説明

超酸を使用したヒドロコドンを調製するプロセス

本開示は全般的には、縮合三環式化合物を、フラン環を含む縮合四環式化合物に変換するプロセスに関する。より詳細には、本開示は、構造的に対応するシノメニン出発化合物を、超酸を使用したフラン閉環反応に付すことにより、ヒドロコドン化合物またはそれと構造的に関連した化合物、特に(+)−ヒドロコドンを調製するプロセスに関する。式I、II。本明細書に記載のプロセスに有用な超酸の例として、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)、テトラフルオロホウ酸(HBF)、フルオロリン酸(HPF)、フルオロ硫酸(FSOH)およびフルオロアンチモン酸(HSbF)、フルオロリン酸(FP(O)(OH))、およびこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年12月2日に出願された米国仮特許出願第61/119,064号の利益を主張し、この仮特許出願は、その全体が参照として援用される。
【0002】
(開示の分野)
本開示は全般的には、縮合三環式化合物を、フラン環を含む縮合四環式化合物に変換するプロセスに関する。より詳細には、本開示は、構造的に対応するシノメニン出発化合物を、超酸を使用したフラン閉環反応に付すことにより、ヒドロコドン化合物またはそれと構造的に関連した化合物、特に(+)−ヒドロコドンを調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
(開示の背景)
(+)−ヒドロコドンは、その鎮痛特性のため医薬化合物としての有用性を有するオピオイドである。さらに、(+)−ヒドロコドンは、他のオピオイド、特に周知の薬理効果を持つ(たとえば、ラット前脳のN−メチル−D−アスパルタート(NMDA)受容体部位に対する親和性がマイクロモルの低親和性であり、神経因性疼痛の処置における臨床効果が示唆される)(+)−モルヒネなどの非天然型(+)−オピオイドの合成において重要な中間体でもある。(たとえば非特許文献1を参照されたい)。(+)−ヒドロコドンは、単独で使用した場合、あるいは、疼痛、炎症、癌、免疫障害および他の疾患を処置する他の薬剤と組み合わせて使用した場合、著明な治療効果を有する可能性がある。
【0004】
(+)−ヒドロコドンは、下記構造に示すように、フラン環を含む縮合四環式核環構造を持つ。
【0005】
【化1】

【0006】
(+)−ヒドロコドンは、どちらも下記に示すように縮合三環式核環構造を含むジヒドロシノメニンまたはジヒドロシノメニノンを、フラン閉環または環形成反応に付すことを含むプロセスにより調製することができる。
【0007】
【化2】

【0008】
しかしながら、ジヒドロシノメニンを(+)−ヒドロコドンに変換する現在の方法は大過剰量のポリリン酸またはメタンスルホン酸と五酸化リンとの混合物を使用する必要があるのが一般的であるのに対し、ジヒドロシノメニノンを(+)−ヒドロコドンに変換する現在の方法の方は、厳しい反応条件(たとえば、50%硫酸中でジヒドロシノメニノンを煮沸する)を使用する必要があるのが一般的である。(たとえばGoto,K.et al.,非特許文献2;Lijuma,I.et al.,非特許文献3;および/または、Whittall,J.et al.,特許文献1)。
【0009】
現在使用される(+)−ヒドロコドンの合成プロセスは、いくつかの理由から望ましくないものである。たとえば、1つまたは複数のこうしたプロセスは、反応に使用される過剰量の酸をクエンチするのに大量の塩基が必要とされるため、および/または反応混合物の煮沸に必要とされる大量のエネルギーのため、非効率性が問題になり得る。このため、こうしたプロセスは、拡大が困難であり、費用がかかることもある。
【0010】
以上のごとく、(+)−ヒドロコドンおよびこれに構造的に関連した他の化合物を調製する改良されたプロセスが引き続き求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許出願公開第2392670号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Neuroscience Letters 295(2000),21−24
【非特許文献2】Acta Phytochim.(Japan),1949,15,187−191
【非特許文献3】C.J.Org.Chem.,1978,43(7),1462−1463
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
このため、簡単に説明すると、本開示は全般的に、下記反応スキーム1に示すように、フラン閉環またはフラン環形成反応を行い、縮合三環式環構造、特に式(I)の化合物を、縮合ヘテロ四環式環構造、特に式(II)の化合物に変換するプロセスを対象とする:
【0014】
【化3】

