説明

超臨界マイクロ波反応装置

【課題】 超臨界流体中でマイクロ波を均一に照射することにより、高い反応効率を有するとともに、反応の均一性に優れた超臨界マイクロ波反応装置を提供する。
【解決手段】 超臨界マイクロ波反応装置10は、内部空間に被反応物質である固体炭化質材料21を収容する反応器11と、反応器11内の固体炭化質材料21に対して反応器11の外部からマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段12とを含む。そして、超臨界マイクロ波反応装置10は、反応器11内における超臨界状態の二酸化炭素中で、マイクロ波照射手段12により固体炭化質材料21にマイクロ波を照射してガス化反応させる。すなわち、超臨界マイクロ波反応装置10は、固体炭化質材料21に対して、超臨界二酸化炭素を浸透させながら、マイクロ波を照射させてガス化反応を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界状態の流体内で、被反応物質にマイクロ波を照射することにより反応を促進する超臨界マイクロ波反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波は、物質に含まれる水を加熱するだけでなく、極性を持った誘電物質に作用して、これを直接、かつ選択的に加熱できるので、加熱手段によって外部から物質を加熱する装置に比較して、短時間で効率よく物質を加熱できる特徴を有する。
【0003】
近年、化学反応を行わせたい被反応物質にマイクロ波を照射すると、化学反応を大幅に促進できる現象が見出され、マイクロ波の単なる加熱装置への適用に留まらず、短時間で化学反応を行わせる化学反応装置としての適用が盛んに検討されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、リン酸、水酸化アルミニウム、塩酸および水を含有する液体組成物をマイクロ波照射で加熱することにより、反応温度90〜125℃、反応時間0.5〜1時間で結晶性リン酸アルミニウム水和物を合成する方法が開示されている。特許文献1に開示される方法によれば、従来数時間から数十時間を要した水熱合成反応を、数分〜1時間程度の反応時間に短縮できるとされている。
【0005】
一方、超臨界流体は、気体のような特性と、液体のような密度とを持ち合わせており、被反応物質に対する浸透力と溶解力とを兼ね備えている。そのため、超臨界流体は、コーヒー豆中のカフェイン、ホップ中の苦み成分などの抽出や、化学反応に用いられている。
【0006】
たとえば、特許文献2には、二酸化炭素の超臨界状態において、石炭などの化石燃料の少なくとも一部をガス化させるガス化方法が開示されている。特許文献2に開示される方法によれば、超臨界流体が被反応物質である化石燃料の内部に浸透し、高効率で化石燃料のガス化反応を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−29716号公報
【特許文献2】特開2002−114986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、被反応物質にマイクロ波を照射することによって、化学反応を大幅に促進できて、反応時間を短縮することができるが、マイクロ波照射では、被反応物質を均一に加熱することが困難である。マイクロ波の照射を均一にするために、回転式電波反射板の設置、入射路の分岐複数化、ターンテーブルによる被反応物質の位置変化などが行われているが、被反応物質に対する均一加熱が充分であるとはいえない。たとえば、被反応物質の損失係数(誘電率ε×誘電正接tanδ)が温度によって変化するため、反応途中において被反応物質のマイクロ波吸収が変化して均一に加熱することができず、従来のマイクロ波反応装置では、反応の均一性が充分ではない。
【0009】
また、超臨界流体は、被反応物質に対する浸透力および溶解力を兼ね備えている。しかしながら、超臨界流体を用いた反応装置では、被反応物質に対する反応エネルギの付与が困難であり、そのため、反応効率の向上が充分ではない。
【0010】
したがって本発明の目的は、超臨界流体中の被反応物質にマイクロ波を均一に照射することにより、高い反応効率を有するとともに反応の均一性に優れた超臨界マイクロ波反応装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内部空間に被反応物質を収容する反応器と、
反応器の内部空間に収容された被反応物質にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、
