説明

超合金との溶接性が改善された溶加金属組成物

【課題】部品を接合するための溶加棒金属組成物を提供すること。
【解決手段】溶加金属(6)組成物は、約9.0〜約16重量%のクロム、約7.0〜約14重量%のコバルト、約10〜約20重量%のモリブデン、約1.0〜約5.0重量%の鉄、約0.05〜約0.75重量%のアルミニウム、約0.5〜約2.0重量%のチタン、0.8重量%以下のマンガン、0.02〜約0.10重量%の炭素、約0.55〜2.75重量%のチタン+アルミニウム、及び所定量のニッケルを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、金属接合、より詳細には、部品を接合するための溶加棒金属組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル基超合金等の高力且つ耐酸化性の合金は、ターボ機械の構成において広く使用されている。超合金は、多くのターボ機械部品に使用するのに望ましい強度、重量、耐久性、及び温度特性を保有する。しかしながら、超合金は概して、溶離亀裂及び歪み時効割れ(SAC)を起こしやすい傾向が原因で、溶接性に乏しい。SACは、アルミニウム(Al)及びチタン(Ti)含有量と相関関係があるガンマプライム体積分率と密接に関係している。ガンマプライム体積分率、特にAl含有量が増加すると、SACの傾向が増大する。SACは概して、溶融境界(WMATFB)領域に隣接する溶接金属において発生し、且つ/又は母材金属の熱影響部(HAZ)へ伝播する。WMATFB領域内の材料は、希釈によって生じた母材金属及び溶接中に添加された溶加金属を含む。そのため、WMATFB領域は、SACの傾向を回避する又は少なくとも低下させるための、溶接可能材料領域内に収まる化学構造を含むべきである。
【0003】
WMATFB領域の化学構造が溶接可能材料領域内に収まる場合、亀裂傾向は低い。例えばタングステン不活性ガス(TIG)溶接法において、典型的な希釈比は約30:70であり、これは、WMATFB領域の30%が母材金属を含み且つWMATFB領域の70%が溶加金属を含むことを意味する。従って、特定の合金を溶接するための溶加金属は、ある特定の化学組成及び機械的特性を高温において保有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7494043号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態の1態様では、溶加金属組成物は、約9.0〜約16重量%のクロム、約7.0〜約14重量%のコバルト、約10〜約20重量%のモリブデン、約1.0〜約5.0重量%の鉄、約0.05〜約0.75重量%のアルミニウム、約0.5〜約2.0重量%のチタン、0.8重量%以下のマンガン、0.02〜約0.10重量%の炭素、約0.55〜2.75重量%のチタン+アルミニウム、及び所定量のニッケルを含む。
【0006】
例示的な実施形態の別の態様では、金属の接合方法は、約9.0〜約16重量%のクロム、重量で約7.0〜約14重量%のコバルト、約10〜約20重量%のモリブデン、約1.0〜約5.0重量%の鉄、約0.05〜約0.75重量%のアルミニウム、約0.5〜約2.0重量%のチタン、0.8重量%以下のマンガン、0.02〜約0.10重量%の炭素、約0.55〜2.75重量%のチタン+アルミニウム、及び所定量のニッケルを含む溶加金属を使用して、第1の合金を第2の合金に接合することを含む。
【0007】
これら及び他の利点及び特徴は、図面と併せて以下の説明からさらに明らかになるであろう。
【0008】
本発明とみなされる主題を特に指摘し、本明細書の最後の特許請求の範囲において明確に特許請求する。本発明の前述及び他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術の溶加金属でキャビティーが満たされている基板の部分断面図である。
【図2】先行技術の別の溶加金属でキャビティーが満たされている基板の部分断面図である。
【図3】例示的な実施形態による溶加金属でキャビティーが満たされている基板の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明では、例として図面を参照して、本発明の実施形態を利点及び特徴とともに説明する。
