説明

超低空頭掘削装置の支持架台及びビットの回収方法

【課題】空頭が極度に制限された施工現場において、小型の掘削装置によりそのベースの外形寸法よりも大径の穴の掘削を可能とし、また掘削終了後のビットの回収も容易に行うことができるようにする。
【解決手段】掘削穴52を横切るように互いに間隔をおいてほぼ平行に設置される1対の梁部材2,2と、梁部材2,2間を連結するように互いに間隔を置いてほぼ平行に設けられた1対の連結部材3,3と、一方の連結部材3に一端が回動自在に取り付けられ、他端が他方の連結部材3に支持された1対の仮受けバー4,4とを備え、仮受けバー4,4は互いにほぼ平行となる接近位置と、ほぼハの字状に拡開する離間位置との間を移動自在であり、接近位置において掘削ロッド59の外周に係合してビットを支持するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超低空頭掘削装置の支持架台及びビットの回収方法に関し、より詳細には駅プラットホーム下などの空頭が極度に制限された施工現場で杭穴を掘削するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
駅ビルを構築するなど駅の改良工事において、プラットホーム下方の地盤に基礎杭用の杭穴を施工する場合がある。この場合、ホームの一部を開口し、掘削装置をその上部が開口から突出した状態で杭施工位置の地盤上に設置し、掘削装置の上部を仮囲いによって覆う方法がある(例えば特許文献1参照)。あるいは、ホームの上空に設置した構台に掘削装置を搭載し、また構台とホームとの間に鋼管を設置し、ロッドやビットなどの掘削ツールスを鋼管内を通して移動させ、同時に鋼管によって掘削ツールスを覆うという方法もある。
【0003】
しかし、いずれの方法の場合も、乗客が多い駅、ホーム幅の狭い駅、階段付近での施工など、施工条件によっては仮囲いや鋼管の設置スペースを確保することが困難な場合が多い。
【0004】
掘削装置をプラットホーム下に設置できるように小型化すれば、仮囲いや鋼管の設置スペースの問題が生じることなく、プラットホーム下に基礎杭用の杭穴を掘削することができる。しかし、基礎杭は大きな支持力を必要とすることから大径であり、したがってその杭穴も大径のものとなることから、小型の掘削装置をそのまま杭穴上に設置して掘削することは困難である。また、大径の杭穴を掘削するには例えば4翼ビット等、大径のビットにより掘削することになるが、掘削終了後のビットの回収には煩雑な受け替え作業が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−39921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、駅プラットホーム下などの空頭が極度に制限された施工現場において、小型の掘削装置によりそのベースの外形寸法よりも大径の穴の掘削を可能とし、また掘削終了後のビットの回収も容易に行うことができる掘削装置の支持架台及びビットの回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、駅プラットホーム下などの空頭が制限された施工現場において、掘削装置を掘削穴上に支持し、掘削終了後に掘削ロッドに接続されたビットを回収するための支持架台であって、
掘削穴を横切るように互いに間隔をおいてほぼ平行に設置される1対の梁部材と、
この梁部材間を連結するように互いに間隔を置いてほぼ平行に設けられた1対の連結部材と、
一方の連結部材に一端が回動自在に取り付けられ、他端が他方の連結部材に支持された1対の仮受けバーとを備え、
前記仮受けバーは互いにほぼ平行となる接近位置と、ほぼハの字状に拡開する離間位置との間を移動自在であり、接近位置において前記掘削ロッドの外周に係合して前記ビットを支持するようになっていることを特徴とする掘削装置の支持架台にある。
【0008】
また、この発明は、駅プラットホーム下などの空頭が制限された施工現場において、掘削装置により穴を掘削した後、掘削ロッドに接続されたビットを回収する方法であって、
前記支持架台に掘削装置を搭載して、掘削ロッドを順次接続しながらビットにより穴を掘削し、
掘削終了後、前記掘削ロッドを順次切り離しながらビットを引き上げ、
前記仮受けバーを接近位置に移動させることにより、該仮受けバーを最下段の掘削ロッドの外周に係合させて前記ビットを支持した後、掘削装置を支持架台から退去させ、
支持架台を吊り上げてビットを回収することを特徴とするビットの回収方法にある。
【0009】
前記ビットは複数翼ビットであり、前記仮受けバーによってビットを支持することに加え、均衡のとれる適宜の翼を選択して、その選択された翼と前記梁部材を固定ロッドで連結してビットを回収するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明の支持架台によれば、空頭が極度に制限された施工現場において、小型の掘削装置により、そのベースの外形寸法よりも大径の穴を掘削するに際し、掘削装置を掘削穴上で支持して掘削することが可能となり、また最下段の掘削ロッド及びビットを仮受けバーに支持させることにより、支持架台とともにビットを容易に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明による支持架台の実施形態を示す平面図である。
