒素を、液相を含まないガスの状態で供給する。
【0015】
本方法では、調製用容器に対する起泡用亜酸化窒素の充填作業ないし供給作業において、液相を含む亜酸化窒素を直接的に調製用容器に供給することはしない。また、本方法では、調製用容器の耐圧以下の所望の圧力で亜酸化窒素ガスを調製用容器に供給することができる。そのため、本方法によると、調製用容器内圧力が不当に高くなることを回避することができ、また、調製用容器内圧力が当該容器の耐圧を超えることに起因して調製用容器が破裂してしまうことを回避することができる。このように、本方法は、調製用容器に対して起泡用亜酸化窒素を安全に供給するのに適している。
【0016】
加えて、本方法は、調製用容器に対する起泡用亜酸化窒素の供給量を調節するのに適している。本方法では、液相を含まないガスの状態で起泡用亜酸化窒素を調製用容器に供給し、また、調製用容器内の空き容積(またはクリーム体原料体積)と、所定圧力で調製用容器内に供給される亜酸化窒素ガスの量との相関性は、相当程度に高い。したがって、本方法による亜酸化窒素供給作業においては、調製用容器内に予め入れておくクリーム体原料の体積と、圧力制限手段に設定される設定圧力とをパラメータとして、調製用容器に対する起泡用亜酸化窒素の供給量を調節することが可能である。
【0017】
以上のように、本発明の第2の側面に係る起泡用亜酸化窒素供給方法は、調製用容器に対して起泡用亜酸化窒素を安全に供給するのに適し、且つ、起泡用亜酸化窒素の供給量を調節するのに適しているのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明に係る亜酸化窒素(N2O)供給装置10の概略構成図である。N2O供給装置10は、調製用容器20に対してN2Oボンベ30からN2Oをガスの状態で供給するように構成されて例えばホイップクリームなどの起泡性クリーム体の調製に利用することができるものであり、調製用容器20とN2Oボンベ30の間の供給ラインにおいて圧力制限弁11と、非常時降圧弁12と、電磁弁13と、精製器14と、カプラ15とを備え、更に筐体16を備える。
【0019】
調製用容器20は、噴射剤である亜酸化窒素と共に所定のクリーム体原料を噴射することによって容器外にて起泡性クリーム体を調製するためのものであって本体21および蓋体22を備える耐圧容器であり、その容積は例えば0.5〜1リットルである。調製用容器20により調製することのできる起泡性クリーム体としては、例えば、食品衛生法上において食品添加物としての亜酸化窒素の使用が認められたいわゆるホイップクリーム類が挙げられる。蓋体22は、本体21に対して脱着可能に構成されており、噴射口22aおよびN2O供給口22bを有する。
【0020】
2Oボンベ30は、起泡性クリーム体を調製するうえで必要とされる噴射剤ないし起泡剤としての亜酸化窒素を提供するためのものであり、液化亜酸化窒素が封入されたボンベである。N2Oボンベ30について、容積は例えば3〜360リットルであり、初期圧力(最高圧力)は例えば5.1MPa(20℃,ゲージ圧)である。
【0021】
圧力制限弁11は、本発明における圧力制限手段であり、N2Oボンベ30からの亜酸化窒素ガスを、設定圧力以下の圧力で通過させるためのものである。本実施形態では、圧力制限弁11に設定される設定圧力は、調製用容器20の耐圧より低い限りにおいて例えば0.2〜0.98MPaであり、好ましくは0.4〜0.98MPaである。設定圧力を1MPa未満とする場合、調製用容器20内に注入される亜酸化窒素ガスは、日本の高圧ガス保安法における「高圧ガス」には該当しないこととなる。圧力制限弁11は、設定圧力を変更することが可能な圧力可変式減圧弁、または、設定圧力が固定された圧力固定式減圧弁である。圧力可変式減圧弁を採用する場合、圧力制限弁11における設定圧力をN2O供給装置10の使用者が適宜決定することができる。圧力固定式減圧弁の採用は、圧力制限弁11における設定圧力を使用者が恣意的に又は誤って過大とすることを防止するうえで好適である。
【0022】