【0015】
式中、Rは水素、または酸加水分解により除去できる酸素保護基、たとえばアシル、トリアルキルシリル、第三級アルキル、アリール置換メチルおよびアルコキシ−カルボニル(すなわち、ROCO−、式中、Rは本明細書の他の箇所で定義されるアルキルである)などからなる群から選択され;Xは一般にA環上の3つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、水素、ハロゲン、アルコキシ(すなわち、−OR、式中、Rは本明細書の他の箇所で定義されるアルキルである)、シアノ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびNRから独立に選択されてもよく、ここでRおよびRは各々独立に水素、ヒドロキシおよびヒドロカルビルからなる群から選択され;Yは一般にB環上の5または6つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビルおよび置換ヘテロヒドロカルビルから独立に選択されてもよく、ただし、Yが5つの置換基を表す場合、置換基の少なくとも1つはB環の2個の炭素原子間に架橋を形成するものとし;Zは一般にC環上の3〜5つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、H、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル(たとえば、メトキシなどのアルコキシ)および置換ヘテロヒドロカルビル(たとえば、置換メトキシなどの置換アルコキシ)から独立に選択されてもよく、ただし、(i)Z置換基の少なくとも1つはC環上のC5位あるいはC7位のヒドロキシまたはアルコキシであり、(ii)Zが3つの置換基を表す場合、C環はその中に炭素−炭素二重結合を含むものとする。このプロセスは、フラン環が形成されるようにA環の−OR置換基の酸素とC環の炭素原子との間に結合を形成するのに好適なプロセス条件下で式(I)の化合物を超酸と接触させることを含む。
【0016】
一方、より詳細には、本開示は、下記反応スキーム2に示すように式(III)の化合物を式(IV)の化合物に変換するプロセスであって、式(III)の化合物を超酸と接触させることを含むプロセスを対象とする:
【0017】
【化4】

【0018】
式中、RおよびRは独立に水素、ハロゲン、アルコキシ(すなわち、−OR、式中、Rは本明細書の他の箇所で定義されるアルキルである)、シアノ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびNRからなる群から選択され、ここでRおよびRは各々独立に水素、ヒドロキシおよびヒドロカルビルからなる群から選択され;RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され;Rは水素、アシル、トリアルキルシリル、第三級アルキル、アリール置換メチルおよびアルコキシ−カルボニル(すなわち、ROCO−、式中、Rは本明細書の他の箇所で定義されるアルキルである)からなる群から選択され;RはC5またはC7の置換基であり、水素、アルキルおよびアシルから選択され;さらに、炭素−炭素二重結合(その中の破線の結合で示す)が任意に形成されてもよい。このプロセスでは、フラン環が形成されるようにA環の−OR置換基の酸素原子とC環の炭素原子(すなわちC5炭素原子)との間に結合を形成する。
【0019】
なおより詳細には、下記反応スキーム3Aに従い、本開示は、式VIの化合物、特に好ましい一実施形態では(+)−ヒドロコドンを調製するプロセスを対象とする。このプロセスは、式Vの構造を持つジヒドロシノメニンを超酸、好ましくはCFSOH、HBF、HPF、FSOH、HSbF、FP(O)(OH)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される超酸を含む溶液と接触させて式VIの化合物を得ることを含む:
【0020】
【化5】

【0021】
式中、R、R、R、RおよびRはすでに定義されたとおりであり、特定の一実施形態ではそれぞれH、H、CH、HおよびCHであり、さらに式中、ORはC5位またはC7位の置換基であり、RはHまたはCHである。このプロセスでは、フラン環が形成されるようにA環の−OR置換基の酸素原子とC環の炭素原子(すなわち、C5炭素原子)との間に結合が形成される。
【0022】
前述の代替の実施形態では、下記反応スキーム3Bに従い、本開示は、式VIIIの化合物を調製するプロセスを対象とする。このプロセスは、式VIIの化合物を超酸、好ましくはCFSOH、HBF、HPF、FSOH、HSbF、FP(O)(OH)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される超酸を含む溶液と接触させて式VIIIの化合物を得ることを含む:
【0023】
【化6】

【0024】
式中、R、R、R、RおよびRはすでに定義されたとおりであり、特定の一実施形態ではそれぞれH、H、CH、HおよびCHであり、さらに式中、ORはC5位またはC7位の置換基であり、RはHまたはCHである。このプロセスでは、フラン環が形成されるようにA環の−OR置換基の酸素原子とC環の炭素原子(すなわち、C5炭素原子)との間に結合が形成される。
【0025】
加えて、本開示はさらに前述のプロセスの1つまたは複数から得られる化合物も対象とする。特に、本開示はさらに本プロセスにより調製される(+)−ヒドロコドン化合物も対象とする。
【0026】
他の特徴および実施形態については前述からある程度明らかになるが、下記にさらにある程度記載される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示に従い下記反応スキーム1に詳述されるように、好適な反応条件下で超酸を用いると、縮合三環式環構造、特に式(I)の化合物を縮合ヘテロ四環式環構造、特に式(II)の化合物に変換するようにフラン閉環またはフラン環形成を達成できることが発見された:
【0028】
【化7】

