説明

超電導ケーブル線路

【課題】短絡電流対策に適すると共に、小径化が可能な超電導ケーブル線路を提供する。
【解決手段】超電導ケーブル線路1aは、フォーマ11の外周に超電導線材をスパイラル巻きして形成された超電導導体層12を有するケーブルコア10と、ケーブルコア10を収納すると共にケーブルコア10との空間が冷媒の流通経路となる断熱管5とを備える。そして、短絡電流をバイパスするための常電導体からなるバイパス導体21がケーブルコア10の外部に設けられている。超電導ケーブル線路1aは、断熱管5内の冷媒を循環させるための循環管6を断熱管5の外部に備え、バイパス導体21が循環管6内に収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブル線路に関し、特に、短絡電流対策に適すると共に、小径化が可能な超電導ケーブル線路に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブル線路は、既存の常電導ケーブル(例、OFケーブルやCVケーブル)線路と比較して、大容量の電流を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、実用化に向けて実線路に超電導ケーブルを接続し、実証試験が行われている。
【0003】
超電導ケーブルは、超電導導体層を有するケーブルコアを断熱管内に収納し、この断熱管内に冷凍機から冷媒(例、液体窒素)を流通させることで、ケーブルコア(超電導導体層)を冷却して超電導状態に維持する構造のものが代表的である。
【0004】
超電導ケーブルの代表的な構造を、図6を参照して説明する。なお、図6(A)は超電導ケーブルのカットモデルの斜視図、図6(B)は超電導ケーブルの断面図を示す。超電導ケーブルCは、3心のケーブルコア10を撚り合わせた状態で断熱管5内に一括に収納した構造である。断熱管5は、ステンレス製の内管51と外管52とからなる二重管構造のコルゲート管であり、両管51、52の間が真空引きされると共に、その間にスーパーインシュレーション(商品名)などの断熱材53が配置されている。また、断熱管5(外管52)の外周には防食層54が形成されている。そして、ケーブルコア10と断熱管5(内管51)との空間が冷媒の流通経路になっている。
【0005】
一方、ケーブルコア10は、中心から順にフォーマ11、超電導導体層12、絶縁層13、超電導シールド層14、常電導シールド層(金属遮蔽層)15を同軸状に配置した構造である。フォーマ11には、一般的に銅素線を撚り合わせた撚線導体が利用されている。また、超電導導体層12及び超電導シールド層14はそれぞれ、フォーマ11及び絶縁層13の外周に複数の超電導線材100をスパイラル巻きして形成されている。超電導線材100としては、Bi系銀シース線材やRE123系薄膜線材(RE:希土類元素)が利用されている。その他、フォーマ11と超電導導体層12との間にはクッション層を介在させ、フォーマ11と超電導線材100との直接接触を回避して超電導線材100が損傷することを防止している。
【0006】
ところで、交流送電線路では、短絡事故時に短時間ではあるが過電流(短絡電流)が流れることがあり、臨界電流を超える短絡電流がケーブルコアに流れると、クエンチが発生し、ケーブルコアが焼損するなど大事故を招く虞がある。そのため、超電導ケーブル線路には短絡電流対策を講じておく必要がある(例えば特許文献1〜5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000‐67663号公報
【特許文献2】特開2001‐52542号公報
【特許文献3】特開2005‐100777号公報
【特許文献4】特開平11‐31424号公報
【特許文献5】特開2006‐295994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、短絡電流対策の一つとして、ケーブルコア自身に短絡電流を流すための電路を確保することが行われている。具体的には、短絡電流を分流させるために必要な断面積を有する銅の撚線導体をフォーマに採用し、ケーブルコアの温度上昇の抑制している。なお、線路に流れる短絡電流は、線路の仕様に応じて予め想定されており、例えば66kV級電力ケーブルの場合、31.5kA×2secが一般的な最大値である。そこで、従来の66kV級超電導ケーブルでは、フォーマ(銅の撚線導体)の導体断面積が200mm2程度、フォーマの外径が17.5mm程度(クッション層を除く)に設計されており、ケーブルコアの外径が44mm程度ある。
【0009】
超電導ケーブル線路を建設する具体案として、超電導ケーブルを既存のOFケーブルの代替とし、そのOFケーブルが布設されている地中管路に超電導ケーブルを布設することが検討されている。例えば66kV級OFケーブルが布設されている管路は内径150mmが多くあり、このサイズの管路に超電導ケーブルを引き入れ布設することを考慮すると、超電導ケーブル(断熱管)の外径を135mm以下にすることが望まれる。
【0010】
しかし、必要な断面積を確保するためにフォーマの断面積を大きくすることは、フォーマの外径が大きくなることにつながり、超電導ケーブル自体が大きくなる。例えば従来の66kV級超電導ケーブルは、断熱管の外径が140mm程度あり、内径150mmの管路に引き入れ布設することが難しい。
【0011】
また、必要な断面積を確保するためにフォーマの断面積を大きくすることは、渦電流損が増加する点で好ましくない。
【0012】
超電導線材をスパイラル巻きして形成した超電導導体層に電流が流れると、超電導導体層の中心に位置するフォーマに軸方向の磁場が印加されるため、フォーマに渦電流損が発生する。そして、渦電流損はフォーマの断面積が大きくなればなるほど増加する。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、短絡電流対策に適すると共に、小径化が可能な超電導ケーブル線路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の超電導ケーブル線路は、フォーマの外周に超電導線材をスパイラル巻きして形成された超電導導体層を有するケーブルコアと、ケーブルコアを収納すると共にケーブルコアとの空間が冷媒の流通経路となる断熱管とを備える。そして、短絡電流の少なくとも一部をバイパスするための常電導体からなるバイパス導体がケーブルコアの外部に設けられていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、短絡電流の電路の一部をバイパス導体により確保すると共に、フォーマのみを短絡電流の電路とした従来の超電導ケーブル線路と比較してフォーマの断面積が小さい。例えば、フォーマの外径を15mm以下、特に10mm以下にすることができる。フォーマの外径を15mm以下にすることができれば、ケーブルコアの外径も小さくなり、例えば超電導ケーブル(断熱管)の外径を135mm以下にすることも可能である。そのため、短絡電流対策の実現と小径化が可能である。また、この超電導ケーブル線路は、回路的には、ケーブルコアとバイパス導体とが並列接続された関係となる。
【0016】
さらに、フォーマの断面積が小さくなると、その分渦電流損の低減効果が得られる。
【0017】
本発明では、フォーマとバイパス導体とを短絡電流の電路として機能させることができる。なお、バイパス導体に必要な断面積は、想定される短絡電流に応じて公知の式(JCS(日本電線工業会規格) 0168に規定される式を参照)から求めることができる。
【0018】
本発明において、バイパス導体の配置形態としては、次の形態が挙げられる。
(1)冷媒を循環するための循環管を断熱管の外部に備える場合は、バイパス導体が循環管内に収納されている形態
(2)バイパス導体が断熱管の外部に設けられ、常温環境下で自然冷却される形態
【0019】
超電導ケーブル線路において、断熱管内の冷媒を循環させるため、断熱管の外部に循環管を設けることがある。上記(1)の形態を採用した場合は、バイパス導体がケーブルコアと一緒に単一の断熱管内に収納されていない分、断熱管の外径を小さくできる。さらに、バイパス導体が冷媒により冷却され、バイパス導体の抵抗値が下がるため、バイパス導体の断面積を小さくできる。また、この形態では、ケーブルコアを効率良く冷却するため、ケーブルコアを収納する断熱管を冷媒の往路とし、循環管を冷媒の復路とすることが好ましい。
