説明

超微粉砕茶葉分散液およびそれを配合した飲食品

茶葉原料を粉砕し、粉砕物から粉末茶を得て、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られることを特徴とする超微粉砕茶葉分散液。この超微粉砕茶葉分散液を配合してなる茶飲料は、ざらつき、雑味が極力少なく緑茶飲料に不可欠なすっきりした後味を保持し、緑茶本来の食感、コク、味わいを有し、かつ長期保管においても沈殿や濁りの発生しない安定な、優れた品質の茶飲料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに超微粉砕処理した後、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られることを特徴とする超微粉砕茶葉分散液、それを配合した飲食品及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶飲料は緑茶特有の良好な風味と高い嗜好性、食事との相性に加えて、健康志向の高まりと相まって幅広い層に支持されている。緑茶飲料はカロリーが低い無糖飲料の代表である。中でも特に、携帯性に優れ、再栓可能であるという利便性をもったペットボトル入りの緑茶飲料が消費者のニーズとマッチし、市場規模を急速に拡大してきた。一方で、ペットボトルや瓶などの透明容器は外観が見えるという容器特性があり、残存茶葉と茶葉からの溶出成分由来と考えられる混濁が品質上の問題点となることが考慮され、混濁や沈殿を抑制する種々の製造技術がこれまでも多く開発され、実施されてきた。
【0003】
しかしながら、これらは製造工程中で緑茶の本来持っている香味成分まで除去し、緑茶本来の良好な風味、コクが損なわれるという問題点もあった。これを解決する目的で、乾式粉砕した茶葉を直接添加、あるいはその懸濁液を添加することにより、緑茶本来の食感を付与することもできるが、乾式粉砕した微粒子の粒度は10μm程度であり、ざらつきのある食感で、緑茶飲料に求められる清涼感、すっきりした後味を損い好ましくない結果となる場合があった。湿式粉砕によりさらに微細化することもできるが、十分なすっきり感が得られない上、経時的な沈殿が懸念されていた(特許文献1)。
【0004】
また、茶葉を水中に微粒子として分散・懸濁させてスラリーとなし、その後スラリーから茶葉の微粒子を分離・除去することを特徴とする茶葉抽出液の製造方法が開示されているが(特許文献2)、風味,食感の点で満足できるものではなかった。
【0005】
さらに、ココア、コーヒー、抹茶等の不溶性固形分の沈殿や濁りが生じない、分散性に優れた不溶性固形物入り飲料の製造方法として、水もしくは湯に対して不溶性の固形物の粉末状もしくはペースト状物とカラギナン、ジェランガムなどの安定剤とを加え、ホモジナイズ処理することを特徴とする製造方法が知られているが、安定剤が飲料の香味や粘度などの物性に影響を及ぼすという懸念があった(特許文献3)。
【0006】
緑茶を抽出後、微粒子を除去し、濁度をOD720で0.05未満とした上で緑茶粉末を添加した緑茶飲料が知られているが、添加する緑茶粉末の粒子径によってはスッキリ感が失われたり、沈殿などが生じる懸念がある(特許文献4)。
【特許文献1】特開平8−116881号公報
【特許文献2】特開平3−108444号公報
【特許文献3】特開2001−29053号公報
【特許文献4】特開平8−163958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ざらつき、雑味が極力少なく緑茶飲料に不可欠なすっきりした後味を保持し、緑茶本来の食感、コク、味わいを有し、かつ長期保管においても沈殿や濁りの発生しない安定な飲料、特に緑茶飲料を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記問題点について検討した結果、茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後に、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られる超微粉砕茶葉分散液、あるいは茶葉原料を粉砕し、さらに微粉砕して得た微粉砕粉末茶を、飲料に添加した後、当該飲料から微粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られる飲料が上記問題点を解決することを見出した。