説明

超電導ケーブル線路

【課題】侵入熱を低減することができる超電導ケーブル線路を提供する。
【解決手段】超電導ケーブル線路は、電源から複数の負荷L11…L1nに電力を供給する線路であって、超電導線材で形成された超電導導体層を有するケーブルコア110が収納管120内に収納された多条の超電導ケーブル100と、これら多条の超電導ケーブル100を収納する1つの断熱管140と、各超電導ケーブル100から電力を引き出す複数の取出部150と、を備える。上記断熱管140は、真空断熱層を有する。また、上記取出部150は、それぞれ各負荷L11…L1nに接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から複数の負荷に電力を供給する超電導ケーブル線路に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、既存の常電導ケーブル(例、OFやCVケーブル)に比較して、大容量の電力を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、超電導ケーブルを布設して超電導ケーブル線路を構築し、実線路での実証試験が行われている。
【0003】
超電導ケーブルは、超電導線材で形成された超電導導体層を有するケーブルコアを断熱管内に収納し、この断熱管内に冷媒(例、液体窒素(LN2))を流通させることで、超電導導体層を冷却する構成が代表的である。このような超電導ケーブルとしては、例えば、断熱管内に1つのケーブルコアを収納した単心ケーブルや、複数のケーブルコアを収納した多心ケーブルがある。断熱管は、通常、内管と外管とを有する二重管構造であり、内管と外管との間に真空断熱層が形成されている。
【0004】
また、例えば特許文献1には、超電導導体層を有するケーブルコアを収納管内に収納し、この収納管の外側に非真空状態に保持された断熱部材を配することで、真空断熱構造を採用することなく所定の断熱特性を保持する超電導ケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−140123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、発電所から一次変電所までの一次送電線、或いは一次変電所から二次変電所までの二次送電線といった基幹送電に超電導ケーブルを利用することが主に想定されていたが、今後は、更なる省電力化を図るため、工場内の配電に超電導ケーブルを利用することが考えられる。例えば、工場内の変電所(電源)から消費電力の大きい負荷(例えば、金属やセラミック、ガラスの溶解や焼成に用いられる電気炉やアルミニウム電解炉など)に電力を供給するブスバーに超電導ケーブルを適用することが考えられる。
【0007】
工場内の配電では、電源から複数の負荷に電力を供給することが想定されるため、それに適した超電導ケーブル線路の構成が求められる。特に、超電導ケーブルの場合は、侵入熱によって損失が大きくなることから、侵入熱を極力小さくすることが望まれる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、複数の回線をコンパクトにまとめ、かつ侵入熱を低減することができる超電導ケーブル線路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、電源から超電導ケーブルを介して複数の負荷に電力を供給する超電導ケーブル線路について、次のような検討を行った。
【0010】
まず、複数の負荷に対応する本数の超電導ケーブルを使用し、複数回線を構成することを考えた。例えば図17は、7条の超電導ケーブル200を個別に配置した状態を示す。各超電導ケーブル200は、例えば、内管と外管との間に真空断熱層を有する断熱管220内に1つのケーブルコア(図示せず)を収納した単心ケーブルである。侵入熱は常温部(外部)との接触面積によって比例し、この場合、各超電導ケーブル200における侵入熱は断熱管220の内周長によって決まると考えてよい。したがって、断熱管220の内半径をrとするとき、各超電導ケーブル200における侵入熱は2πrに比例し、線路全体の侵入熱は2πr×7=14πrに比例することになる。