【0020】
上記(2)の形態を採用した場合は、上記(1)と同様、断熱管の外径を小さくできる。さらに、バイパス導体を冷媒により冷却しないことで、短絡電流が流れてバイパス導体が発熱しても、冷媒の温度が上昇することがないので、冷凍機への負荷を軽減できる。また、この形態では、バイパス導体に既存のOFケーブルやCVケーブルをそのまま利用できることもある。
【0021】
本発明において、ケーブルコアに流れる送電電流を遮断し、送電電流をバイパス導体に流すための遮断器を備えることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、例えばケーブルコアに異常が発生したとき、或いは冷凍機をメンテナンスするときなど、バイパス導体をバックアップ回路として使用することができる。
【0023】
本発明において、フォーマが非導電性材料で構成され、超電導線材が薄膜線材であることが好ましい。
【0024】
従来、フォーマを銅などの導電性材料で構成することが一般的である。しかし、フォーマが導電性材料で構成されている場合、短絡電流の一部がフォーマに流れることにより、フォーマにジュール損が発生し、ケーブルコアの温度が上昇する点で好ましくない。そこで、フォーマは非導電性材料で構成されていることが好ましい。
【0025】
また従来、短絡電流対策として、フォーマの断面積を大きくする他、超電導線材に銀や銅の安定化材を複合化することも行われている。このため、バイパス導体を設け、フォーマが非導電性材料で構成されている場合であっても、短絡電流の一部が安定化材に流れることにより、安定化材にジュール損が発生し、ケーブルコアの温度が上昇する。そこで、銀又は銀合金のシース内に超電導体を充填した銀シース線材ではなく、ニッケル合金などの基板上に超電導体層を形成した薄膜線材を利用することで、超電導線材に含まれる安定化材を少なくすることができる。その結果、ジュール損によるケーブルコアの温度上昇を効果的に抑制することができ、また、ケーブルコアの外径を小さくできる。超電導線材に含まれる安定化材を少なくする場合、総線材断面における安定化材の面積が2mm2以下であれば効果的であると考えられる。
【0026】
本発明において、バイパス導体には、所定電圧以下の電圧が印加されたときは絶縁体として機能し、かつ所定電圧を超える電圧が印加されたときは導体として機能する非線形抵抗素子が直列に組み込まれていることが好ましい。
【0027】
バイパス導体の抵抗値が小さい場合、送電電流の一部がバイパス導体にも流れることがあるが、常電導体のバイパス導体に送電電流が流れると、その分線路の損失が大きくなる。そこで、バイパス導体に上記の非線形抵抗素子を直列に接続することで、定常運転時には素子が絶縁体として機能し、送電電流をケーブルコアに流すことができるので、線路の損失を低減できる。一方、短絡電流が流れたときは素子が導体として機能するため、短絡電流をバイパス導体に流すことができる。上記の非線形抵抗素子としては、例えばZnO素子、SiC素子などを利用することができる。
【0028】
本発明において、フォーマが中空フォーマであり、このフォーマの内部にも冷媒を流通させることが好ましい。
【0029】
本発明では、従来と比較して、フォーマの形状並びに材質に関し自由度の高い設計が可能であり、撚線状や棒状といった中実フォーマの他、管状の中空フォーマを利用することもできる。この構成によれば、超電導導体層を内側からも冷却することができ、ケーブルコアの外周からのみ絶縁層を通して冷却する従来と比較して、超電導導体層の温度を冷媒温度に近づけ維持することができる。また、短絡電流の一部がケーブルコアに流れてケーブルコアの温度が上昇した場合であっても、従来と比較して、超電導導体層を冷却するまでの時間を短くできる。そのため、短絡事故からの復帰時間が短縮される。
【0030】
また、フォーマ内部及びケーブルコアと断熱管との空間における冷媒の流通方向は、同一方向でもよいし、異なる方向でもよい。
【0031】
前者の場合は、同一方向の冷媒の流通断面積が増加することになるので、冷媒の流通抵抗(圧力損失)を軽減できる。
【0032】