非常時降圧弁12は、本発明における降圧手段であり、圧力制限弁11を通過した亜酸化窒素ガスが万一設定圧力を超える圧力を有する場合に当該亜酸化窒素ガスの圧力を上記設定圧力以下に降下させるためのものである。非常時降圧弁12は、具体的には、圧力制限弁11を通過した亜酸化窒素ガスの圧力が上述の設定圧力以上に至ったときに開状態となる逆止弁方式の圧力放出装置である。本発明では、逆止弁方式の圧力放出装置に代えて破裂板方式の圧力放出装置を採用してもよい。
【0023】
電磁弁13は、N2O供給装置10の稼働時に供給ラインを開閉するためのものであり、例えば、所定のスイッチ(図示略)に対するON操作により、供給ラインのガス通流を許容する開状態となり、且つ、所定のスイッチ(図示略)に対するOFF操作により、供給ラインのガス通流を阻止する閉状態となるように構成されている。本発明では、電磁弁13による供給ラインの閉止を所定のタイマやシーケンサを利用した制御により実現してもよい。
【0024】
精製器14は、N2Oボンベ30からの亜酸化窒素ガスに対してフィルタリングを施すためのものである。精製器14としては、例えば、半導体デバイスを製造する際に用いられる亜酸化窒素ガスの供給ラインに使用される亜酸化窒素ガス用インライン精製器を採用することができる。
【0025】
カプラ15は、N2O供給装置10の供給ラインと調製用容器20におけるN2O供給口22bとを接続するための連結部であり、本実施形態では、N2O供給口22bに接続されていないときには閉止状態が維持されるノルマルクローズタイプとして構成されている。
【0026】
筐体16は、上述の圧力制限弁11、非常時降圧弁12、電磁弁13、精製器14などを包容するためのものであり、例えばスチール製やステンレス製である。
【0027】
2O供給装置10において、筐体16外のカプラ15までの供給ラインについては、フレキシブルホースにより構成するのが好ましい。供給ラインを構成するためのパッキン類については、亜酸化窒素の溶解性や膨潤性等に鑑み、ナイロン系材料よりなるものを採用するのが好ましい。また、N2Oボンベ30の取換え時期の判断に資するべく、N2Oボンベ30内の圧力を検知するための圧力センサをN2Oボンベ30に取り付けてもよいし、N2O供給装置10の供給ラインを通流するガス量を積算するための積算流量計を当該供給ラインに備え付けてもよい。
【0028】
2O供給装置10および調製用容器20を使用して例えばホイップクリーム(本発明における起泡性クリーム体に含まれる)を調製する場合には、まず、調製用容器20の本体21から蓋体22を外したうえで所定量のホイップクリーム原料を本体21内に入れ、蓋体22を本体21に取り付け、蓋体22のN2O供給口22bにカプラ15を接続する。N2Oボンベ30は、N2O供給装置10の供給ラインに予め接続されている。次に、例えば所定スイッチのON操作により、N2O供給装置10を稼働させて電磁弁13を開状態とする。これにより、N2Oボンベ30から送出される亜酸化窒素は、供給ラインにおける上述の圧力制限弁11を通過し、続いて上述の非常時降圧弁12を経た後に、調製用容器20へと注入されることとなる。そして、例えば、調製用容器20内の圧力が上述の設定圧力に達して調製用容器20と供給ラインとが均圧状態に至ったときに、例えば所定スイッチのOFF操作により、電磁弁13を閉状態としてN2O供給装置10を停止させる。次に、調製用容器20におけるN2O供給口22bからカプラ15を外し、調製用容器20を振とうする。適度に振とうした後に調製用容器20の噴射口22aから内容物(ホイップクリーム原料,亜酸化窒素ガス)を噴射させることにより、調製用容器20外にてホイップクリームを調製することができる。また、振とうにより、ホイップクリーム原料に亜酸化窒素ガスが溶解して調製用容器20内の圧力が低下する傾向にあるところ、振とう後に再びN2O供給装置10を使用して当該調製用容器20に亜酸化窒素ガスを供給してもよい。
【0029】
2O供給装置10の稼働時には、上述のように、N2Oボンベ30から送出される亜酸化窒素ガスは、供給ラインにおける圧力制限弁11を通過して非常時降圧弁12を経た後に、最終的に調製用容器20へと注入される。圧力制限弁11には、N2Oボンベ30から圧力制限弁11に至った亜酸化窒素について通過を許容する所望の上限圧力(設定圧力)が設定され、且つ、非常時降圧弁12は、圧力制限弁11を通過した亜酸化窒素ガスが万一上述の設定圧力を超える圧力を有する場合に当該亜酸化窒素ガスの圧力を設定圧力以下に降下させる機能を有する。したがって、N2O供給装置10によると、調製用容器20に対する起泡用亜酸化窒素の充填作業ないし供給作業において、液相を含む亜酸化窒素を直接的に調製用容器20に供給することを回避することができ、且つ、所望に設定した設定圧力以下で亜酸化窒素ガスを調製用容器20に供給することができる(N2O供給装置10を使用して上述の再亜酸化窒素供給を行う場合であっても、所望に設定した設定圧力以下で亜酸化窒素ガスを調製用容器20に再供給することができる)。そのため、N2O供給装置10によると、圧力制限弁11における設定圧力を調製用容器20の耐圧以下に設定することにより、調製用容器20内の圧力が不当に高くなることを回避することができ、また、調製用容器20内の圧力が当該容器の耐圧を超えることに起因して調製用容器20が破裂してしまうことを回避することができる。このように、本発明に係るN2O供給装置10は、調製用容器20に対して起泡用亜酸化窒素を安全に供給するのに適している。
【0030】
加えて、N2O供給装置10は、調製用容器20に対する起泡用亜酸化窒素の供給量を調節するのに適している。上述のように、N2O供給装置10によると、液相を含まないガスの状態で起泡用亜酸化窒素を調製用容器20に供給することができる。また、調製用容器20内の空き容積(ないしホイップクリーム原料体積)と、所定圧力で調製用容器20内に注入される亜酸化窒素ガスの量との相関性は、相当程度に高い。したがって、N2O供給装置10を使用して行う亜酸化窒素供給作業においては、調製用容器20内に予め入れておくホイップクリーム原料の体積と、圧力制限弁11に設定される設定圧力とをパラメータとして、調製用容器20に対する起泡用亜酸化窒素の供給量を調節することが可能である。
【0031】
以上のように、本発明に係るN2O供給装置10は、調製用容器20に対して起泡用亜酸化窒素を安全に供給するのに適し、且つ、起泡用亜酸化窒素の供給量を調節するのに適しているのである。
【0032】
また、N2O供給装置10では、調製用容器20との連結部にノルマルクローズタイプのカプラ15が採用されている。このような構成によると、亜酸化窒素供給終了後にN2O供給装置10と調製用容器20とを分離する際に地球温暖化ガスである亜酸化窒素が大気中に放出されることが、相当程度に抑制される。
【実施例】
【0033】
〔実施例1〕
図1に示すようなN2O供給装置10を使用して、N2Oボンベ30から調製用容器20への亜酸化窒素の供給を行った。本実施例では、調製用容器20として、内容積が1.25リットルである調製用容器(商品名:GOURMET WHIP 2441,iSi製)を使用し、N2Oボンベ30として、純度99.999%の亜酸化窒素が封入されたボンベ(商品名:食品添加物 亜酸化窒素,住友精化(株)製)を使用し、圧力制限弁11として圧力可変式減圧弁(商品名:標準ガス用圧力調整器 YBR−2515,住友精化(株)製)を採用し、非常時降圧弁12として逆止弁方式の圧力放出装置(商品名:SS−4CPA4−150,Swagelok社製)を採用した。また、本実施例では、起泡性クリーム体原料の代わりに所定量の水を調製用容器20に予め投入した状態で、圧力制限弁11における設定圧力を0.98MPaとし、調製用容器20と供給ラインとが均圧状態に至るまで亜酸化窒素供給を行った。このような亜酸化窒素供給を調製用容器20内に投入する水の量を変化させて投入水量ごと(500ml,700ml,900ml)に行った。各供給作業において調製用容器20内に供給された亜酸化窒素量を図2のグラフにて○プロットで表し、本実施例における3つの○プロットを直線で結ぶ。図2のグラフでは、調製用容器20内に予め投入されている水の量(ml)を横軸にて表し、調製用容器20に対する亜酸化窒素の供給量(g)を縦軸にて表す。
