説明

超臨界アルコールを使用したバイオディーゼルの製造方法

植物性油脂若しくは動物性油脂またはそれらの廃油を含んでなる油脂を、超臨界アルコールを用いて、エステル化することによる脂肪酸アルキルエステルの形としてのバイオディーゼルの製造方法。この製造方法によって、高純度の脂肪酸アルキルエステルを低コストで且つ高生産性で得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオディーゼルの製造に関し、より詳しくは、原材料としての、動物性油脂若しくは植物性油脂またはこれら油脂を含有する廃食用油を、メタノールなどのアルコールを用い、アルコールが超臨界状態に維持される条件で、エステル化することによってバイオディーゼルを製造する方法、並びにバイオディーゼルを製造するためのシステムに関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
20世紀以来、化石燃料のうち石油生産は、飛び抜けて増加し、産業として発展し、そして、石油は産業機械および輸送機関のエネルギー源として注目を浴びてきた。しかしながら、石油資源は限りがあり、1970年代の2度にわたるオイルショックで確認されるように、原油価格の変動や資源の武器的な使用(OPECなど)によって引き起こされる様々な問題のために、新しい代替エネルギー源の開発が急務である。
【0004】
ディーゼルエンジンは、エネルギー源として、原油の精製で得られるディーゼル油を使用する内燃機関であり、低コストで高効率であるので先進国において広く使用されている。しかし、他の燃料に比べ、ディーゼル油は燃焼によって引き起こされる大気汚染が問題となっている。
【0005】
このような問題を解決するために、ディーゼル油の物理的特性に似た特性を有するが、大気汚染を引き起こさない代替エネルギー源に関する様々な研究が行われてきた。例えば、ディーゼル油の物理的特性に似た特性を有するが、大気汚染の低減に寄与する脂肪酸アルキルエステル(以後、「バイオディーゼル」という。)に関する研究が行われてきた。
【0006】
バイオディーゼル油は、植物性油、動物性脂肪または再利用可能な廃食用油などの油脂を酸触媒またはアルカリ触媒の存在下でアルコールと反応させることによって得られる、エステル化油である。
【0007】
一般に、バイディーゼルは、水酸化ナトリウムなどの強塩基や硫酸などの強酸からなる不均一系触媒の存在下でアルコールが油脂に反応することによって得られる。
【0008】
強酸触媒を使用した従来のバイオディーゼルの製造方法としては、濃硫酸触媒の存在下でメチルアセテートをブチルアルコールと反応させる方法(ドイツ特許1,909,434)、およびヒマワリ油にメタノールを1:100以上のモル比で混ぜ、濃硫酸触媒の存在下で3〜4時間反応を行うハリントン法(Harrington, Ind. Eng. Chem. Prod. Res. Dev., 24, pp314-318, 1985)がある。ハリントン法によれば、脂肪酸メチルエステルを純度40.7%で得ることができる。
【0009】
また、強塩基触媒を使用する公知技術として、B.Freedman, J. A. O. C. S., 61(10): 1638-1643、および欧州特許301,643において提案されている方法がある。これらの技術は、KOH,K22CO3またはNaOHなどの親水性の強塩基触媒を用いてエステル類を調製する方法を示しており、特に、酸触媒と組み合わせた塩基触媒を用いるバイオディーゼルの製造方法は商業的に広く使用されている。
【0010】
触媒を用いたバイオディーゼルの製法に関して、連続プロセスにおける触媒の反応性を高めるための研究が継続的に行われている(オーストリア特許PJ1105/88(1988)、フランス特許1,583,583、米国特許3,852,315などを参照)。特に、Henkel社の国際公開WO91/05034、欧州特許EP409177、およびドイツ特許DE3925514には、プロセスを改善する方法が開示されている。また、触媒を用いたバイオディーゼルの製造に関する韓国特許として、韓国特許出願公開1999−024529、1999−024530、2003−0049614、2003−0066246、2004−0092930、2005−0006032、10−2004−0054318および10−2004−0084515があり、それらには、主に、触媒を用いたバイオディーゼルの製法が開示されている。その一方で、触媒反応によるバイオディーゼルの製造においては、遊離脂肪酸によって触媒のけん化が起きてバイオディーゼルの収率が低下するという問題がある(Wright、エステル交換に関する論文、Oil Soap,21,145-148(1944))。この問題を解決する方法が、特許出願(韓国特許出願公開10−2004−0087625参照)によって提案されている。
【0011】
上記の先行技術は触媒を用いて動物性油脂と植物性油脂と廃食用油とからバイオディーゼルを製造することに関するものであるが、次のような問題を抱えている。