反応器の内部空間に超臨界状態の流体を供給する供給手段とを含み、
反応器の内部空間に供給された超臨界状態の流体中の被反応物質に、マイクロ波照射手段によりマイクロ波を照射して、被反応物質を化学反応させることを特徴とする超臨界マイクロ波反応装置である。
【0012】
また本発明の超臨界マイクロ波反応装置は、前記供給手段が、反応器の内部空間に超臨界状態の流体を連続的に供給し、
前記マイクロ波照射手段が、反応器の内部空間に連続的に供給された超臨界状態の流体中の被反応物質にマイクロ波を照射して、連続的に被反応物質を化学反応させて、反応生成物質を連続的に得ることを特徴とする。
【0013】
また本発明の超臨界マイクロ波反応装置は、被反応物質が固体炭化質材料であり、
超臨界状態の流体が超臨界二酸化炭素であり、
反応器の内部空間に供給された超臨界二酸化炭素中の固体炭化質材料に、マイクロ波照射手段によりマイクロ波を照射して、固体炭化質材料をガス化させて、少なくとも一酸化炭素を含有するガスを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超臨界マイクロ波反応装置は、内部空間に被反応物質を収容する反応器と、反応器の内部空間に収容された被反応物質にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、反応器の内部空間に超臨界状態の流体を供給する供給手段とを含む。そして、超臨界マイクロ波反応装置は、反応器内に供給された超臨界状態の流体中の被反応物質に、マイクロ波照射手段によりマイクロ波を照射して、被反応物質を化学反応させる。すなわち、超臨界マイクロ波反応装置は、被反応物質に対して、超臨界流体を浸透させながら、マイクロ波を照射させて化学反応を行う。したがって、超臨界マイクロ波反応装置は、被反応物質の内部に超臨界流体が浸透することによって反応の均一性を向上することができるとともに、マイクロ波照射によって高反応効率で被反応物質を化学反応させることができる。
【0015】
また本発明によれば、超臨界マイクロ波反応装置では、供給手段は、反応器の内部空間に超臨界状態の流体を連続的に供給する。そして、マイクロ波照射手段は、反応器の内部空間に連続的に供給された超臨界状態の流体中の被反応物質にマイクロ波を照射して、連続的に被反応物質を化学反応させる。そのため、超臨界マイクロ波反応装置は、反応生成物を連続的に得ることができる。
【0016】
また本発明によれば、超臨界マイクロ波反応装置は、固体炭化質材料をガス化させる反応装置である。そして、超臨界マイクロ波反応装置は、反応器の内部空間に供給された超臨界二酸化炭素中の固体炭化質材料に、マイクロ波照射手段によりマイクロ波を照射して、固体炭化質材料をガス化させて、少なくとも一酸化炭素を含有するガスを生成する。すなわち、超臨界マイクロ波反応装置は、被反応物質である固体炭化質材料に対して、超臨界二酸化炭素を浸透させながら、マイクロ波を照射させて、ガス化反応を行う。したがって、超臨界マイクロ波反応装置は、固体炭化質材料の内部に超臨界二酸化炭素が浸透することによって反応の均一性を向上することができるとともに、マイクロ波照射によって高反応効率で固体炭化質材料をガス化反応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態である超臨界マイクロ波反応装置10の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係る超臨界マイクロ波反応装置は、超臨界状態の流体中で、被反応物質にマイクロ波を照射することにより化学反応を促進する反応装置である。被反応物質として固体炭化質材料を例にして、本実施形態の超臨界マイクロ波反応装置について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の一形態である超臨界マイクロ波反応装置10の構成を示す図である。超臨界マイクロ波反応装置10は、超臨界状態の二酸化炭素中の固体炭化質材料に、マイクロ波を照射して、固体炭化質材料をガス化させて、少なくとも一酸化炭素を含有するガスを生成する反応装置である。
【0020】
固体炭化質材料としては、石炭、バイオマスの炭化物などを挙げることができる。また、石炭としては、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭などを挙げることができ、石炭コークスなどの石炭誘導体を用いることもできる。
【0021】