後者の場合は、代表的には、フォーマの内部を冷媒の往路及び復路の一方とし、ケーブルコアと断熱管との空間を冷媒の往路及び復路の他方とした場合である。この場合、単一の断熱管内で冷媒を循環させることができるので、上記の循環管を設ける必要がなく、また、循環管を設けることによる熱浸入も抑えられる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の超電導ケーブル線路は、バイパス導体がケーブルコアの外部に設けられていることで、短絡電流対策に適すると共に、小径化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)は実施の形態1に係る超電導ケーブル線路を説明するための概略断面図である。(B)は実施の形態1に係る超電導ケーブル線路を回路的に表した図である。
【図2】実施の形態2に係る超電導ケーブル線路を説明するための概略断面図である。
【図3】変更例1に係る超電導ケーブル線路を回路的に表した図である。
【図4】変更例3に係る超電導ケーブル線路を回路的に表した図である。
【図5】変更例5に係る超電導ケーブル線路を説明するための概略断面図である。
【図6】超電導ケーブルの構造を説明するための概略図であり、(A)は超電導ケーブルのカットモデルの斜視図、(B)は超電導ケーブルの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。なお、図中において同一部材には同一符号を付している。
【0036】
(実施の形態1)
図1(A)に示す超電導ケーブル線路1aは、3心のケーブルコア10を撚り合わせた状態で断熱管5内に一括に収納した構造である。断熱管5は、図6を用いて説明した超電導ケーブルの断熱管と同様の構成であり、説明を省略する。
【0037】
ケーブルコア10は、中心から順にフォーマ11、超電導導体層12、絶縁層13、超電導シールド層14を同軸状に配置した構造である。
【0038】
フォーマ11は、銅の撚線導体で形成されており、ここでは後述するバイパス導体21よりも断面積が小さい。また、フォーマ11の外周にはクラフト紙や半合成絶縁紙(例、PPLP(登録商標))が巻回され、クッション層が形成されている。このクッション層は、表面を平滑にすると共に、後述する超電導導体層12を形成する際に超電導線材の損傷を防止する効果がある。
【0039】
超電導導体層12は、フォーマ11の外周に超電導線材をスパイラル巻きすることで形成されており、超電導線材には公知のBi系銀シース線材やRE123系薄膜線材を利用している。
【0040】
絶縁層13は、超電導導体層12と後述する超電導シールド層14との間の絶縁を確保するために設けられており、例えばPPLPなどの半合成絶縁紙を超電導導体層12の外周に巻回することで形成されている。
【0041】
超電導シールド層14は、絶縁層13の外周に超電導線材をスパイラル巻きすることで形成されており、超電導導体層12に電流が流れたときにそれと逆方向の電流が誘導されて、外部への磁場の漏洩を防止する効果がある。
【0042】
さらに、超電導ケーブル線路1aは、断熱管5内の冷媒を循環させるための循環管6を断熱管5の外部に備え、バイパス導体21が循環管6内に収納されている。循環管6は、断熱管5と同様の構成であり、説明を省略する。ここでは、3心のバイパス導体21を撚り合わせた状態で循環管6内に一括に収納し、また、ケーブルコア10を収納する断熱管5を冷媒の往路とし、循環管6を冷媒の復路としている。
【0043】
バイパス導体21は、銅の撚線導体で形成されており、短絡電流の電路に利用される。バイパス導体21は、想定される短絡電流に応じて断面積が設計され、短絡電流をバイパスするために必要な断面積を有する。
【0044】
バイパス導体21は、循環管6に流通する冷媒により冷却され、極低温となる。そのため、常温環境下で使用する場合と比較して抵抗値が下がるので、断面積を小さくできる。
【0045】
また、このバイパス導体21の外周には、例えばPPLPなどの半合成絶縁紙を巻回した絶縁体22が形成されている。なお、図示しないが、一般的な電力ケーブルと同じように、絶縁体22の外周には金属遮蔽層やシースなどが形成されている。
【0046】
