説明

超臨界水を用いた反応プロセス

【課題】副生成物を効率良く除去することにより、高純度の1,3−プロパンジオールをグリセリンから製造する方法の提供。
【解決手段】グリセリンを超臨界水及び酸と反応させてアクロレインを生成する超臨界反応工程;超臨界反応工程で生成したアクロレインを水和反応させて3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを生成する水和反応工程;水和反応工程で生成した3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドから、副生成物として存在するアリルアルコールを除去する第1除去工程;第1除去工程後の3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを水素添加反応させて1,3−プロパンジオールを生成する水素添加反応工程;及び水素添加反応工程で生成した1,3−プロパンジオールから、副生成物として存在する1,2−プロパンジオールを除去する第2除去工程;を含む、1,3−プロパンジオールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリセリンから1,3−プロパンジオールを製造するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−プロパンジオールは、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)をはじめとする高品質なポリエステル繊維の原料であるため、近年需要が増大している。1,3−プロパンジオールの合成方法の一つとしては、非特許文献1に示すアクロレイン水和・水添法が知られている。この方法は、石油原料であるプロピレンを触媒存在下で空気酸化してアクロレインを合成し、これを水和・水添反応するものであり、工業的製造方法として確立している。しかしながら、近年の原油価格の高騰から、バイオ原料から1,3−プロパンジオールを合成する方法が望まれている。
【0003】
バイオ原料から1,3−プロパンジオールを化学合成する方法は報告されていないが、その前駆体であるアクロレインを合成する技術は存在しており、その一つとして非特許文献2が挙げられる。非特許文献2は、バイオ原料であるグリセリンを出発物質とし、400℃、35MPaの超臨界水を用いてアクロレインを合成する方法を開示しており、超臨界水に微量添加した硫酸によるプロトンがグリセリンの脱水反応を加速させる助触媒として機能する点に特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3486195号
【特許文献2】特許第2735717号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】1,3-PDO、PTTの製造 用途および経済性 (株)シーエムシープラネット事業部 2000年8月
【非特許文献2】Acrolein synthesis from glycerol in hot-compressed water., Bioresource Technology 98 (2007) 1285-1290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2に記載された方法は、アクロレインに加えて、副生成物であるアリルアルコールを生成する。例えば特許文献1及び2にはアクロレインを1,3−プロパンジオールに転化する方法が開示されているが、これらの方法を用いてアリルアルコール含むアクロレインを1,3−プロパンジオールに転化した場合、アリルアルコールは1,2−プロパンジオールに転化する。1,2−プロパンジオールが含まれる1,3−プロパンジオールを原料としてPTTを重合した場合、得られるポリマーの結晶性が悪化するなどして、物性が低下するという問題が存在する。
【0007】
そのため、本発明は、グリセリンから1,3−プロパンジオールを製造する際に、副生成物を効率良く除去することにより、高純度の1,3−プロパンジオールを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、グリセリンから1,3−プロパンジオールを製造するプロセスにおいて、アクロレインを水和反応させて3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3−HPA)を生成した後にアリルアルコールを除去し、更に3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを水素添加反応させて1,3−プロパンジオールを生成した後に1,2−プロパンジオールを除去することにより、高純度の1,3−プロパンジオールを製造できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)グリセリンを超臨界水及び酸と反応させてアクロレインを生成する超臨界反応工程;
超臨界反応工程で生成したアクロレインを水和反応させて3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを生成する水和反応工程;
水和反応工程で生成した3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドから、副生成物として存在するアリルアルコールを除去する第1除去工程;
第1除去工程後の3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを水素添加反応させて1,3−プロパンジオールを生成する水素添加反応工程;及び
水素添加反応工程で生成した1,3−プロパンジオールから、副生成物として存在する1,2−プロパンジオールを除去する第2除去工程;
