起電性化学発光で使用する発光ナノ構造化材料
レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含むナノ構造化粒子材料を本明細書で提供する。ナノ構造化材料および対象とする分析物を含む試薬混合物に化学エネルギーまたは電気化学エネルギーを曝露することで発生する電磁放射線を検出することにより、ナノ構造化粒子材料を試料中の目的の分析物の存在の測定に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、あらゆる目的において参照により全内容が本明細書に組み込まれている、2008年5月8日出願の米国仮特許出願第61/126892号および2008年5月12日出願の米国仮特許出願61/127311号の利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子(「NPs」)は、電子工学、光学、触媒およびバイオテクノロジーにおいて、多種多様な用途を有することが報告されている。NPsの物理特性(例えば、高い表面/体積比、表面エネルギーの増加、圧負荷後の延性の増加、高い硬度、高い比熱など)により、材料指向の産業および材料科学における種々の用途がもたらされている。例えば、種々の金属NPsは多数の反応を触媒するのに使用され、半導体NPsは蛍光プローブとして使用されている。
【0003】
単一の粒子を検出する電気化学デバイスを使用する単一粒子の電気化学センサーについても報告されている。細菌、ウイルス、凝集体、免疫複合体、分子またはイオン種などの粒子を検出する高い感受性を実現するためのこのようなデバイスを使用する方法について記載されている。
【0004】
センシングアレイ(sensing arrays)におけるコロイド粒子の使用についても報告されている。これらは、導電性NP材料の複数の非導電性領域および導電性領域が交互するアレイを介して流体中の分析物を検出する化学センサーである。各センサーの化学的感度の多様性は、導電性および/または非導電性領域の構成を定性的または定量的に変化させることで得られると報告されている。
【0005】
一般に、ナノ構造化材料(「NSMs」)の粒径は、少なくとも一次元において1nm未満〜数百nmに及び、電気エネルギー帯構造は粒径依存性特性があり、つまりこれは物理的および化学特性に影響を与えることができる。NSMsとバルク材料との間の基本的な違いは、NSMs表面の表面原子と曲率半径との比が格子定数と同じであることである。その結果、一般に、ナノ構造化材料は、バルク材料系の類似物と比べ活性が高い。NSMsを形成する多数の方法が当業者に知られており、原子(またはより複雑なラジカルおよび分子)を結合することによる形成およびバルク材料の分散による形成、例えば熱蒸発、イオンスパッタリング、溶液からの還元、マイクロエマルジョンでの還元および凝縮による形成が含まれる。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、概して有機および/またはイオン性発光ナノ構造化材料の合成および特徴づけを含む、ナノ粒子(NPs)などのナノ構造化材料の分野に関する。発光性有機および/またはイオン性材料から形成されたこのようなナノ構造化材料(「NSMs」)を起電性化学発光(ECL)に使用することができる。とりわけnmスケールでのNPsを発生させ、配置し、かつ特徴づけする問題およびNPsの電極反応により発生したごく微量の電流およびECL強度の測定の問題について認識されてきた。本出願は、電極でのナノ構造化材料の衝突中に発生するECLの観察に使用することができる方法および装置を提供する。本方法は、ナノ構造化材料の電気化学プロセスに関する情報を提供し、かつ高感度の電気分析方法に関する基礎原理を提供することができる。本方法で測定した電気化学特性は、装置で測定することができるいかなる特性であってよいが、最も一般的な特性にはナノ構造化材料のレドックス反応由来のECLの発生を含む。別の一般的にモニターされる特性は電流であってよい。
【0007】
一般に、本デバイスは試料室中に電気化学セルを含む。典型的に、電気化学セルは、二つ以上の電極、試料室にナノ構造化材料を入れる一つ以上のポートおよび電極と連通する電気化学装置を有する。電気化学セルを、電気化学装置および光子検出器を備える測定装置に接続することができる。注入されたナノ構造化材料は、電極と相互作用することができ、光子検出器により取り込まれることができる一つ以上の光子を発生させることができる。
【0008】
本発明は、少なくとも一つのECL NSM、少なくとも二つの電極、任意の共反応物を有する一つ以上の(複数の)化学分析物を分析するキットおよび(複数の)NSM、(複数の)電極および(複数の)化学分析物との間の相互作用により発生した一つ以上の電流およびECL特性を読み取る測定装置を備える。
【0009】
一実施形態では、発光ナノ構造化材料を既に添加している試料溶液中の分析物を検出する方法を提供する。方法には、溶液と連通する二つ以上の電極を含有する電気化学セルに試料溶液を入れ、発光ナノ構造化材料、液体試料および一つ以上の電極の相互作用を介して一つ以上のECL特性を発生させ、相互作用により発生した少なくとも一つのECL特性を測定することを含む。発光ナノ構造化材料は、レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含む。ECL特性の発生を高めるために共反応物を液体試料に添加できる。適切な共反応物の例として、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸ナトリウム)、過硫酸塩、過酸化ベンゾイルおよびトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)がある。
【0010】
一実施形態では、複数の発光ナノ構造化材料が既に添加されている試料溶液中の分析物を検出する方法を提供する。方法には、溶液と連通する二つ以上の電極を含有する電気化学セルに試料溶液を入れ、発光ナノ構造化材料、液体試料および一つ以上の電極の相互作用を介して一つ以上のECL特性を発生させ、相互作用により発生した少なくとも一つのECL特性を測定することを含む。発光ナノ構造化材料は、レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含む。
【0011】
別の実施形態では、
液体試料中の発光ナノ構造化材料の分散物と一つ以上の電極を接触させ、
一つ以上の電極を介して電気化学エネルギーに分散物を曝露させ、
電極の一つと発光ナノ構造化材料の相互作用により発生した少なくとも一つのECL特性を測定する
ことを含む、ナノ構造化材料と電極表面の相互作用を観察する方法を提供する。(複数の)ECL特性の測定には、相互作用により発生した電流などの電気化学特性を測定することを含む。(複数の)ECL特性の測定には、相互作用により発生したECLなどの光学特性の測定を含むことができる。(複数の)ECL特性の測定には、発光ナノ構造化材料と電極の一つの表面の相互作用により発生した一つ以上のECL特性の測定を含むことができる。典型的に、分散物は、ナノ構造化材料のコロイド水溶液であり、これはレドックス活性の発光性有機化合物または有機金属化合物から形成される。
【0012】
本発明の構成、方法およびデバイスの特徴および利点をより完全に理解するために、ここで、添付の図とともに詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】9,10−ジフェニルアントラセン(「DPA」)ナノロッドのSEM画像を示す。
【図2】図2AはRu−LCEナノベルト(「NBs」)のSEM画像を示し、図2Bは、Ru−LCEナノベルト(「NBs」)のTEMイメージを示す。図2Aおよび図2Bの挿入図は、それぞれ単一NBの側面SEM画像およびSAEDパターンを示す。
【図3】図3A、図3Cおよび図3Dは、TEM画像を示し、図3Bは再析出後の早期段階において室温で得られたRu−LCE試料のSAEDパターンを示す。(図3Aおよび図3B)5分。(図3C)30分。(図3D)2時間。([Ru−LCE]=1.35x10-5M、pH7.0)。
【図4】図4Aは水中Ru−LCB NBsの正規化吸収(破線)および蛍光発光(実線)スペクトル(それぞれ「NBs−Ab」および「NBs−Em」)とMeCNのRu−LCEモノマーの正規化吸収(破線)および蛍光発光(実線)スペクトル(すなわち、溶液中のRu−LCE分子;それぞれ「Mono−Ab」と「Mono−Em」)を示す。Ru−LCEモノマーとNBsの濃度は、それぞれ6.75×10-6Mおよび2.25×10-14Mである。図4Bは、単一NBの蛍光画像である。
【図5】図5AはRu−LCE NB懸濁液のサイクリックボルタモグラム(「CV」)およびECL曲線を示す。図5Bは−1.25V〜1.25Vの電位ステップにおける電流およびECLを示す。ステップ期間は、各電位で2,6,10,14および18秒である。支持電解質および共反応物は、それぞれ0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.2)および0.1Mのトリプロピルアミン(「TPrA」)である。NBsの濃度は、2.2×10-14Mである。白金電極は1.5mm(図5A)、電位走査速度は0.1V/sおよび(図5B)パルス幅は2秒である。
【図6】図6Aは0.1M TPrAを含有する0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.2)中の白金超微小電極(UME)上に沈積した単一Ru−LC NBのCVおよびECL曲線を示す。電位走査速度は0.1V/sである。図6Bは単一NBを用いたUMEの光学顕微鏡画像である。
【図7】図7Aはルブレンナノ結晶(NCs)(THFから調製)、0.1MのTPrA、0.1MのNaClO4に対するクロノアンペロメトリー(点線)および一過性ECL(実線)、パルス幅0.1秒(図7B)のCV、ルブレンNCsの掃引ECLと、ブランク実験として0.1MのTPrA、0.1MのNaClO4、走査速度:500mV/sを示す。図7CはルブレンNCs(DMFから調製)、0.1MのTPrA、0.1MのNaClO4のクロノアンペロメトリー(点線)と一過性ECL(実線)、パルス幅0.1秒(図7D)、ルブレンNCs(THFから調製)、0.1MのTPrA、0.1MのNaClO4に対する一過性ECL(実線)、パルス幅0.05秒を示す。
【図8】共反応物として0.1MのNa2C2O4(シュウ酸ナトリウム)を含有する水溶液中のDPAナノロッドのECL(実線)および電流(点線)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、測定装置に接続した電気化学セルを使用して化学分析物を分析する方法、装置およびキットを提供する。電気化学セルは、一つ以上のレドックス活性の発光ナノ構造化材料、一つ以上の化学分析物および場合により共反応物を含む溶液を含有する。さらに、電気化学セルは、溶液と電気的に連通する二つ以上の電極を含有する。二つ以上のECL特性が発光ナノ構造化材料と液体試料との相互作用により発生し、一つ以上の電極で測定される。
【0015】
粒子濃度を変更することにより、共反応物の粒径および濃度(共反応物が使用される場合)、i−tプロフィールおよび/またはECL強度対時間曲線を使用して、指示薬および共反応物の反応運動についての情報を得ることができる。ナノ構造化材料を使用した光学、伝導率および質量信号の比較において、本ナノ粒子系ECL技術は、高感度の単一装置を用いた検出を可能にする。
【0016】
本出願は、測定装置に接続した電気化学セルを有する化学分析物を分析する方法、構成およびキットを含む。電気化学セルは、共反応物を用いて、または用いずに一つ以上のナノ構造化材料を有する溶液を含有する。さらに、電気化学セルは、溶液と連通する二つ以上の電極を含有する。一つ以上の発光事象が一つ以上のナノ構造化材料および共反応物(共反応物が存在する場合)との相互作用により発生し、電極で、またはセルに接続した光学検出器で測定される。
【0017】
本出願は、電気化学セル内の溶液に一つ以上のレドックス活性の発光ナノ構造化材料を含むことができるデバイスを提供する。例えば、一つ以上のレドックス活性の発光ナノ構造化材料は、(例えば、有機金属化合物から形成された)イオン性ナノ構造化材料または小さい有機化合物またはポリマーのナノ構造化材料であってよい。ナノ構造化材料は、少なくとも一次元において、約1nm〜約1000nm未満の粒径であってよい。さらに、ナノ構造化材料の粒径分布は、一般に均一、分散または多様であってよい。ナノ構造化材料は、様々な群の粒子を有することができ、一般に、溶液中の群内の粒径は類似するが、他の群に対して異なる粒径を有する。例えば、多くの実施形態において、ナノ構造化粒子は、平均粒径が約250nm以下であり、いくつかの場合、約100nm以下である少なくとも一次元を有する。ナノ構造化粒子は、平均寸法が約500nmを越えないような粒径および形状であってよい。
【0018】
本出願は、有機および/またはイオン性発光化合物を含むナノ構造化材料を調製する方法を提供する。適切な有機発光化合物の例として、発光芳香族化合物、例えば、発光多環式芳香族炭化水素を含んでもよい。本方法で使用することができる適切なイオン性発光化合物の例として発光金属含有錯体、例えば、金属イオンのポリデンテート錯体がある。このような化合物に含まれ得る適当な金属は、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、白金、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムがある。通常、ルテニウム含有有機金属化合物を本ナノ構造化材料および方法で使用する。本方法はまた、実施形態を含み、この場合ナノ構造化材料が発光フェニル置換、多環式芳香族炭化水素、例えば、ルブレンおよびジフェニルアントラセン(DPA)から形成される発光ナノ粒子を含む。
【0019】
本明細書で使用される。「ナノ構造化材料」は、ナノスケールのバルク構造、すなわち、少なくとも一次元が約250nm以下である材料を指す。言い換えると、材料が固体状態である場合、所与の構造の結晶または材料がバルク材料を含む化合物から形成される。本明細書で使用されるように、ナノ構造化材料は個別の化合物ではない。
【0020】
金属含有有機化合物は、ポリデンテートリガンド、例えば、ビピリジル、置換ビピリジル、1,10−フェナントロリンおよび/または置換1,10フェナントロリンのようなヘテロ芳香族ポリデンテートリガンドを含み、この場合、一つ以上のポリデンテートリガンドは、少なくとも一つの長鎖炭化水素基、例えば典型的には12〜22個の炭素原子を有する直線状長鎖アルキル基を含む。例えば、金属含有有機化合物は、式[M(PD)2(C(O)O(CH2)nCH3)2−PD)]X2、式中、PDは、ポリデンテートリガンドであり、MはRuまたはOsイオンなどの金属イオン、nは10〜30の整数であり、Xはアニオンである。MがRuであり、PDがビピリジル(bpy)基である化合物の例としては、LCE(長鎖エステル)で表される、エステルとして結合した長鎖アルキル基を有するルテニウム化合物である、次式Ru−LCEで表されるものをあげることができる:
【化1】
【0021】
適切なECL部分の具体例として、少なくとも一つの長鎖アルキル置換ビス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)またはトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)部分を含む化合物がある。ECL標識として作用することができるこの化合物の一群は、長鎖アルキル置換Ru(bpy)32+塩、例えば、Ru(bpy)2(4,4’−(C(O)(CH2)nCH3)2−bpy)Cl2およびRu(bpy)2(4,4’−(C(O)O(CH2)nCH3)2−bpy)(ClO4)2であり、式中nは、10〜30の整数である。具体的な例として、Ru(bpy)2(4,4’−(C(O)O(CH2)14CH3)2−bpy)2+塩がある(本明細書において「Ru(bpy)2(bpy−C16Est)2+塩」ともいう)。