さらに、本発明者らは、好ましい実施の態様を見出すために検討した結果、茶葉原料を粉砕し、粉砕して得られた粉末茶を水に懸濁し、その懸濁液を高圧ホモジナイザーなどによる湿式粉砕によりさらに微粉砕処理し、粒子径1μm以下の微粒子の割合を高めた後、粒子径1μm以上の不要な粒子の大部分を除去し、濾過を行った従来の緑茶抽出液と混合して濁度を0.05以上とすることにより、あるいは超微粉砕茶葉粉末を、従来の緑茶飲料に添加した後、当該飲料から粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去した後、濁度を0.05以上とすることにより、緑茶本来のコク、甘味を有する茶飲料を製造することに成功した。また、本工程では遠心分離により粒子径1μm以上の粒子を大部分除去し、従来製法の緑茶抽出液と混合希釈後の濁度を0.15以下とすることにより、経時的に発生する沈殿を抑制することも可能となった。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られることを特徴とする超微粉砕茶葉分散液、
(2)上記(1)に記載の超微粉砕茶葉分散液を配合してなることを特徴とする飲食物、
(3)茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、飲料に配合し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られることを特徴とする飲料、
(4)茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、茶抽出液に配合し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られることを特徴とする茶飲料、
【0010】
(5)茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶を超微粉砕処理し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする超微粉砕茶葉分散液の製造方法、
(6)茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶を高圧ホモジナイザーで微粉砕処理し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする超微粉砕茶葉分散液の製造方法、
(7)遠心分離により粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の超微粉砕茶葉分散液の製造方法、
(8)上記(1)に記載の超微粉砕茶葉分散液を飲食物に配合することを特徴とする飲食物の製造方法、
【0011】
(9)茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、飲料に配合し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする飲料の製造方法、
(10)茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、茶抽出液に配合し、ついで粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする茶飲料の製造方法、
(11)上記(1)に記載の超微粉砕茶葉分散液を茶抽出液に配合することを特徴とする茶飲料の製造方法、
(12)上記(11)に記載の方法で製造された茶飲料、及び
(13)濁度(680nmにおける吸光度)が0.05〜0.15であることを特徴とする上記(12)に記載の茶飲料、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる飲料は、ざらつき、雑味が極力少なく茶飲料(例えば緑茶飲料)に不可欠なすっきりした後味を保持し、茶(例えば緑茶)本来の食感、コク、味わいを有し、かつ長期保管においても沈殿や濁りの発生しない安定な、優れた品質の飲料である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[図1]超微粉砕茶葉分散液製造工程を示す。
[図2]超微粉砕茶葉分散液の粒度分布を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の超微粉砕茶葉分散液は、(イ)茶葉原料を粉砕し(粉砕工程)、(ロ)得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後(超微粉砕工程)、(ハ)粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去(粗粒子除去工程)することにより製造することができる。
【0015】
