説明

超分岐ポリエチレンイミンとのポリアミド−ナノ複合材料

本発明は、成分
A)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミド、
B)少なくとも1種の超分岐ポリエチレンイミン、
C)一次粒子の数加重平均直径0.5〜20nmを有する少なくとも1種の金属もしくは半金属の少なくとも1種の非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物
を含有する、熱可塑性成形材料に関する。更に、本発明は、上述の成分B)及びC)を、ポリアミドの流動性及び/又は熱安定性の改善のために用いる使用、前記成形材料を、あらゆる種類の繊維、シート及び成形体の製造のために用いる使用、並びにその場合に得られる繊維、シート及び成形体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分
A)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミド、
B)少なくとも1種の超分岐ポリエチレンイミン、
C)一次粒子の数加重平均直径0.5〜20nmを有する少なくとも1種の金属もしくは半金属の少なくとも1種の非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物
を含有する、熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
更に、本発明は、上述の成分B)及びC)を、ポリアミドの流動性及び/又は熱安定性の改善のために用いる使用、前記成形材料を、あらゆる種類の繊維、シート及び成形体の製造のために用いる使用、並びにその場合に得られる繊維、シート及び成形体に関する。
【0003】
ポリエチレンイミンは、通常は、エチレンイミン(アジリジン)から触媒的重合によって得られる。前記ポリマーの製造は、当業者に公知であり、例えばウルマンの工業化学事典(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry),"Aziridines",電子版(2006年12月15日に公表された刊行物),第3章に記載されている。
【0004】
熱可塑性のポリエステル及びポリカーボネートの流動の改善のために、一般に滑剤が添加される(Gaechter,Mueller:Kunststoffadditive、第3版、第479,486−488頁、Carl Hanser出版、1989年)。その場合の欠点は、特に、加工に際しての添加剤の浸出である。
【0005】
EP−A1424360号は、ポリエステル、ポリグリセロール及びポリエーテルの群からの末端多官能性ポリマー化合物を、熱可塑性の重縮合体での溶融粘度の低下のために用いる使用を記載している。
【0006】
WO2006/42705号は、ポリアミド及び高分岐ポリカーボネートを基礎とする熱可塑性成形材料を記載している。上述のWO2006/42705号から、更に、平板状もしくは針状のナノ充填材が強度を高めうることが知られている。しかし、かかる充填材の添加による流動性の悪化が問題となっている。
【0007】
WO2004/041937号は、半結晶性のポリアミド、非晶質のポリアミド並びに特定の分岐したグラフトコポリアミドを基礎とする熱可塑性成形材料を開示している。該ポリアミド成形材料は、また、通常の補強材もしくは充填材による高充填度でも低い溶融粘度を有するべきである。
【0008】
WO2006/122602号は、熱可塑性ポリアミドを基礎とする成形材料であって、更に少なくとも1種の直鎖状もしくは分枝鎖状の鎖構造を有するポリアミド−オリゴマーを含有する成形材料を記載している。ポリアミド成形材料は、明らかに改善された流動性を有するべきである。用途は、カーボンブラック又はまた炭素ナノ微小繊維などの相応の充填材によって得られる導電性のサーモプラストを目的としている。WO2006/122602号は、小スケールの粒子状の充填材の添加は、ガラス繊維の添加と同様に、ポリアミド溶融物の流動性の不利な低下をもたらすことを指摘している。その状況は、ポリアミド−オリゴマーの添加によって改善される。
【0009】
従って、確かに高分岐もしくは超分岐の有機化合物は、ポリアミド溶融物の流動性の改善のために知られている。しかしながら、溶融粘度の低下は、分子構造の変更から、特に分子量低下によってもたらされる。このことから、機械的特性(特にこれは衝撃強さに関連する)の、また強度、特に破壊強度に関しても不利な悪化が生じる。
【0010】
公開されていないPCT/EP2008/050062号から、ゾル・ゲル合成から得られる10nmまでの粒度を有する一定の金属−もしくは半金属酸化物あるいは−水和物を少量添加することによって、ポリアミドにおいて溶融粘度の低下が達成でき、それにより機械的特性の悪化の上述の欠点が回避されることが知られている。
【0011】
しかし、溶融粘度の低下の程度は、機械的特性との比率において、あらゆる用途及びあらゆるポリアミド型及び分子量について十分ではない。
【0012】
本発明の課題は、先行技術の上述の欠点を回避することであった。低減された溶融粘度と同時に、好ましい機械的特性を有するポリアミド成形材料、特に充填されたポリアミド成形材料を提供するべきである。特に、改善された流動性で、衝撃強さ及び破壊強度が、少なくとも流動改善のための助剤を含まない成形材料の水準に至るべきである。本発明の更なる課題は、改善された熱安定性を有するポリアミド成形材料を調製することであった。更に、前記の1種もしくは複数種の添加剤は、成形材料中にできる限り少量で存在すべきである。該添加剤は、加工に際して浸出すべきでない。
【0013】
相応して、冒頭に挙げた熱可塑性成形材料、その使用及び前記材料から得られた成形体、シート及び繊維が見出された。本発明の好ましい実施態様は、発明の詳細な説明と従属形式請求項に記載されている。好ましい実施態様の組み合わせは、本発明の範囲から外れない。
【0014】
本発明によれば、熱可塑性成形材料は、以下の成分:
A)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミド、
B)少なくとも1種の超分岐ポリエチレンイミン、
C)一次粒子の数加重平均直径0.5〜20nmを有する少なくとも1種の金属もしくは半金属の少なくとも1種の非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物
を含有する。
【0015】
好ましくは、該熱可塑性成形材料は、50〜99.9質量%の成分A)と、0.05〜30質量%の成分B)と、0.05〜20質量%の成分C)とを含有し、その際、該成分A)〜C)の質量パーセントの合計は、100質量%となる。
【0016】
質量パーセントの上記の好ましい範囲は、その場合に、本発明による熱可塑性成形材料を、より狭い範囲で、成分B)とC)とをA)について高く富化された形で調製される中間生成物としてのいわゆるマスターバッチとしても含む。
【0017】
好ましくは、該熱可塑性成形材料は、成分B)及びC)を、0.1〜4の、好ましくは0.2〜2の、特に0.3〜0.8の質量比B/Cで含有する。
【0018】
本発明による成形材料は、特に好ましい一実施態様においては、85〜99.9質量%の成分A)と、0.05〜10質量%の成分B)と、0.05〜5質量%の成分C)とを含有し、その際、該成分A)〜C)の質量パーセントの合計は、100質量%となる。本発明による成形材料は、この場合に、特に好ましくは、93〜99.9質量%の成分A)と、0.05〜5質量%の成分B)と、0.05〜2質量%の成分C)とを含有し、その際、該成分A)〜C)の質量パーセントの合計は、100質量%となる。
【0019】
成分A
本発明によれば、該熱可塑性成形材料は、成分A)として、少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドを含有する。
【0020】
本発明による成形材料のポリアミドは、一般に、ISO307により25℃で96質量%硫酸中の0.5質量%溶液中で測定されて、70〜350ml/gの、好ましくは70〜200ml/gの粘度数を有する。
【0021】
少なくとも5000の分子量(質量平均値)を有する半結晶性もしくは非晶質の樹脂(例えば米国特許文献第2071250号、同第2071250、2071251号、同第2130523号、同第2130948号、同第2241322号、同第2312966号、同第2512606号及び同第3393210号に記載される)が好ましい。
【0022】
好ましくは、7〜13の環員を有するラクタム、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタム及びポリラウリンラクタムから誘導されるポリアミド並びにジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミドが使用される。
【0023】
ジカルボン酸としては、6〜12個の、特に6〜10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、特にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びテレフタル酸及び/又はイソフタル酸を使用できる。
【0024】
ジアミンとしては、特に、6〜12個の、特に6〜8個の炭素原子を有するアルカンジアミン並びにm−キシリレンジアミン、ジ−(4−アミノフェニル)メタン、ジ−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)プロパン又は1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンが適している。
【0025】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド及びポリカプロラクタム並びにコポリアミド6/66、特に5〜95質量%の割合のカプロラクタム単位を有するものである。
【0026】
更に、好適なポリアミドは、ω−アミノアルキルニトリル、例えば特にアミノカプロニトリル(PA6)及びアジポジニトリルからヘキサメチレンジアミン(PAA66)と、いわゆる直接重合によって、水の存在下で、例えばDE−A10313681号、EP−A1198491号及びEP922065号に記載されるようにして得られる。
【0027】
更に、また、例えば1,4−ジアミノブタンとアジピン酸とを高められた温度下で縮合させることによって得られるポリアミド(ポリアミド4,6)も挙げられる。この構造のポリアミドのための製造方法は、例えばEP−A38094号、EP−A38582号及びEP−A39524号に記載されている。
【0028】
更に、2つ以上の上述のモノマーの共重合によって得られるポリアミド又は複数のポリアミドの混合物が適しており、その際、その混合比は任意である。
【0029】
更に、かかる部分芳香族コポリアミド、例えばPA6/6T及びPA66/6T、特にトリアミン含有率が0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満であるものが特に好ましいことが判明した(EP−A299444号を参照)。
【0030】
低いトリアミン含有率を有する好ましい部分芳香族コポリアミドの製造は、EP−A129195号及び129196に記載される方法に従って行うことができる。
【0031】
好ましい部分芳香族コポリアミドA)は、成分a1)として、成分A)に対して、40〜90質量%の、テレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンから誘導される単位を含有する。低い割合のテレフタル酸、好ましくは10質量%以下の全体の使用される芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸もしくは別の芳香族ジカルボン酸、好ましくはカルボキシル基がパラ位にあるものと置き換えることができる。
【0032】
テレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンから誘導される単位の他に、該部分芳香族コポリアミドは、ε−カプロラクタムから誘導される単位(a2)及び/又はアジピン酸及びヘキサメチレンジアミンから誘導される単位(a3)を含有する。
【0033】
それぞれ、成分A)に対して、ε−カプロラクタムから誘導される単位の割合は、最大で50質量%、好ましくは20〜50質量%、特に25〜40質量%であるが、一方で、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンから誘導される単位の割合は、60質量%まで、好ましくは30〜60質量%、特に35〜55質量%である。
【0034】
該コポリアミドは、ε−カプロラクタムの単位も、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンの単位も含んでよい;この場合に、芳香族基を含まない単位の割合が、成分A)に対して、少なくとも10質量%であること、好ましくは少なくとも20質量%であることに留意すべきである。ε−カプロラクタムから誘導される単位と、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンから誘導される単位との比率には、その際、特に制限がなされない。
【0035】
多くの使用目的のためには、それぞれ成分A)に対して、50〜80質量%の、特に60〜75質量%の、テレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンから誘導される単位(単位a1)及び20〜50質量%の、好ましくは25〜40質量%の、ε−カプロラクタムから誘導される単位(単位a2)を有するポリアミドが、特に好ましいと判明した。
【0036】
上記の単位a1)〜a3)の他に、本発明による部分芳香族コポリアミドA)は、なおも副次的な量の、好ましくは15質量%以下の、特に10質量%以下の、別のポリアミドから知られるような、他のポリアミド構成単位(a4)を含有してよい。これらの構成単位は、4〜16個の炭素原子を有するジカルボン酸及び4〜16個の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式のジアミン並びに7〜12個の炭素原子を有するアミノカルボン酸もしくは相応のラクタムから誘導されてよい。前記の種類の好適なモノマーとしては、ここでは、ジカルボン酸の代表として、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸もしくはイソフタル酸が、ジアミンの代表として、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、ピペラジン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,2−(4,4′−ジアミノジシクロヘキシル)プロパンもしくは3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンが、そしてラクタムもしくはアミノカルボン酸の代表として、カプリルラクタム、エナントラクタム、ω−アミノウンデカン酸及びラウリンラクタムが挙げられるのみである。
【0037】
部分芳香族コポリアミドA)の融点は、260℃から300℃を超えるまでの範囲にあり、その際、この高い融点は、一般に75℃より高い、特に85℃より高い高ガラス転移温度とも関連している。
【0038】
テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン及びε−カプロラクタムを基礎とする二元コポリアミドは、約70質量%の、テレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンから誘導される単位の含有率で、300℃の範囲の融点と、110℃より高いガラス転移温度を有する。
【0039】
テレフタル酸、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミン(HMD)を基礎とする二元コポリアミドは、既に約55質量%の低い含有率の、テレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンからなる単位で、300℃以上の融点に至り、その際、ガラス転移温度は、アジピン酸もしくはアジピン酸/HMDの代わりにε−カプロラクタムを含有する二元コポリアミドの場合ほど高くはない。
【0040】
以下の網羅的でない列挙は、上述の、並びに本発明の範囲における他のポリアミドA)及び含まれるモノマーを包含している。
【0041】
AB−ポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε−カプロラクタム
PA7 エタノラクタム
PA8 カプリルラクタム
PA9 9−アミノペラルゴン酸
PA11 11−アミノウンデカン酸
PA12 ラウリンラクタム
AA/BB−ポリマー
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 1,12−ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 1,13−ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA9T ノニルジアミン/テレフタル酸
PA MXD6 m−キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6−3−T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA6/6T (PA6及びPA6Tを参照)
PA6/66 (PA6及びPA66を参照)
PA6/12 (PA6及びPA12を参照)
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610を参照)
PA6I/6T (PA6I及びPA6Tを参照)
PA PACM12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウリンラクタム
PA6I/6T/PACM PA6I/6Tと同様+ジアミノジシクロヘキシルメタン
PA12/MACMI ラウリンラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA12/MACMT ラウリンラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA−T フェニレンジアミン、テレフタル酸
しかし、上記のポリアミドの混合物も使用できる。
【0042】
成分B
本発明によれば、該熱可塑性成形材料は、成分B)として、少なくとも1種の超分岐ポリエチレンイミンを含有する。本発明による成形材料は、好ましくは、0.05〜30質量%の、特に0.05〜10質量%の、特に好ましくは0.1〜4質量%の少なくとも1種の超分岐ポリエチレンイミンを含有する。
【0043】
特徴"超分岐"は、本発明の範囲においては、当該ポリマーの分岐度DB(degree of branching)が、10〜98%、好ましくは25〜90%、特に好ましくは30〜80%であることを意味する。前記分岐度DBは、
DB(%)=100×(T+Z)/(T+Z+L)
[式中、その都度の物質の巨大分子において、Tは、末端結合されたモノマー単位の平均数を意味し、Zは、分岐を形成するモノマー単位の平均数を意味し、Lは、直鎖状に結合されたモノマー単位の平均数を意味する]として定義される。
【0044】
超分岐ポリマー(高分岐ポリマーとも呼ばれる)は、デンドリマーとは区別されるべきである。デンドリマーは、完全に対称的な構造を有するポリマーであり、中央分子から出発して、それぞれ2つ以上の二官能性以上のモノマーと、それぞれの既に結合されたモノマーとの制御された段階的な結合によって製造できる。その場合に、各結合工程で、モノマー末端基の数(ひいては結合数)は増加し、そして樹木状の構造を有するポリマーが得られ、理想的には枝がそれぞれ正確に同じ数のモノマー単位を含む球状の構造を有するポリマーを得ることができる。前記の完全な構造に基づき、ポリマー特性は多くの場合に好ましく、例えば低い粘度及び高い反応性が、球面上の多数の官能基に基づき観察される。しかし、その製造は、各結合工程で保護基を導入し、再び除去せねばならず、かつ精製作業が必要となる点で複雑になるので、デンドリマーは、通常は研究室規模でのみ製造されるにすぎない。
【0045】
しかしながら、大工業的方法で、高分岐もしくは超分岐のポリマーを製造することができる。超分岐という概念は、本発明の範囲では、高分岐という概念を含む。前者の概念は、両方の概念を表すものとして再び使用される。超分岐ポリマーは、完全なデンドリマー構造の他に、直鎖状のポリマー鎖及び同じでないポリマー枝を有するが、これは、完全なデンドリマーと比べてポリマー特性を実質的に悪化させない。
【0046】
上記定義された分岐度によって、本発明により使用される(非デンドリマー型の)超分岐ポリマーとデンドリマーとは区別される。デンドリマーは、本発明の関連においては、分岐度DBが99.9〜100%である場合のポリマーである。それと共に、デンドリマーは、最大で可能な数の分岐部位を有しており、それは、高度に対称的な構造によってのみ達成できるにすぎない。"分岐度"の定義については、H.Frey et al.,Acta Polym.1997,48,30を参照も参照のこと。
【0047】
超分岐ポリマーとは、従って、本発明の範囲では、実質的に非架橋の巨大分子であって、構造的にも分子的にも不均一な分子を表すべきである。
【0048】
本発明の範囲において、好ましくは、多官能性の超分岐のポリエチレンイミンB)が使用される。
【0049】
多官能性の超分岐のポリエチレンイミンとは、本発明の範囲では、ポリマー骨格を形成する第二級アミノ基及び第三級アミノ基の他に、末端位もしくは側鎖位に、更に、平均して少なくとも3個の、好ましくは少なくとも6個の、特に好ましくは少なくとも10個の官能基を有する生成物を表すべきである。前記官能基は、好ましくは第一級アミノ基である。末端位もしくは側鎖位の官能基の数は、原則的には、上限について制限はないが、非常に多数の官能基を有する生成物は、例えば高い粘度もしくは粗悪な溶解性などの不所望な特性を有することがある。本発明の多官能性の超分岐ポリエチレンイミンは、好ましくは、500個以下の末端位もしくは側鎖位の官能基、特に100個以下の末端位もしくは側鎖位の官能基を有する。
【0050】
ポリエチレンイミンとは、本発明の範囲においては、単独重合体も共重合体も意味すべきであり、それらは、例えばウルマンの工業化学事典(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry),"Aziridines",電子版(2006年12月15日に公表された刊行物)における方法に従って又はWO−A94/12560号に従って得られる。
【0051】
単独重合体は、好ましくは、エチレンイミン(アジリジン)を、水性もしくは有機の溶剤中で、酸を開裂する化合物、酸もしくはルイス酸の存在下で重合することによって得られる。かかる単独重合体は、分岐ポリマーであって、一般に、第一級、第二級及び第三級のアミノ基を、約30%対40%対30%の比率で含むポリマーである。それらのアミノ基の分布は、13C−NMR分光分析法によって測定できる。
【0052】
コモノマーとしては、好ましくは、少なくとも2個のアミノ官能を有する化合物が使用される。好適なコモノマーとしては、例えばアルキレン基中に2〜10個のC原子を有するアルキレンジアミンが挙げられ、その際、エチレンジアミン及びプロピレンジアミンが好ましい。更に適したコモノマーは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミン及びビスアミノプロピルエチレンジアミンである。
【0053】
ポリエチレンイミンは、通常は、100〜3000000g/モルの、好ましくは800〜2000000g/モルの範囲の平均分子量(質量平均)を有する。
【0054】
アジリジンの触媒による重合によって得られるポリエチレンイミンは、その際、通常は、800〜50000g/モルの、特に1000〜300000g/モルの範囲の質量平均分子量を有する。高分子のポリエチレンイミンは、特に、上述のポリエチレンイミンと、二官能性のアルキル化化合物、例えばクロロメチルオキシランもしくは1,2−ジクロロエタンなどのアルキル化化合物との反応によって、又は広い分子量分布を有するポリマーの限外濾過(例えばEP−A873371号及びEP−A1177035号に記載される)によって、又は架橋によって得られる。
【0055】
更に、成分B)としては、架橋されたポリエチレンイミンであって、ポリエチレンイミンと、官能基として少なくとも1個のハロゲンヒドリン単位、グリシジル単位、アジリジン単位、イソシアネート単位又はハロゲン原子を有する二官能性もしくは多官能性の架橋剤との反応によって得られるポリエチレンイミンが適している。例としては、2〜100個のエチレンオキシド単位及び/又はプロピレンオキシド単位を有するポリアルキレングリコールのエピクロロヒドリンもしくはビスクロロヒドリンエーテル並びにDE−A19931720号及びUS4144123号に挙げられる化合物が挙げられる。架橋されたポリエチレンイミンの製造方法は、とりわけ上述の刊行物並びにEP−A895521号及びEP−A25515号から公知である。架橋されたポリエチレンイミンは、通常は、20000g/モルより高い平均分子量を有する。
【0056】
更に、成分B)としては、グラフトされたポリエチレンイミンが該当し、その際、グラフト剤として、ポリエチレンイミンのアミノ基もしくはイミノ基と反応しうる全化合物を使用できる。好適なグラフト剤及びグラフトされたポリエチレンイミンの製造方法は、例えばEP−A675914号に記載されている。
【0057】
同様に適したポリエチレンイミンは、アミド化された重合体であって、通常はポリエチレンイミンと、カルボン酸、そのエステルもしくは無水物、カルボン酸アミドもしくはカルボン酸ハロゲン化物との反応によって得られる重合体である。ポリエチレンイミン鎖中のアミド化された窒素原子の割合に応じて、アミド化された重合体は、後に上述の架橋剤と架橋させることができる。好ましくは、その場合に、30%までのアミノ官能がアミド化され、それにより引き続いての架橋反応のためになおも十分な第一級及び/又は第二級の窒素原子が提供される。
【0058】
更に、アルコキシ化されたポリエチレンイミンであって、例えばポリエチレンイミンとエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応によって得られるポリエチレンイミンが適している。また、かかるアルコキシ化された重合体は、引き続き架橋可能である。
【0059】
更なる成分B)として好適なポリエチレンイミンとしては、ヒドロキシル基を有するポリエチレンイミン及び両性のポリエチレンイミン(アニオン性基の導入)並びに一般に長鎖の炭化水素基をポリマー鎖中に導入することによって得られる親油性のポリエチレンイミンが挙げられる。かかるポリエチレンイミンの製造方法は、当業者に知られているので、これについての更なる詳細は必要とされない。
【0060】
成分(B)は、そのままで、又は溶液として、特に水溶液として使用することができる。
【0061】
成分B)は、好ましくは、800〜50000g/モルの、特に好ましくは1000〜40000g/モルの、特に1200〜30000g/モルの、光散乱によって測定された平均分子量を有する。平均分子量(質量平均)は、好ましくは、ゲル透過クロマトグラフィーによって、スタンダードとしてプルランを用いて水溶液(水;0.02モル/lのギ酸;0.2モル/lのKCl)中で測定される。
【0062】
成分B)は、本発明の範囲では、好ましくは50℃未満のガラス転移温度、特に好ましくは30℃未満のガラス転移温度、特に10℃未満のガラス転移温度を有する。
【0063】
DIN53176により測定された成分B)のアミン価は50〜1000mg KOH/gの範囲が好ましい。好ましくは、成分B)は、DIN53176による、100〜900mg KOH/gのアミン価、特に有利には150〜800mg KOH/gのアミン価を有する。
【0064】
成分C
本発明によれば、前記の熱可塑性成形材料は、一次粒子の数加重平均直径0.5〜20nmを有する少なくとも1種の金属もしくは半金属の少なくとも1種の非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物を含有する。
【0065】
非晶質とは、その場合に、本発明による熱可塑性成形材料の酸化物及び/又は酸化物水和物C)が、実質的に晶質でないこと、好ましくは完全に晶質でないことを意味する。従って、鉱物学的な意味でのケイ酸塩、特に層状ケイ酸塩は、本発明に関しては、成分C)と見なされない。本発明の酸化物及び/又は酸化物水和物は、合成により、好ましくは湿式化学的に得られる。
【0066】
好適な非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物の製造方法は、当業者に基本的に知れられている。前記の酸化物及び/又は酸化物水和物は、好ましくは、少なくとも1種の金属及び/又は半金属Mを含有する出発化合物から出発して、重縮合の範囲において酸化物及び/又は酸化物水和物が形成される加水分解によって形成される。重縮合の経過において、酸化物及び/又は酸化物水和物は、粒子状の形態で形成され、その際、まず、反応条件に応じて粒子のコロイド溶液の形(以下、ゾルと呼ぶ)で得られるいわゆる一次粒子が生じるか、又は該一次粒子は、進行する架橋によって互いに結合を形成する(それにより、いわゆるゲルが生ずる)が、まだ独立した一次粒子が認識できる。
【0067】
反応条件は、一次粒子の成長を、その互いの架橋に対して制御し、それは当業者に基本的には公知である。重縮合のpH値として7未満のpH値が選択される場合、頻繁にゲルの形成が起こる。7より高いpH値が選択される場合に、塩の不在下で、しばしばゾル(一次粒子のコロイド溶液)の形成が起こる。反応推移、ひいては一次粒子の形成及びゲルの形成に影響を及ぼすパラメータは、特に、出発化合物の構造、溶剤、pH値、助剤、触媒、温度である。本発明による熱可塑性成形材料は0.5〜20nmの一次粒子の粒度を有する酸化物及び/又は酸化物水和物を含有するので、該反応は、一次粒子の大幅な凝塊もしくは成長が前記の範囲を越えて回避されるように制御される。相応の反応実施は、当業者に公知であり、それはゾル・ゲル化学についての通常の教科書に記載されている。
【0068】
金属及び/又は半金属としては、金属及び/又は半金属を含有する出発化合物から出発して、酸化物及び/又は酸化物水和物を、プロトン性溶剤、特に水の存在下で形成できるもの、すなわち加水分解可能な及び重縮合可能な出発化合物が公知である又は入手できる、すなわち公知の方法で得られるかかる金属及び/又は半金属Mが該当する。好適な金属及び/又は半金属Mのための例は、Si、Ti、Fe、Ba、Zr、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Cu、Ge、Hf、La、Li、Nb、Na、Ta、Y、Mo、V及びSnである。好ましくは、前記金属及び/又は半金属Mは、Si、Ti及びBa、特にSiから選択される。
