説明

超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法

【課題】試験時の熱収縮によりケーブルコアが損傷することを防止できる超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法、及びドラムを提供する。
【解決手段】試験対象として、超電導導体層を具えるケーブルコア100であって、ドラム10に巻き取られたものを準備する。冷却容器1に上記試験対象を収納して液体冷媒2Lを充填し、超電導導体層を液体冷媒2Lにより冷却して超電導状態に維持しながら、コア100の全長に亘って特性を調べる。ドラム10の巻胴11は、コア100の構成部材のうち、コア100に作用する張力を分担する主要部材(例えば、フォーマ)の構成材料(例えば、銅)よりも熱収縮率が大きい材料(例えば、アルミニウムやその合金)から構成されている。巻胴11の熱収縮率がコア100の特定の構成部材よりも大きいことで、コア100が熱収縮しても巻胴11を締め付け難く、コア100の損傷を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの主要構成部材であるケーブルコアの試験方法、及びドラムに関するものである。特に、試験時の熱収縮によりケーブルコアが損傷することを防止できる超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力供給路を構成する電力ケーブルとして、超電導ケーブルが開発されつつある。超電導ケーブルは、代表的には、超電導導体層を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納すると共に、液体窒素といった冷媒が満たされる断熱管とを具える。
【0003】
OFケーブルやCVケーブルなどの常電導ケーブルでは、その電気的特性を調べるにあたり、工場出荷前、全長を対象とする全長試験(枠試験)が行われている。一方、超電導ケーブルでは、その電気的特性を調べるにあたり、超電導導体層を超電導状態にするために冷却する必要がある。従って、仮に、超電導ケーブルの全長試験を行う場合、細い断熱管内に冷媒を充填しなければならず時間がかかる。また、超電導ケーブルをドラムに巻回した状態で冷却すると、超電導ケーブルの曲げ径がドラムの巻胴の径に規制される。すると、断熱管内のケーブルコアに過大な機械的応力が作用して、当該コアを損傷する恐れがある(特許文献1の明細書0011)。そのため、超電導ケーブルでは、短いサンプルを利用した抜き取り試験が行われている。一方、特許文献1では、断熱管内に気体を充填して、常温下で、超電導ケーブルの全長試験を行うことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4683371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超電導ケーブルに用いられるケーブルコアに対して、全長試験を行うことが望まれている。
【0006】
特許文献1に提案される全長試験では、ケーブルコアが断熱管内に収納された状態の超電導ケーブルを対象としている。超電導ケーブルの電気的特性は、実質的にケーブルコアの特性であることから、断熱管内への収納前においてケーブルコア自体の特性が良くなければ、このケーブルコアを用いた超電導ケーブルの全長試験の結果も当然に良くない。また、ケーブルコア単体で出荷する場合には、出荷試験の対象はケーブルコアになる。従って、断熱管に収納する前のケーブルコアについて全長試験を行うことが望まれる。
【0007】
しかし、従来、超電導ケーブル用のケーブルコアに対して、適切な全長試験方法が提案されていない。
【0008】
例えば、超電導ケーブルに利用されるケーブルコアは、長尺であることから、取り扱い易いように、ケーブルコアをドラムに巻き取っておき、この状態でドラムと共に冷却し、特性を調べることが考えられる。この場合、ドラムに巻き取ったケーブルコアを容器に収納し、この容器に冷媒を充填すればよく、例えば、断熱管内に冷媒を充填して循環冷却する場合に比較して、簡易な冷却設備で試験を実施できる。しかし、ケーブルコアをドラムに巻回した状態で冷却すると、ケーブルコアは、その巻き径が小さくなるように、つまり、ドラムの巻胴を締め付けるように熱収縮する。この収縮により、ケーブルコアの少なくとも一部は、巻胴に強く押し付けられ、超電導導体層といった構成部材を損傷する恐れがある。
【0009】