【0012】
先ず、バイオディーゼルは自動車のディーゼルエンジンなどの内燃機関に使われる。バイオディーゼルに触媒残渣が残っていると、エンジンを侵食したり、ノズルを詰まらせたりなどの問題を引き起こす可能性がある。
【0013】
次に、原材料として使われる油脂に遊離脂肪酸が含まれていると、触媒のけん化を引き起こすおそれがあり、そのために遊離脂肪酸を前処理によって取り除かなければならない。または、バイオディーゼルを製造した後、製品を水洗いすることによって石鹸成分を取り除かなければならない。洗浄に用いた水は、廃水として処分するために適切に処理しなければならない。そのため、高濃度の遊離脂肪酸を含む廃食用油を使用したときには、前処理および後処理が必要になるので、バイオディーゼル製造の経済性を低下させることになる。
【0014】
上記問題を解決するために、先進国や研究機関において最近広く研究されていた技術の一つに、超臨界アルコールを用いたエステル交換反応がある。超臨界アルコールを用いると、触媒を使用しなくても、油類のエステル化ができ、そして超臨界アルコールに遊離脂肪酸が含まれていた場合にもメチルエステル化によってバイオディーゼルを得ることができると報告されている。Hideki Fukuda氏によって、超臨界アルコールを用いたバイオディーゼルの合成が報告され(Hideki Fukuda, J. Of Bioscience and Bioengineering Vol. 92, No. 5, pp 405-416, 2001)、Ayhan Demirbas氏によって、超臨界アルコールを用いたバイオディーゼルの合成に関する研究が報告されている(Ayhan Demirbas; Energy Conversion and Management, 44, pp2093-2109, 2003)。 Yuichiro Warabi氏の論文(Bioresource Technology, 91, pp283-287, 2004)およびDada Kusdiana氏の論文(Bioresource Technology 91, pp289-295, 2004)には、様々な種類の超臨界アルコールを用いてバイオディーゼルを製造できたこと、および超臨界アルコールを使用することによって遊離脂肪酸と水の影響を実質的に除去できることが示されている。
【0015】
超臨界アルコールを用いたバイオディーゼルの製法に関する特許としては、特開2000−109883、特開2001−524553、および米国特許6,884,990、米国特許6,887,283、米国特許公開2005/0033071、および国際公開WO2004/108873がある。これらの特許公報には、上記論文の内容と同様の内容、および反応効率を高める手段が記載されているが、これらの特許では製造コストなどの観点で制限があるので商業的な観点からは不利である。
【0016】
上記論文や特許公報の場合、エステル化反応が化1に示すように可逆的であるので過剰量のアルコールを用いるか、または逆反応が起きないように反応生成物を急速冷却するかのいずれかの方法によって所望純度のバイオディーゼルを製造できる。
【0017】
【0018】
【化1】

【0019】
しかし、超臨界アルコールの操作条件の観点において、300℃を超える温度から急速冷却すると、エネルギー効率に関する問題を生じるおそれがある。この問題を解決するために熱交換器を使用すると、上記の化1に示すようにグリセリンとメチルエステルとの逆反応が起きて、所望純度のバイオディーゼルを得るのが難しくなる。また、油脂を高温度でエステル化すると、バイオディーゼルの熱変性と炭化が起きるので、そのような物理的特性および純度の変動がディーゼルエンジンに通常使用されるバイオディーゼルの品質に影響するという問題がある。
【0020】
近年の韓国、米国、欧州などの基準によれば、自動車燃料として使われるバイオディーゼルとしての脂肪酸アルキルエステル(FAME)は、純度96.5%にしなければならない。しかし、上記論文や特許公報で提案されている方法では、熱交換を行っている間に逆反応が起きるために所望純度のバイオディーゼルを得ることができない。
【0021】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、触媒を用いずに、高温高圧反応器で超臨界アルコールを用いて動物性油脂または植物性油脂をエステル化することによってバイオディーゼルを提供すること、および触媒を用いた従来の製造プロセスによるバイオディーゼルにおいて引き起こされた触媒残渣による問題を除去し、さらに触媒残渣に由来する不純物除去のために行う水洗工程を省くことによって環境にやさしい高純度のバイオディーゼルを提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、原材料としての油に遊離脂肪酸が含有していてもバイオディーゼルを製造すること、および触媒を使用しなくてもエステル化することができる本発明では、触媒を使用する従来の製法において起きていたけん化反応が起きないので、遊離脂肪酸を多く含有する廃食用油を原材料として直接に使用することである。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、一段または多段の反応器とエネルギ消費を最小化する熱交換器を用いて高純度の脂肪酸アルキルエステルを製造する方法を提供し、そして、エステル化反応を不可逆的にして問題を解決することによって、原材料や操作条件に依存する経済性が最適化された高純度のバイオディーゼルの製造方法を提供する。