【0069】
成分C)の製造方法は、好ましくは、以下の工程:
− 少なくとも1種の出発化合物を、プロトン性溶剤及び場合により他の添加剤と一緒に調製する工程;
− 前記出発化合物を加水分解し、その際に、重縮合反応が進行し、成分C)を得る工程;
− 場合により、溶剤を成分C)から分離する工程
を含む。
【0070】
本発明による熱可塑性の成形材料の製造のために、成分C)を、成分A)もしくは成分A)の前駆体と接触させる、好ましくは成分A)中に均質に分配させる。
【0071】
第一の好ましい一実施態様においては、成分C)は、ゾルから得られる。
【0072】
ゾルとは、本発明の範囲においては、一次粒子のコロイド溶液であって、好ましくは大部分が凝塊されずに、特に実質的に凝塊されずに、すなわち実質的に独立して存在する溶液を表すべきである。該ゾルは、本発明の範囲においては、実質的に安定な分散性の系である。すなわち複数分、好ましくは複数時間、特に複数日の期間にわたって安定な系である。コロイド溶液は、その際、分散媒体中にコロイド形で分散された一次粒子を指す。
【0073】
溶剤とは、その際、分散する媒体、すなわち液状の連続相であって、その中に粒子がコロイド状態で存在する相を表すべきである。
【0074】
上記定義のゾルの製造方法は、当業者に公知であり、例えばIler,Ralph K."The Chemistry of Silica",第4章:"Colloidal Silica−Concentrated Sols",John Wiley&Sons,ニューヨーク,1979,ISBN:0−471−02404−X,第331〜343頁に記載されている。
【0075】
そこに挙げられるゾルの製造方法、特にSiO2を基礎とするゾルの製造方法のうち、以下のもの:
− 可溶性のケイ酸塩を酸によって中和すること、
− 電気透析、
− イオン交換、
− 金属及び/又は半金属を含有する前駆体を加水分解すること
が好ましい。
【0076】
特に好ましい一実施態様においては、ゾルはイオン交換法によって得られる。イオン交換法では、少なくとも1種の前駆体、特にケイ酸ナトリウムがイオン交換(その際、イオン交換樹脂の使用が好ましい)に供され、そして反応することで、金属及び/又は半金属の酸化物及び/又は酸化物水和物のゾル及び場合によりゲルが得られる。かかる方法は、例えば上述の文献箇所の範囲の第333〜334頁に"Ion Exchange"として記載されている。
【0077】
本発明のゾルは、製造条件によっては、Na、K及び/又はAlなどの他の金属に起因する不純物を含有することがある。
【0078】
好ましくは、成分C)は、ゾルから得られた形で成分A)と接触され、その際、特に好ましくは、ゾル中に含まれる酸化物及び/又は酸化物水和物は、使用前に好適な形で溶剤から分離され、特に通常の当業者に公知の乾燥法による乾燥によって分離される。特に好ましくは、成分C)は、粒状形で、溶剤を用いずに成分A)と混合される。
【0079】
更なる第二の好ましい実施態様によれば、成分C)は、ゾル・ゲル法から得られる。好ましくは、成分C)は、その際、ゲルとして、又はゲルから得られる形において、成分A)と接触される。
【0080】
ゲルとは、本発明の範囲においては、本発明による酸化物及び/又は酸化物水和物であって、その一次粒子同士が部分的に互いに結合されているものを表すべきである。本発明の範囲におけるゲルは、上記定義のゾルとは異なって、コロイド状に分散可能ではない。
【0081】
金属及び/又は半金属の酸化物及び/又は酸化物水和物の製造のためのゾル・ゲル法は、当業者に公知である。かかるゾル・ゲル法は、例えばSanchez et al.,Chemistry of Materials 2001,13,3061−3083に記載されている。
【0082】
成分C)のゾル・ゲル法は、好ましくは、以下の工程:
− 少なくとも1種の出発化合物を、溶剤及び場合により他の添加剤と一緒に調製する工程;
− 前記出発化合物を加水分解し、その際に、重縮合反応が進行し、成分C)をゲルの形で得る工程;
− 場合により、溶剤を成分C)から分離する工程
を含む。
【0083】
前記ゲルは、更に、更に上記のゲルから出発して、コロイド状粒子の架橋によって製造できる。従って、ゾルの製造方法は、場合により、例えばpH値などの規定の方法パラメータの変動の点のみでゲルの製造方法と区別されるにすぎない。
【0084】
特に好ましい一実施態様においては、出発化合物として、金属及び/又は半金属Mと、前記Mに結合されている少なくとも3個のアルコキシレート基ROとを有する化合物が使用される。好ましくは、該出発化合物は、ROとは別の配位子を有さない。好ましい一実施態様において、式M(OR)nの出発化合物が使用され、その際、nは、2、3もしくは4であることが特に好ましく、nは、4であることが殊に好ましい。
【0085】
アルコキシレート基ROは、互いに無関係に同一もしくは異なってよく、その際、後者の場合には、構造M(OR)r(OR1t[式中、rは、2もしくは3であり、かつtは、1もしくは2である]が好ましい。好ましくは、r+tは、4である。
【0086】
一般に、R及びR1は、直鎖状もしくは分枝鎖状の脂肪族基であって、1〜12個の炭素原子を含む基である。好ましくは、直鎖状もしくは分枝鎖状の脂肪族基R及びR1は、2〜8個の炭素原子を有する。好適な基R及びR1は、直鎖状もしくは分枝鎖状の脂肪族のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル及びn−オクチルである。更なる好適な基Rは、芳香族炭化水素基、特にフェニルである。好ましくは、R及びR1は、2〜4個の炭素原子を有し、好ましくはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル及びイソブチルから選択される。
【0087】
更なる好ましい一実施態様においては、それぞれ少なくとも1種の金属もしくは半金属Mを含有する2種もしくは2種より多くの異なる出発化合物が使用され、その際、該出発化合物の少なくとも1種は、Si、Ti、Fe、Ba、Zr、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Cu、Ge、Hf、La、Li、Nb、Na、Ta、Y、Mo、V及びSnから選択されるMを含有する。これによって、混合型の酸化物及び/又は酸化物水和物が得られる。
【0088】
好ましくは、出発化合物の少なくとも1種は、上述の金属−もしくは半金属アルコキシレートから選択される。第二の及び場合により他の出発化合物は、その際好ましくは、金属及び/又は半金属の可溶性の塩、例えば酢酸塩もしくは水酸化物からなり、それらは、複数の金属及び/又は半金属と混合された酸化物を形成する。
【0089】
ゾル・ゲル法のための好ましい出発化合物は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、チタンテトライソプロポキシド(TPOT)及びチタンテトラ−n−ブトキシドである。更に、TPOT及び水酸化バリウムからなる混合物を出発化合物として使用することができる。
【0090】
ゲルの製造のための触媒としては、好ましくは酸が使用され、好ましくは例えば塩酸もしくは硫酸などの強酸が使用される。ゾル・ゲル法は、その際、好ましくは5未満のpH値で、例えば1〜4の、好ましくは2〜4のpH値で行われる。
【0091】
更なる好ましい一実施態様においては、成分C)の前駆体としては、金属及び/又は半金属Mを基礎とする酸素含有の酸の塩もしくは酸自体が使用され、好ましくは構造(MOx・nH2O)[式中、xは、2が好ましい]の塩もしくは酸が使用される。かかる酸のための公知の例は、ケイ酸である。前記の前駆体から出発して、ゾルもしくはゲルは、公知のようにして、溶剤、好ましくは水の存在下で、加水分解によって、好ましくは触媒により触媒させることで得られる。触媒としては、酸及び塩基が該当する。
【0092】
記載された方法に適した溶剤は、当業者に公知である。基本的に、全ての公知のプロトン性溶剤が、記載された成分C)の製造方法のための溶剤として該当する。好適な溶剤は、例えば水、アルコール及び水とアルコールとの混合物である。好ましい溶剤は、水である。
【0093】
成分C)は、使用される形で、すなわち成分A)との接触前には多孔質である。多孔質材料は、種々の形及び寸法の中空室、特に細孔を有する。
【0094】
好ましくは、成分C)はミクロ孔質である。ミクロ孔質材料は、ミクロ細孔を含む材料である。ミクロ細孔は、本発明の範囲では、IUPAC分類との適合において、2nm未満の直径を有する細孔である。かかるミクロ孔質材料は、大きい比表面積を有する。
【0095】
ミクロ孔質を測定するために、当業者は、特にアルゴン(Ar)の吸着等温線を考慮する。ミクロ孔質を測定するために、その場合に、低いアルゴン圧力の範囲が分析される。
【0096】
ミクロ孔質化合物は、本発明の範囲においては、該化合物が、少なくとも30cm3のアルゴンを、1グラムのサンプル材料(使用される形の成分C)につき、2670Paの絶対圧で標準温度及び標準圧力(STP)での吸着等温線の容量測定において吸着することによって特徴付けられる。吸着等温線は、その際、87.4Kの温度で10秒の平衡間隔でDIN66135−1に従って記録される。
【0097】
好ましくは、成分C)は使用される形で、少なくとも60cm3のArを、1グラムのサンプル材料につき、上記の方法に従って、2670Paの絶対圧力及び87.4Kの温度でDIN66135−1によれば吸着する。特に好ましくは、成分C)は使用される形で、少なくとも80cm3のArを、1グラムのサンプル材料につき、上記の方法に従って、2670Paの絶対圧力及び87.4Kの温度でDIN66135−1によれば吸着する(特に少なくとも100cm3/g)。
【0098】
更に、成分Cが使用される形で、少なくとも50cm3の、好ましくは少なくとも70cm3の、特に少なくとも90cm3のArを、1グラムのサンプル材料につき、上記の方法に従って、1330Paの絶対圧力及び87.4Kの温度でDIN66135−1によれば吸着する場合に好ましい。
【0099】
構造上の理由から、金属及び/又は半金属の好適な酸化物及び/又は酸化物水和物は、前記条件下で吸着された量のアルゴンに関して上限を有する。かかる上限は、例えば1グラムのサンプル材料につき、上記の方法に従って、2670Paの絶対圧力及び87.4Kの温度でDIN66135−1により500cm3であり、例えば1グラムのサンプル材料につき、1330Paの絶対圧力及び87.4Kの温度で400cm3である。
【0100】
ミクロ細孔の容量割合とミクロ細孔の比表面積を測定するために、上記のアルゴンの吸着等温線から出発して、種々の方法が該当する。
【0101】
好適な方法は、オリビア及びコンクリン(Olivier and Conklin)によるDFT(密度汎関数法)法であり、該方法は、Olivier,J.P.,Conklin,W.B.,and v.Szombathely,M.:"Characterization of Porous Solids III"(J.Rouquerol,F.Rodrigues−Reinoso,K.S.W.Sing,and K.K.Unger,Eds.),p.81 Elsevier,Amsterdam,1994に記載されている。前記の方法については、以下に、オリビア−コンクリン−DFT法として短縮して引き合いに出す。
【0102】
好ましくは、成分C)は使用される形で、少なくとも40m2/g、好ましくは少なくとも60m2/g、特に少なくとも100m2/g、例えば少なくとも150m2/gのミクロ細孔(2nm未満)の累積比表面積を有し、それは、オリビア−コンクリン−DFT法によって、87.4Kの温度でDIN66135−1により想定されたArの吸着等温線に当てはめて測定される。その際、以下のモデルパラメータが数学的適合のために選択される:スリット形の細孔、非負の正則化、平滑化なし。
【0103】
好適な成分C)は、構造上制限されて、ミクロ細孔の累積比表面積に関する上限を有する。それは例えばおよそ600m2/gである。好ましくは、該成分C)は使用される形で、それぞれオリビア−コンクリン−DFT法により測定されて、40〜500m2/g、特に100〜400m2/gのミクロ細孔の累積比表面積を有する。
【0104】
成分C)は使用される形で、更に、ブルナウアとエムメットとテラー(BET)の方法によって特徴付けることができる。BET方法とは、本発明の範囲では、DIN66131による温度77.35Kでの窒素吸着等温線の分析を表す。BET法は、ミクロ細孔について選択的ではない。こうして得られる比表面積は、2〜50nmの範囲の細孔(マクロ細孔)も特徴付けるものである。
【0105】
好ましくは、成分C)は使用される形で、BET法による、少なくとも150m2/g、特に好ましくは少なくとも250m2/g、特に少なくとも350m2/gの比表面積を有する。構造上制限されて、本発明の範囲においては、好適な成分C)は、ほぼ800m2/gの範囲にあるBETによる比表面積の上限を有し、それらはとりわけ公知のように選択される平均粒度に依存し、高すぎるように選択すべきでない。
【0106】
好ましくは、成分C)は、DIN66131による150〜700m2/gの、特に200〜500m2/gの比表面積を有する。
【0107】
前記の酸化物及び/又は酸化物水和物C)は、単独の金属及び/又は半金属を含有してよく、又は2種もしくは2種より多くの金属及び/又は半金属Mからの組み合わせの酸化物及び/又は酸化物水和物を含有してよく、前記の金属及び/又は半金属は、Si、Ti、Fe、Ba、Zr、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Cu、Ge、Hf、La、Li、Nb、Na、Ta、Y、Mo、V及びSnから選択される。前記の酸化物及び/又は酸化物水和物は、その際、酸素結合された酸化物ポリマーネットワークであって、部分的になおもヒドロキシル基を配位子として及び/又は化学的に結合した水を含有してよいもの(後者の場合に酸化物水和物)を含む。更に、成分C)は、Mとは別のイオン、特にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の形で不純物を並びに加水分解されないもしくは加水分解できない配位子を有してよい。
【0108】
特に好ましい一実施態様においては、本発明による熱可塑性成形材料は、成分C)として、0.5〜20nmの一次粒子の数加重平均直径を有するケイ素の非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物を含有する。前記のSiO2は、なおもOH配位子及び/又は水を含有してよい。
【0109】
好ましくは、成分C)は使用される形で、1〜15nmの、好ましくは1〜10nmの、特に2〜8nmの一次粒子の数加重平均直径を有する。
【0110】
好ましくは、一次粒子の数加重平均直径は、これが、成分A)のz平均回転半径Rgよりも小さいように選択される。特に、成分C)は、少なくとも1nmで、Rgより小さい一次粒子の数加重平均直径を有し、特に好ましくは1nmないし(Rg−3nm)の一次粒子の数加重平均直径を有する。
【0111】
z平均回転半径Rgは、本発明の範囲において、以下のように計算される:
【数1】