【0011】
また、特許文献1に記載するような超電導ケーブル線路の構成を考えた。例えば図18は、ケーブルコアを収納管320内に収納した7条の超電導ケーブル300を一括して断熱部材340内に配置した状態を示す。ここでは、断熱部材340内に複数の超電導ケーブル300を近接して配置し、ケーブル300群と断熱部材340との接触面積が小さくなるようにしている。この場合、線路全体の侵入熱は、ケーブル300群と断熱部材340との接触面積に比例し、ケーブル300群が形成する外形(輪郭)の周長によって決まると考えてよい。したがって、収納管320の半径をrとするとき、線路全体の侵入熱は2πr×(240/360)×6=8πrに比例することになる。
【0012】
次に、例えば図1に示すように、ケーブルコアを収納管120内に収納した7条の超電導ケーブル100を1つの断熱管140内に配置した超電導ケーブル線路の構成を考えた。ここでは、断熱管140内に複数の超電導ケーブル100を近接して配置し、断熱管140の内径をケーブル群100の包絡円の直径と同等となるようにしている。この場合、線路全体の侵入熱は、断熱管140の内周長によって決まると考えてよく、収納管120の半径をrとするとき、線路全体の侵入熱は3r×2π=6πrに比例することになる。つまり、図1に示す構成によれば、上記した図17及び図18に示す構成に比較して、侵入熱を低減できることが分かる。
【0013】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものである。
【0014】
本発明の超電導ケーブル線路は、電源から複数の負荷に電力を供給する超電導ケーブル線路であって、超電導線材で形成された超電導導体層を有するケーブルコアが収納管内に収納された多条の超電導ケーブルと、これら多条の超電導ケーブルを収納する1つの断熱管と、各超電導ケーブルから電力を引き出す複数の取出部と、を備える。上記断熱管は、真空断熱層を有する。また、上記取出部は、それぞれ各負荷に接続される。
【0015】
この構成によれば、超電導導体層を有するケーブルコアを収納管内に収納した多条の超電導ケーブルを1つの断熱管内に収納したことで、侵入熱を低減することができる。超電導ケーブルの条数は、複数の負荷に電力を供給する回線数に応じた条数である。また、収納管は、例えば、金属製の一重管であり、収納管内(即ち、収納管とケーブルコアとの間の空間)に冷媒を流通させることで、超電導線材(超電導導体層)を冷却することができる。さらに、多条の超電導ケーブルを1つの断熱管内に収納したことで、コンパクトにまとめることができる。
【0016】
本発明の超電導ケーブル線路の一形態としては、取出部が、超電導ケーブル線路の長手方向に離間して設けられていることが挙げられる。
【0017】
この構成によれば、複数の負荷のそれぞれの位置に応じて取出部を設けることができるため、複数の負荷がそれぞれ電源から異なる距離にあっても対応することができる。
【0018】
本発明の超電導ケーブル線路の一形態としては、ケーブルコアを収納する収納管が、真空断熱層を有する断熱管であることが挙げられる。ケーブルコアを収納する収納管を断熱管とする場合、超電導ケーブルの長手方向の全長に亘って断熱管とする他、超電導ケーブルの長手方向の一部において断熱管としてもよい。
【0019】
この構成によれば、ケーブルコアを収納する収納管(断熱管)と合わせて二重の断熱構造となるため、侵入熱をより低減することができる。この場合、多条の超電導ケーブルを収納する断熱管とケーブルコアを収納する収納管(断熱管)のいずれか一方の断熱管において、例えば真空断熱層の真空度、即ち断熱性能が低下しても、他方の断熱管により断熱性能が維持されるため、より信頼性の高い超電導ケーブル線路を構築することができる。また、断熱性能は、多条の超電導ケーブルを収納する断熱管とケーブルコアを収納する収納管(断熱管)の組み合わせによって確保されるため、一方の断熱管を他方の断熱管に比較して真空断熱層の真空度(断熱性能)が低いものとしてもよいし、全体として断熱性能が確保されるように両者の断熱性能を下げてもよい。
【0020】