【0025】
本発明は、連続プロセスにおいて、高純度(脂肪酸アルキルエステル含有量:96.5%超)のバイオディーゼルを製造する方法に関する。本発明では、アルコールを超臨界状態にするための温度および圧力条件を考慮しエステル化のために必要な反応器温度に原材料を高圧熱交換を用いて加熱することによってエネルギ消費が最小化される。また、第一段反応器と精製カラムを用いて、熱交換時の逆反応によって引き起こされる純度および収率低下を防ぎ、所望純度のバイオディーゼルを製造する。所望純度のバイオディーゼルを上記方法で得ることができない原材料を使用するときには、前記第一段反応で得られた生成物からグリセリンを除去し、グリセリンが除去された原材料(脂肪または油)を第二段反応器に供給し、所望純度のバイオディーゼルにする。これにより収率97.7%でバイオディーゼルが得られる。
【0026】
結果的に、本発明の主目的は、製造されたバイオディーゼルが基準を満たすように、超臨界アルコールを用いて、油、脂肪または廃食用油から脂肪酸アルキルエステル(バイオディーゼル)と他の副生成物を製造する方法を提供することである。この方法において、連続プロセスでバイオディーゼルを製造するのに必要なエネルギーを最小化するための熱交換器が提供される。1または2以上の超臨界反応器の使用によって、熱交換器の使用で起きる逆反応による純度の低下を防ぎ、それによって所望純度のバイオディーゼルを製造できる。またバイオディーゼルを様々な原材料から製造することができる。
【0027】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の一実施態様によれば、植物性油脂若しくは動物性油脂またはそれらの廃油を含んでなる油脂をエステル化することによる脂肪酸アルキルエステルの形としてのバイオディーゼルの製造方法が提供される。この方法は次の工程を含む
【0029】
(a)アルコールと油脂を混合器に加圧して送り込み、相互に均一に混ぜて混合物を得る工程;
【0030】
(b)混合物を熱交換器に通して温度を上げる工程;
【0031】
(c)昇温された混合物を所定の温度に加熱する工程;
【0032】
(d)アルコールが超臨界状態に維持される条件で前記混合物のエステル化を行う工程;
【0033】
(e)熱交換器の中で、前記エステル化物と、後続のアルコールおよび油脂の混合物との熱交換をする工程;
【0034】
(f)熱交換された生成物の圧力を下げて、アルコールを分離し回収する工程;および
【0035】
(g)アルコールが除去された前記反応生成物から脂肪酸アルキルエステルを分離し回収する工程。
【0036】
本発明によれば、回収された脂肪酸アルキルエステルの量が所望のレベルに達しないときは、前記超臨界エステル化工程をさらに1回より多く行う。
【0037】
本発明のさらに別の実施態様によれば、本発明の製造方法は、混合器にアルコールを送り込む前に、アルコールを別の熱交換器に通して、アルコールの臨界点よりも高く維持する工程をさらに含む。
【0038】
本発明のさらに別の実施態様によれば、該製造方法は、原材料として使用される油脂とアルコールのそれぞれに溶存する酸素を除去する工程をさらに含む。
【0039】
以下に、本発明の製造方法を実施するための好適なシステムの一例を示した図面を参酌しながら、本発明を詳細に説明する。
【0040】
本発明の製造方法において原材料として用いられる油脂は、植物性油脂、動物性油脂及びそれらの廃油からなる群から選ばれる。その具体例としては、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、トウモロコシ油およびヤシ油が挙げられる。またアルコールは、炭素原子数1〜8のアルコールまたはそれら2種以上の混合物からなる群から望ましくは選ばれる。
【0041】
図1に示されたシステムは、概ね、4つのセクション:参照番号100番代で示される原材料の貯蔵と供給を行うセクション、参照番号200番代で示される第一反応と分離を行うセクション、参照番号300番代で示される第二反応と分離を行うセクション、および参照番号400番代で示される精製と貯蔵を行うセクションで構成される。
【0042】
