説明

超伝導線材用フィラメント圧縮手順

【課題】臨界電流密度Jを実質的に増加させる超伝導線材を作製する方法を提供する。
【解決手段】超伝導線材を作製する方法であって、延伸中間要素が、変形ステップで初期要素から形成され、最終反応熱処理により、超伝導フィラメントが形成される方法は、最後の反応熱処理に先立って、変形ステップに続く1つ以上の高圧高密度化ステップにおいて中間要素中のフィラメントの密度が高められ、前記高密度化ステップでは、軸長Lを有する中間要素の一部分上に高圧P≧100MPaがつくり出され、延伸中間要素の軸に対して垂直な少なくとも4つの硬表面へ同時に作用されることを特徴とする。このことが、臨界電流密度Jを実質的に増加させ、これによって、異方性因子Γはほとんど影響を受けることなく、ほぼ等方性の線材またはテープの生産が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期要素から超伝導線材を作製する方法に関し、この超伝導線材は、最終的には、2μmから5mmの間の直径を有して金属マトリクスで囲まれている1つ以上の超伝導フィラメントを備え、少なくとも1つの高導電性オーム要素をさらに備え、前記方法における変形ステップにおいて一連のスエージ変形、延伸変形または圧延変形を適用することにより、初期要素から、多角形断面を有する延伸中間要素が形成され、300℃から1200℃の間の最終反応熱処理により、超伝導フィラメントが形成される。
【背景技術】
【0002】
超伝導線材を作製する方法は、P.Kovacらによる論文「Properties of stabilized MgB composite wire with Ti barrier」、Supercond.Sci.Technol.20(2007)771〜776から既知である。
【0003】
MgBの線材およびテープの製造は、産業レベルに到達しており、2つの競合する技法である「in situ」技法および「ex situ」技法によってキロメートル台の長さを作製することができる。これらの技法は、E.Collingsらによって、最近になって示された(Supercond.Sci.Technol.21(2008)103001)。
【0004】
「in situ」技法は、従来のスエージ手順、延伸手順または圧延手順による線材に対する変形の最後に、500℃から1000℃の間の温度でのBとMgとの粉末粒子間の反応によって、フィラメント中にMgB相が形成されるという事実によって特徴づけられる。
【0005】
これは、既に反応したMgB粉末粒子を含むフィラメントに対して線材変形が実行される「ex situ」技法と対照的である。したがって、「ex situ」線材の最終熱処理範囲は、MgB粒間の結合度を改善するためのフィラメント中の粉末混合物の焼結である。
【0006】
MgBの構造は、超伝導臨界磁界Bc2およびBirrの強い異方性を有する六方晶である。その結果、MgB線材中の超伝導臨界電流密度Jも、テープ表面に対して印加される磁界の配向次第で異方性の挙動を示す。ex situのMgBテープの場合には、Jの強い異方性が観測され(Lezzaら、IEEE Trans.Appl.Supercond.15(2005)3196)、これは、元の粉末混合物が、変形中に線材軸に沿って整列するMgB晶子を既に含んでいるという事実によるものである。
【0007】
この状況は、反応後のフィラメント中のMgB相の組織が、Mg+B+添加物の粉末混合物の初期均質化のボールミル粉砕中に伝送されたエネルギーによる影響を受けるin situテープの場合、より複雑である。実際、100時間にわたってダブルボールおよびベイル(vail)の両方を用いて実行される高エネルギーのボールミル粉砕は、全体の30%までの粉末をMgBに変換する(機械的合金化)。Kovacらによって報告されているように(Supercond.Sci.Technol.21(2008)015004)、これらの粉末で作製されたテープはJの著しい異方性を示す。
【0008】
4時間にわたって瑪瑙のボールおよびベイルを用いた低エネルギーのボールミル粉砕によって均質化された粉末では、X線解析によって観測されるMgBは存在しない。これは、形成されたMgB相が非常に小量(<2%)であるか、あるいはMgB粒が15ナノメートル未満のサイズであるために検出され得ないことを意味する。結果として、反応させたテープにおけるテクスチャリングの度合いが非常に低く、またJの異方性も低い。
【0009】