【0029】
式中、Rは水素、または酸加水分解により除去できる酸素保護基、たとえばアシル、トリアルキルシリル、第三級アルキル、アリール置換メチルおよびアルコキシ−カルボニル(すなわち、ROCO−、式中、Rは本明細書の他の箇所で定義されるアルキルである)からなる群から選択され;Xは一般にA環上の3つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、水素、ハロゲン、アルコキシ(すなわち、−OR、式中、Rは本明細書の他の箇所で定義されるアルキルである)、シアノ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびNRから独立に選択されてもよく、ここでRおよびRは各々独立に水素、ヒドロキシおよびヒドロカルビルからなる群から選択され;Yは一般にB環上の5または6つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビルおよび置換ヘテロヒドロカルビルから独立に選択されてもよく、ただし、Yが5つの置換基を表す場合、置換基の少なくとも1つはB環の2個の炭素原子間に架橋を形成する(架橋部分はヘテロヒドロカルビル部分、特にアミノアルキル部分、さらにより詳細にはアミノエチル部分)ものとし;Zは一般にC環上の3〜5つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、H、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル(たとえば、メトキシなどのアルコキシ)および置換ヘテロヒドロカルビル(たとえば、置換メトキシ、エトキシなどの置換アルコキシ)から独立に選択されてもよく、ただし、(i)Z置換基の少なくとも1つはC環上のC5位あるいはC7位のヒドロキシまたはアルコキシ(たとえば、メトキシ、エトキシなど)であり、(ii)Zが3つの置換基を表す場合、C環はその中に炭素−炭素二重結合を含むものとする。。好都合なことに、こうしたフラン閉環反応は、従来または既存のプロセスに比べて温和な反応条件(たとえば、より低い反応温度)を使用して行うことができる。
【0030】
これに関連して本明細書で使用する場合、「超酸」という用語は、当該技術分野において公知の手段より測定された場合、100%硫酸よりも高い酸性度を有する酸をいう点に留意されたい。特に、超酸はハメットの酸度関数(H)が−12である100%硫酸より小さい(すなわち、より負の)(H)を有する酸として特徴付けられ得る。本明細書に記載のプロセスに有用な超酸の例として、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)、テトラフルオロホウ酸(HBF)、フルオロリン酸(HPF)、フルオロ硫酸(FSOH)およびフルオロアンチモン酸(HSbF)、フルオロリン酸(FP(O)(OH))、ならびにこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。これらの酸および他の超酸は、たとえばSigma−Aldrichから市販品として入手できる。これに加えて、あるいはこれとは別に、超酸は任意に、当該技術分野において公知の手段を用いて、たとえば水あるいはメタノールを所望の超酸の無水物、たとえば、やはり市販品として入手できるトリフルオロメタンスルホン酸無水物およびフルオロスルホン酸無水物などの試薬と反応させることにより系中で形成してもよい。
【0031】
本開示のプロセスは一般に、A環上の−OR置換基の酸素原子とC環上の炭素原子(C5炭素、本明細書の別の箇所でさらに詳述される)との間に結合を形成する上記反応スキーム1に詳述したように使用してもよいが、より好ましい実施形態では、本開示のプロセスは、下記反応スキーム2に示すように、式(III)の化合物を超酸と接触させて式(IV)の化合物を得ることを含んでもよい:
【0032】
【化8】

【0033】
式中、RおよびRは独立に水素、ハロゲン、アルコキシ(すなわち、−OR、式中、Rは本明細書の他の箇所で定義されるアルキルである)、シアノ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびNRからなる群から選択され、ここでRおよびRは各々独立に水素、ヒドロキシおよびヒドロカルビルからなる群から選択され;RおよびRは独立に水素、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され;Rは水素、アシル、トリアルキルシリル、第三級アルキル、アリール置換メチルおよびアルコキシ−カルボニル(すなわち、ROCO−、式中、Rは本明細書の他の箇所で定義されるアルキルである)からなる群から選択され;RはC5またはC7の置換基であり、水素、アルキルおよびアシルから選択される。特に好ましい実施形態は、RおよびRは独立に水素および低級アルキル(たとえば、C〜Cアルキル)からなる群から選択され;および/またはRは水素であり;および/またはRは水素またはヒドロカルビルであり、より詳細には水素または低級アルキル(たとえば、C〜Cアルキル)であり、なおより詳細には水素またはメチルであり;および/またはRは水素または置換もしくは非置換のヒドロカルビルであり、より詳細には水素または低級アルキル(たとえば、C〜Cアルキル)であり、なおより詳細には水素またはメチルであり;および/またはRは水素または置換もしくは非置換のヒドロカルビルであり、より詳細には水素または低級アルキル(たとえば、C〜Cアルキル)であり、なおより詳細にはメチルである実施形態を含む。この反応では、A環上の−OR置換基の酸素原子とC環の炭素原子、特にC環のC5炭素原子(下記の本明細書の別の箇所でさらに詳述される)との間に結合が形成される。
【0034】
これに関連して、特に好ましい一実施形態では、このプロセスにより式IVの化合物に炭素−炭素二重結合(その中の炭素原子C7とC8との間の破線の結合により示し、構造内の炭素原子の番号付けについては下記の本明細書の別の箇所でさらに詳述される)を形成することができる点に留意されたい。他の特に好ましい実施形態を下記表1に記載し、各R基に対応する置換基を示し、さらに各列は本開示の個々の実施形態を表す。
【0035】
【表1】

【0036】
加えて、さらに本開示に従い、本プロセスは、出発化合物に存在する1個または複数個のキラル炭素原子の立体化学が維持されていることを確認するために行ってもよい。たとえば、特に好ましい一実施形態では、下記反応スキーム3Aに示すように式(V)の化合物を超酸と接触させて式(VI)の化合物を形成してもよい:
【0037】
【化9】