このような固体炭化質材料は、反応性を向上させるという観点から、微粉化して反応に供することが好ましい。また、本実施形態の超臨界マイクロ波反応装置10では、微粉化した固体炭化質材料を水に分散したスラリー(以下、「炭化質スラリー」と呼ぶ)として反応に供するようにしてもよい。
【0022】
また、反応性をさらに向上させるという観点から、固体炭化質材料のガス化を促進する触媒(以下、「ガス化触媒」と呼ぶ)の存在下で、ガス化反応するようにしてもよい。このようなガス化触媒は、特に限定されず、水、金属塩触媒、金属酸化物触媒、金属触媒などを挙げることができる。
【0023】
金属塩触媒としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、塩化ニッケル、塩化ナトリウムなどの塩化物、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸鉄などの硫酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化鉄などの水酸化物を挙げることができる。金属酸化物触媒としては、酸化鉄、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化ランタンなどを挙げることができる。金属触媒としては、モリブデン、バナジウム、タングステン、ニッケル、コバルトなどを酸化ケイ素、アルミナなどの金属酸化物に担持したものを挙げることができる。なお、ガス化触媒としては、前述したものを、単独でまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0024】
ガス化触媒は、固体炭化質材料のガス化反応が行われる後述する反応器内に、ガス化反応を開始する前に予め供給しておいてもよいし、前述した炭化質スラリー中に、分散または溶解させて用いてもよい。
【0025】
超臨界マイクロ波反応装置10は、反応器11と、マイクロ波照射手段12と、二酸化炭素供給手段13と、ガス化触媒供給手段14とを含んで構成される。ここで、超臨界マイクロ波反応装置10では、反応器11の内部空間に超臨界状態の流体を供給する供給手段は、マイクロ波照射手段12、二酸化炭素供給手段13およびガス化触媒供給手段14が組合わされて実現される。すなわち、超臨界マイクロ波反応装置10は、反応器11の内部空間に、二酸化炭素供給手段13により二酸化炭素が供給され、ガス化触媒供給手段14によりガス化触媒が供給された状態で、マイクロ波照射手段12が反応器11の内部空間に収容される物質にマイクロ波を照射して加熱し、反応器11の内部空間が所定の温度、圧力に調整されることによって、反応器11の内部空間に超臨界状態の二酸化炭素を供給するように構成されている。
【0026】
反応器11は、固体炭化質材料21のガス化反応を行うための反応場である。超臨界マイクロ波反応装置10では、反応器11は、後述するマイクロ波照射手段12のマイクロ波反応槽12a内に配設されてマイクロ波が照射され、かつ、内部空間が所定の温度、圧力に調整されて超臨界状態の二酸化炭素が供給されるようになっている。そのため、反応器11は、マイクロ波を透過し、かつ、耐熱性および耐圧性を兼ね備えた材料で形成される必要がある。反応器11を構成するマイクロ波を透過し、かつ、耐熱性および耐圧性を兼ね備える材料としては、各種樹脂、耐圧ガラス、陶器などを挙げることができる。本実施形態では、反応器11は、超耐熱性熱可塑性樹脂であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる。
【0027】
また、反応器11の形状についても、マイクロ波を透過し、かつ、耐熱性および耐圧性を兼ね備えるように設計する必要がある。たとえば、反応器11は、円筒状の形状とすればよい。また、本実施形態では、内容量が10mLの反応器11に対して、2gの固体炭化質材料21が投入される。
【0028】
マイクロ波照射手段12は、マイクロ波反応槽12aと、マイクロ波発振器12bとを含んで構成される。マイクロ波発振器12bは、マグネトロンなどのマイクロ波発振器や、固体素子を用いたマイクロ波発振器を用いることができる。マイクロ波発振器12bが発振するマイクロ波の周波数は、1〜300GHzである。マイクロ波反応槽12aは、マイクロ波発振器12bで発振されたマイクロ波が照射される空間であり、反応器11が配設される。このように構成されたマイクロ波照射手段12は、マイクロ波発振器12bで発振されたマイクロ波を、マイクロ波反応槽12a内に配設される反応器11内に収容される固体炭化質材料21に照射することができる。また、マイクロ波照射手段12は、反応器11内に収容される固体炭化質材料21に対して、連続的にマイクロ波を照射するように構成されてもよいし、間欠的にマイクロ波を照射するように構成されてもよい。
