超分子コンストラクトを含む方法および組成物
【課題】立体構造に感受性を示す抗体をもたらし、特異性が高く、有効な抗体を引き起こす新しい組成物の提供。
【解決手段】抗原ペプチドまたはその活性断片を含み、かつ抗原ペプチドまたはその活性断片が抗原性を増強するために修飾された、超分子抗原性コンストラクトを含む組成物。該抗原ペプチドまたはその活性断片は、ポリエチレングリコールまたは修飾型ポリエチレングリコールを用いるPEG化によって修飾されたものであることが好ましい。該超分子抗原性コンストラクトは、リン脂質およびコレステロールからなるリポソーム中に再構成されたものであることが好ましい。該超分子抗原性コンストラクトは、アルツハイマー病、癌細胞の多剤耐性、またはプリオン病を含む疾患の治療に使用可能であることが好ましい。
【解決手段】抗原ペプチドまたはその活性断片を含み、かつ抗原ペプチドまたはその活性断片が抗原性を増強するために修飾された、超分子抗原性コンストラクトを含む組成物。該抗原ペプチドまたはその活性断片は、ポリエチレングリコールまたは修飾型ポリエチレングリコールを用いるPEG化によって修飾されたものであることが好ましい。該超分子抗原性コンストラクトは、リン脂質およびコレステロールからなるリポソーム中に再構成されたものであることが好ましい。該超分子抗原性コンストラクトは、アルツハイマー病、癌細胞の多剤耐性、またはプリオン病を含む疾患の治療に使用可能であることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、強い免疫反応を引き起こす方法および組成物に関する。特に本発明は、立体構造に感受性を示す抗体をもたらす新しい組成物および方法を含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫系は、種々の活性を有する多種多様な細胞が関与する、身体の複雑な応答系である。免疫系の一部の活性化は通常、免疫系の他の関連する部分の望ましくない活性化により、種々の応答を引き起こす。現在、免疫系の特定の成分を標的とすることで、特異的に望ましい応答を生じる満足のゆく方法または組成物はない。
【0003】
免疫系は、体内と体外の両方に由来する刺激と相互作用する細胞や細胞因子を含む、種々の成分が関与する身体の複雑な相互作用系である。免疫系の応答は、直接的な作用のほかに、神経系、呼吸器系、循環器系、および消化器系を含む、身体の他の系の影響も受ける。
【0004】
免疫系について比較的よく知られた局面の1つは、侵入する微生物によって提示された外来抗原、体内の細胞変化、またはワクチン接種に対する応答能力である。免疫系のこのような活性化に反応する主な種類の細胞には、食細胞やナチュラルキラー細胞などがある。食細胞の主なものには、単球、マクロファージ、および多形核好中球などがある。これらの細胞は一般に、外来抗原と結合して、これを内在化して破壊することがある。これらの細胞はまた、炎症反応などの他の免疫反応に関与する可溶性分子を産生する。ナチュラルキラー細胞は、特定のウイルス感染胚細胞や腫瘍細胞を認識して破壊することができる。免疫反応の他の因子には、外来抗原に対して独立に反応するか、または細胞もしくは抗体と協調して作用する能力を有する補体経路などがある。
【0005】
一般に、抗原に対する応答には、液性応答と細胞応答の両方が関与すると考えられている。液性免疫反応には、細胞から産生されて、血漿または細胞内液中に遊離の状態で見出される場合もある非細胞性因子群が関与する。免疫系の液性応答には主に、Bリンパ球が産生する抗体が関与する。細胞が介在する免疫反応は、抗原提示細胞ならびにBリンパ球(B細胞)およびTリンパ球(T細胞)を含む細胞の相互作用の結果生じる。
【0006】
免疫反応能力の最も広く使用されている局面の1つは、モノクローナル抗体の産生である。1970年代中頃におけるモノクローナル抗体(Mab)技術の到来は、治療用および診断用の新しい有用なツールをもたらした。そして、所定の抗原部位に対する結合能力を有し、種々の免疫エフェクター機能を有する、無限の量の均一な抗体を研究者および医師が初めて利用できるようになった。現在、モノクローナル抗体の作製法は、当技術分野で周知である。しかしながら、特異的な抗体が必要なことは変わらない。要するに、カスタマイズされた抗体を作製する能力が求められている。このニーズは、病原体が一般に使用されている抗生物質に対する耐性を獲得した感染症と闘う領域で特に大きい。加えて、感染病原体以外の原因によって生じる病的条件に対応するための抗生物質も求められている。
【0007】
アルツハイマー病(AD)は、脳内におけるタンパク質の異常な蓄積によって引き起こされるアミロイドプラークの蓄積に起因すると主に考えられている神経疾患である。科学的な証拠は、ADが、神経細胞死に至る、プラーク中のβアミロイドタンパク質の産生または蓄積の増加に起因することを示している。そして機能上重要な脳領域における神経細胞の喪失は、神経伝達物質の減少と記憶障害を引き起こす。プラークの蓄積に主に関与するタンパク質には、アミロイド前駆体タンパク質(APP)や2種類のプレセニリン(プレセニリンIおよびプレセニリンII)などがある。APPの分解は、プラーク中で凝集する傾向を強める可能性が高い。アミロイドプラークの形成を標的として、これを散らすことが可能な特異的抗体が求められている。
【0008】
ADの症状は緩やかに発現し、また初期の症状は、軽度の健忘症に留まる可能性がある。この段階では患者は、最近の出来事、行動、家族や物の名前を忘れる場合があり、また算数の簡単な問題を解けなくなることがある。疾患の進行に伴い、症状は容易に目に付くようになり、AD患者または患者の家族が医療の助けを求めるほど重度となる。ADの中期の症状には、身繕いなどの簡単な課題の方法を忘れることなどが含まれ、また発話、理解、読字、または書字に問題が生じる。後期のAD患者は、不安を覚えるようになったり攻撃的になったりする場合があり、家を出て徘徊する恐れがあり、最終的には全面看護が必要となる可能性がある。
【0009】
現在、ADを診断する唯一の明瞭な方法は、患者の死後の剖検における脳組織中のプラークおよび原繊維のもつれ(tangle)を同定することである。したがって医師は、患者が生存している間は、「ADの疑いがある(possible)」、または「ほぼ確実な(probable)AD」という診断を下せるに過ぎない。現在の方法では、医師は、「ほぼ確実な」ADの診断用の複数のツールを用いて、最大90パーセントでADを正しく診断することができる。医師は、患者の全般的健康状態、医療歴、および過去の日常活動上で覚えた問題に関する質問を行う。記憶、問題解決、注意、計算、および言語に関する行動テストによって、認知障害に関する情報が得られ、また血液、尿、または脊髄液の検査などの医学的検査、および脳スキャンによって、さらに詳細な情報が得られる場合がある。
【0010】
ADの管理には、薬物を使用する治療、および薬物を使用しない治療がある。同疾患の基礎過程を変化させること(進行の逆転または遅延)を目的とした治療は、これまでほとんど成功していない。コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)などの神経細胞の化学メッセンジャー(神経伝達物質)の欠損(欠陥)、または機能不全を回復させる薬剤は症状を改善することがわかっている。薬物は、ADの精神症状に対処するためにも利用される。
【0011】
タクリン(Tacrine)やリバスチグミン(Rivastigmine)などのコリンエステラーゼ阻害剤は現在、ADの治療に関してFDAによって承認されている唯一の薬剤群である。これらの薬剤は、脳内の化学的な神経伝達の欠損または機能不全を回復させる薬物である。ChEIは、酵素による神経伝達物質の分解を妨げることで、脳内における神経シグナルの伝達に利用されうる化学メッセンジャーの量を増やす。
【0012】
アルツハイマー病の初期および中期の一部の患者の場合、薬剤タクリン(COGNEX(登録商標)、Morris Plains, NJ)、ドネペジル(ARICEPT(登録商標)、Tokyo, JP)、リバスチグミン(EXELON(登録商標)、East Hanover, NJ)、またはガランタミン(REMINYL(登録商標), New Brunswick, NJ)が、一部の症状が悪化するのを一定の期間防ぐのに役立つ可能性がある。他の薬剤、メマンチン(NAMENDA(登録商標), New York, NY)は中程度〜重度のADの治療に関して承認されている。また一部の薬剤は、不眠、激越、徘徊、不安、および抑うつなどの、ADの行動関連の症状の管理に役立つ可能性がある。これらの症状を治療することで、患者は気分が落ち着き、また介護者にとっては負担が和らぐことになる。しかし残念なことに、この薬剤群が一貫してプラセボより有効であることを示す治療上の進歩は大きいものの、同疾患は治療に関わらず進行を続け、また精神機能に対する平均的な効果はわずかに過ぎない。またChEIには、消化器の機能不全、肝毒性、および体重減少などの副作用もある。
【0013】
ADに見られる脳の異常に関する理解が進むことは、同疾患の経過および進行の変化に、より大きな焦点を当てた新たな治療標的に関する枠組みをもたらす上で望ましい。抗炎症剤を含む多くの化合物に関する研究は活発に行われている。ロフェコキシブ(rofecoxib)やセレコキシブ(celecoxib)などのシクロオキシゲナーゼ(COX-2)特異的阻害剤を用いた臨床試験も進行中である。
【0014】
新薬を開発する際に考慮すべき別の要素が、対象患者にとっての使用の容易さである。経口的な薬剤輸送(特に錠剤、カプセル剤、および軟ゲル)は患者の利便性に叶うことから、使用されている全投与形態の70%を占める。薬剤開発者の間では、患者が、注射や他の侵襲性の高い薬剤投与様式より経口輸送を好むということで意見が一致している。投与間隔の短い(すなわち1日1回、または持続的放出による投与を行う)製剤も好ましい。経口用剤型による抗生物質の投与が容易であることは、治療期間中における患者の服薬順守率を高めることになる。
【0015】
求められるのは、特異性が高くて有効性が高い抗体を生じる有効な方法および組成物である。このような抗体は、アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、またはP170糖タンパク質などの、種々の抗原上に存在する特異的エピトープを認識することが好ましい。
【0016】
したがって、さらに求められるのは、アルツハイマー病などのアミロイドプラーク形成が関連する神経疾患に伴う合併症を解決するための有効な組成物および方法である。特に求められているのは、βシート構造で存在するアミロイドペプチドの繊維の凝集と関連したプラーク形成などの、同疾患の生理学的徴候に対抗可能な特異的抗体である。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、特異性が高くて有効な抗体を引き起こす新しい方法および組成物を含む。現在利用可能な産物とは異なり、本発明は、種々の抗原の特異的エピトープを認識する能力を有する抗体をもたらす固有の方法および組成物を提供する。
【0018】
本発明は、アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、またはP170糖タンパク質のエピトープなどのエピトープを特異的に認識する抗体の産生を可能とする組成物に関して、従来から切実に要望されているニーズを満たす。
【0019】
本発明は、曝露の昂進、そして究極的には立体構造に高度の感受性を示す抗体をもたらす固有の抗原提示を含む。本発明の1つの態様は、PEG化(pegylated)アミノ酸(PEG化リジンなど)を、各末端に1つずつ共有結合で結合されたペプチド配列を含む超分子抗原性コンストラクトを含む組成物を含む。
【0020】
したがって、本発明の目的の1つは、特異的かつ有効な免疫反応を引き起こすための方法および組成物を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、疾患の発生または拡大を治療および予防するための方法および組成物を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、活性のある細胞性応答および液性応答を宿主で引き起こすことによって疾患を予防する、治療する、または緩和するための方法および組成物を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、神経疾患の発症率を減じ、また発症を予防するための方法および組成物を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、過増殖性疾患の発生を減じ、また予防するための方法および組成物を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、神経疾患に対する治療目的の免疫学的介入の方法および組成物を提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、特定の感染微生物に対するワクチンをヒトまたは動物に接種するための方法および組成物を提供することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、特定の感染微生物に対してヒトまたは動物を受動的に免疫化するための方法および組成物を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、抗原性を有していて、またヒトまたは動物における病的徴候に対する免疫反応を引き起こす超分子コンストラクト組成物を提供することである。
【0029】
本発明のさらに他の目的は、抗原性を有していて、またヒトまたは動物における病的徴候に対する免疫反応を引き起こす超分子コンストラクト組成物を提供することであって、このような病的徴候は、アミロイドプラークの異常などを含む。
【0030】
本発明の別の目的は、抗原性を有していて、またヒトまたは動物における感染微生物に対する免疫反応を引き起こす超分子コンストラクト組成物を提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、組成物によって免疫化されるヒトまたは動物において非免疫原性の超分子抗原性コンストラクトを含むワクチン組成物、および担体を提供することであって、抗原ペプチドは、ヒトまたは動物への投与時に、結果として生じる抗体が高度に特異的であり、また立体構造に高度の感受性を示すように担体表面に特異的に提示される。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、疾患および障害に対する個体の応答を高める修飾型の抗原部分を含む方法および組成物を提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、超分子抗原性コンストラクトを含むワクチン組成物を提供することであって、ペプチドは抗原作用を増強するために修飾されている。
【0034】
本発明のさらに他の目的は、抗原作用を増強するために修飾されたペプチドを含む超分子抗原性コンストラクトを含むワクチン組成物を提供することであって、このようなペプチドは、(ポリエチレングリコールまたは修飾型ポリエチレングリコールを使用する)PEG化によって修飾されているか、またはポリアミノ酸(例えば、ポリグリシン、ポリヒスチジン)、ポリサッカライド(例えば、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン)、合成ポリマー(ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル)、または共重合体(ポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド)などを使用する他の方法で修飾されている。
【0035】
本発明のさらに別の目的は、抗原ペプチド用の担体が修飾型リポソームを含む免疫原性組成物を提供することである。
【0036】
本発明の別の目的は、抗原ペプチド用の担体がコロイド状金属を含む免疫原性組成物を提供することである。
【0037】
本発明の別の目的は、抗原ペプチド用の担体がバキュロウイルス由来の小胞を含む、免疫原性組成物を提供することである。
【0038】
本発明のさらに別の目的は、免疫反応を促進するために、薬学的に許容可能なアジュバントと組み合わせた免疫原性組成物を提供することである。
【0039】
本発明のさらに別の目的は、筋肉内に、静脈内に、経皮的に、経口的に、または皮下に投与可能な免疫原性組成物を提供することである。
【0040】
本発明のこれらの、および他の目的、特徴、および利点は、開示された態様に関する以下の詳細な説明、および添付の特許請求の範囲を参照することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】化学的に修飾されたβアミロイド抗原を示す模式図。
【図2】化学的に修飾されたアミロイド抗原を使用して再構成されたリポソームを示す例示的な模式図。
【図3】複数のP170抗原を示す模式図。
【図4】ラット海馬ニューロンの一次培養物の生存能に対する影響の検討に使用される、PrPcの異なるセグメントに相同な合成ペプチド。
【図5】Aβ配列4〜11(SEQ ID NO: 2)、1〜16(SEQ ID NO: 5)、22〜35(SEQ ID NO: 3)、および29〜40(SEQ ID NO: 4)に由来するペプチドの模式図。
【図6】内部にHis残基またはLys残基を含む場合もあれば含まない場合もある、ペプチド配列に由来する抗原に関する、一般的な合成法を示す模式図。
【図7】PEG化されたアミロイド/リポソーム/脂質Aで免疫化されたC57BL/6マウスに由来する、1:5000の倍率で希釈した血清を使用して実施されたELISAの結果。PEG-Aβ1-16(--黒色)、PEG-Aβ1-16+ミョウバン(- -灰色)、PEG-Aβ4-11(−−灰色)。1種類の抗原につき10匹のマウスの値の平均。Aβ1-16+ミョウバンについては2匹のマウスで得られた値の平均。対照として、12匹のパルミトイル化Aβ1-16(--明るい灰色)を注射した個体の平均値を示す(2002年に刊行)。
【図8】PEG-Aβ4-11で免疫化されたC57BL/6マウスの血清によるAβ1-42繊維の可溶化を評価するアッセイ法の結果。チオフラビンの蛍光発光強度は、溶液中の原繊維アミロイドの量と相関する。37℃、PBS中、pH=7.1で7日間におけるAβ1-42繊維の形成。血清は7日目に添加し、24時間インキュベートした。バー1〜9は、ワクチン接種個体の血清を使用して行った可溶化実験を示す。4つの試料の平均+標準偏差を示す。
【図9】パルミトイル化(palm.-)Aβ1-16免疫化C57BL/6マウスに由来するハイブリドーマクローンの上清使用時のAβ1-42繊維の可溶化アッセイ法の結果。37℃、PBS中、pH=7.1で7日間におけるAβ1-42繊維の形成。上清を24時間インキュベートした。sfr培地=FCSを含まない培地。ハイブリドーマクローンを無血清培地中で1日間、成長させた。4つの試料の平均+SDを示す。
【図10】10Tyrおよび12Valが標識されたアミロイドβペプチドから作製されたアミロイド繊維の13C-13C相関スペクトル。
【図11】Aβ-ペプチド繊維(A)、および抗体との12日間のインキュベーション後(B)の13C-13C相関スペクトルの投影図。
【図12】アミロイドβ繊維に対するモノクローナル抗体の作用を評価するためのNMRスペクトルデータ。
【図13】PEG化抗原とパルミトイル化抗原の比較データを示すグラフ。
【図14】PEG化βアミロイド(1-16、4-11、22-35、1-15)とパルミトイル化βアミロイド(1-16)との比較データを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本発明は、本明細書に含まれる個々の態様に関する以下の詳細な説明を参照することで、さらに容易に理解されるであろう。本発明は、本発明の特定の態様の個々の詳細に関して説明するが、その詳細は、本発明の範囲に鑑みて制限するものとして見なされるべきではない。米国仮出願番号第60/449,573号、および2004年2月20日に出願された米国特許出願第10/783,975号を含む、本明細書で言及した参考文献の内容は、参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0043】
発明者らは本明細書で、立体構造に感受性を示す抗体をもたらす、特異性の高い、強い免疫反応を引き起こす方法について報告する。このような抗体は、アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、P170糖タンパク質を含むが、これらに限定されない、種々の抗原上の特異的エピトープを認識する。具体的には、発明者らは本明細書で、改善された免疫原性反応を引き起こすための、アミロイドペプチドなどのペプチドを修飾する概念について説明する。ある態様では、ペプチドはPEG化によって修飾される。
【0044】
定義
本明細書で用いる、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という表現は互換的に用いられ、また、ペプチド結合で連結された2残基またはこれ以上のアミノ酸を含む生体分子を意味する。
【0045】
「ペプチド」という表現は、アミノ酸のα炭素が、1つのアミノ酸のα炭素のカルボキシル基と、別のアミノ酸のα炭素のアミノ基の間の縮合反応によって形成されたペプチド結合を介して連結されたアミノ酸(典型的にはL-アミノ酸)の鎖を意味する。鎖の一方の端(アミノ末端)の末端のアミノ酸は遊離のアミノ基を有し、また、鎖のもう一方の端(カルボキシ末端)の末端のアミノ酸は遊離のカルボキシル基を有する。したがって、「アミノ末端」(N末端と略記)という表現は、ペプチドのアミノ末端におけるアミノ酸上の遊離のαアミノ基を意味するほか、ペプチド内部の他の任意の位置に存在するアミノ酸のαアミノ基(ペプチド結合に関与する場合はイミノ基)を意味する。同様に、「カルボキシ末端」(C末端と略記)という表現は、ペプチドのカルボキシ末端におけるアミノ酸上の遊離のカルボキシル基、またはペプチド内部の他の任意の位置におけるアミノ酸のカルボキシル基を意味する。
【0046】
典型的には、ペプチドを構成するアミノ酸は順番に番号がつけられる(アミノ末端から始めて、ペプチドのカルボキシ末端方向へ向かって数値が増えてゆく)。したがって、1つのアミノ酸が、別のアミノ酸に「続く」と表現される場合、そのアミノ酸は、先行するアミノ酸よりも、対象ペプチドのカルボキシ末端に近い側に位置する。
【0047】
本明細書で使用される「残基」という表現は、ペプチド中にアミド結合によって組み入れられたアミノ酸を意味する。したがって、アミノ酸は天然のアミノ酸の場合があるほか、特に明記しない限りにおいて、天然のアミノ酸と同等に機能する、天然のアミノ酸の既知の類似体(アミノ酸模倣体)を含む場合がある。またアミド結合模倣体は、当業者に周知のペプチド骨格の修飾を含む。
