説明

超硬複合材料およびその製造方法

【課題】超硬複合材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の超硬複合材料の製造方法は、少なくとも1種のセラミック相粉末と多元高エントロピー合金粉末とを混合して混合物を形成する工程、その混合物を圧粉する工程、および、その混合物を焼結して超硬複合材料を形成する工程を含む。上記多元高エントロピー合金は5から11種の主要元素からなり、各主要元素が前記多元高エントロピー合金粉末の5から35モル%を占める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超硬複合材料(ultra-hard composite materials)に関し、より詳細には、そのバインダー金属(binder metals)の組成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超硬複合材料は高硬度、高耐熱性および高耐摩耗性など優れた特性を持つことから、1920年代初期より広く工業的に利用されている。超硬複合材料によく用いられるのはカーバイド(炭化物)であり、このような超硬複合材料は大きくタングステンカーバイド(以下WCという。)基複合材料とチタンカーバイド(以下TiCという。)基複合材料の2タイプに分けられる。超硬複合材料は通常2種の異なる組成からなっており、そのうち第1の組成は、例えばカーバイド(タングステンカーバイド、チタンカーバイド、バナジウムカーバイド、ニオブカーバイド、クロムカーバイドまたはタンタルカーバイド)、炭窒化物、ボラート、ホウ化物、又は酸化物など融点、硬度および脆性の高いセラミック相粉末であり、第2の組成は硬度が低く靭性が高いバインダー金属である。WC基複合材料に用いられるバインダー金属の主な例はコバルトである。また、TiC基複合材料に用いられるバインダー金属の主な例はニッケルまたはニッケル−モリブデン合金である。超硬複合材料の製造には粉末冶金の方法が用いられており、これによれば、焼結温度下、バインダー金属が液体状態に変わってカーバイドと共晶液相を形成し、さらに毛細管現象によりカーバイドの粒子が液相に包み込まれ、密着および収縮することにより、高焼結密度が得られる。焼結密度をより高めるために、加圧焼結(press sintering)または熱間等方圧加圧(hot isostatic pressing)により超硬複合材料をさらに処理してもよい。こうして、超硬複合材料はカーバイドの高硬度および高耐摩耗性ならびにバインダー金属の靭性などの長所を併せ持つようになる。
【0003】
上述のような超硬複合材料は一般に切削具、金型、工具および耐摩耗部材、例えばバイト、ミル、リーマー、鉋、鋸、ドリル、パンチ、せん断金型、成形金型、引抜金型、押出金型、腕時計の部品またはペンのボールなどに使用されている。中でも最も広く利用されているのはWC超硬複合材料である。複合材料の成分比は要求に応じて決定される。バインダー金属を低比率に、カーバイドを高比率にして混合するほど、硬度および耐摩耗性の高い複合材料が得られるが、同時にその複合材料の靭性はより低くかつ脆性はより高いものとなる。要求するものが主に硬度と耐摩耗性である場合、カーバイドの比率を上げる必要があり、一方、靭性がより重要であれば、カーバイドの比率を下げる必要がある。また、腐食条件あるいは高温下で用いられる部材は、耐食性と抗酸化性がなければならない。社会の進歩により様々な要求が生じてくるのに伴い、現在、切削具、金型、工具および耐摩耗部材などの製品については、より高い生産率、より長い使用寿命、およびより低い生産コスト、というのが製造の傾向となっている。しかしながら、各種用途の場面において、従来のWCおよびTiCの超硬複合材料はたいていの場合、靭性、耐熱性、耐磨耗性、耐食性および抗付着性(anti-adherence)が不十分である。
【0004】
従来のWC超硬複合材料のバインダー金属は、少量の鉄とニッケルが含むコバルト基合金である。特許文献1には、打抜き工具の材料を、ニッケル基合金のバインダー金属(5〜15wt%)を含むWC基複合材料とし、該ニッケル基合金がさらにCr32を1〜13wt%含むことが開示されている。特許文献2には、WC複合材料のバインダー金属を鉄基合金とし、かつこの合金がさらにバナジウム、クロム、バナジウムカーバイドおよびクロムカーバイドを含むことが開示されている。特許文献3には、WCおよびW2C複合材料のバインダー金属を、例えば鉄、コバルト、ニッケルなどの金属0.02〜0.1wt%、ならびに第IVA族、第VA族および第VIA族の遷移金属のカーバイド(炭化物)、窒化物および炭窒化物0.3〜3wt%とすることが開示されている。特許文献4には、WCの焼結金属をコバルトおよび/またはニッケルとし、バインダー金属の配合を、コバルトを最大で90wt%、ニッケルを最大で90wt%、クロムを最大で3〜15wt%、タングステンを最大で30wt%、およびモリブデンを最大で15wt%とすることによって、焼結プロセス中にWCの結晶が成長するのを抑制することを開示している。
【0005】
現在、WC超硬複合材料の最大の消費国は中国である。このため中国では、強度、硬度、靭性および耐磨耗性などの特性を高めようとするWC超硬複合材料関連の特許出願が、多数開示されている。特許文献5には、WC複合材料のバインダー金属として高マンガン鋼を用いることが開示されており、該高マンガン鋼は、14〜18wt%のマンガン、3〜6wt%のニッケル、0.19〜1.9wt%の炭素、および74.1〜82.1wt%の鉄からなるもので、かかるWC複合材料は高強度、高硬度、そして高耐摩耗性を備えるとされている。また、カーバイドをバインダー金属の一部として用いることもでき、特許文献6には、バインダー金属が4〜6wt%のコバルトおよび0.3〜0.6wt%のタンタルを含み、このバインダー金属をWC粉末と共に焼結すると、耐摩耗性と靭性の高いWC複合材料が得られると開示されている。さらに、特許文献7には、バインダー金属が7〜9wt%のコバルト、0.1〜0.5wt%のバナジウムカーバイド、および0.3〜0.7wt%のクロムカーバイドを含み、このバインダー金属をWC粉末と共に焼結すると、高強度、高硬度および高靭性を備えるWC複合材料が得られると開示されている。
【0006】
このように、従来のバインダー金属は、その主要組成部分(>50wt%)を単一の金属または2種の金属の組み合わせとし、さらに別の金属元素およびカーバイドセラミック相が添加されたものとなっている。
【特許文献1】特開平8−319532号公報
【特許文献2】特開平10−110235号公報
【特許文献3】米国特許第6030912号明細書
【特許文献4】米国特許第6241799号明細書
【特許文献5】中国特許公開第1548567号公報
【特許文献6】中国特許公開第1554789号公報
【特許文献7】中国特許公開第1718813号公報
【特許文献8】台湾特許第193729号明細書
【非特許文献1】「Advanced Engineering Materials」2004年、第6巻、p.299〜303
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、諸性能に優れた超硬複合材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は超硬複合材料の製造方法を提供するものである。該製造方法は、少なくとも1種のセラミック相粉末と多元高エントロピー合金(multi-element high-entropy alloy)粉末とを混合して混合物を形成する工程、その混合物を圧粉(green compacting)する工程、および、その混合物を焼結して超硬複合材料を形成する工程を含み、該多元高エントロピー合金粉末は5から11種の主要元素からなり、各主要元素がそれぞれ多元高エントロピー合金粉末の5から35モル%を占める。
【0009】
また、本発明は超硬複合材料も提供する。該超硬複合材料は、(a)少なくとも1種のセラミック相粉末と、(b)多元高エントロピー合金粉末とを含み、該多元高エントロピー合金粉末は5から11種の主要元素からなり、各主要元素がそれぞれ多元高エントロピー合金粉末の5から35モル%を占める。
【発明の効果】
【0010】
本発明ではバインダー金属に多元高エントロピー合金粉末を用いるため、得られる超硬複合材料に様々な優れた特性、例えば硬度、靭性、耐熱性および耐摩耗性などが備わる。さらに、本発明によれば、モル比および元素の種類を適切に選ぶことによって複合材料の性能を調節することができ、その適用範囲と使用寿命を向上させることができる。
【0011】
高エントロピー合金からなるバインダー金属は、高エントロピー効果、緩慢拡散効果(sluggish effect)、格子ひずみ効果、およびカクテル効果などの特徴を示すと共に、耐熱性および硬度も備えるため、このバインダー金属を用いる複合材料に高硬度、高耐熱性および高耐摩耗性が備わる。さらに、高エントロピー合金の緩慢拡散効果により、焼結されて液相となったバインダー金属が移動または拡散し難くなるため、WCまたはTiCの結晶成長が抑制され、これにより焼結された複合材料の硬度、靭性、耐熱性および耐摩耗性の低下が回避される。また、バインダー金属中の元素の一部が炭素と結合してカーバイドを形成することから、複合材料の硬度がより高まる。本発明においては、バインダー金属中のニッケルおよびクロムは複合材料の耐食性を高め、バインダー金属中のクロム、アルミニウムおよびケイ素は抗酸化性を高め、バインダー金属中の銅は複合材料の潤滑性を高める。本発明によれば、モル比および元素の種類を適切に選ぶことによって、複合材料の性能と使用寿命を調整することができる。本発明に比較して、従来のバインダー金属を構成する元素の種類は少なく、それ故に複合材料の性能が制約されていた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、添付の図面を参照にしながら、本発明を実施形態により詳細に説明する。
以下の記載は本発明を実施するための最良の形態である。この記載は本発明の主要な原理を説明することを目的としたものであり、限定の意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲で判断されなくてはならない。
【0013】
本発明では、多元高エントロピー合金を、セラミック相粉末(例えばWC、TiCなど)に混合されるバインダー金属として用いて、超硬複合材料の特性を改善する。これにより、各種用途における超硬複合材料の使用寿命を延長させることができる。本発明者のうちの一人である葉(Yeh)は特許文献8(台湾特許第193729号明細書)において高エントロピー合金を開示している。多元高エントロピー合金粉末は5から11の主要元素からなり、各主要元素がそれぞれ多元高エントロピー合金粉末の5から35モル%を占める。この多元高エントロピー合金の概念と効果は葉によって非特許文献1(「Advanced Engineering Materials」2004年、第6巻、p.299〜303)に開示されている。この論文によれば、高エントロピー合金は少なくとも5種の元素からなり、かつ各元素が高エントロピー合金の5から35モル%を占めるとされている。高エントロピー合金は、溶融・鋳造、鍛造または粉末冶金によって形成することができる。高エントロピー効果、緩慢拡散効果(sluggish effect)、格子ひずみ効果、およびカクテル効果などの特徴を備える高エントロピー合金は、耐熱性および硬度に優れるため、これをバインダー金属として複合材料に用いると、複合材料にも高耐熱性が備わる。さらに、高エントロピー合金の緩慢拡散効果により、焼結され液相となったバインダー金属が移動または拡散し難くなるため、WCまたはTiCの結晶成長が抑制され、これによって焼結された複合材料の硬度、靭性、耐熱性および耐摩耗性の低下が回避される。また、バインダー金属中の元素の一部が炭素と結合してカーバイドを形成することから、複合材料の硬度がより高まる。本発明において、バインダー金属中にニッケルおよびクロムが含まれると複合材料の耐食性が高まり、バインダー金属中にクロム、アルミニウムおよびケイ素が含まれると抗酸化性が高まる。このように、高エントロピー合金は様々な特性を提供できるので、複合材料の応用性を向上させることができる。
【0014】
本発明では、焼結性をメカニカルアロイング(mechanical alloying)によって改善し、微細なセラミック相粉末が均一に分散されるようにすることが好ましい。メカニカルアロイングは、高エネルギーのボールミルまたは衝突により、粉末の混合、冷間圧接、破砕、および再度の冷間圧接を行って、混合物の合金化および混合工程を完了させるプロセスである。このメカニカルアロイングにより、例えば元素粉末及び金属カーバイドセラミック相粉末;合金粉末及び金属カーバイドセラミック相粉末;または元素粉末、合金粉末及び金属カーバイドセラミック相粉末;からなる本発明の混合粉末は、(1)元素粉末が合金化され、(2)カーバイドセラミック相粉末が微細化され、(3)成分が均一で微細な合金粉体が形成され、かつバインダー金属によりカーバイドセラミック相粒子の表面が均一に覆われる、という特徴を持った粉末となる。本発明において、セラミック相粉末と多元高エントロピー合金粉末の重量比は5:95から40:60であることが好ましい。
【0015】
本発明によるセラミック相粉末/多元高エントロピー合金超硬複合材料の焼結プロセスは、従来のWC/Co超硬複合材料に用いる焼結プロセスと同様であり、例えば、脱脂、脱ガス、焼結または液相焼結、最後に冷却というものである。また任意で、混合物を低温で予備焼結し、適当な形状にカットまたは加工してから、最後に再び焼結をしてもよい。焼結密度を高めるため、焼結プロセスはさらに、加圧焼結(press sintering)または焼結後の熱間等方圧加圧(hot isostatic pressing) を含んでいてもよい。脱脂、脱ガスおよび焼結などの工程は、真空チャンバ内;またはアルゴン、水素などからなる混合ガス下;で行うことができる。焼結温度はバインダー金属の成分に応じて調整される。1実施形態において、液相焼結の温度は1300〜1500℃とするのが好ましい。1実施形態において、上述のプロセスにより製造される超硬複合材料は、少なくとも1種のセラミック相粉末および多元高エントロピー合金を含み、多元高エントロピー合金が5から11種の主要元素からなり、各主要元素がそれぞれ多元高エントロピー合金の5から35モル%を占める。上述のセラミック相粉末と多元高エントロピー合金粉末の重量比は5:95から40:60であることが好ましい。1実施形態において、超硬複合材料の硬度はHv800からHv2400である。
【0016】
多元高エントロピー合金粉末の主要元素は、炭素族(第14族)、アルミニウム、クロム族(第6族)、コバルト族(第9族)、銅族(第11族)、鉄族(第8族)、ニッケル族(第10族)、バナジウム族(第5族)、マンガン族(第7族)、またはチタン族(第4族)から選ばれた元素であることが好ましく、前記主要元素は、C、Si、Al、Cr、Co、Cu、Fe、Ni、V、MnまたはTiから選ばれた元素であることがより好ましい。
【実施例】
【0017】
実施例1
実施例1の焼結プロセスは図1に示すとおりである。先ず、数種の純金属または合金粉末をボールミル処理して多元高エントロピー合金粉末を形成した。次に、多元高エントロピー合金粉末とWC粉末とをそれぞれ異なる比率で混合およびボールミル処理し、均一に混合された粉末にした。続いて、そのWC/多元高エントロピー合金混合物を圧粉してから、高温で焼結して超硬複合材料を形成した。最後に、その複合材料について試験と分析を行った。実施例1の高エントロピー合金粉末はアルミニウム、クロム、銅、鉄、マンガン、チタンおよびバナジウムからなるものとした。表1は、タグチメソッド(L87)の直交表を利用したA系列の合金の成分比を表にしたものである。
【0018】
【表1】

【0019】
比率のそれぞれ異なる元素粉末を18時間ボールミル処理し、多元高エントロピー合金粉末を形成した。図2は各多元高エントロピー合金粉末のX線回折図であり、これら合金粉末に一定程度の合金化現象が生じていることが示されている。さらに、表2に示す比率でWC粉末を多元高エントロピー合金粉末に混合し、そしてそれら混合物をボールミル処理、圧粉および焼結して、表2に示す硬度の超硬複合材料を形成した。これら複合材料の硬度は、所望の用途に応じ高エントロピー合金とWCの比率を変えることによって調整することができる。
【0020】
【表2】

【0021】
実施例2
実施例2の焼結プロセスも図1に示すとおりである。6種の元素粉末、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄およびニッケルをボールミル処理して多元高エントロピー合金粉末を形成した。その成分の比率は表3に示すB系列の合金のとおりである。図3には、B2の粉末を例にとり、ボールミル処理時間と結晶構造との関係をX線回折により分析した図が示されている。図3より、少なくとも24時間のボールミル処理によって単一のFCC相の固溶体が形成され、完全な合金化がなされていることがわかる。
【0022】
【表3】

【0023】
表4には、それぞれ異なる比率のB系列の合金とWC粉末からなる混合物が示してある。図4には表4における混合物のX線回折の結果が示されている。図4から分かるように、混合物にはWC混合相と単一のFCC混合相が現れている。この混合相は他の混合物にも現れた。
【0024】
【表4】

【0025】
圧粉後の混合物の焼結条件は表5に示すとおりである。
【0026】
【表5】

【0027】
混合物を圧粉および焼結してテスト試料を得た。表6には、それぞれ異なる比率のB2粉末とWC粉末からなるテスト試料の密度、室温での硬度、および耐摩耗性が示されている。表6より、テスト試料のWCの比率が低くなるにつれ、室温での硬度および耐摩耗性も低下することが分かる。図5は各テスト試料の硬度vs温度曲線を示すものである。図5を見ても分かるように、WCの比率が低くなるほど、硬度も低下している。異なる比率でWC粉末と混合および焼結される他のB系列の合金についても、同様の現象が見られた。このように、本発明の多元高エントロピー合金の比率は、各種用途に応じて複合材料の硬度を変更するべく調整可能なものである。また、B系列の多元高エントロピー合金はクロムとニッケルの比率が高いため、得られる複合材料に高腐食性が備わる。さらに、B系列の多元高エントロピー合金にはアルミニウムが含まれるので、複合材料の表面に緻密な酸化アルミニウム膜が形成され、これにより複合材料の耐熱性が改善される。よって、実施例2の超硬複合材料は、腐食および高温条件における使用に適している。
【0028】
【表6】

【0029】
実施例3
実施例3の焼結プロセスも図1に示すとおりである。炭素、クロム、ニッケル、チタンおよびバナジウムの元素粉末をボールミル処理して多元高エントロピー合金粉末を形成した。その成分の比率は表7に示すC1合金のとおりである。図6はC1合金のX線回折図であり、ボールミル処理後、合金粉末が完全に合金化し、単一のBCC相の固溶体が形成されたことが示されている。
【0030】
【表7】

【0031】
表8には、それぞれ異なる温度で焼結した、それぞれ異なる比率のC1合金粉末とWC粉末からなるテスト試料の焼結密度および室温での硬度が示されている。例えば、C1合金20%とWC粉末80%のテスト試料では、その硬度がHv1825まで達している。また例えば、C1合金15wt%とWC粉末85wt%のテスト試料では、その硬度がHv1972まで達している。硬度の違いは成分の比率を調整することでコントロール可能であるため、様々な要求に応じることができるようになる。
【0032】
【表8】

【0033】
実施例4
実施例4の焼結プロセスも図1に示すとおりである。炭素、クロム、鉄、チタンおよびバナジウムの元素粉末をボールミル処理して多元高エントロピー合金粉末を形成した。その成分の比率は表9に示すD1合金のとおりである。図7はD1合金のX線回折図であり、ボールミル処理後、D1合金粉末が完全に合金化し、単一のBCC相の固溶体が形成されたことが示されている。
【0034】
【表9】

【0035】
表10には、それぞれ異なる温度で焼結した、それぞれ異なる比率のD1合金粉末とWC粉末からなるテスト試料の焼結密度および室温での硬度が示されている。硬度の違いは成分の比率を調整することでコントロール可能であるため、様々な要求に応じることができるようになる。
【0036】
【表10】