MgB線材における臨界電流密度Jの向上は、多数の発表の課題であった。MgB線材におけるJを向上するための最も効果的な方法は、初期粉末混合物に添加物を導入することである。提案されている数種類の添加物は、部分的に、または完全に炭素から成り、MgB相中のホウ素を20%まで置換する。最も知られている添加物は、SiC(S.X.Douら、Appl.Phys.Lett.81(2002)3419)または炭素(R.H.T.Wilkeら、Phys.Rev.Lett.92(2004)217003)である。
【0010】
他の3成分からなる添加物、すなわち、BC(P.Lezzaら、Supercond.Sci.Technol.19(2006)1030)および例えばリンゴ酸C(M.S.A.Hossainら、Supercond.Sci.Technol.20(2007)L51)等の一連の炭水化物は、in situ技法によって調製されている線材およびテープにおけるJを増加させる。最終的には、添加物の組合せ、すなわち、例えばBC+SiC(R.Flukigerら、IEEE Trans.Appl.Supercond.17(2007)2846)または炭水化物+SiC(H.Yamadaら、Supercond.Sci.Technol.20(2007)L30)の組合せが用いられている。
【0011】
前述のすべての添加物に関して、ホウ素を部分的に炭素で置換すると、六方晶MgB構造の原子の秩序パラメータが減少し、したがって電気抵抗率が増加し、ひいては臨界磁界がより高くなる。同時に、フィラメントにおいて、2成分からなるMgBの場合の約39K以下から、12%炭素で置換された場合の約28K以下へと、Tの低下が観測される。その結果、C含有量とT値との折衷によって、最適のJが得られることになる。
【0012】
今日、公開されているすべての従来技術において、産業用の超伝導MgB線材の変形および最終熱処理は大気圧で実行される。高圧力下の反応熱処理は2例報告されており、テープまたは圧縮されたペレットがHIP(熱間等静圧圧縮成形)処理を受けているもの(Serquisら、Appl.Phys.Letters、82(2003,2847)、そして、バルク試料が多重アンビル圧縮によって調製されているもの(Prikhnaら、Physica C: Superconductivity, 372〜376(2002)1543)がある。しかし、これは、本出願とは基本的に異なって、これらのデバイスの使用は、非常に小さな試料寸法、すなわち、それぞれ1〜2cmから100mm未満までに限定されている。したがって、これらは長いワイヤに対して利用されない。
【0013】
HIPおよび熱間多重アンビル処理は、どちらも、最終熱処理以前の延出変形されたグリーン試料(green sample)に対する冷間圧縮ステップを表わすものではないことに注意する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以前の研究とは対照的に、本発明の目的は、臨界電流密度Jを実質的に増加させる超伝導線材を作製する方法を提供することであり、Jの値は、4.2Kの絶対温度および10Tの磁界で因子によって2.8まで向上される。加えて、磁界がテープ表面に対して平行または垂直に印加される際、異方性因子は、Γ=J(平行):J(垂直)であり、この新規の手順によってほとんど影響を及ぼされない。これは、等方性の、あるいはほぼ等方性の、線材またはテープを必要とする産業用途を考慮すると重要なことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的は、その時点でまだ超伝導になっていない中間要素中のフィラメント材料が、変形ステップに続く1つ以上の高圧高密度化ステップで高密度になることを特徴とする、冷間高圧高密度化手順を含む請求項1に記載の方法によって実現され、前記高密度化ステップにおいて、軸長Lを有する中間要素の一部分上に高圧P≧100MPaがつくり出され、延伸中間要素の軸に対して垂直な少なくとも4つの硬表面へ同時に作用され、高圧高密度化ステップに、最終反応熱処理が続く。
【0016】
高圧高密度化ステップは、−100℃から+200℃の間の温度で、好ましくは室温で実行される。
【0017】
本発明に関する方法の大いに好ましい変形形態では、高圧高密度化ステップの高圧Pは、0.1GPa≦P≦10GPaの範囲内で選択され、最も好ましくは1GPa≦P≦3GPaの範囲内で選択される。
【0018】