【0038】
式中、R、R、R、RおよびRはすでに定義されたとおりであり、特定の一実施形態ではそれぞれH、H、CH、HおよびCHであり、さらに式中、ORはC5位またはC7位の置換基であり、RはHまたはCHである。一方、特に好ましい一実施形態では、式(VI)の化合物は(+)−ヒドロコドンであり;すなわち、特に好ましい一実施形態では、R、RおよびRはHであり、RおよびRはCHである。
【0039】
上記の実施形態の代替の実施形態では、下記反応スキーム3Aに示すように式(VII)の化合物を超酸と接触させて式(VIII)の化合物を形成してもよい:
【0040】
【化10】

【0041】
式中、R、R、R、RおよびRはすでに定義されたとおりであり、特定の一実施形態ではそれぞれH、H、CH、HおよびCHであり、さらに式中、ORはC5位またはC7位の置換基であり、RはHまたはCHである。
【0042】
上記のような本開示の反応の1つまたは複数は、出発化合物(すなわち、式I、III、VまたはVIIの化合物)および/または超酸および/または他の試薬が溶解もしくは懸濁された溶液または懸濁液中で溶媒を使用してあるいは使用せずに行ってもよい。ただし好ましくは、反応は溶媒、特に非プロトン性溶媒の存在下で行う。好適な溶媒として特にクロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、トルエン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルおよびアセトニトリル、ならびにこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。
【0043】
反応溶液または混合物は任意に上記で定義したような超酸以外に、超酸ではない1種または複数種の第2の酸を含んでもよい。そうした追加の酸の好適な例として、メタンスルホン酸(MeSOH)、リン酸(HPO)、トルエンスルホン酸(CHSOH)およびトリフルオロメタンカルボン酸(CFCOH)、ならびにこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。反応溶液は任意に、1種または複数種の無水物をさらに含んでもよい。本開示に従い使用してもよい無水物の好適な例として、メタンスルホン酸無水物、トルエンスルホン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物および五酸化リン(P)、ならびにこれらの組み合わせがあるが、これに限定されるものではない。
【0044】
本明細書に記載される開示に照らして、プロセス条件(たとえば、反応時間、温度および/または圧力、撹拌もしくは混合速度、出発成分または試薬の濃度もしくはモル比など)については、たとえばプロセスの効率または収率を最適化するため当業者が決定または最適化してもよい点に留意されたい。たとえば、1つまたはそれ以上の実施形態では、反応は典型的には、任意に混合または撹拌しながら少なくとも約1時間、約2時間、約4時間またはそれ以上、典型的には約10時間未満、約8時間未満またはさらに約6時間未満進行させ、反応の持続時間は、たとえば約1〜約10時間または約2〜約8時間または約4〜約6時間である。本プロセスは、この反応時間または持続時間をかけて約−20℃〜約100℃または約−10℃〜約75℃または約0℃〜約45または50℃の温度で行ってもよく、通常反応温度を高くする場合、短い反応時間と組み合わせて使用し、その逆も同様である。反応は、任意の好適な雰囲気および/または圧力で行ってもよく、たとえば反応には周囲雰囲気および/または標準大気圧を用いてもよい。あるいは、反応は、窒素雰囲気などの不活性雰囲気で行ってもよいし、および/または反応は加圧下または減圧(たとえば、真空)下で行ってもよい。
【0045】
前述のように、反応溶液または混合物中の各試薬または出発成分の開始濃度(たとえば、出発ジヒドロシノメニン化合物、超酸、任意に追加される酸または無水物などの出発化合物の濃度)、および/またはある成分と別の成分との比率は、所望の結果(たとえば、ヒドロコドン化合物などの縮合ヘテロ四環式化合物の収率または純度)を得るように、当該技術分野において公知の手段を用いて最適化してもよい。ただし、典型的には出発化合物(たとえば、出発ジヒドロシノメニン化合物)の濃度は、(反応溶液または混合物の総重量に対して)約1%〜約20%の範囲であってもよく、種々の実施形態では、約2%〜約18%または約5%〜約15%の範囲であってもよい。同様に、超酸の濃度は、(反応溶液または混合物の総重量に対して)約5%〜約90%の範囲であってもよく、種々の実施形態では、約10%〜約85%、約20%〜約80%またはさらに約30%〜約75%の範囲であってもよい。任意の第2の酸が存在する場合、その濃度は、(反応混合物または溶液の総重量に対して)約5%〜約90%、約10%〜約85%、約20%〜約80%;または約30%〜約75%の範囲であってもよく、および/または任意の無水物の濃度は、(反応混合物または溶液の総重量に対して)約1%〜約20%、約2%〜約18%または約5%〜約15%の範囲であってもよい。これに加えて、あるいはこれとは別に、出発化合物(たとえば、出発ジヒドロシノメニン化合物)と超酸とのモル比は、約1:5〜約1:200の範囲であってもよく、種々の実施形態では、約1:10〜約1:150または約1:25〜約1:100の範囲であってもよく、一方代替の実施形態では、約1:100〜約1:200、約1:50〜約1:150mまたは約1:10〜約1:50の範囲であってもよいし、あるいは他の任意の好適なモル比でもよい。
【0046】
以下の表2は、様々な濃度の試薬を用いて以下の実施例に記載されているようなフラン閉環反応により2H−シノメニンから生成された(+)−ヒドロコドンの粗収率(パーセント)および純度(パーセント)に関するデータを示す。表2の1列目は閉環反応を行った反応条件を示し、この欄の数字は、以下に記載する実施例の1つに対応する。このため反応条件は、対応する実施例に記載された反応条件と一致するものであるが、出発材料に関する当量については2列目、3列目および4列目に示すとおりである。2列目、3列目および4列目は、個々の反応に使用した出発材料の当量を示し、当量(eq)は出発材料、たとえば2H−シノメニンに対する個々の試薬のモル/モル比を意味する。5列目および6列目はそれぞれ、このように生成された(+)−ヒドロコドンの粗収率(パーセント)および純度(パーセント)を示す。
【0047】
【表2】