【0048】
「本質的に〜からなる」という表現は本明細書で、この表現で表されるペプチドの本質的な特性を実質的に変化させる可能性がある任意の要素を除外するように用いられる。したがって、「本質的に〜からなる」ペプチドという記述は、対象ペプチドの生物学的活性を実質的に変化させる可能性のある、任意のアミノ酸の置換、付加、または欠失を含まない。
【0049】
さらに当業者であれば、上述したように、コード配列中の単一アミノ酸、または低パーセンテージで含まれるアミノ酸(典型的には5%未満、より典型的には1%未満)を変化させる、付加する、または欠失する個々の置換、欠失、または付加が、こうした変化がアミノ酸の、化学的に類似したアミノ酸による置換を招く保存的に修飾された異型であることを理解すると考えられる。機能的に同等のアミノ酸をもたらす保存的置換の表は、当技術分野で周知である。以下に示す6つのグループはそれぞれ、相互に保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0050】
「単離された」、または「生物学的に純粋な」という表現は、天然の状態であれば通常伴う成分を実質的もしくは本質的に含まない材料を意味する。したがって、本明細書に記載されたペプチドは、インサイチュー環境では通常であれば伴う材料を含まない。典型的には、本明細書に記載された、単離された、免疫原性を有するペプチドは、銀染色後のゲル上のバンドの強度によって比較した時に、純度が少なくとも約80%であり、通常は純度が少なくとも約90%であり、また好ましくは、純度が少なくとも約95%である。
【0051】
タンパク質の純度または均一性は、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動と、これに続く染色による可視化などの、当技術分野で周知の複数の方法で明らかにすることができる。目的によっては高解像度が必要であり、HPLCまたは類似の精製法が用いられる。
【0052】
免疫原性ペプチドの長さが比較的短い(約50アミノ酸未満の)場合、ペプチドは標準的な化学的ペプチド合成法で合成されることが多い。
【0053】
対象配列のC末端のアミノ酸が不溶性の支持体に結合された後に、配列の残りのアミノ酸が連続的に追加されてゆく固相合成は、本明細書に記載された免疫原性ペプチドの好ましい化学合成法である。固相合成法は当業者に周知である。
【0054】
または、本明細書に記載された免疫原性ペプチドは組換え核酸法で合成される。一般に、この方法は、対象ペプチドをコードする核酸配列を作製する段階、同核酸を発現カセット中で特定のプロモーターの制御下に配置する段階、ペプチドを宿主で発現させる段階、発現されたペプチドまたはポリペプチドを単離する段階を含み、また必要ならばペプチドを再生させる段階を含む。このような手順について、当業者を十分導くことができる手法は、文献に記載されている。
【0055】
一旦発現された組換えペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿法、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などの標準的な手順で精製することができる。均一性が約50〜95%の実質的に純粋な組成物が望ましく、また治療用の薬剤として使用するのであれば80〜95%またはこれ以上の均一性が最も望ましい。
【0056】
当業者であれば、化学合成、生物学的発現、または精製の後には、免疫原性ペプチドが、構成成分のペプチドの天然の構造とは実質的に異なる構造を有するようになることを理解すると思われる。このような場合、抗増殖性ペプチドを変性させて還元した後に、ペプチドを好ましい構造に再び折りたたませることが必要となることがある。タンパク質を還元および変性させ、再折りたたみを誘導する方法は当業者に周知である。
【0057】
精製後のタンパク質の抗原性は例えば、免疫血清との反応、またはタンパク質そのものに対して生じた抗血清との反応を示すことで確認することができる。
【0058】
本明細書で用いる「1つの("a", "an")」、および「その("the")」という表現は、「1つもしくは複数("one or more")」を意味する表現として定義され、また文脈が不適切にならない限りにおいて複数の対象を含む。
【0059】
本明細書で用いる「〜を検出する」もしくは「検出された」という表現は、免疫化学的方法や組織学的方法などの、生物学的分子の既知の検出法を使用することを意味し、また検討対象の生体分子の存在または濃度を、質的もしくは量的に判定・決定することを意味する。
【0060】
「単離された」という表現は、天然の状態では存在する成分の少なくとも一部を含まない生物学的分子を意味する。
【0061】
本明細書で用いる「抗体」または「抗体群」という表現は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、サル化抗体、およびヒト化抗体、ならびにFab免疫グロブリン発現ライブラリーの産物を含むFab断片を含む。
【0062】
「抗原」という表現は、哺乳類で免疫反応を引き起こすことが可能な分子の全体または断片を意味する。この表現は、免疫原、および抗原性に関与する領域または抗原決定基を含む。
【0063】
本明細書で用いる「可溶性である」という表現は、水溶液に部分的または完全に溶解することを意味する。
【0064】
また本明細書で用いる「免疫原性を有する」という表現は、免疫原性物質に対する、またヒトもしくは動物における免疫反応に寄与する抗体、T細胞、および他の反応性免疫細胞の産生を誘導または促進する物質を意味する。
【0065】
免疫反応が生じるのは、個体が、投与された本発明の免疫原性組成物に対する、十分な抗体、T細胞、および他の反応性免疫細胞を産生する場合であり、この結果、治療対象の疾患が緩和されたり軽減されたりする。
【0066】
本明細書で用いる「担体」という表現は、抗原ペプチドまたは超分子コンストラクトを組み入れること、または結合させることが可能で、その結果、抗原ペプチドもしくは同ペプチドの一部分を、ヒトもしくは動物の免疫系に提示または曝露することが可能な構造体を意味する。「担体」という表現は、抗原ペプチドを含む超分子抗原性コンストラクト組成物を輸送機構によって所望の部位へ輸送可能な輸送法も含む。このような輸送系の一例では、金コロイドなどのコロイド状金属を使用する。
【0067】
さらに、「担体」という表現は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、および他のアジュバントを含むが、これらに限定されない、当業者に周知の輸送機構も含む。本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物が、既知および先行技術のワクチンに使用されているアジュバント、保存剤、希釈剤、乳化剤、安定剤、ならびに他の成分をさらに含む場合があることも理解される。当技術分野で周知の任意のアジュバント系を、本発明の組成物に使用することができる。このようなアジュバントには、フロインドの不完全アジュバント、フロインドの完全アジュバント、多分散型のβ-(1,4)結合アセチル化マンナン(「Acemannan」)、TITERMAX(登録商標)(CytRx社のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体アジュバント)、Chiron社の修飾脂質アジュバント、Cambridge Biotech社のサポニン誘導体アジュバント、百日咳菌(Bordetella pertussis)の死菌、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)、硫酸デキストランなどの大型ポリマー陰イオン、およびミョウバン、アルミニウム水酸化物、またはリン酸アルミニウムなどの無機ゲルがあるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物に使用可能な担体タンパク質は、マルトース結合タンパク質「MBP」;ウシ血清アルブミン「BSA」;キーホールリンペットヘモシアニン「KLH」;オボアルブミン;フラジェリン;サイログロブリン;任意の種の血清アルブミン;任意の種のガンマグロブリン;同系細胞;Ia抗原を有する同系細胞;ならびにD-アミノ酸および/またはL-アミノ酸のポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0069】
さらに「有効量」という表現は、ヒトまたは動物に投与すると免疫反応を引き起こす抗原性/免疫原性組成物の量を意味する。当業者であれば、常用の手順で有効量を容易に決定できる。
【0070】
例えば、超分子抗原性コンストラクト組成物は、患者あたり約1.0μg〜10.0 mgの量で非経口的または経口的に投与することができるが、この範囲は、制限する意図はない。免疫反応を引き起こすのに必要とされる組成物の実際の量は、投与される組成物の免疫原性、および個々の免疫反応に応じて、個々の患者間で変動する。したがって、個体に投与される特定の量は、常用の実験法によって、また当業者の訓練および経験の程度に基づいて決定される。
【0071】
本発明の組成物は、抗原ペプチドに対する抗体を産生させるために使用される。結果として得られる抗体を個体に投与することで、アルツハイマー病、多剤耐性癌、またはプリオン病を含むが、これらに限定されない、種々の疾患または障害に対して受動的に免疫化される。
【0072】
本発明の免疫原性組成物は、リポソームを、精製された抗原ペプチド、もしくは部分的に精製された抗原ペプチド、または修飾された抗原ペプチドの存在下で再構成することで作製されたリポソームを含む場合がある。またペプチド断片をリポソーム中に再構成することができる。本発明は、抗原性を増強するために修飾された抗原ペプチド断片も含む。例えば、抗原部分およびアジュバントを、対象ペプチドと結合させたり混合したりすることができる。抗原部分およびアジュバントの例には、親油性ムラミルジペプチド誘導体、非イオン性ブロックポリマー、水酸化アルミニウム、またはリン酸アルミニウムのアジュバント、およびこれらの混合物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明はさらに、担体の疎水性の脂質二重層への挿入を容易にする、パルミチン酸などの疎水性部分で修飾された抗原ペプチドを含む。本発明の疎水性部分は、脂肪酸の場合があるほか、脂肪酸の炭素骨格が少なくとも10個の炭素原子を含むトリグリセリドおよびリン脂質の場合がある。最も好ましいのは、少なくとも約14個、最大約24個、の炭素原子を含む炭素骨格を含む脂肪酸を有する親油性部分である。最も好ましい疎水性部分は、少なくとも14個の炭素原子の炭素骨格を有する。疎水性部分の例には、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリル酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などがあるが、これらに限定されない。最も好ましい疎水性部分はパルミチン酸である。
【0074】
本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物は、感染微生物などの抗原性微生物に対する免疫を誘導するためにヒトまたは動物に投与される。免疫化されたヒトまたは動物は、感染微生物に対する循環性の抗体を生じることによって、疾患の発症・進行を促す能力を減じたり不活性化したりする。
【0075】
また、本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物を使用して、例えばアルツハイマー病を含む、種々の疾患に特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のパネルが作られる。抗体は、当業者に周知の方法で作られる。
【0076】
本発明の組成物は、任意の適切な手段、好ましくは注射、でヒトまたは動物に投与される。例えば、リポソーム中に再構成された修飾型抗原ペプチドは皮下注射によって投与される。身体の内部で産生されたか、または外部供給源から提供されたかに関わらず、循環性の抗体は抗原に結合し、疾患の発症・進行を促す能力を減じたり不活性化したりする。
【0077】
本発明の組成物に使用可能なリポソームは、当業者に周知のリポソームを含む。リポソームの作製に有用な任意の標準的な脂質を使用することができる。標準的な二重層および多層のリポソームを使用して、本発明の組成物を作製することができる。当業者に周知のリポソームを作製する任意の方法を用いることができるが、最も好ましいリポソームは、参照として本明細書に組み入れられる文献(Alving et al., Infect. Immun. 60: 2438-2444, 1992)に記載された方法で作られる。リポソームは、任意でアジュバントを含む場合がある。好ましいアジュバントは、モノホスホリルまたはジホスホリル脂質Aなどの無毒化された脂質Aである。
【0078】
小胞がリポソームの場合、抗原ペプチドは一般に、リポソーム形成時にリポソーム膜内に挿入される疎水性の尾部を有する。加えて抗原ペプチドは、リポソーム内に挿入可能とするために、疎水性の尾部を含むように修飾可能である。例えば抗原ペプチドは、形成済みのリポソームの表面に、化学結合または電気的挿入(electroinsertion)によって露出させることができる。
【0079】
本発明で提供される抗体は、アルツハイマー病、多剤耐性癌、およびプリオン病などの、種々の疾患の存在を示す感染微生物または抗原ペプチドに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。
【0080】
モノクローナル抗体は、マウスやウサギなどの動物を本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物で免疫化することで調製される。免疫化された動物から脾臓細胞を切除し、感作された脾臓細胞と、マウスのSP2/O骨髄腫細胞(ATCC, Manassas, VA)などの骨髄腫細胞系列を融合させることでハイブリドーマを得る。細胞の融合は、ポリエチレングリコールを添加することで誘導される。ハイブリドーマは、細胞をヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT)を含む選択培地にプレーティングすることで化学的に選択される。
【0081】
次に、特定の疾患または障害に対するモノクローナル抗体の産生能力に関して、ハイブリドーマのスクリーニングを行う。対象抗体を産生するハイブリドーマをクローン化し、増殖させ、凍結保存して将来の抗体産生用とする。好ましいハイブリドーマは、IgGアイソタイプ、より好ましくはIgG1アイソタイプ、を有するモノクローナル抗体を産生する。
【0082】
ポリクローナル抗体は、上述の本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物でマウスやウサギなどの動物を免疫化することで調製される。次に個体から血清を採取し、血清中の抗体を対象に、標的物質に対する結合反応性に関するスクリーニングを行う。
【0083】
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれか、またはこの両方を、後述する生物学的試料中の標的物質の同定用の検出可能な標識で直接標識することができる。免疫アッセイ法で使用される標識は一般に当業者に知られており、酵素、放射性同位元素、および蛍光物質、発光物質、および金コロイドやラテックスビーズなどの着色粒子を含む色素産生物質を含む。抗体を固相に結合させることで、抗体-抗原複合体と、免疫アッセイ法における非反応成分の分離を容易にすることもできる。例示的な固相物質には、マイクロタイタープレート、試験管のほか、磁気をもつ、プラスチック製の、またはガラス製のビーズおよびスライドなどが挙げられるが、これらに限定されない。抗体を固相に結合させる方法は当業者に周知である。
【0084】
あるいは抗体を、プロテインAもしくはプロテインG、または第2の抗体などの免疫グロブリンに対する親和性を有する標識物質と反応させることで間接的に標識することができる。抗体に第2の物質を結合させることで、抗体に結合させた第2の物質に親和性を有する、標識された第3の物質で検出することができる。例えば、抗体にビオチンを結合させ、抗体-ビオチンのコンジュゲートを、標識されたアビジンまたはストレプトアビジンを使用して検出することができる。同様に、抗体にハプテンを結合させ、抗体-ハプテンコンジュゲートを、標識された抗ハプテン抗体を使用して検出することができる。抗体を標識してコンジュゲートを検討する、以上の方法および他の方法は当業者に周知である。
【0085】
好ましい態様では、抗体を、検出可能な標識で標識された第2の抗体との反応性によって間接的に標識する。第2の抗体は好ましくは、モノクローナル抗体が由来する動物の抗体に結合する抗体である。言い換えると、仮にモノクローナル抗体がマウスの抗体であれば、標識された第2の抗体は抗マウス抗体である。後述するアッセイ法で使用されるモノクローナル抗体に関しては、このような標識は好ましくは、抗体でコーティングされたビーズ(特に磁気ビーズ)である。本明細書に記載された免疫アッセイ法で使用されるポリクローナル抗体の場合、標識は好ましくは、放射性物質、蛍光物質、または電気化学発光物質などの検出可能な分子である。
【0086】
製剤
免疫原性を有するタンパク質もしくはペプチドの全体もしくは活性部分を含む、天然もしくは合成のタンパク質、ペプチド、またはタンパク質断片は、薬学的に許容可能な担体中などの生理学的に許容される製剤中に、既知の手法で調製できる。例えば、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質断片と薬学的に許容可能な賦形剤とを混合することで、治療用組成物が得られる。
【0087】
あるいは、免疫原性ペプチドの全体もしくは活性部分を含むタンパク質、ペプチド、またはタンパク質断片をコードする遺伝子を、遺伝子治療による連続投与用に、ベクターを使用して輸送することができる。このようなベクターは、腫瘍などの標的部位に対する特異性を有する輸送体とともに投与することができる。
【0088】
本発明の組成物は、固体、液体、またはエアロゾルの状態で投与することができる。固体組成物の例には、丸剤、クリーム、および埋め込み型の用量単位などがある。丸剤は経口的に投与することができる。治療用のクリームは局所的に塗布することができる。埋め込み型の用量単位は、局所的に、例えば腫瘍部位に、投与可能なほか、治療用組成物の全身的な放出を目的として、例えば皮下に埋め込むことができる。液体組成物の例には、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内への注射に適した製剤、ならびに局所投与用および眼内投与用の製剤などがある。エアロゾル製剤の例には、肺への投与を目的とした吸入用製剤などがある。
【0089】
本発明の組成物は、標準的な投与経路で投与することができる。一般に組成物は、局所、経口、直腸内、鼻内、または非経口的な(例えば、静脈内、皮下、もしくは筋肉内)の経路で投与することができる。また組成物は、望ましい輸送部位(例えば腫瘍部位)の近傍に埋め込まれるポリマーである生分解性ポリマーなどの徐放性基剤中に組み入れることができる。本発明の方法は、単回投与、所定の時点における反復投与、および所定の期間における持続的投与を含む。
【0090】
本明細書で用いる徐放性基剤は、酵素もしくは酸/塩基による加水分解によって、または溶解によって分解する材料(通常はポリマー)から作られる基剤である。このような基剤は、身体内に挿入されると、酵素および体液の働きによって作用する。徐放性基剤は望ましくは、リポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドコ-グリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、硫酸コンドロイチン、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、ポリサッカライド、核酸、ポリアミノ酸、アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンなど)、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン、およびシリコーンなどの、生体適合性を有する材料から選択される。好ましい生分解性基剤は、ポリラクチド、ポリグリコリド、またはポリラクチドコ-グリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)のいずれか1種類の基剤である。
【0091】
組成物の用量は、治療される病気、使用する組成物の種類、および患者の体重や状態などの他の臨床的要素、ならびに投与経路によって決定される。
【0092】
組成物は、他の組成物と組み合わせて、また疾患を治療するための手順で投与することができる。例えば、望ましくない細胞増殖を、組成物の投与を組み合わせた外科手術、放射線療法、または化学療法による従来の手順で治療することが可能であり、また追加用量の組成物を、続けて患者に投与することで、任意の残存する望ましくない細胞増殖の進行を安定化および阻害することができる。
【0093】
超分子抗原性コンストラクト
本発明の超分子抗原性コンストラクトは一般に、抗原作用を増強するために修飾されたペプチドを含み、このようなペプチドは、(ポリエチレングリコールもしくは修飾型ポリエチレングリコールを使用する)PEG化によって修飾されるか、またはパルミチン酸、ポリアミノ酸(例えば、ポリグリシン、ポリヒスチジン)、ポリサッカライド(例えば、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン)、合成ポリマー(ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル)、または共重合体(例えば、ポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド)などによるような他の方法で修飾される。
【0094】
ある態様では、本発明の超分子抗原性コンストラクトは、PEG化されたリジンが各末端に1残基ずつ共有結合で結合されたペプチド配列を含む。PEG(ポリエチレングリコール)鎖の長さは8〜150000の間で変動しうる。PEGの自由端は、ホスファチジルエタノールアミンの分子に共有結合で結合されている(脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸など、またはこれらの組み合わせの場合がある)。この超分子構造は、リン脂質およびコレステロール(ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、コレステロール)を、種々のモル比で含むリポソームにおいて再構成することができる。他のリン脂質を使用することができる。脂質Aは、約40μg/pmoleリン脂質の濃度で使用される。