[式中、bは、成分A)のモノマー単位のセグメント長である]。当業者は、bを、モノマー単位の両末端の間の原子距離として分子モデリングケイ酸によって計算する。Mnは、140℃の温度で溶剤としての硫酸中でISO16014−4に従ってゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される数加重分子量を指す。
【0112】
平均粒径の測定のために、種々の測定方法が該当する。コロイド溶液の平均粒径は、公知のように、特に超遠心分離によって測定できる。
【0113】
ポリマーマトリクス中のナノ粒子の数加重平均粒径は、本発明の範囲においては、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定され、そこでは代表的な、すなわち統計学的に有意なミクロトーム切片が調査される。
【0114】
本発明の範囲においては、数加重平均粒径とは、熱可塑性成形材料のTEM測定の画像解析的な評価によって、好ましくは70nm以下の厚さを有するミクロトーム切片の評価によって得られる中央値d50を表すべきである。当業者は、前記の切片の厚さ、寸法及び数を、統計学的に意味のある平均値が得られるように選択する。特に成分C)の引き合いに出される粒子の数は少なくとも100でなければならない。その評価に際して、平均値の測定のために、他の粒状の添加剤が含まれている場合に、単に成分C)を引き合いに出すことを顧慮すべきである。
【0115】
50値の測定に際して、更に、一次粒子の直径は測定に入れ、凝塊物もしくは他の上位構造の寸法は測定に入れないことを顧慮すべきである。
【0116】
100nmより大きい寸法を有する粒子は、評価に際して顧慮すべきでない。それというのも、該粒子は、本発明の範囲ではナノ粒子の酸化物及び/又は酸化物水和物として解釈されるべきでないからである。酸化物顔料は、例えば成分F)として顔料の形で本発明による成形材料中に存在してよい。
【0117】
粒径は、TEM像で示される粒子の幾何学的中心を通る最小の直径である。
【0118】
好ましくは、成分C)の粒子は、十分に等方性である。好ましくは、成分C)は、粒子の幾何学的中心を通る最長直径と最短直径との平均アスペクト比(長さ/幅)4対1、特に3対1、特に好ましくは2対1を有する。特に好ましくは、成分C)の前記の平均アスペクト比は、およそ1、特に1〜1.4である。前記の平均アスペクト比は、平均粒径と同様にして、TEMによる画像解析によって測定され、本発明の範囲では、d50値として測定され示される。
【0119】
本発明の範囲では、更に、熱可塑性成形材料中のナノ粒子の空間的分布が十分に均一である場合に好ましい。すなわち粒子が、空間的に十分に一様に分布して存在する場合に好ましい。
【0120】
更に、粒径の分布の幅が比較的狭い場合に好ましい。換言すると、成分C)は、好ましくは狭い粒度分布を有する。特に粒径は、実質的に1〜20nmの範囲、特に好ましくは1〜10nmの範囲、殊に好ましくは2〜8nmの範囲にある。殊に好ましくは、成分C)の粒度の分布は、実質的に単峰性で狭いものである。すなわち成分C)の粒度の分布は、ポアソン分布に類似している。
【0121】
成分D
本発明による熱可塑性成形材料は、成分D)として、更に、成分B)とは異なる少なくとも1種の超分岐ポリマーを含有してよい。成分B)とは異なる超分岐ポリマーとしては、例えば、ポリアミドアミン、ポリエステル及び特にポリエーテルアミンが該当する。
【0122】
ポリエーテルアミンが成分D)として使用される場合には、本発明による熱可塑性成形材料は、好ましい一実施態様においては、0.05〜30質量%の少なくとも1種のポリエーテルアミンを含有する。好ましくは、成分D)の割合は、A)〜D)の質量%の合計に対して、0.05〜4質量%、特に0.1〜3質量%である。
【0123】
本発明による熱可塑性成形材料は、前記の実施態様の範囲においては、特に好ましくは55〜99.85質量%の成分A)、0.05〜15質量%の成分B)、0.05〜15質量%の成分C)、及び0.05〜15質量%の成分D)を含有し、その際、成分A)〜D)の質量%の合計は、100質量%となる。
【0124】
成分D)は、好ましくは、
− 官能性ヒドロキシ基を有する少なくとも1種の第三級アミン、特に少なくとも1種のジ−、トリ−もしくはテトラアルカノールアミンを、場合により、
− 置換基としてヒドロキシル基を有する第二級アミン、特にジアルカノールアミンの存在下で、及び/又は場合により、
− 二官能性以上のポリエーテルポリオールの存在下で、
反応させることによって得られ、その際、該反応は、好ましくはエーテル交換触媒の存在下及びエーテル化触媒の存在下で行われる。
【0125】
官能性ヒドロキシ基を有する好ましい第三級ジアルカノールアミンは、
1〜C30−アルキル基、特にC1〜C18−アルキル基を有するジエタノールアルキルアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、N−メチル−ジプロパノールアミン、N−メチル−ジイソプロパノールアミン、N−メチル−ジブタノールアミン、N−メチル−ジペンタノールアミン、N−メチル−ジヘキサノールアミン、N−エチル−ジエタノールアミン、N−エチル−ジプロパノールアミン、N−エチル−ジイソプロパノールアミン、N−エチル−ジブタノールアミン、N−エチル−ジペンタノールアミン、N−エチル−ジヘキサノールアミン、N−プロピル−ジエタノールアミン、N−プロピル−ジプロパノールアミン、N−プロピル−ジイソプロパノールアミン、N−プロピル−ジブタノールアミン、N−プロピル−ジペンタノールアミン、N−プロピル−ジヘキサノールアミン、ジエタノールエチルアミン、ジエタノールプロピルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールメチルアミン、シクロヘキサノールジエタノールアミン、ジシクロヘキサノールエタノールアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、ジシクロヘキシルジエタノールアミン、ジシクロヘキサノールエチルアミン、ベンジルジエタノールアミン、ジベンジルエタノールアミン、ベンジルジプロパノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、エチルヘキシルエタノールアミン、オクタデシルジエタノールアミン及びポリエタノールアミンである。
【0126】
好ましいトリアルカノールアミンは、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン及びそれらから誘導される誘導体である。
【0127】
更に、トリアルカノールアミンとしては、
【化1】

が好ましい。
【0128】
好ましいテトラアルカノールアミンは、
【化2】

[式中、好ましくはR1は、CH2−CH2ないし(CH28を意味し、特に(CH22−(CH24を意味し、かつR2〜R5は、好ましくはC2〜C6を意味し、特にC2及びC3を意味する]であり、その際、N,N,N′,N′−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラヒドロキシエチルブチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラヒドロキシイソプロピルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラヒドロキシプロピルブチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラヒドロキシイソプロピルブチレンジアミンが特に好ましい。
【0129】
好ましくは、成分D)は、平均して少なくとも3個の官能性OH基を1分子当たりに有する。すなわち、併記OH官能価は、少なくとも3である。特に好ましくは、成分D)は、少なくとも1種のトリアルカノールアミンと、場合によりジアルカノールアミン及び/又は場合により二官能性以上のポリエーテロールとの反応によって得られる。
【0130】
特に好ましい一実施態様においては、成分D)は、一般式
【化3】

[式中、基R1〜R3は、互いに無関係に、同一もしくは異なって、直鎖状もしくは分枝鎖状の、好ましくは2〜10個のC原子、特に2〜6個のC原子を有するアルキレン基を意味する]の少なくとも1種のトリアルカノールアミンの反応によって得られる。
【0131】
出発材料としては、その際、好ましくは、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンもしくはトリブタノールアミン又はそれらの混合物が、場合によりジアルカノールアミン、例えばジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン、N,N′−ジヒドロキシアルキルピペリジン(アルキル=C1〜C8)、ジシクロヘキサノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン(ジアルカノールアミンが好ましい)と組み合わせて使用される。
【0132】
更に、前記のトリアルカノールアミンは、場合により、特にエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを基礎とする二官能性以上のポリエーテロールと組み合わせて使用してよい。
【0133】
しかしながら、殊に好ましくは、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミン又はそれらの混合物が出発物として使用される。
【0134】
超分岐ポリエーテルアミンD)は、反応後に、すなわち更なる変性なく、ヒドロキシル基で末端化されている。かかるポリエーテルアミンB)は、種々の溶剤中に良好に溶解する。
【0135】
かかる溶剤のための例は、芳香族の及び/又は(脂環式の)脂肪族の炭化水素及びそれらの混合物、ハロゲン化された炭化水素、ケトン、エステル及びエーテルである。
【0136】
好ましくは、芳香族炭化水素、(脂環式の)脂肪族の炭化水素、アルカン酸アルキルエステル、ケトン、アルコキシ化されたアルカン酸アルキルエステル及びそれらの混合物である。
【0137】
特に好ましくは、一アルキル化以上のベンゼン及びナフタリン、ケトン、アルカン酸アルキルエステル及びアルコキシル化アルカン酸アルキルエステル並びにそれらの混合物である。
【0138】
芳香族炭化水素混合物としては、主に芳香族のC7〜C14−炭化水素を含み、かつ110〜300℃の沸点範囲を含んでよいものが好ましく、特に好ましくは、トルエン、o−、m−もしくはp−キシレン、トリメチルベンゼン異性体、テトラメチルベンゼン異性体、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロナフタリン及びそれらを含有する混合物である。
【0139】
その例は、ExxonMobil Chemical社のSolvesso(登録商標)銘柄、特にSolvesso(登録商標)100(CAS番号64742−95−6、主にC9及びC10−芳香族化合物、約154〜178℃の沸点範囲)、Solvesso(登録商標)150(約182〜207℃の沸点範囲)及びSolvesso(登録商標)200(CAS番号64742−94−5)並びにShell社のShellsol(登録商標)銘柄である。パラフィンと、シクロパラフィンと、芳香族化合物の炭化水素混合物は、また、Kristalloel(例えばKristalloel 30、約158〜198℃の沸点範囲又はKristalloel 60:CAS番号64742−82−1)、石油溶剤(例えば同様にCAS番号64747−82−1)又はソルベントナフサ(軽:155〜180℃の沸点範囲、重:約225〜300℃の沸点範囲)の名称で市販されている。かかる炭化水素混合物の芳香族化合物含有率は、一般に、90質量%より高く、好ましくは95質量%より高く、特に好ましくは98質量%より高く、殊に好ましくは99質量%より高い。特に低減されたナフタリン含量を有する炭化水素混合物を使用することが合理的なことがある。
【0140】
脂肪族炭化水素の含有率は、一般に、5質量%未満であり、好ましくは2.5質量%未満であり、特に好ましくは1質量%未満である。
【0141】
ハロゲン化された炭化水素は、例えばクロロベンゼン及びジクロロベンゼン又はそれらの異性体混合物である。
【0142】
エステルは、例えばn−ブチルアセテート、エチルアセテート、1−メトキシプロピルアセテート−2及び2−メトキシエチルアセテートである。
【0143】
エーテルは、例えばTHF、ジオキサン並びにエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールもしくはトリプロピレングリコールのジメチルエーテル、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテルである。
【0144】
ケトンは、例えばアセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、ヘキサノン、イソブチル−メチルケトン、ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はシクロヘプタノンである。
【0145】
(脂環式の)脂肪族の炭化水素は、例えばデカリン、アルキル化デカリン及び直鎖状もしくは分枝鎖状のアルカン及び/又はシクロアルキンの異性体混合物である。
【0146】
更に、n−ブチルアセテート、エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−ブタノン、イソブチル−メチルケトン並びにそれらの混合物、特に上述の芳香族炭化水素混合物との混合物が好ましい。
【0147】
かかる混合物は、容量比5:1〜1:5で、好ましくは容量比4:1〜1:4で、特に好ましくは容量比3:1〜1:3で、殊に好ましくは容量比2:1〜1:2で調製できる。
【0148】
好ましい溶剤は、ブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、イソブチルメチルケトン、2−ブタノン、Solvesso(登録商標)銘柄及びキシレンである。
【0149】
更に溶剤として適しているのは、ポリエーテルアミンについては、例えば、水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水−混合物、アセトン、2−ブタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、エチレンカーボネートもしくはプロピレンカーボネートであってよい。
【0150】
ポリエーテルアミンの製造は、塊状か溶液でのいずれかで行われる。溶剤としては、既に上述した溶剤が該当する。反応を溶剤なしで実施することが好ましい実施態様である。
【0151】
製造の際の温度は、アミノアルコールの反応に十分であるべきである。一般に、反応のためには、100℃〜350℃の温度、好ましくは150〜300℃の温度、特に好ましくは180〜280℃の温度、殊に200〜250℃の温度が必要である。
【0152】
好ましい一実施態様においては、縮合反応は塊状で行われる。反応の際に遊離する水もしくは低分子の反応生成物は、反応を促進するために反応平衡から、例えば蒸留により、場合により減圧下での蒸留により除去してよい。
【0153】
水もしくは低分子の反応生成物の分離は、また、反応条件下で実質的に不活性なガス流の導通(ストリッピング)、例えば窒素もしくは希ガス、例えばヘリウム、ネオンもしくはアルゴンなどのガス流の導通によって促すこともできる。
【0154】
反応の促進のために、好ましくは触媒もしくは触媒混合物が添加される。好適な触媒は、エーテル化反応もしくはエーテル交換反応を触媒する化合物、例えばアルカリ金属ヒドロキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、好ましくはナトリウム、カリウムもしくはセシウムについてのもの、酸性化合物、例えば塩化鉄もしくは塩化亜鉛、ギ酸、シュウ酸もしくはリン含有酸性化合物、例えばリン酸、ポリリン酸、亜リン酸もしくは次亜リン酸である。
【0155】
好ましくは、リン酸、亜リン酸もしくは次亜リン酸は、場合により水で希釈された形で使用される。
【0156】
触媒の添加は、一般に、使用されるアルカノールアミンもしくはアルカノールアミン混合物の量に対して、0.001〜10モル%の量で、好ましくは0.005〜7モル%の量で、特に好ましくは0.01〜5モル%の量で行われる。
【0157】
更に、また、好適な触媒の添加によっても、好適な温度の選択によっても、分子間重縮合反応を制御することが可能である。更に、出発成分の組成によって、又は滞留時間によって、ポリマーの平均分子量を調整することができる。
【0158】
高められた温度で製造されたポリマーは、室温で、通常はより長い時間にわたり、例えば少なくとも6週間にわたり、混濁、沈殿及び/又は粘度上昇を示すことなく安定である。
【0159】
分子間重縮合反応の中断については、種々の可能性がある。例えば、温度は、反応が停滞状態となり、重縮合生成物が貯蔵安定である範囲にまで低下させることができる。それは、一般に、60℃未満、好ましくは50℃未満、特に好ましくは40℃未満、殊に好ましくは室温でその場合となる。
【0160】
更に、触媒を、塩基性触媒の場合には、例えば酸性成分、例えばルイス酸もしくは有機酸又は無機プロトン酸の添加によって、酸性触媒の場合には、塩基性成分、例えばルイス塩基もしくは有機塩基又は無機塩基の添加によって失活させてよい。
【0161】
更に、該反応を、予備冷却された溶剤での希釈によって中止させることができる。それは、特に、反応混合物の粘度を溶剤の添加によって適合させねばならない場合に好ましい。
【0162】
成分E
好ましい一実施態様においては、本発明による熱可塑性成形材料は、更に、成分E)として、少なくとも1種の繊維状の充填材であって成分A)〜D)とは異なるものを、好ましくは繊維状の充填材、特にガラス繊維を含有する。
【0163】
成分E)は、好ましくは0.01〜100μmの、特に0.5〜50μmの数加重平均粒径を有する。成分E)は、更に、好ましくは、5〜10000の、特に10〜5000のアスペクト比を有する。
【0164】
前記の熱可塑性成形材料は、特に好ましい一実施態様においては、15〜98.8質量%の成分A)、0.1〜10質量%の成分B)、0.1〜10質量%の成分C)、0〜5質量%の成分D)、及び1〜70質量%の成分E)を含有し、その際、成分A)〜E)の質量%の合計は、100質量%となる。
【0165】
繊維状のもしくは粒状の充填材E)としては、0.1〜50μmの数加重平均粒径を有する以下の化合物:炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、非晶質ケイ酸、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白亜、粉末化石英、雲母、硫酸バリウム及び長石が挙げられる。上述の化合物は、好ましくは、40質量%までの、特に1〜15質量%の量で使用される。
【0166】
好ましい繊維状の充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維及びカーボンナノチューブ、アラミド繊維及びチタン酸カリウム繊維が挙げられ、その際、ガラス繊維、特にE−ガラスの形のガラス繊維が特に好ましい。このガラス繊維は、ロービングまたは切断ガラスとして市販の形で使用してよい。上述の繊維状の充填材E)は、単独で使用できるが、本発明による成形材料は、2種以上の繊維状の充填材E)を含有してもよい。
【0167】
前記の繊維状の充填材は、サーモプラストとのより良好な適合性のために、シラン化合物で表面を前処理されていてよい。
【0168】
好適なシラン化合物は、一般式
(X−(CH2nk−Si−(O−Cm2m+14-k
[式中、置換基は以下の意味を有する:
Xは、NH2−、
【化4】

、HO−を意味し、
nは、2〜10の、好ましくは3〜4の整数を意味し、
mは、1〜5の、好ましくは1〜2の整数を意味し、
kは、1〜3の、好ましくは1の整数を意味する]のシラン化合物である。
【0169】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン並びに置換基Xとしてグリシジル基を有する相応のシランである。
【0170】
前記シラン化合物は、一般に、表面被覆のために、0.01〜2質量%、好ましくは0.025〜1.0質量%、特に0.05〜0.5質量%の量(繊維状の充填材に対して)で使用される。
【0171】
成分E)としては、好ましくは無機充填材が使用され、特に繊維状の無機充填材が使用される。無機充填材とは、非晶質ではない、すなわち実質的に結晶性の充填材であって、特に天然の出発物質から得られるものを表すべきである。
【0172】
針状の無機充填材とは、本発明の範囲では、著しく顕著な針状の特性を有する無機充填材を表す。例としては、針状のウォラストナイトが挙げられる。特に、該鉱物は、8:1〜35:1、好ましくは8:1〜11:1のL/D(長さ 直径)比を有する。該無機充填材は、場合により上述のシラン化合物で前処理されていてよい;しかしながら、該前処理は、必ず必要となるわけではない。
【0173】
他の無機充填材としては、カオリン、焼結カオリン、ウォラストナイト、タルク及び白亜並びに通常充填材として使用される平板状のもしくは繊維状の層状ケイ酸塩が挙げられ、それらは好ましくは0.1〜10%の量で使用され、そして層状ケイ酸塩の場合には、場合により1つの立体次元もしくは2つの立体次元で500nm未満の、例えば20〜100nmの範囲の粒径を有してよい。
【0174】
好ましくは、そのためには、ベーマイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト及びラポナイトが使用される。平板状のナノ充填剤と有機バインダーとの良好な適合性を得るために、該平板状のナノ充填剤は従来技術により有機変性される。平板状のもしくは針状のナノ充填剤を本発明によるナノ複合材料に添加することによって、機械的強度の更なる増大がもたらされる。
【0175】
特に、組成Mg3[(OH)2/Si410]もしくは3MgO・4SiO2・H2Oの水和されたケイ酸マグネシウムであるタルクが使用される。これらの上述の三層のフィロシリケートは、三斜晶の、単斜晶のもしくは斜方晶の結晶構造を、平板状の外観像を伴って有する。更なる微量元素には、Mn、Ti、Cr、Ni、Na及びKが存在してよく、その際、OH基は部分的にフッ化物に交換されていてよい。
【0176】
特に好ましくは、99.5%までの粒度が20μm未満であるタルクが使用される。粒度分布は、通常は、沈降分析によって測定され、好ましくは:
<20μm 99.5質量%
<10μm 99質量%
<5μm 85質量%
<3μm 60質量%
<2μm 43質量%
である。
【0177】
かかる製品は、Micro−Talc I.T.extra(Omya社)として市販されている。
【0178】
成分F
本発明による熱可塑性成形材料は、更に、成分F)として他の添加剤を含有してよい。
【0179】
成分F)としては、本発明による成形材料は、0〜70質量%の、特に50質量%までの、成分A)〜E)とは異なっている他の添加剤及び加工助剤を含有してよい。
【0180】
成分F)としては、本発明による成形材料は、0〜3質量%の、好ましくは0.05〜3質量%の、好ましくは0.1〜1.5質量%の、特に0.1〜1質量%の滑剤を含有してよい。
【0181】
好ましくは、10〜44個のC原子、好ましくは14〜44個のC原子を有する脂肪酸のAl塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はエステルもしくはアミドである。該金属イオンは、好ましくはアルカリ土類金属及びAlであり、その際、CaもしくはMgが特に好ましい。好ましい金属塩は、ステアリン酸カルシウム及びモンタン酸カルシウム並びにステアリン酸アルミニウムである。また、種々の塩の混合物も使用してよく、その際、その混合比は任意である。
【0182】
カルボン酸は、一価もしくは二価であってよい。例としては、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸及び特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸並びにモンタン酸(30〜40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0183】
脂肪族アルコールは、一価ないし四価であってよい。アルコールの例は、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリットであり、その際、グリセリン及びペンタエリトリットが好ましい。
【0184】
脂肪族アミンは、一価ないし三価であってよい。このための例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、その際、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステルもしくはアミドは、相応して、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノベヘネート及びペンタエリトリットテトラステアレートである。
【0185】
種々のエステルもしくはアミドの混合物又はエステルとアミドとの組み合わせを使用してもよく、その際、その混合比は任意である。
【0186】
他の成分F)としては、本発明による成形材料は、銅化合物、立体障害フェノール、立体障害脂肪族アミン及び/又は芳香族アミンの群から選択される熱安定剤もしくは酸化防止剤又はそれらの混合物を含有してよい。
【0187】
銅化合物は、本発明によるポリアミド成形材料において、0.05〜3質量%まで、好ましくは0.1〜1.5質量%まで、特に0.1〜1質量%まで、好ましくはCu(I)−ハロゲン化物として、特にアルカリ金属ハロゲン化物、好ましくはKIと組み合わせて、特に1:4の比率で含まれているか、又は立体障害フェノールもしくはアミン安定剤又はそれらの混合物を含有する。
【0188】
一価の銅の塩としては、好ましくは酢酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)及びヨウ化銅(I)が該当する。それらの塩は、ポリアミドに対して、5〜500ppmの銅の量で、好ましくは10〜250ppmの銅の量で含まれている。
【0189】
好ましい特性は、特に、銅がポリアミド中に分子的分布で存在している場合に得られる。それは、該成形材料に、ポリアミド、一価の銅の塩及びアルカリ金属ハロゲン化物を均質な固溶体の形で含有する濃縮物を添加した場合に達成される。典型的な濃縮物は、例えば79〜95質量%のポリアミド及び21〜5質量%のヨウ化銅もしくは臭化銅とヨウ化カリウムとからなる混合物からなる。均質な固溶体中の銅の濃度は、該固溶体の全質量に対して、好ましくは0.3〜3質量%、特に0.5〜2質量%であり、かつヨウ化銅(I)とヨウ化カリウムとのモル比は、1〜11.5、好ましくは1〜5である。
【0190】
前記濃縮物のために適したポリアミドは、ホモポリアミド及びコポリアミド、特にポリアミド6及びポリアミド6,6である。
【0191】
立体障害フェノールとしては、原則的に、フェノール構造を有する化合物であって、フェノール環に少なくとも1つの立体的に要求の高い基を有するあらゆる化合物が適している。
【0192】
好ましくは、例えば一般式
【化5】

[式中、R1及びR2は、アルキル基、置換されたアルキル基もしくは置換されたトリアゾール基を意味し、その際、基R1及びR2は、同一もしくは異なってよく、かつR3は、アルキル基、置換されたアルキル基、アルコキシ基もしくは置換されたアミノ基を意味する]の化合物が該当する。
【0193】
前記の種類の酸化防止剤は、例えばDE−A2702661号(US−A4360617号)に記載されている。
【0194】
好ましい立体障害フェノールの更なる群は、置換されたベンゼンカルボン酸から、特に置換されたベンゼンプロピオン酸から誘導される。
【0195】
これらのクラスからの特に好ましい化合物は、式
【化6】

[式中、R4、R5、R7及びR8は、互いに無関係に、C1〜C8−アルキル基を表し、前記基はそれ自体置換されていてよい(その内の少なくとも1個は、立体的に要求の高い基である)、そしてR6は、1〜10個のC原子を有する二価の脂肪族基であって、主鎖中にC−O結合を有してもよい基を意味する]の化合物である。
【0196】
前記の式に相当する好ましい化合物は、
【化7】