本発明の超電導ケーブル線路の一形態としては、多条の超電導ケーブルを収納する断熱管と超電導ケーブルとの間の空間を真空とすることが挙げられる。
【0021】
この構成によれば、侵入熱をより低減することができる。この場合、断熱性能は、この空間と超電導ケーブルを収納する断熱管の組み合わせによって確保されるため、この空間の真空度は、断熱管における真空断熱層の真空度より低いものとしてよいし、全体として断熱性能が確保されるように両者の断熱性能を下げてもよい。
【0022】
本発明の超電導ケーブル線路の一形態としては、多条の超電導ケーブルを収納する断熱管と超電導ケーブルとの間の空間を冷媒流路とすることが挙げられる。
【0023】
この構成によれば、断熱管と超電導ケーブルとの間の空間を冷媒流路に利用することで、冷媒の流路断面積を大きくとり易く、単位長あたりの冷媒流量を増やして、冷媒区間を長くすることが可能である。また、ケーブルコアを収納する収納管とケーブルコアとの間の空間を冷媒流路とした場合、この空間も冷媒流路に利用することで、冷媒流路が2系統になることから、信頼性が向上する。
【0024】
上記した断熱管と超電導ケーブルとの間の空間を冷媒流路とする形態において、ケーブルコアを収納する収納管とケーブルコアとの間の空間を冷媒流路とし、断熱管と各超電導ケーブルとの間の空間を主空間とし、収納管とケーブルコアとの間の空間を副空間としたとき、主空間と副空間のいずれか一方の空間を冷媒の往路とし、他方の空間を冷媒の復路とすることが挙げられる。
【0025】
この構成によれば、主空間と副空間とで冷媒の往路と冷媒の復路を構成することができる。
【0026】
上記した断熱管と超電導ケーブルとの間の空間を冷媒流路とする形態において、ケーブルコアを収納する収納管とケーブルコアとの間の空間に冷媒を充填することが挙げられる。
【0027】
この構成によれば、断熱管と超電導ケーブルとの間の空間(主空間)に流通する冷媒によって、収納管とケーブルコアとの間の空間(副空間)に充填された冷媒を冷却して、ケーブルコアの超電導導体層を冷却することができる。また、副空間に液体窒素などの冷媒を流通・充填することで、ケーブルコアの電気絶縁性能を高めることが可能である。
【0028】
また、上記したようにケーブルコアを収納する収納管とケーブルコアとの間の空間(副空間)に冷媒を充填しておくことで、この空間を予備の冷媒流路とすることが可能である。断熱管と超電導ケーブルとの間の空間(主空間)において、例えば冷媒の流通が阻害される異常事態が生じても、副空間に充填していた冷媒を流通させることで、冷却性能を確保することができる。また、主空間に流通する冷媒のみでは十分な冷却性能を得られない場合、副空間に充填していた冷媒を流通させることにより、冷却性能を高めることも可能である。
【0029】
本発明の超電導ケーブル線路の一形態としては、超電導ケーブルが直流超電導ケーブルであることが挙げられる。
【0030】
本発明において、超電導ケーブルには直流ケーブルと交流ケーブルのいずれも利用することができる。特に、直流超電導ケーブルでは、交流損がなく、損失は実質的に侵入熱のみとなる。
【0031】
本発明の超電導ケーブル線路の一形態としては、超電導ケーブルの長手方向の少なくとも一部において、ケーブルコアを収納する収納管が、真空断熱層を有する断熱管であることが挙げられる。
【0032】
上述したように、ケーブルコアを収納する収納管を断熱管とする場合、超電導ケーブルの長手方向の少なくとも一部において断熱管としてもよい。超電導ケーブルの長手方向の一部において断熱管とした場合、収納管において、長手方向に一重管の部分と二重管の部分とが混在することになる。また、例えば、超電導ケーブルの長手方向端部において、ケーブルコアを収納する収納管を断熱管とし、この端部側の収納管を多条の超電導ケーブルを収納する断熱管の端部(即ち、超電導ケーブル線路端部)から引き出した構成とすることができる。この場合、超電導ケーブル線路において、多条の超電導ケーブルが1つの断熱管内に収納された共通区間と、この断熱管から露出し、各超電導ケーブルが個別に配置された個別区間とが混在する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の超電導ケーブル線路は、超電導導体層を有するケーブルコアを収納管内に収納した多条の超電導ケーブルを1つの断熱管内に収納したことで、侵入熱を低減することができ、その結果、損失を小さくすることができる。さらに、多条の超電導ケーブルを1つの断熱管内に収納したことで、コンパクトにまとめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1に係る超電導ケーブル線路を示す概略断面図である。