本発明に関する方法の好ましい変形形態では、高圧高密度化ステップに続く最終反応熱処理は、0.4GPaまでのガス圧力下で実行される。
【0019】
延伸中間要素の多角形断面が、0.25mmから50mmの間の面積を有するように、好ましくは2mmから15mmの間の面積を有するように選択されるのがよい。
【0020】
特に好ましいのは、延伸中間要素が、いくつかの高圧高密度化ステップを含む圧縮と解放のサイクルを繰り返し受けることによって、各高圧高密度化ステップの後に硬表面が離され、したがって中間要素上の圧力が解放される、本発明による変形形態の方法である。
【0021】
最も好ましくは、1つ以上の高圧高密度化ステップの後に、中間要素が、L1<Lの長さL1だけ軸方向へ前進移動し、その後、諸硬表面が中間要素に対してそれらの元の放射状の位置へ戻り、続いてさらなる高圧高密度化ステップにおいて高圧が印加される。
【0022】
具体的には、中間要素の、連続する圧縮された2つの長さの間の重なり領域は、L/2より小さいように選択されるべきであり、また、高密度化、圧力解放および前進移動から成るサイクルが、中間要素の全長まで繰り返されるべきである。
【0023】
本発明に関する方法の好ましい変形形態では、高密度化、圧力解放および前進移動のシーケンスが同期され、圧縮サイクルの数は、毎秒1回から100回の間で変化し、好ましくは毎秒5回から10回で変化する。
【0024】
好適には、中間要素の任意のコーナーが、高圧高密度化ステップに続く延伸ステップによって丸くされる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に関する方法で用いられる初期要素は、保護金属層によって超伝導フィラメントがマトリクスおよび導電性オーム要素から分離されるように選択される。
【0026】
本発明による方法の好ましい変形形態は、フィラメントが、ホウ素、マグネシウムおよび炭素成分の合計が0重量%から20重量%の間で変化する1つ以上の添加物の群から選択された粉末混合物を含み、MgB相が、500℃から1000℃の間の「in situ」反応の後に形成されるか、あるいは、フィラメントが、0重量%から20重量%の間の炭素を含む、既に形成された(=「ex situ」)MgB粉末混合物を含み、フィラメントが、600℃から1000℃の間の温度で焼結処理を受け、Nb、Ta、NiまたはTiの障壁によって、好ましくはCuを含む金属マトリクスから分離されることを特徴とする。
【0027】
本発明に関する方法の代替変形形態では、フィラメントが、NbSnと、1つ以上の添加物、具体的には10重量%までのSnおよびCuとの粉末混合物を含み、NbSn相が、550℃から800℃の間の温度での反応によって形成されると共に、Nb障壁によって、好ましくはCuを含む金属マトリクスから分離される。
【0028】
別の代替変形形態では、フィラメントが、Mo、Pb、SnおよびSの群から選択された粉末混合物を含み、PbMo相(=シェブレル(chevrel)相)が、800℃から1100℃の間の温度での反応によって形成されると共に、Mo、NbおよびTaの群から選択された障壁によって、好ましくはCuを含む金属マトリクスから分離される。
【0029】
さらに別の代替変形形態では、フィラメントは、土類のアルカリ(X)およびアルカリ元素(X)に基づくAs、Feおよび酸化物の群から選択された粉末混合物を含み、800℃から1100℃の間の温度での熱処理によって、X1−xFeAs相が形成されると共に、NbまたはTaの障壁によって、好ましくはCuを含む金属マトリクスから分離される。
【0030】
本発明は、前述の本発明に関する方法を実行するための少なくとも4つの超硬合金面を備える高圧発生デバイスも含む。このデバイスの好ましい実施形態は、ちょうど4つの超硬合金面、すなわち底面、2つの側面および最上部の超硬合金面を備え、これらは、中間要素の5mmから50mmの間の長さLに対して、同時に、その軸に対して垂直に作用する。本発明による高圧発生デバイスは、最も好ましくは、0.1秒から10秒の期間T1にわたって0.1GPaから10GPaの間で変化する高圧Pをつくり出し、圧縮された部分を高密度化する。この密度は、圧縮されていない線材またはテープに対して少なくとも5%増加する。
【0031】
本発明のさらなる利点は、説明および図面から導出され得る。上記および下記に述べられた特徴は、単独または任意の組合せで用いることもできる。図示されて説明される変形形態および実施形態は、完全な記述ではなく、本発明を説明するための実施例として提供される。