貯蔵タンク101に貯蔵された原材料のアルコールを加圧ポンプ103で加圧する前に、アルコールに含まれる酸素を溶存酸素除去装置102において除去することが好ましい。さらに、貯蔵タンク104に貯蔵された油脂を所望の圧力に加圧ポンプ106で加圧する前に、溶存酸素除去装置105において含有酸素を除去するのが好ましい。エステル化の前に上記材料に溶け込んだ酸素を除くと、高品質のバイオディーゼルを得ることができる。ここで、原材料からの酸素除去は、原材料を加熱することによって、原材料を真空に引くことによって、または原材料に窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを吹き込むことによって行うことができる。
【0043】
それぞれの加圧ポンプ103および106によって原材料を所望の圧力に加圧し、混合器107に供給し、それらを均一に混合する。原材料を混合器107で上記のようにして均一に混合すると、原材料間での反応が効率的に起こり、収率が高くなる。アルコールと油脂との混和を向上させるために、それらの内側または外側に機械力が加わる混合器を用いて混合することができる。また、油脂をアルコールと十分に混ぜるために、アルコールを超臨界状態にしてから混合器107に供給するのが効果的である。図2に、アルコールを超臨界状態にするための熱交換の仕組みを示す。図2に示すように、超臨界状態に維持されたアルコールが混合器に移送されるように、アルコール熱交換器208をアルコール加圧ポンプ103の後に設置することができる。上記のようにアルコールが超臨界状態になると、超臨界流体の特徴のためにアルコールの均一混合効果が最大になる。ここで、この熱交換器は第一熱交換器201と実質的に同じ構造のものである。
【0044】
混合器107において相互に均一に混合されたアルコールと油脂を、第一熱交換器201を通過させ加熱し、さらに第一加熱炉202において所望の温度に加熱する。第一熱交換器201によってアルコールと油脂の混合物の予加熱をするので、第一加熱炉202のエネルギー源は、第一熱交換器201の能力と他の装置での熱損失から求められる追加エネルギーに相当するエネルギーが必要である。さらに、超臨界エステル化の場合、第一反応器203では発熱反応が進行する。発熱反応で生じた熱を、第一熱交換器201でアルコールと油脂の混合物に熱交換すると、第一加熱炉202で必要とするエネルギが非常に小さくなる。
【0045】
第一加熱炉202で加熱されたアルコールと油脂の混合物は、アルコールが超臨界の状態になる条件下で第一反応器203でエステル化反応される。第一反応器203は、管型またはオートクレーブ型の反応器であることができ、滞留時間などを考慮して設計される。第一反応器203においてアルコールを超臨界状態に維持するために、反応器の温度はアルコールの臨界温度以上、好ましくは300〜400℃、より好ましくは350〜400℃に設定し、反応器の圧力はアルコールの臨界圧力以上、好ましくは10〜20MPa、より好ましくは10〜12MPaに設定する。反応器における滞留時間は1分間以上、好ましくは5〜60分間、より好ましくは10〜20分間である。また、反応器における油脂に対するアルコールの体積比は、0.5〜10:1、好ましくは0.5〜2:1である。
【0046】
第一熱交換器201では、混合器107から流出した流体の温度を上げるために、第一反応器203などから流出した流体の温度、例えばエステル化物の温度、を使って、高圧力で動作させる。そのため、第一熱交換器には、高圧力を維持できる熱交換器を使うべきである。
【0047】
第一熱交換器201を通過したエステル化物は、第一減圧弁204によって、高圧力から大気圧または低圧力に調整され、第一アルコール回収装置205に導入される。第一アルコール回収装置205では、第一反応器203で生成したバイオディーゼルから、熱回収を行う第一熱交換器201における逆反応の進行によって引き起こされる純度の低下を防ぐために、またグリセリンを除去するために、さらに原材料として使用するためにアルコールを回収する。なお、アルコールは第一アルコール回収装置205の頂部を通って排出され、排出されたアルコールはアルコール凝縮器207を通過させて所望の温度にし、アルコール貯蔵タンク110に移送される。移送されたアルコールは追加処理をせずに原材料としてリサイクルされる。一方、バイオディーゼル、未反応の油脂、およびグリセリンは、第一アルコール回収装置205の底部を通って排出される。この混合物を、バイオディーゼル/油脂/グリセリンを分離するための第一タンクにおいて相分離される。3成分分離器206の上層にバイオディーゼルと油脂が一つの相として存在し、下層にグリセリンが一つの相として存在する。
アルコール含量を1%未満にしたときだけ、この相分離が生じる。完全な相分離が生じない場合は、グリセリンの混和によって、バイオディーゼルの収率および純度が基準を満たすことができない。
【0048】
第一分離器206の上層から回収された液中のバイオディーゼルが、所望の純度、好ましくは93.5%超の純度になっている場合には、それを第二反応器/分離器を通さず、直接にバイオディーゼル貯蔵タンク401に送ることができる。
【0049】