【0095】
ある態様では、超分子抗原性コンストラクトは、βアミロイドのアミノ酸配列を有するペプチドを含む。このようなペプチドは、アミロイドベータペプチドの全体、およびその活性断片を含む場合もあるほか、これらに対応する場合がある。加えて、本発明に有用なペプチドは、Aβ4-11(SEQ ID NO: 2)、Aβ22-35(SEQ ID NO: 3)、およびAβ29-40(SEQ ID NO: 4)、およびAβ1-16(SEQ ID NO: 5)、ならびにそれらの活性断片をさらに含む。
【0096】
他の特定の態様では、超分子抗原性コンストラクトは、P170糖タンパク質の細胞外ループ1、4、および6を含むペプチド配列を含む。他の特定の態様では、超分子1抗原性コンストラクトは、プリオンタンパク質のアミノ酸配列109〜129位を含むペプチド配列を含む。
【0097】
本発明はさらに、リポソーム中に再構成された超分子構造体に対するモノクローナル抗体も含み、例えばペプチド配列は、アミロイドタンパク質のアミノ酸配列を含む。加えて、ペプチド配列がP糖タンパク質(P170)の細胞外ループに由来する1つまたは複数のアミノ酸配列である超分子構造体に対するモノクローナル抗体も本発明に含まれる。
【0098】
ペプチド配列が、対象タンパク質から選択されるアミノ酸配列を含む、超分子構造体に対するモノクローナル抗体も本発明に含まれる。例えば具体的には、本発明は、リポソーム中に再構成された超分子構造に対するモノクローナル抗体を含み、ペプチド配列は、ヒトのアルツハイマー病のモデルであるトランスジェニックマウスで脳内出血を誘導しないβアミロイドタンパク質(4-10、または1-8、または8-16など)から選択されるアミノ酸配列である。本発明はさらに、抗原ペプチドの構造的特徴に感受性を示すモノクローナル抗体を含む。本発明の抗体を作製するための特定の手順、およびこのような抗体の特性解析に関する特定の情報については、以下の実施例で述べる。
【0099】
アミロイド
βアミロイドの7残基のアミノ酸配列:FRHDSGY(SEQ ID NO: 1)を合成した。1残基のリジンを、同配列の各末端に共有結合で結合させた(1)。このリジンは、上記配列への結合に先立ち、ポリエチレングリコールの鎖(PEG、n=8〜2000)に反応させた。一方の末端においてリジンに結合したポリエチレングリコール鎖は、以下に示すように、ジオレイル-ホスファチジルコリンエタノールアミン(または任意の脂肪酸-ホスファチジルコリン)の分子に共有結合で結合される(2)。
化学的に修飾されたβアミロイド抗原
【0100】
次に、化学的に修飾された抗原を、リン脂質およびコレステロールを含むリポソーム中に再構成する(3)。適切なリポソームの例には、DOPG、DOPEA、Chol.(脂質Aの濃度は40μg/μmoleリン脂質)などがあるが、これらに限定されない。化学的に修飾されたアミロイド抗原を使用して再構成されたリポソームを示す代表的な略図を図2に示す。
【0101】
本発明の超分子抗原性コンストラクトは、リポソーム中に再構成されたパルミトイル化抗原を上回る、非常に多くの利点を有する。第1に、長いPEG鎖(n=8〜5000)は、ペプチド配列の曝露および接触性(accessibility)を有意に促進する。抗原提示は改善され、また誘導された抗体の立体構造感受性は高められる。本発明の別の利点は、種々の立体構造中のペプチド配列を使用可能な点である。ペプチド配列とリポソーム表面間の距離が離れることは、リポソーム表面がペプチド配列と相互作用しないことを確実にし、このため、その構造におそらく影響を及ぼす。また、コンストラクトの抗原性は、リポソーム中に再構成されたパルミトイル化配列の抗原性より有意に高くなる。1:5000〜1:10000の間に含まれる抗体の高力価は、マウスで数週間以内に得られる。加えて、抗原に対する抗体の親和性は有意に高まる。アミロイド配列FRHDSGY(SEQ ID NO: 1)の場合、コンストラクトの腹腔内(ip)注射または静脈内(iv)注射によって誘導された抗体は、Aβ1-40繊維およびAβ1-42繊維を効率的に可溶化し、インビトロでPC12細胞を、Aβ1-42繊維およびAβ1-40繊維によって誘導されるアポトーシスおよび代謝阻害(MTT還元)から保護する。
【0102】
本発明の1つの態様では、アミロイドタンパク質のFRHDSGY(SEQ ID NO: 1)配列を使用するが、他の任意のアミロイドタンパク質の配列を代用することができる。ポリクローナル抗体に関する上記のインビトロ特性に加えて、上述のコンストラクトで免疫化されたマウスから得られたモノクローナル抗体は、ヒトのアルツハイマー病のモデルであるAPP[V717I] FVBトランスジェニックマウスにおいて生物学的活性を示す。これらのマウスには、有意なレベルの記憶回復および好奇心の喚起が観察される。このmAbは、免疫化されたトランスジェニックマウスで脳内出血を引き起こさない。
【0103】
以下の理論に拘泥するわけではないが、抗アミロイドmAb(本発明の方法で作製された1-16配列に対する抗体)の相互作用(主に繊維の可溶化およびCDスペクトル)を調べるインビトロ試験に基づいて、抗体は、αらせん構造中のβアミロイドに優先的に結合すると考えられる。このため、アミロイド繊維の可溶化作用を熱力学的用語で説明できると考えられる。抗体は、αらせんに優先的に結合することによって、αらせんアミロイドを以下の平衡式から解離させる:
Aβ(αらせん)←→Aβ(βシート)
この結果、より多くのβシート構造中にあるβアミロイドが、平衡を再び確立するために、可溶性のαらせん型に構造転移する。化学量論的な観察の結果は、mAbが構造の平衡に直接影響を及ぼすという仮説を支持している。
【0104】
Selkoe(2002)で詳述されているように、アルツハイマー病はシナプス不全として発現する。アルツハイマー病の初期段階では、記憶力低下は、このような不調に起因する可能性がある。例えば、可溶性のオリゴマーAβ1-40はシナプスをブロックする可能性があると考えられている。本発明の方法で作製されたモノクローナル抗体は可溶性のオリゴマーAβ1-40と結合する。抗体の存在下および非存在下におけるシナプスの導通性(conductivity)を測定することで、可溶性オリゴマーの存在下における抗体の対シナプス作用が決定される。
【0105】
本発明の発明者らは、超分子コンストラクト中に埋め込まれたAβ4-11(SEQ ID NO: 2)、Aβ22-35(SEQ ID NO: 3)、およびAβ29-40(SEQ ID NO: 4)などのエピトープについて得られた数種類のmAbの活性を調べた(図5参照)。配列4〜11は、パルミトイル化されたAβ1-16抗原(SEQ ID NO: 5)によって誘導されたmAbに対するエピトープであると判定された。
【0106】
本発明の方法により、新規で固有の修飾型ペプチド抗原を、mAbを得るために使用した:
【0107】
細胞外ドメインと膜貫通(TM)ドメインの境界は、阻害抗体(ハーセプチン・トラスツズマブ(Herceptin-Trastuzumab)抗HER2/neu抗体など)の標的になることがわかっており、また多数回貫通性(multispanning)のTMタンパク質中では、低分子量阻害剤の標的となるポケットが形成される(Dragic et al., 2000)。以下の理論に拘泥するわけではないが、この配列は、極性領域と疎水性領域間の転移を示すことから、Aβ1-42およびAβ1-40のオリゴマー形成能に重要な役割を果たしている可能性が高い(「細胞外配列」という表現は、Aβ1-42アミロイド生成性の配列中の細胞外配列を意味する表現として用いられる)。同配列は、Aβ1-42およびAβ1-40の配列の最初に2つのGXXXGXXXGモチーフを含む。GXXXGは、疎水性配列のオリゴマー形成の重要な誘導配列である(Russ and Engelmann, 2000)。興味深いことに、第1のGXXXGモチーフは細胞外に存在すると推定されており、続く2つは膜内に位置すると推定されている。以下の理論に拘泥するわけではないが、アナロジーによって、Aβペプチドのオリゴマー形成が、GXXXGモチーフによって特異的に引き起こされると考えることができる。
【0108】
Aβ1-42およびAβ1-40の疎水性配列は、疎水性配列の強いオリゴマー形成を誘導することがわかっているモチーフGXXXGXXXGGを含む(Eilers et al., 2002; Leeds et al., 2001; Lemmon et al., 1994; Russ and Engelmann, 1999; Russ and Engelmann, 2000; Smith and Bormann, 1995)。このモチーフは、治療法の第1の標的と見なされている。なぜなら、Aβ1-42およびAβ1-40の形成、オリゴマー形成、ならびに蓄積に至るあらゆる病原過程に重要な役割を担っているに違いないからである。APPの完全な配列に関しては、SREBPの切断(Ye et al., 2000)から明らかにされているように、同モチーフが、γ-セクレターゼによる処理を受けるために解きほぐされる必要がある下流配列を覆う可能性が高い。この配列がアミロイドのオリゴマー形成に重要な役割を果たすことは、これまで指摘されていない。本明細書に記載されたように、本発明の修飾型の超分子(好ましくはPEG化型)抗原の抗原性は高く、またこれによって誘導された抗体の親和性は高い。Aβ1-16に加えて、本発明の超分子コンストラクトは、ワクチンとして使用される際に、Aβ4-11(SEQ ID NO: 2)、Aβ22-35(SEQ ID NO: 3)、Aβ29-40(SEQ ID NO: 4)で表されるペプチドも含む。
【0109】
N-α位におけるペプチドのモノPEG化の方法は既知であり、また広く使用されている。中程度の長さのペプチドの内部、N末端、またはC末端のアミノ酸残基における部位特異的なモノPEG化は、固相法またはペプチドのグラフト化のいずれかで達成されることが報告されている。しかし、ジPEG化ペプチドを対象とする固相合成法は、立体障害によって大きく阻害されることが報告されており、またこのプロジェクトの開始の時点では、このような化合物に関する効率の良い合成法は報告されていなかった。また、N末端およびC末端において、PEGおよび脂質部分の両方によって部位特異的に誘導体化されたペプチドは、これまで報告されていない。本明細書で発明者らは、このようなAβペプチドコンジュゲートの新しい合成法について述べる。
【0110】
本発明の到達時において、いくつかの方法が試みられており、その大半は失敗に終わっている。例えば、合成に関する初期の取り組みでは、遠位アミン基を含む脂質-PEGコンジュゲートの、末端にグルタミン酸残基を含む、側鎖が保護されたペプチド(Aβ4-11、1-16、22-35、および29-40)に対する樹脂表面グラフト化が注目された。種々の反応条件で、カップリング産物は認められなかった。実施例2で説明するように、また図5に示すように、本明細書に記載された超分子コンストラクトは通常、Fmoc/tBuアミノ酸側鎖保護法で合成された。
【0111】
保護ペプチドを使用する、N末端およびC末端の脂質-PEG βアミロイド抗原の合成に関する、この新しい方法は、例えば多剤耐性タンパク質であるP糖タンパク質を含む種々のペプチド配列に応用可能である。
【0112】
本明細書に記載された抗原ペプチドの有効性を評価するために、PEG化抗原とパルミトイル化抗原の免疫原性をELISAアッセイ法および脱凝集アッセイ法で比較する実験を行った(実施例Bおよび図7参照)。ELISAデータから、リポソームPEG-Aβ1-16の免疫原性がパルミトイル化Aβ1-16よりも有意に大きいことがわかった。ミョウバン(ALUM)を添加しても、マウスにおけるPEG-Aβ1-16の免疫原性は高められなかった。PEG-Aβ4-11によって誘導される抗体反応は、PEG Aβ1-16の場合と比較して緩やかであった。
【0113】
したがって要約すると、本発明は、種々のアミロイド配列を露出した超分子抗原に対する新しいモノクローナル抗体を提供する。特に、2つのポリエチレングリコール(n=70)鎖を選択されたアミロイド配列に共有結合で結合させるための、独自の合成経路を考案した。PEG鎖の自由端には、ホスファチジルエタノールアミンを共有結合で結合させた。以下の理論に拘泥するわけではないが、その機能は、PEG化されたアミロイド配列をリポソームの二重層中に係留することであると考えられる。PEG化は本発明で、パルミトイル化と比較して抗原の免疫原性を高めることが明らかにされている。これらのモノクローナル抗体による、親和性テスト、エピトープの決定、構造転移の誘導については、発明者らの研究室で実施中である。本発明の固有の修飾法は、種々のペプチドに応用可能であり、また究極的には、アルツハイマー病、癌、および感染症を含むが、これらに限定されない疾患や障害に対する治療用製剤およびワクチンに使用することができる。
【0114】
本明細書に記載されているように、本発明の超分子抗原性コンストラクトは、抗原作用を増強するために修飾されたペプチドを含む。このようなペプチドは、(ポリエチレングリコールもしくは修飾型ポリエチレングリコールを使用する)PEG化によって修飾されているか、またはパルミチン酸、ポリアミノ酸(例えば、ポリグリシン、ポリヒスチジン)、ポリサッカライド(例えば、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン)、合成ポリマー(ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル)、もしくは共重合体(ポリ(メタクリル酸)およびN-2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド)などを使用する他の方法で修飾されている。アルツハイマー病などの神経疾患の治療的介入に関しては、本発明はアミロイドβペプチドの修飾を含む。
【0115】
癌細胞におけるMultidrug resistance 1(MDR 1)
癌細胞における多剤耐性1は、癌細胞から、種々の互いに無関係の化学療法剤を排出する膜ポンプであるP糖タンパク質(P170)の過剰発現によって生じる。
【0116】
リポソーム中に再構成された、P170のパルミトイル化された細胞外配列による免疫化によって、MDR1 L1210マウス白血病細胞における、インビトロにおける感受性のある表現型は回復した(3)。MDR癌細胞が接種され、化学療法的処置を受けた免疫化マウスの生存半減期が70%延長されることを示す結果はインビボでも得られている(Madoulet, Tosi, Nicolau et al., 2002、未発表の結果)。
【0117】
本発明の発明者らは本明細書で、本発明の方法で構築されたP170の細胞外配列1、4、および6を含む抗原について、MDRの表現型を、インビトロおよびインビボで感受性を示す表現型に大きく逆転させる抗体を誘導する効率が、はるかに高いことを明らかにする。
【0118】
本発明の方法によって、P170の細胞外ループ1、4、および6に対応するペプチドを合成した後に、PEG化されたリジンを、各末端に1つずつ結合させた。この結果、各末端において1つのジオレイルホスファチルエタノールアミン分子に共有結合で結合されたことになる。任意の脂肪酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、または多不飽和脂肪酸を使用することができる。
【0119】
以上の3種類のコンストラクトを、PC-PEA-PG-コレステロール(または他の任意のリン脂質やコレステロールの組み合わせ)を含むリポソーム中に再構成した。脂質Aは40μg/μmoleリン脂質の濃度で添加した。ペプチド:リン脂質の比は1:200とした(他の比率も使用できる)。
【0120】
ポリエチレングリコール鎖の長さは様々であり、長いペプチド配列ほど、鎖中に必要なPEG分子の数が増える。使用した3つの配列のPEG鎖長は10〜5000であった。他の鎖長を使用することが可能である。図3は、複数のP170抗原を示す代表的な模式図である。
【0121】
この抗原の腹腔内(IP)接種と、これに続く2週間の間隔を設けた3回のブースティング(boosting)によって、インビトロおよびインビボでP170のポンプ活性をブロック可能な、高力価の抗P170抗体(1:5000〜1:10000)が誘導された。
【0122】
プリオン病
プリオンは、ヒツジのスクレイピー、家畜のウシ海綿状脳症、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病などの神経変性疾患を引き起こす。プリオン粒子の既知の唯一の成分は、スクレイピーイソ型のタンパク質PrPScである。プリオンは複製されるが、核酸を含むことを示す証拠はない。PrPScは非感染性の細胞タンパク質PrPcに由来し、PrPcが大きな構造変化を受ける翻訳後過程を経て生じる。
【0123】
スクレイピータンパク質PrPScは、ニューロンの変性に重要な役割を果たし、また疾患の進行過程では、(正常な細胞イソ型タンパク質である)PrPc、感染型(タンパク質のスクレイピーイソ型である)PrPSc、タンパク質PrP 27-30の3つの段階の転移を経る。このようなカスケードは、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、クールー(Kuru)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症、ヒツジおよびヤギのスクレイピー、ミンクの脳症、ならびに家畜のウシ海綿状脳症の発症中に生じる。
【0124】
細胞の非毒性タンパク質PrPcは、主にニューロンで発現される分子量33〜35 Kのシアロ糖タンパク質である。上述した疾患では、PrPcは、プロテアーゼによる切断に対する相対耐性に関して正常相同分子と区別可能な改変型(PrPSc)に変換される。PrPScは、罹患した動物および患者の中枢神経系に蓄積し、またそのプロテアーゼ耐性のコアは細胞外で凝集する。発症の分子基盤は不明である。
【0125】
このタンパク質の断片の神経毒性に関しては、非常に興味深い観察がなされており、これは、関連する脳症で生じる神経細胞変性の機構の解明につながる可能性がある。
【0126】
アルツハイマー病におけるアミロイド原繊維およびプラークの細胞外蓄積に関与するβアミロイド断片に神経毒性があるという観察を元に、関連脳症におけるニューロン死が、PrPScおよび/または、この分解産物の異常な細胞外蓄積による毒性作用に起因する可能性があるのではないかと仮定されている。
【0127】
PrPcの種々の部分に相同な合成ペプチドが、ラット海馬ニューロンの一次培養物の生存に及ぼす影響を調べるために使用された(図4)。
【0128】
本発明の発明者らは、ラット海馬一次培養物の、ヒトのPrPc cDNAから推定されるアミノ酸配列の残基106〜126位に対応する、マイクロモル濃度のペプチドに対する長期曝露によって、ニューロン死が濃度依存的に起こることを明らかにした(実施例1)。
【0129】
実施例1で説明するように、発明者らは、PrP 106-126によって誘導されるニューロン死が、アポトーシスによって用量依存的に生じることを示した。スクレイピーなどの亜急性脳症の末期では、脳全体におけるPrPScの濃度はPrPcより10〜20倍高くなる。この結果は、PrP 106-126の2つの濃度に関して表1に列挙したデータと著しく類似している。
【0130】
PrP 106-126によって引き起こされるプログラム細胞死の過程には、特にテストステロン抑制型前立腺メッセージ-2(testosterone repressed prostate messege-2)遺伝子(TRPM-2)の誘導が関与する。アポトーシスが、関連脳症においてインビボで活性化されるか否かは不明であるが、TRPM-2のmRNAの発現は、スクレイピー感染ハムスターでは10倍上昇する。
【0131】
以上のデータから、神経毒性機構が、関連脳症におけるニューロン死とおそらく関連すること、またアルツハイマー病にも関連性があると考えられる。
【0132】
この神経毒性の推定機構を、ペプチドまたはタンパク質と脂質二重層の相互作用時におけるイオンチャネルの形成の検出および解析を目的としたモデル系において調べた。
【0133】
PrP 106-126によるチャネル形成に適した低いpHはまた、このペプチドをαらせん構造からβシート構造へと変換する。エドマン配列決定法および質量分析によるPrPScのペプチドマッピングでは、そのアミノ酸配列と、PrPc遺伝子配列の推定配列との間に差は認められず、PrPScをPrPpと区別する化学的な構造は認められなかった。しかし、フーリエ変換赤外分光観測、および円偏光二色性分光法の結果、PrPScとPrPpには構造に有意な差があることがわかった。
【0134】
PrPcは本質的にαらせん状であり、βシートはわずかであるか、または存在しない。これに対してPrPScはβシート構造含量が多く、αらせん構造はより少ない。
【0135】
配列
は、極めて疎水性が高いだけではなく、低いpHでβシート構造に変換する。さらに同配列は溶液中で、他のペプチドをβシート構造に変換可能である。
【0136】
以上の観察、また発明者らが開発した手法を元に、神経毒性PrP 106-126に対する強い液性および細胞性の免疫反応をマウスで引き起こすことで、疾患に対する「ワクチン」を開発し、続いて、免疫化したマウスをスクレイピーマウスの脳抽出物でチャレンジした。
【0137】
既に挙げた例と同様に、PEG化されたリジンをPrP 106-126配列の各末端に共有結合で結合させた。PEG鎖の長さは12〜4000であった。PEG鎖は、ホスファチジルエタノールアミンの1分子に対して相互に結合させ、PG-PEA-cholリポソーム-脂質Aにおいて再構成した。
【0138】
この超分子抗原性コンストラクトをマウスに注入したところ、強い液性免疫反応が引き起こされ、PrP 106-126配列に対して高親和性を有し、かつ内部に可溶化作用を有する抗体が得られた。
【0139】
以上の説明は、本発明の好ましい態様のみに関連し、また添付の特許請求の範囲に記載された本発明の意図および範囲から解離することなく、数多くの修正または変更が成される可能性があると理解すべきである。本明細書で引用された参考文献は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる
【実施例】
【0140】
実施例1
発明者らは、ラット海馬一次培養物を、ヒトのPrPc cDNAから推定されるアミノ酸配列の残基106〜126位に対応するマイクロモル濃度のペプチドに長期曝露することで、ニューロン死が濃度依存的に生じることを明らかにした。得られたデータを表1に示す。