【0029】
二酸化炭素供給手段13は、反応器11内に二酸化炭素を供給する手段であり、流量調整弁16および流量計17を介して流量が調整され、ポンプ18で加圧された状態で、二酸化炭素を反応器11内に供給する。二酸化炭素供給手段13は、たとえば、0.1〜10mL/minの流量で二酸化炭素を反応器11内に連続的に供給する。
【0030】
また、本実施形態の超臨界マイクロ波反応装置10は、固体炭化質材料21のガス化反応を促進するために、ガス化触媒供給手段14が反応器11内にガス化触媒を供給するように構成されている。そして、ガス化触媒供給手段14から供給されるガス化触媒は、二酸化炭素供給手段13から供給される二酸化炭素と混合された状態でポンプ18で加圧されて、反応器11内に圧送される。ガス化触媒供給手段14は、たとえば、0.1〜10mL/minの流量でガス化触媒を反応器11内に連続的に供給する。
【0031】
なお、前述した炭化質スラリーにガス化触媒を予め混合してガス化反応を行う場合には、ガス化触媒供給手段14を停止するようにすればよい。
【0032】
超臨界マイクロ波反応装置10では、固体炭化質材料21が収容された反応器11内に、二酸化炭素供給手段13によって二酸化炭素が連続的に供給され、ガス化触媒供給手段14によってガス化触媒が連続的に供給されて、固体炭化質材料21のガス化反応が開始される。
【0033】
ガス化反応が開始された超臨界マイクロ波反応装置10では、反応器11内において連続的に供給される二酸化炭素が超臨界状態となるように、圧力および温度が制御される。すなわち、超臨界マイクロ波反応装置10は、反応器11の内部空間に、超臨界二酸化炭素が連続的に供給されたものとなる。反応器11内の圧力は、圧力計19によって検出される圧力値に基づいて、流量調整弁16による二酸化炭素およびガス化触媒の流量と、ポンプ18による加圧状態とで制御される。本実施形態では、反応器11内の圧力は、7.1〜30MPa、好ましくは8〜20MPaに制御される。反応器11内の温度は、温度制御手段15によって、100℃以上、好ましくは150〜500℃、さらに好ましくは200〜350℃に制御される。このとき、温度制御手段15は、マイクロ波照射手段12によるマイクロ波の発振出力や周波数を制御することによって、反応器11内の温度を制御する。
【0034】
以上のように構成される超臨界マイクロ波反応装置10では、マイクロ波照射手段12が、反応器11の内部空間に連続的に供給される超臨界二酸化炭素中の固体炭化質材料21にマイクロ波を照射して、ガス化触媒の共存下で、固体炭化質材料21と超臨界二酸化炭素とを連続的に、下記式(1)に示すようなガス化反応をさせて、少なくとも一酸化炭素を含有するガスを連続的に生成する。
C(固体炭化質材料)+CO(超臨界二酸化炭素)→2CO …(1)
【0035】
すなわち、超臨界マイクロ波反応装置10は、被反応物質である固体炭化質材料21に対して、超臨界二酸化炭素を浸透させながら、マイクロ波を照射させて、ガス化触媒の共存下で、固体炭化質材料21と超臨界二酸化炭素とをガス化反応させる。
【0036】
したがって、超臨界マイクロ波反応装置10は、固体炭化質材料21の内部に超臨界二酸化炭素が浸透することによって反応の均一性を向上することができるとともに、マイクロ波照射によって高反応効率で固体炭化質材料21をガス化反応させることができる。また、超臨界マイクロ波反応装置10は、反応器11の内部空間における超臨界二酸化炭素中で、マイクロ波を照射しながら固体炭化質材料21のガス化反応を行うので、低温でかつ短時間(0.5〜1時間程度)で、少なくとも一酸化炭素を含有するガスを生成することができ、消費エネルギを低減することができる。
【0037】
なお、超臨界マイクロ波反応装置10では、ガス化触媒供給手段14から水(水蒸気)を供給するように構成した場合、反応器11内における超臨界二酸化炭素中の固体炭化質材料21に、水蒸気の共存下で、マイクロ波照射手段12によりマイクロ波を照射して、固体炭化質材料21をガス化反応させることができるので、一酸化炭素および水素を含有するガスを生成することができる。なお、この場合には、上記式(1)で示されるガス化反応に加えて、下記式(2)に示すようなガス化触媒反応により、一酸化炭素および水素を含有するガスを生成する。
C(固体炭化質材料)+HO(ガス化触媒)→CO+H …(2)
【0038】