【図2】超電導ケーブルの構造を説明するための概略断面図である。
【図3】実施例2に係る超電導ケーブル線路を示す概略断面図である。
【図4】超電導ケーブル線路の構成例を示す概要図である。
【図5】取出部の構造の一例を示す概略外観図である。
【図6】取出部の構造の一例を示す概略断面図である。
【図7】取出部の構造の一例を説明するための概略断面図である。
【図8】給電部の構造の一例を説明するための概略断面図である。
【図9】超電導ケーブル線路における冷媒循環経路の一例を説明するための概要図である。
【図10】取出部の構造の別の例を説明するための概略断面図である。
【図11】給電部の構造の別の例を説明するための概略断面図である。
【図12】超電導ケーブル線路における冷媒循環経路の別の例を説明するための概要図である。
【図13】接続部と超電導導体層との接続構造の更に別の例を説明するための要部拡大概略断面図である。
【図14】給電部の構造の更に別の例を説明するための概略断面図である。
【図15】超電導ケーブル線路の別の構成例を示す概要図である。
【図16】変形例1に係る超電導ケーブル線路の構成を説明するための概要図である。
【図17】多条の超電導ケーブルを配置した構成の超電導ケーブル線路の一例を示す概略断面図である。
【図18】ケーブルコアを収納管内に収納した多条の超電導ケーブルを一括して断熱部材内に配置した構成の超電導ケーブル線路の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、各図において、同一又は相当の部材には同一の符号を用いる。
【0036】
<実施例1>
図1は、本発明の超電導ケーブル線路の一例を示す概略断面図である。図1に示す超電導ケーブル線路は、超電導導体層を有するケーブルコアを収納管120内に収納した多条の超電導ケーブル100が1つの断熱管140内に収納されている。また、各超電導ケーブル100から電力を引き出し、複数の負荷のそれぞれに接続される複数の取出部(詳細は後述)を備える。まず、超電導ケーブル100の概要を説明する。
【0037】
(超電導ケーブル及びケーブルコア)
超電導ケーブル100は、図2に示すように、収納管120内にケーブルコア110を収納した構成である。この例では、1つのケーブルコア110が収納された単心ケーブル構造である。このケーブルコア110は、中心から順にフォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、しゃへい層114、保護層115を有する。しゃへい層114は、金属材料で形成してもよいし、本例のように外側超電導導体層としてもよい。しゃへい層114は、電界しゃへい層として機能する。また、このしゃへい層(外側超電導導体層)114は、直流ケーブルの場合は帰路導体層としても機能し、交流ケーブルの場合は導体電流(超電導導体層112に流れる電流)による磁場を打ち消す電流を流す磁気シールド層としても機能する。
【0038】
フォーマ111は、超電導導体層112の支持体や異常時電流(短絡電流など)の流路に利用され、銅やアルミニウムなどの常電導体で形成されている。より具体的には、例えば、エナメルなどの絶縁被覆を有する複数の金属線を撚り合わせた撚り線などの中実体、金属パイプや金属帯を螺旋状に成形したスパイラルパイプなどの中空体が挙げられる。金属パイプなどの中空体とした場合、その内部空間を冷媒の流路に利用することが可能である。
【0039】