を含む、1,3−プロパンジオールの製造方法。
【0010】
(2)第1除去工程及び第2除去工程を蒸留によって実施する、(1)に記載の製造方法。
(3)水和反応工程を、アクロレインが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下で実施する、(1)又は(2)に記載の製造方法。
【0011】
(4)水和反応工程及び第1除去工程を、アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下で同時に実施する、(2)に記載の製造方法。
(5)前記条件が、水が気体状態で存在する条件である、(4)に記載の製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法により得られる1,3−プロパンジオールを重合することを含む、ポリマーの製造方法。
【0012】
(7)グリセリンを超臨界水及び酸と反応させてアクロレインを生成する超臨界反応器;
アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下で、超臨界反応器で生成したアクロレインを水和反応させて3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを生成させ、且つ該3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを、副生成物として存在するアリルアルコールから分離する水和反応蒸留器;
水和反応蒸留器中を、アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件に制御する制御手段;
水和反応蒸留器で分離された3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを水素添加反応させて1,3−プロパンジオールを生成する水素添加反応器;及び
水素添加反応器で生成した1,3−プロパンジオールから、副生成物として存在する1,2−プロパンジオールを除去する蒸留塔;
を備える、1,3−プロパンジオールの製造装置。
【0013】
(8)水和反応器中の条件を検出するための検出手段;及び
アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件が記憶された記憶手段;
を更に備え、
前記制御手段が、前記検出手段により検出された条件を取得し、取得した条件を前記記憶手段に記憶された条件と比較し、記憶された条件と一致するように水和反応器中の条件を制御する、(7)に記載の製造装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グリセリンから高純度の1,3−プロパンジオールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】1,3−プロパンジオールの製造装置の一実施形態を示す。
【図2】水和反応蒸留器の一実施形態を示す。
【図3】水和反応蒸留器の一実施形態を示す。
【図4】水和反応蒸留器を備えた1,3−プロパンジオールの製造装置の一実施形態を示す。
【図5】水和反応蒸留器を備えた1,3−プロパンジオールの製造装置の一実施形態を示す。
【図6】水和反応蒸留器を備えた1,3−プロパンジオールの製造装置の一実施形態を示す。
【図7】水和反応蒸留器を備えた1,3−プロパンジオールの製造装置の一実施形態を示す。
【図8】制御手段46、検出手段47、及び記憶手段48を備えた水和反応蒸留器を示す。
【図9】1,3−プロパンジオールの製造方法のフローチャートを示す。
【図10】1,3−プロパンジオールの製造方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)1,3−プロパンジオールの製造方法
本発明の1,3−プロパンジオールの製造方法は:
グリセリンを超臨界水及び酸と反応させてアクロレインを生成する超臨界反応工程;
超臨界反応工程で生成したアクロレインを水和反応させて3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを生成する水和反応工程;
水和反応工程で生成した3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドから、副生成物として存在するアリルアルコールを除去する第1除去工程;
第1除去工程後の3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを水素添加反応させて1,3−プロパンジオールを生成する水素添加反応工程;及び
水素添加反応工程で生成した1,3−プロパンジオールから、副生成物として存在する1,2−プロパンジオールを除去する第2除去工程;
を包含する(図9)。
【0017】
本発明の製造方法は上記の工程に限定されるわけではなく、任意の工程を更に含んでいてもよい。例えば、冷却工程、減圧工程、加熱工程、沈殿物除去工程などを適宜実施してもよい。
【0018】
超臨界反応工程
超臨界反応工程では、グリセリンを超臨界水及び酸と反応させることにより、アクロレインに転換する。
【0019】
超臨界反応工程の条件は、水が超臨界状態となる条件であれば特に限定されない。水の臨界点は374℃、22.1MPaであるため、反応温度を374℃以上、より好ましくは400℃以上、最も好ましくは453℃以上、反応圧力を22.1MPa以上、より好ましくは34.5MPa以上とする。反応温度の上限は特に限定されないが、600℃以下であることが好ましく、500℃以下であることがより好ましい。反応圧力の上限は特に限定されないが、50MPa以下であることが好ましい。
【0020】