図1(B)は、この超電導ケーブル線路1aを回路的に表した図であり、ケーブルコア10(超電導導体層12)とバイパス導体21とは互いに並列接続された関係になっている。超電導ケーブル線路1aにおいて、定常運転時にはケーブルコア10の超電導状態が維持され、ケーブルコア10の交流電気抵抗が非常に小さくなるので、送電電流がケーブルコア10に流れることになる。一方で、短絡事故が発生して短絡電流が流れるときは、短絡電流をバイパス導体21に分流させることができる。
【0047】
また、線路の仕様を66kV級(送電容量:350MVA)とし、この仕様に基づいて超電導ケーブル線路1aを設計した場合のケーブルコア10、断熱管5、バイパス導体21及び循環管6の外径は、それぞれ次のとおりであった。
【0048】
ケーブルコア:39mm(フォーマの外径を13mm(クッション層を除く)に設計)
断熱管:130mm
バイパス導体:17.5mm(断面積:200cm2、絶縁体などを含めた外径は37mm)
循環管:126mm
【0049】
以上説明した超電導ケーブル線路1aは、短絡電流対策を実現することができる。加えて、バイパス導体21が断熱管5の外部に設けられた循環管6内に収納されているため、その分断熱管5の外径を小さくでき、断熱管5及び循環管6の外径をそれぞれ135mm以下にすることができる。そして、ケーブルコア10を収納する断熱管5用とバイパス導体21を収納する循環管6用に既存の地中管路を2つ使用すれば、断熱管5及び循環管6は外径が小さく、管路への引き入れ布設が容易であるので、線路の建設にあたり既存の地中管路を有効利用できる。なお、循環管6の外径は断熱管5の外径よりも小さくすることが可能である。また、従来と比較してフォーマ11の断面積が小さいので、渦電流損の低減が可能である。
【0050】
(実施の形態2)
図2に示す超電導ケーブル線路1bは、バイパス導体21の配置形態が図1の超電導ケーブル線路1aと相違しており、以下では、相違部分を中心に説明する。
【0051】
超電導ケーブル線路1bは、バイパス導体21が断熱管5の外部に設けられ、バイパス導体21が常温環境下で自然冷却される。ここでは、バイパス導体21が常温環境下に置かれるため、バイパス導体21の断面積(外径)を大きくしている。また、3心のバイパス導体21を撚り合わせて、この状態で自然冷却する。
【0052】
また、実施の形態1と同じ仕様に基づいて、超電導ケーブル線路1cを設計した場合のケーブルコア10、断熱管5、バイパス導体21及び3心のバイパス導体21を包絡する包絡円Eの外径は、それぞれ次のとおりであった。
【0053】
ケーブルコア:39mm(フォーマの外径を13mm(クッション層を除く)に設計)
断熱管:130mm
バイパス導体:24mm(断面積:400cm2、絶縁体などを含めた外径は41mm)
3心の包絡円:91mm(JIS C 3606:1993に規定される仕上外径に相当)
【0054】
以上説明した超電導ケーブル線路1bは、バイパス導体21が断熱管5の外部に設けられているため、その分断熱管5の外径を小さくでき、断熱管5及び包絡円Eの外径をそれぞれ135mm以下にすることができる。そして、ケーブルコア10を収納する断熱管5用とバイパス導体21用に既存の地中管路を2つ使用すれば、断熱管5及び包絡円Eは外径が小さく、管路への引き入れ布設が容易であるので、線路の建設にあたり既存の地中管路を有効利用できる。
【0055】
また、超電導ケーブル線路1bでは、短絡電流が流れてバイパス導体21が発熱しても、冷媒の温度が上昇することがないので、冷凍機への負荷を軽減できる。さらに、超電導ケーブル線路1cでは、地中管路に布設されている既存のOFケーブルやCVケーブルをバイパス導体21に利用することも可能である。
【0056】
上記の例では、バイパス導体21を撚り合わせただけであり、放熱性が良好であるが、撚り合わせたバイパス導体21を金属製の保護管に収納してもよい。金属製の保護管に収納することで、水分などの外部環境からバイパス導体21を保護したり、引き入れ布設する際にバイパス導体21が損傷することを防止できる。
【0057】
次に、以上説明した形態の変更例について説明する
(変更例1)
図3に示す超電導ケーブル線路1cは、遮断器Sを備える例である。
【0058】