超電導導体層112及び外側超電導導体層114は、例えば、酸化物超電導導体を有するテープ状の超電導線材で形成することができる。超電導線材は、例えば、テープ状Bi2223系超電導線材(Ag-MnやAgなどの安定化金属中に酸化物超電導導体からなるフィラメントが配されたシース線)、テープ状RE123系薄膜超電導線材(RE:希土類元素(例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)。金属基板に酸化物超電導相が成膜された積層線材)が挙げられる。超電導導体層112及び外側超電導導体層114は、上記テープ状の超電導線材を螺旋状に巻回して形成した単層構造又は多層構造が挙げられる。
【0040】
電気絶縁層113は、超電導導体層112の外側に形成され、例えば、PPLP(登録商標、Polypropylene Laminated Paper)などを超電導導体層112の上に巻回することで形成することができる。
【0041】
保護層115は、それよりも内側の構造を機械的に保護すると共に、しゃへい層(外側超電導導体層)114と収納管120との間に必要な絶縁を確保するためのものであり、クラフト紙などを巻回することで形成されている。また、巻回したクラフト紙などの上から更に布テープなどを巻き付けて補強することが好ましい。
【0042】
このような構成のケーブルコア110を収納管120内に収納することで超電導ケーブル100が構成される。収納管120は、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属製の一重管であり、可撓性を付与するためにコルゲート管としてもよい。この収納管120は、基本的には断熱性能を有さなくてもよく、断熱性能は後述する断熱管140により確保される。また、後述するように、この収納管120に断熱性能を持たせてもよい。
【0043】
そして、このような超電導ケーブル100を1つの断熱管140内に多条に収納することで超電導ケーブル線路が構成される(図1参照)。断熱管140は、内管141と外管142とを有する二重管構造であり、両管141,142の間に真空断熱層が形成されている。内管141及び外管142は、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属製のストレート管やコルゲート管を利用することができる。その他、内管141と外管142との間にスーパーインシュレーションなどの断熱材や間隔を保持するためのスペーサーを配置してもよく、また、断熱管140(外管142)の外周に防食層を形成してもよい。
【0044】
上記した収納管120とケーブルコア110との間の空間(以下、副空間と呼ぶ場合がある)並びに断熱管140と超電導ケーブル100との間の空間(以下、主空間と呼ぶ場合がある)は、冷媒を流通させる冷媒流路に利用することができる。収納管120は、基本的に断熱性能を有さないので、主空間に流通する冷媒によって収納管120内のケーブルコア110(超電導導体層112及び外側超電導導体層114)を冷却することは可能である。即ち、副空間は、液体冷媒が充填されない空間としてもよく、その場合、この空間に例えばヘリウムガスなどのガスを充填することが挙げられる。一方、両空間を冷媒流路に利用することで、冷媒流路が2系統になり、信頼性が向上する。また、流路断面積が大きくなることから、冷却区間を長くすることができる。
【0045】
両空間を冷媒流路に利用する場合、一方の空間を冷媒の往路とし、他方の空間を冷媒の復路とすることができる。なお、超電導ケーブル線路には、多条の超電導ケーブル100を備えるため、いずれかの超電導ケーブル100の副空間を冷媒の往路とし、残りの超電導ケーブル100の副空間を冷媒の復路としてもよい。また、超電導ケーブル100とは別に冷媒流路となる冷媒管を同じ断熱管140内に収納するようにして、超電導ケーブル100の副空間を冷媒の往路とし、この冷媒管を冷媒の復路としてもよい。この冷媒管には、収納管120と同じもの用いることができる。
【0046】
