説明

超伝導電気ケーブル

本発明は、管(2)として構成された支持体の周りに少なくとも一層巻かれた、帯状体またはワイヤから構成される、少なくとも一つの超伝導性の導体(1)を備えた超伝導電気ケーブル(SK)に関する。該管(2)は、弾性的に変形可能であり、該管の全長にわたって軸方向に延びる割れ目(8)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管として構成された支持体の周りに、少なくとも一層巻かれた、少なくとも一つの、超伝導性の、帯状体またはワイヤからなる導体を備えた、超伝導電気ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなケーブルは、特許文献1に開示されている。
【0003】
超伝導ケーブルは、今日の技術において、十分に低い温度で超伝導状態に移行するセラミクス材料を含む合成材料の電気導体を有する。適切に構成された導体の直流抵抗は、十分に冷却されると、所定の電流強度、臨界電流強度を超えない限り、ゼロとなる。適切なセラミクス材料は、たとえば、希土ベースの酸化物、特にYBCO(イットリウム・バリウム・銅酸化物)またはBSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物)である。そのような材料を超伝導状態にするための、十分に低い温度は、たとえば、67Kと110Kとの間である。適切な冷媒は、たとえば、窒素、ヘリウム、ネオン、及び水素またはこれらの物質の混合物である。
【0004】
上記の特許文献1によって公知のケーブルは、少なくとも一層、管の周りに巻かれた超伝導導体を有する。該ケーブルには、さらに、導体を取り囲む被膜も属する。該ケーブルは、互いに同軸に配置された2個の金属管であって、その間に真空絶縁が施された、2個の金属管からなるクライオスタット内において、空間内に拘束されることなく配置されている。該導体の超伝導状態をもたらす冷媒は、該管及びクライオスタットの該空間を通って導かれる。
【0005】
超伝導ケーブルの導体は、公知の技術では、少なくとも一層、支持体、たとえば、管の周りに巻かれた、超伝導材料の帯状体またはワイヤからなる。室温から超伝導状態が必要とする温度までの、ケーブルの運転状態に必要な冷却によって、超伝導性導体材料は、約0.25%から0.3%収縮する。この結果、たとえば、600mのケーブル長の場合に、約1.5mから1.8m、導体が短くなる。超伝導ケーブルとその導体は、接続装置において端部が接続されている。冷却によって導体がかなり短くなるので、接続装置には、かなりの引っ張り荷重がかかる。さらに、引っ張り荷重によって、導体、すなわち、導体の各エレメントが、過度に伸び、それによって損傷することも起こりやすい。損傷により、導体は使用できなくなる。導体の機能へのそのような影響を防止するために、たとえば、特許文献2によれば、実施される冷却の後、超伝導状態に対応する、短くなった長さで、端部は、クライオスタットの内部で固定される。このような装置のコストは、比較的高い。このような超伝導ケーブルが、たとえば、修理の目的で室温に暖められると、膨張したケーブルによって、さらに、接続装置に機械的に荷重がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO03/052775A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、温度が引き起こす導体の長さ変化を、簡単な仕方で取り除くことができるように、上述のケーブルを構成するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明にしたがって、管が、変化しうる直径を有し、半径方向に変形可能であり、管の全長にわたり伸び、外側の輪郭に沿って直線状に走る割れ目を備えることによって、解決される。
【0009】
このケーブルにおいて、導体の支持体として使用される管は、弾性的に変形可能であり、管の直径は、外側から作用する径方向の圧縮荷重によって減少しうる。このことは、導体の冷却の際に狭まり、最大では、完全に閉じることができるように、室温では十分な幅に定められた、管の長手方向に伸びる割れ目によって達成される。冷却の結果、導体が短くなることは、支持体において、主として径方向に影響を与え、ケーブルの端部の接続装置に、引っ張り荷重はほとんどかからない。管は弾性的に変形可能であるので、管の径方向の荷重が減少したり、極端にはなくなった場合には、割れ目は再び広がり、管の直径は再び大きくなる。超伝導ケーブルの導体は、この構成により、冷却及び加熱の際の導体の長さに関係なく、継続的に支持体として機能する管の表面に常に接している。「弾性的に変形可能である」という表現は、発明の意味において、管がそれを取り囲む導体に対して常に圧力をかけることを意味し、最も広い意味において、弾力性のある特性を有することを意味する。
【0010】
上述の意味において、室温で機能する管が必要とする割れ目の幅は、管の直径、管の材料、室温と超伝導状態におけるケーブルの動作温度との差の関係から計算する、すなわち定めることができる。
【0011】
本発明の主題の実施例は、図面に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】超伝導ケーブルを備えた構成の断面図である。
【図2】本発明による超伝導ケーブル用に、ケーブルの導体用の支持体として使用しうる管を示す図である。
【図3】図2に対して変形した、管の実施形態を示す図である。
【図4】図2に対して変形した、管の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、クライオスタットKR内に配置された超伝導ケーブルSKの原理的な構成が示されている。ケーブルSKは、支持体として製作された管2の周りに形成された、超伝導導体1を有する。導体1は、誘電体3によって囲まれており、その上には、超伝導性層4が配置されている。クライオスタットKRは、その間に真空絶縁7を施した、2個の、互いに同軸に配置された金属管5及び6からなる。クライオスタットKRは、ケーブルSK及び冷媒を通すための空間FRを囲む。
【0014】
クライオスタットKRの管5及び6は、有利には特殊鋼からなる。管5及び6は、長手方向を横断して波形とすることができる。導体1及び層4は、通常の超伝導材料、特に上述の材料YBCO及びBSCCOから構成してもよい。導体1は、有利には、少なくとも一層、管2の周りに巻かれた、帯状体またはワイヤから構成される。誘電体3は、通常の技術で製作される。ケーブルSKは、図1に実施形態において、低温誘電体を備えた超伝導ケーブルである。
【0015】
導体1用の支持体として使用される管2は、さらに上述の意味において、弾性的に変形可能であり、径方向に変わりうる直径を備える。管2は、好ましい実施形態において、特殊鋼、銅、またはアルミニウム、あるいはこれらの合金から構成される。管2は、好ましい実施形態において、ベリリウム銅合金から構成されてもよい。管2は、図4に対応して、長手方向を横断して波形とすることができる。
【0016】
管2は、全長にわたり伸びる割れ目8を有し、該割れ目は、図2にしたがって、管の外側の輪郭に沿って直線状に走る。割れ目8は、図3にしたがって、特に大きなねじれ角を伴うらせん状であってもよい。
【0017】
実施例
割れ目8の幅は、たとえば、以下のように算出することができる。
【0018】
直径Dのロープの周りにストローク長LSの導体を作る場合に、ストローク長LSに対する導体長Lは、式
【数1】