【0141】
(表1)海馬ニューロンの9日間の長期間処置
【0142】
データは6〜10回の決定の平均±標準偏差であり、PrP106-126の毒性作用(100%反応と標示する)に対して標準化したものである。
【0143】
PrP 106-126によって誘導されるニューロン死が、アポトーシスによって用量依存的に生じることが示された。スクレイピーなどの亜急性脳症の末期では、PrPScはPrPcと比べ10〜20倍高い全脳濃度に達し、これは、PrP 106-126の2つの濃度に関する表1のデータと極めて似ている。
【0144】
PrP 106-126によって誘導されるプログラム細胞死の過程は特に、テストステロン抑制型前立腺メッセージ-2遺伝子(TRPM-2)の誘導と関連する。関連脳症中に、インビボでアポトーシスが活性化されるか否かは不明であるが、TRPM-2 mRNAの発現は、スクレイピー感染ハムスターでは10倍上昇する。
【0145】
実施例2
超分子抗原性コンストラクトの作製法
本明細書に記載された超分子コンストラクトは、標準的なFmoc/tBuアミノ酸側鎖保護法で特異的に合成された。PEG脂質部分によってC末端とN末端の両方が修飾されるペプチドについては、過去に報告がない。典型的には、ペプチドのPEG化によって、位置異性体の混合物が得られる。本明細書で発明者らは、部分的に保護されたペプチドを使用して、AβのC末端およびN末端の両方にPEG-脂質コンジュゲートを部位特異的に結合する簡便な方法を明らかにする。
【0146】
内部にLys残基またはHis残基を含む、ペプチド配列(4-11、1-16、22-35)については、直交的に保護されたLys(ivDde)を各末端に追加した。合成を促進するために、追加のGlyをC末端に加えた。Fmoc基をDMF中の20%ピペリジンで除去し、無水酢酸でN-アセチル化した。ivDde基の選択的な切断は、DMF中の3%ヒドラジン水和物を使用して1時間かけて行った。2-クロロトリチル樹脂は、ヒドラジン分解に対する耐性がより強いことが証明されているため、より広く使用されているWang樹脂より好ましい。さらに2-クロロトリチル樹脂は極めて酸感受性が高いので、Wang樹脂とは異なり、保護ペプチドの単離を可能とする。実際には、樹脂に結合したペプチドの、活性化済みのPEG化脂質試薬DSPE-PEG-SPAへのカップリングでは、いかなるカップリング産物も生じなかったため、カップリング反応は液相中で行う必要があった。したがって、穏和な条件(酢酸/トリフルオロエタノール/ジクロロメタン、1:1:8、1時間、室温)における、樹脂からの選択的な切断によって、内部が保護されたペプチドが得られた(図5)。
【0147】
DMSO中のDSPE-PEG-SPA、および過剰な基材に対する、配列Aβ4-11(SEQ ID NO: 2)、Aβ1-16(SEQ ID NO: 5)、Aβ22-35(SEQ ID NO: 3)に由来するペプチドの液相カップリングは成功裡に達成された(図6)。この反応は、過剰なエタノールアミンを2時間かけて添加することで停止させ、溶液は凍結乾燥処理した。HPLC(半調製逆相C4カラム)による精製では、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)で存在が確認されるN末端およびC末端のPEG-脂質コンジュゲートについて50〜70%の純度が得られた。個々の配列は、カップリング反応の容易さに大きなばらつきを示したので、条件(温度、DSPE-PEG-SPAのモル当量、時間)を調節した。HPLCによる精製の結果、過剰なDSPE-PEG-SPAの所望の産物からの分離が良好であることが明らかとなったが、前者は、カラムに対して親和性を示さないため、モノPEG-脂質(N末端とC末端の両方)ペプチド産物の所望の産物からの分離は困難であることが判明した。これらの産物のサイズ排除クロマトグラフィーによる分離の試みも不成功に終わった。その原因はおそらく、多分散性が比較的大きいことにある。これにもかかわらず発明者らは、最終的な側鎖の脱保護に先立つモノ共役物とジ共役物との分離に、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用する。続くペプチド側鎖の脱保護と、過剰な消光した(quenched)DSPE-PEG-SPAの分離によって、所望のコンジュゲートの高い純度による分離が可能となる。
【0148】
実施例3
PEG化抗原とパルミトイル化抗原の免疫原性の比較、ELISAおよび脱凝集アッセイ法
リポソーム抗原は上述の手順で作製した。配列PEG-Aβ1-16、PEG-Aβ4-11、およびPEG-Aβ22-35を、モノホスホリル脂質A(40 mg/mMリン脂質)を含む、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPEA)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、およびコレステロール(モル比0.9:0.1:0.1:0.7)から作製されたリポソームを含むコンストラクト中に再構成した。
【0149】
ELISA
C57BL/6マウスの免疫化には、抗原およびパルミトイル化Aβ1-16を、2週間間隔で使用した。10〜12匹の動物を各抗原で免疫化した。ブースティングの5日後に血清を採取し、複数の希釈段階の血清を用いてELISAを実施した。種々の抗原の免疫原性を示す比較の結果を図7に示す。
【0150】
ELISAのデータから、リポソームPEG-Aβ1-16の免疫原性が、パルミトイル化Aβ1-16より有意に大きいことがわかった。ミョウバンの添加は、マウスにおけるPEG-Aβ1-16の免疫原性を高めなかった。PEG-Aβ4-11によって誘導された抗体反応は、PEG-Aβ1-16と比較して緩やかであった。
【0151】
脱凝集アッセイ法
リポソーム-PEG-Aβ4-11で免疫化された動物から採取した9種類の血清(希釈率1:100)を、事前に形成されたAβ1-42繊維と抗血清とをインキュベートしたアッセイ法に使用した。このアッセイ法は、文献記載の手順で実施した(Nicolau et al., 2002)。
【0152】
種々の血清によるAβ1-42繊維の可溶化が、24時間のインキュベーション時間で認められた(図8)。血清の一部は、75%の規模で繊維を可溶化した(マウス5およびマウス6の血清)。これらのマウスの脾臓細胞をモノクローナル抗体産生に使用することとした。
【0153】
実施例4
可溶化アッセイ法
パルミトイル化Aβ1-16/リポソーム/脂質Aで免疫化された2匹の動物から、Aβ1-42特異的抗体に特異性を示すことがわかっている、最近作製されたハイブリドーマクローンについて25個の上清を得た。これらを可溶化アッセイ法で、PNAS 2002, 99, 2332-2337に記載された方法および手順に従って検討した。得られた結果を図9にまとめる。
【0154】
5つのハイブリドーマクローンの上清は、βアミロイド繊維をインビトロで最大75%の規模で可溶化可能なことがわかった。2つの最も優れたクローン(15および27)を、モノクローナル抗体の精製用に選択した。これらを、インビボにおけるさらなる検討のため、正の対照のmAbとして使用する。
【0155】
実施例5
固体NMR分光法によるAβ1-42-ペプチドのβシートからαらせんへの転移の調査
13C-標識アミノ酸の喪失を避けるために、Fmocペプチド合成によるAβ1-42の合成の検証を、試験合成によって、標識アミノ酸を使用せずに行った。Aβ1-42ペプチドが得られたか否かは、MALDI質量分析で検証可能であり、また逆相カラムおよびアンモニア緩衝アセトニトリル水勾配を用いるHPLCを用いた精製手順を確立することができた。
【0156】
アミロイドβペプチドの合成および精製に関する手順の成功裡の設定に続いて、12位(12val)に13C標識バリンを、かつ10位(10tyr)に13C標識チロシンを含む標識ペプチドが合成された。
【0157】
標識済みのAβ1-42を使用し、PBS緩衝液中のペプチド溶液を37℃で1週間インキュベートすることで繊維を得た。凍結乾燥後の繊維の13C NMRスペクトルから、βシート構造の存在が確認され、文献に記載された結果と矛盾は見られない。繊維とAβ1-16特異的抗体の2日間にわたるインキュベーションでは、13Cスペクトルに有意な変化は認められなかった。NMR測定の最初の評価は、二次構造の変化を示している(図10)。
【0158】
実施例6
超分子抗原性コンストラクトによって誘導される抗体
mAbの作製
リポソーム抗原を文献記載の手順で作製した(Nicolau et al., 2002, PNAS, 99, 2332-37)。配列、PEG-Aβ1-15、PEG-Aβ1-16、PEG-Aβ4-11、PEG-Aβ22-35、およびPEG-Aβ29-40を、モノホスホリル脂質A(40 mg/mMリン脂質)を含む、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPEA)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、およびコレステロール(モル比0.9:0.1:0.1:0.7)から作製したリポソームを含むコンストラクトにおいて再構成した。これらの抗原、およびパルミトイル化Aβ1-16をC57BL/6マウスの免疫化に2週間間隔で使用した。10〜12匹の動物を各抗原で免疫化した。3〜6回のブースティング後に、治療的力価(1:5,000の希釈率の血清がELISAで陽性であった)を示したマウスを融合用に選択した。このマウスの脾臓由来のBリンパ球と骨髄腫細胞系列SP2-0の融合を実施した。IgG産生ハイブリドーマクローンを選択し、Aβ1-42ペプチドに対する特異的な結合に関してELISAによる検討を行った。
【0159】
mAbの特性解析
脱凝集アッセイ法、NMR測定、QELS測定、およびSPR測定によってmAbの特性解析を行った。mAbは、形成済みのアミロイド繊維の最大80%の脱凝集を示した(表1)。アミロイドのβシートからαらせんへの転移は、同抗体によって誘導されることが判明した(図11、12)。準弾性光散乱(QELS)法による測定の結果、アミロイド繊維のモノクローナル抗体とのインキュベーションが、太さが800 nm以下の繊維を生じる(存在する全繊維の40〜60%)一方で、アミロイド単独の場合には、極めて大きな凝集体(>4μm)のみが得られることがわかった。
【0160】
(表1)PEG-Aβ1-15、-Aβ4-11、およびPalm-Aβ1-16の免疫化によって得られたmAb
【0161】
NMR測定
繊維に対するmAbの作用を評価するために、Aβ繊維を含む溶液を抗体と12日間インキュベートした。プロトン駆動スピン拡散測定(PDSD)を行い、2D 13C-13C相関スペクトルを測定した。NMRデータおよび解析結果を図11〜13に示す。NMR:EN4H7、ET-1H6、またはAN9C-E4との12日間のインキュベーション前後におけるアミロイドβペプチド繊維の13C-13C相関スペクトル(A、B)。列(D)および行(C)に相関スペクトルを抽出した。スペクトル(抗体なし)は、純粋な繊維のスペクトルを示し、スペクトル(抗体あり)は、mAbの存在下におけるスペクトルを示す。
【0162】
凍結乾燥状態の繊維の13Cスペクトルによって、共鳴の分配が可能となる。Val12およびTyr10のCαおよびCβの化学シフト値から、純粋な繊維がβシート構造をとることがわかる(図11)。12ValのCα核およびCβ核の共鳴のシフトは、βシートからαらせんへの転移を明瞭に示している。一方、Tyr10のCαおよびCβの共鳴のシフトは、二次構造の転移を明瞭に示していない。Tyr10の共鳴の挙動は、Tyr10が、アミロイド繊維中のAβ-ペプチドのβシート部とループ部の境界に位置するというモデルで説明可能である。
【0163】
第2の実験では、13Cを多く含む繊維をEN4H7抗体およびET1H6抗体とともに12日間インキュベートした(表1参照)。インキュベートされた繊維は、12ValのCβ核の、32 ppmから28 ppmへの共鳴シフトを示し、両抗体に関して、ペプチドのかなりの部分がβシートからαらせんへ転移したことがわかる(図12および図13)。10Tyrに関するCαおよびCβの共鳴は、抗体の存在下ではブロードとなる。この結果は、10Tyrの位置に関して、むしろ構造化されていないコンフォメーションへの転移を意味する。
【0164】
実施例7
PEG化抗原およびパルミトイル化抗原の免疫原性のELISAによる比較
ELISAで得られたデータから、リポソームPEG-Aβ1-16の免疫原性がパルミトイル化Aβ1-16より大きいことが判明した(図14)。ミョウバンの添加は、マウスにおけるPEG-Aβ1-16の免疫原性を高めなかった。PEG-Aβ1-16の場合と比較して緩やかな、PEG-Aβ4-11によって誘導される抗体反応を除いて、一般に、PEG化ペプチドは、パルミトイル化ペプチドよりも免疫原性が高いようである(図14)。
【0165】
実施例8
抗体の有効性を評価する行動テスト
本明細書に記載された方法で誘導された抗体、すなわち修飾型アミロイドペプチド(PEG化アミロイドペプチドなど)を含む超分子抗原性コンストラクトによって誘導された抗体の有効性を評価するために、マウスを処理し、以下に概説する行動テストで評価する。
【0166】
モリス水迷路(Morris Water Maze)
プール(白色、円形容器、直径1 m)に20℃の水を張り、併せて二酸化チタンを無臭の非毒性の添加物として、退避プラットフォーム(escape platform)(水面の1 cm下)を見えなくするために使用する。個々のマウスの泳ぐ様子を、ビデオカメラで撮影して解析する(Ethovision, Noldus information Technology, Wageningen, the Netherlands)。トレーニングに先立ち、各マウスをプラットフォーム上に15秒間置く。プレースナビゲーション(place navigation)テストのために、3日間連続で、3回の試行の5つのブロックにおいて、隠れたプラットフォームの位置を見つけるようにマウスをトレーニングする。各試行は、最大120秒間の強制的な水泳試験とそれに続く60秒間の休憩で構成される。個々のマウスがプラットフォームの位置に到達するまでに要した時間を測定する。連続5回の試行の結果から学習曲線を得る。
【0167】
最終トレーニングの24時間後に、各動物を対象に、プラットフォームを除いた状態で、プローブ試行を行う。マウスに60秒間探索させ、当初のプラットフォーム位置の四分円(quadrant)探索時間、および交差(crossing)を測定する。
【0168】
泳ぐことおよびプラットフォームの探索を拒み、代わりに実験者がプールから引き上げるまで待つマウス(いわゆる「フローター」)は解析対象から除外する。
【0169】
オープンフィールド
黒色の垂直壁と半透明の床を擁するPlexiglasのオープンフィールドボックス(52×52×40 cm)をテストに使用し、ボックスの下からランプによって弱い光をあてる。コンピューターシステム(Ethovision, Noldus information Technology, Wageningen, the Netherlands)に、以下の異なる区画を割り当てる:コーナー(9×9 cm)、ボックスの4側部(壁から9 cm)、およびオープンフィールドボックスの中央部(43×43 cm)。各マウスをビデオカメラで撮影し、移動した距離(cm)、マウスの移動速度(cm/秒)、境界部(コーナー+側部)と比較した時の、中央部で要した期間/時間(秒)、および両区画をまたぐ回数(N)を測定することで活動を解析する(Ethovision)。各マウスをボックスの中央に配置し、自由に探索させる(10分間)。テスト間にオープンフィールドボックスを清掃し、乾燥させてから、新しいマウスをボックスに入れる。
【0170】
新奇物体認識テスト
マウスを1時間かけて、黒色の垂直な壁と半透明の床を擁するPlexiglasのオープンフィールドボックス(52×52×40 cm)に慣らし、ボックスの下部からランプで弱い光をあてる。翌日、マウスを同じボックス内に配置し、10分間の獲得(acquisition)試行を実施する。この試行中、マウスは、物体A(同様の大きさ±4 cmの青い球体または赤い立方体)の存在下で、オープンフィールド内に個別に配置し、物体Aを探索する頻度(個体の鼻が1 cm未満の距離で物体に向いた時、および個体が物体の方向の匂いを活発にかいだ時)を記録する(Freq AA)。3時間後に実施する10分間の想起(retention)試行(2回目の試行)の間に、新奇物体(物体B、赤い立方体または青い球体)を、なじみのある物体(物体A)とともにオープンフィールド内に配置する。マウスが2つの物体を探索した頻度を記録する(Freq AおよびFreq B)。
【0171】
新奇物体の探索頻度を両物体の探索頻度で割った比率[Freq B/(Freq A+Freq B)×100]で定義される認識指標(recognition index)(RI)を非空間記憶の測定に用いる。獲得試行中において物体Aが探索された頻度を、好奇心の測定に用いる。
【0172】
参照文献
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、強い免疫反応を引き起こす方法および組成物に関する。特に本発明は、立体構造に感受性を示す抗体をもたらす新しい組成物および方法を含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫系は、種々の活性を有する多種多様な細胞が関与する、身体の複雑な応答系である。免疫系の一部の活性化は通常、免疫系の他の関連する部分の望ましくない活性化により、種々の応答を引き起こす。現在、免疫系の特定の成分を標的とすることで、特異的に望ましい応答を生じる満足のゆく方法または組成物はない。
【0003】
免疫系は、体内と体外の両方に由来する刺激と相互作用する細胞や細胞因子を含む、種々の成分が関与する身体の複雑な相互作用系である。免疫系の応答は、直接的な作用のほかに、神経系、呼吸器系、循環器系、および消化器系を含む、身体の他の系の影響も受ける。
【0004】
免疫系について比較的よく知られた局面の1つは、侵入する微生物によって提示された外来抗原、体内の細胞変化、またはワクチン接種に対する応答能力である。免疫系のこのような活性化に反応する主な種類の細胞には、食細胞やナチュラルキラー細胞などがある。食細胞の主なものには、単球、マクロファージ、および多形核好中球などがある。これらの細胞は一般に、外来抗原と結合して、これを内在化して破壊することがある。これらの細胞はまた、炎症反応などの他の免疫反応に関与する可溶性分子を産生する。ナチュラルキラー細胞は、特定のウイルス感染胚細胞や腫瘍細胞を認識して破壊することができる。免疫反応の他の因子には、外来抗原に対して独立に反応するか、または細胞もしくは抗体と協調して作用する能力を有する補体経路などがある。
【0005】
一般に、抗原に対する応答には、液性応答と細胞応答の両方が関与すると考えられている。液性免疫反応には、細胞から産生されて、血漿または細胞内液中に遊離の状態で見出される場合もある非細胞性因子群が関与する。免疫系の液性応答には主に、Bリンパ球が産生する抗体が関与する。細胞が介在する免疫反応は、抗原提示細胞ならびにBリンパ球(B細胞)およびTリンパ球(T細胞)を含む細胞の相互作用の結果生じる。
【0006】
免疫反応能力の最も広く使用されている局面の1つは、モノクローナル抗体の産生である。1970年代中頃におけるモノクローナル抗体(Mab)技術の到来は、治療用および診断用の新しい有用なツールをもたらした。そして、所定の抗原部位に対する結合能力を有し、種々の免疫エフェクター機能を有する、無限の量の均一な抗体を研究者および医師が初めて利用できるようになった。現在、モノクローナル抗体の作製法は、当技術分野で周知である。しかしながら、特異的な抗体が必要なことは変わらない。要するに、カスタマイズされた抗体を作製する能力が求められている。このニーズは、病原体が一般に使用されている抗生物質に対する耐性を獲得した感染症と闘う領域で特に大きい。加えて、感染病原体以外の原因によって生じる病的条件に対応するための抗生物質も求められている。
【0007】
アルツハイマー病(AD)は、脳内におけるタンパク質の異常な蓄積によって引き起こされるアミロイドプラークの蓄積に起因すると主に考えられている神経疾患である。科学的な証拠は、ADが、神経細胞死に至る、プラーク中のβアミロイドタンパク質の産生または蓄積の増加に起因することを示している。そして機能上重要な脳領域における神経細胞の喪失は、神経伝達物質の減少と記憶障害を引き起こす。プラークの蓄積に主に関与するタンパク質には、アミロイド前駆体タンパク質(APP)や2種類のプレセニリン(プレセニリンIおよびプレセニリンII)などがある。APPの分解は、プラーク中で凝集する傾向を強める可能性が高い。アミロイドプラークの形成を標的として、これを散らすことが可能な特異的抗体が求められている。
【0008】
ADの症状は緩やかに発現し、また初期の症状は、軽度の健忘症に留まる可能性がある。この段階では患者は、最近の出来事、行動、家族や物の名前を忘れる場合があり、また算数の簡単な問題を解けなくなることがある。疾患の進行に伴い、症状は容易に目に付くようになり、AD患者または患者の家族が医療の助けを求めるほど重度となる。ADの中期の症状には、身繕いなどの簡単な課題の方法を忘れることなどが含まれ、また発話、理解、読字、または書字に問題が生じる。後期のAD患者は、不安を覚えるようになったり攻撃的になったりする場合があり、家を出て徘徊する恐れがあり、最終的には全面看護が必要となる可能性がある。
【0009】
現在、ADを診断する唯一の明瞭な方法は、患者の死後の剖検における脳組織中のプラークおよび原繊維のもつれ(tangle)を同定することである。したがって医師は、患者が生存している間は、「ADの疑いがある(possible)」、または「ほぼ確実な(probable)AD」という診断を下せるに過ぎない。現在の方法では、医師は、「ほぼ確実な」ADの診断用の複数のツールを用いて、最大90パーセントでADを正しく診断することができる。医師は、患者の全般的健康状態、医療歴、および過去の日常活動上で覚えた問題に関する質問を行う。記憶、問題解決、注意、計算、および言語に関する行動テストによって、認知障害に関する情報が得られ、また血液、尿、または脊髄液の検査などの医学的検査、および脳スキャンによって、さらに詳細な情報が得られる場合がある。
【0010】
ADの管理には、薬物を使用する治療、および薬物を使用しない治療がある。同疾患の基礎過程を変化させること(進行の逆転または遅延)を目的とした治療は、これまでほとんど成功していない。コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)などの神経細胞の化学メッセンジャー(神経伝達物質)の欠損(欠陥)、または機能不全を回復させる薬剤は症状を改善することがわかっている。薬物は、ADの精神症状に対処するためにも利用される。