【0048】
これに関連して、所望の反応生成物の収率および/または純度は、たとえば、プロセス条件(たとえば、反応時間、温度、試薬の濃度または比率など)を最適化することにより改善または向上し得る点に留意されたい。したがって、表2に示すデータは、狭義に解釈してはならない。たとえば、種々の実施形態では、所望の反応生成物の収率は反応混合物または溶液の総重量に対して約15%〜約90%の範囲であってもよく、特に、(反応混合物または溶液の総重量に対して)約25%〜約85%または約40%〜約75%の範囲であってもよい。これに加えて、あるいはこれとは別に、反応生成物は、生成物の純度が最終的に少なくとも約60%になるように、任意に純度が少なくとも約70%またはさらに約80%になるように反応混合物または溶液から単離してもよい。
【0049】
前述のように、上記に詳述した反応に好適な出発材料は市販品として入手してもよいし、あるいはこれとは別に当該技術分野において公知の手段を用いて調製してもよい。たとえば、式(I)、(III)、(V)または(VII)における好適な出発化合物は、たとえばAldrichから市販品として入手してもよいし、またはAldrichおよび/または他の化学会社から入手した材料から合成してもよい。例示的な出発化合物として、以下があるが、これに限定されるものではない:
【0050】
【化11】

【0051】
これらの各出発化合物は、本開示のプロセスに従い、縮合四環式の環構造を持つ、特にC4炭素原子に結合した酸素原子をC5炭素原子に連結するフラン環(本明細書の別の箇所で詳述される)を持つ所望の最終生成物または化合物に効率的に変換することができる。たとえば、種々の実施形態では、本開示のプロセスを用いて以下の例示的な変換(すなわち、閉環反応)を行ってもよい:
【0052】
【化12】

【0053】
本開示の反応が終了したら(たとえば、所望の反応持続時間または期間の終了など当該技術分野において公知の手段により、および/または反応生成物の存在または出発成分が存在しないことを検出する従来のクロマトグラフィー法など一般的な分析法を使用して判定される)、反応は、やはり当該技術分野において公知の手段を用いて停止しても、またはクエンチしてもよい(たとえば、任意のヘッドソースから反応混合物または溶液を取り出すこと、反応混合物の急速冷却および/または水の導入により)。反応が終了したならば、反応生成物は、当該技術分野において公知の手段を用いて反応混合物または溶液から単離してもよい。たとえば、特定の一実施形態では、適切な種類および量の塩基を導入して反応混合物のpHを調整してもよく(たとえば、約8〜約14または約8〜約12または約8〜約10の範囲の中性または塩基性pHを得るため)、次いでそこから、溶媒抽出および/または溶媒の除去(たとえば、蒸発)により反応生成物を単離してもよい。生成物が単離されたならば、必要に応じてさらに精製法を行ってもよく(たとえば、再結晶化および/または適切な溶媒による洗浄)、その後乾燥させる。
【0054】
さらに前述のように、本開示の反応生成物である縮合ヘテロ四環式化合物(たとえば、ヒドロコドン化合物)は直接使用してもよいし、あるいはこれとは別に中間反応生成物として使用してもよく、したがってさらに当該技術分野において公知の反応技法を行い別の生成物(たとえば、別のアヘン剤、特に非天然型または自然に発生しない(+)−アヘン剤)を調製してもよい。たとえば(+)−ヒドロコドンは、BBrと反応させて(+)−ヒドロモルホンに変換することができる。(+)−ヒドロモルホンは、ヒドロモルホンのモルヒネへの変換について報告した方法により、さらに(+)−モルヒネに変換することもできる。さらに、本明細書に記載の化合物のいずれかの薬学的に許容される塩(たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)も本開示の範囲内にある。
【0055】
本明細書に記載の化合物は、偏光の回転方向との関連で立体化学配置が(−)配置または(+)配置になるいくつかの炭素原子を持つことがある。さらに詳しくは、本明細書に記載される化合物は、R配置にもまたはS配置にもなり得るいくつかのキラル中心を持つことがある。考察しやすくするため、本明細書に参照する核ヘテロ四環式構造の環原子には以下とおり番号を付ける:
【0056】
【化13】

