説明

起風構造

【課題】 除塵網に対する塵埃などの付着に起因した冷却効率の低下を防止する。
【解決手段】 ハブ41の外周部に、このハブ41とのその回転軸心P1周りでの一体回転で起風する起風翼42を、回転軸心P1と交差する方向に設定した軸心P2周りに姿勢変更可能に装備し、起風翼42の姿勢を、順風生起姿勢と逆風生起姿勢とに変更する操作機構77を備え、起風翼42を逆風生起姿勢に設定した逆風生起状態での風速が、起風翼42を順風生起姿勢に設定した順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブの外周部に、このハブとのその回転軸心周りでの一体回転で起風する起風翼を、前記回転軸心と交差する方向に設定した軸心周りに姿勢変更可能に装備し、前記起風翼の姿勢を、順風生起姿勢と逆風生起姿勢とに変更する操作機構を備えた起風構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような起風構造においては、ハブとともにその回転軸心周りに一体回転する起風翼の姿勢を順風生起姿勢に変更することで、外気を吸気口から内部に取り入れて発熱部を冷却する順風生起状態を現出でき、又、起風翼の姿勢を逆風生起姿勢に変更することで、外気取り入れの際に吸気口の除塵網に付着した塵埃などを機外に吹き飛ばして除塵網から除去する逆風生起状態を現出できる。
【0003】
ところで、このような起風構造において、従来では、起風翼を順風生起姿勢に設定した順風生起状態での風速が、起風翼を逆風生起姿勢に設定した逆風生起状態での風速よりも大きくなるように、例えば、起風翼における起風効率の高い高起風作用面を順風用作用面として、又、起風効率の低い低起風作用面を逆風用作用面として使用するようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−211581号公報(段落番号0013、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によると、順風生起状態での風速が大きくなることで、外気取り入れの際に塵埃などが吸気口の除塵網に付着し易くなるとともに、逆風生起状態での風速が小さくなることで、除塵網に付着した塵埃などの除去が行い難くなり、結果、吸気口からの外気の取り入れが困難になり、発熱部に対する冷却効率の低下を招くことになる。殊に、通常は、逆風生起状態の現出に起因した冷却効率の低下を回避するために、順風生起状態の現出時間を数分程度に設定し、逆風生起状態の現出時間を数秒程度に設定することが一般的であることから、順風生起状態での除塵網への塵埃などの付着量が増大するのに対し、逆風生起状態での除塵網からの塵埃などの除去量が減少することになり、結果、発熱部に対する冷却効率の低下が顕著になる。
【0005】
本発明の目的は、除塵網に対する塵埃などの付着に起因した冷却効率の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、ハブの外周部に、このハブとのその回転軸心周りでの一体回転で起風する起風翼を、前記回転軸心と交差する方向に設定した軸心周りに姿勢変更可能に装備し、前記起風翼の姿勢を、順風生起姿勢と逆風生起姿勢とに変更する操作機構を備え、前記起風翼を逆風生起姿勢に設定した逆風生起状態での風速が、前記起風翼を順風生起姿勢に設定した順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある。
【0007】
この構成によると、起風翼の姿勢を順風生起姿勢に変更すると、外気を吸気口から内部に取り入れて発熱部を冷却する順風生起状態が現出され、又、起風翼の姿勢を逆風生起姿勢に変更すると、外気取り入れの際に吸気口の除塵網に付着した塵埃などを外部に吹き飛ばして除塵網から除去する逆風生起状態が現出される。そして、その順風生起状態での風速が逆風生起状態での風速よりも小さいことで、外気取り入れの際に塵埃などが吸気口の除塵網に付着し難くなり、逆に、逆風生起状態での風速が順風生起状態での風速よりも大きいことで、除塵網に付着した塵埃などの除去が行い易くなり、結果、吸気口からの外気の取り入れが行い易くなる。
【0008】
殊に、逆風生起状態の現出に起因した冷却効率の低下を回避するために、順風生起状態の現出時間を数分程度の長いものに設定し、逆風生起状態の現出時間を数秒程度の短いものに設定すると、順風生起状態の現出時には、吸気口から取り入れる外気量を増大させながら、除塵網への塵埃などの付着量を減少させることができ、その後、逆風生起状態が現出されると、短時間でありながらも除塵網に付着した塵埃などを外部に一挙に吹き飛ばすことができる。