また、本発明の微粉砕茶葉分散液を利用した飲食物は、(イ)茶葉原料を粉砕し(粉砕工程)、(ロ)得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後(超微粉砕工程)、(ハ)粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して超微粉砕茶葉分散液を得て(粗粒子除去工程)、(ニ)得られた超微粉砕茶葉分散液を飲食物に配合する(配合工程)ことにより製造することができる。あるいは(イ)〜(ハ)を経て得られた超微粉砕した茶葉の処理物を、(ニ)工程に付さずに製造することができる。
【0016】
以下に、上記各工程について説明する。
(イ)粉砕工程
本発明に用いることができる茶葉原料は、特に限定されず、例えば、発酵茶、半発酵茶、不発酵茶などが挙げられ、具体的にはCamellia Sinensisに属する緑茶、ウーロン茶、紅茶、碾茶、ほうじ茶などの茶葉を挙げることができる。
茶葉原料の粉砕は、特に限定されるものではなく、通常の粉砕方法が採用でき、乾式粉砕又は湿式粉砕等が採用できる。例えば、石臼、ピンミル、ハンマーミル、カッターミル、コロイドミル、軸流型ミル、ホモジナイザー等の粉砕装置を使用することができる。この粉砕工程により、茶葉原料は、一般に粒子径が約1〜100μmの大きさに粉砕するのが好ましい。このようにして粉末茶(以下、微粉砕茶葉ということもある)を得る。
【0017】
(ロ)超微粉砕工程
上記工程(イ)で得た粉末茶をさらに微粉砕(超微粉砕)するに当たり、使用する装置、方法は、粉末茶の粒子径を約1μm以下に粉砕し得るものであれば特に限定されず、通常の装置、方法を使用することができる。例えば、流体式粉砕機、媒体式粉砕機、摩砕式ミル、遊星型ボールミル、振動ボールミル、超音波ボールミル、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を使用することができるが、好ましいのは高圧式ホモジナイザーによる湿式粉砕である。高圧ホモジナイザーとは、たとえば、高圧下の微細空間から液体を噴出することにより発生するせん断、キャビテーション等により、乳濁液滴や懸濁粒子を超微細化する装置を言う。この超微粉砕処理工程では、必要により液体、例えば粉末茶に水を加え、水の存在下、粉末茶の粒子径が1μm以下の割合が高くなるように適宜操作、微粉砕処理するのがよい。水を使用する場合は、茶葉粉砕物と水の使用量は特に制限はないが、茶葉粉砕物1重量部に対して、それと混合する水の量は通常約5〜50重量部、好ましくは約10〜30重量部である。液体は、水以外にも例えば茶抽出液であってもよい。ここで茶抽出液とは、例えば茶葉をお湯で抽出したもの、茶葉をお湯で抽出したものに炭酸水素ナトリウムおよびL−アスコルビン酸を添加したもの、あるいは通常のお茶などである。
【0018】
しかしながら、高圧ホモジナイザーによる超微粉砕の場合は、上記(イ)の工程でえられた粉末茶に水を加え、本工程を、通常水の存在下に懸濁状態で実施される。高圧ホモジナイザーの運転条件は機種によっても相違があるので一慨には言えないが、圧力100kg/cm以上で処理するのが好ましい。
【0019】
(ハ)粗粒子除去工程
上記工程(ロ)で得た微粉砕された粉末茶は、固状又は懸濁液であるが、茶葉の粒子径が約1μm以下のものが上記(ロ)工程前に比べて増加する。微粉砕された粉末茶が固状の場合は、上記(ロ)工程のように水を加え、懸濁液を得て、これを本工程に付する。また、飲料や茶抽出液などを上記工程(ロ)で得た微粉砕された粉末茶に加え、懸濁液を得て、これを本工程に付してもよい。飲料としては、例えば、茶飲料、アルコール飲料、コーヒー飲料、ジュース、果汁飲料、炭酸飲料などの種々の飲料が挙げられる。
本工程である粗粒子除去工程では粒子径が約1μmより大きい粗粒子の大部分を除去することを目的とする。上記「大部分」は、通常約50%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約99%以上である。茶葉の粒子径が約1μmより大きい粗粒子を除去することができる方法であれば特に制限はないが、一般に遠心分離操作によって粒子径が約1μmより大きい粗粒子の大部分を除くことができる。この操作によって、目的とする超微粉砕茶葉分散液が得られる。こうして得られる超微粉砕茶葉分散液の680nmにおける吸光度測定による濁度は約0.05〜1.5である。
【0020】
(ニ)配合工程
上記工程(ハ)で得られた超微粉砕茶葉分散液は、飲食物に配合することにより超微細茶葉含有の飲食物とすることができる。