【0057】
上記の構造のうち、炭素13、14および9がキラル中心である。したがって、上述のような式I、IIIおよびVの出発化合物など上記の構造を持つ化合物の配置は、C13、C14およびC9に対してそれぞれRRR、RRS、RSR、RSS、SRR、SRS、SSRまたはSSSとなり得る。ただし、C15原子およびC16原子はどちらも分子のα面または分子のβ面のどちらかにある。この文脈におけるいくつかの実施形態では、C13、C14およびC9炭素の立体化学は、開示の範囲から逸脱しない範囲で変化することがある。ある種の実施形態では、こうした式の出発材料の化合物は、(+)エナンチオマーでも、または(−)エナンチオマーでもよい。
【0058】
上記のような式II、IVおよびVIの生成物化合物の場合、炭素5、13、14および9がキラル中心となり得る(たとえば、下記に示す構造である)。C5、C13、C14およびC9炭素の立体化学は、開示の範囲から逸脱しない範囲で変化することがある。たとえば、その立体化学は、C5、C13、C14およびC9に対してそれぞれRRRR、RRSR、RRRS、RRSS、RSRR、RSSR、RSRS、RSSS、SRRR、SRSR、SRRS、SRSS、SSRR、SSSR、SSRSまたはSSSSとなり得る。ただし、C15原子およびC16原子はどちらも分子のα面または分子のβ面のどちらかにある。
【0059】
【化14】

【0060】
縮合ヘテロ四環式化合物を最終生成物として使用するか、または別のアヘン剤の調製における中間体として使用するかに関わらず、所望の反応生成物を得たならば、当該技術分野において公知の手段を用いて製剤化して投与するための所望の医薬製剤または組成物を得てもよい点に留意されたい。
【0061】
定義
本明細書で使用する場合、以下の用語および語句は、以下の一般的な意味を持つ。
【0062】
「縮合三環式」または「縮合四環式」という用語は一般に、その中にそれぞれ3つまたは4つの環を含む化合物をいい、さらに式中、化合物の各環は、他の環の1つと2つの環原子(たとえば、下記の破線の丸で示す炭素原子またはヘテロ原子)を共有する。
【0063】
【化15】