バイオディーゼルを貯蔵タンク401に貯蔵する前に、例えば、精製カラム装置402を用いて、バイオディーゼルの純度を上げることができる。精製カラム装置402は直列または並列に配置された複数の精製カラムで構成されていてもよい。精製のために充填される物質は脂肪酸アルキルエステルを吸収しないものが好ましく、具体的な充填物質として、活性炭、シリカゲル、イオン交換樹脂、珪藻土、ベントナイト、パーライト、およびそれら2以上を組み合わせたものが挙げられる
【0050】
精製カラム装置402において脂肪酸アルキルエステルの純度を約3%上昇させることができた場合には、上記の第一回目の反応によるバイオディーゼルの製造物を使うことができる。また、第一分離器206の頂部から排出されたバイオディーゼルの純度が所望の純度以上、好ましくは93.5%以上である場合にも、使うことができる。
【0051】
第一分離器206の底部から回収されたグリセリンは、所望の基準に応じて、グリセリン精製装置に通され、グリセリン貯蔵装置403に移送される。
【0052】
一方、第一分離器206の頂部から移送されたバイオディーゼルの純度が所望の純度に達していない場合には、精製カラム装置402だけでは所望の純度のバイオディーゼルを調製することが難しいので、第二回目の反応を該バイオディーゼルに行うことが好ましい。第二回目の反応は第一回目の反応と実質的に同じ手法で行う。以下に第二回目の反応について簡単に述べる。
【0053】
第一分離器206から排出された液を第二バイオディーゼル/油脂加圧ポンプ301で加圧し、アルコール貯蔵タンク101および溶存酸素除去装置102を通ってきたアルコールAを、第二アルコール加圧ポンプ302で加圧する。加圧されたそれらを第二混合器303において均一に混合し、該混合物を第二熱交換器304に移送する。移送された液は第一熱交換器201におけるのと同じ手法で加熱され、さらに第二加熱炉305で所望温度に加熱される。加熱された液は第二段反応器306において最終的な反応がさせられる。該反応生成物を第二熱交換器304に通すことによってエネルギーを回収する。該反応生成物を第二減圧弁307で大気圧または低圧力に調整し、第二アルコール回収装置308に移送する。第二アルコール回収装置308の操作原理は第一アルコール回収装置205と同じである。回収装置308の頂部から排出されたアルコールはアルコール凝縮器207に移送され、そしてアルコール貯蔵タンク101に移送され、原材料としてリサイクルされる。第二アルコール回収装置308の底部を通って、バイオディーゼルとグリセリンが第二バイオディーゼル/グリセリン分離器309に移送される。第二分離器309の頂部から回収されたバイオディーゼルはバイオディーゼル貯蔵タンク401に貯蔵される。第二分離器309の底部から回収されたグリセリンはグリセリン精製装置404を通り、そしてグリセリン貯蔵タンク403に貯蔵される。
【0054】
第二回目の反応が行われたバイオディーゼルは、また必要に応じて、精製カラム装置402によって精製することができる。第二回目の反応の条件は第一回目の反応の条件と同じであっても異なっていてもよい。
【0055】
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、動物性油脂または植物性油脂と様々な炭素数のアルコールとを、第一回目の反応とカラム精製との組合せまたは第一回目の反応のいずれかに供し、第一回目の反応生成物からエネルギーを回収し、そして逆反応の原因となるグリセリンを除去することによって、さらに第一回目の反応の生成物を第二回目の反応に供することによって、触媒を用いることなく、低コストで且つ高生産性で、連続反応装置によって高純度の脂肪酸アルキルエステルを製造できる。
【0057】
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施態様における、バイオディーゼルを生産するためのシステムを示す概念図である。
【0059】
【図2】本発明の別の実施態様における、アルコールを混合器に供給する前にアルコールを超臨界状態にするための熱交換器の構成を示す概念図である。
【0060】
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に、実施例を示しながら、本発明をより詳細に説明する。なお、これら実施例は、本発明を説明するためだけのものであり且つ本発明の範囲をこれらに限定するものではないことは、当技術分野における技術のあるものに自明である。
【0062】
【実施例】
【0063】
実施例1
【0064】
図1に示すように設置されたシステムでバイオディーゼルを連続的に製造した。該製造に使用した反応器は管型反応器であった。
【0065】
溶存酸素を原材料としての油脂およびアルコールから除去した後、原材料を相互に混合されるように混合器に加圧して送り込んだ。熱交換器と加熱炉によって該混合物を所定の温度に予加熱し、反応器内において所望の温度に維持した。そして、反応生成物を冷却器で冷やし、それの圧力を減圧弁で下げ、生成物から試料を採取した。
【0066】