【0022】
長鎖アルキル置換Ru(bpy)32+塩の他の適切な例として、Ru(bpy)2(LCsub−bpy)2+塩などの化合物があり、この場合、「LCsub−bpy」リガンドは、長鎖アルキル置換ビピリジル化合物である。長鎖アルキル置換ビピリジル化合物を当業者に知られた多数の方法により調製することができる。例として、対応するジアミドを形成する、ステアロイルクロリドなどの活性化カルボン酸または他の活性化長鎖アルカン酸の誘導体(例えば、CH3(CH2)nCO2−X、式中、nは約10〜25の整数である)と金属ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−4’−アミノメチル−2,2’−ビピリジン)塩との反応生成物がある。Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−4’−アミノメチル−2,2’−ビピリジン塩は本明細書において「Ru(bpy)2(bpy−C19Amd)2+塩」とも呼ばれる。長鎖アルキル置換ビピリジンを生成する合成方法の例は、開示が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5324457号および第6808939号ならびにFraser et al.,J.Org.Chem.,62,9314−9317(1997)に記載されている。
【0023】
長鎖アルコキシ置換ビピリジンを長鎖アルコキシド(例えば、NaO(CH2)nCH3、式中、nは約10〜25の整数)と4,4’−ビス−ブロモメチルビピリジンとの反応により生成することができる。
【0024】
長鎖アルキルメルカプタン置換ビピリジンを長鎖アルキルメルカプタン(例えば、NaS(CH2)nCH3、式中、nは約10〜25の整数である)と4,4’−ビス−ブロモメチルビピリジンとの反応により生成することができる。
【0025】
長鎖アルコキシ置換ビピリジンを長鎖アルキルハロゲン化物(例えば、Br(CH2)nCH3、式中、nは約10〜25の整数である)と4,4’−ビス−ヒドロキシメチル−2,2’−ビピリジンとの反応により生成することができる。例えば、米国特許第6808939号を参照。
【0026】
長鎖アルキルエステル置換ビピリジンを4−(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)−酪酸と長鎖アルカノール(例えば、HO(CH2)nCH3、式中、nは6〜25の整数である)とのエステル化により生成することができる。例えば、米国特許第6808939号を参照。
【0027】
長鎖アルキルエステル置換ビピリジンも4,4’−ビス−(カルボキシ)ビピリジンとステアリルアルコールなどの長鎖脂肪アルコールとのエステル化により生成することができる。
【0028】
上記のポリデンテートリガンド(例えば、ビピリジルリガンド)を含む金属含有有機錯体は、錯体が発光性である限り、一つ以上の多数の様々な金属イオンを含むことができる。上記のように、このような錯体で使用することができる適切な金属イオンの例として、ルテニウム、オスミウム、レニウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムイオンがある。このような化合物は、配位化合物または有機金属化合物として数多く知られている。本明細書で使用されるように、有機金属化合物は、金属および有機基を有する化合物であるが、錯体では、直接の金属炭素結合は存在することはできず、しかし「有機金属」はまた、金属炭素結合を有する化合物を指す。配位化合物は当業者によく知られている。
【0029】
本明細書に記載の方法に使用されるナノ粒子を当業者に知られている種々の方法で生成することができる。例えば、有機および/またはイオン性発光化合物のナノスケール構造を化合物に適切な溶剤中の発光化合物の溶液から生成し、次いで典型的には、激しい混合下において化合物に対して非溶剤(anti-solvent)である溶媒に第1の溶液を添加することにより生成することができる。第1の溶液を非溶剤に急速に注入し、または滴下により添加することができる。この「再析出方法」をキャッピング剤、例えば低分子量の界面活性剤、例えばTriton X−100、中性電荷ポリマーまたは電荷ポリマーの存在下または非存在下において行うことができる。特定の実施形態において、界面活性剤の添加のない水溶液に有機溶剤中の発光化合物の溶液を入れることによりナノ粒子を形成することが有利となりうる。界面活性剤の存在が、おそらくはナノ粒子の外側にある一層の界面活性剤の存在により、得られたナノ粒子を使用してECLを発生させることに負の影響を及ぼしうる。本明細書で使用されるように、用語「実質的に界面活性剤を含まない」とは、界面活性剤の添加のない有機溶剤と水溶液の混合物から調製されているナノ粒子を指す。
【0030】
再析出方法で形成された有機化合物のナノスケール構造の具体的な生成例は、開示が参照により本明細書に組み込まれる、Kasai et al.,Jpn.J.Appl.Phys.(1992),31,1132に記載される。このような再析出方法に使用することができる適切な溶剤の例として、極性、水混和性有機溶剤、例えば、アセトニトリル(MeCN)、アセトン(MeCOMe)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などがあげられる。通常、水を、本ナノ構造化材料を形成する場合に貧溶媒として使用するが、ヘキサンなどの他の溶剤も貧溶剤として使用することができる。
【0031】
理論に束縛されることなく、以下のスキームIに記載の一般スキームにより電気化学発光部分の発光励起状態が発生する基本機構の説明を提供する。説示されるように、(正常状態を参照して)電子を一つ多くまたは一つ少なく有するラジカル種が発生後、結合して電気発光部分励起状態を作製することができる。
【化2】
【0032】
Ru−LCEナノベルト(NBs)を室温でMeCNの4%w/v溶液から単一の再析出方法で合成した。典型的に、このようなRu−LCE NBsは水に不溶性であるが、水と混和する極性有機溶剤に溶解する。例えば、[Ru(bpy)2(4,4’−(C(O)O(CH2)14CH3)2−bpy]2+は水に不溶性であるが、アセトニトリルまたはアセトンのいずれかに非常に溶解性である。典型的な調製として、この溶液4μLを室温で30秒間超音波撹拌下において高純粋(ミリポア)水10mLに急速に注入後、室温にて24時間、密封した水薬瓶内で経時変化させた。得られたコロイド溶液は、透明な橙黄色溶液であり、強度の光散乱を呈し、ナノ粒子の形成を確実にした。経時時間が増大するにつれ(1ヵ月)、少量の橙黄色のナノベルト析出物が沈殿した。ナノベルトは容易に分散し、わずかに撹拌することで、再度、透明な溶液を得ることができる。
【0033】
図2Aおよび図2Bに示されるようにSEMおよびTEM画像は、長時間の経時変化後に得られた粒子が長く、直線状のベルト様の形態であり、幅約200〜1000nmおよび長さ約5〜15μmを有することを示す。FESEM(電界放出走査電子顕微鏡)を使用してNBsを特徴づけることもできる。NBsの側面SEM画像から推定されるように、NBsの厚さは約50〜120nmであり、幅/厚さ比は約5〜10である。選択領域の電子回析(SAED)パターン(図2Bの挿入図)により、調製された状態のNBsは単一の結晶構造を有し、[001]方向に沿って成長することが明らかである。これはまた、X線回析(XRD)パターンの対比により確実となり、このパターンがNBsの[001]格子面の好ましい配向を示す。強く、鋭いXRD信号により、Ru−LCE NBsの高度な結晶構造を示唆し、2.231°での主要なピークは、Ru−LCEの単一結晶の好ましい[001]成長面に対応することが示唆される。細胞体積およびNB粒径(10000×500×100nm)において、単一のNBは約3.0×108Ru−LCE分子を含有する。円形の断面を有する通常のナノワイヤーと比較して、ナノベルト構造は、電極上に沈積した場合、大面積のインターフェースを提供し、従って、電気接触の向上とともにデバイスの製造を容易にするはずである。
【0034】
注入5分後に回収した試料は、非晶Ru−LCEの約10nm粒径のNPsからなり(図3Aおよび図3Bを参照)、続いて30分以内にベルト様構造に凝集した(図3C参照)。経時変化の時間を2時間に延長することにより、NBsの長さの漸増的増加が得られた(図3Dを参照)。電子回析分析により、最初に形成されたNBが非晶Ru−LCEであったことが示された。経時変化の時間を24時間に延長することにより、NBsの結晶化度の漸増的増加が得られた。理論に束縛されることなく、上記の観察により、Ru−LCE単一結晶NBsの形成は、結晶化の古典的な機構に従った溶液から直接成長させるというよりむしろ、最初に形成したNP構成要素の核生成、配向された集合および再構成を含む多ステップのプロセスを含む。
【0035】
図4Aは、溶液中のRu−LCE NBsならびに対応モノマーの吸収および蛍光発光スペクトルの比較を示す。MeCN中のモノマーは、分子内の電荷移動吸収帯(360〜480nm)を呈し、これは、金属−配位子電荷移動(MLCT)の推移に割り当てられる(すなわち、dπ→π*)。水溶液中のNBsの、最もエネルギーの少ない金属−配位子電荷移動の推移は、アセトニトリル中のモノマーと比較して明らかな青いシフト(480〜458nm)を呈し、強いπスタッキング相互作用によるNBsのH凝集体の形成を示唆する。また、NBsの蛍光スペクトルは、吸収スペクトルと同様な浅色移動および増強蛍光発光(約640nm)を示し、これはNBsがJ凝集体であり、この場合分子が頭部から尾部方向に配列され、相対的に高い蛍光収率が誘起されることを意味する。NBの蛍光画像を容易に観察することができる(図4Bを参照)。理論に束縛されることなく、二種の凝集体の共存(HおよびJ型)がNBsの自発的な形成につながると考えられる。
【0036】
二種類の方法を使用し、白金電極または超微小電極(UME)でのNBsのECLを観察した。最初に、共反応物として0.1Mのトリプロピルアミン(TPrA)と0.1Mのリン酸バッファーを含有する水中に分散したNBs由来のECLを、電位スキャン(0〜1.5V)またはパルス(−1.25〜1.25V)中で容易に観察することができた(図5Aおよび図5Bを参照)。二つ目に、白金UME上に沈積した単一のRu−LCE NBのECL曲線も観察した(図6Aを参照)。サイクリックボルタモグラム(CV)は、TPrAの直接の酸化により、むしろ広範囲の不可逆なアノード波を示し、単一のRu−LCE NBはサイクリックボルタモグラム(CV)にほとんど影響を与えなかった。酸化電流は、約1.38Vの活動電位で約1.1Vのピーク時に開始し、不可逆性である。このようなアノード酸化挙動は、ガラス状炭素電極での中性の水溶液中のTPrAのものと類似する。続いて、この機構は、溶液中のRu(bpy)32+のものにも起こる可能性があり、1.25Vの正電極の電位を走査することにより、吸着されたNBのRu(bpy)2(bpy−C16Est)2+の+3の形態への酸化を直接またはTprAラジカルカチオンを介してのいずれかで引き起こされる(以下のスキームIIAおよびIIBに示す)。還元TPrAラジカルまたは+1の形態のいずれかと+3の形態の反応は、励起状態を生じる。ECL発光強度は、電位の増大とともに増加する。(アセトニトリル溶液からキャストされた)Ru(bpy)2(bpy−C16Est)2+のフィルムを含むスライドを溶液中に入れ、一晩静かに撹拌することによって調製されたRu(bpy)2(bpy−C16Est)2+で飽和した水溶液に対して、ECLは観察されなかったことに注目されたい。
【化3】
【0037】
ルブレンNCsを再析出法により以下のように調製した:テトラヒドロフラン(THF)中の5mMのルブレン溶液100μLを室温にて激しく撹拌しながらアルゴン雰囲気下で脱イオン水10mLにすばやく注入した。次いで、得られた透明な淡赤色のNC溶液を、0.22μmフィルターを用いてろ過した。動的光散乱(DLS)により決定した水中のルブレンNPsの流体力学的半径は約20nmであり、約75〜100nm粒径の少量の凝集体がある。凝集体の形成運動は、粒子、粒子径およびシステム内の流量状態との間の相互作用により決定される。低分子量の界面活性剤または中性もしくは電荷ポリマーなどのキャッピング剤の添加は、劇的にNPsの形成および/または凝集プロセスに影響を与えることができる。さらに、粒子を安定化させることもできる。例えば、水へのTriton X−100の添加は、非常に小さいルブレンNCs(〜4nm)の形成に好ましく、粒径分布は小さい。
【0038】
共反応物として0.1Mのトリプロピルアミン(TPrA)および0.1Mのリン酸緩衝液を含有する水中に分散したルブレンNCs由来のECLは、電位スキャン中(0〜0.9V対Ag/AgCl)(図7Bを参照)またはパルス中(0〜1.1V)(図7A、図7Cおよび図7Dを参照)に容易に観察することができた。電位パルス中のECL信号は観察可能であるが、おそらく水媒体中に発生するラジカルイオンの不安定性によりパルス期間(正常な拡散限界質量移動係数に比べ速い)内の時間とともに急速に減衰する。図7Bに示される電位範囲のCVは特徴がないが、正電位でのTPrAの拡散限界の酸化ピークに達する(図6Aを参照)。N,N−ジメチルホルムアミドDMFなどの異なる溶剤で調製したルブレンNCsは、同じ調製条件、すなわち、DMF中の5mMのルブレン100μLを脱イオン水10mLに注入時のECL信号が非常に弱いことが示される。ルブレンNCsの濃度を5倍増加させるとECL信号が増加し、溶剤中の有機またはイオン性化合物の溶剤多孔性および溶解性が再析出方法のナノ結晶化プロセスに微妙に影響しうる。
【0039】
良好な溶剤としてTHF、DMFまたはMeCNを使用し、貧溶剤として水を使用することによりDPAのNCsを調製した。溶解溶剤としてMeCNを使用したDPA NCsの流体力学的半径の平均は約45nmであり、これは上記のルブレンNCsに比べかなり大きい。DPA NCsのSEM画像により、直径約20〜100nmおよび長さ約100〜600nmの多分散系のナノロッドであることが明らかである(図1を参照)。
【0040】
DPA NCsのECLを共反応物としてTPrAまたはシュウ酸を比較することにより検討した。共反応物としてTPrAを使用することにより、DPA NCs由来の顕著なECL強度は観察されなかったが、図8に示すように、一部のECLはシュウ酸塩の存在下において検出された。これは既刊の報告書と一致し、CO2-(シュウ酸塩酸化中に生成される活性中間体)がTPrA(TPrA酸化により生じる活性中間体)に比べエネルギーが大きいことを示す。スキーム1で図示されたスキームは、共反応物(例えば、TPrA)が本ナノ構造化材料中のレドックス活性の発光化合物と相互作用し、光を放射することができる励起状態の発光種を発生することができるスキームを示すことができると考えられる。
【0041】
NSMsなどの有機またはイオン性(例えば、有機金属化合物または金属リガンド錯体物)ナノ構造化材料は既に合成されており、そのECLは、Ru−LCE、ルブレンおよび指示薬としてのDPAならびに共反応物としてのTPrAもしくはシュウ酸を使用して検討している。当業者であれば、他のNPs、共反応物および他の溶剤の組合せを使用することができることが理解されるだろう。バックグランド電流を減少させ、相対的ECL効率を高めるため、電極またはNPsに特定の表面処理を行うことができる。適切な電極を、ITO、金、ガラス状炭素、ボロンドープされたダイアモンドなどの材料および他の同様な材料から形成することができる。
【0042】