【0064】
加えて、「縮合ヘテロ四環式」という用語は一般に、4つの縮合環を含み、環の少なくとも1つが環原子としてヘテロ原子を含む構造をいう。
【0065】
単独でまたは別の基の一部としての「アリール」という用語は、本明細書で使用する場合、任意に置換された同素環式芳香族基、好ましくは環の部分に6〜12個の炭素を含む単環式基または二環式基を意味し、たとえばフェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルがある。フェニルおよび置換フェニルがより好ましいアリール基である。
【0066】
単独でまたは別の基の一部としての「ハロゲン」または「ハロ」という用語は一般に、本明細書で使用する場合、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素をいう。
【0067】
本明細書で使用する場合、単独でまたは別の基の一部としての「アシル」という用語は一般に、有機カルボン酸の−COOH基からヒドロキシ基を取り除いて形成される部分、たとえばRC(O)−をいい、ここでRはヒドロカルビルまたはヘテロヒドロカルビルでも(たとえばヒドロカルビル−S、ヒドロカルビル−N、ヒドロカルビル−Oなど)、シクロ(cylo)またはヘテロシクロでもよい。
【0068】
「ヒドロカルビル」または「炭化水素」という用語は、本明細書で使用する場合、炭素元素および水素元素のみからなる有機化合物またはラジカルをいう。こうした部分としてアルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分およびアリール部分が挙げられる。こうした部分としてさらに、アルカリール、アルケナリールおよびアルキナリールなど他の脂肪族または環状炭化水素基で置換されているアルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分およびアリール部分が挙げられる。他に記載がない限り、こうした部分は1〜20個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0069】
「置換ヒドロカルビル」または「ヘテロヒドロカルビル」という用語は、少なくとも1つの他の部分で置換されているヒドロカルビル部分をいい、特に、炭素鎖原子が窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄またはハロゲン原子などのヘテロ原子で置換されている部分など炭素以外の他の1個の原子で置換されているヒドロカルビル部分をいう。こうした置換基として、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルが挙げられる。
【0070】
「ヘテロシクロ」または「複素環式」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つの環内に少なくとも1個のヘテロ原子を持ち、かつ好ましくは各環内に5または6個の原子を持ち、任意に置換されている、完全飽和または不飽和で単環式または二環式の芳香族基または非芳香族基をいう。
【0071】
「トリアルキルシリル」という用語は、3つのR基それぞれが独立にアルキルであるシリル基RSi−の誘導体をいう。
【0072】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、主鎖(principle chain)内に最大20個の炭素原子を持つ基をいうが、好ましくは、主鎖内に1〜10個、1〜8個またはさらに1〜4個の炭素原子を含む低級アルキル鎖をいう。これらの鎖は直鎖でも、分枝鎖でも、または環式でもよく、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、アリル、ベンジル、ヘキシルおよび同種のものがある。同様に、「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、本明細書で使用する場合、主鎖に最大20個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(アルケニル)または三重結合(アルキニル)とを含む基をいうが、好ましくは、主鎖に2〜10個、2〜8個またはさらに2〜4個の炭素原子を含む低級アルキル鎖をいう。こうした鎖は、直鎖でも、分枝鎖でも、または環状でもよく、たとえばエテニル、エチニル、プロペニル、プロピニルなどがある。
【0073】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、主鎖において酸素原子と組み合わされた、上記に定義されるアルキル基(たとえば主鎖内に1〜10個、1〜8個またはさらに1〜4個の炭素原子と、少なくとも1個の酸素原子とを持つ鎖で、たとえばその基と対象の分子の残部との結合点の役割を果たす鎖)をいう。
【実施例】
【0074】
以下に、本開示をさらに説明するため非限定的な例を記載する。
【0075】
(実施例1)
トリフルオロメタンスルホン酸を用いた閉環
1.1グラムのジヒドロシノメニンを5mlのクロロホルムに溶かした溶液を、氷浴中で冷却した5グラムのトリフルオロメタンスルホン酸および7mlのクロロホルムの混合物に滴下して加えた。添加終了後、氷浴を除去し、反応溶液を室温まで昇温した。5時間後、連続的に撹拌しながら、反応溶液を、撹拌している氷水に注いだ。2.5Mの水酸化カリウム水溶液を添加して、得られた混合物のpHを12に調節した。次いで生成物をジクロロメタン(3×50ml)で抽出した。合わせた有機相を2.5Mの水酸化カリウム水溶液(3×50ml)および水(1×50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させてから、濾過し、蒸発乾固して70%(+)−ヒドロコドンを含む7gの淡黄色の固体を得た。
【0076】
(実施例2)
室温でトリフルオロメタンスルホン酸を用いた閉環
11グラムのジヒドロシノメニンを50mlのクロロホルムに溶かした溶液を、50グラムのトリフルオロメタンスルホン酸と70mlのクロロホルムとの混合物に室温で滴下して加えた。この反応混合物を室温で5時間撹拌し、次いで撹拌している氷水に注いだ。2.5Mの水酸化カリウムで、得られた混合物のpHを12に調節した。この生成物をジクロロメタン(3×50ml)で抽出した。合わせた有機相を2.5Mの水酸化カリウム水溶液(2×30ml)および水(1×50ml)で洗浄してから、蒸発乾固した。次いで、こうして得られた粗材料を、イソプロパノール、水および酢酸の混合物に溶解させた。濃縮アンモニア溶液でpHを12調整して、この溶液から生成物を沈殿させた。この生成物を濾過し、60℃で一晩真空乾燥させた。このプロセスにより、85%(+)−ヒドロコドンを含む6.2グラムの淡黄色の固体を得た。
【0077】
(実施例3)
トリフルオロメタンスルホン酸とトリフルオロメタンスルホン酸無水物との混合物を用いた閉環
5グラムのトリフルオロメタンスルホン酸および1.12mlのトリフルオロメタンスルホン酸無水物の溶液を、86℃の水浴で15分間加熱した。室温まで冷却後、7mlのクロロホルムを加えた。この混合物に、1.1gのジヒドロシノメニンを5mlのクロロホルムに溶かした溶液を滴下して加えた。得られた反応混合物を室温で5時間撹拌し、次いで氷水に注いだ。2.5Mの水酸化カリウム水溶液で、得られた混合物のpHを12に調節した。反応生成物をジクロロメタン(3×50ml)で抽出した。合わせた有機相を2.5Mの水酸化カリウム水溶液(2×30ml)および水(1×50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させてから、濾過し、蒸発乾固して51%(+)−ヒドロコドンを含む0.51gの淡黄色の固体を得た。
【0078】
(実施例4)
トリフルオロメタンスルホン酸とメタンスルホン酸との混合物を用いた閉環
1.1グラムのジヒドロシノメニンを5mlのクロロホルムに溶かした溶液を、2.5グラムのトリフルオロメタンスルホン酸、1.08mlのメタンスルホン酸および7mlのクロロホルムの混合物に室温で滴下して加えた。この混合物を室温で5時間撹拌し、次いで撹拌している氷水に注いだ。2.5Mの水酸化カリウムで、得られた混合物のpHを14に調節した。反応生成物をジクロロメタン(3×50ml)で抽出した。合わせた有機相を2.5Mの水酸化カリウム水溶液(2×30ml)および水(1×50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させてから、濾過し、蒸発乾固して(+)−ヒドロコドンを含む緑黄色の固体を得た。
【0079】
本開示またはその実施形態(単数または複数)の要素を紹介する際、冠詞「ある、1つの(a)」、「ある、1つの(an)」、「上記(the)」および「前記(said)」は、1つまたは複数の要素が存在することを意味するものとする。「を含む(comprising)」、「を含む(including)」および「を持つ(having)」という用語は、包括的であることを意図しており、記載した要素以外に別の要素が存在し得ることを意味する。
【0080】
上記に鑑み、開示のいくつかの特徴または目的が達成され、さらに他の有利な結果も達成されることが理解されるであろう。
【0081】
上記の組成物、生成物および方法(試薬の濃度、プロセス条件など)については本開示の範囲から逸脱しない範囲で様々な変更をなし得るため、上記の説明に含まれる事項はすべて例示であり、限定的な意味に解釈してはならないものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を持つ化合物を式(II)の構造を持つ化合物に変換するフラン閉環反応を行うプロセスであって:
【化16】