(Ciba−Geigy社のIrganox(登録商標)245)
【化8】

(Ciba−Geigy社のIrganox(登録商標)259)
である。
【0197】
例えば、全体的に立体障害フェノールとしては:
2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ−[2.2.2]オクチ−4−イル−メチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2′−ヒドロキシ−3′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、4,4′−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ジメチルアミン
が挙げられる。
【0198】
特に有効と見なされ、従って使用が好ましいのは、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(Irganox(登録商標)259)、ペンタエリトリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]並びにN,N′−ヘキサメチレン−ビス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド(Irganox(登録商標)1098)並びに特により適しているCiba−Geigy社の前記のIrganox(登録商標)245である。
【0199】
単独でもしくは混合物として使用できるフェノール性の酸化防止剤は、成形材料A)〜F)の全質量に対して、0.05から3質量%までの量で、好ましくは0.1〜1.5質量%の量で、0.1〜1質量%の量で含まれている。
【0200】
多くの場合に、1つ以上の立体障害基をフェノール性ヒドロキシ基に対してオルト位で有する立体障害フェノールが、特により長期にわたる拡散光中での貯蔵に際しての色安定性の評価に際して、特に好ましいと見なされた。
【0201】
成分F)としての衝撃強さ調節剤のための例は、官能基を有してよいゴムである。また、2種以上の種々の衝撃強さを調節するゴムからなる混合物を使用してもよい。
【0202】
成形材料の衝撃強さを高めるゴムは、一般に、−10℃未満の、好ましくは−30℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー分を含有し、かつ前記ゴムは、ポリアミドと反応しうる少なくとも1個の官能基を含む。好適な官能基は、例えばカルボン酸基、無水カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ウレタン基もしくはオキサゾリン基、好ましくは無水カルボン酸基である。
【0203】
好ましい官能化されたゴムには、官能化されたポリオレフィンゴムであって、以下の成分:
1. 40〜99質量%の、2〜8個のC原子を有する少なくとも1種のα−オレフィン、
2. 0〜50質量%のジエン、
3. 0〜45質量%の、アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1〜C12−アルキルエステル又はかかるエステルの混合物、
4. 0〜40質量%の、エチレン性不飽和のC2〜C20−モノカルボン酸もしくはジカルボン酸又はかかる酸の官能性誘導体、
5. 0〜40質量%の、エポキシ基含有モノマー、
6. 0〜5質量%の、その他のラジカル重合可能なモノマー、
から合成されているゴムが当てはまる。
【0204】
好適なα−オレフィンのための例としては、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、1−ペンチレン、1−ヘキシレン、1−ヘプチレン、1−オクチレン、2−メチルプロピレン、3−メチル−1−ブチレン及び3−エチル−1−ブチレンを挙げることができ、その際、エチレン及びプロピレンが好ましい。
【0205】
好適なジエンモノマーとしては、例えば4〜8個のC原子を有する共役ジエン、例えばイソプレン及びブタジエン、5〜25個のC原子を有する非共役ジエン、例えばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエン及びオクタ−1,4−ジエン、環式ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエン並びにアルケニルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン及びトリシクロジエン、例えば3−メチルトリシクロ−(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエン又はそれらの混合物が挙げられる。ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデン−ノルボルネン及びジシクロペンタジエンが好ましい。
【0206】
ジエン含有率は、オレフィン重合体の全質量に対して、好ましくは0.5〜50質量%、特に2〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%である。好適なエステルのための例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート及びデシルアクリレートもしくは相応のメタクリル酸のエステルである。それらの内で、メチル−、エチル−、プロピル−、n−ブチル−及び2−エチルヘキシル−アクリレートもしくは−メタクリレートが特に好ましい。
【0207】
前記エステルの代わりに又はそのエステルに加えて、オレフィン重合体中に、エチレン性不飽和のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸の酸官能性の及び/又は潜伏性の酸官能性のモノマーが含まれていてよい。
【0208】
エチレン性不飽和のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸のための例は、アクリル酸、メタクリル酸、前記酸の第三級アルキルエステル、特にt−ブチルアクリレート及びジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸又は前記酸の誘導体並びにそれらのモノエステルである。
【0209】
潜在性の酸官能性のモノマーとは、重合条件下でもしくはオレフィン重合体を成形材料中に混加した場合に遊離の酸基を形成する化合物を表すべきである。そのための例としては、2〜20個のC原子を有するジカルボン酸の無水物、特に無水マレイン酸及び上述の酸の第三級C1〜C12−アルキルエステル、特にt−ブチルアクリレート及びt−ブチルメタクリレートが挙げられる。
【0210】
その他のモノマーとしては、例えばビニルエステル及びビニルエーテルが該当する。
【0211】
特に好ましいのは、50〜98.9質量%の、特に60〜94.85質量%のエチレン及び1〜50質量%の、特に5〜40質量%のアクリル酸もしくはメタクリル酸のエステル、0.1〜20.0質量%の、特に0.15〜15質量%のグリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレート、アクリル酸及び/又は無水マレイン酸からなるオレフィン重合体である。
【0212】
特に好適な官能化されたゴムは、エチレン−メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート−ポリマー、エチレン−メタクリレート−グリシジルメタクリレート−ポリマー、エチレン−メチルアクリレート−グリシジルアクリレート−ポリマー及びエチレン−メチルメタクリレート−グリシジルアクリレート−ポリマーである。
【0213】
上述のポリマーの製造は、自体公知の方法に従って、好ましくは高圧及び高められた温度下でのランダム共重合によって行うことができる。
【0214】
前記のコポリマーのメルトインデックスは、一般に、1〜80g/10分(190℃及び2.16kgの負荷で測定)の範囲にある。
【0215】
ゴムとしては、更に、市販のエチレン−α−オレフィン−コポリマーであって、ポリアミドと反応可能な基を含むコポリマーが該当する。基礎をなすエチレン−α−オレフィン−コポリマーの製造は、遷移金属触媒によって気相中もしくは溶液中で行われる。コモノマーとしては、以下のα−オレフィン:プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、スチレン及び置換されたスチレン、ビニルエステル、ビニルアセテート、アクリルエステル、メタクリルエステル、グリシジルアクリレート及び−メタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリルニトリル、アリルアミン;ジエン、例えばブタジエンなどのジエン、イソプレンが該当する。
【0216】
特に好ましいのは、エチレン/1−オクテン−コポリマー、エチレン/1−ブテン−コポリマー、エチレン−プロピレン−コポリマーであり、その際、組成は、
− 25〜85質量%の、好ましくは35〜80質量%のエチレン、
− 14.9〜72質量%の、好ましくは19.8〜63質量%の1−オクテンもしくは1−ブテンもしくはプロピレン又はそれらの混合物、
− 0.1〜3質量%の、好ましくは0.2〜2質量%の、エチレン性不飽和のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸又はかかる酸の官能性誘導体、
が特に好ましい。
【0217】
前記のエチレン−α−オレフィン−コポリマーの分子量は、10000〜500000g/モルの、好ましくは15000〜400000g/モル(Mn、GPCにより1,2,4−トリクロロベンゼン中でPS較正でもって測定した)の範囲にある。
【0218】
エチレン−α−オレフィン−コポリマー中のエチレンの割合は、5〜97質量%の、好ましくは10〜95質量%の、特に15〜93質量%の範囲にある。
【0219】
好ましい一実施態様においては、いわゆる"シングルサイト触媒"によって製造されたエチレン−α−オレフィン−コポリマーが使用される。更なる詳細は、US5,272,236号に見出すことができる。この場合に、該エチレン−α−オレフィン−コポリマーは、ポリオレフィンについて狭い、4未満の、好ましくは3.5未満の分子量分布を有する。
【0220】
好適なゴムの他の群としては、コア−シェル−グラフトゴムが挙げられる。これは、エマルジョン中で製造されたグラフトゴムであって、少なくとも1つの硬質な成分と少なくとも1つの軟質な成分とからなるゴムである。硬質な成分とは、通常は、少なくとも25℃のガラス転移温度を有する重合体を表し、軟質な成分とは、高くても0℃のガラス転移温度を有する重合体を表す。これらの生成物は、1つのコアと、少なくとも1つのシェルとからなる構造を有し、その際、該構造は、モノマー添加の順序によって生ずる。軟質な成分は、一般に、ブタジエン、イソプレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートもしくはシロキサンと、場合により他のコモノマーから誘導される。好適なシロキサンコアは、例えば、環状のオリゴマーのオクタメチルテトラシロキサン又はテトラビニルテトラメチルテトラシロキサンから出発して製造できる。これらは、例えばγ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランと、開環的なカチオン重合において、好ましくはスルホン酸の存在下で反応させることで、軟質なシロキサンコアとすることができる。前記シロキサンは、例えばハロゲンもしくはアルコキシ基などの加水分解可能な基を有するシラン、例えばテトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシランもしくはフェニルトリメトキシシランの存在下での重合反応を実施することによって架橋させてもよい。好適なコモノマーとしては、ここでは、例えばスチレン、アクリルニトリル及び架橋性もしくはグラフト活性な1つより多くの重合可能な二重結合を有するモノマー、例えばジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジアクリレートもしくはトリアリル(イソ)シアヌレートが挙げられる。前記の硬質な成分は、一般に、スチレン、α−メチルスチレン及びそれらの共重合体から誘導され、その際、ここでは、コモノマーとしては、好ましくは、アクリルニトリル、メタクリルニトリル及びメチルメタクリレートを挙げることができる。
【0221】
好ましいコア・シェル型グラフトゴムは、1つの軟質なコアと1つの硬質なシェルを有するか、又は1つの硬質なコアと、1つの第一の軟質なシェルと、少なくとも1つの更なる硬質なシェルとを有する。カルボニル基、カルボン酸基、酸無水物基、酸アミド基、酸イミド基、カルボン酸エステル基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基、ウレタン基、尿素基、ラクタム基もしくはハロゲンベンジル基などの官能基の導入は、この場合好ましくは、好適に官能化されたモノマーを最後のシェルの重合に際して添加することによって行われる。好適な官能化されたモノマーは、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のモノエステルもしくはジエステル、t−ブチル−(メタ)アクリレート、アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート及びビニルオキサゾリンである。官能基を有するモノマーの割合は、一般に、コア・シェル型グラフトゴムの全質量に対して、0.1〜25質量%、好ましくは0.25〜15質量%である。軟質な成分と硬質な成分との質量比は、一般に、1:9〜9:1、好ましくは3:7〜8:2である。
【0222】
かかるゴムは、自体公知であり、例えばEP−A−0208187号に記載されている。官能化のためにオキサジン基を導入することは、例えばEP−A−0791606号に従って行うことができる。
【0223】
好適な衝撃強さ調節剤の他の基は、熱可塑性のポリエステル−エラストマーである。ポリエステル−エラストマーとは、その際、セグメント化されたコポリエーテルエステルであって、一般にポリ(アルキレン)エーテルグリコールから誘導される長鎖セグメントと、低分子ジオール及びジカルボン酸から誘導される短鎖セグメントとを含むコポリエーテルエステルを表す。かかる生成物は、自体公知であり、文献中に、例えばUS3,651,014号に記載されている。また、相応の製品は、Hytrel TM(DuPont)、Arnitel TM(Akzo)及びPelprene TM(Toyobo Co.Ltd.)という名称で市販されている。
【0224】
もちろん、種々のゴムの混合物を使用してもよい。
【0225】
他の成分F)としては、本発明による熱可塑性成形材料は、通常の加工助剤、例えば安定剤、酸化防止剤、熱分解に抗する薬剤及び紫外線による分解に抗する薬剤、滑剤および離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、核形成剤、可塑剤、難燃剤などを含有してよい。
【0226】
酸化防止剤及び熱安定剤のための例として、ホスファイト及び他のアミン(例えばTAD)、ヒドロキノン、これらの群の種々の置換された代表例並びにそれらの混合物が挙げられ、その濃度は、熱可塑性成形材料の質量に対して1質量%までの濃度である。
【0227】
一般に、前記成形材料に対して2質量%までの量で使用されるUV安定剤としては、種々の置換されたレゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンが挙げられる。
【0228】
無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄及びカーボンブラック及び/又はグラファイト、更に、有機顔料、例えばフタロシアニン、シナクリドン、ペリレン並びに着色剤、例えばニグロシンおよびアントラキノンを着色剤として添加してよい。
【0229】
核形成剤としては、ナトリウムフェニルホスファイト、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素並びに好ましくはタルクを使用してよい。
【0230】
難燃剤としては、赤リン、リン含有の及び窒素含有の難燃剤並びにハロゲン化されたFS剤系及びそれらの相乗剤が挙げられる。
【0231】
好ましい安定剤は、2質量%までの、好ましくは0.5〜1.5質量%の、特に0.7〜1質量%の、一般式I:
【化9】