【0032】
本発明を、図に示し、実施例を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】フィラメントが導電性オーム要素を囲む超伝導マルチフィラメント線材の第1の実施形態における概略断面図である。
【図2】各フィラメントが導電性オーム要素によって囲まれる超伝導マルチフィラメント線材の第2の実施形態における概略断面図である。
【図3】高圧高密度化ステップを実行するための4つの超硬合金面を備える高圧発生デバイスの圧力印加モード中の様子を示す概略図である。
【図4】図3のデバイスの圧力解放モード中の様子を示す概略図である。
【図5】8重量%の炭素添加物を含む「in situ」MgBに関して、冷間高圧高密度化の有無におけるJ対Bの変化を示す図である。有の場合、因子によって2.5を上回るJの向上が観測された。
【図6】10重量%のリンゴ酸(C)添加物を含む「in situ」MgBに関して、冷間高圧高密度化の有無でのJ対Bの変化を示す図である。有の場合、因子によって2.5を上回るJの向上が観測された。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、超伝導線材の生産のために、初期要素を変形することにより得られた延伸中間要素5のフィラメント1の内部における粉末混合物に対する断続的な高圧作用によって材料を高密度化する手順に関し、該手順において初期要素の変形後、かつ中間要素5に対する最終熱処理の適用直前に、1つ以上の高圧高密度化ステップが実行される。
【0035】
超伝導要素は、具体的には、10μmから1mmの間のサイズのフィラメント1を有するモノフィラメントまたはマルチフィラメントの線材またはテープであり得、フィラメント1は、金属マトリクス2で囲まれると共に、通常Cuである高導電性オーム要素4を備える。
【0036】
ほとんどの場合、超伝導フィラメント1は、図1および図2に示されるように、保護金属層3によってマトリクス2および導電性要素4から分離される。
【0037】
金属層3は、マトリクス2と反応しない上に、反応または焼結の熱処理中に、粉末混合物とごくわずかな反応しか示さない要素(または合金)から成る。
【0038】
本発明は、1:1から1:20の間の縦横比を成す長い線材に対する高圧処理の特別な適用を許容する。提案された冷間高圧高密度化に先立って、モノフィラメントまたはマルチフィラメントの線材が、スエージプロセス、延伸プロセスおよび圧延プロセスによって変形される。
【0039】
断続運転に用いられるプレスは、移動する超硬合金面8を有する最上片に対して作用する40トン超を生成する液圧プレスであり、超硬合金面8は、中間要素5ならびに他の超硬合金面6および7へ圧力を順に伝達する。
【0040】
この高圧デバイスは、ちょうど4つの超硬合金面、すなわち底面6、2つの側面7および最上部の超硬合金面8を備え、これらは、要素5の5mmから50mmの間の長さLに対して、同時に、その軸に対して垂直に作用し、0.1秒から10秒の期間T1にわたって0.1GPaから10GPaの間で変化する圧力Pをつくり出して、圧縮された部分の密度を高める。この密度は、圧縮されていない線材またはテープに対して少なくとも5%増加する。
【0041】
圧縮ステップの後に、圧力Pが解放され、超硬合金面が移動することにより中間要素5の前進移動が可能になる。この前進移動は、Lより小さいL1の長さだけ生じ、最後に圧縮された長さLとの重なりは50%未満、すなわちL1≦0.5Lである。
【0042】
超硬合金面の動きは、0.1秒から1秒の範囲にある緩和時間T2後、次の圧縮ステップ用に同一の圧縮構成を復元するため、可逆的である。図3および図4に示される4つの硬表面間には間隔がないことが重要である。面6と面7とは互いに対して強く押圧され、押圧具である面8はピストンのように作用する。間隔があると、面6、7と面8との間に材料が流れ、これにより、線材の内部の材料内容が不均質性となる。
【0043】
圧力印加−圧力解放−前進移動のシーケンスは、中間要素5の全長まで繰り返される。本断続的高圧手順の特殊性は、100mを上回る線材長に対して0.1GPaから10GPaの間の超高圧を印加することにある。これは、連続的方法では実行することができない。
【0044】