【0009】
従って、吸気口からの外気の取り入れ、及び、除塵網に付着した塵埃などの除去を合理的に行うことができ、発熱部に対する冷却効率の向上を図ることができる。
【0010】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記起風翼の姿勢を、前記逆風生起姿勢での前記起風翼の起風角度が、前記順風生起姿勢での前記起風翼の起風角度よりも大きくなるように設定して、前記逆風生起状態での風速が、前記順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある。
【0011】
この構成によると、起風翼の逆風生起姿勢での起風角度が順風生起姿勢での起風角度よりも大きくなるように設定するだけの簡単な改良を施すことで、前述した合理的な吸気口からの外気の取り入れ、及び、除塵網に付着した塵埃などの除去を行える。
【0012】
従って、構成の複雑化やコストの高騰などを招くことなく発熱部に対する冷却効率の向上を図れる。
【0013】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記起風翼における起風効率の高い高起風作用面を逆風用作用面に、起風効率の低い低起風作用面を順風用作用面に設定して、前記逆風生起状態での風速が、前記順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある。
【0014】
この構成によると、起風翼における起風効率の高い高起風作用面を逆風用作用面に、起風効率の低い低起風作用面を順風用作用面に設定するだけの簡単な改良を施すことで、前述した合理的な吸気口からの外気の取り入れ、及び、除塵網に付着した塵埃などの除去を行える。
【0015】
従って、構成の複雑化やコストの高騰などを招くことなく発熱部に対する冷却効率の向上を図れる。
【0016】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記ハブを、前記回転軸心に沿う方向に変位可能に装備し、前記操作機構による前記ハブの前記回転軸心に沿う方向への変位操作に連動して、前記起風翼の姿勢が変更されるように構成し、前記ハブ及び前記起風翼を覆うシュラウドを設け、前記逆風生起状態における前記起風翼と前記シュラウドとの前記回転軸心に沿う方向での重なり量が、前記順風生起状態における前記起風翼と前記シュラウドとの前記回転軸心に沿う方向での重なり量よりも大きくなるように設定して、前記逆風生起状態での風速が、前記順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある。
【0017】
この構成によると、ハブを、回転軸心に沿ってシュラウドに向けて変位操作した状態が、起風翼の姿勢を逆風生起姿勢に変更した逆風生起状態となり、又、ハブを、回転軸心に沿ってシュラウドから離れる方向に変位操作した状態が、起風翼の姿勢を順風生起姿勢に変更した順風生起状態となり、逆風生起状態での起風翼とシュラウドとの回転軸心に沿う方向での重なり量が、順風生起状態での起風翼とシュラウドとの回転軸心に沿う方向での重なり量よりも大きくなって、逆風生起状態での風の拡散を効果的に抑制できることから、逆風生起状態での風速が、順風生起状態での風速よりも大きくなる。
【0018】
つまり、ハブの回転軸心に沿う方向への変位操作に連動して起風翼の姿勢が変更されるように構成し、かつ、ハブをシュラウド側に変位操作した状態が逆風生起状態となり、シュラウドから離れる側に変位操作した状態が順風生起状態となるように設定するだけの簡単な改良を施すことで、前述した合理的な吸気口からの外気の取り入れ、及び、除塵網に付着した塵埃などの除去を行える。
【0019】
殊に、逆風生起状態における起風翼とシュラウドとの回転軸心に沿う方向での重なり量が、順風生起状態における起風翼とシュラウドとの回転軸心に沿う方向での重なり量よりも大きくなるように設定することで、風の乱流による起風効率の低下を招き易い起風翼の低起風作用面を逆風用作用面に設定しても、シュラウドによって、風の乱流による起風効率の低下を効果的に抑制でき、大きい風速を確保できる。
【0020】
従って、構成の複雑化やコストの高騰などを招くことなく発熱部に対する冷却効率の向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1には作業車の一例である自脱形コンバインの全体右側面が、図2にはその全体平面がそれぞれ示されており、このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成された機体フレーム1、この機体フレーム1の下部に配備された左右一対のクローラ式走行装置2、走行に伴って植立穀稈を刈り取って左右向き姿勢に姿勢変更しながら左後方に向けて搬送するように機体フレーム1の前部に昇降揺動可能に連結された刈取搬送部3、刈取搬送部3からの刈取穀稈を受け取って脱穀・選別処理を施すように機体フレーム1における刈取搬送部3の後方箇所に搭載された脱穀装置4、この脱穀装置4からの穀粒を貯留するように機体フレーム1における脱穀装置4の右側方箇所に配備された穀粒タンク5、及び、機体フレーム1における刈取搬送部3の右側方箇所に形成された搭乗運転部6、などによって構成されている。
【0022】
穀粒タンク5は、その内部に貯留した穀粒を機外に排出するためのスクリュー式の排出機構7を備えるとともに、機体フレーム1における穀粒タンク5の後方箇所に立設した排出機構7の揚送スクリュー8を支点にして、脱穀装置4に隣接して脱穀装置4からの穀粒を貯留する作業位置と、脱穀装置4から離間して脱穀装置4の右側方を開放するメンテナンス位置とにわたって、左右方向に揺動変位可能に構成されている。
【0023】
搭乗運転部6は、機体フレーム1の右前部に敷設された搭乗ステップ9、機体フレーム1における搭乗ステップ9の直前箇所に立設されたフロントパネル10、このフロントパネル10に装備された旋回操作用でかつ刈取搬送部昇降操作用の操縦レバー11、機体フレーム1における搭乗ステップ9の直左箇所に立設されたサイドパネル12、このサイドパネル12に装備された主変速レバー13や副変速レバー14、及び、搭乗ステップ9の後方に配備された運転座席15、などによって形成されている。
【0024】
図1〜4に示すように、運転座席15は、機体フレーム1における穀粒タンク5の前方箇所に配備された原動部16を覆うエンジンボンネット17の上部に配備されている。
【0025】
穀粒タンク5とエンジンボンネット17との間には、揚送スクリュー8を支点にした穀粒タンク5の揺動変位を許容する隙間が確保されている。
【0026】
原動部16は、機体フレーム1上に出力軸18が左右向きになる横向き姿勢で防振搭載された水冷式のエンジン19、このエンジン19の右外側方に立設されたラジエータ20、及び、ベルト式伝動機構21を介して伝達される出力軸18からの動力で一定方向に回転駆動されるようにエンジン19とラジエータ20との間に配備された冷却ファン22、などによって構成されている。
【0027】
ラジエータ20には、冷却ファン22を外囲して、その冷却ファン22による外気の取り入れを効率良く行わせるためのシュラウド20Aが備えられている。
【0028】
エンジンボンネット17は、その右側壁23が導風経路24を備える中空構造に形成され、その右側壁23の外面25に除塵網26が張設された吸気口27が、その右側壁23の内面28にラジエータ20に対する連通口29がそれぞれ形成されており、冷却ファン22の吸引作用によって、除塵網26で塵埃などが濾過除去された清浄な外気を冷却用としてラジエータ20やエンジン19などに供給するように構成されている。
【0029】
図3〜6に示すように、ベルト式伝動機構21は、出力軸18に装着された出力プーリ30、エンジン19の左側部に配備された発電機31の入力軸32に装着された第1入力プーリ33、エンジン19の前上部に配備されたウォータポンプ34のポンプ軸35に装着された第2入力プーリ36、及び、それらの各プーリ30,33,36にわたって回し掛けられた伝動ベルト37、などによって構成されている。
【0030】
第2入力プーリ36は、その中心部38にウォータポンプ34の入り込みを許容する内部空間を有するように、その中心部38が外方に向けて円筒状に膨出形成された板金製で、その膨出端部が、ポンプ軸35の突出端に固着された第1回転体39に4本のボルト40で連結されており、これによって、ウォータポンプ34のポンプ軸35に円盤状の第2入力プーリ36を装着する場合に比較して、ポンプ軸35の軸心P1に沿う方向でのそれらの配設長さを短くしながら、出力軸18からの動力をウォータポンプ34の駆動力としてポンプ軸35に伝達することができる。
【0031】
そして、このようにベルト式伝動機構21を介したエンジン19からの動力でウォータポンプ34を駆動することで、エンジン19に備えた図外の冷却水ジャケットとラジエータ20との間で冷却水を循環流動させることができ、エンジン冷却効率の向上を図ることができる。
【0032】
図3〜10に示すように、冷却ファン22は、ポンプ軸35の軸心P1を回転軸心としてポンプ軸35とともに回転駆動されるハブ41や、このハブ41との回転軸心P1周りでの一体回転で起風する7枚の起風翼42、などを備え、ベルト式伝動機構21を介したエンジン19からの動力で一定方向に回転駆動されることで起風するように構成されている。
【0033】
ハブ41は、その中央部に凹入空間を有する碗状に形成され、その外周部には、ボス状の7つの第1支持部43が周方向に一定間隔を隔てる状態で整列形成され、それらの各第1支持部43に、起風翼42の支軸部44が、メタルベアリング45を介して、回転軸心P1と直交する方向に設定された対応する軸心P2周りに相対回動可能に支持されている。
【0034】
ハブ41の凹入空間には、4本のボルト40によって第1回転体39に、第2入力プーリ36とともに一体回転するように連結される第2回転体46が配備され、この第2回転体46の中心部には、その軸心をポンプ軸35の軸心P1に一致させた状態で配備される断面円形の支軸47が、第2回転体46と一体回転する状態に圧入嵌合装備され、その支軸47に、ハブ41の中心部が、ガタによる傾動が抑制された嵌合精度の高い状態で回転軸心P1に沿う方向に相対摺動可能となるように、カラー48を介して嵌合支持されている。つまり、支軸47が、第2回転体46に対するハブ41の回転軸心P1に沿う方向での摺動変位を許容する摺動案内軸である。
【0035】
そして、ハブ41の中心部と支軸47との間におけるカラー48の外方側に、ハブ41の中心部と支軸47との間への異物の入り込みを防止するシール部材としてのOリング49が嵌入されている。
【0036】
ハブ41の中央部には、その周方向に所定間隔を隔てる状態でボルト操作用の4つの孔50が穿設されるとともに、それらの孔50を閉塞するとともにOリング49を抜け止めする蓋体51が備えられ、その蓋体51と、支軸47にボルト連結されるバネ受具52との間に、その蓋体51とともにハブ41を第2入力プーリ36側に向けて付勢する1組の圧縮バネ53が介装されている。
【0037】
第2回転体46の外周部には、ハブ41の中央部にその周方向に所定間隔を隔てる状態で穿設された4つの貫通孔54のうちの対応するものに、回転軸心P1に沿う方向に相対摺動可能に挿通されるとともに、第2回転体46の回転軸心P1周りでの回転に伴ってハブ41を回転軸心P1周りに連動回転させる4本の連動軸55が、その周方向に所定間隔を隔てる状態で圧入嵌合装備されている。
【0038】
各貫通孔54にはカラー56が内嵌され、それらのカラー56と対応する連動軸55との間には、ハブ41及び第2回転体46における各回転軸心P1から外周方向に離れた位置に穿設又は配備される各貫通孔54と対応する連動軸55との製造誤差に起因した貫通孔54に対する連動軸55の挿通不良を回避するために、比較的に大きい隙間が形成され、又、各貫通孔54と対応する連動軸55との間からの異物の入り込みを防止するとともに、駆動時や駆動停止時におけるハブ41と連動軸55との接触に起因した異音の発生を防止するOリング57が嵌入されている。そして、これらのOリング57は、ハブ41にビス止めされるリング状の押さえ金具58によって抜け止めされている。
【0039】
各起風翼42の支軸部44には、その軸心P2周りでの回動に伴ってその軸心P2周りに揺動する揺動アーム59が固着され、各揺動アーム59は、その支軸部44との連結部位から外れた遊端部位に、第2回転体46に向けて突出する連係ピン60が装備され、それらの各揺動アーム59や各連係ピン60などによって連係機構61が構成されている。
【0040】
第2回転体46の外縁部には、対応する連係ピン60が係入される7つの溝部62が、その周方向に所定間隔を隔てる状態に形成され、各溝部62の間は、各起風翼42の支軸部44に揺動アーム59を固着するナット63との干渉を回避するために凹入形成されている。
【0041】
つまり、ハブ41の凹入空間に第2回転体46が配備され、その凹入空間におけるハブ41の外周部と第2回転体46の外周部との隙間を有効利用して、回転軸心P1に沿う方向での第2回転体46に対するハブ41の変位によって、各起風翼42をそれらの軸心P2周りに姿勢変更する連係機構61が配備されており、これによって、各起風翼42の軸心P2周りでの姿勢変更を可能にしながらも冷却ファン22としてのコンパクト化を図れるようにしてある。
【0042】
尚、第2入力プーリ36と第2回転体45との間には、第2入力プーリ36の回転軸心P1に沿う方向での位置決めや各駆動軸54の第2入力プーリ36側への抜け止めなどを行うスペーサ64が介装されている。
【0043】