一般に、「置換」とは、以下に定義されるように有機基(例えば、アルキル基)を指し、この中に含有される水素原子への一つ以上の結合が非水素または非炭素原子への結合により置き換えられている。置換された基にはまた、(複数の)炭素または(複数の)水素原子への一つ以上の結合がヘテロ原子への二重または三重結合を含めた一つ以上の結合に置き換えられる基を含む。従って、置換基は他に明記されない限り、一つ以上の置換基と置換されるだろう。いくつかの実施形態において、置換基は、1、2、3、4、5または6個の置換基で置換される。置換基の例として、ハロゲン(すなわち、F、Cl、BrおよびI);ヒドロキシル;アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシおよびヘテロシクリルアルコキシ基;カルボニル(オキソ);カルボキシル;エステル;エーテル;ウレタン;オキシム;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アラルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;スルホンアミド;アミン;N−オキシド;ヒドラジン;ヒドラジド;ヒドラゾン;アジド;アミド;尿素;アミジン;グアニジン;エナミン;イミド;イソシアネート;イソチオシアネート;シアネート;チオシアネート;イミン;ニトロ基;ニトリル(すなわち、CN)などがある。
【0043】
アルキル基は、炭素原子1〜約20個、典型的には炭素1〜12個を含み、またはいくつかの実施形態では、炭素原子1〜8、1〜6または1〜4個を有する直鎖および分岐鎖アルキル基を含む。以下に定義されるようにアルキル基はさらにシクロアルキル基を含む。直鎖アルキル基の例として、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチルおよびn−オクチル基などの炭素原子1〜8個のものを含む。分岐鎖アルキル基の例として、イソプロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、イソペンチルおよび2,2−ジメチルプロピル基を含むがそれだけに限定されない。代表的な置換アルキル基は、上記に挙げたものなどの置換基を用いて1回以上置換することができる。
【0044】
アリール基は、ヘテロ原子を含有しない環状芳香族炭化水素である。アリール基は、単環式、二環式および多環式環系を含む。従って、アリール基は、シクロペンタジエニル、フェニル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニレニル、インダセニル、フルオレニル、フェナントレニル、トリフェニルエニル、ピレニル、ナフタセニル、クリセニル、ビフェニル、アントラセニル、インデニル、インダニル、ペンタレニルおよびナフチル基を含むがそれだけに限定されない。いくつかの実施形態において、基の環部分に、アリール基では炭素5〜14個および他では炭素原子5〜12個またはさらに6〜10個を含有する。「アリール基」は、縮合芳香脂肪族環系(例えば、インダニル、テトラヒドロナフチル)などの縮合環を含有する基を含むが、環員の一つに結合したアルキル基またはハロ基などの他の基を有するアリール基を含まない。むしろ、トリルなどの基は置換アリール基を指す。代表的な置換アリール基は一置換されることができ、または1回以上置換されることができる。例えば、一置換アリール基は、2、3、4、5または6位置換フェニルまたはナフチル基を含むがそれだけに限定されず、これらは上記に挙げたものなどの置換基を用いて置換されることができる。
【0045】
ヘテロ環基は、3員環以上を含有する芳香族環化合物(ヘテロアリールともいう)および非芳香族環化合物を含み、そのうち1個以上がN、OおよびSなどのヘテロ原子であるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、ヘテロ環基は、3〜20個の環員を含み、ところが他のこのような基は、3〜6、3〜10、3〜12または3〜15環員を有する。ヘテロ環基は、不飽和の、部分的に飽和の、および飽和の環系、例えばイミダゾリル、イミダゾリニルおよびイミダゾリジニル基を包含する。「ヘテロ環基」は、縮合芳香族および非芳香族基を含むもの、例えば、ベンゾトリアゾリル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニルおよびベンゾ[1,3]ジオキソリルを含む縮合環種を含む。さらに、例えばキヌクリジルなどのそれだけに限定されないヘテロ原子を含有する架橋多環式環系を含む。しかし、環員の一つに結合したアルキル、オキソまたはハロ基などの他の基を有するヘテロ環基を含まない。むしろ、これらは、「置換ヘテロ環基」と呼ばれる。ヘテロ環基は、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、オキサチアン、ジオキシル、ジチアニル、ピラニル、ピリジル、ビピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオニル、ホモピペラジニル、キヌクリジル、インドリル、インドリニル、イソインドリル、アザインドリル(ピロロピリジル)、インダゾリル、インドリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズチアゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾキサジニル、ベンゾジチイニル、ベンゾキサチイニル、ベンゾチアジニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル(アザベンズイミダゾリル)、トリアゾロピリジル、イソキサゾロピリジル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、チアナフタレニル、ジヒドロベンゾチアジニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロインドリル、ジヒドロベンゾジオキニル、テトラヒドロインドリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロベンズイミダゾリル、テトラヒドロベンゾトリアゾリル、テトラヒドロピロロピリジル、テトラヒドロピラゾロピリジル、テトラヒドロイミダゾピリジル、テトラヒドロトリアゾロピリジルおよびテトラヒドロキノリニル基を含むが、それだけに限定されない。代表的な置換ヘテロ環基は一置換または1回以上置換でき、非限定的な例としてはピリジルまたはモルホリニル基などがあげられ、これらは上記に挙げたものなど種々の置換基を用いて2、3、4、5または6位置換または二置換される。
【0046】
アルコキシ基は、ヒドロキシ基(−OH)であり、この場合、水素原子への結合が上記に定義されたように置換または非置換されたアルキル基の炭素原子への結合により置き換えられる。直鎖アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどを含むがそれだけに限定されない。分岐鎖アルコキシ基の例として、イソプロポキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソペントキシ、イソヘキソキシなどを含むが、それだけに限定されない。シクロアルコキシ基の例として、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどを含むがそれだけに限定されない。代表的な置換アルコキシ基を上記に挙げたものなどの置換基を用いて1回以上置換することができる。
【実施例】
【0047】
本発明の種々の実施形態の作製および使用について本明細書に詳述される一方で、本発明が多種多様な具体的な内容において実施することができる多数の応用可能な本発明の概念を提供することを理解すべきである。本明細書に記載の具体的な実施形態は、単に本発明を作製し、使用する具体的な方法の単なる例であり、本発明の範囲を制限するものでない。
【0048】
一実施形態は、レドックス活性の発光化合物から形成されるナノ構造化粒子状材料を提供する。通常、ナノ構造化材料は、平均粒径が約250nm以下、より一般的には約150nm以下の少なくとも一次元を有し、いくつかの実施形態では、少なくとも一次元において、約100nm以下の平均粒径を有する。例えば、ナノ構造化材料は、ナノ粒子(「NP」)であってよく、この場合、約200nmを越える平均粒径を有する次元はない。他の例にナノ結晶(「NCs」)を含み、この場合、典型的には少なくとも二つおよび多くの場合、三つの次元が約200nm以下および通常、約100nm以下である。他の実施形態では、ナノベルト(「NBs」)を含むことができ、これは幅が少なくとも約150nmおよび厚さが約50〜125nmの長い、直線状のベルト様の形態を有する。このようなナノベルトは、約200〜1000nmの幅および約5〜15μmの長さを有することができ、典型的には、約5〜10の幅/厚さ比を有し、約10以上のアスペクト比を有することができる。さらに他の実施形態において、ナノ構造化材料は、平均径が約250nm以下、通常、約10〜150nmおよび平均長が約50nm〜1ミクロンのナノロッドであってよい。
【0049】
一実施形態では、発光ナノ構造化粒子状材料が添加された試料溶液中の分析物を検出する方法を提供する。方法は、溶液と連通する二つ以上の電極を含有する電気化学セルと試料溶液とを接触させ、発光ナノ構造化材料、液体試料と二つ以上の電極との相互作用を介して一つ以上のECL特性を発生させ、相互作用により発生した少なくとも一つのECL特性を測定することを含む。発光ナノ構造化材料はレドックス活性の発光性有機または有機金属化合物を含む。
【0050】
別の実施形態は、
(a)試薬混合物を形成するよう適切な条件下において分析物と化学部分を接触させ、この場合、化学部分はレドックス活性の発光性有機または有機金属化合物を含むナノ構造化粒子状材料を含み、
(b)試薬混合物を化学エネルギーまたは電気化学エネルギーに曝露させることにより、化学部分に電磁放射線放射を誘起させ、および
(c)放射された電磁放射線を検出し、それにより目的とする分析物の存在を決定する
ことを含む、目的とする分析物の存在を決定する方法を提供する。
【0051】
本ナノ構造化材料を形成するために用いることができる適切なレドックス活性の発光化合物は、種々の有機および/またはイオン性発光化合物から選択することができる。例として、発光芳香族炭化水素、例えば、フェニル置換多環式芳香族化合物などの発光フェニル置換芳香族炭化水素および発光金属含有錯体、例えば、ルテニウムなどの金属イオンのヘテロ芳香族ポリデンテート錯体がある。
【0052】
適切なフェニル置換多環式芳香族化合物は、多くの場合、ナノ構造化発光材料の形態(これは、ナノ結晶またはナノロッドの形態であってもよい)で、例としては、ルブレン(「Rub」)、ジフェニルアントラセン(「DPA」)および他の発光フェニル置換多環式芳香族化合物があげられる。ヘテロ芳香族ポリデンテート錯体は、一つ以上のヘテロ原子を有する芳香族化合物を含み、この場合、錯体は一つ以上の金属を結合し、または単一の金属に一回以上結合することができる。
【0053】
適切な発光金属含有錯体の例として、ルテニウム、オスミウム、レニウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムなどの金属イオンのポリデンテート錯体があげられる。適切なヘテロ芳香族ポリデンテート錯体の具体例は、置換ビス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)またはトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)含有部分があり、この場合、ビピリジル(「bpy」)基の少なくとも一つは、一つ以上の長鎖アルキル基で置換される。
【0054】
適切な長鎖アルキル置換bpy基(「LCsub−bpy」)は、4−メチル−4’−アルカノイルアミノメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ビス−(アルコキシメチル)ビピリジン、4,4’−ビス−(アルキルメルカプトメチル)ビピリジン、オメガ−(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)−アルカン酸のアルキルエステル、ジ−n−アルキル4,4’−ビス−(カルボン酸)ビピリジン、4,4’−ビス−(カルボキシ)−2,2−ビピリジンのn−アルキルジエステルおよび4,4’−ビス−(ヒドロキシメチル)ビピリジンを有する長鎖脂肪酸のジエステルを含む。
【0055】
4,4’−ビス−(カルボキシ)−2,2−ビピリジンのn−アルキルジエステルを含む適切な発光金属錯体の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(ジ−n−アルキル4,4’−ビス−(カルボン酸)ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(ジ−n−ペンタデシル4,4’−ビス−(カルボン酸)ビピリジン)2+塩または他の関連ルテニウム錯体があり、この場合、アルキルエステル基はそれぞれ約10〜25個の炭素原子を含有する。このようなアルキルエステル基の適切な例はステアリルアルコール、パルミチルアルコールおよびドデシルアルコールのこのようなエステルがある。
【0056】
4−メチル−4’−アルカノイルアミノメチル−2,2’−ビピリジン系の適切な発光金属錯体の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−4’−アルカノイルアミノメチル−2,2’−ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−4’−ステアロイルアミノメチル−2,2’−ビピリジン)2+塩がある。
【0057】
4,4’−ビス(アルコキシメチル)ビピリジン系の適切な発光金属錯体の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(n−アルコキシメチル)ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(n−ヘキサデシルオキシメチル)ビピリジン)2+塩がある。
【0058】
4,4’−ビス−(アルキルメルカプトメチル)ビピリジン系の適切な発光金属錯体の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(n−アルキルメルカプトメチル)ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(n−アルキルメルカプトメチル)ビピリジン)2+塩がある。
【0059】
オメガ−(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)−アルカン酸のアルキルエステル系の適切な発光金属錯体の他の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)アルカン酸アルキルエステル)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)4−(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)−酪酸デシルエステル)2+塩がある。追加の例として、4,4’−ビス−(ヒドロキシメチル)ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(ヒドロキシメチル)ビピリジンのジステアロイルエステル)2+塩およびRu(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(ヒドロキシメチル)ビピリジンのジパルミトイルエステル)2+塩がある。
【0060】
別の実施形態は、液体試料中の目的とする分析物の存在を検出する方法を提供し、本方法は、
(a)ナノ構造化材料を含む試薬と試料を接触させ、この場合、試薬に電気化学発光を繰返し誘起させることができ、ナノ構造化材料がレドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含み、
(b)試薬に電気化学発光を繰返し誘起させ、および