【0037】
実施例5
実施例5の焼結プロセスも図1に示すとおりである。炭素、クロム、コバルト、チタンおよびバナジウムの元素粉末をボールミル処理して多元高エントロピー合金粉末を形成した。その成分の比率は表11に示すE1合金のとおりである。図8はE1合金のX線回折図であり、ボールミル処理後、E1合金粉末が完全に合金化し、単一のBCC相の固溶体が形成されたことが示されている。
【0038】
【表11】

【0039】
表12には、それぞれ異なる温度で焼結した、E1合金粉末15wt%とWC粉末85wt%からなるテスト試料の焼結密度および室温での硬度が示されている。硬度の違いは成分の比率を調整することでコントロール可能であるため、様々な要求に応じることができるようになる。
【0040】
【表12】

【0041】
実施例6
実施例6の焼結プロセスも図1に示すとおりである。炭素、クロム、鉄、ニッケル、チタンおよびバナジウムの元素粉末をボールミル処理して多元高エントロピー合金粉末を形成した。その成分の比率は表13に示すF1合金のとおりである。図9はF1合金のX線回折図であり、ボールミル処理後、合金粉末F1が完全に合金化し、単一のBCC相の固溶体が形成されたことが示されている。
【0042】
【表13】

【0043】
表14には、それぞれ異なる温度で焼結した、F1の合金粉末15wt%とWC粉末85wt%からなるテスト試料の焼結密度と室温での硬度が示されている。硬度の違いは成分の比率を調整することでコントロール可能であるため、様々な要求に応じることができるようになる。
【0044】
【表14】

【0045】
実施例7
実施例7の焼結プロセスも図1と同様である。但し実施例7では、バインダー金属として実施例2によるB2の高エントロピー合金粉末を用い、セラミック相粉末としてTiC粉末を用いた。表15には、1350℃で焼結した比率のそれぞれ異なるB2合金粉末とTiC粉末からなるテスト試料の室温での硬度が示されている。硬度の違いは成分の比率を調整することでコントロール可能であるため、様々な要求に応じることができるようになる。
【0046】
【表15】

【0047】
実施例8
実施例8の焼結プロセスも図1と同様である。コバルト、クロム、鉄、ニッケルおよびチタンの元素粉末をボールミル処理して多元高エントロピー合金粉末を形成した。その成分の比率は表16に示すG1合金のとおりである。
【0048】
【表16】

【0049】
表17には、1380℃で焼結した比率のそれぞれ異なるG1合金粉末とTiC粉末からなるテスト試料の室温での硬度が示されている。硬度の違いは成分の比率を調整することでコントロール可能であるため、様々な要求に応じることができるようになる。さらに、G1合金にはクロムとニッケルが高比率で含まれているため、得られたテスト試料は、高温下で高い耐食性と抗酸化性を示し、腐食および高温条件下での使用に適するものとなった。
【0050】
【表17】

【0051】
実施例9
テスト試料C1WおよびD1W、ならびに市販のWCであるF10およびLC106について、硬度(Hv)および破壊靱性(KIC)を測定し比較を行った。ここで、テスト試料C1Wは、C1合金粉末15wt%とWC粉末85wt%とを混合し、1380℃の温度で焼結することによって製造した。また、D1Wは、D1合金粉末15wt%とWC粉末85wt%とを混合し、1380℃の温度で焼結することによって製造した。表18に示すように、テスト試料は市販のWCよりも硬度および破壊靭性が高かった。このように、本発明のWC/多元高エントロピー超硬複合材料は、従来のWC超硬複合材料に比して、硬度および破壊靭性に優れている。
【0052】
【表18】