エンジン19の前部には、シフトフォーク65を回転軸心P1に沿う方向に揺動可能に支持する支持部材66がボルト連結され、そのシフトフォーク65の下端部には、第2入力プーリ36の中心部38を外囲する筒状の移動部材67が、一対のボルト68を介して、それらのボルト68を支点にしたシフトフォーク65に対する姿勢変更が可能な状態で支持連結され、その移動部材67に、ハブ41の外周部に形成した第2支持部69がラジアルベアリング70を介して支持されている。
【0044】
つまり、ハブ41は、その中心部が支軸47にカラー48を介して支持され、その外周部が移動部材67にラジアルベアリング70を介して支持される安定状態で、シフトフォーク65の揺動に伴って、回転軸心P1に沿う方向に移動部材67とともに一体変位するように構成されている。
【0045】
又、第2入力プーリ36の中心部38を外囲する移動部材67に、ハブ41の外周部に形成した第2支持部69を、ラジアルベアリング70を介して支持させることで、第2入力プーリ36の重合部となる中心部38に対して、ハブ41の外周部、移動部材67、及びラジアルベアリング70を、ハブ41の回転軸心P1に沿う方向に重合させたコンパクトな状態で配備できる。
【0046】
各第2支持部69は、ハブ41の外周部における各第1支持部43の間において、第1支持部43よりもハブ41の径方向内側に位置するように形成されており、これによって、それらの第2支持部69で支持される移動部材67及びラジアルベアリング70が、ハブ41の径方向では、各第1支持部43に支持される起風翼42を第2回転体46に連係する連係機構61に対して重合し、又、ハブ41の回転軸心P1に沿う方向では、ハブ41に対して重合する状態に配備されることになる。
【0047】
その結果、第2支持部69を、ハブ41の径方向で第1支持部43と同じ位置に形成する場合に比較して、ハブ41の回転軸心P1に沿う方向での長さや径方向の長さを大きくすることなく、ハブ41の各第1支持部43における断面積を大きくすることができて、各第1支持部43での起風翼42の支持強度やハブ41の全体強度を高めることができる。
【0048】
又、連係機構61に対して移動部材67及びラジアルベアリング70をハブ41の径方向で重合させない状態で配備する場合に比較して、ハブ41の径方向での長さを小さくすることができ、これによって、冷却ファン22の径方向での大型化を招くことなく、各起風翼42の起風有効長さを大きくすることができて、各起風翼42による高い起風性能を確保できる。
【0049】
更に、ハブ41に対して移動部材67及びラジアルベアリング70をハブ41の回転軸心P1に沿う方向で重合させない状態で配備する場合に比較して、ハブ41の回転軸心P1に沿う方向での長さを小さくすることができ、もって、大きい空間の確保が難しいエンジン19とラジエータ20との間への配備が行い易くなる。
【0050】
その上、各第2支持部69を、第1支持部43よりもハブ41の径方向内側に位置させた状態で、ハブ41の外周部全域にわたって形成する場合に生じる、第1支持部43に起風翼42を支持させる際や、起風翼42と第2回転体46とを連係機構61で連係する際に、第2支持部69が邪魔になることに起因した組み付け性の低下を回避できる。
【0051】
ハブ41の外周部には、その外周部の各第2支持部69をラジアルベアリング70に支持固定するリング状の押さえ金具71がビス止めされている。
【0052】
図1〜6に示すように、シフトフォーク65の上端部は、プッシュプルワイヤ72などを介して、エンジンボンネット17の後壁73に前後軸心P3に揺動可能に支持されたセクターギヤ74に連係され、このセクターギヤ74は、エンジンボンネット17の後壁73に配備した減速機付きで正逆転切り換え可能な電動モータ75の出力ギヤ76に噛合されている。
【0053】
そして、電動モータ75からの動力で、セクターギヤ74が前後軸心P3周りで機体右方向に揺動駆動されると、その揺動でプッシュプルワイヤ72が引き操作されるとともにシフトフォーク65が回転軸心P1に沿う方向に揺動操作されて、移動部材67とともにハブ41が、圧縮バネ53の付勢に抗して、第2回転体46に対して回転軸心P1に沿って機体右方向に変位するようになり、この変位によって、各起風翼42の姿勢が順風生起姿勢から逆風生起姿勢に一斉に変更されるようになる。
【0054】
又、電動モータ75からの動力で、セクターギヤ74が前後軸心P3周りで機体左方向に揺動駆動されると、その揺動でプッシュプルワイヤ72による引き操作が解除されるとともに、ハブ41が圧縮バネ53の付勢で移動部材67とともに第2回転体46に対して回転軸心P1に沿って機体左方向に変位するようになり、この変位によって、各起風翼42の姿勢が逆風生起姿勢から順風生起姿勢に一斉に変更されるようになる。