水及びグリセリンの両方が超臨界状態となる反応条件で超臨界反応工程を実施することも好ましい。この条件ではグリセリンの水への溶解度が増加し、グリセリンを高濃度で反応させることができる。これにより、原料当たりのエネルギー量を減らし、製造コストを下げることが可能となる。グリセリンの臨界点は、453℃、6.68MPaである。
【0021】
超臨界反応工程の反応時間は、生成したアクロレインの分解が進行しない範囲であれば特に限定されない。例えば、0.1秒〜60秒が好ましく、0.5秒〜30秒がより好ましく、1〜10秒が最も好ましい。
【0022】
グリセリンの量は、グリセリン、水、及び酸の混合物に対して、好ましくは14重量%以上、より好ましくは20重量%以上、最も好ましくは50重量%以上であり、好ましくは70重量%以下である。
【0023】
酸の種類は特に限定されない。例えば、無機酸や有機酸を挙げることができ、より具体的には硫酸、塩酸、硝酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。
【0024】
酸の量は、水素イオン濃度に換算して、グリセリンmol濃度の6.3×10−3〜1.8×10-1倍であることが好ましい。具体的には、グリセリン濃度が14重量%(1.57mol/L)の場合における硫酸濃度は0.005〜0.142mol/L、グリセリン濃度が50重量%(6.11mol/L)の場合における硫酸濃度は0.0193〜0.549mmol/Lが好ましい。
【0025】
水和反応工程
水和反応工程では、超臨界反応工程で得られたアクロレインを3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3−HPA)に転換する。
【0026】
水和反応は金属触媒を用いて実施することができる。金属触媒の金属種としては、例えば、水銀、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、クロム、バナジウム、モリブデンなどを挙げることができる。金属触媒は上記金属を1種のみ含有していてもよいし、複数種を組み合わせて含有していてもよい。また、イオン交換樹脂を用いて水和反応を実施することもできる。
【0027】
水和反応工程の条件は、特に限定されないが、例えば、30〜120℃、0.1〜0.2MPaの条件を挙げることができる。アクロレインと水との重量比も特に限定されないが、例えば、1:2〜1:20の範囲を挙げることができる。
【0028】
水和反応工程は、アクロレインが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下で実施することが好ましい。この条件下では、水和反応により生成した3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドは液体となって落下し、気体状態のアクロレインと分離される。水和反応は平衡反応であるため、生成した3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが連続的に分離されることによって、反応を促進させることができ、更に副生成物の生成を抑制することができる。
【0029】
沸点は圧力によって変化するが、常圧においてアクロレインの沸点は3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドの沸点よりも低い。当業者であれは圧力及び温度を適宜調節して所望の条件を設定することが可能である。
【0030】
第1除去工程
第1除去工程では、水和反応工程で得られた3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドから、副生成物のアリルアルコールを除去する。
【0031】
アリルアルコールを除去する方法は特に限定されないが、蒸留により除去することが好ましい。アリルアルコールの沸点は3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドの沸点よりも低いため、アリルアルコールのみを気化させて分離することができる。
【0032】
第1除去工程は水和反応工程と同時に実施することもできる(図10)。例えば、アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下、より具体的には水が気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下で水和反応を行うことにより、生成した3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを液体として落下させ、気体状態のアリルアルコールから分離することができる。また、これらの条件下では、アクロレインも気体として存在するため、3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドをアクロレインから分離することができる。
【0033】
従って、上記の通り、水和反応の促進、及び副生成物の生成抑制を図ることができる。また、水和反応工程用の反応器、及び第1除去工程用の蒸留器を別々に設置する必要が無くなり、設備コストを抑えることができる。
【0034】
沸点は圧力によって変化するが、常圧における沸点はアクロレイン、アリルアルコール、水、3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドの順に高くなる。当業者であれは圧力及び温度を適宜調節して所望の条件を設定することが可能である。
【0035】
水素添加反応工程
水素添加反応では、第1除去工程後の3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを1,3−プロパンジオールに転換する。