で与えられる。導体が冷却されたときに、導体は、収縮により、とりわけ短くなる。この収縮は、導体の巻かれた物体の直径が減少しうることによって補償される。αが、ロープの材料の熱収縮に依存する係数であるとして、低温導体の長さが
【数2】

であると、次のようになる。金属材料は、室温から77Kへ冷却されると、たとえば、約3%収縮する。そのような場合に、
【数3】

である。上述の式から、
【数4】

に対して、冷却状態で収縮した導体が巻かれたものが、収縮すべき直径DKを定めることができる。
【0019】
超伝導ケーブルSKにおいて、導体は、たとえば、直径25mmの、特殊鋼から構成される管2の周りに巻かれている。ストローク長は、直径の10倍に達し、
【数5】

である。係数アルファが、0.997であると、冷却された管2の直径は、24.58mmである。そのような直径は、77.22mmの管2の円周に相当する。当初の状態において、管の円周は、直径がD=25mmであるので、78.54mmであった。管2が、径方向に0.3%収縮すると、冷却された状態における管の直径は、
【数6】

である。その円周は、78.3mmとなる。上記の例に対して、割れ目8の幅は、
【数7】

と計算される。
【0020】
管2に使用される材料を適切に指定すると、収縮により割れ目8が狭まることにより、塑性的な変形は、生じないかごくわずかしか生じない。このことは、適切な壁厚を有する材料の適切な選択によって達成されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管として構成された支持体の周りに少なくとも一層巻かれた、少なくとも一つの、超伝導性の、帯状体またはワイヤからなる導体を備えた超伝導電気ケーブルであって、該管(2)は、弾性的に変形可能であり、該管の全長にわたって延び、軸方向に走る割れ目(8)を備えた超伝導電気ケーブル。
【請求項2】
該管(2)は、その長手方向を横断する方向に波形とされている請求項1に記載の超伝導電気ケーブル。
【請求項3】
該割れ目(8)は、該管(2)の外側の輪郭に沿って直線状に走る請求項1または2に記載の超伝導電気ケーブル。
【請求項4】
該割れ目(8)は、らせん状に走る請求項1または2に記載の超伝導電気ケーブル。
【請求項5】
該管(2)は、特殊鋼から形成される請求項1から4のいずれかに記載の超伝導電気ケーブル。
【請求項6】
該管(2)は、銅または銅合金から形成される請求項1から4のいずれかに記載の超伝導電気ケーブル。
【請求項7】
該管(2)は、ベリリウム・銅合金から形成される請求項6に記載の超伝導電気ケーブル。
【請求項8】
該管(2)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成される請求項1から4のいずれかに記載の超伝導電気ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−523065(P2012−523065A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501227(P2012−501227)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052813
【国際公開番号】WO2010/108771
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】