【0055】
つまり、圧縮バネ53、シフトフォーク65、移動部材67、プッシュプルワイヤ72、セクターギヤ74、及び電動モータ75、などによって、その電動モータ75の作動でハブ41を第2回転体46に対して回転軸心P1に沿う方向に変位させる操作機構77が構成され、その操作機構77による第2回転体46に対するハブ41の変位量が連係機構61によってハブ41に対する各起風翼42の回動操作量に変換されることで、各起風翼42の姿勢を一斉に変更できるようになっている。
【0056】
そして、各起風翼42を順風生起姿勢に切り換えると、それらの回転軸心P1周りでの回転に伴って外気をエンジンボンネット17の各吸気口27からエンジンボンネット17内に吸引する順風生起状態が現出され、各起風翼42を逆風生起姿勢に切り換えると、それらの回転軸心P1周りでの回転に伴ってエンジンボンネット17内の熱気をエンジンボンネット17における右側壁23の各吸気口27から機外に排出する逆風生起状態が現出される。
【0057】
尚、各起風翼42は、その起風効率の高い高起風作用面42Aが順風生起姿勢での起風作用面となり、又、その起風効率の低い低起風作用面42Bが逆風生起姿勢での起風作用面となるように姿勢設定されている。
【0058】
電動モータ75は、マイクロコンピュータなどを備えて構成された制御装置78によって作動制御され、制御装置78は、予め記憶された制御プログラムに基づいて電動モータ75の作動を制御するとともに、セクターギヤ74の前後軸心P3周りでの揺動角度を電動モータ75による各起風翼42の操作量として検出する回転式のポテンショメータからなる角度センサ79からの検出値に基づいて、電動モータ75の作動による各起風翼42の順風生起姿勢又は逆風生起姿勢への姿勢変更を検知する。
【0059】
制御装置78の制御作動について例示すると、制御装置78は、エンジン19の始動とともに計時を開始し、その計時が予め設定された第1設定時間(例えば3分間)が経過するまでの間、各起風翼42の姿勢を順風生起姿勢に維持して順風生起状態を現出することで、エンジンボンネット17の各吸気口27から取り込んだ外気をラジエータ20やエンジン19などに供給してそれらを冷却する。
【0060】
その第1設定時間が経過すると、各起風翼42の姿勢を順風生起姿勢から逆風生起姿勢に切り換えるとともに、予め設定された第2設定時間(例えば5秒間)が経過するまでの間、その逆風生起姿勢を維持して逆風生起状態を現出することで、エンジンボンネット17の各吸気口27から排出する熱気で右側壁23の除塵網26に付着した塵埃などを機外に吹き飛ばして除塵網26から除去する。
【0061】
その第2設定時間が経過すると、各起風翼42の姿勢を逆風生起姿勢から順風生起姿勢に切り換えるとともに、第1設定時間が経過するまでの間、各起風翼42の姿勢を順風生起姿勢に維持して順風生起状態を現出し、以後、計時に基づいて逆風生起状態と順風生起状態とを切り換え現出する。
【0062】
つまり、冷却ファン22の吸気作用による原動部16の冷却を行いながら、冷却ファン22の排気作用による除塵網26の自動清掃を定期的に行うことから、エンジンボンネット17における右側壁23の除塵網26に塵埃などが付着して目詰まりすることに起因した冷却能力の低下を回避でき、もって、原動部16の冷却を効率良く効果的に行える。
【0063】
電動モータ75は、セクターギヤ74や角度センサ79などとともにベースプレート80に装着され、ベースプレート80は、エンジンボンネット17における後壁73の背面81に、セクターギヤ74と電動モータ75とが穀粒タンク5とエンジンボンネット17との間に位置し、かつ、角度センサ79がエンジンボンネット17の内部に位置する状態となるようにボルト連結されている。
【0064】
つまり、電動モータ75は、穀粒タンク5とエンジンボンネット17との間に、穀粒タンク5側が開放された状態で位置するようになっており、これによって、電動モータ75に、原動部16からの熱気が直接作用することを防止できるとともに、電動モータ75を、穀粒タンク5とエンジンボンネット17との間を流動する外気に、温度の低い穀粒タンク5側から晒すことができ、もって、電動モータ75を効果的に冷却することができて、原動部16からの熱気で、電動モータ75がその許容温度以上に昇温して正常に機能しなくなる虞を未然に回避できるようになり、真夏の悪条件下であっても、電動モータ75の作動不良による目詰まりで冷却能力が低下してエンジン19がオーバーヒートする虞を確実に防止できる。