また、超臨界マイクロ波反応装置10を用いて生成される一酸化炭素を含有するガスは、燃料として利用することができるだけではなく、有機合成反応の原料として利用することもできる。そこで、本実施形態の超臨界マイクロ波反応装置10は、反応器11内で固体炭化質材料21をガス化反応させて生成されるガスを、流量調整弁16を介して触媒反応装置20に圧送するように構成されている。触媒反応装置20は、固体炭化質材料21をガス化反応させて生成される一酸化炭素を含有するガスを合成原料として、たとえば、メタノール、ジメチルエーテル(DME)の合成反応を行うことができる。
【0039】
また、超臨界マイクロ波反応装置10は、固体炭化質材料21を液化させる反応装置として用いることもできる。超臨界マイクロ波反応装置10を用いて固体炭化質材料21の液化反応を行う場合、固体炭化質材料21が収容された反応器11内に、ガス化触媒供給手段14により水(水蒸気)が供給されて、固体炭化質材料21の液化反応が開始される。固体炭化質材料21の液化反応時における反応器11内では、水が超臨界状態となるように、圧力および温度が制御される。固体炭化質材料21の液化反応時における反応器11内では、圧力が22MPa以上となるように制御され、温度が374℃以上となるように制御される。
【0040】
そして、超臨界マイクロ波反応装置10は、反応器11内における超臨界水中で、マイクロ波照射手段12によりマイクロ波を照射した状態で、固体炭化質材料21を液化させて液化物を生成する。すなわち、超臨界マイクロ波反応装置10は、固体炭化質材料21に対して、超臨界水を浸透させながら、マイクロ波を照射させて液化反応を行う。したがって、超臨界マイクロ波反応装置10は、固体炭化質材料21の内部に超臨界水が浸透することによって反応の均一性を向上することができるとともに、マイクロ波照射によって高反応効率で固体炭化質材料21を液化反応させることができる。
【0041】
固体炭化質材料21を液化反応させて生成される液化物は、超臨界水中に溶解された状態となっている。この液化物を含む超臨界水を、段階的に減圧および冷却することによって、複数種の液状油(たとえば、重質油、中・軽質油)に分留することができる。
【0042】
以上のようにして、超臨界マイクロ波反応装置10は、反応器11内における超臨界水中で、マイクロ波照射手段12によるマイクロ波照射によって高反応効率で固体炭化質材料21を液化させて液化物を生成し、その生成された液化物を含む超臨界水を段階的に減圧および冷却して、重質油、中・軽質油などの液状油を生成することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 超臨界マイクロ波反応装置
11 反応器
12 マイクロ波照射手段
13 二酸化炭素供給手段
14 ガス化触媒供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に被反応物質を収容する反応器と、
反応器の内部空間に収容された被反応物質にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、
反応器の内部空間に超臨界状態の流体を供給する供給手段とを含み、
反応器の内部空間に供給された超臨界状態の流体中の被反応物質に、マイクロ波照射手段によりマイクロ波を照射して、被反応物質を化学反応させることを特徴とする超臨界マイクロ波反応装置。
【請求項2】
前記供給手段は、反応器の内部空間に超臨界状態の流体を連続的に供給し、
前記マイクロ波照射手段は、反応器の内部空間に連続的に供給された超臨界状態の流体中の被反応物質にマイクロ波を照射して、連続的に被反応物質を化学反応させて、反応生成物質を連続的に得ることを特徴とする請求項1記載の超臨界マイクロ波反応装置。
【請求項3】
被反応物質が固体炭化質材料であり、
超臨界状態の流体が超臨界二酸化炭素であり、
反応器の内部空間に供給された超臨界二酸化炭素中の固体炭化質材料に、マイクロ波照射手段によりマイクロ波を照射して、固体炭化質材料をガス化させて、少なくとも一酸化炭素を含有するガスを生成することを特徴とする請求項1または2記載の超臨界マイクロ波反応装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−11179(P2011−11179A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159493(P2009−159493)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(591081321)紀本電子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】