例えば、超微粉砕茶葉分散液はそのまま水で希釈して茶飲料とすることができるが、より好ましくは、超微粉砕茶葉分散液を茶飲料と配合することにより、風味が改善された茶飲料とすることができる。さらに超微粉砕茶葉分散液を配合した後、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去してもよい。「大部分」は前記と同意義である。例えば、(イ)工程で使用される茶葉が緑茶葉である場合、超微粉砕茶葉分散液を通常の緑茶抽出液すなわち通常のお茶と配合することにより、風味が改善された緑茶飲料とすることができる。通常のお茶は、約60〜90℃のお湯で約2〜10分間抽出後ろ過し、L−アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを加えて殺菌・充填することにより得られる。通常のお茶の濁度は680nmの波長での吸光度で0.030以下程度である。こうして得られる緑茶飲料は、ざらつき、雑味が極力少なく緑茶飲料に不可欠なすっきりした後味を保持し、緑茶本来の食感、コク、味わいを有し、かつ長期保管においても沈殿や濁りの発生しない安定な、優れた品質の緑茶飲料である。これをPETボトルで代表される透明容器に充填して長期間保存しても、経時的に沈殿や濁りなどの外観上の問題が生じることはない優れた飲料である。
【0021】
なお、緑茶飲料の製造に際して、本発明の超微粉砕茶葉分散液と緑茶抽出液との配合割合は、重量比で一般に約1:1〜10、好ましくは約1:2〜8である。
この他にも本発明の超微粉砕茶葉分散液は、ようかん、ういろう、まんじゅう、最中、あん団子などの和菓子、ケーキ、カステラ、シュークリーム、ゼリー、ムースなどの洋菓子、パン、飴、チョコレート、パフェ、アイスクリーム、かき氷などの食品に配合したり、清涼飲料、スポーツドリンク、保健飲料などの飲料に配合して用いることができる。その配合割合は、飲食物の種類、目的とする風味等によって、適宜変わりうるが、それらの飲食品素材に対して、一般に約5〜50%(w/w)、好ましくは約10〜30%(w/w)である。また、目的とする飲食品の製造に際しては、必要に応じて糖類、ミネラル類、ビタミン類等の常用成分を配合することができる。
【0022】
また、微粉砕された粉末茶に飲料や茶抽出液などを加えた後、得られた懸濁液を上記工程(ハ)に付す場合には、上記工程(イ)〜(ハ)を経て得られた超微粉砕した茶葉の処理物を、上記工程(ニ)に付さなくても、そのまま飲料や茶飲料などとすることができる。より具体的には、例えば、上記工程(イ)および(ロ)を経て得られた微粉砕された粉末茶(例えば粉末、懸濁液等)を、飲料や茶抽出液に添加し、ついで、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去した後、L−アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを添加して、適切な濃さに調節し、その後、殺菌・充填される。微粉砕された粉末茶と飲料や茶抽出液との配合割合は、重量比で一般に約1:1〜10、好ましくは約1:2〜8である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
超微粉砕茶葉分散液の製造法
碾茶を石臼で挽いて製造された抹茶を約20倍量の水に懸濁させ、この懸濁液を高圧ホモジナイザーにより15MPaの圧力で処理し、遠心分離処理(6,000rpm、10分)し、超微粉砕茶葉分散液を得た。製造工程を示すと、図1の通りである。
このようにして得られた超微粉砕茶葉分散液と高圧ホモジナイザー処理を行わない液の粒度分布(測定法:レーザー回折散乱法、測定機器:ベックマンコールター社製LS230)を比較すると図2の通りである。実線は、ホモジナイザーを行った場合の結果であり、点線はホモジナイザー処理を行わなかった場合の結果である。
【実施例2】
【0025】
超微粉砕茶葉分散液を用いた緑茶飲料の官能評価
実施例1で得られた超微粉砕茶葉分散液を従来法によって抽出、濾過を行った緑茶抽出液に30重量%添加し、L−アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを添加し、濁度0.05〜0.15となる調合液を得た。この調合液を缶詰、レトルト殺菌し、缶入り緑茶飲料を得た。試飲したところ、表1に示すように、その風味は食感、甘味が感じられるものの、ざらつきがなく後口がすっきりしているという良好な結果であった。
【実施例3】
【0026】
碾茶を石臼で挽いて製造された粉末茶(抹茶)を約20倍量の水に懸濁させ、この懸濁液を高圧ホモジナイザーにより15MPaの圧力で処理した茶葉粉砕物を、緑茶(従来品)に30重量%添加した後、遠心分離により粒子径1μm以上の大部分を除去し、L−アスコルビン酸と炭酸水素ナトリウムとを添加した後、濁度0.05〜0.15となる調合液を得た。この調合液を缶詰、レトルト殺菌し、缶入り緑茶飲料を得た。試飲したところ、表1に示すように、その風味は食感、甘味が感じられるものの、ざらつきがなく後口がすっきりしているという良好な結果であった。