そこで、本発明の目的の一つは、試験時のケーブルコアの損傷を抑制することができる超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記試験方法の実施に適したドラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ドラムを特定の材質とすることで、上記目的を達成する。
【0011】
本発明の超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法は、超電導ケーブルの主要構成部材であるケーブルコアをその全長に亘って特性を調べる試験方法に係るものであり、以下の準備工程と、検査工程とを具える。
準備工程:試験対象として、超電導導体層を具えるケーブルコアであって、ドラムに巻き取られたものを準備する工程。
検査工程:冷却容器に上記試験対象を収納して冷媒を充填し、上記超電導導体層を上記冷媒により冷却して超電導状態に維持しながら、上記ケーブルコアの全長の特性を調べる工程。
そして、本発明試験方法では、以下のドラム(本発明ドラム)を用いる。本発明のドラムは、超電導ケーブルの構成部材を巻き取るドラムであって、上記構成部材が超電導導体層を具えるケーブルコアである。このドラムの巻胴は、上記ケーブルコアの構成部材のうち、当該ケーブルコアに作用する張力を分担する主要部材の構成材料よりも熱収縮率が大きい材料から構成されている。
【0012】
本発明試験方法では、特定の材質からなる巻胴を具えるドラム(本発明ドラム)を利用するため、試験にあたり冷却すると、ケーブルコアが熱収縮するものの、巻胴の熱収縮率が当該コアにおける張力を分担する主要部材(抗張力材として機能する部材)よりも大きく、巻胴の径が冷却前よりも十分に小さくなる。そのため、ケーブルコアは、熱収縮しても、当該コアがつくるターンの内周面と巻胴との間に隙間が生じ、巻胴に押し付けられ難く、或いは実質的に押し付けられない。従って、本発明試験方法や本発明ドラムを利用した全長試験では、試験時の冷却による熱収縮によってケーブルコアが損傷することを防止して、健全な状態のケーブルコアの全長試験を行うことができる。
【0013】
本発明の一形態として、上記張力を分担する主要部材が、常電導材料から構成され、上記超電導導体層を支持するフォーマである形態が挙げられる。
【0014】
超電導ケーブルに具える超電導導体層が、酸化物超電導相を具える線材を巻回して形成された形態では、当該線材を支持するために、ケーブルコアは、代表的にはフォーマを具える。このフォーマを事故電流の通電路に利用する場合、フォーマは、代表的には銅などの常電導材料で構成する。この場合、ケーブルコアの熱収縮量は、実質的にフォーマの熱収縮量に依存する。従って、ドラムの巻胴が、フォーマよりも熱収縮率が大きな材料により構成された上記形態は、当該巻胴が十分に収縮して、ケーブルコアの損傷を抑制できる。
【0015】
本発明の一形態として、上記張力を分担する主要部材が、銅又は銅合金から構成され、上記巻胴が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、及びマグネシウム合金から選択される1種から構成された形態が挙げられる。
【0016】
アルミニウム(線膨張率:0.237×10−4/K)やマグネシウム(線膨張率:0.271×10−4/K)、その合金は、銅(線膨張率:0.162×10−4/K)やその合金よりも、線膨張率が十分に大きく、熱収縮率が十分に大きいと言える。従って、上記形態は、ドラムの巻胴が十分に収縮して、ケーブルコアの損傷を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法は、試験時、ケーブルコアの損傷を防止して、ケーブコアの全長の電気的特性を精度よく調べられる。本発明ドラムは、ケーブルコアと同時に冷却された際、ケーブルコアの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法を説明する説明図である。
【図2】ケーブルコアを冷却容器に収納する手順を説明する説明図である。
【図3】超電導ケーブル用ケーブルコアを模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図において同一符号は、同一名称物を示す。まず、試験対象である超電導ケーブル用ケーブルコア、このケーブルコアを巻き取るドラム、試験対象を収納する冷却容器を説明し、次に、上記ケーブルコアの試験方法を説明する。
【0020】
[ケーブルコア]
図3を参照してケーブルコアを説明する。ケーブルコア100は、例えば、中心から順にフォーマ101、超電導導体層102、電気絶縁層103、外側超電導層104、保護層105を具える。