遮断器Sは、ケーブルコア10に流れる送電電流を遮断して送電電流をバイパス導体21に流す機能を有しており、ケーブルコア10に直列に接続されている。
【0059】
超電導ケーブル線路1cでは、例えばケーブルコア10に異常が発生したとき、或いは冷凍機をメンテナンスするときなど、遮断器Sを操作することで送電電流をバイパス導体21に流すことができ、バイパス導体21をバックアップ回路として使用することができる。
【0060】
(変更例2)
超電導導体層12を構成する超電導線材にRE123系薄膜線材を選択し、総線材断面における安定化材の面積が2mm2以下を満たすものを利用する。
【0061】
この場合、超電導線材に含まれる安定化材が少なく、結果として、ジュール損によるケーブルコア10の温度上昇を効果的に抑制することができ、また、ケーブルコア10の外径をより小さくできる。RE123系薄膜線材としては、例えばY系(YBCO)薄膜線材、Ho系(HoBCO)薄膜線材などが具体的に挙げられる。
【0062】
このような安定化材を少なくした薄膜線材を利用し、さらに、フォーマを非導電性材料で構成すれば、ジュール損によるケーブルコア10の温度上昇をより効果的に抑制することが可能である。
【0063】
(変更例3)
図4に示す超電導ケーブル線路1dは、バイパス導体21に非線形抵抗素子Vが直列に組み込まれている例である。
【0064】
非線形抵抗素子Vは、所定電圧以下の電圧が印加されたときは絶縁体として機能し、かつ所定電圧を超える電圧が印加されたときは導体として機能する素子である。非線形抵抗素子Vとしては、例えばZnO素子、SiC素子などを利用することができる。
【0065】
超電導ケーブル1dでは、定常運転時には素子Vが絶縁体として機能し、送電電流をケーブルコア10に流すことができるので、線路全体の損失を低減できる。一方、短絡電流が流れたときは素子Vが導体として機能するため、短絡電流をバイパス導体21に流すことができる。
【0066】
(変更例4)
フォーマ11に中空フォーマを利用し、このフォーマ11の内部にも冷媒を流通させる。
【0067】
例えば、コルゲート管や帯状体を螺旋状に巻回してパイプ状に形成したものをフォーマ11とすることが挙げられる。なお、帯状体を巻回してパイプ状に形成したものを用いる場合、隣接する帯状体のターン間に適度な隙間が形成されていると、フォーマ11に可撓性を持たせることができるので好ましい。また、フォーマの材質には、ステンレス、アルミなどの金属を用いる他、プラスチックなどの非金属を用いてもよい。
【0068】
さらに、フォーマ11内部の冷媒の流通方向は、ケーブルコア10と断熱管5との空間における冷媒の流通方向と同一方向でもよいし、異なる方向でもよい。前者の場合は、同一方向の冷媒の流通断面積が増加することになるので、冷媒の流通抵抗(圧力損失)を軽減できる。後者の場合は、代表的には、フォーマ11の内部を冷媒の往路及び復路の一方とし、ケーブルコア10と断熱管5との空間を冷媒の往路及び復路の他方とした場合である。この場合、単一の断熱管5内で冷媒の循環経路を構成することができるので、循環管を設ける必要がなく、また、循環管を設けることによる熱浸入も抑えられる。
【0069】
(変更例5)
図5に示す超電導ケーブル線路1eは、バイパス導体21の配置形態が図1、2の超電導ケーブル線路1a、1bと相違しており、以下では、相違部分を中心に説明する。
【0070】
超電導ケーブル線路1eは、バイパス導体21を備え、バイパス導体21がケーブルコア10と一緒に断熱管5内に収納されている。ここでは、3心のケーブルコア10が撚り合わされて形成された外周の溝に沿って、3心のバイパス導体21を配置している。
【0071】
バイパス導体21は、断熱管5に流通する冷媒により冷却され、極低温となるため、常温環境下で使用する場合と比較して抵抗値が下がるので、図1のバイパス導体と同様に断面積を小さくできる。
【0072】
また、実施の形態1と同じ仕様に基づいて、超電導ケーブル線路1eを設計した場合のケーブルコア10及びバイパス導体21の外径は、それぞれ次のとおりであった。
【0073】
ケーブルコア:39mm(フォーマの外径を13mm(クッション層を除く)に設計)
バイパス導体:17.5mm(断面積:200cm2、絶縁体などを含めた外径は37mm)