【0027】
(比較例1)
実施例1の高圧ホモジナイザー処理によって得られた懸濁液を、従来法によって抽出、濾過を行った緑茶抽出液に30重量%添加し、L−アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを添加した。その後缶詰、レトルト殺菌して缶入り緑茶飲料を得た。これを試飲したところ、その風味は表1に示すように、食感、コクは強く感じられるものの、ざらつきが残り、すっきり感に欠け好ましくないと評価された。
【0028】
(比較例2)
実施例1の抹茶懸濁液を高圧ホモジナイザー処理を行わずに遠心分離し(6,000rpm、10分)、従来法によって抽出、濾過した液と30重量%となるように混合し、L−アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを添加した後、缶詰、レトルト殺菌して缶入り緑茶飲料を得た。これを試飲したところ、その風味は表1に示すように、食感、コクはほとんど感じられず、水っぽいと感じられ、好ましくなかった。
【0029】
(比較例3)
実施例2と同様の方法で、濁度を0.05以下となる調合液を作成した後、缶詰、レトルト殺菌し、缶入り緑茶飲料を得た。これを試飲したところ、表1に示すように、後口のすっきり感は感じられるものの、甘味がわずかに感じられる程度で食感、コクはほとんど感じられず、やや好ましくないと評価された。
【0030】
(比較例4)
実施例2と同様の方法で、濁度を0.15以上となる調合液を作成し、缶詰、レトルト殺菌して、缶入り緑茶飲料を得た。これを試飲したところ、表1に示すように、ややすっきり感に欠けるものの、食感、コクに加えて甘味も感じられ、総合評価としては好ましいと評価されたが、長期保管中に沈殿が発生する結果となった。
以上の結果より、茶葉を粉砕して得られた粉末茶を水に懸濁し、その懸濁液を高圧ホモジナイザーによりさらに微粉砕処理し、粒子径1μm以下の微粒子の割合を高めた後、粒子径1μm以上の不要な粒子の大部分を除去し、得られた液を従来の緑茶抽出液と混合し、濁度0.05〜0.15とすることにより、香味的な優位性が確認された。
【0031】

【0032】
評価は茶飲料の官能評価における専門パネラー5名により実施した。香味評価は、4(強く感じる)、3(感じる)、2(やや感じる)、1(わずかに感じる)、0(感じない)の5段階評価。総合評価は、5(好き)、4(やや好き)、3(どちらでもない)、2(やや嫌い)、1(嫌い)の5段階評価。
【実施例4】
【0033】
超微粉砕茶葉分散液入り緑茶飲料の製造方法
緑茶茶葉4g
微粉砕茶葉(実施例1で得た抹茶)1g
炭酸水素ナトリウム0.3g
L−アスコルビン酸0.4g
緑茶茶葉4gを80℃の純水140mlで10分間抽出し、濾過し、炭酸水素ナトリウム0.3g及びL−アスコルビン酸0.4gを添加した後、微粉砕茶葉1gを実施例1と同様の処理を施して得た超微粉砕茶葉分散液を配合して1000mlとなし、殺菌・充填した。
【実施例5】
【0034】
超微粉砕茶葉分散液入り緑茶飲料の製造方法2
緑茶茶葉4g
微粉砕茶葉(実施例1で得た抹茶)1g
炭酸水素ナトリウム0.3g
L−アスコルビン酸0.4g
微粉砕茶葉1gを約20倍量の水に懸濁させ、この懸濁液を高圧ホモジナイザーにより15MPaの圧力で処理して茶葉粉砕物を得た。緑茶茶葉4gを80℃の純水140mlで10分間抽出した。上記で得られた茶抽出物に茶葉粉砕物、炭酸水素ナトリウム0.3gおよびL−アスコルビン酸0.4gを添加した後、遠心分離により粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去し、ついで、水を配合して全体を1000mlとなし、殺菌・充填した。
【実施例6】
【0035】
超微粉砕茶葉分散液入りウーロン茶飲料の製造方法
ウーロン茶茶葉4g
微粉砕茶葉(ウーロン茶葉を原料として実施例1の抹茶製造のための処理と同様の処理を施して得たもの)1g
炭酸水素ナトリウム0.3g
L−アスコルビン酸0.4g
ウーロン茶茶葉4gを80℃の純水140mlで10分間抽出し、濾過し、炭酸水素ナトリウム0.3g及びL−アスコルビン酸0.4gを添加した後、微粉砕茶葉1gを実施例1と同様の処理を施して得た超微粉砕茶葉分散液を配合して1000mlとなし、殺菌・充填した。
【実施例7】
【0036】
超微粉砕茶葉分散液入りレモンティーの製造方法
紅茶茶葉4g
微粉砕茶葉(紅茶葉を原料として実施例1の抹茶製造のための処理と同様の処理を施して得たもの)1g
特グラニュー糖50g