【0011】
基板、特にターボ機械類の表面には、ピット、キャビティー等が現れる。流入空気によって運ばれた、又は燃焼によって現れた不純物は、ターボ機械の種々の部分を通過する。不純物は、多くの場合、内部ターボ機械表面上に沈着し、時間が経つと、最終的にはピット、キャビティー等を形成する。他の不純物は、高速で内部表面に衝撃を与えることによってキャビティー又はピットを作成し得る。キャビティー又はピットのサイズが所望の閾値を超えていれば、基板を修理又は交換しなくてはならない。ターボ機械部品のコストは高いため、基板を修理することが望ましい。
【0012】
従前、約0.250インチを超える直径のキャビティー及び/又はピットは、修理不可能と考えられていた。現在の溶加金属組成物では、キャビティーへの修理は0.250インチ未満に限定される。0.250インチ超のキャビティーは、部品破損又はターボ機械損傷につながり得る亀裂を経験せずには適切に修理できなかった。例えば、図1に示す通り、基板2は直径約0.54インチのキャビティー4を含む。キャビティー4は、例示的な実施形態では超合金H230の形態をとる、先行技術の溶加金属6で満たされている。溶加金属6と基板2との間の乏しい溶接性は、歪み時効割れ(SAC)をもたらした。SACは、溶接金属溶融境界(WMATFB)領域に隣接する溶加金属6において、又は溶加金属6と基板2との間の領域において発生した。図示するように、SACは、所望のパラメーターを超える長さを有する亀裂9及び11の形成をもたらした。そのような大きさの亀裂は、溶加金属6をキャビティー4から取り外し得る。取り外されると、溶加金属6はターボ機械部品に損傷を引き起こし得る。
【0013】
図2は、直径約0.50インチのキャビティー22を含む基板20を例証している。キャビティー22は、例示的な実施形態ではニモニックC263の形態をとる、別の先行技術の溶加金属で満たされている。ここでも、溶加金属24と基板20との間の乏しい溶接性が歪み時効割れ(SAC)をもたらした。SACは、WMATFB領域に隣接する溶加金属24において発生した。SACの結果として、溶加金属24の他の領域においてもさらなる亀裂が発生し得る。図示するように、SACは、亀裂28、30及び32の形成をもたらした。亀裂28は約0.041インチの長さを有し、亀裂30は約0.032インチの長さを有し、亀裂32は約0.56インチの長さを有する。亀裂28、30及び32は、所望の亀裂長さ限界を超える。上述したものと同様に、そのような大きさの亀裂は、溶加金属24をキャビティー22から取り外し得る。
【0014】
図3は、直径約0.50インチであるキャビティー43を有する基板40を例証している。キャビティー43は、例示的な実施形態による溶加金属組成物を有する溶加金属45で満たされている。溶加金属45はSACに対して耐性がある。すなわち、溶加金属45は複数の亀裂47〜52を呈するが、亀裂47〜52のそれぞれは、所望の亀裂長さ限界よりも実質的に小さい。例えば、亀裂47は長さ約0.020インチであり、亀裂48は長さ約0.010インチであり、亀裂49は長さ約0.014インチであり、亀裂50は長さ約0.010インチであり、亀裂51は長さ約0.012インチであり、亀裂52は長さ約0.008インチである。経験的に、そのような亀裂は溶加金属破損につながる可能性が低いことが判明した。そのため、溶加金属45を用いることにより、従来の方法及び溶加金属を使用して従前修理不可能と考えられていたキャビティーを修理することができる。
【0015】
例示的な実施形態では、溶加金属45は、約9.0〜約16重量%のクロム、約7.0〜約14重量%のコバルト、約10〜約20重量%のモリブデン、約1.0〜約5.0重量%の鉄、約0.05〜約0.75重量%のアルミニウム、約0.5〜約2.0重量%のチタン、0.8重量%以下のマンガン、0.02〜約0.10重量%の炭素、約0.55〜2.75重量%のチタン+アルミニウム、及び残部の所定量のニッケルを含む溶加金属組成物を含む。
【0016】