(c)放射された発光の存在を検出し、それにより試料中の目的とする分析物の存在を検出することを含む。本方法はまた、試料と、試薬およびECL共反応物、例えばシュウ酸塩(例えば、シュウ酸ナトリウム)またはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を接触させることを含む。例えば、方法の多くの実施形態において、ナノ構造化材料は、ポリデンデート金属錯体(例えば、ルテニウムビピリジル錯体)およびトリアルキルアミン共反応物(例えば、トリプロピルアミン)を含むことができる。本方法の他の実施形態において、ナノ構造化材料は、フェニル置換多環式芳香族炭化水素(例えば、ルブレン)およびトリアルキルアミン共反応物(例えば、トリプロピルアミン)を含むことができる。本方法のさらに他の実施形態において、ナノ構造化材料は、フェニル置換多環式芳香族炭化水素(例えば、ジフェニルアントラセン)およびシュウ酸塩共反応物(例えば、シュウ酸ナトリウム)を含むことができる。
【0061】
別の実施形態は、液体試料中に存在する目的とする分析物の量を定量的に決定する方法を提供し、本方法は、
(a)ナノ構造化材料を含む試薬と試料を接触させ、この場合、試薬に電気化学発光を繰り返して誘起させることができ、(b)試薬に電気化学発光を繰り返して誘起させ、および(c)放射された発光量を決定し、それにより試料に存在する目的とする分析物の量を定量的に決定することを含む。典型的に、ナノ構造化材料は、レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含む。本方法はまた、試料と、試薬およびECL共反応物、例えばシュウ酸ナトリウムまたはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を接触させることを含む。
【0062】
別の実施形態は、液体試料中の目的とする分析物の存在を検出する方法を提供し、本方法は、
(a)ナノ構造化材料を含む試薬と試料を接触させ、この場合、試薬に電気化学発光を繰返して誘起させることができ、ナノ構造化材料がレドックス活性の発光性有機および/または有機金属化合物を含み、
(b)試薬に電気化学発光を繰返して誘起させ、および
(c)放射された発光の存在を検出し、それにより試料中の目的とする分析物の存在を検出することを含む。本方法はまた、試料と、試薬およびECL共反応物、例えばシュウ酸塩(例えば、シュウ酸ナトリウム)またはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を接触させることを含む。
【0063】
別の実施形態は、液体試料中に存在する目的とする分析物の量を定量的に決定する方法を提供し、本方法は、
(a)ナノ構造化材料を含む試薬と試料を接触させ、この場合、試薬に電気化学発光を繰り返して誘起させることができ、(b)試薬に電気化学発光を繰り返して誘起させ、および(c)放射された発光量を決定し、それにより試料に存在する目的とする分析物の量を定量的に決定することを含む。典型的に、ナノ構造化材料は、レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含む。本方法はまた、試料と、試薬およびECL共反応物、例えばシュウ酸ナトリウムまたはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を接触させることを含む。
【0064】
別の実施形態は、試料中の目的とする分析物の存在を決定する方法を提供し、本方法は、
(a)試薬混合物を形成するよう適切な条件下で化学部分と試料を接触させ、この場合、化学部分は、レドックス活性の発光化合物を含むナノ構造化粒子状材料を含み、
(b)化学部分に電磁放射線放射を誘起させ、
(c)放射された電磁放射線を検出し、それにより目的とする分析物の存在を決定する
ことを含み、
この場合、化学部分に電磁放射線放射を誘起させることは、化学、電気化学および/または電磁エネルギーに試薬混合物を曝露することを含み、
レドックス活性の発光化合物は、フェニル置換多環式芳香族炭化水素などの発光多環式芳香族炭化水素を含む。反応混合物はまた、シュウ酸ナトリウム、過硫酸塩、過酸化ベンゾイルまたはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)などのECL共反応物を含むことができる。
【0065】
発光多環式芳香族炭化水素を含むナノ構造化材料は、約100nm以下の平均流体力学的半径を有するレドックス活性の発光ナノ粒子の形態であってよい。このようなナノ粒子を、ルブレンなどのフェニル置換多環式芳香族炭化水素から形成することができる。例えば、フェニル置換多環式芳香族炭化水素から形成されるナノ結晶は、約50nm以下の流体力学的半径を有することができ(動的光散乱(DLS)により決定した水中の分散物と同じく決定)、これは、約75〜100nmの粒径の少量のナノ結晶凝集体を含むこともできる。他の実施形態において、発光多環式芳香族炭化水素を含むナノ構造化材料は、ナノロッド、例えば、約10〜150nm径および長さ約50nm〜1ミクロンを有するナノロッドの形態であってよい。このようなナノロッドを、ジフェニルアントラセンなどのフェニル置換多環式芳香族炭化水素から形成することができる。ジフェニルアントラセンから形成することができるナノロッドは、直径が約20〜100nmおよび長さ約100nm〜600nmを有することができる。
【0066】
試料中の目的とする分析物の存在を決定する方法は、
(a)試薬混合物を形成するよう適切な条件下で化学試薬と試料を接触させ、この場合、化学試薬は、レドックス活性の発光化合物を含むナノ構造化粒子状材料を含み、
(b)化学試薬に電磁放射線放射を誘起させ、
(c)放射された電磁放射線を検出し、それにより目的とする分析物の存在を決定することを含み、
この場合、化学試薬に電磁放射線放射を誘起させることが、化学、電気化学および/または電磁エネルギーに試薬混合物を曝露することを含み、
レドックス活性の発光化合物は、ビピリジル含有金属錯体などのポリデンテート金属錯体を含む。反応混合物はまた、ECL共反応物、例えばシュウ酸塩、過硫酸塩、過酸化ベンゾイルまたはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を含むことができる。
【0067】
レドックス活性の発光化合物を含むナノ構造化粒子状材料は、レドックス活性の発光ポリデンテート金属錯体、例えば、発光へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体を含むことができる。適切な発光へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体の例として、ルテニウム、オスミウム、レニウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムイオンがある。ポリデンテート金属錯体を含む適切なナノ構造化材料は、一つ以上の長鎖アルキル置換リガンドを含有するヘテロ芳香族ポリデンテート金属錯体から形成される発光ナノベルトを含む。このようなナノ構造化材料の一例としては、ヘテロ芳香族ポリデンテートルテニウム錯体から形成されるナノベルトがあげられ、これは少なくとも一つの長鎖アルキル置換ビピリジンリガンドを含む。このようなナノベルトは、幅が約200〜1000nm、長さが約5〜15μmを有する。これらのナノベルトの厚さは約50〜120nmの範囲であってよい(電界放出走査電子顕微鏡で特徴づけられる)。
【0068】
他の実施形態は、レドックス活性の発光多環式芳香族炭化水素から形成されるナノ構造化粒子を使用する方法に関する。通常、このようなナノ構造化粒子は、少なくとも一次元において、平均径が約250nm以下であり、およびいくつかの場合、約100nm以下である。
【0069】
本明細書に記載の特定の実施形態が本発明の実例として示され、限定するものではないことが理解される。本発明の主な特徴を本発明の範囲から逸脱することなく、種々の実施形態において使用することができる。当業者であれば、ルーティンに過ぎない実験、つまり本明細書に記載の具体的な手法に対して多数の等価物を使用して理解し、または確かめることできるだろう。このような等価物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲により包含される。
【0070】
特許請求の範囲および/または明細書の用語「含む(comprising)」に関連して使用する用語「a」または「an」は、「一つ」を意味しうるが、「一つ以上」、「少なくとも一つ」および「一つまたは二つ以上」の意味とも一致する。明示的に代替物のみを指すために示され、または代替物が相互に除外されない限り、特許請求の範囲で使用する用語「または」は、「および/または」を意味するのに使用されるが、開示は、代替物のみ、および「および/または」を指す定義を支持する。本出願を通し、「約」という用語は、数値が、デバイス、数値を決定するのに使用される方法または研究対象の間に存在するばらつきによる固有誤差の変動を含むことを示すために使用される。
【0071】
本明細書において使用される「またはその組み合わせ」という用語は、用語に先行して一覧された項目の全ての並べかえ、および組み合せを指す。例えば「A、B、Cまたはその組み合わせ」とは、A、B、C、AB、AC、BCまたはABC、および順列が具体的な文脈において重要である場合、さらにBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABの少なくとも一つを含むことを意図する。続けてこの例で言えば、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの一つ以上の項目または用語の繰返しを含有する組み合わせが明示的に含まれる。当業者であれば、典型的に、他に文脈で明示されない限り、組み合わせの項目または用語の数が限定されないことが理解されるであろう。
【0072】
本発明の構成および方法が好ましい実施形態の項目で記載されている一方で、当業者であれば本発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく本明細書に記載される構成および/または方法ならびに方法のステップまたはステップの順列において変更が適用されることができることは明らかであろう。当業者に対して明らかなこのような類似の代用および変更全ては、本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると判断される。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、あらゆる目的において参照により全内容が本明細書に組み込まれている、2008年5月8日出願の米国仮特許出願第61/126892号および2008年5月12日出願の米国仮特許出願61/127311号の利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子(「NPs」)は、電子工学、光学、触媒およびバイオテクノロジーにおいて、多種多様な用途を有することが報告されている。NPsの物理特性(例えば、高い表面/体積比、表面エネルギーの増加、圧負荷後の延性の増加、高い硬度、高い比熱など)により、材料指向の産業および材料科学における種々の用途がもたらされている。例えば、種々の金属NPsは多数の反応を触媒するのに使用され、半導体NPsは蛍光プローブとして使用されている。
【0003】
単一の粒子を検出する電気化学デバイスを使用する単一粒子の電気化学センサーについても報告されている。細菌、ウイルス、凝集体、免疫複合体、分子またはイオン種などの粒子を検出する高い感受性を実現するためのこのようなデバイスを使用する方法について記載されている。
【0004】
センシングアレイ(sensing arrays)におけるコロイド粒子の使用についても報告されている。これらは、導電性NP材料の複数の非導電性領域および導電性領域が交互するアレイを介して流体中の分析物を検出する化学センサーである。各センサーの化学的感度の多様性は、導電性および/または非導電性領域の構成を定性的または定量的に変化させることで得られると報告されている。
【0005】
一般に、ナノ構造化材料(「NSMs」)の粒径は、少なくとも一次元において1nm未満〜数百nmに及び、電気エネルギー帯構造は粒径依存性特性があり、つまりこれは物理的および化学特性に影響を与えることができる。NSMsとバルク材料との間の基本的な違いは、NSMs表面の表面原子と曲率半径との比が格子定数と同じであることである。その結果、一般に、ナノ構造化材料は、バルク材料系の類似物と比べ活性が高い。NSMsを形成する多数の方法が当業者に知られており、原子(またはより複雑なラジカルおよび分子)を結合することによる形成およびバルク材料の分散による形成、例えば熱蒸発、イオンスパッタリング、溶液からの還元、マイクロエマルジョンでの還元および凝縮による形成が含まれる。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、概して有機および/またはイオン性発光ナノ構造化材料の合成および特徴づけを含む、ナノ粒子(NPs)などのナノ構造化材料の分野に関する。発光性有機および/またはイオン性材料から形成されたこのようなナノ構造化材料(「NSMs」)を起電性化学発光(ECL)に使用することができる。とりわけnmスケールでのNPsを発生させ、配置し、かつ特徴づけする問題およびNPsの電極反応により発生したごく微量の電流およびECL強度の測定の問題について認識されてきた。本出願は、電極でのナノ構造化材料の衝突中に発生するECLの観察に使用することができる方法および装置を提供する。本方法は、ナノ構造化材料の電気化学プロセスに関する情報を提供し、かつ高感度の電気分析方法に関する基礎原理を提供することができる。本方法で測定した電気化学特性は、装置で測定することができるいかなる特性であってよいが、最も一般的な特性にはナノ構造化材料のレドックス反応由来のECLの発生を含む。別の一般的にモニターされる特性は電流であってよい。
【0007】
一般に、本デバイスは試料室中に電気化学セルを含む。典型的に、電気化学セルは、二つ以上の電極、試料室にナノ構造化材料を入れる一つ以上のポートおよび電極と連通する電気化学装置を有する。電気化学セルを、電気化学装置および光子検出器を備える測定装置に接続することができる。注入されたナノ構造化材料は、電極と相互作用することができ、光子検出器により取り込まれることができる一つ以上の光子を発生させることができる。
【0008】
本発明は、少なくとも一つのECL NSM、少なくとも二つの電極、任意の共反応物を有する一つ以上の(複数の)化学分析物を分析するキットおよび(複数の)NSM、(複数の)電極および(複数の)化学分析物との間の相互作用により発生した一つ以上の電流およびECL特性を読み取る測定装置を備える。
【0009】
一実施形態では、発光ナノ構造化材料を既に添加している試料溶液中の分析物を検出する方法を提供する。方法には、溶液と連通する二つ以上の電極を含有する電気化学セルに試料溶液を入れ、発光ナノ構造化材料、液体試料および一つ以上の電極の相互作用を介して一つ以上のECL特性を発生させ、相互作用により発生した少なくとも一つのECL特性を測定することを含む。発光ナノ構造化材料は、レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含む。ECL特性の発生を高めるために共反応物を液体試料に添加できる。適切な共反応物の例として、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸ナトリウム)、過硫酸塩、過酸化ベンゾイルおよびトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)がある。
【0010】
一実施形態では、複数の発光ナノ構造化材料が既に添加されている試料溶液中の分析物を検出する方法を提供する。方法には、溶液と連通する二つ以上の電極を含有する電気化学セルに試料溶液を入れ、発光ナノ構造化材料、液体試料および一つ以上の電極の相互作用を介して一つ以上のECL特性を発生させ、相互作用により発生した少なくとも一つのECL特性を測定することを含む。発光ナノ構造化材料は、レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含む。