【0034】
〔実施例2〕
2O供給装置10の圧力制限弁11における設定圧力を0.98MPaに代えて0.8MPaとした以外は実施例1と同様にして、調製用容器20内の投入水量を変化させて投入水量ごと(500ml,700ml,900ml)に亜酸化窒素供給を行った。本実施例の各供給作業において調製用容器20内に供給された亜酸化窒素量を図2のグラフにて□プロットで表し、本実施例における3つの□プロットを直線で結ぶ。
【0035】
〔実施例3〕
2O供給装置10の圧力制限弁11における設定圧力を0.98MPaに代えて0.5MPaとした以外は実施例1と同様にして、調製用容器20内の投入水量を変化させて投入水量ごと(500ml,700ml,900ml)に亜酸化窒素供給を行った。本実施例の各供給作業において調製用容器20内に供給された亜酸化窒素量を図2のグラフにて△プロットで表し、本実施例における3つの△プロットを直線で結ぶ。
【0036】
〔評価〕
実施例1〜3における亜酸化窒素供給では、いずれも、調製用容器20の耐圧を超過することなく調製用容器20に対して亜酸化窒素ガスを供給することができた。また、図2のグラフからは、調製用容器20内の投入水量(または空き容積)と、所定圧力で調製用容器20内に供給される亜酸化窒素ガスの量とが、高い相関性を有することが判る。このことから、N2O供給装置10を使用して行う亜酸化窒素供給作業においては、調製用容器20内に予めクリーム体原料を入れておく場合の当該原料の体積と、圧力制限手段に設定される設定圧力とをパラメータとして、調製用容器20に対する起泡用亜酸化窒素の供給量を調節することが可能であることが理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るN2O供給装置の概略構成図である。
【図2】実施例1〜3について、調製用容器内に予め投入されている水量と調製用容器に対して供給された亜酸化窒素ガスの量との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
10 N2O供給装置
11 圧力制限弁
12 非常時降圧弁
13 電磁弁
14 精製器
15 カプラ
20 調製用容器
21 本体
22 蓋体
22a 噴射口
22b N2O供給口
30 N2Oボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜酸化窒素ボンベから起泡性クリーム体調製用の容器に対して起泡用の亜酸化窒素をガスの状態で供給するための装置であって、
亜酸化窒素ボンベからの亜酸化窒素ガスを、設定圧力以下の圧力で通過させるための圧力制限手段と、
前記圧力制限手段の下流側にて亜酸化窒素ガスが前記設定圧力を超える圧力を有する場合に当該亜酸化窒素ガスの圧力を前記設定圧力以下に降下させるための降圧手段とを、前記亜酸化窒素ボンベと前記容器との間の供給ラインに備える、起泡用亜酸化窒素供給装置。
【請求項2】
前記圧力制限手段は、前記設定圧力を変更することが可能な減圧弁、または、前記設定圧力が固定された減圧弁である、請求項1に記載の起泡用亜酸化窒素供給装置。
【請求項3】
前記降圧手段は逆止弁機構を含む、請求項1または2に記載の起泡用亜酸化窒素供給装置。
【請求項4】
起泡性クリーム体調製用の容器に対し、起泡用の亜酸化窒素を、液相を含まないガスの状態で供給する、起泡用亜酸化窒素供給方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−345776(P2006−345776A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176326(P2005−176326)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】