【0036】
水素添加反応は、水素雰囲気下で触媒を用いて実施することができる。触媒としては、例えば、不均一系触媒(懸濁系触媒、固定床触媒など)、均一系触媒などを挙げることができる。
【0037】
水素添加反応工程の条件は、特に限定されないが、例えば、30〜150℃、特に60〜130℃であることが好ましく、また、2〜20MPa、特に5〜16MPaであることが好ましい。
【0038】
第2除去工程
第2除去工程では、水素添加反応工程で生成した1,3−プロパンジオールから、副生成物の1,2−プロパンジオールを除去する。
【0039】
1,2−プロパンジオールを除去する方法は特に限定されないが、蒸留により除去することが好ましい。1,2−プロパンジオールの沸点は1,3−プロパンジオールの沸点よりも低いため、1,2−プロパンジオールのみを気化させて分離することができる。
【0040】
第1除去工程及び第2除去工程において副生成物を除去することによって、高純度の1,3−プロパンジオールを製造することができる。高純度の1,3−プロパンジオールを重合させることによって高品質のポリマーを製造することができる。本発明における「重合」とは単重合及び共重合のいずれも包含する。
【0041】
高純度の1,3−プロパンジオールを使用して製造する好ましいポリマーとしては、例えば、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸とのコポリマーであるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)を挙げることができる。
【0042】
(2)1,3−プロパンジオールの製造装置
本発明の1,3−プロパンジオールの製造装置は:
グリセリンを超臨界水及び酸と反応させてアクロレインを生成する超臨界反応器(例えば、配管);
アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下(好ましくは、水が気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下)で、超臨界反応器で生成したアクロレインを水和反応させて3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを生成させ、且つ該3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを、副生成物として存在するアリルアルコールから分離する水和反応蒸留器;
水和反応蒸留器中を、アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件(好ましくは、水が気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件)に制御する制御手段;
水和反応蒸留器で分離された3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを水素添加反応させて1,3−プロパンジオールを生成する水素添加反応器;及び
水素添加反応器で生成した1,3−プロパンジオールから、副生成物として存在する1,2−プロパンジオールを除去する蒸留塔;
を備える。
【0043】
好適な一実施形態では、1,3−プロパンジオールの製造装置は、図8に示すように、
水和反応器中の条件を検出するための検出手段47;及び
アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件(例えば、温度及び圧力)、及び/又は水が気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件が記憶された記憶手段48;
を更に備える。
【0044】
制御手段46は、検出手段47により検出された条件を取得し、取得した条件を記憶手段48に記憶された条件と比較し、記憶された条件と一致するように水和反応器中の条件を制御する。
【0045】
水和反応器中の条件は、例えば、制御手段が流量調節手段49(例えば、バルブ)を制御してアクロレインや水の供給量を調節することにより変化させることができる。また、水和反応器に対して加熱手段50や冷却手段51を設け、制御手段がこれらを制御することによって水和反応器中の条件を変化させることもできる。
【0046】
制御手段46としては、例えば、コンピュータを挙げることができる。コンピュータのRAM、ROM、HDDなどに記憶されたプログラムが動作することによって、制御手段の機能が実現できる。
【0047】
検出手段47としては、例えば、慣用の温度計や圧力計などを挙げることができる。
記憶手段48としては、例えば、RAM、ROM、HDDなどを挙げることができる。
【0048】
以下、1,3−プロパンジオールの製造装置の一実施形態を図1に基づいて詳細に説明する。なお、図1では、水和反応蒸留器45は使用されておらず、代わりに水和反応器16、及び蒸留塔17が設置されている。一方、図4〜7の1,3−プロパンジオールの製造装置は水和反応蒸留器45を備えている。
【0049】
製造装置は反応経路上流側から、ポンプ1、ポンプ2、ヒーター3、ヒーター4、ヒーター5、フィルタ6、冷却器7、減圧弁8、冷却器9、冷却器10、減圧弁11、蒸留塔12、熱交換器13、蒸留塔14、リボイラー15、水和反応器16、蒸留塔17、リボイラー18、水素添加反応器19、水素分離器20、蒸発器21、蒸留塔22、リボイラー23、熱交換器24、蒸留塔25、リボイラー26、熱交換器27、蒸留塔28、熱交換器29の順番で配置されて成る。
【0050】
ポンプ1及び2で22〜50MPaに加圧した超臨界水及び酸をグリセリンに作用させた後、冷却を複数回に分けて実施する。
【0051】