【0074】
以上説明した超電導ケーブル線路1eは、短絡電流対策を実現することができ、加えて、従来と比較してフォーマ11の断面積が小さいので、渦電流損の低減が可能である。また、バイパス導体21がケーブルコア10と一緒に断熱管5内に収納されているので、使用する地中管路が1つで済む。なお、変更例5の形態であっても、例えば送電電圧が低い場合や送電容量が小さい場合など線路の仕様によっては、断熱管の小径化が可能であると期待できる。
【0075】
なお、本発明は、上述した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば線路が2回線以上、即ちケーブルコアを収納する断熱管を2つ以上備える場合は、少なくとも一つの断熱管を冷媒の往路とし、残りの断熱管を冷媒の復路とすることで、冷媒の循環経路を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の超電導ケーブル線路は、交流送電線路に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1a,1b,1c,1d,1e 超電導ケーブル線路
10 ケーブルコア
11 フォーマ 12 超電導導体層 13 絶縁層
14 超電導シールド層 15 常電導シールド
21 バイパス導体 22 絶縁体
5 断熱管 6 循環管
51 内管 52 外管 53 断熱材 54 防食層
C 超電導ケーブル 100 超電導線材
S 遮断器 V 非線形抵抗素子
E 包絡円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマの外周に超電導線材をスパイラル巻きして形成された超電導導体層を有するケーブルコアと、前記ケーブルコアを収納すると共にケーブルコアとの空間が冷媒の流通経路となる断熱管と、を備える超電導ケーブル線路であって、
短絡電流の少なくとも一部をバイパスするための常電導体からなるバイパス導体が、前記ケーブルコアの外部に設けられていることを特徴とする超電導ケーブル線路。
【請求項2】
前記断熱管の外部に設けられ、前記冷媒を循環するための循環管を備え、
前記バイパス導体が、前記循環管内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項3】
前記バイパス導体が、前記断熱管の外部に設けられ、常温環境下で自然冷却されることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項4】
前記ケーブルコアに流れる送電電流を遮断し、送電電流を前記バイパス導体に流すための遮断器を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項5】
前記フォーマが、非導電性材料で構成され、
前記超電導線材が、薄膜線材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項6】
前記バイパス導体には、所定電圧以下の電圧が印加されたときは絶縁体として機能し、かつ所定電圧を超える電圧が印加されたときは導体として機能する非線形抵抗素子が直列に組み込まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項7】
前記フォーマが、中空フォーマであり、
このフォーマの内部にも前記冷媒を流通させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項8】
前記フォーマの内部を前記冷媒の往路及び復路の一方とし、
前記ケーブルコアと前記断熱管との空間を前記冷媒の往路及び復路の他方としたことを特徴とする請求項7に記載の超電導ケーブル線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−277975(P2010−277975A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132463(P2009−132463)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】