説明

超微粒子担持体、超微粒子担持装置、超微粒子担持体の製造方法及び超微粒子担持装置の製造方法

【課題】ナノサイズの超微粒子を、被吸着物質や反応が促進される物質を含む流体中にほぼ100%表面を露出して、且つ、流出することなく、効率良く被吸着物質を吸着し、あるいは、触媒反応を促進することができる超微粒子担持体を提供する。
【解決手段】超微粒子担持体10は、筒状珪藻土12の内側空間に吸着剤及び触媒の一方からなるナノサイズの超微粒子14を充填した状態で、該筒状珪藻土12の端部開口12AにCNTネットワーク18により蓋をして構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナノサイズの超微粒子を、被吸着物質や反応が促進される物質を含む流体中にほぼ100%表面を露出して、且つ、流出することなく、効率良く被吸着物質を吸着し、あるいは、触媒反応を促進することができる超微粒子担持体、超微粒子担持装置、超微粒子担持体の製造方法及び超微粒子担持装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズ(粒子径100nm以下)の超微粒子は、表面活性及び表面積が大きいことから、吸着剤、触媒として種々の分野で利用されている。
【0003】
このようなナノサイズ超微粒子、例えば金微粒子の場合の担体としては、特許文献1に開示されるように、多孔質の無機又は有機担体があり、その表面に金微粒子を分散・固定したものが提案されている。
【0004】
担持体として、具体的には、例えば無機酸化物として、ゼオライト、粘土、珪藻土等の天然鉱物を用いることが開示されている。
【0005】
上記特許文献1の発明においては、金微粒子を担持する担体は、昇華性の金前駆体と無機または有機担体とを機械的摩擦を加えながらの固相混合(例えば、摩砕、物理混合など)により、表面もしくは担体の細孔内部に金前駆体を担持する担体を還元することにより得られる、とされている。
【0006】
しかしながら、いずれの場合でも、担持された金微粒子の表面の約半分は担体に埋もれているので、その分だけ、金微粒子の触媒作用や吸着作用の効率が低いということになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−259993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、吸着剤あるいは触媒としてのナノサイズの超微粒子を、吸着すべき物質あるいは触媒によって反応が促進される物質を含む流体中にほぼ100%表面を露出して、吸着や反応促進の効率を大幅に増大することが出来る超微粒子担持体、超微粒子担持装置、超微粒子担持体の製造方法及び超微粒子担持装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究の結果、筒状珪藻土の内側空間にナノサイズの超微粒子からなる吸着剤又は触媒を充填した状態で、カーボンナノチューブ(以下CNT)ネットワークにより筒状珪藻土の端部開口を覆うことにより、フィルターのように蓋をして、内部の超微粒子の流出を抑制しつつ、内部の超微粒子に流体を接触できることを見出し、以下の各発明を完成した。
【0010】
(1)筒状珪藻土の内側空間に吸着剤及び触媒の一方からなるナノサイズの超微粒子を充填した状態で、該筒状珪藻土の端部開口にCNTネットワークにより蓋をしてなる超微粒子担持体。
【0011】
(2)(1)において、前記超微粒子は、Au、Agを含むレアメタルのうち、希土類元素、遷移金属元素、Ga、In、メタロイド元素、Li、Be、Th、U、Puのいずれかを吸着する吸着剤からなる超微粒子担持体。
【0012】
(3)(1)において、前記超微粒子は、Au、Agを含むレアメタルのうち、遷移金属元素、Ga、In、メタロイド元素、Th、U、Puのいずれかを含む触媒とされた超微粒子担持体。
【0013】
(4)(2)又は(3)に記載の超微粒子担持体及び活性炭を含むウレタン多孔質体からなり、該ウレタン多孔質体は被吸着物質のナノ粒子及び前記触媒により反応が促進される物質のナノ粒子の一方を含む流体が流通可能な超微粒子担持装置。
【0014】
(5)(2)又は(3)に記載の超微粒子担持体を備え、被吸着物質のナノ粒子及び前記触媒により反応が促進される物質のナノ粒子の一方を含む流体が流通可能な流通体を有する超微粒子担持装置。
【0015】