【0065】
又、角度センサ79をエンジンボンネット17の内部に位置させたことで、専用の防水構造を備えることによるコストの高騰や構成の複雑化などを招くことなく、圧力洗車などの際に放射される圧力のある水が角度センサ79の内部に侵入する不具合の発生を効果的に防止できる。
【0066】
ところで、プッシュプルワイヤ72は、各起風翼42の姿勢を順風生起姿勢に変更した順風生起状態において、常に、シフトフォーク65を介して移動部材67とともにハブ41を第2入力プーリ36側に向けて押圧する予圧を加えるように構成されており、これによって、ハブ41を第2入力プーリ36側に向けて付勢する圧縮バネ53として付勢力の小さいものを採用しながらも、順風生起時の負荷に抗して各起風翼42を順風生起姿勢に維持することができる。又、圧縮バネ53として付勢力の小さいものを採用することで、その付勢力に抗して各起風翼42の姿勢を順風生起姿勢から逆風生起姿勢に変更する電動モータ75として小型のものを採用でき、更に、その圧縮バネ53を介装する蓋体51とバネ受具52との間を狭くすることができて、冷却ファン22としての小型化を図れることから、エンジン19とラジエータ20との間の限られた狭い空間への配備が行い易くなる。
【0067】
図7に示すように、各起風翼42の姿勢は、逆風生起状態での風速が順風生起状態での風速よりも大きくなるように、逆風生起姿勢での起風翼42の起風角度θaが、順風生起姿勢での起風翼42の起風角度θbよりも大きくなるように設定されている。
【0068】
これによって、各起風翼42の姿勢を順風生起姿勢に変更した順風生起状態では、その作用で、外気をエンジンボンネット17の各吸気口27からエンジンボンネット17内に取り入れながらも、塵埃などが各吸気口27の除塵網26に付着する不都合を招き難くすることができ、逆に、各起風翼42の姿勢を逆風生起姿勢に変更した逆風生起状態では、その作用で除塵網26に付着した塵埃などの除去を短時間で効果的に行える。
【0069】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
〔1〕図11に示すように、ハブ41を回転軸心P1に沿ってシュラウド7Aに向けて変位操作して各起風翼42の姿勢を逆風生起姿勢に変更した逆風生起状態における各起風翼42とシュラウド7Aとの回転軸心P1に沿う方向での重なり量L1が、ハブ41を回転軸心P1に沿ってシュラウド7Aから離れる方向に変位操作して各起風翼42の姿勢を順風生起姿勢に変更した順風生起状態における各起風翼42とシュラウド7Aとの回転軸心P1に沿う方向での重なり量L2よりも大きくなるようにすることで、逆風生起状態での風速が、順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してもよい。
【0070】
〔2〕図12に示すように、各起風翼42を、その起風効率の高い高起風作用面42Aが逆風生起姿勢での起風作用面(逆風用作用面)となり、又、その起風効率の低い低起風作用面42Bが順風生起姿勢での起風作用面(順風用作用面)となるように姿勢設定して、逆風生起状態での風速が、順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してもよい。
【0071】
〔3〕図示は省略するが、第2入力プーリ36として割りプーリを採用するとともに、その可動プーリが、ハブ41を回転軸心P1に沿って変位操作する際に、そのハブ41と一体変位するように構成して、ハブ41を回転軸心P1に沿ってラジエータ7に向けて変位操作して各起風翼42の姿勢を逆風生起姿勢に変更した逆風生起状態では、それに伴って、エンジン19側の固定プーリから可動プーリが離間することで第2入力プーリ36の有効径が小さくなって冷却ファン22の回転数が上昇し、逆に、ハブ41を回転軸心P1に沿ってラジエータ7から離れる方向に変位操作して各起風翼42の姿勢を順風生起姿勢に変更した順風生起状態では、それに伴って、エンジン19側の固定プーリに可動プーリが接近することで第2入力プーリ36の有効径が大きくなって冷却ファン22の回転数が低下するように設定することで、逆風生起状態での風速が、順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してもよい。
【0072】
〔4〕本発明による起風構造を、ケーシング内に配備されるCPUやハードディスクなどに外気を供給して冷却する冷却装置や、運転キャビン内の空気を入れ換える換気装置などに適用してもよい。
【0073】
〔5〕作業車としては、普通形コンバインあるいは人参収穫機や大根収穫機などであってもよい。