【0021】
フォーマ101は、超電導導体層102の支持部材であり、ケーブルコア100の抗張力材としても機能する。また、フォーマ101は、短絡や地絡などの事故時に事故電流を分流する通電路に利用される。通電路に利用する場合、フォーマ101は、銅やアルミニウム、その合金などの常電導材料からなる中実体や中空体(管体)が好適に利用できる。より具体的には、例えば、ポリビニルホルマール(PVF)やエナメルなどの絶縁被覆を具える銅線を複数本撚り合わせた撚り線材が挙げられる。フォーマ101の外周にクラフト紙やPPLP(住友電気工業株式会社 登録商標)といった絶縁テープ材を巻回してクッション層を設けることができる。
【0022】
超電導導体層102及び外側超電導層104は、超電導線材を螺旋状に巻回した線材層を単層又は多層に具える形態が挙げられる。超電導線材は、酸化物超電導相を具える線材、具体的には、REBa2Cu3Ox(RE123:REは希土類元素)、例えばYBCO,HoBCO,GdBCOといった希土類系酸化物超電導相を具える薄膜線材や、Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δ(Bi2223)といったBi系酸化物超電導相を具え、Agやその合金を金属マトリクスとする高温超電導線材がある。多層構造の場合、各線材層の層間にクラフト紙などの絶縁紙を巻回した層間絶縁層を形成することができる。超電導導体層102の直上にカーボン紙などを巻回して内側半導電層を設けることができる。
【0023】
外側超電導層104は、例えば、交流送電の場合、磁気シールド、直流送電の場合、帰路導体や中性線として利用することができる。超電導導体層102及び外側超電導層104を構成する超電導線材の数や線材層の数は、所望の電力供給容量に応じて設計される。
【0024】
電気絶縁層103は、超電導導体層102(或いは内側半導電層)の上に、クラフト紙やPPLP(登録商標)といった半合成絶縁紙などの絶縁テープ材を巻回することで形成することができる。電気絶縁層103の直上に、カーボン紙などを巻回して外側半導電層を設けることができる。
【0025】
外側超電導層104の外周に、上述した事故電流の誘導電流の通電路に利用する常電導シールド層を設けることができる。常電導シールド層は、例えば、銅といった常電導材料からなる金属テープ材を巻回して形成することができる。
【0026】
外側超電導層104(或いは常電導シールド層)の外周に、クラフト紙やPPLP(登録商標)といった半合成絶縁紙などの絶縁テープ材を巻回して、外側超電導層104を機械的に保護するための保護層105を設けることができる。
【0027】
上述のケーブルコア100は、超電導ケーブルの構成部材に利用される。超電導ケーブルは、1条又は複数条(代表的には3条)のコア100を一つの断熱管(図示せず)に収納して製造する。断熱管は、内管と外管との二重管からなり、内管と外管との間が真空引きされた真空断熱構造のものが代表的である。超電導ケーブルは、断熱管内に冷媒(例えば、液体窒素や液体ヘリウムといった液体冷媒)が充填され、この冷媒により超電導導体層102や外側超電導層104を冷却して超電導状態として、電力供給路に利用される。
【0028】
全長試験にあたり、ケーブルコア100の各端部にはそれぞれ、図1に示すように接続部200を介してリード電極210が取り付けられる。リード電極210及び接続部200は、通電又は課電が可能なように、銅や銅合金といった適宜な導電性材料からなる適宜な形状、長さのものを利用できる。
【0029】
[ドラム]
図1,図2を参照して、ケーブルコア100を巻き取るドラム10を説明する。ドラム10は、円筒状の巻胴11と、巻胴11の各周縁からそれぞれ、巻胴11の外方に突出する円環状の鍔部12A(図2),12Bとを具える。
【0030】
本発明では、ドラム10において少なくとも巻胴11が特定の材質から構成されていることを最大の特徴とする。具体的には、巻胴11は、ケーブルコア100の構成部材のうち、コア100に作用する張力を分担する主要部材:抗張力材の構成材料よりも熱収縮率が大きい材料から構成されている。
【0031】
上述したケーブルコア100の構成部材のうち、抗張力材はフォーマ101である。従って、ドラム10の巻胴11は、フォーマ101の構成材料:銅や銅合金よりも熱収縮率が十分に大きい材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金から構成されるものが挙げられる。