(6)(2)又は(3)に記載の超微粒子担持体及び活性炭を含むウレタン多孔質体が充填され、被吸着物質のナノ粒子及び前記触媒により反応が促進される物質のナノ粒子の一方を含む流体が流通可能な流通体を備えた超微粒子担持装置。
【0016】
(7)筒状珪藻土の内側空間に吸着剤及び触媒の一方からなるナノサイズの超微粒子を充填する工程と、前記超微粒子が充填された筒状珪藻土を高分散CNTを含む水溶液中に浸漬して、CNTネットワークにより、該筒状珪藻土の端部開口に蓋をする工程とを含む、超微粒子担持体の製造方法。
【0017】
(8)(7)に記載の超微粒子担持体と活性炭ならびにウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを発泡させてウレタン多孔質体とする工程を有する超微粒子担持装置の製造方法。
【0018】
(9)(1)乃至(3)に記載の超微粒子担持体、(4)乃至(6)の超微粒子担持装置のいずれかによりナノ粒子を吸着するナノ粒子吸着方法。
【0019】
(10)(1)乃至(3)に記載の超微粒子担持体、(4)乃至(6)の超微粒子担持装置のいずれかを用いて、前記超微粒子の触媒作用により物質の反応を促進させる触媒反応促進方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、筒状珪藻土の内側空間に充填した吸着剤又は触媒のナノサイズ超微粒子が筒状珪藻土から流出しないように、且つ、流体が出入りできるようにCNTネットワークで筒状珪藻土の端部開口を覆うことによりフィルターのように蓋をして、この状態で、蓋の部分におけるCNTネットワークを構成するCNT間の隙間及び筒状珪藻土の外周面に形成されているナノサイズの超微細孔から、吸着される物質又は触媒作用により反応する物質を含む流体が容易に出入りすることができ、これによって、超微粒子が流出することなく、その全面を露出した状態で被吸着材料を吸着し、あるいは触媒反応を促進することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の超微粒子担持体を模式的に示す斜視図
【図2】本発明の超微粒子担持体に用いる筒状珪藻土を示す電子顕微鏡写真
【図3】同複数の筒状珪藻土を示す電子顕微鏡写真
【図4】筒状珪藻土中に超微粒子を充填した後の状態を示す電子顕微鏡写真
【図5】超微粒子を充填した筒状珪藻土をCNTネットワークで蓋をした状態を示す電子顕微鏡写真
【図6】本発明の実施例に係る超微粒子担持装置を模式的に示す断面図
【図7】同実施例に係るウレタン多孔質体を示す斜視図
【図8】同実施例に係るウレタン多孔質体を示す電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0022】
<吸着剤・触媒>
本発明における吸着剤としてのナノサイズの超微粒子は、Au、Agを含むレアメタルのうち、希土類元素(レアアース)、遷移金属元素、準典型金属元素、メタロイド元素、Li、Be、Th、U、Puのいずれかを吸着するものである。
【0023】
また、本発明における触媒としてのナノサイズの超微粒子は、Au、Agを含むレアメタルのうち、遷移金属元素、準典型金属元素、メタロイド元素、Th、U、Puのいずれかを含む触媒粒子とされている。
【0024】
ここで、本発明においては、前記レアメタルは、Au、Agの他に、Al及びAcを除いた3族元素と、Tc、Feを除いた4〜10族元素(殆どが遷移金属)と、準典型金属のうちGa、Inと、B、Si、Bi、Se、Te、Poからなるメタロイド元素と、原子番号59〜71の元素(Pr〜Lu)及び原子番号78のCeを含む希土類元素と、アクチノイド元素のうちTh、U、Puとからなる。
【0025】
上記の元素を、吸着剤又は触媒として筒状珪藻土内に充填する場合は、例えば、In−situ法を用い、これらの元素の化合物を合成することにより充填する。
【0026】
<ナノカーボン分散物>
本発明におけるナノカーボン分散物とは、1分子中にプラス電荷とマイナス電荷を同時に有する両性イオン分子及びリグニンスルホン酸塩を分散剤として用いて、ナノカーボン凝集体を孤立分散処理したものである。ここで、本発明においてナノカーボンは、CNT又はCNTとフラーレン、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンブラック、活性炭又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0027】