【0011】
タクリン(Tacrine)やリバスチグミン(Rivastigmine)などのコリンエステラーゼ阻害剤は現在、ADの治療に関してFDAによって承認されている唯一の薬剤群である。これらの薬剤は、脳内の化学的な神経伝達の欠損または機能不全を回復させる薬物である。ChEIは、酵素による神経伝達物質の分解を妨げることで、脳内における神経シグナルの伝達に利用されうる化学メッセンジャーの量を増やす。
【0012】
アルツハイマー病の初期および中期の一部の患者の場合、薬剤タクリン(COGNEX(登録商標)、Morris Plains, NJ)、ドネペジル(ARICEPT(登録商標)、Tokyo, JP)、リバスチグミン(EXELON(登録商標)、East Hanover, NJ)、またはガランタミン(REMINYL(登録商標), New Brunswick, NJ)が、一部の症状が悪化するのを一定の期間防ぐのに役立つ可能性がある。他の薬剤、メマンチン(NAMENDA(登録商標), New York, NY)は中程度〜重度のADの治療に関して承認されている。また一部の薬剤は、不眠、激越、徘徊、不安、および抑うつなどの、ADの行動関連の症状の管理に役立つ可能性がある。これらの症状を治療することで、患者は気分が落ち着き、また介護者にとっては負担が和らぐことになる。しかし残念なことに、この薬剤群が一貫してプラセボより有効であることを示す治療上の進歩は大きいものの、同疾患は治療に関わらず進行を続け、また精神機能に対する平均的な効果はわずかに過ぎない。またChEIには、消化器の機能不全、肝毒性、および体重減少などの副作用もある。
【0013】
ADに見られる脳の異常に関する理解が進むことは、同疾患の経過および進行の変化に、より大きな焦点を当てた新たな治療標的に関する枠組みをもたらす上で望ましい。抗炎症剤を含む多くの化合物に関する研究は活発に行われている。ロフェコキシブ(rofecoxib)やセレコキシブ(celecoxib)などのシクロオキシゲナーゼ(COX-2)特異的阻害剤を用いた臨床試験も進行中である。
【0014】
新薬を開発する際に考慮すべき別の要素が、対象患者にとっての使用の容易さである。経口的な薬剤輸送(特に錠剤、カプセル剤、および軟ゲル)は患者の利便性に叶うことから、使用されている全投与形態の70%を占める。薬剤開発者の間では、患者が、注射や他の侵襲性の高い薬剤投与様式より経口輸送を好むということで意見が一致している。投与間隔の短い(すなわち1日1回、または持続的放出による投与を行う)製剤も好ましい。経口用剤型による抗生物質の投与が容易であることは、治療期間中における患者の服薬順守率を高めることになる。
【0015】
求められるのは、特異性が高くて有効性が高い抗体を生じる有効な方法および組成物である。このような抗体は、アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、またはP170糖タンパク質などの、種々の抗原上に存在する特異的エピトープを認識することが好ましい。
【0016】
したがって、さらに求められるのは、アルツハイマー病などのアミロイドプラーク形成が関連する神経疾患に伴う合併症を解決するための有効な組成物および方法である。特に求められているのは、βシート構造で存在するアミロイドペプチドの繊維の凝集と関連したプラーク形成などの、同疾患の生理学的徴候に対抗可能な特異的抗体である。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、特異性が高くて有効な抗体を引き起こす新しい方法および組成物を含む。現在利用可能な産物とは異なり、本発明は、種々の抗原の特異的エピトープを認識する能力を有する抗体をもたらす固有の方法および組成物を提供する。
【0018】
本発明は、アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、またはP170糖タンパク質のエピトープなどのエピトープを特異的に認識する抗体の産生を可能とする組成物に関して、従来から切実に要望されているニーズを満たす。
【0019】
本発明は、曝露の昂進、そして究極的には立体構造に高度の感受性を示す抗体をもたらす固有の抗原提示を含む。本発明の1つの態様は、PEG化(pegylated)アミノ酸(PEG化リジンなど)を、各末端に1つずつ共有結合で結合されたペプチド配列を含む超分子抗原性コンストラクトを含む組成物を含む。
【0020】
したがって、本発明の目的の1つは、特異的かつ有効な免疫反応を引き起こすための方法および組成物を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、疾患の発生または拡大を治療および予防するための方法および組成物を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、活性のある細胞性応答および液性応答を宿主で引き起こすことによって疾患を予防する、治療する、または緩和するための方法および組成物を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、神経疾患の発症率を減じ、また発症を予防するための方法および組成物を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、過増殖性疾患の発生を減じ、また予防するための方法および組成物を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、神経疾患に対する治療目的の免疫学的介入の方法および組成物を提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、特定の感染微生物に対するワクチンをヒトまたは動物に接種するための方法および組成物を提供することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、特定の感染微生物に対してヒトまたは動物を受動的に免疫化するための方法および組成物を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、抗原性を有していて、またヒトまたは動物における病的徴候に対する免疫反応を引き起こす超分子コンストラクト組成物を提供することである。
【0029】
本発明のさらに他の目的は、抗原性を有していて、またヒトまたは動物における病的徴候に対する免疫反応を引き起こす超分子コンストラクト組成物を提供することであって、このような病的徴候は、アミロイドプラークの異常などを含む。
【0030】
本発明の別の目的は、抗原性を有していて、またヒトまたは動物における感染微生物に対する免疫反応を引き起こす超分子コンストラクト組成物を提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、組成物によって免疫化されるヒトまたは動物において非免疫原性の超分子抗原性コンストラクトを含むワクチン組成物、および担体を提供することであって、抗原ペプチドは、ヒトまたは動物への投与時に、結果として生じる抗体が高度に特異的であり、また立体構造に高度の感受性を示すように担体表面に特異的に提示される。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、疾患および障害に対する個体の応答を高める修飾型の抗原部分を含む方法および組成物を提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、超分子抗原性コンストラクトを含むワクチン組成物を提供することであって、ペプチドは抗原作用を増強するために修飾されている。
【0034】
本発明のさらに他の目的は、抗原作用を増強するために修飾されたペプチドを含む超分子抗原性コンストラクトを含むワクチン組成物を提供することであって、このようなペプチドは、(ポリエチレングリコールまたは修飾型ポリエチレングリコールを使用する)PEG化によって修飾されているか、またはポリアミノ酸(例えば、ポリグリシン、ポリヒスチジン)、ポリサッカライド(例えば、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン)、合成ポリマー(ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル)、または共重合体(ポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド)などを使用する他の方法で修飾されている。
【0035】
本発明のさらに別の目的は、抗原ペプチド用の担体が修飾型リポソームを含む免疫原性組成物を提供することである。
【0036】
本発明の別の目的は、抗原ペプチド用の担体がコロイド状金属を含む免疫原性組成物を提供することである。
【0037】
本発明の別の目的は、抗原ペプチド用の担体がバキュロウイルス由来の小胞を含む、免疫原性組成物を提供することである。
【0038】
本発明のさらに別の目的は、免疫反応を促進するために、薬学的に許容可能なアジュバントと組み合わせた免疫原性組成物を提供することである。
【0039】
本発明のさらに別の目的は、筋肉内に、静脈内に、経皮的に、経口的に、または皮下に投与可能な免疫原性組成物を提供することである。
【0040】
本発明のこれらの、および他の目的、特徴、および利点は、開示された態様に関する以下の詳細な説明、および添付の特許請求の範囲を参照することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】化学的に修飾されたβアミロイド抗原を示す模式図。
【図2】化学的に修飾されたアミロイド抗原を使用して再構成されたリポソームを示す例示的な模式図。
【図3】複数のP170抗原を示す模式図。
【図4】ラット海馬ニューロンの一次培養物の生存能に対する影響の検討に使用される、PrPcの異なるセグメントに相同な合成ペプチド。
【図5】Aβ配列4〜11(SEQ ID NO: 2)、1〜16(SEQ ID NO: 5)、22〜35(SEQ ID NO: 3)、および29〜40(SEQ ID NO: 4)に由来するペプチドの模式図。
【図6】内部にHis残基またはLys残基を含む場合もあれば含まない場合もある、ペプチド配列に由来する抗原に関する、一般的な合成法を示す模式図。
【図7】PEG化されたアミロイド/リポソーム/脂質Aで免疫化されたC57BL/6マウスに由来する、1:5000の倍率で希釈した血清を使用して実施されたELISAの結果。PEG-Aβ1-16(--黒色)、PEG-Aβ1-16+ミョウバン(- -灰色)、PEG-Aβ4-11(−−灰色)。1種類の抗原につき10匹のマウスの値の平均。Aβ1-16+ミョウバンについては2匹のマウスで得られた値の平均。対照として、12匹のパルミトイル化Aβ1-16(--明るい灰色)を注射した個体の平均値を示す(2002年に刊行)。
【図8】PEG-Aβ4-11で免疫化されたC57BL/6マウスの血清によるAβ1-42繊維の可溶化を評価するアッセイ法の結果。チオフラビンの蛍光発光強度は、溶液中の原繊維アミロイドの量と相関する。37℃、PBS中、pH=7.1で7日間におけるAβ1-42繊維の形成。血清は7日目に添加し、24時間インキュベートした。バー1〜9は、ワクチン接種個体の血清を使用して行った可溶化実験を示す。4つの試料の平均+標準偏差を示す。
【図9】パルミトイル化(palm.-)Aβ1-16免疫化C57BL/6マウスに由来するハイブリドーマクローンの上清使用時のAβ1-42繊維の可溶化アッセイ法の結果。37℃、PBS中、pH=7.1で7日間におけるAβ1-42繊維の形成。上清を24時間インキュベートした。sfr培地=FCSを含まない培地。ハイブリドーマクローンを無血清培地中で1日間、成長させた。4つの試料の平均+SDを示す。
【図10】10Tyrおよび12Valが標識されたアミロイドβペプチドから作製されたアミロイド繊維の13C-13C相関スペクトル。
【図11】Aβ-ペプチド繊維(A)、および抗体との12日間のインキュベーション後(B)の13C-13C相関スペクトルの投影図。
【図12】アミロイドβ繊維に対するモノクローナル抗体の作用を評価するためのNMRスペクトルデータ。
【図13】PEG化抗原とパルミトイル化抗原の比較データを示すグラフ。
【図14】PEG化βアミロイド(1-16、4-11、22-35、1-15)とパルミトイル化βアミロイド(1-16)との比較データを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本発明は、本明細書に含まれる個々の態様に関する以下の詳細な説明を参照することで、さらに容易に理解されるであろう。本発明は、本発明の特定の態様の個々の詳細に関して説明するが、その詳細は、本発明の範囲に鑑みて制限するものとして見なされるべきではない。米国仮出願番号第60/449,573号、および2004年2月20日に出願された米国特許出願第10/783,975号を含む、本明細書で言及した参考文献の内容は、参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0043】
発明者らは本明細書で、立体構造に感受性を示す抗体をもたらす、特異性の高い、強い免疫反応を引き起こす方法について報告する。このような抗体は、アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、P170糖タンパク質を含むが、これらに限定されない、種々の抗原上の特異的エピトープを認識する。具体的には、発明者らは本明細書で、改善された免疫原性反応を引き起こすための、アミロイドペプチドなどのペプチドを修飾する概念について説明する。ある態様では、ペプチドはPEG化によって修飾される。
【0044】
定義
本明細書で用いる、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という表現は互換的に用いられ、また、ペプチド結合で連結された2残基またはこれ以上のアミノ酸を含む生体分子を意味する。
【0045】
「ペプチド」という表現は、アミノ酸のα炭素が、1つのアミノ酸のα炭素のカルボキシル基と、別のアミノ酸のα炭素のアミノ基の間の縮合反応によって形成されたペプチド結合を介して連結されたアミノ酸(典型的にはL-アミノ酸)の鎖を意味する。鎖の一方の端(アミノ末端)の末端のアミノ酸は遊離のアミノ基を有し、また、鎖のもう一方の端(カルボキシ末端)の末端のアミノ酸は遊離のカルボキシル基を有する。したがって、「アミノ末端」(N末端と略記)という表現は、ペプチドのアミノ末端におけるアミノ酸上の遊離のαアミノ基を意味するほか、ペプチド内部の他の任意の位置に存在するアミノ酸のαアミノ基(ペプチド結合に関与する場合はイミノ基)を意味する。同様に、「カルボキシ末端」(C末端と略記)という表現は、ペプチドのカルボキシ末端におけるアミノ酸上の遊離のカルボキシル基、またはペプチド内部の他の任意の位置におけるアミノ酸のカルボキシル基を意味する。
【0046】
典型的には、ペプチドを構成するアミノ酸は順番に番号がつけられる(アミノ末端から始めて、ペプチドのカルボキシ末端方向へ向かって数値が増えてゆく)。したがって、1つのアミノ酸が、別のアミノ酸に「続く」と表現される場合、そのアミノ酸は、先行するアミノ酸よりも、対象ペプチドのカルボキシ末端に近い側に位置する。
【0047】
本明細書で使用される「残基」という表現は、ペプチド中にアミド結合によって組み入れられたアミノ酸を意味する。したがって、アミノ酸は天然のアミノ酸の場合があるほか、特に明記しない限りにおいて、天然のアミノ酸と同等に機能する、天然のアミノ酸の既知の類似体(アミノ酸模倣体)を含む場合がある。またアミド結合模倣体は、当業者に周知のペプチド骨格の修飾を含む。
【0048】
「本質的に〜からなる」という表現は本明細書で、この表現で表されるペプチドの本質的な特性を実質的に変化させる可能性がある任意の要素を除外するように用いられる。したがって、「本質的に〜からなる」ペプチドという記述は、対象ペプチドの生物学的活性を実質的に変化させる可能性のある、任意のアミノ酸の置換、付加、または欠失を含まない。
【0049】
さらに当業者であれば、上述したように、コード配列中の単一アミノ酸、または低パーセンテージで含まれるアミノ酸(典型的には5%未満、より典型的には1%未満)を変化させる、付加する、または欠失する個々の置換、欠失、または付加が、こうした変化がアミノ酸の、化学的に類似したアミノ酸による置換を招く保存的に修飾された異型であることを理解すると考えられる。機能的に同等のアミノ酸をもたらす保存的置換の表は、当技術分野で周知である。以下に示す6つのグループはそれぞれ、相互に保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0050】
「単離された」、または「生物学的に純粋な」という表現は、天然の状態であれば通常伴う成分を実質的もしくは本質的に含まない材料を意味する。したがって、本明細書に記載されたペプチドは、インサイチュー環境では通常であれば伴う材料を含まない。典型的には、本明細書に記載された、単離された、免疫原性を有するペプチドは、銀染色後のゲル上のバンドの強度によって比較した時に、純度が少なくとも約80%であり、通常は純度が少なくとも約90%であり、また好ましくは、純度が少なくとも約95%である。
【0051】
タンパク質の純度または均一性は、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動と、これに続く染色による可視化などの、当技術分野で周知の複数の方法で明らかにすることができる。目的によっては高解像度が必要であり、HPLCまたは類似の精製法が用いられる。
【0052】
免疫原性ペプチドの長さが比較的短い(約50アミノ酸未満の)場合、ペプチドは標準的な化学的ペプチド合成法で合成されることが多い。
【0053】
対象配列のC末端のアミノ酸が不溶性の支持体に結合された後に、配列の残りのアミノ酸が連続的に追加されてゆく固相合成は、本明細書に記載された免疫原性ペプチドの好ましい化学合成法である。固相合成法は当業者に周知である。
【0054】
または、本明細書に記載された免疫原性ペプチドは組換え核酸法で合成される。一般に、この方法は、対象ペプチドをコードする核酸配列を作製する段階、同核酸を発現カセット中で特定のプロモーターの制御下に配置する段階、ペプチドを宿主で発現させる段階、発現されたペプチドまたはポリペプチドを単離する段階を含み、また必要ならばペプチドを再生させる段階を含む。このような手順について、当業者を十分導くことができる手法は、文献に記載されている。
【0055】
一旦発現された組換えペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿法、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などの標準的な手順で精製することができる。均一性が約50〜95%の実質的に純粋な組成物が望ましく、また治療用の薬剤として使用するのであれば80〜95%またはこれ以上の均一性が最も望ましい。
【0056】
当業者であれば、化学合成、生物学的発現、または精製の後には、免疫原性ペプチドが、構成成分のペプチドの天然の構造とは実質的に異なる構造を有するようになることを理解すると思われる。このような場合、抗増殖性ペプチドを変性させて還元した後に、ペプチドを好ましい構造に再び折りたたませることが必要となることがある。タンパク質を還元および変性させ、再折りたたみを誘導する方法は当業者に周知である。
【0057】
精製後のタンパク質の抗原性は例えば、免疫血清との反応、またはタンパク質そのものに対して生じた抗血清との反応を示すことで確認することができる。
【0058】
本明細書で用いる「1つの("a", "an")」、および「その("the")」という表現は、「1つもしくは複数("one or more")」を意味する表現として定義され、また文脈が不適切にならない限りにおいて複数の対象を含む。
【0059】
本明細書で用いる「〜を検出する」もしくは「検出された」という表現は、免疫化学的方法や組織学的方法などの、生物学的分子の既知の検出法を使用することを意味し、また検討対象の生体分子の存在または濃度を、質的もしくは量的に判定・決定することを意味する。
【0060】
「単離された」という表現は、天然の状態では存在する成分の少なくとも一部を含まない生物学的分子を意味する。
【0061】
本明細書で用いる「抗体」または「抗体群」という表現は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、サル化抗体、およびヒト化抗体、ならびにFab免疫グロブリン発現ライブラリーの産物を含むFab断片を含む。
【0062】
「抗原」という表現は、哺乳類で免疫反応を引き起こすことが可能な分子の全体または断片を意味する。この表現は、免疫原、および抗原性に関与する領域または抗原決定基を含む。
【0063】
本明細書で用いる「可溶性である」という表現は、水溶液に部分的または完全に溶解することを意味する。
【0064】
また本明細書で用いる「免疫原性を有する」という表現は、免疫原性物質に対する、またヒトもしくは動物における免疫反応に寄与する抗体、T細胞、および他の反応性免疫細胞の産生を誘導または促進する物質を意味する。
【0065】
免疫反応が生じるのは、個体が、投与された本発明の免疫原性組成物に対する、十分な抗体、T細胞、および他の反応性免疫細胞を産生する場合であり、この結果、治療対象の疾患が緩和されたり軽減されたりする。
【0066】
本明細書で用いる「担体」という表現は、抗原ペプチドまたは超分子コンストラクトを組み入れること、または結合させることが可能で、その結果、抗原ペプチドもしくは同ペプチドの一部分を、ヒトもしくは動物の免疫系に提示または曝露することが可能な構造体を意味する。「担体」という表現は、抗原ペプチドを含む超分子抗原性コンストラクト組成物を輸送機構によって所望の部位へ輸送可能な輸送法も含む。このような輸送系の一例では、金コロイドなどのコロイド状金属を使用する。
【0067】