なお、原料を送り込む圧力を80〜200MPaに、予加熱温度を80〜250℃に、反応器の温度を250〜400℃にした。また、反応器は管型反応器で、管型反応器における滞留時間を5〜60分間にした。
【0067】
バイオディーゼルの製造における、原材料の体積流量はそれぞれの高圧定量ポンプによって調整した。定量的反応率は導入された原材料から収集された量を比較することによって求めた。
【0068】
反応生成物はバイオディーゼルとグリセリンと油脂とアルコールとの混合液であった。過剰のアルコールは真空蒸発器で除去した。残った液を分離筒に入れ、相分離させて、上層にバイオディーゼルと油、下層にグリセリンを得た。下層のグリセリンを除いた後、上層の脂肪酸アルキルエステルを分析し、それの純度を求めた。純度の測定はEN 14103およびKS M 2413−2004の方法に従って行った。
【0069】
上記実験では、油脂として、韓国において市販されている、大豆油、トウモロコシ油、ヤシ油、菜種油および糠油−廃食用油を用いた。原材料のうち、大豆油は、超臨界二酸化炭素で抽出された大豆油およびヘキサンで抽出された大豆油を用いた。また、使用された糠油−廃食用油を、調理場のフライで使用された食用油をヘキサンで抽出し、ヘキサンに溶解した成分を収集して得た。
【0070】
上記実験では、アルコールとして、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールおよび1−オクタノールを使用した。表1に示した、それぞれのアルコールの臨界条件を考慮して、バイオディーゼルを製造するための操作条件を決定した。
【0071】
【表1】

【0072】
【0073】
一方、第一回目の反応で得られたバイオディーゼルが96.5%の純度に達しなかった時には、第二回目のまたは第三回目の反応を、脂肪酸アルキルエステル含有量が97.7%のバイオディーゼルを製造することができるように、第一回目の反応と同じ手法によって行った。
【0074】
下記の表2に、第一回目の反応に用いた原材料それぞれの脂肪酸アルキルエステルの含有量を示した。表2の結果は、反応器温度380℃、反応器圧力10MPa、反応器滞留時間10分間の条件で得た。表2に示した実施例に用いたアルコールはメタノールで、メタノールに対する油脂の体積比は1(油脂):2(メタノール)であった。
【0075】
【表2】

【0076】
【0077】
下記の表3は、アルコールの種類の変更によって、脂肪酸アルキルエステルの含有量が変化することを示している。表3に示した実施例では、油原材料として市販の大豆油を使用し、アルコールに対する油の体積比を1:2とし、反応器を、温度380℃、圧力10MPa、滞留時間10分間の条件にした。また、表3は、第一回目の反応の結果である。
【0078】
【表3】

【0079】
【0080】
下記の表4は、反応器温度の変更によって、脂肪酸アルキルエステルの含有量が変化することを示している。表4に示した実施例では、市販の大豆油とメタノールを使用し、メタノールに対する大豆油の体積比を1:2とした。また、反応器の圧力を10MPaに設定し、反応器での滞留時間を10分間にした。表4から判るように、脂肪酸アルキルエステルは、300〜400℃の温度範囲で製造された。表4は、第一回目の反応の結果である。
【0081】
【表4】

【0082】
【0083】
表4の結果において、400℃の場合には、採取した試料は酷い臭いとともに暗褐色を呈していた。380℃付近ではこの現象はあらわれなかった。
【0084】
下記の表5は、圧力の変更によって、脂肪酸メチルエステルの含有量が変化することを示している。表5に示した実施例では、市販の大豆油とメタノールを体積比を1:2で使用し、反応器の温度を380℃に設定し、反応器での滞留時間を10分間にした。表5の結果から判るように、脂肪酸アルキルエステルは、10〜20MPaの圧力範囲で調製された。また、表5は、第一回目の反応の結果である。圧力の変化では、脂肪酸メチルエステルの含有量はあまり大きく変化しなかった。
【0085】
【表5】

【0086】
【0087】
下記の表6は、反応器における滞留時間の変更によって、脂肪酸メチルエステルの含有量が変化することの実験結果を示している。表6に示した実施例では、市販の大豆油とメタノールを体積比1:2で使用し、反応器の温度および圧力を380℃および10MPaにそれぞれ設定した。表6は、第一回目の反応の結果である。表6の実験結果から判るように、実施例21のように滞留時間が不十分な場合には脂肪酸メチルエステルの含有量が少なくなり、実施例23のように滞留時間が増えると、逆反応が起きるので、脂肪酸メチルエステルの含有量が減る。また、流量を下げると、実施例25のように滞留時間が増加するので、管型反応器においては混合が不十分になるために反応速度が低下することがわかる。そのために、反応器の滞留時間が増加すると十分な混合が必要になることがわかる。
【0088】
【表6】

【0089】
【0090】