【図2】同支持架台の側面図である。
【図3】同支持架台の正面図である。
【図4】ケリーロッド及びビットを支持した状態の支持架台を示す平面図である。
【図5】同支持架台の側面図である。
【図6】同支持架台の正面図である。
【図7】仮受けバーを固定し、ビットの翼を連結した状態の支持架台を示す平面図である。
【図8】同支持架台の側面図である。
【図9】同支持架台の正面図である。
【図10】ビットの吊り上げ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1〜図3に示すように、掘削装置50は駅プラットホーム70下などの空頭が極めて制限された施工現場において、杭穴52を施工するために開発された小型のものである。因みに駅プラットホーム70と地盤との間は2m以下であり、したがって掘削装置の機高も1.8m程度に抑えられている。一方、基礎杭は杭径がφ3000mm程度の大径であり、したがって、その杭穴52も大径となることから掘削装置50のベースの外形寸法よりも大きく、杭穴52上にそのまま設置することはできない。
【0013】
まず、掘削装置50の概略を説明すると、掘削装置50は1対のスキッド51a,51aを有するスキッドベース51を備えている。スキッドベース51上にその前後方向に移動自在にマストフレーム53が設けられ、このマストフレーム53上に略直方体状のマスト54が設けられている。マストの前部には昇降ビーム55が設けられ(図3)、この昇降ビーム55にスイベルヘッド56が取り付けられている。
【0014】
掘削装置50はターンテーブル式のものであり、掘削ロッドを回転させるためのターンテーブル57が支持フレームを介してスキッドベース52の前部に設けられている。ターンテーブル式の掘削装置50に使用する掘削ロッドは、外周に軸線方向に延びる突起58を有するケリーロッド59であり、突起58を介してケリーロッド59にターンテーブル57から回転力が伝達される。符号71はターンテーブル57をギヤ列を介して回転させるための油圧による駆動モータを示している。
【0015】
ケリーロッド59は上下にフランジ60を有し、このフランジ60を介して上下のケリーロッド57が接続され、また最上段のケリーロッド59がスイベルヘッド56に接続される。このケリーロッド59の上フランジ60の直下には、後述する仮受けバー4,5に係合させるための係合突起62が、180度の角度間隔を置いた2箇所において設けられている。最下段のケリーロッド59にはビット61が接続され、図示の例では、ビット61として複数翼、具体的には4翼ビット(図7参照)が用いられている。
【0016】
ビット61は掘削装置50による掘削の前に、手掘り等により杭穴52の上部を形成する適宜深さの部分を先行掘削し(ピット)、この先行掘削部分に搬入される。そして、このピットを横切るように、掘削装置50を杭穴52上で支持するための支持架台1が設置される。
【0017】
支持架台1は互いに間隔を置いてほぼ平行に配置された1対の梁部材2,2と、梁部材2,2のほぼ中央部において梁部材2,2間を連結するように、互いに間隔を置いてほぼ平行に配置された1対の連結部材3,3とを備えている。梁部材2,2は、図示の例では2本のH形鋼の各フランジを長手方向に沿って溶接することによって作られている。この梁部材2,2の下面に連結部材3,3の両端部が溶接あるいはボルト等の固定手段によって固定されている。
【0018】
一方の連結部材3には1対の仮受けバー4,4の一端がピン等を介して回動自在に取り付けられ、この仮受けバー4,4の他端は自由端となって他方の連結部材3上に支持されている。仮受けバー4,4は、これらを回動させることにより、互いに接近してほぼ平行になる接近位置と、ほぼハの字状に拡開する拡開位置との間を移動自在である。仮受けバー4,4はその接近位置においてケリーロッド59の係合突起62に係合可能であり、拡開位置においてケリーロッド59の通過を許すようになっている。なお、仮受けバー4,4と同様に接近位置と拡開位置との間を移動し、接近位置においてケリーロッド59の係合突起62に係合可能な1対の仮受けバー5,5が、ターンテーブル57の支持フレームの下面にも設けられている。
【0019】
掘削装置50による杭穴52の掘削は、上述したように先行掘削したピットにビット61を搬入するとともに、ピット上に支持架台1を設置したうえ、この支持架台1上に掘削装置1を搭載して行われる。すなわち、ケリーロッド59の上下部をそれぞれスイベルヘッド56及びビット61に接続し、昇降ビーム55を下降させることによりケリーロッド59に推力を与えながら、ターンテーブル57の回転によりケリーロッド59を回転力を与えてビット61により地盤を掘削する。
【0020】
昇降ビーム55が下降位置に達すると、仮受けバー5,5をケリーロッド59の係合突起62に係合させることによりケリーロッド59及びビット61を支持して、ケリーロッド59からスイベルヘッド56を切り離し、昇降ビーム55を上昇させることによりスイベルヘッド56を上昇させる。そして、仮受けバー5,5に支持されているケリーロッド59に新たなケリーロッド59を接続するとともに、その上端にスイベルヘッド56を接続し、以下、同様の手順でケリーロッド59を順次接続しながら杭穴52を掘削する。