グリセリンに超臨界水と酸を作用させて得られる反応液を、主反応が停止する温度であり、且つ反応液中に含まれるタール等の高粘度成分の粘度が十分に低い温度まで反応クエンチ用冷却水を注入し、冷却する(第一の冷却)。これにより、副生成物の発生量を低減しつつ、タール等の高粘度成分の粘度及び付着性の上昇を抑え、カーボン粒子等の固形分が凝集しない状態を維持できる。凝集しない状態では固形分の粒径は数μm〜数十μmであり、付着性も極めて小さいので、配管を閉塞させることはない。また、固形物を分離除去する操作の時にも、分離面に固形物が付着して差圧上昇する効果を低減できる。このため、プラント運転系統の切り替え、フィルタ逆洗操作等の分離装置のメンテナンス頻度が著しく低減し、停止と再起動に伴うエネルギー損失が低減するので運転コストを低減できる。あわせて、400℃等の高温の反応液を冷却した後に固形分の分離を行うため、分離装置の熱劣化を防ぐことができる。
【0052】
第一の冷却後における反応液の粘度は0.1Pa・s以下が望ましく、この程度の低粘度を実現できる温度、具体的には100℃以上が望ましい。その一方、合成反応、熱分解反応を完全に停止させるには200℃以下の温度が望ましい。そのため、第一の冷却温度は100〜200℃であることが望ましい。第一の冷却方法として反応液に冷却水を直接混合することにより、ジャケット等による配管周辺からの熱交換と比べて温度変化が高速化する。これにより熱分解反応を高速停止することができ、生成したアクロレインがタール、カーボン粒子等の副生成物に変化するのを停止できるため、原料収率の向上が期待できる。また、副生成物発生量が低減するので、これに伴う配管及び機器の閉塞、エロージョン発生の抑制、精密な圧力制御に資することができる。
【0053】
次に、反応液から固形分を分離除去した後で反応液を水の沸点以下でかつ反応液中のタール分が機器に固着しない温度まで冷却器7を用いて冷却する(第二の冷却)。その後に減圧弁8を用いて減圧することで、配管、弁での固形分による閉塞が回避できるとともに、タール分の付着も低減できるので、減圧弁8における圧力制御の精度が向上する。特に、減圧弁の間口は極めて狭いので、固形分だけでなくタール分の付着を抑制することで、弁の開閉操作が容易、安定化することは非常に有効である。また、冷却温度が水の沸点以下に設定されることで、減圧後に反応液が気化して体積が急激に膨張するのを抑制できるため、反応装置の安全性を向上させることができる。
【0054】
第二の冷却後における反応液の粘度は10Pa・s以下であることが望ましく、この程度の低粘度を実現できる温度、具体的には53℃以上、特に80℃以上が望ましい。その一方、減圧後における反応液の気化、急激な膨張を抑制する観点からは温度は100℃以下が望ましい。このため、第二の冷却温度は、少なくともアクロレインの沸点以上であることを考慮して、53〜100℃、望ましくは80〜100℃となる。
【0055】
減圧した後に、反応液を目的物質の沸点まで冷却器9及び10を用いて冷却する(第三の冷却)。言い換えれば第三の冷却工程の温度を目的物質の沸点以上に維持する。これにより、排出した反応液から目的物質が容易に気化してくる。このため、後段の蒸留工程で再加熱する際のエネルギー効率を向上することができる。アクロレインの沸点以上であることを考慮して、第三の冷却温度は53℃〜第二の冷却温度の範囲となる。冷却した反応液は減圧弁11で減圧した後、蒸留塔12へ送られる。
【0056】
超臨界反応から固形分の分離除去までを弁で仕切られた鉛直な配管内で実施することにより、副生成物を含む反応液は重力により配管の周方向に対して均一に流下する。水平な系の場合には、発生した副生成物中の固形分が配管底部に堆積し、流れに伴う摩擦で、配管、減圧弁等の底部でエロージョンが発生する。配管の周方向に対して均一に流下することで、配管内面における固形物粒子との接触は平滑化され、さらなるエロージョンの低減効果が得られる。また、ヒーター3からフィルタ6までの反応装置及び固形分分離装置を二系統以上用意することで、交互運転、副生成物粒子の交互排出が可能となる。これにより、ある系統でメンテナンス作業を実施している際には少なくとも他の一つ以上の系統が運転している状態を維持できるので、プラント全体を停止する必要がなく、連続運転性が向上する。その際、反応装置前段のヒーター3は反応配管のヒーター5に比べて滞留時間が長く設備規模が大きい。また、ヒーター3には原料であるグリセリン等の有機物がないので副生成物の発生がない。このことは、ヒーター3では全体工程の中でエネルギー使用の割合が大きい一方、その下流側工程と比べて副生成物によるトラブルの心配が極めて小さいことがわかる。そこで、複数系統の方式を考える上で、ヒーター3を各系統共通で使用して反応配管から複数系統に分岐することで、ヒーター3はその下流側工程においてメンテナンス作業をしている系統があっても連続運転が可能となる。これにより、停止・再起動でのエネルギー損失が最小限にできるので、設備コスト、運転コストの両方を低減することができる。
【0057】
蒸留塔12へ流入した反応液は蒸留により分離され、頂部からアクロレイン、水、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アリルアルコール等を含む反応液を排出し、底部から水、硫酸、タール等を含む廃水を排出する。反応液は熱交換器13で冷却された後、蒸留塔14に流入する。蒸留塔14に流入した反応液は蒸留により分離され、頂部からアセトアルデヒド及びホルムアルデヒド等を含む廃液を、底部からアクロレイン、水及びアリルアルコール等を含む反応液を排出する。蒸留塔14から排出された反応液はリボイラー15に流入し、アクロレインを水和反応させるため、水和反応の反応温度近傍の40〜110℃、望ましくは50〜70℃に昇温される。