下記の表7は、アルコールに対する油脂の体積比の変化による、脂肪酸アルコールエステルの含有量が変化することの実験結果を示している。表7に示す実施例では、市販の大豆油とメタノールを使用し、反応器の温度および圧力はそれぞれ380℃および10MPaに設定し、反応器の滞留時間を10分間にした。表7は、第一回目の反応の結果である。表7から判るように、メタノールの量を増やしても、脂肪酸メチルエステルの含有量は大きく変化しなかった。このことは、使用するアルコールの量を実際の製造では少なくできることを示唆している。
【0091】
【表7】

【0092】
【0093】
実施例30:第二回目の反応によるバイオディーゼルの製造
【0094】
実施例1の方法によって得られた脂肪酸メチルエステルを実施例1に記載した方法に従って第二回目の反応をさせ、生成物中の脂肪酸メチルエステルの含有量を分析した。第一回目の反応で得られた生成物は脂肪酸メチルエステルを78.7%含有していた。第二回目の反応は、第一回目の反応の生成物とメタノールとを体積比1:1で使って行った。反応器の温度は350℃、反応器の圧力は10MPa、反応器の滞留時間は13分間にした。分析の結果、第二回目の反応生成物中における脂肪酸メチルエステルの含有量は97.7%であった。生成物中におけるグリセリンの総含有量(重量%)は0.028%であった。ここで、脂肪酸メチルエステルの含有量はKS M 2413−2004に従って分析した。総グリセリン含有量はKS M 2412−2004に従って分析した。
【0095】
【0096】
実施例31:第二回目の反応によるバイオディーゼルの製造
【0097】
脂肪酸メチルエステルを81.3%含有する原材料を、実施例30と同じ方法に従って第二回目の反応をさせた。その結果、脂肪酸メチルエステルを97.2%含有する生成物が得られた。脂肪酸メチルエステル含有量の分析は、KS M 2413−2004に従って行った。
【0098】
【0099】
実施例32:第三回目の反応によるバイオディーゼルの製造
【0100】
実施例30によって得られた第二回目の反応生成物を、実施例1と同じ方法に従って第三回目の反応をさせた。結果として、脂肪酸メチルエステルを98.4%含有するバイオディーゼルが製造された。
【0101】
【0102】
実施例33:バイオディーゼルの含有量増加のための精製
【0103】
実施例1で得られたバイオディーゼルをカラム精製装置に掛けた。脂肪酸メチルエステルを72.7%含有する試料1リットルを50gの木炭に60℃で通過させ、それの純度を測定した。結果として、脂肪酸メチルエステルを79.6%含むバイオディーゼルが製造された。また、脂肪酸メチルエステルを94.7%含有するバイオディーゼルを上記方法に従って処理したところ、脂肪酸メチルエステルを96.9%含有するバイオディーゼルが生産された。
【0104】
【0105】
実施例34:バイオディーゼルの性能試験
【0106】
実施例1の方法に従って製造された脂肪酸メチルエステルを87%含有するバイオディーゼルが、国内品質基準に適合するか否か試験した。試験に使用された試料はディーゼル油(2004年5月にSKサービスステーションで購入)80体積%をバイオディーゼルに混合比80(ディーゼル):20(バイオディーゼル)で混ぜることによって調製した。品質基準の試験結果を表8に示す。
【0107】
【表8】

【0108】
【産業上の利用可能性】
【0109】
前記から判るように、本発明によれば、動物性油脂または植物性油脂と様々な炭素数のアルコールとを、第一回目の反応とカラム精製との組合せまたは第一回目の反応のいずれかに供し、第一回目の反応生成物からエネルギーを回収し、そして逆反応の原因となるグリセリンを除去することによって、さらに第一回目の反応の生成物を第二回目の反応に供することによって、触媒を用いることなく、低コストで且つ高生産性で、連続反応装置によって高純度の脂肪酸アルキルエステルを製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルコールと油脂を混合器に加圧して送り込み、相互に均一に混ぜて混合物を得る工程;
(b)混合物を熱交換器に通して温度を上げる工程;
(c)昇温された混合物を所定の温度に加熱する工程;
(d)アルコールが超臨界状態に維持される条件で前記混合物のエステル化を行う工程;
(e)熱交換器の中で、前記エステル化物と、後続のアルコールおよび油脂の混合物との熱交換をする工程;
(f)熱交換された生成物の圧力を下げて、アルコールを分離し回収する工程;および
(g)アルコールが除去された前記反応生成物から脂肪酸アルキルエステルを分離し回収する工程を含む、
植物性油脂若しくは動物性油脂またはそれらの廃油を含んでなる油脂をアルコールでエステル化することによる脂肪酸アルキルエステルの形としてのバイオディーゼルの製造方法。
【請求項2】
回収された脂肪酸アルキルエステルの量が所定のレベルに達しないときは、前記超臨界エステル化工程をさらに1回より多く行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