断続的高圧印加のための本構成は、要素の内部にほぼ均質の圧力分布を得るように設計される。これは、具体的には、反応したMgB線材において、臨界電流密度Jのさらなる異方性が確立されないことを意味する。超硬合金面の動きおよび要素の動きは、液圧手段または電子手段によって、断続運転の時間T1およびT2を監視することにより同期される。
【0045】
本断続的高圧手順は、最終熱処理が反応のために実行されるのか、あるいは単に焼結の目的で実行されるのかということにかかわらず、粉末混合物を含むあらゆる種類の超伝導線材に対して適用可能である。本手順は、in situのMgB線材およびex situのMgB線材、いわゆるPIT(チューブ内の粉末)技法によって作製されたNbSn線材、式PbMoによって表わされるシェブレル(chevrel)相だけでなく、式Ba1−xSrFeAsによって表わされる新しく発見された超伝導化合物に対しても適用可能である。
特別実施例
1.炭素を付加したMgB要素
in situ技法によって作製された8重量%の炭素添加物を含むMgB線材が、先ず線材に変形され、次いで0.35×2.5mm断面のテープへと圧延された。1.5GPaでの冷間高圧高密度化および900℃での1時間にわたる反応の後に、臨界電流密度が大きな増加を示し、4.2K/12Tでの値は(平行磁界で)1×10A/cmであり(図5を参照)、因子によって2.8だけJが増加した。20Kおよび5Tでは、約2.5向上した。
【0046】
図5も、テープ面に対して平行および垂直の両方向の磁界に対するJの挙動を示す。両方向の磁界間のJの異方性比Γが1に近く、テープが、4.2K/10T未満で等方性の挙動を示すことが理解される。これは、冷間高圧高密度化が、異方性因子Γの増加をもたらさないことを示す。
2.リンゴ酸(C)を添加したMgB
in situ技法によって作製された10重量%のリンゴ酸(C)添加物を含むMgB線材が、先ず線材に変形されており、次いで0.55×3.5mm断面のテープへと圧延された。1.45GPaでの冷間高圧高密度化および650℃で1時間にわたる反応の後に、臨界電流密度磁界は、4.2Kおよび13Tで1×10A/cmに増加した(図6を参照)。
【0047】
図6から、冷間高圧高密度化が、4.2KでJの大きな向上をもたらす様子を見ることができる。4.2Kで、13.3T(平行な磁界方向)および12T(垂直の磁界方向)にて現在得られた値J=1×10A/cmは、これまでに得られた最も高い値であり、本発明の効果を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期要素から超伝導線材を作製する方法であって、前記超伝導線材が、最終的には、2μmから5mmの間の直径を有して金属マトリクス(2)で囲まれている1つ以上の超伝導フィラメント(1)を備え、少なくとも1つの高導電性オーム要素(4)をさらに備え、変形ステップにおいて一連のスエージ変形、延伸変形または圧延変形を適用することにより、前記初期要素から、多角形断面を有する延伸中間要素(5)が形成され、300℃から1200℃の間の最終反応熱処理により、前記超伝導フィラメント(1)が形成される方法において、
その時点でまだ超伝導になっていない前記中間要素(5)中の前記フィラメント(1)の材料が、前記変形ステップに続く1つ以上の高圧高密度化ステップで高密度化され、前記高密度化ステップでは、軸方向長Lを有する前記中間要素(5)の一部分に対して高圧P≧100MPaがつくり出され、前記延伸中間要素(5)の軸に対して垂直な少なくとも4つの硬表面へ同時に作用し、
前記高圧高密度化ステップにおいて、最終反応熱処理が続くことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記高圧高密度化ステップが、−100℃から+200℃の間の温度で、好ましくは室温で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高圧高密度化ステップの前記高圧Pが、0.1GPa≦P≦10GPaの範囲内で選択され、好ましくは1GPa≦P≦3GPaの範囲内で選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記高圧高密度化ステップに続く前記最終反応熱処理が、0.4GPaまでのガス圧力下で実行されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記延伸中間要素(5)の前記多角形断面が、0.25mmから50mmの間の面積を有し、好ましくは2mmから15mmの間の面積