【0058】
水を加えられた後、水和反応器16に流入した反応液は水和反応により主として3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3−HPA)に転換される。水和反応には、1種又は複数種の金属、例えば水銀、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、クロム、バナジウム、モリブデンを含む触媒、あるいはイオン交換樹脂を用い、反応温度30〜120℃及び圧力0.1〜0.2MPaでアクロレインと水の重量比1:2〜1:20の範囲で行うことができる。水和反応器から排出された反応液は蒸留塔17に流入して蒸留により分離され、頂部からアクロレイン、水、アリルアルコール等を含む廃液を排出し、底部から3−HPA,水等を含む反応液を排出する。廃液は熱交換器36で冷却された後、一部は水和反応器16に還流される。反応液はリボイラー18で3−HPAを水素添加反応させるため、水素添加反応の反応温度近傍の30〜150℃、望ましくは60〜130℃に昇温される。
【0059】
必要に応じて水を加えられた後、水素添加反応器19に流入した反応液は、触媒により水素添加される。触媒は不均一系で、それ自体又は担体に担持して使用され、固定床であることが望ましいが、均一系触媒を用いることもできる。懸濁系触媒を用いる場合は、ラネー−ニッケル触媒や担体上に微分散担持された貴金属触媒が好適である。固定床触媒を用いる場合には、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属、ニッケル、銅、クロム、亜鉛等の金属を酸化チタン、アルミナ、シリカ、ゼオライト等の担体上に微分散して担持させた触媒又はZSM−5等のゼオイトが好適である。反応温度は30〜150℃、特に60〜130℃が望ましく、圧力は2〜20MPa、特に5〜16MPaが望ましい。
【0060】
水素添加反応器から排出された反応液は水素分離器20に流入して水素と反応液が分離される。分離された水素は水素添加反応器に還流される。反応液は蒸発器21に流入し、一部の水と分離される。分離された水は水和反応器又は水素添加反応器に還流される。反応液は蒸留塔22に流入して蒸留により分離され、頂部から水等を含む廃液を排出し、底部から1,3−プロパンジオール(1,3−PDO)、1,2−プロパンジオール(1,2−PDO)、4−オキサ−1,7ヘプタンジオール等を含む反応液を排出する。廃液は熱交換器37で冷却された後、一部は水和反応器16や水素添加反応器19に還流される。反応液はリボイラー23及び熱交換器24を経て蒸留塔25に流入して蒸留により分離され、頂部から1,2−プロパンジオールを含む廃液を排出し、底部から1,3−プロパンジオール、4−オキサ−1,7ヘプタンジオール等を含む反応液を排出する。反応液はリボイラー26及び熱交換器27を経て蒸留塔28に流入して蒸留により分離され、頂部から1,3−プロパンジオールを排出し、底部から4−オキサ−1,7ヘプタンジオール等を含む廃液を排出する。
【0061】
廃液はリボイラー39及び熱交換器40を経て蒸留塔41に流入して蒸留により分離され、頂部から4−オキサ−1,7ヘプタンジオールを排出し、底部から重質分を排出する。4−オキサ−1,7ヘプタンジオールは熱交換器42、43を経て加水分解反応器44で触媒により加水分解され、1,3−プロパンジオールとなる。触媒は不均一系で、それ自体又は担体に担持して使用され、固定床であることが望ましいが、均一系触媒を用いることもできる。懸濁系触媒を用いる場合は、担体上に微分散担持された貴金属触媒が好適である。固定床触媒を用いる場合には、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属、ニッケル、銅、クロム、亜鉛等の金属を酸化チタン、アルミナ、シリカ、ゼオライト等の担体上に微分散して担持させた触媒又はZSM−5等のゼオイトが好適である。反応温度は30〜300℃、特に60〜260℃が望ましく、圧力は0.1〜10MPa、特に1〜6MPaが望ましい。
【0062】
リボイラー30で保温されたタール及び硫酸等を含む廃水は固形分除去装置31に流入し、固形分が除去される。廃水は流動性を維持できる温度範囲である50〜100℃、望ましくは80〜100℃に保たれているため、固形分除去装置ではカーボン粒子等の固形物を捕集し、タール等の高粘度成分の付着は抑制される。固形分の除去にはフィルタ、サイクロン、沈殿槽等を用いることができる。
【0063】
固形分除去装置31から排出された廃水は有機物除去装置32に流入し、廃水中の有機物が除去される。有機物の除去は吸着により行い、吸着材として活性炭、ゼオライト等を用いることができる。これにより、廃水中に含まれるタールやその他の有機物が除去される。
【0064】
有機物除去装置32から排出された廃水はイオン交換塔33に流入し、イオン交換樹脂により廃水中に含まれる硫酸等の酸が除去される。
【0065】
固形分除去装置31からイオン交換塔33までで精製された水は水タンク34に流入し、原料水もしくは反応クエンチ用の冷却水として再利用される。これにより、水の使用量が低減でき、プラント運転コストを抑制することが可能となる。また、アクロレインやホルムアルデヒドといった毒物指定の化学物質を含む廃水を系外に排出するために必要な廃水処理施設が不要となるため、設備費用及び運転費用の低減に資することができる。
【0066】
固形分除去装置31からイオン交換塔33までを二系統以上用意することで、交互運転、不純物の交互排出が可能となる。これにより、ある系統でメンテナンス作業を実施している際には少なくとも他の一つ以上の系統が運転している状態を維持できるので、プラント全体を停止する必要がなくなり、連続運転性が向上する。
【0067】