【0011】
別の実施形態では、
液体試料中の発光ナノ構造化材料の分散物と一つ以上の電極を接触させ、
一つ以上の電極を介して電気化学エネルギーに分散物を曝露させ、
電極の一つと発光ナノ構造化材料の相互作用により発生した少なくとも一つのECL特性を測定する
ことを含む、ナノ構造化材料と電極表面の相互作用を観察する方法を提供する。(複数の)ECL特性の測定には、相互作用により発生した電流などの電気化学特性を測定することを含む。(複数の)ECL特性の測定には、相互作用により発生したECLなどの光学特性の測定を含むことができる。(複数の)ECL特性の測定には、発光ナノ構造化材料と電極の一つの表面の相互作用により発生した一つ以上のECL特性の測定を含むことができる。典型的に、分散物は、ナノ構造化材料のコロイド水溶液であり、これはレドックス活性の発光性有機化合物または有機金属化合物から形成される。
【0012】
本発明の構成、方法およびデバイスの特徴および利点をより完全に理解するために、ここで、添付の図とともに詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】9,10−ジフェニルアントラセン(「DPA」)ナノロッドのSEM画像を示す。
【図2】図2AはRu−LCEナノベルト(「NBs」)のSEM画像を示し、図2Bは、Ru−LCEナノベルト(「NBs」)のTEMイメージを示す。図2Aおよび図2Bの挿入図は、それぞれ単一NBの側面SEM画像およびSAEDパターンを示す。
【図3】図3A、図3Cおよび図3Dは、TEM画像を示し、図3Bは再析出後の早期段階において室温で得られたRu−LCE試料のSAEDパターンを示す。(図3Aおよび図3B)5分。(図3C)30分。(図3D)2時間。([Ru−LCE]=1.35x10-5M、pH7.0)。
【図4】図4Aは水中Ru−LCB NBsの正規化吸収(破線)および蛍光発光(実線)スペクトル(それぞれ「NBs−Ab」および「NBs−Em」)とMeCNのRu−LCEモノマーの正規化吸収(破線)および蛍光発光(実線)スペクトル(すなわち、溶液中のRu−LCE分子;それぞれ「Mono−Ab」と「Mono−Em」)を示す。Ru−LCEモノマーとNBsの濃度は、それぞれ6.75×10-6Mおよび2.25×10-14Mである。図4Bは、単一NBの蛍光画像である。
【図5】図5AはRu−LCE NB懸濁液のサイクリックボルタモグラム(「CV」)およびECL曲線を示す。図5Bは−1.25V〜1.25Vの電位ステップにおける電流およびECLを示す。ステップ期間は、各電位で2,6,10,14および18秒である。支持電解質および共反応物は、それぞれ0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.2)および0.1Mのトリプロピルアミン(「TPrA」)である。NBsの濃度は、2.2×10-14Mである。白金電極は1.5mm(図5A)、電位走査速度は0.1V/sおよび(図5B)パルス幅は2秒である。
【図6】図6Aは0.1M TPrAを含有する0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.2)中の白金超微小電極(UME)上に沈積した単一Ru−LC NBのCVおよびECL曲線を示す。電位走査速度は0.1V/sである。図6Bは単一NBを用いたUMEの光学顕微鏡画像である。
【図7】図7Aはルブレンナノ結晶(NCs)(THFから調製)、0.1MのTPrA、0.1MのNaClO4に対するクロノアンペロメトリー(点線)および一過性ECL(実線)、パルス幅0.1秒(図7B)のCV、ルブレンNCsの掃引ECLと、ブランク実験として0.1MのTPrA、0.1MのNaClO4、走査速度:500mV/sを示す。図7CはルブレンNCs(DMFから調製)、0.1MのTPrA、0.1MのNaClO4のクロノアンペロメトリー(点線)と一過性ECL(実線)、パルス幅0.1秒(図7D)、ルブレンNCs(THFから調製)、0.1MのTPrA、0.1MのNaClO4に対する一過性ECL(実線)、パルス幅0.05秒を示す。
【図8】共反応物として0.1MのNa2C2O4(シュウ酸ナトリウム)を含有する水溶液中のDPAナノロッドのECL(実線)および電流(点線)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、測定装置に接続した電気化学セルを使用して化学分析物を分析する方法、装置およびキットを提供する。電気化学セルは、一つ以上のレドックス活性の発光ナノ構造化材料、一つ以上の化学分析物および場合により共反応物を含む溶液を含有する。さらに、電気化学セルは、溶液と電気的に連通する二つ以上の電極を含有する。二つ以上のECL特性が発光ナノ構造化材料と液体試料との相互作用により発生し、一つ以上の電極で測定される。
【0015】
粒子濃度を変更することにより、共反応物の粒径および濃度(共反応物が使用される場合)、i−tプロフィールおよび/またはECL強度対時間曲線を使用して、指示薬および共反応物の反応運動についての情報を得ることができる。ナノ構造化材料を使用した光学、伝導率および質量信号の比較において、本ナノ粒子系ECL技術は、高感度の単一装置を用いた検出を可能にする。
【0016】
本出願は、測定装置に接続した電気化学セルを有する化学分析物を分析する方法、構成およびキットを含む。電気化学セルは、共反応物を用いて、または用いずに一つ以上のナノ構造化材料を有する溶液を含有する。さらに、電気化学セルは、溶液と連通する二つ以上の電極を含有する。一つ以上の発光事象が一つ以上のナノ構造化材料および共反応物(共反応物が存在する場合)との相互作用により発生し、電極で、またはセルに接続した光学検出器で測定される。
【0017】
本出願は、電気化学セル内の溶液に一つ以上のレドックス活性の発光ナノ構造化材料を含むことができるデバイスを提供する。例えば、一つ以上のレドックス活性の発光ナノ構造化材料は、(例えば、有機金属化合物から形成された)イオン性ナノ構造化材料または小さい有機化合物またはポリマーのナノ構造化材料であってよい。ナノ構造化材料は、少なくとも一次元において、約1nm〜約1000nm未満の粒径であってよい。さらに、ナノ構造化材料の粒径分布は、一般に均一、分散または多様であってよい。ナノ構造化材料は、様々な群の粒子を有することができ、一般に、溶液中の群内の粒径は類似するが、他の群に対して異なる粒径を有する。例えば、多くの実施形態において、ナノ構造化粒子は、平均粒径が約250nm以下であり、いくつかの場合、約100nm以下である少なくとも一次元を有する。ナノ構造化粒子は、平均寸法が約500nmを越えないような粒径および形状であってよい。
【0018】
本出願は、有機および/またはイオン性発光化合物を含むナノ構造化材料を調製する方法を提供する。適切な有機発光化合物の例として、発光芳香族化合物、例えば、発光多環式芳香族炭化水素を含んでもよい。本方法で使用することができる適切なイオン性発光化合物の例として発光金属含有錯体、例えば、金属イオンのポリデンテート錯体がある。このような化合物に含まれ得る適当な金属は、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、白金、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムがある。通常、ルテニウム含有有機金属化合物を本ナノ構造化材料および方法で使用する。本方法はまた、実施形態を含み、この場合ナノ構造化材料が発光フェニル置換、多環式芳香族炭化水素、例えば、ルブレンおよびジフェニルアントラセン(DPA)から形成される発光ナノ粒子を含む。
【0019】
本明細書で使用される。「ナノ構造化材料」は、ナノスケールのバルク構造、すなわち、少なくとも一次元が約250nm以下である材料を指す。言い換えると、材料が固体状態である場合、所与の構造の結晶または材料がバルク材料を含む化合物から形成される。本明細書で使用されるように、ナノ構造化材料は個別の化合物ではない。
【0020】
金属含有有機化合物は、ポリデンテートリガンド、例えば、ビピリジル、置換ビピリジル、1,10−フェナントロリンおよび/または置換1,10フェナントロリンのようなヘテロ芳香族ポリデンテートリガンドを含み、この場合、一つ以上のポリデンテートリガンドは、少なくとも一つの長鎖炭化水素基、例えば典型的には12〜22個の炭素原子を有する直線状長鎖アルキル基を含む。例えば、金属含有有機化合物は、式[M(PD)2(C(O)O(CH2)nCH3)2−PD)]X2、式中、PDは、ポリデンテートリガンドであり、MはRuまたはOsイオンなどの金属イオン、nは10〜30の整数であり、Xはアニオンである。MがRuであり、PDがビピリジル(bpy)基である化合物の例としては、LCE(長鎖エステル)で表される、エステルとして結合した長鎖アルキル基を有するルテニウム化合物である、次式Ru−LCEで表されるものをあげることができる:
【化1】
【0021】
適切なECL部分の具体例として、少なくとも一つの長鎖アルキル置換ビス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)またはトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)部分を含む化合物がある。ECL標識として作用することができるこの化合物の一群は、長鎖アルキル置換Ru(bpy)32+塩、例えば、Ru(bpy)2(4,4’−(C(O)(CH2)nCH3)2−bpy)Cl2およびRu(bpy)2(4,4’−(C(O)O(CH2)nCH3)2−bpy)(ClO4)2であり、式中nは、10〜30の整数である。具体的な例として、Ru(bpy)2(4,4’−(C(O)O(CH2)14CH3)2−bpy)2+塩がある(本明細書において「Ru(bpy)2(bpy−C16Est)2+塩」ともいう)。
【0022】
長鎖アルキル置換Ru(bpy)32+塩の他の適切な例として、Ru(bpy)2(LCsub−bpy)2+塩などの化合物があり、この場合、「LCsub−bpy」リガンドは、長鎖アルキル置換ビピリジル化合物である。長鎖アルキル置換ビピリジル化合物を当業者に知られた多数の方法により調製することができる。例として、対応するジアミドを形成する、ステアロイルクロリドなどの活性化カルボン酸または他の活性化長鎖アルカン酸の誘導体(例えば、CH3(CH2)nCO2−X、式中、nは約10〜25の整数である)と金属ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−4’−アミノメチル−2,2’−ビピリジン)塩との反応生成物がある。Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−4’−アミノメチル−2,2’−ビピリジン塩は本明細書において「Ru(bpy)2(bpy−C19Amd)2+塩」とも呼ばれる。長鎖アルキル置換ビピリジンを生成する合成方法の例は、開示が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5324457号および第6808939号ならびにFraser et al.,J.Org.Chem.,62,9314−9317(1997)に記載されている。
【0023】
長鎖アルコキシ置換ビピリジンを長鎖アルコキシド(例えば、NaO(CH2)nCH3、式中、nは約10〜25の整数)と4,4’−ビス−ブロモメチルビピリジンとの反応により生成することができる。
【0024】
長鎖アルキルメルカプタン置換ビピリジンを長鎖アルキルメルカプタン(例えば、NaS(CH2)nCH3、式中、nは約10〜25の整数である)と4,4’−ビス−ブロモメチルビピリジンとの反応により生成することができる。
【0025】
長鎖アルコキシ置換ビピリジンを長鎖アルキルハロゲン化物(例えば、Br(CH2)nCH3、式中、nは約10〜25の整数である)と4,4’−ビス−ヒドロキシメチル−2,2’−ビピリジンとの反応により生成することができる。例えば、米国特許第6808939号を参照。
【0026】
長鎖アルキルエステル置換ビピリジンを4−(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)−酪酸と長鎖アルカノール(例えば、HO(CH2)nCH3、式中、nは6〜25の整数である)とのエステル化により生成することができる。例えば、米国特許第6808939号を参照。
【0027】
長鎖アルキルエステル置換ビピリジンも4,4’−ビス−(カルボキシ)ビピリジンとステアリルアルコールなどの長鎖脂肪アルコールとのエステル化により生成することができる。
【0028】
上記のポリデンテートリガンド(例えば、ビピリジルリガンド)を含む金属含有有機錯体は、錯体が発光性である限り、一つ以上の多数の様々な金属イオンを含むことができる。上記のように、このような錯体で使用することができる適切な金属イオンの例として、ルテニウム、オスミウム、レニウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムイオンがある。このような化合物は、配位化合物または有機金属化合物として数多く知られている。本明細書で使用されるように、有機金属化合物は、金属および有機基を有する化合物であるが、錯体では、直接の金属炭素結合は存在することはできず、しかし「有機金属」はまた、金属炭素結合を有する化合物を指す。配位化合物は当業者によく知られている。
【0029】
本明細書に記載の方法に使用されるナノ粒子を当業者に知られている種々の方法で生成することができる。例えば、有機および/またはイオン性発光化合物のナノスケール構造を化合物に適切な溶剤中の発光化合物の溶液から生成し、次いで典型的には、激しい混合下において化合物に対して非溶剤(anti-solvent)である溶媒に第1の溶液を添加することにより生成することができる。第1の溶液を非溶剤に急速に注入し、または滴下により添加することができる。この「再析出方法」をキャッピング剤、例えば低分子量の界面活性剤、例えばTriton X−100、中性電荷ポリマーまたは電荷ポリマーの存在下または非存在下において行うことができる。特定の実施形態において、界面活性剤の添加のない水溶液に有機溶剤中の発光化合物の溶液を入れることによりナノ粒子を形成することが有利となりうる。界面活性剤の存在が、おそらくはナノ粒子の外側にある一層の界面活性剤の存在により、得られたナノ粒子を使用してECLを発生させることに負の影響を及ぼしうる。本明細書で使用されるように、用語「実質的に界面活性剤を含まない」とは、界面活性剤の添加のない有機溶剤と水溶液の混合物から調製されているナノ粒子を指す。
【0030】
再析出方法で形成された有機化合物のナノスケール構造の具体的な生成例は、開示が参照により本明細書に組み込まれる、Kasai et al.,Jpn.J.Appl.Phys.(1992),31,1132に記載される。このような再析出方法に使用することができる適切な溶剤の例として、極性、水混和性有機溶剤、例えば、アセトニトリル(MeCN)、アセトン(MeCOMe)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などがあげられる。通常、水を、本ナノ構造化材料を形成する場合に貧溶媒として使用するが、ヘキサンなどの他の溶剤も貧溶剤として使用することができる。
【0031】
理論に束縛されることなく、以下のスキームIに記載の一般スキームにより電気化学発光部分の発光励起状態が発生する基本機構の説明を提供する。説示されるように、(正常状態を参照して)電子を一つ多くまたは一つ少なく有するラジカル種が発生後、結合して電気発光部分励起状態を作製することができる。
【化2】
【0032】