ナノカーボンを分散するための両性イオン分子としては、前記CNTを単分子状態で分散し得ることができるものであれば特に限定されないが、例えば、3−(N,N’−ジメチルステアリルアンモニオ)プロパンスルホネート、3−(N,N’−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホネート、n−ドデシル−N,N’−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−ヘキサデシル−N,N’−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−オクチルホスホコリン、n−ドデシルホスホコリン、n−テトラデシルホスホコリン、n−ヘキサデシルホスホコリン、ジメチルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルベタインなどの低分子量の両性イオン界面活性剤、又は2−メタクロリルオキシホスホリルコイン(NPC)とn−ブチメタクリレート(BMA)とのコポリマーで構成されているような高分子量の両性イオン物質などを用いることができる。CNTの両性イオン分子による分散は、例えば国際公開特許公報WO2005/110594号パンフレットに開示されている技術を参照して行なうこともできる。
【0028】
また、リグニンスルホン酸塩は、亜硫酸法によるパルプ製造工程で木材中のリグニンから生成される、リグニン分解物の一部がスルホン化された化合物(リグノスルホン酸とも呼ばれる、CAS登録番号8062−15−5)の塩である。リグニンスルホン酸塩は陰イオン系界面活性剤となるので、例えば特開2005−263608号公報に開示された方法によってCNTの分散剤として利用することができる。
【0029】
本発明におけるナノカーボン分散物は、例えばCNT1gに対して両性イオン物質を0.001〜0.01wt%、及びリグニンスルホン酸塩を0.001〜0.01gの量比でナノカーボンとともに分散媒体である水に加え、マグネティックスターラー、超音波処理、アトライター、ボールミル、サンドミル、ビーズミル等を用いて混合することによって調製することができる。なお、分散媒体は水以外の成分、例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の親水性溶媒を含んでもよい。
【0030】
<超微粒子担持体>
図1に示される超微粒子担持体10は、図2、図3(電子顕微鏡写真)に示されるような筒状珪藻土12の内側空間にナノサイズの超微粒子14を充填した状態(図4参照)で、CNT16が自己組織化により形成したCNTネットワーク18により蓋をして(図5参照)形成される。
【0031】
筒状珪藻土12は、筒の外周部にナノサイズの微細孔12Bが多数形成されていて、筒の一端又は両端の端部開口12Aは、CNTネットワーク18によって包まれることによってフィルターのように蓋をすることができる。これにより、内部の超微粒子は、液体や流体が出入り自在の状態で流出しないように維持される。但し、超微粒子14は、その粒径が、前記微細孔12Bの孔径よりも大きく、且つ、筒状珪藻土12の端部開口12Aの内径よりも小さくしなければならない。
【0032】
即ち、CNTネットワーク18における、絡み合っているCNT16間の隙間と筒状珪藻土12の外周の微細孔12Bとが、吸着すべきナノ粒子や触媒作用によって反応が促進される物質のナノ粒子を含む流体を通過させるチャンネルとなると共に、内部の吸着剤超微粒子及び材料を吸着した吸着剤超微粒子あるいは触媒超微粒子の流出を抑制している。
【0033】
<ウレタン多孔質体>
更に本発明では、筒状珪藻土の内側空間にナノサイズの吸着剤あるいは触媒の超微粒子を充填した状態で、CNTネットワークにより蓋をした超微粒子担持体並びに、例えば炭化した竹炭からなる活性炭を含むウレタン多孔質体からなる超微粒子担持装置を構成する。
【0034】
このウレタン多孔質体の微細孔に被吸着物質のナノ粒子を含む流体から、被吸着材料を吸着し、あるいは、触媒により化学反応が促進される物質のナノ粒子を含む流体と接触して、上記化学反応を促進させる。
【0035】
前記ウレタン多孔質体は、ナノ粒子吸着素子あるいはナノ粒子触媒担持体と活性炭並びにウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを公知の方法で発泡させることで作製することができる。