[式中、
m、nは、0もしくは1を意味し、
A及びBは、C1〜C4−アルキルもしくはフェニルによって置換された第三級C原子を意味し、
1、R2は、水素又はオルト位もしくはパラ位のC1〜C4−アルキル基を意味し、前記基は、場合により1〜3個のフェニル基、ハロゲン、カルボキシル基もしくは前記カルボキシル基の遷移金属塩によって置換されていてよく、かつ
3、R4は、水素又はオルト位もしくはパラ位のメチル基(m+nが1を表す場合)又はオルト位もしくはパラ位の第三級C3〜C9−アルキル基であって、場合により1〜3個のフェニル基によって置換されていてよい基(m+nが0もしくは1を表す場合)を意味する]による芳香族の第二級アミンである。
【0232】
好ましい基AもしくはBは、対称的に置換された第三級炭素原子であり、その際、ジメチル置換された第三級炭素が特に好ましい。同様に好ましいのは、置換基として1〜3個のフェニル基を有する第三級炭素である。
【0233】
好ましい基R1もしくはR2は、パラのt−ブチルもしくはテトラメチル置換されたn−ブチルであり、その際、前記のメチル基は、好ましくは1〜3個のフェニル基によって置換されていてよい。好ましいハロゲンは、塩素及び臭素である。遷移金属は、例えば、R1もしくはR2のカルボキシルと遷移金属塩を形成しうるものである。
【0234】
好ましい基R3もしくはR4は、m+nが2の場合には、水素であり、並びにm+nが0もしくは1の場合には、オルト位もしくはパラ位のt−ブチル基であり、前記基は、特に1〜3個のフェニル基によって置換されていてよい。
【0235】
第二級芳香族アミンF)のための例は、
4,4′−ビス(α,α′−t−オクチル)ジフェニルアミン、
4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、
4,4′−ビス(α−メチルベンゾヒドリル)ジフェニルアミン、
4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−4′−トリフェニルメチルジフェニルアミン、
4,4′−ビス(α,α−p−トリメチルベンジル)ジフェニルアミン、
2,4,4′−トリス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、
2,2′−ジブロモ,4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、
4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)−2−カルボキシジフェニルアミン−ニッケル−4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、
2−s−ブチル−4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、
4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)−2−(α−メチルヘプチル)ジフェニルアミン、
2−(α−メチルペンチル)−4,4′−ジトリチルジフェニルアミン、
4−α,α−ジメチルベンジル−4′−イソプロポキシジフェニルアミン、
2−(α−メチルヘプチル)−4′−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、
2−(α−メチルペンチル)−4′−トリチルジフェニルアミン、
4,4′−ビス(t−ブチル)ジフェニルアミン並びに:
【化10】

【0236】
【化11】

【0237】
【化12】

である。
【0238】
その製造は、BE−A67/0500120号及びCA−A963594号に記載される方法に従って行われる。好ましい第二級芳香族アミンは、ジフェニルアミン及びその誘導体であり、それは、Naugard(登録商標)(Chemtura社)として市販されている。前記アミンは、2000ppmまでの、好ましくは100〜2000ppmの、有利には200〜500ppmの、特に200〜400ppmの少なくとも1種のリン含有の無機酸又はそれらの誘導体との組み合わせにおいて好ましい。
【0239】
好ましい酸は、次亜リン酸、亜リン酸もしくはリン酸並びにそれらのアルカリ金属との塩であり、その際、ナトリウム及びカリウムが特に好ましい。好ましい混合物は、特に次亜リン酸及び亜リン酸もしくはそのアルカリ金属塩の、3:1〜1:3の比率の混合物である。前記の酸の有機誘導体とは、好ましくは、上述の酸のエステル誘導体を表すべきである。
【0240】
成形材料
本発明による熱可塑性成形材料は、自体公知の方法に従って、出発成分を通常の混合装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダー型ミルもしくはバンバリー型ミルにおいて混合し、引き続き押し出すことで製造できる。押出後に、押出物を冷却し、そして微細化してよい。また、個々の成分を予備混合し、次いで得られた出発物質を単独で及び/又は場合により混合して添加することもできる。混合温度は、一般に、230〜320℃である。
【0241】
更なる好ましい作業様式に従って、成分B)及びC)並びに場合によりD)ないしF)を、プレポリマーと混合し、調製し、造粒してよい。得られた造粒物は、固相において引き続き、不活性ガス下で連続的にもしくは断続的に成分A)の融点未満の温度で、所望の粘度になるまで濃縮される。
【0242】
本発明による熱可塑性成形材料は、良好な機械特性並びに熱安定性及び良好な加工性/流動性の点で顕著である。
【0243】
上記の成分B)の超分岐ポリエーテルアミンは、上記の成分C)の非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物と組み合わせて、本発明により、ポリアミドの流動性及び/又は熱安定性の改善のために使用することができる。
【0244】
本発明による熱可塑性成形材料自体は、あらゆる種類の繊維、シート及び成形体の製造に適している。
【0245】
本発明の対象は、更に、本発明による熱可塑性成形材料から得られる繊維、シート及び成形体である。
【0246】
これらは、あらゆる種類の繊維、シート及び成形体の製造のために適している。以下に、幾つかの好ましい例を挙げる:生活用品、電子部材、医療装置、自動車部材、電子装置のケーシング、自動車中の電子部品のケーシング、フェンダ、ドアプランク、トランクリッド、スポイラ、吸気マニホルド、ウォータタンク、電子工具のケーシング。
【0247】
本発明の対象は、更に、一緒に使用するための、別々に存在する前記定義による成分A)、B)及びC)からなる組合せ物である。
【0248】
実施例
以下の成分を使用した。
【0249】
第1表: 成分A
【表1】

【0250】
成分B:
成分B−1として、質量平均分子量1300g/モル(ゲル透過クロマトグラフィーによって、スタンダードとしてプルランを用いて、0.02モル/lのギ酸及び0.2モル/lのKClの溶剤としての水中の溶液中で測定した)及び分岐度DB0.6〜0.7を有するポリエチレンイミン−単独ポリマーを使用した(BASF株式会社のLupasol(登録商標)G20無水)。
【0251】
成分C:
成分C−1の製造
100gのTEOSを、500gのエタノールと60℃で30分にわたり混合した。引き続き、HCl(水中濃度2モル/l)を、pH値3に調整されるまで滴加し、そこに352gの水を一様な撹拌下で添加した。その反応を、引き続き60℃で3時間にわたり実施した。引き続き、温度を80℃に更に3時間にわたり高めた。SiO2粒子を有する得られた分散液は澄明であり、かつ3.5質量%の固体含有率を有していた。前記の溶液から、SiO2を粉末形で乾燥によって得た。第一段階で、80℃及び50ミリバールにおいて、8時間にわたり乾燥させた。引き続き、得られた粉末を、真空炉中で100℃において更に12時間にわたり乾燥させた。
【0252】
成分C−2: コロイド状SiO2−ゾル(Eka Chemicals社のBindzil(登録商標)CC/360)
使用される成分C−1及びC−2は、以下の特性を有していた:
第2表
【表2】

【0253】
1 DIN66135−1に従う87.4Kの温度で
2 オリビア−コンクリン−DFT法
3 動的光散乱により得られた粒度分布から計算
【0254】
成分E:
成分E−1として、平均直径10〜20マイクロメートル及び平均長さ200〜250マイクロメートルを有するガラス繊維(Ownes Corning Fiberglass OFC 1110)を使用した。
【0255】
成分F
成分Fとして、成分A−1の全質量に対して、0.7質量%のUltrabatch(登録商標)(CuI及びKIを含有する熱安定剤)と、1.7質量%のColorbatch(カーボンブラックを有するポリエチレン)と、1.7質量%のステアリン酸カルシウムを使用した。
【0256】
成形材料を、以下のように製造した:
全てのサンプルは、溶融物中で二軸スクリュー押出機ZSK−25において280℃で10kg/hの流量でコンパウンディングすることによって製造した。
【0257】
その場合、まず、95質量%の成分A−1と5質量%の成分C−1もしくはC−2とからなるマスターバッチを上述の条件下でコンパウンディングによって製造した。その際、成分A−1の添加は、コールドフィードモードで、かつ成分C−1もしくはC−2の添加は、ホットフィードモードで行った。
【0258】
引き続き、こうして得られたマスターバッチを、更なる成分A−1並びに成分Fと一緒にコールドフィードモードで上述の条件下でのコンパウンディングに供した。コンパウンディングの間に、更に、成分B−1をホットフィードモードで添加し、そして引き続き成分E−1をホットフィードモードで添加した。混合時間は、2分間であった。乾燥された造粒物が得られた。該造粒物の含水率は、0.1質量%未満であった。
【0259】
特性の測定のために使用される試験体は、射出成形(噴射温度280℃、溶融温度80℃)によって得られた。
【0260】
MVRは、ISO1133に従って、270℃/5kgの負荷で測定された。シャルピー衝撃強さは、ノッチ付きでISO179−2/1eAに従って23℃で測定し、ノッチなしで−30℃でISO179−2/1eUに従って測定した。引張特性は、ISO527−2に従って測定した。スパイラル長は、1.5mmのフロースパイラルで280℃で測定した。ポリアミドの粘度数は、DIN53727に従って96質量%硫酸中の0.5質量%溶液で測定した。
【0261】
成形材料の測定結果及び組成は、第3表に記載されている。
【0262】
【表3】

【0263】
1 成分Bは成分Aに対して反応性なので、例V4及びV5の特性は直接的に比較できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
A)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミド、
B)少なくとも1種の超分岐ポリエチレンイミン、
C)一次粒子の数加重平均直径0.5〜20nmを有する少なくとも1種の金属もしくは半金属の少なくとも1種の非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物
を含有する、熱可塑性成形材料。
【請求項2】
成分B)及びC)が、0.1〜4の、好ましくは0.2〜2の質量比B/Cで含まれている、請求項1に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
50〜99.9質量%の成分A)と、0.05〜30質量%の成分B)と、0.05〜20質量%の成分C)とを含有し、その際、該成分A)〜C)の質量パーセントの合計は、100質量%となる、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
更に、成分D)として少なくとも1種のポリエーテルアミンを含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
55〜99.85質量%の成分A)、0.05〜15質量%の成分B)、0.05〜15質量%の成分C)、及び0.05〜15質量%の成分D)を含有し、その際、成分A)〜D)の質量%の合計は、100質量%となる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
更に、成分E)として少なくとも1種の繊維状の充填材、好ましくはガラス繊維を含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
15〜98.9質量%の成分A)、0.05〜10質量%の成分B)、0.05〜10質量%の成分C)、0〜5質量%の成分D)、及び1〜70質量%の成分E)を含有し、その際、成分A)〜E)の質量%の合計は、100質量%となる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
更に、成分F)として他の添加剤を含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
成分C)がゾルから得られる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項10】
成分C)がゾル・ゲル法によって得られる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項11】
成分C)が、150〜700m2/gのDIN66131による比表面積BETを有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項12】
成分C)として、0.5〜20nmの一次粒子の数加重平均直径を有するケイ素の非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物を含有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項13】
成分C)が、1〜15nmの、好ましくは1〜10nmの、一次粒子の数加重平均直径を有する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項14】
成分B)が、50℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項15】
成分B)が、100〜900mg KOH/gの、DIN53176によるアミン価を有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項16】
成分B)が、平均で少なくとも3個の第一級アミノ基を1分子当たりに有する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項17】
成分B)が、エチレンイミンの酸触媒による重合によって得られる、請求項1から16までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項で定義される高分岐もしくは超分岐のポリエチレンイミンB)を、請求項1から17までのいずれか1項で定義される非晶質の酸化物及び/又は酸化物水和物C)と組み合わせて、ポリアミドの流動性及び/又は熱安定性の改善のために用いる使用。
【請求項19】
請求項1から17までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料を、繊維、シート及び成形体の製造のために用いる使用。
【請求項20】
請求項1から17までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料から得られる、繊維、シート及び成形体。
【請求項21】
請求項1から17までのいずれか1項で定義された、個別に存在する成分A)、B)及びC)からなる、一緒に使用するための組合せ物。

【公表番号】特表2011−515523(P2011−515523A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500206(P2011−500206)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053166
【国際公開番号】WO2009/115536
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】