Ru−LCEナノベルト(NBs)を室温でMeCNの4%w/v溶液から単一の再析出方法で合成した。典型的に、このようなRu−LCE NBsは水に不溶性であるが、水と混和する極性有機溶剤に溶解する。例えば、[Ru(bpy)2(4,4’−(C(O)O(CH2)14CH3)2−bpy]2+は水に不溶性であるが、アセトニトリルまたはアセトンのいずれかに非常に溶解性である。典型的な調製として、この溶液4μLを室温で30秒間超音波撹拌下において高純粋(ミリポア)水10mLに急速に注入後、室温にて24時間、密封した水薬瓶内で経時変化させた。得られたコロイド溶液は、透明な橙黄色溶液であり、強度の光散乱を呈し、ナノ粒子の形成を確実にした。経時時間が増大するにつれ(1ヵ月)、少量の橙黄色のナノベルト析出物が沈殿した。ナノベルトは容易に分散し、わずかに撹拌することで、再度、透明な溶液を得ることができる。
【0033】
図2Aおよび図2Bに示されるようにSEMおよびTEM画像は、長時間の経時変化後に得られた粒子が長く、直線状のベルト様の形態であり、幅約200〜1000nmおよび長さ約5〜15μmを有することを示す。FESEM(電界放出走査電子顕微鏡)を使用してNBsを特徴づけることもできる。NBsの側面SEM画像から推定されるように、NBsの厚さは約50〜120nmであり、幅/厚さ比は約5〜10である。選択領域の電子回析(SAED)パターン(図2Bの挿入図)により、調製された状態のNBsは単一の結晶構造を有し、[001]方向に沿って成長することが明らかである。これはまた、X線回析(XRD)パターンの対比により確実となり、このパターンがNBsの[001]格子面の好ましい配向を示す。強く、鋭いXRD信号により、Ru−LCE NBsの高度な結晶構造を示唆し、2.231°での主要なピークは、Ru−LCEの単一結晶の好ましい[001]成長面に対応することが示唆される。細胞体積およびNB粒径(10000×500×100nm)において、単一のNBは約3.0×108Ru−LCE分子を含有する。円形の断面を有する通常のナノワイヤーと比較して、ナノベルト構造は、電極上に沈積した場合、大面積のインターフェースを提供し、従って、電気接触の向上とともにデバイスの製造を容易にするはずである。
【0034】
注入5分後に回収した試料は、非晶Ru−LCEの約10nm粒径のNPsからなり(図3Aおよび図3Bを参照)、続いて30分以内にベルト様構造に凝集した(図3C参照)。経時変化の時間を2時間に延長することにより、NBsの長さの漸増的増加が得られた(図3Dを参照)。電子回析分析により、最初に形成されたNBが非晶Ru−LCEであったことが示された。経時変化の時間を24時間に延長することにより、NBsの結晶化度の漸増的増加が得られた。理論に束縛されることなく、上記の観察により、Ru−LCE単一結晶NBsの形成は、結晶化の古典的な機構に従った溶液から直接成長させるというよりむしろ、最初に形成したNP構成要素の核生成、配向された集合および再構成を含む多ステップのプロセスを含む。
【0035】
図4Aは、溶液中のRu−LCE NBsならびに対応モノマーの吸収および蛍光発光スペクトルの比較を示す。MeCN中のモノマーは、分子内の電荷移動吸収帯(360〜480nm)を呈し、これは、金属−配位子電荷移動(MLCT)の推移に割り当てられる(すなわち、dπ→π*)。水溶液中のNBsの、最もエネルギーの少ない金属−配位子電荷移動の推移は、アセトニトリル中のモノマーと比較して明らかな青いシフト(480〜458nm)を呈し、強いπスタッキング相互作用によるNBsのH凝集体の形成を示唆する。また、NBsの蛍光スペクトルは、吸収スペクトルと同様な浅色移動および増強蛍光発光(約640nm)を示し、これはNBsがJ凝集体であり、この場合分子が頭部から尾部方向に配列され、相対的に高い蛍光収率が誘起されることを意味する。NBの蛍光画像を容易に観察することができる(図4Bを参照)。理論に束縛されることなく、二種の凝集体の共存(HおよびJ型)がNBsの自発的な形成につながると考えられる。
【0036】
二種類の方法を使用し、白金電極または超微小電極(UME)でのNBsのECLを観察した。最初に、共反応物として0.1Mのトリプロピルアミン(TPrA)と0.1Mのリン酸バッファーを含有する水中に分散したNBs由来のECLを、電位スキャン(0〜1.5V)またはパルス(−1.25〜1.25V)中で容易に観察することができた(図5Aおよび図5Bを参照)。二つ目に、白金UME上に沈積した単一のRu−LCE NBのECL曲線も観察した(図6Aを参照)。サイクリックボルタモグラム(CV)は、TPrAの直接の酸化により、むしろ広範囲の不可逆なアノード波を示し、単一のRu−LCE NBはサイクリックボルタモグラム(CV)にほとんど影響を与えなかった。酸化電流は、約1.38Vの活動電位で約1.1Vのピーク時に開始し、不可逆性である。このようなアノード酸化挙動は、ガラス状炭素電極での中性の水溶液中のTPrAのものと類似する。続いて、この機構は、溶液中のRu(bpy)32+のものにも起こる可能性があり、1.25Vの正電極の電位を走査することにより、吸着されたNBのRu(bpy)2(bpy−C16Est)2+の+3の形態への酸化を直接またはTprAラジカルカチオンを介してのいずれかで引き起こされる(以下のスキームIIAおよびIIBに示す)。還元TPrAラジカルまたは+1の形態のいずれかと+3の形態の反応は、励起状態を生じる。ECL発光強度は、電位の増大とともに増加する。(アセトニトリル溶液からキャストされた)Ru(bpy)2(bpy−C16Est)2+のフィルムを含むスライドを溶液中に入れ、一晩静かに撹拌することによって調製されたRu(bpy)2(bpy−C16Est)2+で飽和した水溶液に対して、ECLは観察されなかったことに注目されたい。
【化3】
【0037】
ルブレンNCsを再析出法により以下のように調製した:テトラヒドロフラン(THF)中の5mMのルブレン溶液100μLを室温にて激しく撹拌しながらアルゴン雰囲気下で脱イオン水10mLにすばやく注入した。次いで、得られた透明な淡赤色のNC溶液を、0.22μmフィルターを用いてろ過した。動的光散乱(DLS)により決定した水中のルブレンNPsの流体力学的半径は約20nmであり、約75〜100nm粒径の少量の凝集体がある。凝集体の形成運動は、粒子、粒子径およびシステム内の流量状態との間の相互作用により決定される。低分子量の界面活性剤または中性もしくは電荷ポリマーなどのキャッピング剤の添加は、劇的にNPsの形成および/または凝集プロセスに影響を与えることができる。さらに、粒子を安定化させることもできる。例えば、水へのTriton X−100の添加は、非常に小さいルブレンNCs(〜4nm)の形成に好ましく、粒径分布は小さい。
【0038】
共反応物として0.1Mのトリプロピルアミン(TPrA)および0.1Mのリン酸緩衝液を含有する水中に分散したルブレンNCs由来のECLは、電位スキャン中(0〜0.9V対Ag/AgCl)(図7Bを参照)またはパルス中(0〜1.1V)(図7A、図7Cおよび図7Dを参照)に容易に観察することができた。電位パルス中のECL信号は観察可能であるが、おそらく水媒体中に発生するラジカルイオンの不安定性によりパルス期間(正常な拡散限界質量移動係数に比べ速い)内の時間とともに急速に減衰する。図7Bに示される電位範囲のCVは特徴がないが、正電位でのTPrAの拡散限界の酸化ピークに達する(図6Aを参照)。N,N−ジメチルホルムアミドDMFなどの異なる溶剤で調製したルブレンNCsは、同じ調製条件、すなわち、DMF中の5mMのルブレン100μLを脱イオン水10mLに注入時のECL信号が非常に弱いことが示される。ルブレンNCsの濃度を5倍増加させるとECL信号が増加し、溶剤中の有機またはイオン性化合物の溶剤多孔性および溶解性が再析出方法のナノ結晶化プロセスに微妙に影響しうる。
【0039】
良好な溶剤としてTHF、DMFまたはMeCNを使用し、貧溶剤として水を使用することによりDPAのNCsを調製した。溶解溶剤としてMeCNを使用したDPA NCsの流体力学的半径の平均は約45nmであり、これは上記のルブレンNCsに比べかなり大きい。DPA NCsのSEM画像により、直径約20〜100nmおよび長さ約100〜600nmの多分散系のナノロッドであることが明らかである(図1を参照)。
【0040】
DPA NCsのECLを共反応物としてTPrAまたはシュウ酸を比較することにより検討した。共反応物としてTPrAを使用することにより、DPA NCs由来の顕著なECL強度は観察されなかったが、図8に示すように、一部のECLはシュウ酸塩の存在下において検出された。これは既刊の報告書と一致し、CO2-(シュウ酸塩酸化中に生成される活性中間体)がTPrA(TPrA酸化により生じる活性中間体)に比べエネルギーが大きいことを示す。スキーム1で図示されたスキームは、共反応物(例えば、TPrA)が本ナノ構造化材料中のレドックス活性の発光化合物と相互作用し、光を放射することができる励起状態の発光種を発生することができるスキームを示すことができると考えられる。
【0041】
NSMsなどの有機またはイオン性(例えば、有機金属化合物または金属リガンド錯体物)ナノ構造化材料は既に合成されており、そのECLは、Ru−LCE、ルブレンおよび指示薬としてのDPAならびに共反応物としてのTPrAもしくはシュウ酸を使用して検討している。当業者であれば、他のNPs、共反応物および他の溶剤の組合せを使用することができることが理解されるだろう。バックグランド電流を減少させ、相対的ECL効率を高めるため、電極またはNPsに特定の表面処理を行うことができる。適切な電極を、ITO、金、ガラス状炭素、ボロンドープされたダイアモンドなどの材料および他の同様な材料から形成することができる。
【0042】
一般に、「置換」とは、以下に定義されるように有機基(例えば、アルキル基)を指し、この中に含有される水素原子への一つ以上の結合が非水素または非炭素原子への結合により置き換えられている。置換された基にはまた、(複数の)炭素または(複数の)水素原子への一つ以上の結合がヘテロ原子への二重または三重結合を含めた一つ以上の結合に置き換えられる基を含む。従って、置換基は他に明記されない限り、一つ以上の置換基と置換されるだろう。いくつかの実施形態において、置換基は、1、2、3、4、5または6個の置換基で置換される。置換基の例として、ハロゲン(すなわち、F、Cl、BrおよびI);ヒドロキシル;アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシおよびヘテロシクリルアルコキシ基;カルボニル(オキソ);カルボキシル;エステル;エーテル;ウレタン;オキシム;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アラルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;スルホンアミド;アミン;N−オキシド;ヒドラジン;ヒドラジド;ヒドラゾン;アジド;アミド;尿素;アミジン;グアニジン;エナミン;イミド;イソシアネート;イソチオシアネート;シアネート;チオシアネート;イミン;ニトロ基;ニトリル(すなわち、CN)などがある。
【0043】
アルキル基は、炭素原子1〜約20個、典型的には炭素1〜12個を含み、またはいくつかの実施形態では、炭素原子1〜8、1〜6または1〜4個を有する直鎖および分岐鎖アルキル基を含む。以下に定義されるようにアルキル基はさらにシクロアルキル基を含む。直鎖アルキル基の例として、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチルおよびn−オクチル基などの炭素原子1〜8個のものを含む。分岐鎖アルキル基の例として、イソプロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、イソペンチルおよび2,2−ジメチルプロピル基を含むがそれだけに限定されない。代表的な置換アルキル基は、上記に挙げたものなどの置換基を用いて1回以上置換することができる。
【0044】
アリール基は、ヘテロ原子を含有しない環状芳香族炭化水素である。アリール基は、単環式、二環式および多環式環系を含む。従って、アリール基は、シクロペンタジエニル、フェニル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニレニル、インダセニル、フルオレニル、フェナントレニル、トリフェニルエニル、ピレニル、ナフタセニル、クリセニル、ビフェニル、アントラセニル、インデニル、インダニル、ペンタレニルおよびナフチル基を含むがそれだけに限定されない。いくつかの実施形態において、基の環部分に、アリール基では炭素5〜14個および他では炭素原子5〜12個またはさらに6〜10個を含有する。「アリール基」は、縮合芳香脂肪族環系(例えば、インダニル、テトラヒドロナフチル)などの縮合環を含有する基を含むが、環員の一つに結合したアルキル基またはハロ基などの他の基を有するアリール基を含まない。むしろ、トリルなどの基は置換アリール基を指す。代表的な置換アリール基は一置換されることができ、または1回以上置換されることができる。例えば、一置換アリール基は、2、3、4、5または6位置換フェニルまたはナフチル基を含むがそれだけに限定されず、これらは上記に挙げたものなどの置換基を用いて置換されることができる。
【0045】
ヘテロ環基は、3員環以上を含有する芳香族環化合物(ヘテロアリールともいう)および非芳香族環化合物を含み、そのうち1個以上がN、OおよびSなどのヘテロ原子であるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、ヘテロ環基は、3〜20個の環員を含み、ところが他のこのような基は、3〜6、3〜10、3〜12または3〜15環員を有する。ヘテロ環基は、不飽和の、部分的に飽和の、および飽和の環系、例えばイミダゾリル、イミダゾリニルおよびイミダゾリジニル基を包含する。「ヘテロ環基」は、縮合芳香族および非芳香族基を含むもの、例えば、ベンゾトリアゾリル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニルおよびベンゾ[1,3]ジオキソリルを含む縮合環種を含む。さらに、例えばキヌクリジルなどのそれだけに限定されないヘテロ原子を含有する架橋多環式環系を含む。しかし、環員の一つに結合したアルキル、オキソまたはハロ基などの他の基を有するヘテロ環基を含まない。むしろ、これらは、「置換ヘテロ環基」と呼ばれる。ヘテロ環基は、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、オキサチアン、ジオキシル、ジチアニル、ピラニル、ピリジル、ビピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオニル、ホモピペラジニル、キヌクリジル、インドリル、インドリニル、イソインドリル、アザインドリル(ピロロピリジル)、インダゾリル、インドリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズチアゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾキサジニル、ベンゾジチイニル、ベンゾキサチイニル、ベンゾチアジニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル(アザベンズイミダゾリル)、トリアゾロピリジル、イソキサゾロピリジル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、チアナフタレニル、ジヒドロベンゾチアジニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロインドリル、ジヒドロベンゾジオキニル、テトラヒドロインドリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロベンズイミダゾリル、テトラヒドロベンゾトリアゾリル、テトラヒドロピロロピリジル、テトラヒドロピラゾロピリジル、テトラヒドロイミダゾピリジル、テトラヒドロトリアゾロピリジルおよびテトラヒドロキノリニル基を含むが、それだけに限定されない。代表的な置換ヘテロ環基は一置換または1回以上置換でき、非限定的な例としてはピリジルまたはモルホリニル基などがあげられ、これらは上記に挙げたものなど種々の置換基を用いて2、3、4、5または6位置換または二置換される。
【0046】