例示的な実施形態の1態様では、クロムの量は約11〜約14重量%であり、コバルトの量は約10〜約11重量%であり、モリブデンの量は約14〜約16重量%であり、鉄の量は約2.0〜約4.0重量%であり、アルミニウムの量は約0.15〜約0.3重量%であり、チタンの量は約1.0〜約1.2重量%であり、炭素の量は0.02〜約0.10重量%であり、チタン+アルミニウムの量は約1.2〜1.4重量%であり、残部は所定量のニッケルを含む。
【0017】
例示的な実施形態の別の態様では、クロムの量は約12.5重量%であり、コバルトの量は約10.5重量%であり、モリブデンの量は約15.0重量%であり、鉄の量は約3.0重量%であり、アルミニウムの量は約0.25重量%であり、チタンの量は約1.1重量%であり、炭素の量は約0.06重量%であり、チタン+アルミニウムの量は約1.65重量%であり、残部は所定量のニッケルを含む。
【0018】
溶加金属45のための特定の溶加金属組成物により、従前可能であったよりも大きいキャビティー、ピット等の修理ができるようになる。より具体的には、特定の溶加金属組成物は、直径最大1インチ以上のキャビティーを修理に使用すると、許容される強度、摩耗及び接着特性を呈することが判明した。特定の溶加金属組成物は、より大きいキャビティー、ピット等の修理を可能にすることにより、従前なら廃棄されていたであろうターボ機械部品の修理及び再使用を可能にする。故に、特定の溶加金属組成物は、実質的なコスト削減につながる。現時点では、ターボ機械類の修理の観点から論じられているものの、特定の溶加金属組成物を使用して、多様な部品を修理できることを理解すべきである。すなわち、溶加金属45は、鋼、ステンレス鋼、並びにGTD111(商標)、GTD444(商標)及びR108(商標)等の他の超合金等、幅広い材料に適合する。すなわち、例示的な実施形態による溶加金属を用いて、ステンレス鋼から形成された第1部材を、ステンレス鋼から形成された第2部材と接合することができる。同様に、例示的な実施形態による溶加金属を用いて、GTD111(商標)、GTD444(商標)及びR108(商標)の1つを含む超合金から形成された第1部材を、GTD111(商標)、GTD444(商標)及びR108(商標)の1つを含む超合金から形成された第2部材と接合することができる。
【0019】
限られた数の実施形態のみに関連して本発明を詳細に記述してきたが、そのような開示されている実施形態に本発明が限定されないことは容易に理解されるはずである。むしろ、本発明は、これまでに記述されていないが本発明の精神及び範囲に相応する任意の数の変形、変更、置換又は均等の配置を組み込むように修正することができる。加えて、本発明の種々の実施形態について記述してきたが、本発明の態様は、記述した実施形態の一部を含み得るに過ぎないことを理解されたい。従って、本発明は、前述の記述によって限定されるものとしてとらえられるべきではなく、添付した特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約9.0〜約16重量%のクロム、
約7.0〜約14重量%のコバルト、
約10〜約20重量%のモリブデン、
約1.0〜約5.0重量%の鉄、
約0.05〜約0.75重量%のアルミニウム、
約0.5〜約2.0重量%のチタン、
0.8重量%以下のマンガン、
0.02〜約0.10重量%の炭素、
約0.55〜2.75重量%のチタン+アルミニウム、及び
所定量のニッケル
を含む溶加金属(6)組成物。
【請求項2】
クロムの量が約11〜約14重量%である、請求項1記載の溶加金属(6)組成物。
【請求項3】
コバルトの量が約10〜約11重量%である、請求項1記載の溶加金属(6)組成物。
【請求項4】
モリブデンの量が約14〜約16重量%である、請求項1記載の溶加金属(6)組成物。
【請求項5】
鉄の量が約2.0〜約4.0重量%である、請求項1記載の溶加金属(6)組成物。
【請求項6】
アルミニウムの量が約0.15〜約0.3重量%である、請求項1記載の溶加金属(6)組成物。
【請求項7】
チタンの量が約1.0〜約1.2重量%である、請求項1記載の溶加金属(6)組成物。
【請求項8】
炭素の量が0.02〜約0.10重量%である、請求項1記載の溶加金属(6)組成物。
【請求項9】
チタン+アルミニウムの量が約1.2〜1.4重量%である、請求項1記載の溶加金属(6)組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate