説明

超微粒子発生抑制フィルタ

【課題】 実用化可能な方法で、超微粒子の発生を抑制することのできるフィルタを提供すること。
【解決手段】 本発明の超微粒子発生抑制フィルタは、電子写真方式を利用した画像形成装置から超微粒子が発生するのを抑制するフィルタであり、吸着剤を含むことを特徴とする。本発明の超微粒子発生抑制フィルタは超微粒子を除去するのではなく、超微粒子を形成するまでのガス状物質の段階で吸着することによって、超微粒子自体の発生を抑制できるため、結果として、画像形成装置からの超微粒子の排出を抑制できる、という効果を奏する。なお、前記フィルタは平板状、袋状、プリーツ状、ハニカム状、の群の中から選ばれる形態を有するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超微粒子発生抑制フィルタに関する。より具体的には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、或いはこれらの複合機に利用されている、電子写真方式を利用した画像形成装置から超微粒子が発生するのを抑制するフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ、或いはこれらの複合機等の電子写真装置の使用により、画像形成装置から粒子径が100nm未満の超微粒子が排出されることが指摘されている。このような超微粒子の健康への影響が心配されることから、ブルーエンジェルマークの基準に超微粒子の放散量が規格化される動きがある。
【0003】
このような超微粒子を除去できる画像形成装置として、画像形成装置内において発生した微粒子粉塵を静電的に回収する静電的集塵手段、又はサイクロン方式により捕集するサイクロン集塵手段を備えた画像形成装置が提案されている(特許文献1)。この画像形成装置は静電的集塵手段を使用することにより、超微粒子をイオン化させた後に、静電的に捕集でき、また、サイクロン集塵手段を使用することにより、超微粒子を凝集させて捕集できることを開示している。また、特許文献1は吸着剤を担持するフィルタ手段を併用することによって、超微粒子を吸着除去できることも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−2803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1におけるような、静電的集塵手段又はサイクロン集塵手段を画像形成装置に設置することは、画像形成装置のスペース的な問題から困難であるばかりでなく、構造が複雑化するため、実用化は困難であった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、実用化可能な方法で、超微粒子の発生を抑制することのできるフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの検討の結果、超微粒子は直接発生するのではなく、ガス状物質が成長して超微粒子を形成していることを見出し、本発明に至ったもので、本発明の請求項1にかかる発明は、「電子写真方式を利用した画像形成装置から超微粒子が発生するのを抑制するフィルタであり、吸着剤を含むことを特徴とする、超微粒子発生抑制フィルタ」である。
【0008】
また、本発明の請求項2にかかる発明は、「前記フィルタが、平板状、袋状、プリーツ状、ハニカム状、の群の中から選ばれる形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の超微粒子発生抑制フィルタ」である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1にかかる発明は、吸着剤を含む超微粒子発生抑制フィルタによれば、超微粒子を除去するのではなく、超微粒子を形成するまでのガス状物質の段階で吸着することによって、超微粒子自体の発生を抑制できるため、結果として、画像形成装置からの超微粒子の排出を抑制できる、という効果を奏する。このような超微粒子発生抑制フィルタのみを、単に排気ダクト内又はダクト外に設置するだけで前記作用を奏し、画像形成装置のスペースを取ることも、構造を複雑にすることもないため、超微粒子の発生を抑制することのできる実用的な方法である。
【0010】
本発明の請求項2にかかる発明は、平板状、袋状、プリーツ状、ハニカム状、の群の中から選ばれる形態を有するフィルタである。平板状であると、省スペースで超微粒子発生抑制フィルタを設置することができる。また、袋状であると、大風量が処理可能で、また、使用寿命を長くすることができる。更に、プリーツ状であると、ガス状物質との接触機会が増大し、ガス状物質の吸着性に優れている。更に、ハニカム状であると、圧力損失の増大が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の超微粒子発生抑制フィルタの一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の超微粒子発生抑制フィルタの他例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の超微粒子発生抑制フィルタの更に他例を示す断面模式図である。
【図4】本発明の超微粒子発生抑制フィルタの更に他例を示す断面模式図である。
【図5】本発明の超微粒子発生抑制フィルタを使用したエレメントの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の超微粒子発生抑制フィルタの好ましい実施の形態について、図1〜図5をもとに説明する。
【0013】
図1は本発明の超微粒子発生抑制フィルタ13の一例を示す断面模式図であり、布帛からなる2枚のカバー材5、5’の間に、吸着剤粒子である活性炭粒子3を担持してなる超微粒子発生抑制フィルタ13である。この例では、活性炭粒子3が熱融着性繊維に由来する樹脂の融着によって固定された吸着層4(活性炭粒子層8)の両面に、熱融着性繊維に由来する樹脂の融着によってカバー材5、5’が固定されている。図1の超微粒子発生抑制フィルタ13はこのような形態からなるため、超微粒子発生抑制フィルタ13の厚さ方向(2枚のカバー材5、5’を最短で結ぶ直線方向)に、超微粒子化する前のガス状物質を含むガスを通過させることにより、吸着層4の活性炭粒子3の作用によってガス状物質を吸着し、除去することができるため、超微粒子自体の発生を抑制でき、結果として、画像形成装置からの超微粒子の排出を抑制できる。なお、図1の超微粒子発生抑制フィルタ13においては、活性炭粒子3が熱融着性繊維に由来する樹脂の融着のみによって固定されており、活性炭の融着固定箇所以外の活性炭表面は、バインダ等によって被覆された状態にはないため、ガス状物質の吸着能を存分に発揮することができる。
【0014】
このような、超微粒子発生抑制フィルタ13は、例えば、熱融着性繊維を含む通気性シートに活性炭粒子3を散布した後、カバー材5及びカバー材5’で通気性シートを挟み込み、次いで、熱融着性繊維に由来する樹脂の融着力を発揮させるように加熱し、活性炭粒子3を融着固定するとともに、カバー材5、5’を融着固定することによって得ることができる。又は、熱融着性繊維を含む通気性シートに活性炭粒子3を散布した後に、熱融着性繊維に由来する樹脂の融着力を発揮させるように加熱し、活性炭粒子3を融着固定して吸着層4を形成した後に、この吸着層4をカバー材5及びカバー材5’で通気性シートを挟み込み、次いで、熱融着性繊維に由来する樹脂の融着力を発揮させるように加熱し、カバー材5、5’を融着固定することによって得ることができる。なお、後者の方法による場合、熱融着性繊維に由来する樹脂の融着力に替えて、バインダの接着力を利用することもできる。このバインダの接着としては、例えば、ペースト状の熱可塑性樹脂をドット状にプリントしたもの、熱可塑性樹脂のパウダーを散布したもの、或いは熱可塑性樹脂を溶融紡糸して蜘蛛の巣状のホットメルト不織布としたもの、を利用することができる。このようなバインダの量としては、1mあたり5〜60gであるのが好ましく、10〜40gであるのが更に好ましい。
【0015】
なお、バインダを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはポリオレフィン変性樹脂などを、単独で、または混合して用いることができる。ここで云うポリオレフィン変性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂(エチレン−メタクリル酸共重合体に金属を付加した感熱性樹脂)などを挙げることができる。
【0016】
このような通気性シートとしては、例えば、不織布、織物、ろ紙などの多孔質体を挙げることができ、中でも不織布は通気性が高いので好ましい。なお、熱融着性繊維は低融点成分一成分からなる単一成分繊維であることも、低融点成分と低融点成分よりも融点の高い高融点成分を含む二成分以上からなる複合繊維であることもできる。前者のように、単一成分繊維によると、繊維形態を消失又は繊維径が細くなるため、通気性に優れており、後者のように、複合繊維によると、高融点成分によって繊維形態を維持できるため、通気性が向上することに加えて、強度的に優れており、取り扱いやすい、という効果を奏する。
【0017】
また、活性炭粒子3としては、活性炭以外に、活性炭に化学成分(例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、アニリンなどのアミン化合物、及び/又はエチレン尿素)を付加した添着炭を使用することもできる。なお、図1においては、吸着剤粒子として活性炭粒子を使用しているが、活性炭粒子に替えて、又は加えて、ゼオライト、イオン交換樹脂、光触媒などの触媒などを、一種又は二種以上使用することができる。
【0018】
図1のように、活性炭粒子3を選択した場合、比表面積が200m/g以上の多孔質のものが好ましく、500m/g以上のものがより好ましい。また、活性炭粒子3の粒径は、効率良くガス状物質を吸着でき、しかも低圧損であるように、平均粒径は0.147mm(100メッシュ)以上、1.65mm(10メッシュ)以下であるのが好ましく、0.29mm(50メッシュ)以上、0.84mm(20メッシュ)以下であるのがより好ましい。本発明の画像形成装置という用途からして、超微粒子発生抑制フィルタ13は難燃性であるのが好ましいが、活性炭粒子3に難燃剤が含まれていると、ガス状物質の吸着性能が悪くなる傾向があるため、活性炭粒子3には難燃剤が含まれていないのが好ましい。
【0019】
なお、吸着層4においては、活性炭粒子3は60〜95質量%含まれているのが好ましく、70〜92質量%含まれているのがより好ましく、80〜90質量%含まれているのが更に好ましい。活性炭粒子3が60質量%未満であると、ガス状物質の吸着性能が低下しやすいためである。他方、活性炭粒子3が95質量%を超えると、通気性シート量、つまり熱融着性繊維量が少なくなるため、活性炭粒子3を充分に融着固定することができず、活性炭粒子3が脱落しやすくなるためである。
【0020】
また、カバー材5、5’も通気性シートと同様に、不織布、織物、ろ紙などの多孔質体を挙げることができる。これらの中でも、不織布は通気性が高いので好ましい。
【0021】
カバー材5、5’が好適である不織布からなる場合、有機質繊維などからなる不織布であれば特に限定されることはなく、例えば、繊維長15〜100mm、捲縮数5〜30個/インチを有するステープル繊維を乾式法(カード機など)により繊維ウエブを形成した後、バインダ接着、熱融着性繊維の部分的又は全体的な融着、及び/又は機械的絡合させることによって得ることができる。また、乾式法以外に、例えば、湿式法又はスパンボンド法などによって形成された不織布を使用できる。
【0022】
この不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維などの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿、パルプ繊維などの天然繊維を挙げることができる。また、これら合成繊維に難燃剤を練り込んだ難燃繊維を使用することもできる。また、繊維は実質的にハロゲン元素を含有しないのが好ましい。
【0023】
なお、熱融着性繊維の融着した不織布の場合には、低融点成分と高融点成分とからなり、横断面形状が芯鞘型の複合繊維を含んでいることができる。このような複合繊維としては、例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、ポリブチレン/ポリエステル、共重合ポリブチレン/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルなどの組み合わせを挙げることができる。
【0024】
また、潜在捲縮繊維の捲縮を発現した不織布は、繊維組織が密であっても表面濾過とならず、粗塵の保持容量が多くなり、目詰まりし難く、ガス状物質の吸着性能が向上するため好ましい。また、このような不織布は伸縮性に優れているため、超微粒子発生抑制フィルタ13をプリーツ状に折り曲げたときに、プリーツの折り山部分で不織布(カバー材5、5’)が破れるということがない。このような潜在捲縮繊維は熱収縮特性の異なる樹脂成分からなり、横断面形状がサイドバイサイド型又は偏芯型の複合繊維であることができる。なお、樹脂成分の組合せとしては、熱融着性繊維と同様である。
【0025】
このようなカバー材5、5’は、使用時等に活性炭粒子3の脱落を防ぐことができるようにであるのがより好ましい。他方、通気抵抗が高くなり過ぎないように、60g/m以下であるのが好ましく、40g/m以下であるのがより好ましい。また、カバー材5、5’の厚さは0.1〜1mmが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。
【0026】
また、カバー材5、5’は、埃によって目詰まりしてしまい、ガス状物質の吸着性能を損なうことがないように、面風速0.5m/秒における圧力損失が30Pa以下であることが好ましく、20Pa以下であるのがより好ましく、15Pa以下であるのが更に好ましい。
【0027】
このようなカバー材5、5’には難燃剤が含まれているのが好ましい。画像形成装置という用途から難燃性に優れているのが好ましいが、活性炭粒子3はガス状物質を吸着できるように、難燃剤を含まないのが好ましいためである。このような難燃剤としては、環境に与える影響から、ハロゲンを含まない無機系又は有機系難燃剤が好ましい。
【0028】
ハロゲンを含まない無機系難燃剤としては、例えば、水和金属化合物、水和シリケート化合物、リン系化合物、窒素系化合物、硼素系化合物、アンチモン系化合物等を挙げることができ、特に、難溶性のメタリン酸アルミニウム、リン酸メラミン、リン酸マグネシウム、縮合リン酸アミドなどのリン系難燃剤、あるいは難溶性の水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好適である。
【0029】
また、ハロゲンを含まない有機系難燃剤としては、例えば、Nメチロールジメチルホスホノプロピオンアミド、ポリリン酸カルバメート、グアニジン誘導体リン酸塩、環状ホスホン酸エステル、リン酸メラミンなどのリン系難燃剤を挙げることができる。
【0030】
なお、難燃剤がカバー材5、5’に含まれている場合、その態様としては、例えば、カバー材構成繊維自体に含まれている(例えば、繊維に練り込み)、カバー材5、5’(例えば、不織布)を結合する際のバインダ中に含まれている、或いは後加工によって、難燃剤がバインダによって付着している、などを挙げることができる。
【0031】
この難燃剤の量はカバー材5、5’の質量100%に対して、5〜50質量%であるのが好ましく、10〜40質量%であるのがより好ましく、15〜35質量%であるのが更に好ましい。5質量%未満であると、超微粒子発生抑制フィルタ全体として難燃性が不十分となる場合があり、50質量%を超えると、難燃剤が脱落しやすくなるためである。
【0032】
なお、カバー材5、5’を結合する際のバインダ、あるいはカバー材5、5’の後加工の際に使用できるバインダとして、例えば、アクリル酸エステル系接着剤、SBR系接着剤、NBR系接着剤、尿素樹脂系接着剤、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどを挙げることができるが、実質的にハロゲン元素を含まない、アクリル酸エステル系接着剤、SBR系接着剤、NBR系接着剤、尿素樹脂系接着剤が好ましい。
【0033】
本発明の超微粒子発生抑制フィルタ13の別の形態である、図2は超微粒子発生抑制フィルタ13の他例を示す断面模式図であり、布帛からなる1枚のカバー材5の片面に、吸着剤粒子である活性炭粒子3を担持してなる超微粒子発生抑制フィルタ13である。この例では、活性炭粒子3が熱融着性繊維1に由来する樹脂凝集部2を介してカバー材5に融着固定されて吸着層4(活性炭粒子層8)を構成し、樹脂凝集部2間が熱融着性繊維1によって連結されているとともに、樹脂凝集部2間における熱融着性繊維1もカバー材5に融着固定している。図2の超微粒子発生抑制フィルタ13はこのような形態からなるため、超微粒子発生抑制フィルタ13のカバー材5の厚さ方向に、超微粒子化する前のガス状物質を含むガスを通過させることにより、吸着層4の活性炭粒子3の作用によってガス状物質を吸着し、除去することができるため、超微粒子自体の発生を抑制でき、結果として、画像形成装置からの超微粒子の排出を抑制できる。なお、図2の超微粒子発生抑制フィルタ13においては、活性炭粒子3のカバー材5側の表面のみが繊維に由来する樹脂の融着のみによって固定されており、活性炭の融着固定箇所以外の活性炭表面は広く、しかもバインダ等によって被覆された状態にはないため、ガス状物質の吸着能を存分に発揮することができる。
【0034】
このような構造の超微粒子発生抑制フィルタ13は、例えば、カバー材5の上にホットメルト不織布を積層し、ホットメルト不織布上に活性炭粒子3を散布した後、加熱処理によってホットメルト不織布の一部を溶融させることにより、ホットメルト不織布と活性炭粒子3とが接する部分に、ホットメルト不織布に由来する樹脂凝集部2を形成するとともに、樹脂凝集部2間のホットメルト不織布構成繊維もカバー材5に融着固定することによって製造することができる。なお、予めカバー材5にホットメルト不織布を融着した後に、活性炭粒子3を散布し、加熱処理によってホットメルト不織布に由来する樹脂により活性炭粒子3を融着固定して、製造することもできる。
【0035】
なお、ホットメルト不織布に利用できるホットメルト樹脂としては、190℃におけるメルトインデックス(MI)が50以上、500以下のものを使用するのが好ましい。この好適範囲よりも低いMIの樹脂は、加熱処理時に流動性が低く、熱処理時に、活性炭粒子3の融着固定が不完全となることがある。また、上記範囲よりも高いMIの樹脂は、加熱処理時の流動性が高く、活性炭粒子3の融着固定が不完全となることがある。具体的には、ホットメルト樹脂として、熱可塑性ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はポリオレフィン変性樹脂(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂(エチレン−メタクリル酸共重合体に金属を付加した感熱性樹脂)など)などを、単独で、又は混合して用いることができる。なお、ホットメルト不織布は、例えば、ホットメルト樹脂を溶融させ、ノズルから噴出(場合により気体を作用させる)することによって得ることができる。
【0036】
また、カバー材5は図1で説明したカバー材5と同様のものを使用でき、活性炭粒子3も図1で説明した活性炭粒子3と同様のものを使用できるし、活性炭粒子3に替えて、又は加えて、図1で説明した吸着剤粒子を使用することができる。
【0037】
本発明の超微粒子発生抑制フィルタ13の別の形態である、図3は超微粒子発生抑制フィルタ13の他例を示す断面模式図であり、布帛からなる2枚のカバー材5、5’の間に、吸着剤粒子である活性炭粒子3を担持してなる超微粒子発生抑制フィルタ13である。この例では、活性炭粒子3が熱融着性繊維1に由来する樹脂凝集部2を介してカバー材5及びカバー5’に融着固定されて吸着層4(活性炭粒子層8)を構成し、樹脂凝集部2及び樹脂凝集部2’間が熱融着性繊維1、熱融着性繊維1’によって、それぞれ連結されているとともに、樹脂凝集部2及び樹脂凝集部2’間における熱融着性繊維1及び熱融着性繊維1’も、カバー材5、カバー材5’に、それぞれ融着固定されている。図3の超微粒子発生抑制フィルタ13はこのような形態からなるため、超微粒子発生抑制フィルタ13のカバー材5、5’の厚さ方向に、超微粒子化する前のガス状物質を含むガスを通過させることにより、吸着層4の活性炭粒子3の作用によってガス状物質を吸着し、除去することができるため、超微粒子自体の発生を抑制でき、結果として、画像形成装置からの超微粒子の排出を抑制できる。
【0038】
なお、図3の超微粒子発生抑制フィルタ13においては、活性炭粒子3のカバー材5側の表面とカバー材5’側の表面のみが熱融着性繊維に由来する樹脂の融着のみによって固定されており、活性炭粒子3の融着固定箇所以外の活性炭表面は広く、しかもバインダ等によって被覆された状態にはないため、ガス状物質の吸着能を存分に発揮することができる。また、活性炭粒子3は2枚のカバー材5、5’に挟まれているため、活性炭粒子3の脱落が生じにくいという特長がある。
【0039】
このような構造の超微粒子発生抑制フィルタ13は、例えば、カバー材5の上にホットメルト不織布を積層し、ホットメルト不織布上に活性炭粒子3を散布した後、加熱処理によってホットメルト不織布の一部を溶融させることにより、ホットメルト不織布と活性炭粒子3とが接する部分に、ホットメルト不織布に由来する樹脂凝集部2を形成するとともに、樹脂凝集部2間のホットメルト不織布構成繊維もカバー材5に融着固定する第1ステップと、続いて、活性炭粒子3の上に、ホットメルト不織布、カバー材5’を順に積層した後、加熱処理によってホットメルト不織布の一部を溶融させることにより、ホットメルト不織布と活性炭粒子3とが接する部分に、ホットメルト不織布に由来する樹脂凝集部2’を形成するとともに、樹脂凝集部2’間のホットメルト不織布構成繊維もカバー材5’に融着固定する第2ステップにより製造することができる。なお、第1ステップと第2ステップとを経ることなく、カバー材5上に、順に、ホットメルト不織布、活性炭粒子3、ホットメルト不織布、カバー材5’を積層した後、1度の加熱処理によってホットメルト不織布の一部を溶融させて製造することもできる。また、カバー材5とホットメルト不織布、及び/又はカバー材5’とホットメルト不織布とを融着固定した後に、いずれかのホットメルト不織布に対して活性炭粒子3を散布し、続く加熱処理により活性炭粒子3を融着固定して製造することもできる。
【0040】
なお、カバー材5、5’は図1で説明したカバー材5、5’と同様のものを使用でき、カバー材5とカバー材5’とは同じであっても異なっていても良い。また、活性炭粒子3も図1で説明した活性炭粒子3と同様のものを使用できるし、活性炭粒子3に替えて、又は加えて、図1で説明した吸着剤粒子を使用することができる。更に、ホットメルト不織布は図2で説明したホットメルト不織布と同様のものを使用することができ、カバー材5側のホットメルト不織布とカバー材5’側のホットメルト不織布とは同じであっても異なっていても良い。
【0041】
本発明の超微粒子発生抑制フィルタ13の更に別の形態である、図4は超微粒子発生抑制フィルタ13の他例を示す断面模式図であり、布帛からなる2枚のカバー材5、5’の間に、吸着剤粒子である活性炭粒子3、3’を2段担持してなる超微粒子発生抑制フィルタ13である。この例では、活性炭粒子3が熱融着性繊維1に由来する樹脂凝集部2を介してカバー材5に融着固定されているとともに、熱融着性繊維1’に由来する樹脂凝集部2’’を介して活性炭粒子3’と融着している。また、活性炭粒子3’は活性炭粒子3と融着固定していることに加えて、熱融着性繊維1’に由来する樹脂凝集部2’を介してカバー材5’に融着固定されている。更に、樹脂凝集部2、樹脂凝集部2’、樹脂凝集部2’’間が熱融着性繊維1、熱融着性繊維1’、熱融着性繊維1’’によって、それぞれ連結されているとともに、樹脂凝集部2及び樹脂凝集部2’間における熱融着性繊維1及び熱融着性繊維1’はカバー材5、カバー材5’に、それぞれ融着固定されている。このように、活性炭粒子3、3’と熱融着性繊維1’’とによって吸着層4(活性炭粒子層8)を構成している。
【0042】
図4の超微粒子発生抑制フィルタ13はこのような形態からなるため、超微粒子発生抑制フィルタ13のカバー材5、5’の厚さ方向に、超微粒子化する前のガス状物質を含むガスを通過させることにより、吸着層4の活性炭粒子3、3’の作用によってガス状物質を吸着し、除去することができるため、超微粒子自体の発生を抑制でき、結果として、画像形成装置からの超微粒子の排出を抑制できる。
【0043】
なお、図4の超微粒子発生抑制フィルタ13においては、活性炭粒子3はカバー材5側の表面と活性炭粒子3’側の表面のみが熱融着性繊維1’’に由来する樹脂の融着のみによって固定されており、また、活性炭粒子3’はカバー材5’側の表面と活性炭粒子3側の表面のみが熱融着性繊維1’’ に由来する樹脂の融着のみによって固定されており、活性炭粒子3、3’の融着固定箇所以外の活性炭表面は広く、しかもバインダ等によって被覆された状態にはないため、ガス状物質の吸着能を存分に発揮することができる。また、活性炭粒子3、3’は2枚のカバー材5、5’に挟まれているため、活性炭粒子3、3’の脱落が生じにくいという特長がある。更に、吸着層4は活性炭粒子3、3’を2段担持した状態にあり、多量の活性炭粒子が存在しているため、ガス状物質の吸着能に更に優れている。
【0044】
このような構造の超微粒子発生抑制フィルタ13は、例えば、カバー材5の上にホットメルト不織布を積層し、ホットメルト不織布上に活性炭粒子3を散布した後、加熱処理によってホットメルト不織布の一部を溶融させることにより、ホットメルト不織布と活性炭粒子3とが接する部分に、ホットメルト不織布に由来する樹脂凝集部2を形成するとともに、樹脂凝集部2間のホットメルト不織布構成繊維もカバー材5に融着固定する第1ステップと、続く、活性炭粒子3の上に、ホットメルト不織布、活性炭粒子3’を散布した後、加熱処理によってホットメルト不織布の一部を溶融させることにより、活性炭粒子3と活性炭粒子3’とが接する部分に、ホットメルト不織布に由来する樹脂凝集部2’’を形成して、活性炭粒子3、3’同士を融着固定する第2ステップ、更に、活性炭粒子3’上にホットメルト不織布、カバー材5’を順に積層した後、加熱処理によってホットメルト不織布の一部を溶融させることにより、ホットメルト不織布と活性炭粒子3’とが接する部分に、ホットメルト不織布に由来する樹脂凝集部2’を形成するとともに、樹脂凝集部2’間のホットメルト不織布構成繊維もカバー材5’に融着固定する第3ステップにより製造することができる。なお、第1ステップ〜第3ステップとを経ることなく、カバー材5上に、順に、ホットメルト不織布、活性炭粒子3、ホットメルト不織布、活性炭粒子3’、ホットメルト不織布、カバー材5’を積層した後、1度の加熱処理によってホットメルト不織布の一部を溶融させて製造することもできる。また、カバー材5とホットメルト不織布、及び/又はカバー材5’とホットメルト不織布とを予め融着一体化したものを使用するなど、適宜ステップを分割することができる。
【0045】
なお、カバー材5、5’は図1で説明したカバー材5、5’と同様のものを使用でき、カバー材5とカバー材5’とは同じであっても異なっていても良い。また、活性炭粒子3、3’も図1で説明した活性炭粒子3と同様のものを使用できるし、活性炭粒子3、3’に替えて、又は加えて、図1で説明した吸着剤粒子を使用することができるし、活性炭粒子3と活性炭粒子3’とは同じであっても異なっていても良い。更に、活性炭粒子の段数は2段である必要はなく、3段以上であっても良い。更に、ホットメルト不織布は図2で説明したホットメルト不織布と同様のものを使用することができ、カバー材5側のホットメルト不織布、カバー材5’側のホットメルト不織布、及び活性炭粒子間のホットメルト不織布は同じであっても異なっていても良い。
【0046】
なお、図示していないが、本発明の超微粒子発生抑制フィルタの更に別の形態として、図2〜図4における熱融着性繊維のない態様、つまり、活性炭粒子同士が熱融着性樹脂粉体の融着によって固定されている態様、或いは活性炭粒子同士が熱融着性樹脂粉体の融着によって固定されているとともに、熱融着性樹脂粉体の融着によってカバー材に固定されている態様がある。このような形態であっても、超微粒子発生抑制フィルタの厚さ方向(面積の広い面同士を最短距離で結ぶ方向)に、超微粒子化する前のガス状物質を含むガスを通過させることにより、活性炭粒子の作用によってガス状物質を吸着し、除去することができるため、超微粒子自体の発生を抑制でき、結果として、画像形成装置からの超微粒子の排出を抑制できる。
【0047】
このような活性炭粒子同士が熱融着性樹脂粉体の融着によって固定されている超微粒子発生抑制フィルタは、例えば、活性炭粒子と熱融着性樹脂粉末とを混合した後、加熱処理によって熱融着性樹脂粉末で活性炭粒子同士を融着させて製造することができる。
【0048】
また、カバー材を有する超微粒子発生抑制フィルタは、例えば、活性炭粒子と熱融着性樹脂粉末とを混合した後、カバー材で挟持するか、カバー材に散布した後、加熱処理によって熱融着性樹脂粉末でカバー材に融着するとともに活性炭粒子同士を融着させて製造することができる。なお、活性炭粒子と熱融着性樹脂粉末とを混合し、加熱処理によって熱融着性樹脂粉末同士を融着させた後に、カバー材を積層し、再度加熱処理することによりカバー材と融着させて製造することもできる。
【0049】
以上のように、樹脂の融着によって吸着剤粒子が固定されている場合、吸着剤粒子同士が樹脂の融着によって固定されている態様、吸着剤粒子が樹脂の融着によってカバー材に固定されている態様、或いはこれら両方の態様が存在する態様であることができる。
【0050】
以上、図1〜図4をもとに、樹脂の融着によって吸着剤粒子が固定された超微粒子発生抑制フィルタについて説明したが、本発明の超微粒子発生抑制フィルタは樹脂の融着によって吸着剤粒子が固定された超微粒子発生抑制フィルタに限定されず、(1)接着剤の接着によって吸着剤粒子又は吸着剤繊維が固定されたフィルタ、(2)繊維の絡みによって吸着剤粒子又は吸着剤繊維が固定されたフィルタ、(3)樹脂の融着によって吸着剤繊維が固定されたフィルタ、又は(4)吸着剤粒子又は吸着剤繊維を炭化物で焼結したフィルタ、など、吸着剤を含むフィルタであれば、ガス状物質を吸着し、除去することができるため、超微粒子自体の発生を抑制でき、結果として、画像形成装置からの超微粒子の排出を抑制できる。
【0051】
(1)接着剤の接着によって吸着剤粒子又は吸着剤繊維が固定されたフィルタは、例えば、吸着剤粒子又は吸着剤繊維とポリビニルアルコール粒子又はポリビニルアルコール繊維などの水溶性接着剤とを含むスラリーを形成し、湿式法により繊維ウエブを形成した後に、乾燥することによって、水溶性接着剤で接着したフィルタを製造することができる。また、吸着剤粒子又は吸着剤繊維を含む繊維ウエブを乾式法又は湿式法により形成した後、エマルジョン型又はサスペンジョン型接着剤を付与し、乾燥して、接着剤で接着したフィルタを製造することができる。
【0052】
前記水溶性接着剤としては、ポリビニルアルコール以外に、ゼラチンなどのタンパク質系接着剤、でんぷん糊やメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体やアラビアゴムなどの含水炭素系接着剤、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル共重合体、ポリアルキレンオキシドコポリマーなどの合成樹脂系接着剤などを挙げることができ、これら水溶性接着剤を併用することもできる。
【0053】
また、エマルジョン型又はサスペンジョン型接着剤としては、例えば、アクリル系、塩化ビニル系、エチレン−酢ビ共重合体系、ポリ酢酸ビニル系、合成ゴム系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のものを挙げることができ、これら接着剤を併用することもできる。
【0054】
なお、吸着剤粒子又は吸着剤繊維は、例えば、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂、光触媒などの触媒などから構成することができ、これら吸着剤を併用することもできる。
【0055】
(2)繊維の絡みによって吸着剤粒子又は吸着剤繊維が固定されたフィルタは、例えば、吸着剤粒子又は吸着剤繊維とフィブリルを有する繊維とを含むスラリーを形成し、湿式法により繊維ウエブを形成した後に、乾燥することにより、フィブリルを有する繊維の絡みによって、吸着剤粒子又は吸着剤繊維を固定したフィルタを製造することができる。また、吸着剤粒子又は吸着剤繊維を含む繊維ウエブを乾式法又は湿式法により形成した後、ニードルパンチ法又は水流絡合法により絡合することによって、繊維の絡みによって固定したフィルタを製造することができる。
【0056】
なお、フィブリルを有する繊維は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系、全芳香族ポリアミド系、全芳香族ポリエステル系、ポリエチレンなどのポリオレフィン系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系などの合成樹脂、木材パルプ、ケナフパルプ、バガスパルプ、リンターパルプなどの天然樹脂からなるものを使用することができる。
【0057】
また、吸着剤粒子又は吸着剤繊維は前述と同様のものを使用することができる。
【0058】
(3)樹脂の融着によって吸着剤繊維が固定されたフィルタは、例えば、吸着剤繊維と熱融着性繊維又は熱融着性樹脂粉末とを含む繊維ウエブを乾式法又は湿式法により形成した後、熱融着性繊維又は熱融着性樹脂粉末の融着作用を発現する温度で加熱することによって、熱融着性繊維又は熱融着性樹脂粉末で融着したフィルタを製造することができる。また、吸着剤繊維を含む繊維ウエブを乾式法又は湿式法により形成した後、繊維ウエブに熱可塑性樹脂粉末を付着させた後、熱融着性樹脂粉末の融着作用を発現する温度で加熱することによって、熱融着性樹脂粉末で融着したフィルタを製造することができる。
【0059】
なお、熱融着性繊維又は熱融着性樹脂粉末は、例えば、ポリプロピレン系やポリエチレン系などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂など1種類からなる全溶融型であっても良いし、これら樹脂を2種類以上含む複合型であっても良いが、後者の複合型であると、融着しない樹脂成分によって繊維形状又は粒子形状を維持することができ、機械的強度が優れているため好適である。
【0060】
熱融着性繊維が複合型である場合、例えば、(1)高融点の樹脂成分(高融点成分)を芯成分とし、この高融点の樹脂成分よりも低融点の樹脂成分を鞘成分(融着成分)とする芯鞘型又は偏芯型、(2)高融点成分と融着成分とを貼り合わせたサイドバイサイド型、(3)融着成分中に高融点成分が多数点在する海島型、であることができる。
【0061】
なお、吸着剤繊維は前述と同様のものを使用することができる。
【0062】
(4)吸着剤粒子又は吸着剤繊維を炭化物で焼結したフィルタは、例えば、吸着剤粒子又は吸着剤繊維とフェノール樹脂などの炭化可能樹脂とを配合した混練物を調製し、この混練物を押出機から押し出して成形した後、乾燥及び焼結して、炭化物で焼結したフィルタを得ることができる。
【0063】
なお、炭化物となる炭化可能樹脂としては、フェノール樹脂以外に、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、イソシアネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、或いはこれら樹脂を適宜2種類以上、配合及び/又は反応させてなる樹脂組成物を挙げることができる。
【0064】
また、吸着剤粒子又は吸着剤繊維は前述と同様のものを使用することができる。
【0065】
以上、本発明の超微粒子発生抑制フィルタ13について説明したが、図1〜図4のように、平板状(パネル状)である必要はない。例えば、図5に示すように、プリーツ状に折り曲げても、袋状に成形しても良いし、ハニカム状に成形しても良い。特に、プリーツ状に折り曲げた状態であると、活性炭粒子3、3’のガス状物質との接触機会が増大し、ガス状物質の吸着性に優れているため好適である。なお、フィルタの形態が平板状であると、省スペースで超微粒子発生抑制フィルタを設置することができ、袋状であると、大風量が処理可能で、また、使用寿命を長くすることができ、更に、ハニカム状であると、圧力損失の増大が小さい。
【0066】
このように好適であるプリーツ状に折り曲げた超微粒子発生抑制フィルタ(以下、「プリーツ型フィルタ」と表記することがある)について説明すると、このようなプリーツ型フィルタ20は、超微粒子発生抑制フィルタ21を所定のピッチでプリーツ加工を施した後、設計に応じた山間隔を保持するために、種々の合成樹脂、紙、または金属材料など周知の材料からなる枠体22a、22bを接着して、製造することができる。また、プリーツ型フィルタはプリーツ加工を施した超微粒子発生抑制フィルタ21をインサートした射出成型によっても得ることができる。なお、図5においては、濾過面が長方形であるが、長方形である必要はなく、円形、三角形、楕円形など、装着箇所に応じた形状とすることができる。なお、枠体22a、22bにカバー材5、5’と同様の難燃剤を含ませ、プリーツ型フィルタ20の難燃性を向上させるのが好ましい。
【0067】