アルコキシ基は、ヒドロキシ基(−OH)であり、この場合、水素原子への結合が上記に定義されたように置換または非置換されたアルキル基の炭素原子への結合により置き換えられる。直鎖アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどを含むがそれだけに限定されない。分岐鎖アルコキシ基の例として、イソプロポキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソペントキシ、イソヘキソキシなどを含むが、それだけに限定されない。シクロアルコキシ基の例として、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどを含むがそれだけに限定されない。代表的な置換アルコキシ基を上記に挙げたものなどの置換基を用いて1回以上置換することができる。
【実施例】
【0047】
本発明の種々の実施形態の作製および使用について本明細書に詳述される一方で、本発明が多種多様な具体的な内容において実施することができる多数の応用可能な本発明の概念を提供することを理解すべきである。本明細書に記載の具体的な実施形態は、単に本発明を作製し、使用する具体的な方法の単なる例であり、本発明の範囲を制限するものでない。
【0048】
一実施形態は、レドックス活性の発光化合物から形成されるナノ構造化粒子状材料を提供する。通常、ナノ構造化材料は、平均粒径が約250nm以下、より一般的には約150nm以下の少なくとも一次元を有し、いくつかの実施形態では、少なくとも一次元において、約100nm以下の平均粒径を有する。例えば、ナノ構造化材料は、ナノ粒子(「NP」)であってよく、この場合、約200nmを越える平均粒径を有する次元はない。他の例にナノ結晶(「NCs」)を含み、この場合、典型的には少なくとも二つおよび多くの場合、三つの次元が約200nm以下および通常、約100nm以下である。他の実施形態では、ナノベルト(「NBs」)を含むことができ、これは幅が少なくとも約150nmおよび厚さが約50〜125nmの長い、直線状のベルト様の形態を有する。このようなナノベルトは、約200〜1000nmの幅および約5〜15μmの長さを有することができ、典型的には、約5〜10の幅/厚さ比を有し、約10以上のアスペクト比を有することができる。さらに他の実施形態において、ナノ構造化材料は、平均径が約250nm以下、通常、約10〜150nmおよび平均長が約50nm〜1ミクロンのナノロッドであってよい。
【0049】
一実施形態では、発光ナノ構造化粒子状材料が添加された試料溶液中の分析物を検出する方法を提供する。方法は、溶液と連通する二つ以上の電極を含有する電気化学セルと試料溶液とを接触させ、発光ナノ構造化材料、液体試料と二つ以上の電極との相互作用を介して一つ以上のECL特性を発生させ、相互作用により発生した少なくとも一つのECL特性を測定することを含む。発光ナノ構造化材料はレドックス活性の発光性有機または有機金属化合物を含む。
【0050】
別の実施形態は、
(a)試薬混合物を形成するよう適切な条件下において分析物と化学部分を接触させ、この場合、化学部分はレドックス活性の発光性有機または有機金属化合物を含むナノ構造化粒子状材料を含み、
(b)試薬混合物を化学エネルギーまたは電気化学エネルギーに曝露させることにより、化学部分に電磁放射線放射を誘起させ、および
(c)放射された電磁放射線を検出し、それにより目的とする分析物の存在を決定する
ことを含む、目的とする分析物の存在を決定する方法を提供する。
【0051】
本ナノ構造化材料を形成するために用いることができる適切なレドックス活性の発光化合物は、種々の有機および/またはイオン性発光化合物から選択することができる。例として、発光芳香族炭化水素、例えば、フェニル置換多環式芳香族化合物などの発光フェニル置換芳香族炭化水素および発光金属含有錯体、例えば、ルテニウムなどの金属イオンのヘテロ芳香族ポリデンテート錯体がある。
【0052】
適切なフェニル置換多環式芳香族化合物は、多くの場合、ナノ構造化発光材料の形態(これは、ナノ結晶またはナノロッドの形態であってもよい)で、例としては、ルブレン(「Rub」)、ジフェニルアントラセン(「DPA」)および他の発光フェニル置換多環式芳香族化合物があげられる。ヘテロ芳香族ポリデンテート錯体は、一つ以上のヘテロ原子を有する芳香族化合物を含み、この場合、錯体は一つ以上の金属を結合し、または単一の金属に一回以上結合することができる。
【0053】
適切な発光金属含有錯体の例として、ルテニウム、オスミウム、レニウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムなどの金属イオンのポリデンテート錯体があげられる。適切なヘテロ芳香族ポリデンテート錯体の具体例は、置換ビス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)またはトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)含有部分があり、この場合、ビピリジル(「bpy」)基の少なくとも一つは、一つ以上の長鎖アルキル基で置換される。
【0054】
適切な長鎖アルキル置換bpy基(「LCsub−bpy」)は、4−メチル−4’−アルカノイルアミノメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ビス−(アルコキシメチル)ビピリジン、4,4’−ビス−(アルキルメルカプトメチル)ビピリジン、オメガ−(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)−アルカン酸のアルキルエステル、ジ−n−アルキル4,4’−ビス−(カルボン酸)ビピリジン、4,4’−ビス−(カルボキシ)−2,2−ビピリジンのn−アルキルジエステルおよび4,4’−ビス−(ヒドロキシメチル)ビピリジンを有する長鎖脂肪酸のジエステルを含む。
【0055】
4,4’−ビス−(カルボキシ)−2,2−ビピリジンのn−アルキルジエステルを含む適切な発光金属錯体の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(ジ−n−アルキル4,4’−ビス−(カルボン酸)ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(ジ−n−ペンタデシル4,4’−ビス−(カルボン酸)ビピリジン)2+塩または他の関連ルテニウム錯体があり、この場合、アルキルエステル基はそれぞれ約10〜25個の炭素原子を含有する。このようなアルキルエステル基の適切な例はステアリルアルコール、パルミチルアルコールおよびドデシルアルコールのこのようなエステルがある。
【0056】
4−メチル−4’−アルカノイルアミノメチル−2,2’−ビピリジン系の適切な発光金属錯体の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−4’−アルカノイルアミノメチル−2,2’−ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−4’−ステアロイルアミノメチル−2,2’−ビピリジン)2+塩がある。
【0057】
4,4’−ビス(アルコキシメチル)ビピリジン系の適切な発光金属錯体の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(n−アルコキシメチル)ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(n−ヘキサデシルオキシメチル)ビピリジン)2+塩がある。
【0058】
4,4’−ビス−(アルキルメルカプトメチル)ビピリジン系の適切な発光金属錯体の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(n−アルキルメルカプトメチル)ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(n−アルキルメルカプトメチル)ビピリジン)2+塩がある。
【0059】
オメガ−(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)−アルカン酸のアルキルエステル系の適切な発光金属錯体の他の例として、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)アルカン酸アルキルエステル)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)4−(4−メチル−2,2−ビピリジン−4’−イル)−酪酸デシルエステル)2+塩がある。追加の例として、4,4’−ビス−(ヒドロキシメチル)ビピリジン)2+塩、例えば、Ru(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(ヒドロキシメチル)ビピリジンのジステアロイルエステル)2+塩およびRu(II)ビス(2,2’−ビピリジン)(4,4’−ビス−(ヒドロキシメチル)ビピリジンのジパルミトイルエステル)2+塩がある。
【0060】
別の実施形態は、液体試料中の目的とする分析物の存在を検出する方法を提供し、本方法は、
(a)ナノ構造化材料を含む試薬と試料を接触させ、この場合、試薬に電気化学発光を繰返し誘起させることができ、ナノ構造化材料がレドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含み、
(b)試薬に電気化学発光を繰返し誘起させ、および
(c)放射された発光の存在を検出し、それにより試料中の目的とする分析物の存在を検出することを含む。本方法はまた、試料と、試薬およびECL共反応物、例えばシュウ酸塩(例えば、シュウ酸ナトリウム)またはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を接触させることを含む。例えば、方法の多くの実施形態において、ナノ構造化材料は、ポリデンデート金属錯体(例えば、ルテニウムビピリジル錯体)およびトリアルキルアミン共反応物(例えば、トリプロピルアミン)を含むことができる。本方法の他の実施形態において、ナノ構造化材料は、フェニル置換多環式芳香族炭化水素(例えば、ルブレン)およびトリアルキルアミン共反応物(例えば、トリプロピルアミン)を含むことができる。本方法のさらに他の実施形態において、ナノ構造化材料は、フェニル置換多環式芳香族炭化水素(例えば、ジフェニルアントラセン)およびシュウ酸塩共反応物(例えば、シュウ酸ナトリウム)を含むことができる。
【0061】
別の実施形態は、液体試料中に存在する目的とする分析物の量を定量的に決定する方法を提供し、本方法は、
(a)ナノ構造化材料を含む試薬と試料を接触させ、この場合、試薬に電気化学発光を繰り返して誘起させることができ、(b)試薬に電気化学発光を繰り返して誘起させ、および(c)放射された発光量を決定し、それにより試料に存在する目的とする分析物の量を定量的に決定することを含む。典型的に、ナノ構造化材料は、レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含む。本方法はまた、試料と、試薬およびECL共反応物、例えばシュウ酸ナトリウムまたはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を接触させることを含む。
【0062】
別の実施形態は、液体試料中の目的とする分析物の存在を検出する方法を提供し、本方法は、
(a)ナノ構造化材料を含む試薬と試料を接触させ、この場合、試薬に電気化学発光を繰返して誘起させることができ、ナノ構造化材料がレドックス活性の発光性有機および/または有機金属化合物を含み、
(b)試薬に電気化学発光を繰返して誘起させ、および
(c)放射された発光の存在を検出し、それにより試料中の目的とする分析物の存在を検出することを含む。本方法はまた、試料と、試薬およびECL共反応物、例えばシュウ酸塩(例えば、シュウ酸ナトリウム)またはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を接触させることを含む。
【0063】
別の実施形態は、液体試料中に存在する目的とする分析物の量を定量的に決定する方法を提供し、本方法は、
(a)ナノ構造化材料を含む試薬と試料を接触させ、この場合、試薬に電気化学発光を繰り返して誘起させることができ、(b)試薬に電気化学発光を繰り返して誘起させ、および(c)放射された発光量を決定し、それにより試料に存在する目的とする分析物の量を定量的に決定することを含む。典型的に、ナノ構造化材料は、レドックス活性の発光性有機化合物および/またはイオン性化合物を含む。本方法はまた、試料と、試薬およびECL共反応物、例えばシュウ酸ナトリウムまたはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を接触させることを含む。
【0064】
別の実施形態は、試料中の目的とする分析物の存在を決定する方法を提供し、本方法は、
(a)試薬混合物を形成するよう適切な条件下で化学部分と試料を接触させ、この場合、化学部分は、レドックス活性の発光化合物を含むナノ構造化粒子状材料を含み、
(b)化学部分に電磁放射線放射を誘起させ、
(c)放射された電磁放射線を検出し、それにより目的とする分析物の存在を決定する
ことを含み、
この場合、化学部分に電磁放射線放射を誘起させることは、化学、電気化学および/または電磁エネルギーに試薬混合物を曝露することを含み、
レドックス活性の発光化合物は、フェニル置換多環式芳香族炭化水素などの発光多環式芳香族炭化水素を含む。反応混合物はまた、シュウ酸ナトリウム、過硫酸塩、過酸化ベンゾイルまたはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)などのECL共反応物を含むことができる。
【0065】
発光多環式芳香族炭化水素を含むナノ構造化材料は、約100nm以下の平均流体力学的半径を有するレドックス活性の発光ナノ粒子の形態であってよい。このようなナノ粒子を、ルブレンなどのフェニル置換多環式芳香族炭化水素から形成することができる。例えば、フェニル置換多環式芳香族炭化水素から形成されるナノ結晶は、約50nm以下の流体力学的半径を有することができ(動的光散乱(DLS)により決定した水中の分散物と同じく決定)、これは、約75〜100nmの粒径の少量のナノ結晶凝集体を含むこともできる。他の実施形態において、発光多環式芳香族炭化水素を含むナノ構造化材料は、ナノロッド、例えば、約10〜150nm径および長さ約50nm〜1ミクロンを有するナノロッドの形態であってよい。このようなナノロッドを、ジフェニルアントラセンなどのフェニル置換多環式芳香族炭化水素から形成することができる。ジフェニルアントラセンから形成することができるナノロッドは、直径が約20〜100nmおよび長さ約100nm〜600nmを有することができる。
【0066】
試料中の目的とする分析物の存在を決定する方法は、
(a)試薬混合物を形成するよう適切な条件下で化学試薬と試料を接触させ、この場合、化学試薬は、レドックス活性の発光化合物を含むナノ構造化粒子状材料を含み、
(b)化学試薬に電磁放射線放射を誘起させ、
(c)放射された電磁放射線を検出し、それにより目的とする分析物の存在を決定することを含み、
この場合、化学試薬に電磁放射線放射を誘起させることが、化学、電気化学および/または電磁エネルギーに試薬混合物を曝露することを含み、
レドックス活性の発光化合物は、ビピリジル含有金属錯体などのポリデンテート金属錯体を含む。反応混合物はまた、ECL共反応物、例えばシュウ酸塩、過硫酸塩、過酸化ベンゾイルまたはトリアルキルアミン(例えば、トリプロピルアミン)を含むことができる。
【0067】