混合器にアルコールを送り込む前に、アルコールを別の熱交換器に通して、アルコールの臨界点よりも高く維持する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
熱交換器が、直交流熱交換器、または外部熱媒体を用いて熱交換を行う熱交換器である、請求項1または3に記載の製造方法。
【請求項5】
熱交換器は、外部熱媒体を用い、且つ熱媒体の使用量の増加によってエステル化を制御する機能を有する熱交換ネットワークを含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
油脂は、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ヤシ油、およびそれら2種以上の混合油からなる群から選ばれる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
アルコールは、炭素原子数1〜8のアルコールまたはそれら2種以上の混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
超臨界エステル化における温度は、アルコールの臨界温度よりも高く維持される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
超臨界エステル化における温度が300〜400℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
超臨界エステル化における温度が350〜400℃である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
超臨界エステル化における圧力は、アルコールの臨界圧力よりも高く維持される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
超臨界エステル化における圧力が、10〜20MPaである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
超臨界エステル化における圧力が、10〜12MPaである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
超臨界エステル化における反応混合物の滞留時間が1分より長い、請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記滞留時間が5〜50分である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記滞留時間が10〜20分である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
エステル化に使用するアルコールの体積が油脂の体積の0.5〜10倍である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
エステル化に使用するアルコールの体積が油脂の体積の0.5〜2倍である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
一回目のエステル化反応の条件が、二回目またはそれ以降のエステル化反応の条件と異なる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項20】
工程(f)において回収されたアルコールは、原材料として再利用される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項21】
回収されたバイオディゼルを精製する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項22】
油脂とアルコールのそれぞれに溶存する酸素を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−516047(P2009−516047A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541078(P2008−541078)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004828
【国際公開番号】WO2007/058485
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508310838)エクス エス ティー カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ExST Co. Ltd.
【住所又は居所原語表記】306, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology, Bio Venture Center, Eoeun−dong 52, Yuseong−gu, Daejeon, Republic of Korea
【Fターム(参考)】