説明

超伝導ケーブルコアの集合撚り構造

【課題】吸収空間を要することなくコアの長さ収縮量を吸収することができ、吸収空間が排除された分、超伝導ケーブルの外径を小さくすることができる新規なタイプの超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を提供する。また、吸収空間の形成に必要な付随的な装備の使用に伴う製造上の手間や不便を解消することができる超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を提供する。
【解決手段】本発明では、複数本のケーブルコアを撚り合わせてなるケーブルコアの集合撚り構造であって、上記複数本のケーブルコアが繰り返し方向を変えながら撚り合わせられて集合され、ケーブルコアに生じる長さ収縮量をケーブルコアの撚りが解かれることで吸収することを特徴とする超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導ケーブルコアの集合撚り構造に関し、より詳しくは、初期常温状態で冷却する際に生じるコアの長さ収縮量を吸収するための吸収空間を別途要することなくコアの長さ収縮量を吸収することができ、該吸収空間が排除された分超伝導ケーブルの外径を小さくすることができ、および、吸収空間の形成に必要な付随的な装備の使用と、それに伴う製造上の手間や不便とを解消することができる新規なタイプの超伝導ケーブルコアの集合撚り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高温超伝導とは、極低温状態(−196℃以下)で超伝導導体の抵抗が「0」になる現象のことを指し、超伝導ケーブルは、かかる特性を持つ超伝導導体を使用して大容量の電力を送電することができるように製造された一種の電力ケーブルである。
【0003】
上記超伝導ケーブル10の構成要素について簡単に説明すると、図1ないし図3に示すように電力機器に電力を供給するように導体の機能を発揮するケーブルコア12と、超伝導ケーブル10の最も外側に巻き付けられて外部からケーブル10の内部を保護する外側シース14と、上記外側シース14とケーブルコア12との間に巻き付けられ、外側シース14との間に真空部16を形成することで断熱機能を発揮する内側シース18とで構成される。
【0004】
このとき、ケーブルコア10は、内側シース18に挿入されやすいように撚り合わせられた状態で固定されるのが一般的である。
【0005】
この種の従来の超伝導ケーブル12では、電力使用の際、冷却によってケーブルコア12の長さが縮小され、このとき、熱収縮によってケーブルコア12に生じる長さ収縮量を吸収することができないと、ケーブルコア12に引張力が発生して、ケーブルコア12に含まれる各導体や超伝導線材に損傷を与え得る。
【0006】
このような問題を解消するために従来の超伝導ケーブルでは、図1ないし図3に示すようにケーブルコア12の間に吸収空間20を形成するようにケーブルコア12を一方向だけに撚り合わせることで、上記吸収空間20が冷却によって縮小するケーブルコア12の長さ収縮量を吸収できるようにしている。
【0007】
しかしながら、上記のようにケーブルコア12の撚り合わせの際にケーブルコア12の長さ収縮量を吸収するための吸収空間20を形成すれば、撚り合わせられた状態で集合されたケーブルコア集合体の中心径dと外径Dが大きくなり、それに伴い、超伝導ケーブル10の全体外径D1が大きくなるという問題がある。また、ケーブルコア12を撚り合わせる過程において吸収空間20を形成するための付随的な装備の使用により、製造上の手間や不便が伴うという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、吸収空間を要することなくコアの長さ収縮量を吸収することができ、該吸収空間が排除された分超伝導ケーブルの外径を小さくすることができる新規なタイプの超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を提供することをその目的とする。
【0009】
また、本発明は、吸収空間の形成に必要な付随的な装備の使用に伴う製造上の手間や不便を解消することができる超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、複数本のケーブルコアを撚り合わせてなるケーブルコアの集合撚り構造であって、複数本のケーブルコアが繰り返し方向を変えながら撚り合わせられて集合され、ケーブルコアに生じる長さ収縮量をケーブルコアの撚りが解かれることで吸収することを特徴とする超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を提供する。
【0011】
また、本発明において、ケーブルコアの撚り角θは2°〜10゜であってもよい。
【0012】
さらに、本発明において、ケーブルコアの撚り方向が変わる単位長さは、ケーブルコアの撚りピッチPの2倍〜3倍であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超伝導ケーブルコアの冷却の際、吸収空間を別途要することなく超伝導ケーブルコアの長さ収縮量を吸収することができ、吸収空間を別途形成する場合に比べて超伝導ケーブルの外径を小さくすることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明では、吸収空間を不要とするため、吸収空間の形成に必要な付随的な装備の使用と、それに伴う製造上の手間や不便とを解消することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来技術による超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を示している概略的な側方断面図である。
【図2】図1の超伝導ケーブルコアが冷却する前のケーブルコアの集合撚り構造を示している概略的な断面図である。
【図3】図2に対応する図面であって、冷却後のケーブルコアの集合撚り構造を示している概略的な断面図である。
【図4】本発明による超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を示している概略的な断面図である。
【図5】本発明による超伝導ケーブルコアが冷却する前のケーブルコアの集合撚り構造を示している概略的な側方断面図である。