を有することを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記延伸中間要素(5)が、いくつかの高圧高密度化ステップを含む圧縮と解放のサイクルを繰り返し受けることによって、各高圧高密度化ステップの後に前記硬表面が離され、したがって前記中間要素(5)上の前記圧力が解放されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の高圧高密度化ステップの後、前記中間要素(5)が、L1<Lの長さL1だけ軸方向へ前進移動し、その後、前記硬表面が前記中間要素(5)に対してそれらの元の放射状の位置へ戻り、続いてさらなる高圧高密度化ステップにおいて高圧が印加されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記中間要素(5)の連続する圧縮された2つの長さの間の重なり領域が、L/2より小さく、高密度化、圧力解放および前進移動から成るサイクルが、前記中間要素(5)の全長まで繰り返されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
高密度化、圧力解放および前進移動のシーケンスが同期され、圧縮サイクルの数が、1秒当り1回から100回の間で変化し、好ましくは1秒当り5回から10回の間で変化することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記中間要素(5)の任意のコーナーが、前記高圧高密度化ステップに続く延伸ステップによって丸くされることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記超伝導フィラメント(1)が、保護金属層(3)によって、前記マトリクス(2)および前記導電性オーム要素(4)から分離されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記フィラメント(1)が、ホウ素、マグネシウムおよび合計20重量%までの炭素成分を有する1つ以上の添加物の群から選択された粉末混合物を含み、MgB相が500℃から1000℃の間の「in situ」反応の後に形成されるか、あるいは前記フィラメント(1)が20重量%までの炭素を含む既に形成された(=「ex situ」)MgB粉末混合物を含み、前記フィラメント(1)が600℃から1000℃の間の温度で焼結処理を受け、Nb、Ta、NiまたはTiの障壁によって、好ましくはCuを含む前記金属マトリクス(2)から分離されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記フィラメント(1)が、NbSnと、1つ以上の添加物、具体的には10重量%までのSnおよびCuとの粉末混合物を含み、NbSn相が、550℃から800℃の間の温度での反応によって形成され、Nb障壁によって、好ましくはCuを含む前記金属マトリクス(2)から分離されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記フィラメント(1)が、Mo、Pb、SnおよびSの群から選択された粉末混合物を含み、PbMo相(=シェブレル(chevrel)相)が、800℃から1100℃の間の温度での反応によって形成され、Mo、NbおよびTaの群から選択された障壁によって、好ましくはCuを含む前記金属マトリクス(2)から分離されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記フィラメント(1)が、土類のアルカリ(X)およびアルカリ元素(X)に基づくAs、Feおよび酸化物の群から選択された粉末混合物を含み、X1−xFeAs相が、800℃から1100℃の間の温度での熱処理によって形成され、NbまたはTaの障壁によって、好ましくはCuを含む前記金属マトリクス(2)から分離されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−92857(P2010−92857A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−232288(P2009−232288)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(591148048)ブルーカー バイオシュピン アー・ゲー (53)
【Fターム(参考)】