レモン果汁1g
L−アスコルビン酸0.4g
香料1g
紅茶茶葉4gを90℃の純水140mlで10分間抽出し、濾過し、特グラニュー糖50g、レモン果汁1g、L−アスコルビン酸0.4g及び香料1gを添加した後、微粉砕茶葉1gを実施例1と同様の処理を施して得た超微粉砕茶葉分散液を配合して1000mlとなし、殺菌・充填した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上述の通り、茶葉を粉砕して得られた粉末茶を水に懸濁し、その懸濁液を高圧ホモジナイザーによりさらに超微粉砕処理することにより粒子径1μm以下の微粒子の比率を高めた後、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することにより優れた特性を有する超微粉砕茶葉分散液が得られた。これを従来の茶(例えば緑茶等)抽出液に配合して濁度0.05〜0.15とすることにより、ざらつき、雑味が少なく、茶(例えば緑茶等)本来のコク、甘味を有する茶飲料を製造することに成功した。粒子径1μm以下の粒子を残すことにより、一定の好ましい食感を付与することができたのである。
これにより、緑茶飲料に欠かすことのできない後味のすっきり感を保持しながら、急須で淹れたときのような緑茶の食感、コクを有する飲料を製造することができる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られることを特徴とする超微粉砕茶葉分散液。
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の超微粉砕茶葉分散液を配合してなることを特徴とする飲食物。
【請求項3】
茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、飲料に配合し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られることを特徴とする飲料。
【請求項4】
茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、茶抽出液に配合し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去して得られることを特徴とする茶飲料。
【請求項5】
茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶を超微粉砕処理し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする超微粉砕茶葉分散液の製造方法。
【請求項6】
茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶を高圧ホモジナイザーで微粉砕処理し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする超微粉砕茶葉分散液の製造方法。
【請求項7】
遠心分離により粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする請求の範囲第5項又は第6項に記載の超微粉砕茶葉分散液の製造方法。
【請求項8】
請求の範囲第1項に記載の超微粉砕茶葉分散液を飲食物に配合することを特徴とする飲食物の製造方法。
【請求項9】
茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、飲料に配合し、粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする飲料の製造方法。
【請求項10】
茶葉原料を粉砕し、得られた粉末茶をさらに微粉砕処理した後、茶抽出液に配合し、ついで粒子径1μm以上の粒子の大部分を除去することを特徴とする茶飲料の製造方法。
【請求項11】
請求の範囲第1項に記載の超微粉砕茶葉分散液を茶抽出液に配合することを特徴とする茶飲料の製造方法。
【請求項12】
請求の範囲第11項に記載の方法で製造された茶飲料。
【請求項13】
濁度(680nmにおける吸光度)が0.05〜0.15であることを特徴とする請求の範囲第12項に記載の茶飲料。

【国際公開番号】WO2004/110161
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506959(P2005−506959)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008349
【国際出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】