主空間を冷媒流路とする場合、副空間には、冷媒を充填しておく構成としてもよい。この場合、主空間に流通する冷媒によって、副空間に充填された冷媒を冷却して、ケーブルコア110(超電導導体層112及び外側超電導導体層114)を冷却する。また、副空間に液体窒素などの冷媒を流通・充填することで、ケーブルコア110の電気絶縁性能を高めることが可能である。特に、この構成は、超電導導体からの発生損失を伴わない直流用途に好適である。また、副空間に冷媒を充填しておくことで、この空間を予備の冷媒流路とすることが可能である。これにより、主空間の冷媒流路において、冷媒の流通が阻害される異常事態が生じても、副空間に充填していた冷媒を流通させることで、冷却性能を確保することができる。また、主空間に流通する冷媒のみでは十分な冷却性能を得られない場合、副空間に充填していた冷媒を流通させることにより、冷却性能を高めることも可能である。
【0047】
一方、副空間を冷媒流路とする場合、主空間を真空とすることで、侵入熱をより低減することができる。この場合、断熱性能は、主空間と超電導ケーブルを収納する断熱管の組み合わせによって確保されるため、主空間の真空度は、断熱管における真空断熱層の真空度より低いものとしてよいし、或いは断熱管に用いるスーパーインシュレーションなどの断熱材を減らすなど、全体として断熱性能が確保されるように両者の断熱性能を下げてもよい。これにより、トータルとしてのコストパフォーマンスを改善することができる。
【0048】
<実施例2>
図3に示す超電導ケーブル線路は、ケーブルコアを収納する収納管130を断熱管とした例である。この超電導ケーブル線路は、収納管130の構成が異なる点を除いて、図1、2を用いて説明した実施例1の超電導ケーブル線路と同様であり、ここでは、その相違点を中心に説明する。
【0049】
収納管130は、断熱管140と同様、内管131と外管132とを有する二重管構造の断熱管であり、両管131,132の間に真空断熱層が形成されている。内管131及び外管132は、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属製のコルゲート管を利用することができる。その他、断熱管140と同様に、内管131と外管132との間にスーパーインシュレーションなどの断熱材や間隔を保持するためのスペーサーを配置してもよい。
【0050】
この収納管130は、真空断熱層を有し、断熱性能を有する。このように収納管130が真空断熱層を有する断熱管であることで、この収納管130と断熱管140とで二重の断熱構造となるため、侵入熱をより低減することができる。この場合、収納管130と断熱管140とのいずれか一方において、例えば真空断熱層の真空度、即ち断熱性能が低下しても、他方により断熱性能が維持されるため、より信頼性が高い。また、断熱性能は、収納管130と断熱管140の組み合わせによって確保されるため、一方の断熱性能を他方よりも低くしてもよいし、全体として断熱性能が確保されるように両者の断熱性能を下げてもよい。
【0051】
収納管130とケーブルコア(図示せず)との間の空間、即ち副空間は、冷媒流路となる。ここで、上述したように、断熱管140と超電導ケーブル100との間の空間(即ち、主空間)も冷媒流路とし、両空間を冷媒流路に利用する場合、実施例1の収納管120(図1参照)では、収納管120が断熱性能を持たないため、一方の空間に流通する冷媒と他方の空間に流通する冷媒との間で熱交換が起こり得る。つまり、低温に冷却された往路側の冷媒が、温度上昇した復路側の冷媒の熱影響を受け易く、これにより冷却区間が制約される虞がある。これに対し、実施例2の収納管130(図3参照)では、収納管130が真空断熱層を有する断熱管であるため、低温に冷却された往路側の冷媒が、温度上昇した復路側の冷媒の熱影響を受けるのを回避することができ、冷却区間を極力長くすることができる。特に、この構成は、超電導導体からの発生損失のない直流用途よりも、超電導導体からの発生損失のある交流用途の方がメリットが大きい。
【0052】
(回線構成例)
例えば、図1や図3に示す超電導ケーブル線路において、3相交流電力の供給路とする場合、3条の超電導ケーブル100(ケーブルコアの超電導導体層)をそれぞれ各相に対応させ、3条の超電導ケーブル100を一組として1回線を構成することができる。図1や図3に示す超電導ケーブル線路では、例えば、6条の超電導ケーブル100で2回線を構成し、残る1条の超電導ケーブル100を上述した冷媒管に置き換えることが挙げられる。また、直流電力の供給路とする場合、いずれか1条の超電導ケーブル100(ケーブルコアの超電導導体層)を電流の往路とし、別の1条の超電導ケーブル100(ケーブルコアの超電導導体層)を電流の帰路として、2条の超電導ケーブル100を一組として1回線を構成することができる。図1や図3に示す超電導ケーブル線路では、例えば、6条の超電導ケーブル100で3回線を構成し、残る1条の超電導ケーブル100を上述した冷媒管に置き換えることが挙げられる。さらに、上述したように、ケーブルコアに外側超電導導体層を有する場合は、この外側超電導導体層を電流の帰路とすることで、1条の超電導ケーブル100で1回線を構成することも可能である。なお、超電導ケーブル100の条数は、これに限定されるものではなく、必要な回線数に応じて適宜変更することが可能である。
【0053】
(線路構成例)
次に、上述したような超電導ケーブル線路を利用して電源から複数の負荷に電力を供給する場合の線路構成例を、図4を用いて説明する。ここでは、複数の電源S11…S1nから超電導ケーブル100を介して複数の負荷L11…L1nに直流電力を供給する場合を例に挙げ説明する。電源S11…S1nは、図示しない変電所から送られてきた交流電力を変圧器や交直変換器などによって直流電力に変換し供給する直流電源である。負荷L11…L1nは、例えば電気炉などであり、各負荷はそれぞれ離れた位置に設置されている。電源S11…S1nと負荷L11…L1nとはそれぞれ対応している。また、2条の超電導ケーブル100を一組として1回線を構成しており、図面上は省略しているが、負荷L11…L1nの数に応じた回線数分の超電導ケーブル100が断熱管140内に収納されている。各超電導ケーブル100の長さは、対応する電源から負荷までの距離に応じて設定されている。
【0054】
超電導ケーブル線路には、図4に示すように、負荷L11…L1nに接続され、各超電導ケーブル100から電力を引き出す複数の取出部150と、電源S11…S1nに接続され、各超電導ケーブル100から電力を引き入れる複数の給電部170と、が設けられている。取出部150は、各超電導ケーブル100の端部において、ケーブルコア110の端部から常電導導体を介して常温側に電力を引き出す構造体である。取出部150は、超電導ケーブル線路において、各負荷に対応する所定の箇所にそれぞれ設けられており、超電導ケーブル線路の長手方向に離間して設けられている。
【0055】
(取出部の一例)
取出部150の構造の一例を、図5、6を用いて説明する。取出部150は、一端側にケーブルコアの超電導導体層に接続される接続部151を有し、他端が常温側に引き出される引き出し導体部152と、この引き出し導体部152の一端側(ケーブルコアとの接続側)を収納する断熱容器部153と、を備える。また、断熱容器部153には、常温側に引き出された引き出し導体部152の根元部分が挿通される延長部154が形成されており、断熱容器153(延長部154を含む)と引き出し導体部152との間には電気絶縁部155が形成されている。接続部151は、筒状の部材であり、超電導導体層112とスリーブや編組線などを介して接続される。接続部151及び引き出し導体部152は、常電導導体で形成されている。断熱容器部153は、筒状の部材であり、両端開口部に断熱管140(図4参照)の各端部を挿入する嵌合部156が設けられている。また、断熱容器部153は、二重容器構造とし、その内部空間(内容器と外容器との間の空間)に真空断熱層を形成してもよい。電気絶縁部155は、断熱容器153と引き出し導体部152との間を気密に封止すると共に、電気的に絶縁する部材である。電気絶縁部155は、固体絶縁材料、例えば、エポキシ樹脂やFRPなどの樹脂で形成されている。この電気絶縁部155は、延長部154に引き出し導体部152を挿通した状態で樹脂を流し込み、硬化させて一体成形することにより形成することが可能である。この例では、引き出し導体部152が常温側で屈曲し、引き出し導体部152の他端側が断熱容器部153の軸方向に沿って延びている。
【0056】