さらに、「担体」という表現は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、および他のアジュバントを含むが、これらに限定されない、当業者に周知の輸送機構も含む。本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物が、既知および先行技術のワクチンに使用されているアジュバント、保存剤、希釈剤、乳化剤、安定剤、ならびに他の成分をさらに含む場合があることも理解される。当技術分野で周知の任意のアジュバント系を、本発明の組成物に使用することができる。このようなアジュバントには、フロインドの不完全アジュバント、フロインドの完全アジュバント、多分散型のβ-(1,4)結合アセチル化マンナン(「Acemannan」)、TITERMAX(登録商標)(CytRx社のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体アジュバント)、Chiron社の修飾脂質アジュバント、Cambridge Biotech社のサポニン誘導体アジュバント、百日咳菌(Bordetella pertussis)の死菌、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)、硫酸デキストランなどの大型ポリマー陰イオン、およびミョウバン、アルミニウム水酸化物、またはリン酸アルミニウムなどの無機ゲルがあるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物に使用可能な担体タンパク質は、マルトース結合タンパク質「MBP」;ウシ血清アルブミン「BSA」;キーホールリンペットヘモシアニン「KLH」;オボアルブミン;フラジェリン;サイログロブリン;任意の種の血清アルブミン;任意の種のガンマグロブリン;同系細胞;Ia抗原を有する同系細胞;ならびにD-アミノ酸および/またはL-アミノ酸のポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0069】
さらに「有効量」という表現は、ヒトまたは動物に投与すると免疫反応を引き起こす抗原性/免疫原性組成物の量を意味する。当業者であれば、常用の手順で有効量を容易に決定できる。
【0070】
例えば、超分子抗原性コンストラクト組成物は、患者あたり約1.0μg〜10.0 mgの量で非経口的または経口的に投与することができるが、この範囲は、制限する意図はない。免疫反応を引き起こすのに必要とされる組成物の実際の量は、投与される組成物の免疫原性、および個々の免疫反応に応じて、個々の患者間で変動する。したがって、個体に投与される特定の量は、常用の実験法によって、また当業者の訓練および経験の程度に基づいて決定される。
【0071】
本発明の組成物は、抗原ペプチドに対する抗体を産生させるために使用される。結果として得られる抗体を個体に投与することで、アルツハイマー病、多剤耐性癌、またはプリオン病を含むが、これらに限定されない、種々の疾患または障害に対して受動的に免疫化される。
【0072】
本発明の免疫原性組成物は、リポソームを、精製された抗原ペプチド、もしくは部分的に精製された抗原ペプチド、または修飾された抗原ペプチドの存在下で再構成することで作製されたリポソームを含む場合がある。またペプチド断片をリポソーム中に再構成することができる。本発明は、抗原性を増強するために修飾された抗原ペプチド断片も含む。例えば、抗原部分およびアジュバントを、対象ペプチドと結合させたり混合したりすることができる。抗原部分およびアジュバントの例には、親油性ムラミルジペプチド誘導体、非イオン性ブロックポリマー、水酸化アルミニウム、またはリン酸アルミニウムのアジュバント、およびこれらの混合物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明はさらに、担体の疎水性の脂質二重層への挿入を容易にする、パルミチン酸などの疎水性部分で修飾された抗原ペプチドを含む。本発明の疎水性部分は、脂肪酸の場合があるほか、脂肪酸の炭素骨格が少なくとも10個の炭素原子を含むトリグリセリドおよびリン脂質の場合がある。最も好ましいのは、少なくとも約14個、最大約24個、の炭素原子を含む炭素骨格を含む脂肪酸を有する親油性部分である。最も好ましい疎水性部分は、少なくとも14個の炭素原子の炭素骨格を有する。疎水性部分の例には、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリル酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などがあるが、これらに限定されない。最も好ましい疎水性部分はパルミチン酸である。
【0074】
本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物は、感染微生物などの抗原性微生物に対する免疫を誘導するためにヒトまたは動物に投与される。免疫化されたヒトまたは動物は、感染微生物に対する循環性の抗体を生じることによって、疾患の発症・進行を促す能力を減じたり不活性化したりする。
【0075】
また、本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物を使用して、例えばアルツハイマー病を含む、種々の疾患に特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のパネルが作られる。抗体は、当業者に周知の方法で作られる。
【0076】
本発明の組成物は、任意の適切な手段、好ましくは注射、でヒトまたは動物に投与される。例えば、リポソーム中に再構成された修飾型抗原ペプチドは皮下注射によって投与される。身体の内部で産生されたか、または外部供給源から提供されたかに関わらず、循環性の抗体は抗原に結合し、疾患の発症・進行を促す能力を減じたり不活性化したりする。
【0077】
本発明の組成物に使用可能なリポソームは、当業者に周知のリポソームを含む。リポソームの作製に有用な任意の標準的な脂質を使用することができる。標準的な二重層および多層のリポソームを使用して、本発明の組成物を作製することができる。当業者に周知のリポソームを作製する任意の方法を用いることができるが、最も好ましいリポソームは、参照として本明細書に組み入れられる文献(Alving et al., Infect. Immun. 60: 2438-2444, 1992)に記載された方法で作られる。リポソームは、任意でアジュバントを含む場合がある。好ましいアジュバントは、モノホスホリルまたはジホスホリル脂質Aなどの無毒化された脂質Aである。
【0078】
小胞がリポソームの場合、抗原ペプチドは一般に、リポソーム形成時にリポソーム膜内に挿入される疎水性の尾部を有する。加えて抗原ペプチドは、リポソーム内に挿入可能とするために、疎水性の尾部を含むように修飾可能である。例えば抗原ペプチドは、形成済みのリポソームの表面に、化学結合または電気的挿入(electroinsertion)によって露出させることができる。
【0079】
本発明で提供される抗体は、アルツハイマー病、多剤耐性癌、およびプリオン病などの、種々の疾患の存在を示す感染微生物または抗原ペプチドに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。
【0080】
モノクローナル抗体は、マウスやウサギなどの動物を本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物で免疫化することで調製される。免疫化された動物から脾臓細胞を切除し、感作された脾臓細胞と、マウスのSP2/O骨髄腫細胞(ATCC, Manassas, VA)などの骨髄腫細胞系列を融合させることでハイブリドーマを得る。細胞の融合は、ポリエチレングリコールを添加することで誘導される。ハイブリドーマは、細胞をヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT)を含む選択培地にプレーティングすることで化学的に選択される。
【0081】
次に、特定の疾患または障害に対するモノクローナル抗体の産生能力に関して、ハイブリドーマのスクリーニングを行う。対象抗体を産生するハイブリドーマをクローン化し、増殖させ、凍結保存して将来の抗体産生用とする。好ましいハイブリドーマは、IgGアイソタイプ、より好ましくはIgG1アイソタイプ、を有するモノクローナル抗体を産生する。
【0082】
ポリクローナル抗体は、上述の本発明の超分子抗原性コンストラクト組成物でマウスやウサギなどの動物を免疫化することで調製される。次に個体から血清を採取し、血清中の抗体を対象に、標的物質に対する結合反応性に関するスクリーニングを行う。
【0083】
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれか、またはこの両方を、後述する生物学的試料中の標的物質の同定用の検出可能な標識で直接標識することができる。免疫アッセイ法で使用される標識は一般に当業者に知られており、酵素、放射性同位元素、および蛍光物質、発光物質、および金コロイドやラテックスビーズなどの着色粒子を含む色素産生物質を含む。抗体を固相に結合させることで、抗体-抗原複合体と、免疫アッセイ法における非反応成分の分離を容易にすることもできる。例示的な固相物質には、マイクロタイタープレート、試験管のほか、磁気をもつ、プラスチック製の、またはガラス製のビーズおよびスライドなどが挙げられるが、これらに限定されない。抗体を固相に結合させる方法は当業者に周知である。
【0084】
あるいは抗体を、プロテインAもしくはプロテインG、または第2の抗体などの免疫グロブリンに対する親和性を有する標識物質と反応させることで間接的に標識することができる。抗体に第2の物質を結合させることで、抗体に結合させた第2の物質に親和性を有する、標識された第3の物質で検出することができる。例えば、抗体にビオチンを結合させ、抗体-ビオチンのコンジュゲートを、標識されたアビジンまたはストレプトアビジンを使用して検出することができる。同様に、抗体にハプテンを結合させ、抗体-ハプテンコンジュゲートを、標識された抗ハプテン抗体を使用して検出することができる。抗体を標識してコンジュゲートを検討する、以上の方法および他の方法は当業者に周知である。
【0085】
好ましい態様では、抗体を、検出可能な標識で標識された第2の抗体との反応性によって間接的に標識する。第2の抗体は好ましくは、モノクローナル抗体が由来する動物の抗体に結合する抗体である。言い換えると、仮にモノクローナル抗体がマウスの抗体であれば、標識された第2の抗体は抗マウス抗体である。後述するアッセイ法で使用されるモノクローナル抗体に関しては、このような標識は好ましくは、抗体でコーティングされたビーズ(特に磁気ビーズ)である。本明細書に記載された免疫アッセイ法で使用されるポリクローナル抗体の場合、標識は好ましくは、放射性物質、蛍光物質、または電気化学発光物質などの検出可能な分子である。
【0086】
製剤
免疫原性を有するタンパク質もしくはペプチドの全体もしくは活性部分を含む、天然もしくは合成のタンパク質、ペプチド、またはタンパク質断片は、薬学的に許容可能な担体中などの生理学的に許容される製剤中に、既知の手法で調製できる。例えば、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質断片と薬学的に許容可能な賦形剤とを混合することで、治療用組成物が得られる。
【0087】
あるいは、免疫原性ペプチドの全体もしくは活性部分を含むタンパク質、ペプチド、またはタンパク質断片をコードする遺伝子を、遺伝子治療による連続投与用に、ベクターを使用して輸送することができる。このようなベクターは、腫瘍などの標的部位に対する特異性を有する輸送体とともに投与することができる。
【0088】
本発明の組成物は、固体、液体、またはエアロゾルの状態で投与することができる。固体組成物の例には、丸剤、クリーム、および埋め込み型の用量単位などがある。丸剤は経口的に投与することができる。治療用のクリームは局所的に塗布することができる。埋め込み型の用量単位は、局所的に、例えば腫瘍部位に、投与可能なほか、治療用組成物の全身的な放出を目的として、例えば皮下に埋め込むことができる。液体組成物の例には、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内への注射に適した製剤、ならびに局所投与用および眼内投与用の製剤などがある。エアロゾル製剤の例には、肺への投与を目的とした吸入用製剤などがある。
【0089】
本発明の組成物は、標準的な投与経路で投与することができる。一般に組成物は、局所、経口、直腸内、鼻内、または非経口的な(例えば、静脈内、皮下、もしくは筋肉内)の経路で投与することができる。また組成物は、望ましい輸送部位(例えば腫瘍部位)の近傍に埋め込まれるポリマーである生分解性ポリマーなどの徐放性基剤中に組み入れることができる。本発明の方法は、単回投与、所定の時点における反復投与、および所定の期間における持続的投与を含む。
【0090】
本明細書で用いる徐放性基剤は、酵素もしくは酸/塩基による加水分解によって、または溶解によって分解する材料(通常はポリマー)から作られる基剤である。このような基剤は、身体内に挿入されると、酵素および体液の働きによって作用する。徐放性基剤は望ましくは、リポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドコ-グリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、硫酸コンドロイチン、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、ポリサッカライド、核酸、ポリアミノ酸、アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンなど)、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン、およびシリコーンなどの、生体適合性を有する材料から選択される。好ましい生分解性基剤は、ポリラクチド、ポリグリコリド、またはポリラクチドコ-グリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)のいずれか1種類の基剤である。
【0091】
組成物の用量は、治療される病気、使用する組成物の種類、および患者の体重や状態などの他の臨床的要素、ならびに投与経路によって決定される。
【0092】
組成物は、他の組成物と組み合わせて、また疾患を治療するための手順で投与することができる。例えば、望ましくない細胞増殖を、組成物の投与を組み合わせた外科手術、放射線療法、または化学療法による従来の手順で治療することが可能であり、また追加用量の組成物を、続けて患者に投与することで、任意の残存する望ましくない細胞増殖の進行を安定化および阻害することができる。
【0093】
超分子抗原性コンストラクト
本発明の超分子抗原性コンストラクトは一般に、抗原作用を増強するために修飾されたペプチドを含み、このようなペプチドは、(ポリエチレングリコールもしくは修飾型ポリエチレングリコールを使用する)PEG化によって修飾されるか、またはパルミチン酸、ポリアミノ酸(例えば、ポリグリシン、ポリヒスチジン)、ポリサッカライド(例えば、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン)、合成ポリマー(ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル)、または共重合体(例えば、ポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド)などによるような他の方法で修飾される。
【0094】
ある態様では、本発明の超分子抗原性コンストラクトは、PEG化されたリジンが各末端に1残基ずつ共有結合で結合されたペプチド配列を含む。PEG(ポリエチレングリコール)鎖の長さは8〜150000の間で変動しうる。PEGの自由端は、ホスファチジルエタノールアミンの分子に共有結合で結合されている(脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸など、またはこれらの組み合わせの場合がある)。この超分子構造は、リン脂質およびコレステロール(ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、コレステロール)を、種々のモル比で含むリポソームにおいて再構成することができる。他のリン脂質を使用することができる。脂質Aは、約40μg/pmoleリン脂質の濃度で使用される。
【0095】
ある態様では、超分子抗原性コンストラクトは、βアミロイドのアミノ酸配列を有するペプチドを含む。このようなペプチドは、アミロイドベータペプチドの全体、およびその活性断片を含む場合もあるほか、これらに対応する場合がある。加えて、本発明に有用なペプチドは、Aβ4-11(SEQ ID NO: 2)、Aβ22-35(SEQ ID NO: 3)、およびAβ29-40(SEQ ID NO: 4)、およびAβ1-16(SEQ ID NO: 5)、ならびにそれらの活性断片をさらに含む。
【0096】
他の特定の態様では、超分子抗原性コンストラクトは、P170糖タンパク質の細胞外ループ1、4、および6を含むペプチド配列を含む。他の特定の態様では、超分子1抗原性コンストラクトは、プリオンタンパク質のアミノ酸配列109〜129位を含むペプチド配列を含む。
【0097】
本発明はさらに、リポソーム中に再構成された超分子構造体に対するモノクローナル抗体も含み、例えばペプチド配列は、アミロイドタンパク質のアミノ酸配列を含む。加えて、ペプチド配列がP糖タンパク質(P170)の細胞外ループに由来する1つまたは複数のアミノ酸配列である超分子構造体に対するモノクローナル抗体も本発明に含まれる。
【0098】
ペプチド配列が、対象タンパク質から選択されるアミノ酸配列を含む、超分子構造体に対するモノクローナル抗体も本発明に含まれる。例えば具体的には、本発明は、リポソーム中に再構成された超分子構造に対するモノクローナル抗体を含み、ペプチド配列は、ヒトのアルツハイマー病のモデルであるトランスジェニックマウスで脳内出血を誘導しないβアミロイドタンパク質(4-10、または1-8、または8-16など)から選択されるアミノ酸配列である。本発明はさらに、抗原ペプチドの構造的特徴に感受性を示すモノクローナル抗体を含む。本発明の抗体を作製するための特定の手順、およびこのような抗体の特性解析に関する特定の情報については、以下の実施例で述べる。
【0099】
アミロイド
βアミロイドの7残基のアミノ酸配列:FRHDSGY(SEQ ID NO: 1)を合成した。1残基のリジンを、同配列の各末端に共有結合で結合させた(1)。このリジンは、上記配列への結合に先立ち、ポリエチレングリコールの鎖(PEG、n=8〜2000)に反応させた。一方の末端においてリジンに結合したポリエチレングリコール鎖は、以下に示すように、ジオレイル-ホスファチジルコリンエタノールアミン(または任意の脂肪酸-ホスファチジルコリン)の分子に共有結合で結合される(2)。
化学的に修飾されたβアミロイド抗原
【0100】
次に、化学的に修飾された抗原を、リン脂質およびコレステロールを含むリポソーム中に再構成する(3)。適切なリポソームの例には、DOPG、DOPEA、Chol.(脂質Aの濃度は40μg/μmoleリン脂質)などがあるが、これらに限定されない。化学的に修飾されたアミロイド抗原を使用して再構成されたリポソームを示す代表的な略図を図2に示す。
【0101】
本発明の超分子抗原性コンストラクトは、リポソーム中に再構成されたパルミトイル化抗原を上回る、非常に多くの利点を有する。第1に、長いPEG鎖(n=8〜5000)は、ペプチド配列の曝露および接触性(accessibility)を有意に促進する。抗原提示は改善され、また誘導された抗体の立体構造感受性は高められる。本発明の別の利点は、種々の立体構造中のペプチド配列を使用可能な点である。ペプチド配列とリポソーム表面間の距離が離れることは、リポソーム表面がペプチド配列と相互作用しないことを確実にし、このため、その構造におそらく影響を及ぼす。また、コンストラクトの抗原性は、リポソーム中に再構成されたパルミトイル化配列の抗原性より有意に高くなる。1:5000〜1:10000の間に含まれる抗体の高力価は、マウスで数週間以内に得られる。加えて、抗原に対する抗体の親和性は有意に高まる。アミロイド配列FRHDSGY(SEQ ID NO: 1)の場合、コンストラクトの腹腔内(ip)注射または静脈内(iv)注射によって誘導された抗体は、Aβ1-40繊維およびAβ1-42繊維を効率的に可溶化し、インビトロでPC12細胞を、Aβ1-42繊維およびAβ1-40繊維によって誘導されるアポトーシスおよび代謝阻害(MTT還元)から保護する。
【0102】
本発明の1つの態様では、アミロイドタンパク質のFRHDSGY(SEQ ID NO: 1)配列を使用するが、他の任意のアミロイドタンパク質の配列を代用することができる。ポリクローナル抗体に関する上記のインビトロ特性に加えて、上述のコンストラクトで免疫化されたマウスから得られたモノクローナル抗体は、ヒトのアルツハイマー病のモデルであるAPP[V717I] FVBトランスジェニックマウスにおいて生物学的活性を示す。これらのマウスには、有意なレベルの記憶回復および好奇心の喚起が観察される。このmAbは、免疫化されたトランスジェニックマウスで脳内出血を引き起こさない。
【0103】
以下の理論に拘泥するわけではないが、抗アミロイドmAb(本発明の方法で作製された1-16配列に対する抗体)の相互作用(主に繊維の可溶化およびCDスペクトル)を調べるインビトロ試験に基づいて、抗体は、αらせん構造中のβアミロイドに優先的に結合すると考えられる。このため、アミロイド繊維の可溶化作用を熱力学的用語で説明できると考えられる。抗体は、αらせんに優先的に結合することによって、αらせんアミロイドを以下の平衡式から解離させる:
Aβ(αらせん)←→Aβ(βシート)
この結果、より多くのβシート構造中にあるβアミロイドが、平衡を再び確立するために、可溶性のαらせん型に構造転移する。化学量論的な観察の結果は、mAbが構造の平衡に直接影響を及ぼすという仮説を支持している。
【0104】
Selkoe(2002)で詳述されているように、アルツハイマー病はシナプス不全として発現する。アルツハイマー病の初期段階では、記憶力低下は、このような不調に起因する可能性がある。例えば、可溶性のオリゴマーAβ1-40はシナプスをブロックする可能性があると考えられている。本発明の方法で作製されたモノクローナル抗体は可溶性のオリゴマーAβ1-40と結合する。抗体の存在下および非存在下におけるシナプスの導通性(conductivity)を測定することで、可溶性オリゴマーの存在下における抗体の対シナプス作用が決定される。
【0105】
本発明の発明者らは、超分子コンストラクト中に埋め込まれたAβ4-11(SEQ ID NO: 2)、Aβ22-35(SEQ ID NO: 3)、およびAβ29-40(SEQ ID NO: 4)などのエピトープについて得られた数種類のmAbの活性を調べた(図5参照)。配列4〜11は、パルミトイル化されたAβ1-16抗原(SEQ ID NO: 5)によって誘導されたmAbに対するエピトープであると判定された。
【0106】
本発明の方法により、新規で固有の修飾型ペプチド抗原を、mAbを得るために使用した:
【0107】