【0032】
アルミニウムやマグネシウム、及びその合金は、熱収縮率がフォーマ101の構成材料(銅など)よりも大きい他、(1)軽量であり、試験対象の軽量化を図ることができる、(2)非磁性体であるため、例えば、通電電流値が大きな試験を行う場合でもケーブルコアがつくる磁場を乱し難い、といった利点がある。その他、アルミニウムやその合金は、耐食性に優れ、マグネシウムやその合金は、構造用金属の中で比強度・比剛性が最も高く、高強度なドラムとすることができる。
【0033】
巻胴11と鍔部12A,12Bとは、代表的には、同じ材質とする。後述するように一方の鍔部12Aが着脱可能な形態では、この鍔部12Aは、巻胴11と異なる材質でもよい。
【0034】
巻胴11は、上述のように円筒体であって、その外周面が平滑な面から構成された形態が挙げられる。その他、巻胴11は、円筒体の外周面にケーブルコア100がつくるターンを整列する整列溝や整列用仕切りを具える形態とすると、コア100を巻き取り易い。巻胴11は、中空の筒体とすることで、軽量である上に、冷却容器1に収納した後、巻胴11の内周空間に冷媒を充填可能なため、コア100を効率よく冷却できる。巻胴11の外径(=鍔部12A,12Bの内径+巻胴11の厚さ×2)は、コア100の許容曲げ半径に応じて選択するとよい。また、巻胴11の軸方向の長さは、コア100の長さに応じて選択するとよい。
【0035】
鍔部12A,12Bはいずれも、上述のように円環体が代表的である。鍔部12A,12Bの外径は、ケーブルコア100がつくるターンの外径よりも大きいと、当該ターンの端面を鍔部12A,12Bによって保持でき、巻き崩れを防止し易い。
【0036】
鍔部12A,12Bの少なくとも一方を、複数の円弧片を組み合わせて円環状に配置される形態、或いは円環体の一部に切欠を具える形態とすることができる。前者の場合、巻胴11の周方向の一部に鍔部が設けられていない形態とすることができる。この鍔部が存在しない間隙部分や上述の切欠部分から、ケーブルコア100の端部やリード電極210を引き出すことができる。
【0037】
鍔部12A,12Bは、巻胴11に一体に保持された形態が代表的である。その他、図1,図2(C)などに示すように、一方の鍔部12Aが巻胴11に対して着脱可能な形態とすることができる。この場合、一方の鍔部12Aを取り外した状態で試験対象を冷却容器1に収納することができる。鍔部12Aが無いことで、リード電極210が鍔部12Aに接触することが無く、鍔部12Aとの接触を回避するために、リード電極210を長くして迂回する必要がない。
【0038】
一方の鍔部12Aを取り外した場合、鍔部12A,12Bによる挟持状態が解放されて、ケーブルコア100が巻き崩れる恐れがある。例えば、図2(C)に示すように、巻胴11に巻回されたコア100の外周に、巻き崩れを防止する形状保持部材13を他方の鍔部12Bに取り付けることができる。形状保持部材13は、例えば、複数の棒状体や帯状体、円弧片などの分割部材とし、巻回されたコア100の外周を囲むようにこれら分割部材を円環状に、分割部材間に適宜間隔をあけて配置する形態が挙げられる。他方の鍔部12Bには、形状保持部材13の取付部を設けておく。例えば、鍔部12Bに上記分割部材が挿入される穴又は溝を設けておき、分割部材には、上記穴や溝に挿入したときに当たり止めとなるフランジ部を設けておき、このフランジ部と鍔部12Bとをボルトなどで固定することが挙げられる。形状保持部材13も冷媒に浸漬されることから、その構成材料は、冷媒温度での耐性に優れる材質、例えば、ステンレス鋼などの高強度材料が挙げられる。また、形状保持部材13は、コア100における冷却前の外径よりも外方に配置し、当該形状保持部材13が熱収縮したときにコア100を押圧することが無いように、その位置を調整する。
【0039】
ドラム10に対してケーブルコア100を単層巻きすることが代表的であるが、多層巻きとすることができる。多層巻きとする場合、ドラム10には、上述の形状保持部材13に代えて、2層目以降の巻胴となる巻胴部材(図示せず)を少なくとも鍔部12Bに取り付ける。この巻胴部材は、上述した形状保持部材13のように複数の分割部材で構成すると、取り付けが容易である。この巻胴部材は、例えば、巻回された下層のコア100の外周を囲むように円環状に、かつ当該下層のコア100における冷却前の外径よりも外方に配置することが挙げられる。本発明では、この巻胴部材も、上述の巻胴11と同様の材質で構成することで、2層目以降のコア100の損傷を防止する。
【0040】
[冷却容器]