水和反応において、図2に示すような水和反応蒸留器を用いることができる。アクロレイン及び水を気体として水和反応蒸留器内に流入させ、水和反応を行うことにより生成した3−HPAは、水及びアクロレインより沸点が高いため液体となって水和反応蒸留器底部に落下する。水和反応は平衡反応であるため、雰囲気中から3−HPAが液体となって連続的に取り除かれることにより反応が促進され、滞留時間を従来の装置より短縮することが可能となる。また、滞留時間を短縮することで、副生成物の生成を抑制することができる。また、水和反応蒸留器内で3−HPAと水及びアクロレインとを分離するため、図1における蒸留塔17のような水和反応下流側の蒸留塔を省略することができ、設備コストの低減に資する。加えて、図1における蒸留塔14のような水和反応上流側の蒸留塔を省略することも可能となる。
【0068】
水和反応において、アクロレインの沸点以上、水の沸点未満で反応を行う場合には、図3に示すような水和反応蒸留器を用いることができる。アクロレインは気体として水和反応蒸留器下部から、水は液体として水和反応蒸留器上部から流入させる。水は雰囲気中に均一に分布させることが望ましいため、シャワー等を用いて水和反応蒸留器内に散布することができる。水和反応により生成した3−HPAは液体となり、水とともに水和反応蒸留器底部に落下する。水和反応は平衡反応であるため、雰囲気中から3−HPAが液体となって連続的に取り除かれることにより反応が促進され、滞留時間を従来の装置より短縮することが可能となる。また、滞留時間を短縮することで、副生成物の生成を抑制することができる。また、反応器内で3−HPA及び水とアクロレインを分離するため、図1における蒸留塔17のような水和反応下流側の蒸留塔を省略することができ、設備コストの低減に資する。加えて、図1における蒸留塔14のような水和反応上流側の蒸留塔を省略することも可能となる。3−HPAへの水の混入は、下流の水素添加反応で水が必要とされるため問題とならない。
【0069】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
図1に示す装置を用いて、超臨界反応を原料グリセリン濃度15wt%、反応温度400℃、反応圧力35MPa、反応時間2sの条件で実施した後、冷却水注入によるクエンチで200℃、冷却器7で200℃から125℃へ冷却、減圧弁8で35MPaから0.35MPaに減圧、冷却器9で125℃から95℃へ冷却、冷却器10で95℃から60℃へ冷却、減圧弁11で大気圧まで減圧した。水和反応を反応温度60℃、反応圧力0.1MPa、反応時間1hの条件で実施した後、水素添加反応を反応温度60〜120℃、反応圧力15MPa、反応時間1hの条件にて実施し、1,3−プロパンジオールの合成を行った。その結果、得られた反応液において、1,3−プロパンジオールの収率は52%、1,2−プロパンジオールは検出されなかった。
【0071】
(実施例2)
図4に示す水和反応蒸留器45を含む装置を用いて、超臨界反応を原料グリセリン濃度15wt%、反応温度400℃、反応圧力35MPa、反応時間2sの条件で実施した後、冷却水注入によるクエンチで200℃、冷却器7で200℃から125℃へ冷却、減圧弁8で35MPaから0.35MPaに減圧、冷却器9で125℃から95℃へ冷却、冷却器10で95℃から60℃へ冷却、減圧弁11で大気圧まで減圧した。水和反応を反応温度60℃、反応圧力0.1MPa、反応時間1hの条件で実施した後、水素添加反応を反応温度60〜120℃、反応圧力15MPa、反応時間1hの条件にて実施し、1,3−プロパンジオールの合成を行った。その結果、得られた反応液において、1,3−プロパンジオールの収率は55%、1,2−プロパンジオールは検出されなかった。
【0072】
(実施例3)
図5に示す水和反応蒸留器45を含む装置を用いて、超臨界反応を原料グリセリン濃度15wt%、反応温度400℃、反応圧力35MPa、反応時間2sの条件で実施した後、冷却水注入によるクエンチで200℃、冷却器7で200℃から125℃へ冷却、減圧弁8で35MPaから0.35MPaに減圧、冷却器9で125℃から95℃へ冷却、冷却器10で95℃から60℃へ冷却、減圧弁11で大気圧まで減圧した。水和反応を反応温度60℃、反応圧力0.1MPa、反応時間1hの条件で実施した後、水素添加反応を反応温度60〜120℃、反応圧力15MPa、反応時間1hの条件にて実施し、1,3−プロパンジオールの合成を行った。その結果、得られた反応液において、1,3−プロパンジオールの収率は57%、1,2−プロパンジオールは検出されなかった。
【0073】
(実施例4)
図6に示す水和反応蒸留器45を含む装置を用いて、超臨界反応を原料グリセリン濃度15wt%、反応温度400℃、反応圧力35MPa、反応時間2sの条件で実施した後、冷却水注入によるクエンチで200℃、冷却器7で200℃から125℃へ冷却、減圧弁8で35MPaから0.35MPaに減圧、冷却器9で125℃から95℃へ冷却、冷却器10で95℃から60℃へ冷却、減圧弁11で大気圧まで減圧した。水和反応を反応温度60℃、反応圧力0.1MPa、反応時間1hの条件で実施した後、水素添加反応を反応温度60〜120℃、反応圧力15MPa、反応時間1hの条件にて実施し、1,3−プロパンジオールの合成を行った。その結果、得られた反応液において、1,3−プロパンジオールの収率は55%、1,2−プロパンジオールは検出されなかった。
【0074】
(実施例5)