式中、
Rは水素、アシル、トリアルキルシリル、第三級アルキル、アリール置換メチルおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択され;
XはA環上の3つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、独立に水素、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびNRから選択され、ここでRおよびRは各々独立に水素、ヒドロキシおよびヒドロカルビルからなる群から選択され;
YはB環上の5または6つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、独立に水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビルおよび置換ヘテロヒドロカルビルから選択され、ただし、Yが5つの置換基を表す場合、前記置換基の少なくとも1つはB環の2個の炭素原子間に架橋を形成するものとし;
ZはC環上の3〜5つの置換基を表し、同一でも異なっていてもよく、H、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビルおよび置換ヘテロヒドロカルビルから独立に選択されてもよく、ただし、(i)前記Z置換基の少なくとも1つはC環上のC5位あるいはC7位のヒドロキシまたはアルコキシであり、(ii)Zは3つの置換基を表す場合、C環は環内に炭素−炭素二重結合を含むものとし;
前記プロセスはフラン環が形成されるようにA環の−OR置換基の酸素とC環の炭素原子との間に結合が形成されるのに好適なプロセス条件下で式(I)の前記化合物を超酸と接触させることを含む
プロセス。
【請求項2】
式(III)の化合物を式(IV)の化合物に変換するフラン閉環反応を行うプロセスであって:
【化17】


式中、
およびRは独立に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびNRからなる群から選択され、ここでRおよびRは各々独立に水素、ヒドロキシおよびヒドロカルビルからなる群から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され;
は水素、アシル、トリアルキルシリル、第三級アルキル、アリール置換メチルおよびアルコキシ−カルボニルからなる群から選択され;
はC5またはC7の置換基であり、水素、アルキルおよびアシルから選択され;
炭素原子C7とC8との間の破線の結合は炭素−炭素二重結合が任意に存在することを示し;
前記プロセスはフラン環を形成するためA環の−OR置換基の酸素原子とC環の炭素原子との間に結合を形成するのに好適なプロセス条件下で式(III)の前記化合物を超酸と接触させることを含む
プロセス。
【請求項3】
前記超酸はCFSOH(トリフルオロメタンスルホン酸)、HBF(テトラフルオロホウ酸)、HPF(フルオロリン酸)、FSOH(フルオロ硫酸)、HSbF(フルオロアンチモン酸)、FP(O)(OH)(フルオロリン酸)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記超酸および式(I)または(III)の前記化合物は、非プロトン性溶媒をさらに含む反応混合物中で接触させられる、請求項1、2または3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記非プロトン性溶媒はクロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、トルエン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記超酸は系中で形成される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記超酸は水またはメタノールを前記超酸の無水物と反応させることにより系中で形成される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスは式(I)または(III)の前記化合物をそれぞれ超酸ではない酸と接触させることをさらに含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項9】
超酸ではない前記酸はMeSOH、CHSOH、HPOおよびCFCOHならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
、RおよびRは水素である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項11】
およびRはメチルである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
およびRは水素である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項13】
はメチルであり、Rは水素である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項14】
およびRは水素であり;Rは臭素であり;R、RおよびRはメチルである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項15】
、RおよびRは水素であり;RおよびRはメチルであり;Rはシクロプロピルメチルである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項16】
、R、RおよびRは水素であり、RおよびRはメチルである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項17】
、R、RおよびRは水素であり;Rはメチルであり;Rはヒドロキシである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項18】
、RおよびRは水素であり、R、RおよびRはメチルである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項19】
式(III)の前記化合物は(+)−ヒドロコドンである、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
式(III)の前記化合物および前記超酸から得られる混合物は約2〜約8時間または約4〜約6時間撹拌される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項21】
式(III)の前記化合物および前記超酸から得られる混合物は約−20℃〜約100℃または約0℃〜約45℃の温度で維持される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項22】
式IIIの前記化合物および式IVの前記化合物は以下の構造を持ち、式中、RはHまたはCHである、請求項2に記載のプロセス:
【化18】



【請求項23】
式IIIの前記化合物および式IVの前記化合物は以下の構造を持ち、式中、RはHまたはCHである、請求項2に記載のプロセス:
【化19】



【請求項24】
式(VI)の化合物を作製するプロセスであって:
【化20】


式中、
およびRは独立に水素、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルおよびNRからなる群から選択され、式中、RおよびRは各々独立に水素 ヒドロキシおよびヒドロカルビルからなる群から選択され;
およびRは独立に水素、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され;
は水素、アシル、トリアルキルシリル、第三級アルキル、アリール置換メチルおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択され;
はC5またはC7の置換基であり、HまたはCHから選択され;
前記プロセスはフラン環を形成するためA環の−OR置換基の酸素原子とC環の炭素原子との間に結合を形成するのに好適なプロセス条件下で式(V)の化合物を超酸と接触させることを含む
プロセス。
【請求項25】
、RおよびRはHであり、RおよびRはCHである、請求項24に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−510516(P2012−510516A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539611(P2011−539611)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/066067
【国際公開番号】WO2010/065441
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(595181003)マリンクロッド エルエルシー (203)
【Fターム(参考)】