冷却容器1は、一方が開口した箱状体である本体部2と、本体部2の開口部を塞ぐ蓋部3とを具える(図1,図2(D))。
【0041】
本体部2は、真空層2aを具える真空断熱構造であり、開口部側に蓋部3を取り付ける取付部21を具える。本体部2は、例えば、ステンレス鋼といった、冷媒温度(例えば、液体窒素の場合:77K程度)に対する耐性に優れ、ドラム10に巻き取られたケーブルコア100といった大重量の試験対象の自重を保持可能な高強度な材料を好適に利用することができる。また、本体部2は、試験対象を十分に収納可能な容積を有するようにする。
【0042】
蓋部3は、冷却容器1内の冷媒(ここでは、液体冷媒2L(図1)及び液体冷媒2Lの上方に形成される気相)を封止するための部材である。蓋部3も真空断熱構造とすることができるが、リード電極210を引き出す場合、複雑な構成となる。従って、蓋部3は、中実体(例えば、ステンレス鋼からなる板材)とし、リード電極210を引き出す貫通孔を具える形態が挙げられる。中実体であっても、蓋部3に適宜な冷却機構を取り付けることで、蓋部3からの侵入熱による液体冷媒2Lの過度な気化を防止できて好ましい。
【0043】
[試験方法]
上述のケーブルコア100に対して、全長に亘って電気的特性を調べる試験を行う手順を説明する。まず、図2(A)に示すようにコア100をドラム10に巻き取っておく。このとき、ドラム10は、その軸が水平面に対して平行するように配置し、適宜な回転機構(図示せず)によって回転させながらコア100を巻き取ると、巻取り時、コア100の各ターンに加わる自重が均一的になって好ましい。製造されたコア100を順次、ドラム10によって巻き取るようにしてもよい。多層巻きとする場合には、各層ごとに上述の巻胴部材を取り付ける。
【0044】
ドラム10に巻き取られたケーブルコア100を冷却容器1に収納するにあたり、ドラム10の軸が冷却容器1の底面に対して平行するように収納することができる(以下、この収納形態を横置き収納と呼ぶ)。しかし、横置き収納では、巻胴11に巻回されたコア100がつくる各ターンにおいて、鉛直方向上方に位置する部分と鉛直方向下方に位置する部分とでは、張力の作用状態が異なる。具体的には、上述の鉛直方向上方に位置する部分は、相対的に張力が作用し易く、上述の鉛直方向下方に位置する部分は相対的に張力が作用し難い。そのため、コア100の長手方向における張力がアンバランスになり、コア100の全長の特性を測定するにあたり、コア100を均一な状態にし難い。従って、図1に示すように冷却容器1の底面に対して、ドラム10の軸が直交するように収納することが好ましい(以下、この収納形態を縦置き収納と呼ぶ)。縦置き収納にあたり、コア100が巻き取られたドラム10を、図2(B)に示すように90°回転して、ドラム10の軸が水平面に対して直交するように配置する。
【0045】
そして、図2(C)に示すように、一方の鍔部12Aを取り外してもよい。また、鍔部12Aの取り外しによるケーブルコア100の巻き崩れを防止するために形状保持部材13をコア100の外周に配置して、他方の鍔部12Bに固定してもよい。
【0046】
ケーブルコア100の各端部にリード電極210を取り付ける。このとき、鍔部12Aを取り外していたり、或いは形状保持部材13が複数の分割部材からなる形態であったり、鍔部12Aが存在するものの鍔部が切欠を具えた形態であったりすると、分割部材の隙間や切欠などからコア100の端部を引き出し易い。また、この場合、コア100の各端部にリード電極210を取り付け易く、作業性に優れる。冷却容器1の本体部2に試験対象を収納した状態で、リード電極210を取り付けることもできる。
【0047】
上記リード電極210を具える試験対象(ドラム10に巻き取られたケーブルコア100)を冷却容器1の本体部2内に収納する。図2(D)は、縦置き収納を示す。縦置き収納とすることで、冷却容器1の本体部2は、その底部の直径が他方の鍔部12Bの直径よりも若干大きい程度の大きさを有していればよく、設置面積を小さくできる。
【0048】
試験対象を本体部2に収納するには、例えば、図2(D)に示すように蓋部3に試験対象を吊り下げた状態で固定し、この蓋部3を本体部2に載置するように移動させることが挙げられる。この場合、蓋部3には、リード電極210などを固定しておくとよい。蓋部3においてリード電極210の挿通箇所は例えばハーメチックシールを行う。蓋部3を本体部2に載置したら、蓋部3を本体部2に固定する(図1)。
【0049】