【0021】
杭穴52が所定深度に達したら掘削を終了し、ケリーロッド59及びビット61を回収する。ケリーロッド59の回収は、昇降ビーム55の上昇によりケリーロッド59を引き上げ、最上段のケリーロッド59をその下段のケリーロッド59及びスイベルヘッド56から切り離し、これを繰り返すことによって行う。ケリーロッド59の切り離しの際は、その下段のケリーロッド59の係合突起62に仮受けバー5,5を係合させ、その下段以下のケリーロッド59及びビット61を支持する。以下、同様の手順でケリーロッド59を順次切り離しながら、これを回収する。
【0022】
最下段のケリーロッド59については、図4〜図6に示すように、その係合突起62に仮受けバー4,4を係合させ、このケリーロッド59及びビット61を支持する。すなわち、最下段のケリーロッド59及びビット61は、仮受けバー4,4を介して支持架台1に支持させる。そして、掘削装置1を支持架台1から退去させる。掘削装置1を退去させた後、図7〜図9に示すように、仮受けバー4の自由端部を連結部材3にボルト・ナット63により固定する。
【0023】
また、ビット61の翼のうち、吊り上げ時に均衡のとれる180度の角度間隔を置いた2つの翼61a,61aを選択し、これら翼61a,61aと梁部材2,2とを固定ロッド64で連結する。固定ロッド64は先端にフック部65、上端にネジ部を有するボルトであり、翼61aに設けた穴にフック部65を通し、梁部材2,2に設けた穴にネジ部を通してナット66を固定して、翼61a,61aと梁部材2,2とが連結される。
【0024】
上記のようにして、ビット61を支持架台1に固定したら、図10に示すように、ワイヤロープ67を梁部材に固定し、クレーン等の重機により支持架台1を吊り上げ、支持架台1とともにビット61を回収する。なお、このビット61の吊り上げ時には、駅プラットホーム70に支持架台1が通過可能な開口を設ける。
【0025】
以上のように、この発明の支持架台によれば、空頭が極度に制限された施工現場において、小型の掘削装置をそのベースの外形寸法よりも大径の杭穴の上で支持し、杭穴を掘削することが可能となり、また最下段のケリーロッド及びビットを仮受けバーに支持させることにより、支持架台とともにビットを容易に回収することができる。
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の形態を採りうる。例えば、上記実施形態で示した掘削装置は、空頭が極度に制限された施工現場での掘削のために開発された小型のものであるが、掘削装置は上記実施形態のものに限るものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 支持架台
2 梁部材
3 連結部材
4 仮受けバー
50 掘削装置
52 杭穴
51 スキッドベース
54 マスト
56 スイベルヘッド
59 ケリーロッド
61 ビット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅プラットホーム下などの空頭が制限された施工現場において、掘削装置を掘削穴上に支持し、掘削終了後に掘削ロッドに接続されたビットを回収するための支持架台であって、
掘削穴を横切るように互いに間隔をおいてほぼ平行に設置される1対の梁部材と、
この梁部材間を連結するように互いに間隔を置いてほぼ平行に設けられた1対の連結部材と、
一方の連結部材に一端が回動自在に取り付けられ、他端が他方の連結部材に支持された1対の仮受けバーとを備え、
前記仮受けバーは互いにほぼ平行となる接近位置と、ほぼハの字状に拡開する離間位置との間を移動自在であり、接近位置において前記掘削ロッドの外周に係合して前記ビットを支持するようになっていることを特徴とする掘削装置の支持架台。
【請求項2】
駅プラットホーム下などの空頭が制限された施工現場において、掘削装置により穴を掘削した後、掘削ロッドに接続されたビットを回収する方法であって、
請求項1記載の支持架台に前記掘削装置を搭載して、掘削ロッドを順次接続しながらビットにより穴を掘削し、
掘削終了後、前記掘削ロッドを順次切り離しながらビットを引き上げ、
前記仮受けバーを接近位置に移動させることにより、該仮受けバーを最下段の掘削ロッドの外周に係合させて前記ビットを支持した後、掘削装置を支持架台から退去させ、
支持架台を吊り上げてビットを回収することを特徴とするビットの回収方法。
【請求項3】
前記ビットは複数翼ビットであり、前記仮受けバーによってビットを支持することに加え、均衡のとれる適宜の翼を選択して、その選択された翼と前記梁部材を固定ロッドで連結してビットを回収することを特徴とする請求項2記載のビットの回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−53431(P2013−53431A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191310(P2011−191310)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(599112113)株式会社東亜利根ボーリング (25)
【Fターム(参考)】