【0074】
〔6〕原動部16としては、水冷式のエンジン19に代えて空冷式のエンジンを搭載するものであってもよい。
【0075】
〔7〕起風翼42の姿勢変更を、電動シリンダあるいは油圧シリンダや油圧モータなどで行うように構成してもよく、又、手動操作で行うように構成してもよい。
【0076】
〔8〕電動モータ75の作動で、各起風翼42の姿勢をそれらの回転軸心P1周りの回転駆動(冷却ファン22の回転駆動)にかかわらず起風しない非起風姿勢に維持する非起風状態の現出が可能となるように構成してもよい。
【0077】
この構成によると、例えば、作業車などにおいては、エンジン19の始動時にその非起風状態を現出すれば、エンジン19からの動力で冷却ファン22を回転駆動するように構成しながらも、起風による負荷でエンジン19の始動負荷が増大することを回避でき、スタータモータによるエンジン19の始動を円滑に行える。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】自脱形コンバインの全体側面図
【図2】自脱形コンバインの全体平面図
【図3】原動部の一部縦断背面図
【図4】原動部の縦断側面図
【図5】冷却ファンの構成を示す要部の縦断背面図
【図6】順風生起状態及び逆風生起状態を示す要部の一部縦断背面図
【図7】起風翼の順風生起姿勢及び逆風生起姿勢を示す要部の平面図
【図8】冷却ファンの構成を示す要部の縦断側面図
【図9】操作機構の構成を示す要部の縦断側面図
【図10】冷却ファンの中心部の構成を示す拡大縦断側面図
【図11】シュラウドと起風翼との重なり量の変更で逆風生起状態での風速を大きくするように構成した別実施形態での要部の縦断側面図
【図12】使用する起風作用面の設定変更で逆風生起状態での風速を大きくするように構成した別実施形態での要部の平面図
【符号の説明】
【0079】
7A シュラウド
41 ハブ
42 起風翼
42A 高起風作用面
42B 低起風作用面
77 操作機構
θa 起風角度(逆風生起姿勢)
θb 起風角度(順風生起姿勢)
L1 重なり量(逆風生起姿勢)
L2 重なり量(順風生起姿勢)
P1 回転軸心
P2 軸心(起風翼)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブの外周部に、このハブとのその回転軸心周りでの一体回転で起風する起風翼を、前記回転軸心と交差する方向に設定した軸心周りに姿勢変更可能に装備し、
前記起風翼の姿勢を、順風生起姿勢と逆風生起姿勢とに変更する操作機構を備え、
前記起風翼を逆風生起姿勢に設定した逆風生起状態での風速が、前記起風翼を順風生起姿勢に設定した順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある起風構造。
【請求項2】
前記起風翼の姿勢を、前記逆風生起姿勢での前記起風翼の起風角度が、前記順風生起姿勢での前記起風翼の起風角度よりも大きくなるように設定して、前記逆風生起状態での風速が、前記順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある請求項1に記載の起風構造。
【請求項3】
前記起風翼における起風効率の高い高起風作用面を逆風用作用面に、起風効率の低い低起風作用面を順風用作用面に設定して、前記逆風生起状態での風速が、前記順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある請求項1に記載の起風構造。
【請求項4】
前記ハブを、前記回転軸心に沿う方向に変位可能に装備し、
前記操作機構による前記ハブの前記回転軸心に沿う方向への変位操作に連動して、前記起風翼の姿勢が変更されるように構成し、
前記ハブ及び前記起風翼を覆うシュラウドを設け、
前記逆風生起状態における前記起風翼と前記シュラウドとの前記回転軸心に沿う方向での重なり量が、前記順風生起状態における前記起風翼と前記シュラウドとの前記回転軸心に沿う方向での重なり量よりも大きくなるように設定して、前記逆風生起状態での風速が、前記順風生起状態での風速よりも大きくなるように構成してある請求項1に記載の起風構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−112387(P2006−112387A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302897(P2004−302897)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】