冷却容器1の適宜な供給口(図示せず)から液体冷媒2L(例えば液体窒素)を本体部2内に充填する。この液体冷媒2Lによりケーブルコア100を冷却して、超電導導体層102(図3)などの超電導層を超電導状態にする。この状態で、リード電極210に、所望の通電用又は課電用の電源300を取り付けて、所望の電気的特性(通電性能、絶縁性能など)を調べる。
【0050】
[効果]
冷却容器1に充填された冷媒(液体冷媒2L)によりケーブルコア100が冷却されると、コア100は、その巻き径が小さくなるように熱収縮する(縮径する)。また、ドラム10の巻胴11も、その径が小さくなるように熱収縮する(縮径する)。本発明試験方法では、ドラム10の巻胴11が、コア100の構成部材のうち、コア100に作用する張力を分担する主要部材の構成材料(代表的には、銅や銅合金で形成されたフォーマ101(図3))よりも熱収縮率が大きい材料(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金など)から構成されていることから、コア100よりも大きく収縮する(収縮量が大きい)。つまり、ドラム10の巻胴11の外径は、冷却前、コア100の巻き径と実質的に同一であっても、冷却後(熱収縮後)、縮径したコア100の外径よりも十分に小さくなっており、コア100が熱収縮しても、巻胴11を締め付けることが実質的にない。
【0051】
従って、本発明試験方法は、熱収縮に伴うケーブルコア100の損傷を抑制することができ、コア100を健全な状態に維持しながら、全長試験を行うことができ、工業的意義が高い。
【0052】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法は、ケーブルコアの出荷試験、超電導ケーブルの製造途中における中間試験、その他、任意のときにケーブルコアの全長の特性を調べる際に好適に利用することができる。本発明ドラムは、上記全長試験を行うケーブルコアの巻取部材、つまり、試験用ドラムとして利用できる他、出荷用ドラムとしても利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 冷却容器 2 本体部 2a 真空層 2L 液体冷媒 21 取付部 3 蓋部
10 ドラム 11 巻胴 12A,12B 鍔部 13 形状保持部材
100 ケーブルコア 101 フォーマ 102 超電導導体層 103 電気絶縁層
104 外側超電導層 105 保護層
200 接続部 210 リード電極 300 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象として、超電導導体層を具えるケーブルコアであって、ドラムに巻き取られたものを準備する準備工程と、
冷却容器に前記試験対象を収納して冷媒を充填し、前記超電導導体層を前記冷媒により冷却して超電導状態に維持しながら、前記ケーブルコアの全長の特性を調べる検査工程とを具え、
前記ドラムの巻胴は、前記ケーブルコアの構成部材のうち、当該ケーブルコアに作用する張力を分担する主要部材の構成材料よりも熱収縮率が大きい材料から構成されていることを特徴とする超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法。
【請求項2】
前記張力を分担する主要部材は、常電導材料から構成され、前記超電導導体層を支持するフォーマであることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法。
【請求項3】
前記張力を分担する主要部材は、銅又は銅合金から構成され、
前記巻胴は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、及びマグネシウム合金から選択される1種の金属から構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブル用ケーブルコアの試験方法。
【請求項4】
超電導ケーブルの構成部材を巻き取るドラムであって、
前記構成部材は、超電導導体層を具えるケーブルコアであり、
巻胴は、前記ケーブルコアの構成部材のうち、当該ケーブルコアに作用する張力を分担する主要部材の構成材料よりも熱収縮率が大きい材料から構成されていることを特徴とするドラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−36841(P2013−36841A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172824(P2011−172824)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】