【0036】
<超微粒子担持装置>
超微粒子担持装置は、超微粒子担持体を、被吸着物質や反応促進される物質の超微粒子を含む流体が流通可能な管の中に備えて構成される流通体からなる。
【0037】
管の流体入口及び出口側には、超微粒子担持体の流出を防止するためのフィルターが設けられる。
【0038】
又、超微粒子担持装置は、上記ウレタン多孔質体が充填された管からなり、被吸着物質や反応促進される物質のナノ粒子を含む流体が流通可能な流通体から構成される。
【0039】
図6に示される超微粒子担持装置20は、管22と、この管22内に上端及び下端のフィルタ24A、24Bの間に保持された超微粒子担持体26とからなる流通管によって構成されている。
【0040】
図7、図8に示される超微粒子担持装置30は、ウレタン多孔質体32B(図8参照)を管32A内に備えて構成されている。
【符号の説明】
【0041】
10、26…超微粒子担持体
12…筒状珪藻土
12A…端部開口
12B…微細孔
14…超微粒子
16…CNT
18…CNTネットワーク
20、30…超微粒子担持装置
22…管
24A、24B…フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状珪藻土の内側空間に吸着剤及び触媒の一方からなるナノサイズの超微粒子を充填した状態で、該筒状珪藻土の端部開口にカーボンナノチューブネットワークにより蓋をしてなる超微粒子担持体。
【請求項2】
請求項1において、
前記超微粒子は、Au、Agを含むレアメタルのうち、希土類元素、遷移金属元素、Ga、In、メタロイド元素、Li、Be、Th、U、Puのいずれかを吸着する吸着剤からなる超微粒子担持体。
【請求項3】
請求項1において、
前記超微粒子は、Au、Agを含むレアメタルのうち、遷移金属元素、Ga、In、メタロイド元素、Th、U、Puのいずれかを含む触媒とされた超微粒子担持体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の超微粒子担持体及び活性炭を含むウレタン多孔質体からなり、該ウレタン多孔質体は被吸着物質のナノ粒子及び前記触媒により反応が促進される物質のナノ粒子の一方を含む流体が流通可能な超微粒子担持装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の超微粒子担持体を備え、被吸着物質のナノ粒子及び前記触媒により反応が促進される物質のナノ粒子の一方を含む流体が流通可能な流通体を有する超微粒子担持装置。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の超微粒子担持体及び活性炭を含むウレタン多孔質体が充填され、被吸着物質のナノ粒子及び前記触媒により反応が促進される物質のナノ粒子の一方を含む流体が流通可能な流通体を備えた超微粒子担持装置。
【請求項7】
筒状珪藻土の内側空間に吸着剤及び触媒の一方からなるナノサイズの超微粒子を充填する工程と、前記超微粒子が充填された筒状珪藻土を高分散カーボンナノチューブを含む水溶液中に浸漬して、カーボンナノチューブネットワークにより、該筒状珪藻土の端部開口に蓋をする工程とを含む、超微粒子担持体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の超微粒子担持体と活性炭ならびにウレタンモノポリマーを混合した後、ポリウレタンを発泡させてウレタン多孔質体とする工程を有する超微粒子担持装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至3に記載の超微粒子担持体、請求項4乃至6の超微粒子担持装置のいずれかによりナノ粒子を吸着するナノ粒子吸着方法。
【請求項10】
請求項1乃至3に記載の超微粒子担持体、請求項4乃至6の超微粒子担持装置のいずれかを用いて、前記超微粒子の触媒作用により物質の反応を促進させる触媒反応促進方法。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111511(P2013−111511A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258795(P2011−258795)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(511163735)ナノサミット株式会社 (3)
【Fターム(参考)】