図7に示す水和反応蒸留器45を含む装置を用いて、超臨界反応を原料グリセリン濃度15wt%、反応温度400℃、反応圧力35MPa、反応時間2sの条件で実施した後、冷却水注入によるクエンチで200℃、冷却器7で200℃から125℃へ冷却、減圧弁8で35MPaから0.35MPaに減圧、冷却器9で125℃から95℃へ冷却、冷却器10で95℃から60℃へ冷却、減圧弁11で大気圧まで減圧した。水和反応を反応温度60℃、反応圧力0.1MPa、反応時間1hの条件で実施した後、水素添加反応を反応温度60〜120℃、反応圧力15MPa、反応時間1hの条件にて実施し、1,3−プロパンジオールの合成を行った。その結果、得られた反応液において、1,3−プロパンジオールの収率は57%、1,2−プロパンジオールは検出されなかった。
【0075】
(比較例)
実施例1と同様のパラメータで1,3−プロパンジオール合成を行った。ただし、蒸留塔17でのアリルアルコール回収及び蒸留塔25での1,2−プロパンジオール回収は行わなかった。その結果、反応液から1%の1,2−プロパンジオールが検出された。
【符号の説明】
【0076】
1,2 ポンプ
3,4,5 ヒーター
6 フィルタ
7,9,10 冷却器
8,11 減圧弁
12,14,17,22,25,28,41 蒸留塔
13,24,27,29,35,36,37,38,40,42,43 熱交換器
15,18,23,26,30,39 リボイラー
16 水和反応器
19 水素添加反応器
20 水素分離器
21 蒸発器
31 固形分除去装置
32 有機分除去装置
33 イオン交換塔
34 水タンク
44 加水分解反応器
45 水和反応蒸留器
46 制御手段
47 検出手段
48 記憶手段
49 流量調節手段
50 加熱手段
51 冷却手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンを超臨界水及び酸と反応させてアクロレインを生成する超臨界反応工程;
超臨界反応工程で生成したアクロレインを水和反応させて3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを生成する水和反応工程;
水和反応工程で生成した3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドから、副生成物として存在するアリルアルコールを除去する第1除去工程;
第1除去工程後の3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを水素添加反応させて1,3−プロパンジオールを生成する水素添加反応工程;及び
水素添加反応工程で生成した1,3−プロパンジオールから、副生成物として存在する1,2−プロパンジオールを除去する第2除去工程;
を含む、1,3−プロパンジオールの製造方法。
【請求項2】
第1除去工程及び第2除去工程を蒸留によって実施する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
水和反応工程を、アクロレインが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下で実施する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
水和反応工程及び第1除去工程を、アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下で同時に実施する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記条件が、水が気体状態で存在する条件である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により得られる1,3−プロパンジオールを重合することを含む、ポリマーの製造方法。
【請求項7】
グリセリンを超臨界水及び酸と反応させてアクロレインを生成する超臨界反応器;
アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件下で、超臨界反応器で生成したアクロレインを水和反応させて3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを生成させ、且つ該3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを、副生成物として存在するアリルアルコールから分離する水和反応蒸留器;
水和反応蒸留器中を、アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件に制御する制御手段;
水和反応蒸留器で分離された3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを水素添加反応させて1,3−プロパンジオールを生成する水素添加反応器;及び
水素添加反応器で生成した1,3−プロパンジオールから、副生成物として存在する1,2−プロパンジオールを除去する蒸留塔;
を備える、1,3−プロパンジオールの製造装置。
【請求項8】
水和反応器中の条件を検出するための検出手段;及び
アリルアルコールが気体状態で存在し、且つ3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドが液体状態で存在する条件が記憶された記憶手段;
を更に備え、
前記制御手段が、前記検出手段により検出された条件を取得し、取得した条件を前記記憶手段に記憶された条件と比較し、記憶された条件と一致するように水和反応器中の条件を制御する、請求項7に記載の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−91621(P2013−91621A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234545(P2011−234545)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】