レドックス活性の発光化合物を含むナノ構造化粒子状材料は、レドックス活性の発光ポリデンテート金属錯体、例えば、発光へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体を含むことができる。適切な発光へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体の例として、ルテニウム、オスミウム、レニウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムイオンがある。ポリデンテート金属錯体を含む適切なナノ構造化材料は、一つ以上の長鎖アルキル置換リガンドを含有するヘテロ芳香族ポリデンテート金属錯体から形成される発光ナノベルトを含む。このようなナノ構造化材料の一例としては、ヘテロ芳香族ポリデンテートルテニウム錯体から形成されるナノベルトがあげられ、これは少なくとも一つの長鎖アルキル置換ビピリジンリガンドを含む。このようなナノベルトは、幅が約200〜1000nm、長さが約5〜15μmを有する。これらのナノベルトの厚さは約50〜120nmの範囲であってよい(電界放出走査電子顕微鏡で特徴づけられる)。
【0068】
他の実施形態は、レドックス活性の発光多環式芳香族炭化水素から形成されるナノ構造化粒子を使用する方法に関する。通常、このようなナノ構造化粒子は、少なくとも一次元において、平均径が約250nm以下であり、およびいくつかの場合、約100nm以下である。
【0069】
本明細書に記載の特定の実施形態が本発明の実例として示され、限定するものではないことが理解される。本発明の主な特徴を本発明の範囲から逸脱することなく、種々の実施形態において使用することができる。当業者であれば、ルーティンに過ぎない実験、つまり本明細書に記載の具体的な手法に対して多数の等価物を使用して理解し、または確かめることできるだろう。このような等価物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲により包含される。
【0070】
特許請求の範囲および/または明細書の用語「含む(comprising)」に関連して使用する用語「a」または「an」は、「一つ」を意味しうるが、「一つ以上」、「少なくとも一つ」および「一つまたは二つ以上」の意味とも一致する。明示的に代替物のみを指すために示され、または代替物が相互に除外されない限り、特許請求の範囲で使用する用語「または」は、「および/または」を意味するのに使用されるが、開示は、代替物のみ、および「および/または」を指す定義を支持する。本出願を通し、「約」という用語は、数値が、デバイス、数値を決定するのに使用される方法または研究対象の間に存在するばらつきによる固有誤差の変動を含むことを示すために使用される。
【0071】
本明細書において使用される「またはその組み合わせ」という用語は、用語に先行して一覧された項目の全ての並べかえ、および組み合せを指す。例えば「A、B、Cまたはその組み合わせ」とは、A、B、C、AB、AC、BCまたはABC、および順列が具体的な文脈において重要である場合、さらにBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABの少なくとも一つを含むことを意図する。続けてこの例で言えば、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの一つ以上の項目または用語の繰返しを含有する組み合わせが明示的に含まれる。当業者であれば、典型的に、他に文脈で明示されない限り、組み合わせの項目または用語の数が限定されないことが理解されるであろう。
【0072】
本発明の構成および方法が好ましい実施形態の項目で記載されている一方で、当業者であれば本発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく本明細書に記載される構成および/または方法ならびに方法のステップまたはステップの順列において変更が適用されることができることは明らかであろう。当業者に対して明らかなこのような類似の代用および変更全ては、本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると判断される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の目的とする分析物の存在を決定する方法であって、
(a)試薬混合物を形成するように適切な条件下で試料と化学試薬とを接触させ、前記化学試薬がレドックス活性の発光化合物を含むナノ構造化材料を含み、
(b)前記化学試薬に電磁放射線放射を誘起させ、および
(c)放射された電磁放射線を検出する
ことを含み、
前記化学試薬に電磁放射線放射を誘起させることが、化学および/または電気化学エネルギーに前記試薬混合物を曝露させることを含む方法。
【請求項2】
前記化学試薬に電磁放射線放射を誘起させることが、前記試薬混合物を電気化学エネルギーに曝露させることを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試薬混合物が、さらにECL共反応物を含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ECL共反応物が、トリアルキルアミンを含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ構造化材料が、発光多環式芳香族炭化水素から形成される発光ナノ粒子を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ構造化材料が、約100nm以下の平均流体力学的半径を有するレドックス活性の発光ナノ粒子を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ構造化材料が、レドックス活性のイオン性発光化合物から形成される発光ナノ粒子を含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記レドックス活性のイオン性発光化合物が、発光ポリデンテート金属錯体を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記レドックス活性のイオン性発光化合物が、発光ヘテロ芳香族ポリデンテートルテニウム錯体を含む請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ構造化材料が、発光ポリデンテート金属錯体から形成される発光ナノベルトを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記発光ポリデンテート金属錯体が、少なくとも1つの長鎖アルキル置換ビピリジンリガンドを含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
液体試料中の目的とする分析物の存在を検出する方法であって、
(a)前記試料とナノ構造化粒子材料を含む試料とを接触させ、前記試料が電気化学発光を繰返し誘起され得るものであり、前記ナノ構造化材料がレドックス活性の発光化合物を含むものであり、
(b)前記試薬に電気化学発光を繰り返し誘起させ、および
(c)放射された発光の存在を検出する
ことを含む方法。
【請求項13】
前記接触ステップが、前記試薬およびECL共反応物と前記試料とを接触させることを含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記試薬に電気化学発光を繰返し誘起させることが、前記試薬混合物を電気化学エネルギーに曝露させることを含む請求項12記載の方法。
【請求項15】
レドックス活性の発光フェニル置換多環式芳香族炭化水素を含み、少なくとも一次元における大きさが約250nm以下であるナノ構造化粒子。
【請求項16】
前記ナノ構造化粒子が、実質的に界面活性剤を含有しない請求項15記載のナノ構造化粒子。
【請求項17】
電気化学エネルギー源に直接曝露することにより前記ナノ構造化粒子に電磁放射線放射を繰り返し誘起させることができる請求項15記載のナノ構造化粒子。
【請求項18】
平均流体力学的半径が、約100nm以下のレドックス活性の発光ナノ粒子を含む請求項15または16記載のナノ構造化粒子。
【請求項19】
直径が約10〜150nmおよび長さが約50nm〜1ミクロンであるレドックス活性の発光ナノロッドを含む請求項15または16記載のナノ構造化粒子。
【請求項20】
前記ナノ構造化粒子が、本質的にルブレンからなる請求項15または16記載のナノ構造化粒子。
【請求項21】
前記ナノ構造化粒子が、本質的に9,10−ジフェニルアントラセンからなる請求項15または16記載のナノ構造化粒子。
【請求項22】
少なくとも一次元における大きさが約250nm以下であるレドックス活性のイオン性発光化合物を含むナノ構造化粒子。
【請求項23】
前記レドックス活性のイオン性発光化合物が、ヘテロ芳香族ポリデンテート金属錯体を含む請求項22記載のナノ構造化粒子。
【請求項24】
前記へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体が、少なくとも1つの長鎖アルキル置換ビピリジンリガンドを含む請求項23記載のナノ構造化粒子。
【請求項25】
前記へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体が、長鎖アルキル置換Ru(bpy)32+錯体を含む請求項21記載のナノ構造化粒子。
【請求項26】
前記へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体が、ルテニウム、オスミウム、レニウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムイオンを含む請求項22、23、24または25記載のナノ構造化粒子。
【請求項1】
試料中の目的とする分析物の存在を決定する方法であって、
(a)試薬混合物を形成するように適切な条件下で試料と化学試薬とを接触させ、前記化学試薬がレドックス活性の発光化合物を含むナノ構造化材料を含み、
(b)前記化学試薬に電磁放射線放射を誘起させ、および
(c)放射された電磁放射線を検出する
ことを含み、
前記化学試薬に電磁放射線放射を誘起させることが、化学および/または電気化学エネルギーに前記試薬混合物を曝露させることを含む方法。
【請求項2】
前記化学試薬に電磁放射線放射を誘起させることが、前記試薬混合物を電気化学エネルギーに曝露させることを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試薬混合物が、さらにECL共反応物を含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ECL共反応物が、トリアルキルアミンを含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ構造化材料が、発光多環式芳香族炭化水素から形成される発光ナノ粒子を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ構造化材料が、約100nm以下の平均流体力学的半径を有するレドックス活性の発光ナノ粒子を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ構造化材料が、レドックス活性のイオン性発光化合物から形成される発光ナノ粒子を含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記レドックス活性のイオン性発光化合物が、発光ポリデンテート金属錯体を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記レドックス活性のイオン性発光化合物が、発光ヘテロ芳香族ポリデンテートルテニウム錯体を含む請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ構造化材料が、発光ポリデンテート金属錯体から形成される発光ナノベルトを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記発光ポリデンテート金属錯体が、少なくとも1つの長鎖アルキル置換ビピリジンリガンドを含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
液体試料中の目的とする分析物の存在を検出する方法であって、
(a)前記試料とナノ構造化粒子材料を含む試料とを接触させ、前記試料が電気化学発光を繰返し誘起され得るものであり、前記ナノ構造化材料がレドックス活性の発光化合物を含むものであり、
(b)前記試薬に電気化学発光を繰り返し誘起させ、および
(c)放射された発光の存在を検出する
ことを含む方法。
【請求項13】
前記接触ステップが、前記試薬およびECL共反応物と前記試料とを接触させることを含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記試薬に電気化学発光を繰返し誘起させることが、前記試薬混合物を電気化学エネルギーに曝露させることを含む請求項12記載の方法。
【請求項15】
レドックス活性の発光フェニル置換多環式芳香族炭化水素を含み、少なくとも一次元における大きさが約250nm以下であるナノ構造化粒子。
【請求項16】
前記ナノ構造化粒子が、実質的に界面活性剤を含有しない請求項15記載のナノ構造化粒子。
【請求項17】
電気化学エネルギー源に直接曝露することにより前記ナノ構造化粒子に電磁放射線放射を繰り返し誘起させることができる請求項15記載のナノ構造化粒子。
【請求項18】
平均流体力学的半径が、約100nm以下のレドックス活性の発光ナノ粒子を含む請求項15または16記載のナノ構造化粒子。
【請求項19】
直径が約10〜150nmおよび長さが約50nm〜1ミクロンであるレドックス活性の発光ナノロッドを含む請求項15または16記載のナノ構造化粒子。
【請求項20】
前記ナノ構造化粒子が、本質的にルブレンからなる請求項15または16記載のナノ構造化粒子。
【請求項21】
前記ナノ構造化粒子が、本質的に9,10−ジフェニルアントラセンからなる請求項15または16記載のナノ構造化粒子。
【請求項22】
少なくとも一次元における大きさが約250nm以下であるレドックス活性のイオン性発光化合物を含むナノ構造化粒子。
【請求項23】
前記レドックス活性のイオン性発光化合物が、ヘテロ芳香族ポリデンテート金属錯体を含む請求項22記載のナノ構造化粒子。
【請求項24】
前記へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体が、少なくとも1つの長鎖アルキル置換ビピリジンリガンドを含む請求項23記載のナノ構造化粒子。
【請求項25】
前記へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体が、長鎖アルキル置換Ru(bpy)32+錯体を含む請求項21記載のナノ構造化粒子。
【請求項26】
前記へテロ芳香族ポリデンテート金属錯体が、ルテニウム、オスミウム、レニウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよび/またはイッテルビウムイオンを含む請求項22、23、24または25記載のナノ構造化粒子。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−520123(P2011−520123A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508481(P2011−508481)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/002534
【国際公開番号】WO2009/137002
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(506140479)ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/002534
【国際公開番号】WO2009/137002
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(506140479)ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (5)
【Fターム(参考)】
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