【0053】
以上述べたように好適な実施形態では、バインダー金属として多元高エントロピー合金を用いてこれをカーバイドセラミック相粉末と混合し、さらにメカニカルアロイングおよび液相焼結を行うことによって、本発明の超硬複合材料は形成される。適切な元素、セラミック相粉末およびプロセス条件を選択することで、超硬複合材料に様々な硬度、耐摩耗性、耐食性、抗酸化性および靭性、室温または高温での硬化を備えさせることができる。したがって、本発明によれば、超硬複合材料の適用範囲が大いに広がる。
【0054】
以上、好適な実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定はされないと解されるべきである。つまり本発明は、当業者であれば明らかであるように、各種変更および均等なアレンジを包含することを意図する。添付の特許請求の範囲は、かかる各種変更および均等なアレンジがすべて包含されるように、最も広い意味に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例で使用した本発明のプロセスの流れを示す図である。
【図2】実施例1の合金番号A1〜A8の多元高エントロピー合金粉末のX線回折図である。
【図3】各ボールミル処理時間を経た後の実施例2の合金番号B2の多元高エントロピー合金粉末のX線回折図である。
【図4】実施例2のテスト試料番号B1W−20〜B3W−20の混合物(ボールミル処理後の異なる比率のB系列の合金とWC粉末からなる混合物)のX線回折図である。
【図5】実施例2の各種テスト試料(テスト試料番号B2W−10〜B2W−35)の硬度vs温度曲線である。
【図6】実施例3の合金番号C1の多元高エントロピー合金粉末のX線回折図である。
【図7】実施例4の合金番号D1の多元高エントロピー合金粉末のX線回折図である。
【図8】実施例5の合金番号E1の多元高エントロピー合金粉末のX線回折図である。
【図9】実施例6の合金番号F1の多元高エントロピー合金粉末のX線回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬複合材料の製造方法であって、
少なくとも1種のセラミック相粉末と多元高エントロピー合金粉末とを混合して混合物を形成する工程、
前記混合物を圧粉する工程、および、
前記混合物を焼結して超硬複合材料を形成する工程、
を含み、
前記多元高エントロピー合金粉末が5から11の主要元素からなり、各主要元素が前記多元高エントロピー合金粉末の5から35モル%を占める製造方法。
【請求項2】
前記混合物を形成する工程がメカニカルアロイングを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合物を焼結する工程が真空チャンバ内で行われる請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記混合物を焼結する工程がアルゴンおよび水素の混合ガスの下で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記セラミック相粉末が金属カーバイドを含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属カーバイドがタングステンカーバイドまたはチタンカーバイドを含む請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記主要元素が、炭素族(第14族)、アルミニウム、クロム族(第6族)、コバルト族(第9族)、銅族(第11族)、鉄族(第8族)、ニッケル族(第10族)、バナジウム族(第5族)、マンガン族(第7族)、またはチタン族(第4族)から選ばれた元素である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記セラミック相粉末と前記多元高エントロピー合金粉末の重量比が5:95から40:60である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
(a)少なくとも1種のセラミック相粉末、および
(b)多元高エントロピー合金粉末
を含み、
前記多元高エントロピー合金粉末が5から11の主要元素からなり、各主要元素が前記多元高エントロピー合金粉末の5から35モル%を占める超硬複合材料。
【請求項10】
前記セラミック相粉末が金属カーバイドを含む請求項9に記載の超硬複合材料。
【請求項11】
前記金属カーバイドがタングステンカーバイドまたはチタンカーバイドを含む請求項10に記載の超硬複合材料。
【請求項12】
前記主要元素が、炭素族(第14族)、アルミニウム、クロム族(第6族)、コバルト族(第9族)、銅族(第11族)、鉄族(第8族)、ニッケル族(第10族)、バナジウム族(第5族)、マンガン族(第7族)、またはチタン族(第4族)から選ばれた元素である請求項9〜11のいずれかに記載の超硬複合材料。
【請求項13】
前記セラミック相粉末と前記多元高エントロピー合金粉末の重量比が5:95から40:60である請求項9〜12のいずれかに記載の超硬複合材料。
【請求項14】
硬度がHv800からHv2400である請求項9〜13のいずれかに記載の超硬複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−74173(P2009−74173A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233506(P2008−233506)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】