なお、袋状のフィルタは、前述のようにして製造した、平板状又はシート状のフィルタの端部を接合して袋状のフィルタとすることができる。なお、フィルタ端部の接合方法は特に限定するものではないが、例えば、接着剤で接着する方法、ホットメルト樹脂を介在させて融着する方法、糸で縫合する方法、フィルタが熱融着性繊維又は熱融着性樹脂粉末を含む場合には、熱融着性繊維又は熱融着性樹脂粉末を融着(例えば、超音波融着)させる方法、などを挙げることができる。
【0068】
また、ハニカム状のフィルタは、1つのセルの断面形状が六角形である以外に、三角形、四角形などの多角形、正弦波形、円形と略三角形の組合せなどであっても良い。このようなハニカム状フィルタは、例えば、前述のようにして製造した、平板状又はシート状のフィルタを常法により成形して製造することができる。例えば、1つのセルの断面形状が正弦波形のハニカム状フィルタは、平板状又はシート状のフィルタをロール等によって、正弦波形に成形した後、正弦波形のフィルタの片面又は両面に平板状又はシート状のフィルタを接着して製造することができる。なお、吸着剤粒子又は吸着剤繊維と炭化可能樹脂とを配合した混練物を押出機から押し出して成形する場合には、ハニカム状に押し出すことによって製造することができる。
【0069】
以上、本発明のフィルタの形態について説明したが、フィルタが平板状、袋状、プリーツ状、ハニカム状のいずれの場合であっても、超微粒子発生抑制フィルタの厚さ方向に、超微粒子化する前のガス状物質を含むガスを通過させることによって、吸着剤の作用によってガス状物質を吸着し、除去することができるため、超微粒子の発生を抑制することができる。なお、フィルタがハニカム状である場合には、セルの伸びる方向に、超微粒子化する前のガス状物質を含むガスを通過させることによっても、吸着剤の作用によってガス状物質を吸着し、除去して、超微粒子の発生を抑制することができる。このようにセルの伸びる方向(シート状フィルタの面方向)にガスを通過させると、圧力損失の増大が小さい。
【0070】
このような本発明の超微粒子発生抑制フィルタは、電子写真方式を利用した画像形成装置に設置して使用するものである。この電子写真方式を利用した画像形成装置とは、感光体に負の電荷を与え、そこにレーザーで露光して画像を形成し、その上にトナーを現像した後、感光体から用紙にトナーを転写し、そして定着装置の熱によってトナーを用紙に定着させる方式を利用した画像形成装置であり、例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ、或いはこれらの複合機を挙げることができる。なお、このトナーとして黒いものを使用すればモノクロ画像を得ることができ、トナーとして着色したものを何色か使用すればカラー画像を得ることができる。
【0071】
なお、超微粒子発生抑制フィルタの設置場所としては、超微粒子となる前のガス状物質と接触できる場所であれば良く、特に限定するものではないが、通常、画像形成装置の定着装置の熱を排出するために、定着装置近傍に排気ダクトを取り付け、吸引ファンの作用によって排熱しているため、この排気ダクト内又は排気ダクト外に、超微粒子発生抑制フィルタを設置すれば、効率的に超微粒子の発生を抑制することができる。なお、排気ダクト内に設置する場合、超微粒子発生抑制フィルタは吸引ファンの上流側に設置されていても、下流側に設置されていても良い。
【0072】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
図4に示すような、超微粒子発生抑制フィルタを作製した。
【0074】
つまり、まず、リン系難燃剤液(難溶性のポリリン酸アンモニウムが水に分散した難燃剤液:分散液濃度54%)37部と、アクリル系エマルジョン型接着剤(分散液濃度45%)4.4部と、増粘剤0.4部と、水58.2部とからなるバインダ樹脂液を調製した。このバインダ樹脂液の濃度は22.36%であり、このバインダ樹脂液を乾燥した際の樹脂中に含まれるリン系難燃剤の質量比率は89%であった。
【0075】
次いで、目付20g/mのポリエステルスパンボンド不織布に、前記バインダ樹脂液を含浸し、乾燥して目付27g/mのカバー材(厚さ:0.15mm、面風速0.5m/sにおける圧力損失:8Pa)を得た。このカバー材は、スパンボンド不織布にリン系難燃剤がアクリル系樹脂によって固定されており、カバー材には23質量%のリン系難燃剤が固定されていた。
【0076】
続いて、熱可塑性ポリアミド系樹脂(190℃におけるメルトインデックス:80)を溶融紡糸して、目付15g/mの蜘蛛の巣状ホットメルト不織布を形成した後、直ちに前記カバー材に積層した。ホットメルト不織布を冷却することによりカバー材に接着し、ホットメルト不織布付着カバー材5(目付:42g/m)を得た。
【0077】
次いで、ホットメルト不織布付着カバー材5のホットメルト不織布側に、粒径0.3〜0.5mmに分級した活性炭粒子3(比表面積:1000m/g)を散布(130g/m量)した。
【0078】
続いて、約5Kg/cmの水蒸気を活性炭粒子3側から約7秒間行い、ホットメルト不織布を可塑化溶融させて、ホットメルト樹脂からなる樹脂凝集部2を介して活性炭粒子3をカバー材5に固着させるとともに、樹脂凝集部2間の、熱可塑性ポリアミド系樹脂からなる熱融着性繊維をカバー材5に固着させた。続いて、固着した活性炭粒子3以外を除去した。
【0079】
更に、活性炭粒子3上に、目付20g/mのホットメルト不織布を積層した後、活性炭粒子3’を散布(130g/m量)した。続いて、約5Kg/cmの水蒸気を活性炭粒子3’側から約7秒間行い、ホットメルト不織布を可塑化溶融させて、ホットメルト樹脂からなる樹脂凝集部2’’を介して、活性炭粒子3と活性炭粒子3’とを固着させた。続いて、固着した活性炭粒子3’以外を除去した。
【0080】
次に、前述と同様のホットメルト不織布付着カバー材5’のホットメルト不織布側が活性炭粒子3’に接するように積層した後、約5Kg/cmの水蒸気を、カバー材5’のホットメルト不織布側から約7秒間行い、ホットメルト不織布を可塑化溶融させて、ホットメルト樹脂からなる樹脂凝集部2’を介して活性炭粒子3’を固着させるとともに、樹脂凝集部2’間の、熱可塑性ポリアミド系樹脂からなる熱融着性繊維をカバー材5’に固着させて、超微粒子発生抑制フィルタ13を得た。この超微粒子発生抑制フィルタ13の厚さは1mmであり、目付は364g/mであり、面風速0.5m/秒における圧力損失は75Paであった。また、活性炭粒子層8は活性炭粒子260g/m(83.9質量%)と、熱融着性樹脂50g/m(16.1質量%)とから構成されていた。