細胞外ドメインと膜貫通(TM)ドメインの境界は、阻害抗体(ハーセプチン・トラスツズマブ(Herceptin-Trastuzumab)抗HER2/neu抗体など)の標的になることがわかっており、また多数回貫通性(multispanning)のTMタンパク質中では、低分子量阻害剤の標的となるポケットが形成される(Dragic et al., 2000)。以下の理論に拘泥するわけではないが、この配列は、極性領域と疎水性領域間の転移を示すことから、Aβ1-42およびAβ1-40のオリゴマー形成能に重要な役割を果たしている可能性が高い(「細胞外配列」という表現は、Aβ1-42アミロイド生成性の配列中の細胞外配列を意味する表現として用いられる)。同配列は、Aβ1-42およびAβ1-40の配列の最初に2つのGXXXGXXXGモチーフを含む。GXXXGは、疎水性配列のオリゴマー形成の重要な誘導配列である(Russ and Engelmann, 2000)。興味深いことに、第1のGXXXGモチーフは細胞外に存在すると推定されており、続く2つは膜内に位置すると推定されている。以下の理論に拘泥するわけではないが、アナロジーによって、Aβペプチドのオリゴマー形成が、GXXXGモチーフによって特異的に引き起こされると考えることができる。
【0108】
Aβ1-42およびAβ1-40の疎水性配列は、疎水性配列の強いオリゴマー形成を誘導することがわかっているモチーフGXXXGXXXGGを含む(Eilers et al., 2002; Leeds et al., 2001; Lemmon et al., 1994; Russ and Engelmann, 1999; Russ and Engelmann, 2000; Smith and Bormann, 1995)。このモチーフは、治療法の第1の標的と見なされている。なぜなら、Aβ1-42およびAβ1-40の形成、オリゴマー形成、ならびに蓄積に至るあらゆる病原過程に重要な役割を担っているに違いないからである。APPの完全な配列に関しては、SREBPの切断(Ye et al., 2000)から明らかにされているように、同モチーフが、γ-セクレターゼによる処理を受けるために解きほぐされる必要がある下流配列を覆う可能性が高い。この配列がアミロイドのオリゴマー形成に重要な役割を果たすことは、これまで指摘されていない。本明細書に記載されたように、本発明の修飾型の超分子(好ましくはPEG化型)抗原の抗原性は高く、またこれによって誘導された抗体の親和性は高い。Aβ1-16に加えて、本発明の超分子コンストラクトは、ワクチンとして使用される際に、Aβ4-11(SEQ ID NO: 2)、Aβ22-35(SEQ ID NO: 3)、Aβ29-40(SEQ ID NO: 4)で表されるペプチドも含む。
【0109】
N-α位におけるペプチドのモノPEG化の方法は既知であり、また広く使用されている。中程度の長さのペプチドの内部、N末端、またはC末端のアミノ酸残基における部位特異的なモノPEG化は、固相法またはペプチドのグラフト化のいずれかで達成されることが報告されている。しかし、ジPEG化ペプチドを対象とする固相合成法は、立体障害によって大きく阻害されることが報告されており、またこのプロジェクトの開始の時点では、このような化合物に関する効率の良い合成法は報告されていなかった。また、N末端およびC末端において、PEGおよび脂質部分の両方によって部位特異的に誘導体化されたペプチドは、これまで報告されていない。本明細書で発明者らは、このようなAβペプチドコンジュゲートの新しい合成法について述べる。
【0110】
本発明の到達時において、いくつかの方法が試みられており、その大半は失敗に終わっている。例えば、合成に関する初期の取り組みでは、遠位アミン基を含む脂質-PEGコンジュゲートの、末端にグルタミン酸残基を含む、側鎖が保護されたペプチド(Aβ4-11、1-16、22-35、および29-40)に対する樹脂表面グラフト化が注目された。種々の反応条件で、カップリング産物は認められなかった。実施例2で説明するように、また図5に示すように、本明細書に記載された超分子コンストラクトは通常、Fmoc/tBuアミノ酸側鎖保護法で合成された。
【0111】
保護ペプチドを使用する、N末端およびC末端の脂質-PEG βアミロイド抗原の合成に関する、この新しい方法は、例えば多剤耐性タンパク質であるP糖タンパク質を含む種々のペプチド配列に応用可能である。
【0112】
本明細書に記載された抗原ペプチドの有効性を評価するために、PEG化抗原とパルミトイル化抗原の免疫原性をELISAアッセイ法および脱凝集アッセイ法で比較する実験を行った(実施例Bおよび図7参照)。ELISAデータから、リポソームPEG-Aβ1-16の免疫原性がパルミトイル化Aβ1-16よりも有意に大きいことがわかった。ミョウバン(ALUM)を添加しても、マウスにおけるPEG-Aβ1-16の免疫原性は高められなかった。PEG-Aβ4-11によって誘導される抗体反応は、PEG Aβ1-16の場合と比較して緩やかであった。
【0113】
したがって要約すると、本発明は、種々のアミロイド配列を露出した超分子抗原に対する新しいモノクローナル抗体を提供する。特に、2つのポリエチレングリコール(n=70)鎖を選択されたアミロイド配列に共有結合で結合させるための、独自の合成経路を考案した。PEG鎖の自由端には、ホスファチジルエタノールアミンを共有結合で結合させた。以下の理論に拘泥するわけではないが、その機能は、PEG化されたアミロイド配列をリポソームの二重層中に係留することであると考えられる。PEG化は本発明で、パルミトイル化と比較して抗原の免疫原性を高めることが明らかにされている。これらのモノクローナル抗体による、親和性テスト、エピトープの決定、構造転移の誘導については、発明者らの研究室で実施中である。本発明の固有の修飾法は、種々のペプチドに応用可能であり、また究極的には、アルツハイマー病、癌、および感染症を含むが、これらに限定されない疾患や障害に対する治療用製剤およびワクチンに使用することができる。
【0114】
本明細書に記載されているように、本発明の超分子抗原性コンストラクトは、抗原作用を増強するために修飾されたペプチドを含む。このようなペプチドは、(ポリエチレングリコールもしくは修飾型ポリエチレングリコールを使用する)PEG化によって修飾されているか、またはパルミチン酸、ポリアミノ酸(例えば、ポリグリシン、ポリヒスチジン)、ポリサッカライド(例えば、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン)、合成ポリマー(ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル)、もしくは共重合体(ポリ(メタクリル酸)およびN-2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド)などを使用する他の方法で修飾されている。アルツハイマー病などの神経疾患の治療的介入に関しては、本発明はアミロイドβペプチドの修飾を含む。
【0115】
癌細胞におけるMultidrug resistance 1(MDR 1)
癌細胞における多剤耐性1は、癌細胞から、種々の互いに無関係の化学療法剤を排出する膜ポンプであるP糖タンパク質(P170)の過剰発現によって生じる。
【0116】
リポソーム中に再構成された、P170のパルミトイル化された細胞外配列による免疫化によって、MDR1 L1210マウス白血病細胞における、インビトロにおける感受性のある表現型は回復した(3)。MDR癌細胞が接種され、化学療法的処置を受けた免疫化マウスの生存半減期が70%延長されることを示す結果はインビボでも得られている(Madoulet, Tosi, Nicolau et al., 2002、未発表の結果)。
【0117】
本発明の発明者らは本明細書で、本発明の方法で構築されたP170の細胞外配列1、4、および6を含む抗原について、MDRの表現型を、インビトロおよびインビボで感受性を示す表現型に大きく逆転させる抗体を誘導する効率が、はるかに高いことを明らかにする。
【0118】
本発明の方法によって、P170の細胞外ループ1、4、および6に対応するペプチドを合成した後に、PEG化されたリジンを、各末端に1つずつ結合させた。この結果、各末端において1つのジオレイルホスファチルエタノールアミン分子に共有結合で結合されたことになる。任意の脂肪酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、または多不飽和脂肪酸を使用することができる。
【0119】
以上の3種類のコンストラクトを、PC-PEA-PG-コレステロール(または他の任意のリン脂質やコレステロールの組み合わせ)を含むリポソーム中に再構成した。脂質Aは40μg/μmoleリン脂質の濃度で添加した。ペプチド:リン脂質の比は1:200とした(他の比率も使用できる)。
【0120】
ポリエチレングリコール鎖の長さは様々であり、長いペプチド配列ほど、鎖中に必要なPEG分子の数が増える。使用した3つの配列のPEG鎖長は10〜5000であった。他の鎖長を使用することが可能である。図3は、複数のP170抗原を示す代表的な模式図である。
【0121】
この抗原の腹腔内(IP)接種と、これに続く2週間の間隔を設けた3回のブースティング(boosting)によって、インビトロおよびインビボでP170のポンプ活性をブロック可能な、高力価の抗P170抗体(1:5000〜1:10000)が誘導された。
【0122】
プリオン病
プリオンは、ヒツジのスクレイピー、家畜のウシ海綿状脳症、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病などの神経変性疾患を引き起こす。プリオン粒子の既知の唯一の成分は、スクレイピーイソ型のタンパク質PrPScである。プリオンは複製されるが、核酸を含むことを示す証拠はない。PrPScは非感染性の細胞タンパク質PrPcに由来し、PrPcが大きな構造変化を受ける翻訳後過程を経て生じる。
【0123】
スクレイピータンパク質PrPScは、ニューロンの変性に重要な役割を果たし、また疾患の進行過程では、(正常な細胞イソ型タンパク質である)PrPc、感染型(タンパク質のスクレイピーイソ型である)PrPSc、タンパク質PrP 27-30の3つの段階の転移を経る。このようなカスケードは、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、クールー(Kuru)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症、ヒツジおよびヤギのスクレイピー、ミンクの脳症、ならびに家畜のウシ海綿状脳症の発症中に生じる。
【0124】
細胞の非毒性タンパク質PrPcは、主にニューロンで発現される分子量33〜35 Kのシアロ糖タンパク質である。上述した疾患では、PrPcは、プロテアーゼによる切断に対する相対耐性に関して正常相同分子と区別可能な改変型(PrPSc)に変換される。PrPScは、罹患した動物および患者の中枢神経系に蓄積し、またそのプロテアーゼ耐性のコアは細胞外で凝集する。発症の分子基盤は不明である。
【0125】
このタンパク質の断片の神経毒性に関しては、非常に興味深い観察がなされており、これは、関連する脳症で生じる神経細胞変性の機構の解明につながる可能性がある。
【0126】
アルツハイマー病におけるアミロイド原繊維およびプラークの細胞外蓄積に関与するβアミロイド断片に神経毒性があるという観察を元に、関連脳症におけるニューロン死が、PrPScおよび/または、この分解産物の異常な細胞外蓄積による毒性作用に起因する可能性があるのではないかと仮定されている。
【0127】
PrPcの種々の部分に相同な合成ペプチドが、ラット海馬ニューロンの一次培養物の生存に及ぼす影響を調べるために使用された(図4)。
【0128】
本発明の発明者らは、ラット海馬一次培養物の、ヒトのPrPc cDNAから推定されるアミノ酸配列の残基106〜126位に対応する、マイクロモル濃度のペプチドに対する長期曝露によって、ニューロン死が濃度依存的に起こることを明らかにした(実施例1)。
【0129】
実施例1で説明するように、発明者らは、PrP 106-126によって誘導されるニューロン死が、アポトーシスによって用量依存的に生じることを示した。スクレイピーなどの亜急性脳症の末期では、脳全体におけるPrPScの濃度はPrPcより10〜20倍高くなる。この結果は、PrP 106-126の2つの濃度に関して表1に列挙したデータと著しく類似している。
【0130】
PrP 106-126によって引き起こされるプログラム細胞死の過程には、特にテストステロン抑制型前立腺メッセージ-2(testosterone repressed prostate messege-2)遺伝子(TRPM-2)の誘導が関与する。アポトーシスが、関連脳症においてインビボで活性化されるか否かは不明であるが、TRPM-2のmRNAの発現は、スクレイピー感染ハムスターでは10倍上昇する。
【0131】
以上のデータから、神経毒性機構が、関連脳症におけるニューロン死とおそらく関連すること、またアルツハイマー病にも関連性があると考えられる。
【0132】
この神経毒性の推定機構を、ペプチドまたはタンパク質と脂質二重層の相互作用時におけるイオンチャネルの形成の検出および解析を目的としたモデル系において調べた。
【0133】
PrP 106-126によるチャネル形成に適した低いpHはまた、このペプチドをαらせん構造からβシート構造へと変換する。エドマン配列決定法および質量分析によるPrPScのペプチドマッピングでは、そのアミノ酸配列と、PrPc遺伝子配列の推定配列との間に差は認められず、PrPScをPrPpと区別する化学的な構造は認められなかった。しかし、フーリエ変換赤外分光観測、および円偏光二色性分光法の結果、PrPScとPrPpには構造に有意な差があることがわかった。
【0134】
PrPcは本質的にαらせん状であり、βシートはわずかであるか、または存在しない。これに対してPrPScはβシート構造含量が多く、αらせん構造はより少ない。
【0135】
配列
は、極めて疎水性が高いだけではなく、低いpHでβシート構造に変換する。さらに同配列は溶液中で、他のペプチドをβシート構造に変換可能である。
【0136】
以上の観察、また発明者らが開発した手法を元に、神経毒性PrP 106-126に対する強い液性および細胞性の免疫反応をマウスで引き起こすことで、疾患に対する「ワクチン」を開発し、続いて、免疫化したマウスをスクレイピーマウスの脳抽出物でチャレンジした。
【0137】
既に挙げた例と同様に、PEG化されたリジンをPrP 106-126配列の各末端に共有結合で結合させた。PEG鎖の長さは12〜4000であった。PEG鎖は、ホスファチジルエタノールアミンの1分子に対して相互に結合させ、PG-PEA-cholリポソーム-脂質Aにおいて再構成した。
【0138】
この超分子抗原性コンストラクトをマウスに注入したところ、強い液性免疫反応が引き起こされ、PrP 106-126配列に対して高親和性を有し、かつ内部に可溶化作用を有する抗体が得られた。
【0139】
以上の説明は、本発明の好ましい態様のみに関連し、また添付の特許請求の範囲に記載された本発明の意図および範囲から解離することなく、数多くの修正または変更が成される可能性があると理解すべきである。本明細書で引用された参考文献は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる
【実施例】
【0140】
実施例1
発明者らは、ラット海馬一次培養物を、ヒトのPrPc cDNAから推定されるアミノ酸配列の残基106〜126位に対応するマイクロモル濃度のペプチドに長期曝露することで、ニューロン死が濃度依存的に生じることを明らかにした。得られたデータを表1に示す。
【0141】
(表1)海馬ニューロンの9日間の長期間処置
【0142】
データは6〜10回の決定の平均±標準偏差であり、PrP106-126の毒性作用(100%反応と標示する)に対して標準化したものである。
【0143】
PrP 106-126によって誘導されるニューロン死が、アポトーシスによって用量依存的に生じることが示された。スクレイピーなどの亜急性脳症の末期では、PrPScはPrPcと比べ10〜20倍高い全脳濃度に達し、これは、PrP 106-126の2つの濃度に関する表1のデータと極めて似ている。
【0144】
PrP 106-126によって誘導されるプログラム細胞死の過程は特に、テストステロン抑制型前立腺メッセージ-2遺伝子(TRPM-2)の誘導と関連する。関連脳症中に、インビボでアポトーシスが活性化されるか否かは不明であるが、TRPM-2 mRNAの発現は、スクレイピー感染ハムスターでは10倍上昇する。
【0145】
実施例2
超分子抗原性コンストラクトの作製法
本明細書に記載された超分子コンストラクトは、標準的なFmoc/tBuアミノ酸側鎖保護法で特異的に合成された。PEG脂質部分によってC末端とN末端の両方が修飾されるペプチドについては、過去に報告がない。典型的には、ペプチドのPEG化によって、位置異性体の混合物が得られる。本明細書で発明者らは、部分的に保護されたペプチドを使用して、AβのC末端およびN末端の両方にPEG-脂質コンジュゲートを部位特異的に結合する簡便な方法を明らかにする。
【0146】
内部にLys残基またはHis残基を含む、ペプチド配列(4-11、1-16、22-35)については、直交的に保護されたLys(ivDde)を各末端に追加した。合成を促進するために、追加のGlyをC末端に加えた。Fmoc基をDMF中の20%ピペリジンで除去し、無水酢酸でN-アセチル化した。ivDde基の選択的な切断は、DMF中の3%ヒドラジン水和物を使用して1時間かけて行った。2-クロロトリチル樹脂は、ヒドラジン分解に対する耐性がより強いことが証明されているため、より広く使用されているWang樹脂より好ましい。さらに2-クロロトリチル樹脂は極めて酸感受性が高いので、Wang樹脂とは異なり、保護ペプチドの単離を可能とする。実際には、樹脂に結合したペプチドの、活性化済みのPEG化脂質試薬DSPE-PEG-SPAへのカップリングでは、いかなるカップリング産物も生じなかったため、カップリング反応は液相中で行う必要があった。したがって、穏和な条件(酢酸/トリフルオロエタノール/ジクロロメタン、1:1:8、1時間、室温)における、樹脂からの選択的な切断によって、内部が保護されたペプチドが得られた(図5)。
【0147】
DMSO中のDSPE-PEG-SPA、および過剰な基材に対する、配列Aβ4-11(SEQ ID NO: 2)、Aβ1-16(SEQ ID NO: 5)、Aβ22-35(SEQ ID NO: 3)に由来するペプチドの液相カップリングは成功裡に達成された(図6)。この反応は、過剰なエタノールアミンを2時間かけて添加することで停止させ、溶液は凍結乾燥処理した。HPLC(半調製逆相C4カラム)による精製では、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)で存在が確認されるN末端およびC末端のPEG-脂質コンジュゲートについて50〜70%の純度が得られた。個々の配列は、カップリング反応の容易さに大きなばらつきを示したので、条件(温度、DSPE-PEG-SPAのモル当量、時間)を調節した。HPLCによる精製の結果、過剰なDSPE-PEG-SPAの所望の産物からの分離が良好であることが明らかとなったが、前者は、カラムに対して親和性を示さないため、モノPEG-脂質(N末端とC末端の両方)ペプチド産物の所望の産物からの分離は困難であることが判明した。これらの産物のサイズ排除クロマトグラフィーによる分離の試みも不成功に終わった。その原因はおそらく、多分散性が比較的大きいことにある。これにもかかわらず発明者らは、最終的な側鎖の脱保護に先立つモノ共役物とジ共役物との分離に、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用する。続くペプチド側鎖の脱保護と、過剰な消光した(quenched)DSPE-PEG-SPAの分離によって、所望のコンジュゲートの高い純度による分離が可能となる。
【0148】
実施例3
PEG化抗原とパルミトイル化抗原の免疫原性の比較、ELISAおよび脱凝集アッセイ法
リポソーム抗原は上述の手順で作製した。配列PEG-Aβ1-16、PEG-Aβ4-11、およびPEG-Aβ22-35を、モノホスホリル脂質A(40 mg/mMリン脂質)を含む、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPEA)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、およびコレステロール(モル比0.9:0.1:0.1:0.7)から作製されたリポソームを含むコンストラクト中に再構成した。
【0149】
ELISA
C57BL/6マウスの免疫化には、抗原およびパルミトイル化Aβ1-16を、2週間間隔で使用した。10〜12匹の動物を各抗原で免疫化した。ブースティングの5日後に血清を採取し、複数の希釈段階の血清を用いてELISAを実施した。種々の抗原の免疫原性を示す比較の結果を図7に示す。
【0150】
ELISAのデータから、リポソームPEG-Aβ1-16の免疫原性が、パルミトイル化Aβ1-16より有意に大きいことがわかった。ミョウバンの添加は、マウスにおけるPEG-Aβ1-16の免疫原性を高めなかった。PEG-Aβ4-11によって誘導された抗体反応は、PEG-Aβ1-16と比較して緩やかであった。
【0151】
脱凝集アッセイ法
リポソーム-PEG-Aβ4-11で免疫化された動物から採取した9種類の血清(希釈率1:100)を、事前に形成されたAβ1-42繊維と抗血清とをインキュベートしたアッセイ法に使用した。このアッセイ法は、文献記載の手順で実施した(Nicolau et al., 2002)。
【0152】
種々の血清によるAβ1-42繊維の可溶化が、24時間のインキュベーション時間で認められた(図8)。血清の一部は、75%の規模で繊維を可溶化した(マウス5およびマウス6の血清)。これらのマウスの脾臓細胞をモノクローナル抗体産生に使用することとした。
【0153】
実施例4
可溶化アッセイ法
パルミトイル化Aβ1-16/リポソーム/脂質Aで免疫化された2匹の動物から、Aβ1-42特異的抗体に特異性を示すことがわかっている、最近作製されたハイブリドーマクローンについて25個の上清を得た。これらを可溶化アッセイ法で、PNAS 2002, 99, 2332-2337に記載された方法および手順に従って検討した。得られた結果を図9にまとめる。
【0154】
5つのハイブリドーマクローンの上清は、βアミロイド繊維をインビトロで最大75%の規模で可溶化可能なことがわかった。2つの最も優れたクローン(15および27)を、モノクローナル抗体の精製用に選択した。これらを、インビボにおけるさらなる検討のため、正の対照のmAbとして使用する。