【図6】図5に対応する図面であって、冷却後のケーブルコアの集合撚り構造を示している概略的な側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態による超伝導ケーブルコア集合撚り構造の構成及び効果について説明する。
【0017】
図4は、本発明による超伝導ケーブルコア12の集合撚り構造を示している概略的な断面図であり、図5は、本発明による超伝導ケーブルコア12の集合撚り構造を示している図であって、冷却する前のケーブルコア12を示している概略的な側方断面図であり、図6は、図5のケーブルコア12が冷却された後の状態を示している概略的な側方断面図である。
【0018】
本発明の集合撚り構造を有する超伝導ケーブル10は、図4ないし図6に示すように、導体の機能を発揮するケーブルコア12と、超伝導ケーブル10の最も外側に配置され、外部からケーブル10の内部を保護する外側シース14と、外側シース14とケーブルコア12との間に巻き付けられ外側シース14との間に真空部16を形成することで断熱機能を発揮する内側シース18とを含む。
【0019】
本発明のケーブルコア12は、表面が互いに密着した状態で複数本が撚り合わせられてなるケーブルコアであって、従来のようにケーブルコア12がある一方向だけに撚り合わせられるのではなく、所定の周期Cにて方向を変えながら撚り合わせられる。すなわち、所定の間隔ごとに、時計回りと反時計周りに方向を変えて繰り返し撚り合わせられるようになる。
【0020】
このとき、撚り合わせられたケーブルコア12の撚り方向が変わる単位長である周期Cは、集合撚りピッチP、すなわち1本のケーブルコア12が撚りによって長さ方向に1回転する距離の半分ないし数十倍の範囲まで可能である。特に、上記周期Cが撚りピッチPの2倍未満であれば、撚り合わせられたケーブルコア12どうしが堅固に固定されず、3倍を超えると、冷却による収縮によって撚り状態が解けられる時、ケーブルコア12に生じる収縮量がバランスよく吸収されなくなる。すなわち、周期Cが長すぎると、撚り方向が変わる部分から遠く離れた部分において生じる収縮量は吸収できないことがあるため、線材に損傷を与え得る。このように、ケーブルコア12の収縮量などの様々な要因を考慮すると、上記周期Cは、集合撚りピッチPの2倍ないし3倍にすることが好ましい。
【0021】
また、tanθ=πd′/P(ここで、d′は集合ケーブルコアの中心径、Pは集合ケーブルコアのピッチをそれぞれ示す)の式にて求めることができる集合撚り角θは、2゜〜10゜程度であればよい。上記集合撚り角θが2゜以下であれば、撚り合わせられるケーブルコア12どうしが固定されなくなることがあり、10゜以上であれば、ケーブルコア12の撚りが過度になり、ケーブルコア12内の線材が損傷を受けることがある。このため、撚りの緻密さとケーブルコア12の撚りが解けられるか否かなどを考慮すると、集合撚り角θは5゜ないし6゜の範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明のように複数本のケーブルコア12が互いに密着した状態で所定の周期Cをもってある一方向とその逆方向に交互に繰り返し撚り合わせられると、上記ケーブルコア12が冷却される時、ケーブルコア12の長さが縮小することで生じる収縮量の分、撚りが解けて図6に示すような状態になる。このとき、複数本のケーブルコア12がバランスよく撚り合わされていれば、撚りが解ける時にもバランスよく解けつつケーブルコア12に生じる収縮量をバランスよく吸収することができる。従って、上記ケーブルコア12に引張力が生じさせることなく、ケーブルコア12の各導体や超伝導線材に生じ得る損傷を防止することができる。
【0023】
なお、ケーブルコア12どうしの固定などのために、収縮時に上記ケーブルコア12の撚りが完全に解けないことが好ましい。すなわち、撚りが所定部分以上残存して、上記ケーブルコア12どうしの撚り状態を保持することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の超伝導ケーブルコアの集合撚り構造を使用すれば、上記超伝導ケーブルが使用時に冷却される際、熱収縮によって生じるケーブルコアの長さ収縮量を吸収するための吸収空間が不要となり、集合ケーブルコアの中心径や外径及び超伝導ケーブルの外径が小さくなる。
【0025】
また、吸収空間を形成するための付随的な装備の使用が不要となり、超伝導ケーブルの製造上の手間や不便が解消される。
【符号の説明】
【0026】
10:超伝導ケーブル
12:ケーブルコア
14:外側シース
16:真空部
18:内側シース
20:吸収空間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のケーブルコア(12)を撚り合わせてなるケーブルコアの集合撚り構造であって、
前記複数本のケーブルコア(12)が繰り返し方向を変えながら撚り合わせられて集合され、
前記ケーブルコア(12)に生じる長さ収縮量を前記ケーブルコア(12)の撚りが解かれることで吸収することを特徴とする超伝導ケーブルコアの集合撚り構造。
【請求項2】
前記ケーブルコア(12)の撚り角θは2°〜10゜であることを特徴とする請求項1に記載の超伝導ケーブルコアの集合撚り構造。
【請求項3】
前記ケーブルコア(12)の撚り方向が変わる単位長さは、前記ケーブルコア(12)の撚りピッチPの2倍〜3倍であることを特徴とする請求項1に記載の超伝導ケーブルコアの集合撚り構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−515234(P2010−515234A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544784(P2009−544784)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006874
【国際公開番号】WO2008/082149
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505297002)エルエス ケーブル リミテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】LS Cable Ltd.
【住所又は居所原語表記】19−20F ASEM Tower 159 Samsung−dong, Gangnam−gu, Seoul 135−090 Republic of Korea
【Fターム(参考)】