【0081】
(実施例2)
比表面積が1300m/g、細孔容積が0.55ml/g、太さが17μmの活性炭繊維および、鞘成分がイソフタル酸を40モル%共重合した融点温度110℃の共重合ポリエチレンテレフタレート重合体にて形成され、芯成分が融点温度260℃のポリエチレンテレフタレート重合体にて形成された芯鞘型熱融着性繊維を用意した。
【0082】
次いで、前記活性炭繊維と芯鞘型熱融着性繊維とを、重量比で(活性炭繊維)/(芯鞘型熱可塑性繊維)=80/20となるように混綿し、パラレルカードで繊維ウエブを形成した。得られた繊維ウエブを125℃の状態に保った乾燥機内に通過させて熱融着性繊維の鞘成分を溶融させ、活性炭繊維と熱融着性繊維との繊維間を熱融着により固定し、活性炭繊維シート(目付:67g/m)を作製した。
【0083】
他方、熱可塑性ポリアミド系樹脂(190℃におけるメルトインデックス:80)を溶融紡糸して、目付15g/mの蜘蛛の巣状ホットメルト不織布を形成した。
【0084】
続いて、目付110g/m、厚さ0.42mmのポリエステルスパンボンド不織布と前記活性炭繊維シートの間に前記ホットメルト不織布を挟んで、140℃、2kg/cmの条件で熱圧着処理を行なうことで、ホットメルト不織布を可塑化溶融させ、スパンボンド不織布と活性炭繊維シートを固着させて、シート状超微粒子発生抑制フィルタ(目付:192g/m、厚さ:0.97mm)を得た。
【0085】
(実施例3)
0.1〜1mmに粉砕した石炭系活性炭100重量部に対して、平均粒子径20μmのポリエチレンバインダ粒子20重量部を混合した後、ハニカム状に押出し成形し、超微粒子発生抑制フィルタ(セル数:80個/インチ、1つのセルの断面形状:四角形、たて:100mm、よこ:140mm、高さ:45mm、重量:250g)を得た。
【0086】
(超微粒子発生抑制作用の評価)
実施例1及び実施例2のシート状超微粒子発生抑制フィルタを、山高さ29mm、山数30山のプリーツ形状に加工し、ホットメルト付きポリエステル製スパンボンド(目付:200g/m)で固定し、外形寸法がたて100mm、よこ140mm、高さ35mmのプリーツ型フィルタを作製した。
【0087】
このプリーツ型フィルタ(実施例1及び実施例2)、又はハニカム型超微粒子発生抑制フィルタ(実施例3)を、それぞれレーザープリンタ(ブラザー工業(株)製、HL−5070L)の2箇所の排気口の外側に、それぞれ装着した後、前記レーザープリンタをSUS430製チャンバ(容積:1m)内に設置した。なお、プリーツ型フィルタ(実施例1及び実施例2)は超微粒子発生抑制フィルタの厚さ方向に、排気ガスが通過するように装着し、ハニカム型超微粒子発生抑制フィルタ(実施例3)は排気ガスがセルを通過するように装着した。
【0088】
次いで、RAL UZ−122で規定された印字方法に従って、1分間のプリント動作を行った後、プリンタの電源を落とし、下記条件で、粒子径5.6nm〜560nmの範囲の超微粒子の発生個数を30分間測定した。この測定の結果のサンプリングした超微粒子の総数は表1に示す通りであった。なお、表1においては、実施例1又は実施例2のプリーツ型フィルタ(超微粒子発生抑制フィルタ)、及びハニカム型超微粒子発生抑制フィルタ(実施例3)のいずれも装着していないレーザープリンタを使用した場合の結果を比較例1として表示した。
【0089】

換気回数が1時間当たり5回となるように、HEPAフィルタ及びケミカルフィルタを通して、入口ダクトからチャンバ内に空気を供給しながら、チャンバの入口ダクトに対向して位置する出口ダクトにて、超微粒子のサンプリングを行なった。なお、超微粒子の測定には、FMPS(Fast Mobility Particle Sizer, TSI;Model 3091)を使用し、サンプリング流量は10L/分とした。
【0090】
【表1】

【0091】
表1から明らかなように、本発明の超微粒子発生抑制フィルタを装着することによって、超微粒子の発生を大幅に抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0092】
1,1’,1’’ 熱融着性繊維
2,2’,2’’ 樹脂凝集部
3,3’ 活性炭粒子
4 吸着層
5,5’ カバー材
8 活性炭粒子層
13,21 超微粒子発生抑制フィルタ
20 プリーツ型フィルタ
22a,22b 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式を利用した画像形成装置から超微粒子が発生するのを抑制するフィルタであり、吸着剤を含むことを特徴とする、超微粒子発生抑制フィルタ。
【請求項2】
前記フィルタが、平板状、袋状、プリーツ状、ハニカム状、の群の中から選ばれる形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の超微粒子発生抑制フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−33197(P2013−33197A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285376(P2011−285376)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1) 研究集会名:第28回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会 主催者名 :社団法人日本空気清浄協会 開催日 :平成23年7月5・6日 (2) 発行所 :社団法人日本空気清浄協会 刊行物名 :第28回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集 発行日 :平成23年7月5・6日 (3) 研究集会名:第28回エアロゾル科学・技術研究討論会 主催者名 :日本エアロゾル学会 開催日 :平成23年8月27−29日 (4) 発行所 :日本エアロゾル学会 刊行物名 :第28回エアロゾル科学・技術研究討論会論文集 発行日 :平成23年8月27日
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】