【0155】
実施例5
固体NMR分光法によるAβ1-42-ペプチドのβシートからαらせんへの転移の調査
13C-標識アミノ酸の喪失を避けるために、Fmocペプチド合成によるAβ1-42の合成の検証を、試験合成によって、標識アミノ酸を使用せずに行った。Aβ1-42ペプチドが得られたか否かは、MALDI質量分析で検証可能であり、また逆相カラムおよびアンモニア緩衝アセトニトリル水勾配を用いるHPLCを用いた精製手順を確立することができた。
【0156】
アミロイドβペプチドの合成および精製に関する手順の成功裡の設定に続いて、12位(12val)に13C標識バリンを、かつ10位(10tyr)に13C標識チロシンを含む標識ペプチドが合成された。
【0157】
標識済みのAβ1-42を使用し、PBS緩衝液中のペプチド溶液を37℃で1週間インキュベートすることで繊維を得た。凍結乾燥後の繊維の13C NMRスペクトルから、βシート構造の存在が確認され、文献に記載された結果と矛盾は見られない。繊維とAβ1-16特異的抗体の2日間にわたるインキュベーションでは、13Cスペクトルに有意な変化は認められなかった。NMR測定の最初の評価は、二次構造の変化を示している(図10)。
【0158】
実施例6
超分子抗原性コンストラクトによって誘導される抗体
mAbの作製
リポソーム抗原を文献記載の手順で作製した(Nicolau et al., 2002, PNAS, 99, 2332-37)。配列、PEG-Aβ1-15、PEG-Aβ1-16、PEG-Aβ4-11、PEG-Aβ22-35、およびPEG-Aβ29-40を、モノホスホリル脂質A(40 mg/mMリン脂質)を含む、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPEA)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、およびコレステロール(モル比0.9:0.1:0.1:0.7)から作製したリポソームを含むコンストラクトにおいて再構成した。これらの抗原、およびパルミトイル化Aβ1-16をC57BL/6マウスの免疫化に2週間間隔で使用した。10〜12匹の動物を各抗原で免疫化した。3〜6回のブースティング後に、治療的力価(1:5,000の希釈率の血清がELISAで陽性であった)を示したマウスを融合用に選択した。このマウスの脾臓由来のBリンパ球と骨髄腫細胞系列SP2-0の融合を実施した。IgG産生ハイブリドーマクローンを選択し、Aβ1-42ペプチドに対する特異的な結合に関してELISAによる検討を行った。
【0159】
mAbの特性解析
脱凝集アッセイ法、NMR測定、QELS測定、およびSPR測定によってmAbの特性解析を行った。mAbは、形成済みのアミロイド繊維の最大80%の脱凝集を示した(表1)。アミロイドのβシートからαらせんへの転移は、同抗体によって誘導されることが判明した(図11、12)。準弾性光散乱(QELS)法による測定の結果、アミロイド繊維のモノクローナル抗体とのインキュベーションが、太さが800 nm以下の繊維を生じる(存在する全繊維の40〜60%)一方で、アミロイド単独の場合には、極めて大きな凝集体(>4μm)のみが得られることがわかった。
【0160】
(表1)PEG-Aβ1-15、-Aβ4-11、およびPalm-Aβ1-16の免疫化によって得られたmAb
【0161】
NMR測定
繊維に対するmAbの作用を評価するために、Aβ繊維を含む溶液を抗体と12日間インキュベートした。プロトン駆動スピン拡散測定(PDSD)を行い、2D 13C-13C相関スペクトルを測定した。NMRデータおよび解析結果を図11〜13に示す。NMR:EN4H7、ET-1H6、またはAN9C-E4との12日間のインキュベーション前後におけるアミロイドβペプチド繊維の13C-13C相関スペクトル(A、B)。列(D)および行(C)に相関スペクトルを抽出した。スペクトル(抗体なし)は、純粋な繊維のスペクトルを示し、スペクトル(抗体あり)は、mAbの存在下におけるスペクトルを示す。
【0162】
凍結乾燥状態の繊維の13Cスペクトルによって、共鳴の分配が可能となる。Val12およびTyr10のCαおよびCβの化学シフト値から、純粋な繊維がβシート構造をとることがわかる(図11)。12ValのCα核およびCβ核の共鳴のシフトは、βシートからαらせんへの転移を明瞭に示している。一方、Tyr10のCαおよびCβの共鳴のシフトは、二次構造の転移を明瞭に示していない。Tyr10の共鳴の挙動は、Tyr10が、アミロイド繊維中のAβ-ペプチドのβシート部とループ部の境界に位置するというモデルで説明可能である。
【0163】
第2の実験では、13Cを多く含む繊維をEN4H7抗体およびET1H6抗体とともに12日間インキュベートした(表1参照)。インキュベートされた繊維は、12ValのCβ核の、32 ppmから28 ppmへの共鳴シフトを示し、両抗体に関して、ペプチドのかなりの部分がβシートからαらせんへ転移したことがわかる(図12および図13)。10Tyrに関するCαおよびCβの共鳴は、抗体の存在下ではブロードとなる。この結果は、10Tyrの位置に関して、むしろ構造化されていないコンフォメーションへの転移を意味する。
【0164】
実施例7
PEG化抗原およびパルミトイル化抗原の免疫原性のELISAによる比較
ELISAで得られたデータから、リポソームPEG-Aβ1-16の免疫原性がパルミトイル化Aβ1-16より大きいことが判明した(図14)。ミョウバンの添加は、マウスにおけるPEG-Aβ1-16の免疫原性を高めなかった。PEG-Aβ1-16の場合と比較して緩やかな、PEG-Aβ4-11によって誘導される抗体反応を除いて、一般に、PEG化ペプチドは、パルミトイル化ペプチドよりも免疫原性が高いようである(図14)。
【0165】
実施例8
抗体の有効性を評価する行動テスト
本明細書に記載された方法で誘導された抗体、すなわち修飾型アミロイドペプチド(PEG化アミロイドペプチドなど)を含む超分子抗原性コンストラクトによって誘導された抗体の有効性を評価するために、マウスを処理し、以下に概説する行動テストで評価する。
【0166】
モリス水迷路(Morris Water Maze)
プール(白色、円形容器、直径1 m)に20℃の水を張り、併せて二酸化チタンを無臭の非毒性の添加物として、退避プラットフォーム(escape platform)(水面の1 cm下)を見えなくするために使用する。個々のマウスの泳ぐ様子を、ビデオカメラで撮影して解析する(Ethovision, Noldus information Technology, Wageningen, the Netherlands)。トレーニングに先立ち、各マウスをプラットフォーム上に15秒間置く。プレースナビゲーション(place navigation)テストのために、3日間連続で、3回の試行の5つのブロックにおいて、隠れたプラットフォームの位置を見つけるようにマウスをトレーニングする。各試行は、最大120秒間の強制的な水泳試験とそれに続く60秒間の休憩で構成される。個々のマウスがプラットフォームの位置に到達するまでに要した時間を測定する。連続5回の試行の結果から学習曲線を得る。
【0167】
最終トレーニングの24時間後に、各動物を対象に、プラットフォームを除いた状態で、プローブ試行を行う。マウスに60秒間探索させ、当初のプラットフォーム位置の四分円(quadrant)探索時間、および交差(crossing)を測定する。
【0168】
泳ぐことおよびプラットフォームの探索を拒み、代わりに実験者がプールから引き上げるまで待つマウス(いわゆる「フローター」)は解析対象から除外する。
【0169】
オープンフィールド
黒色の垂直壁と半透明の床を擁するPlexiglasのオープンフィールドボックス(52×52×40 cm)をテストに使用し、ボックスの下からランプによって弱い光をあてる。コンピューターシステム(Ethovision, Noldus information Technology, Wageningen, the Netherlands)に、以下の異なる区画を割り当てる:コーナー(9×9 cm)、ボックスの4側部(壁から9 cm)、およびオープンフィールドボックスの中央部(43×43 cm)。各マウスをビデオカメラで撮影し、移動した距離(cm)、マウスの移動速度(cm/秒)、境界部(コーナー+側部)と比較した時の、中央部で要した期間/時間(秒)、および両区画をまたぐ回数(N)を測定することで活動を解析する(Ethovision)。各マウスをボックスの中央に配置し、自由に探索させる(10分間)。テスト間にオープンフィールドボックスを清掃し、乾燥させてから、新しいマウスをボックスに入れる。
【0170】
新奇物体認識テスト
マウスを1時間かけて、黒色の垂直な壁と半透明の床を擁するPlexiglasのオープンフィールドボックス(52×52×40 cm)に慣らし、ボックスの下部からランプで弱い光をあてる。翌日、マウスを同じボックス内に配置し、10分間の獲得(acquisition)試行を実施する。この試行中、マウスは、物体A(同様の大きさ±4 cmの青い球体または赤い立方体)の存在下で、オープンフィールド内に個別に配置し、物体Aを探索する頻度(個体の鼻が1 cm未満の距離で物体に向いた時、および個体が物体の方向の匂いを活発にかいだ時)を記録する(Freq AA)。3時間後に実施する10分間の想起(retention)試行(2回目の試行)の間に、新奇物体(物体B、赤い立方体または青い球体)を、なじみのある物体(物体A)とともにオープンフィールド内に配置する。マウスが2つの物体を探索した頻度を記録する(Freq AおよびFreq B)。
【0171】
新奇物体の探索頻度を両物体の探索頻度で割った比率[Freq B/(Freq A+Freq B)×100]で定義される認識指標(recognition index)(RI)を非空間記憶の測定に用いる。獲得試行中において物体Aが探索された頻度を、好奇心の測定に用いる。
【0172】
参照文献
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原ペプチドまたはその活性断片を含み、かつ抗原ペプチドまたはその活性断片が抗原性を増強するために修飾された、超分子抗原性コンストラクトを含む組成物。
【請求項2】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、ポリエチレングリコールまたは修飾型ポリエチレングリコールを用いるPEG化(pegylation)によって修飾された、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、パルミチン酸、ポリアミノ酸、ポリグリシン、ポリヒスチジン、ポリサッカライド、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン、合成ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、共重合体またはポリ(メタクリル酸)、およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミドによって修飾された、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
超分子抗原性コンストラクトが、各末端に1つずつPEG化リジンが共有結合したペプチド配列を含み、PEGの自由端はホスファチジルエタノールアミンの分子に共有結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
抗原性コンストラクトが、リン脂質およびコレステロールからなるリポソーム中に再構成された、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
抗原ペプチドがアミロイドペプチドを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
アミロイドペプチドが、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、またはSEQ ID NO: 6を含む、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
薬学的担体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
超分子抗原性コンストラクトが、アルツハイマー病、癌細胞の多剤耐性、またはプリオン病を含む疾患の治療に使用可能である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
抗原ペプチドまたはその活性断片を含み、かつ抗原ペプチドまたはその活性断片が抗原性を増強するために修飾された、超分子抗原性コンストラクトを投与する段階を含む、免疫反応を誘導する方法。
【請求項11】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、ポリエチレングリコールまたは修飾型ポリエチレングリコールを使用するPEG化によって修飾された、請求項10記載の方法。
【請求項12】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、パルミチン酸、ポリアミノ酸、ポリグリシン、ポリヒスチジン、ポリサッカライド、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン、合成ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、共重合体またはポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミドによって修飾された、請求項10記載の方法。
【請求項13】
超分子抗原性コンストラクトが、各末端に1つずつPEG化リジンが共有結合したペプチド配列を含み、PEGの自由端はホスファチジルエタノールアミンの分子に共有結合する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
超分子抗原性コンストラクトが、リン脂質およびコレステロールからなるリポソーム中に再構成された、請求項10記載の方法。
【請求項15】
抗原ペプチドがアミロイドペプチドを含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
アミロイドペプチドが、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、またはSEQ ID NO: 6を含む、請求項10記載の方法。
【請求項17】
薬学的担体をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項18】
超分子抗原性コンストラクトが、アルツハイマー病、癌細胞の多剤耐性、またはプリオン病を含む疾患の治療に使用可能である、請求項10記載の方法。
【請求項19】
アミロイドペプチドまたはその活性断片を含み、かつ抗原ペプチドまたはその活性断片が抗原性を増強するために修飾された、超分子抗原性コンストラクトを投与する段階を含む、アルツハイマー病を治療する方法。
【請求項20】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、PEG化、パルミチン酸、ポリアミノ酸、ポリグリシン、ポリヒスチジン、ポリサッカライド、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン、合成ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、共重合体またはポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミドによって修飾された、請求項19記載の方法。
【請求項1】
抗原ペプチドまたはその活性断片を含み、かつ抗原ペプチドまたはその活性断片が抗原性を増強するために修飾された、超分子抗原性コンストラクトを含む組成物。
【請求項2】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、ポリエチレングリコールまたは修飾型ポリエチレングリコールを用いるPEG化(pegylation)によって修飾された、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、パルミチン酸、ポリアミノ酸、ポリグリシン、ポリヒスチジン、ポリサッカライド、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン、合成ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、共重合体またはポリ(メタクリル酸)、およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミドによって修飾された、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
超分子抗原性コンストラクトが、各末端に1つずつPEG化リジンが共有結合したペプチド配列を含み、PEGの自由端はホスファチジルエタノールアミンの分子に共有結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
抗原性コンストラクトが、リン脂質およびコレステロールからなるリポソーム中に再構成された、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
抗原ペプチドがアミロイドペプチドを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
アミロイドペプチドが、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、またはSEQ ID NO: 6を含む、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
薬学的担体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
超分子抗原性コンストラクトが、アルツハイマー病、癌細胞の多剤耐性、またはプリオン病を含む疾患の治療に使用可能である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
抗原ペプチドまたはその活性断片を含み、かつ抗原ペプチドまたはその活性断片が抗原性を増強するために修飾された、超分子抗原性コンストラクトを投与する段階を含む、免疫反応を誘導する方法。
【請求項11】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、ポリエチレングリコールまたは修飾型ポリエチレングリコールを使用するPEG化によって修飾された、請求項10記載の方法。
【請求項12】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、パルミチン酸、ポリアミノ酸、ポリグリシン、ポリヒスチジン、ポリサッカライド、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン、合成ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、共重合体またはポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミドによって修飾された、請求項10記載の方法。
【請求項13】
超分子抗原性コンストラクトが、各末端に1つずつPEG化リジンが共有結合したペプチド配列を含み、PEGの自由端はホスファチジルエタノールアミンの分子に共有結合する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
超分子抗原性コンストラクトが、リン脂質およびコレステロールからなるリポソーム中に再構成された、請求項10記載の方法。
【請求項15】
抗原ペプチドがアミロイドペプチドを含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
アミロイドペプチドが、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、またはSEQ ID NO: 6を含む、請求項10記載の方法。
【請求項17】
薬学的担体をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項18】
超分子抗原性コンストラクトが、アルツハイマー病、癌細胞の多剤耐性、またはプリオン病を含む疾患の治療に使用可能である、請求項10記載の方法。
【請求項19】
アミロイドペプチドまたはその活性断片を含み、かつ抗原ペプチドまたはその活性断片が抗原性を増強するために修飾された、超分子抗原性コンストラクトを投与する段階を含む、アルツハイマー病を治療する方法。
【請求項20】
抗原ペプチドまたはその活性断片が、PEG化、パルミチン酸、ポリアミノ酸、ポリグリシン、ポリヒスチジン、ポリサッカライド、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン、合成ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、共重合体またはポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミドによって修飾された、請求項19記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−251964(P2011−251964A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131772(P2011−131772)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2006−554250(P2006−554250)の分割
【原出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(506027491)エーシー イミューン ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2006−554250(P2006−554250)の分割
【原出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(506027491)エーシー イミューン ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】
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