この取出部150の取付方法の一例を、図7も用いて説明する。取出部150は、超電導ケーブル線路において、断熱管140の途中に取り付ける。まず、超電導ケーブル100の端部において、収納管120からケーブルコア110の端部を引き出し、これを段剥ぎ処理して、超電導導体層112を露出させる。露出させた超電導導体層112の端部の外周に、常電導導体のスリーブ(図示せず)を嵌め込み、ハンダで接続する。取出部150(断熱容器部153)は、その中心軸を通る平面で分割可能に構成されており、両端開口部の嵌合部156に断熱管140の各端部が挿入されるように断熱容器部153を断熱管140の外側から取り付けて、断熱容器部153と断熱管140とを接合する。断熱容器部153には、図示していないが、引き出し導体部152の一端側に設けられた接続部151と露出させた超電導導体層112との接続作業を行うためのハンドホールが設けられている。また、図では省略しているが、上記段剥ぎ処理といった超電導ケーブル100の端部処理や上記接続作業を行うために、超電導ケーブル100やケーブルコア110の端部を支持する支持部材(図示略)が設けられている。接続部151はその中心軸を通る平面で分割可能であり、超電導導体層112の外周に接続したスリーブの外側から接続部151を取り付け、超電導導体層112と接続部151とをスリーブを介して接続する。以上により取出部150の取り付けが完了する。取出部150における引き出し導体部152の他端側を負荷に接続することで、超電導ケーブル100から引き出された電力が取出部150(引き出し導体部152)を介して負荷に供給される。また、この場合、接続部151及び引き出し導体部152により、露出させた超電導導体層112の端部を支持することが可能である。
【0057】
この例では、上記したように断熱容器部153に断熱管140の端部が挿入される嵌合部156が設けられており、嵌合部156で断熱容器部153と断熱管140とが重なり合うようにしている。このように、断熱容器部153と断熱管140とを連結する場合に両者を重ね合わせることで、両者間の沿面距離を長くすることができ、外部からの侵入熱を低減することができる。
【0058】
上記した接続部151と超電導導体層112との接続構造では、接続部151が筒状の部材である場合を例に挙げ説明したが、接続部151はこれに限定されるものではなく、例えば、板状の部材であってもよい。この場合、露出させた超電導導体層112の端部、或いはケーブルコア110の端部を支持部材により支持した状態で、超電導導体層112の外周に接続したスリーブと板状の接続部とを常電導導体の編組線を介して接続することが挙げられる。
【0059】
一方、給電部170(図4参照)は、各超電導ケーブル100の端部において、常温側から常電導導体を介してケーブルコア110の端部に電力を引き入れる構造体である。給電部170は、超電導ケーブル線路において、各電源に対応する所定の箇所にそれぞれ設けられており、超電導ケーブル線路の長手方向に離間して設けられている。
【0060】
(給電部の一例)
給電部170の構造の一例を、図8を用いて説明する。給電部170には、超電導ケーブル100の収納管120に冷媒を流通させるため、収納管120から分岐する冷媒導管180が設けられている。また、給電部170は、一端側にケーブルコア110の超電導導体層112と電気的に接続される接続部171を有し、他端が常温側に引き出される引き出し導体部172と、この引き出し導体部172の一端側(ケーブルコア110との接続側)を収納する断熱容器部173(延長部174、電気絶縁部175、嵌合部176を含む)と、を備える。この接続部171、引き出し導体部172及び断熱容器部173の構成は、上記した取出部150(図5〜7参照)の接続部151、引き出し導体部152及び断熱容器部153(延長部154、電気絶縁部155、嵌合部156を含む)と同様である。ただし、給電部170では、電力経路と冷媒経路とを分離するため、接続部171と超電導導体層112との接続構造が上記した取出部150(図7参照)と異なる。具体的には、収納管120の端部において、上記した冷媒導管180を設けると共に、リード161が貫通する絶縁ブロック162を収納管先端の開口部に嵌め込むことにより開口部を閉塞している。リード161は、常電導導体で形成されており、絶縁ブロック162は、エポキシ樹脂などの固体絶縁材料で形成されている。この絶縁ブロック162により、収納管120内の冷媒が封止される。絶縁ブロック162と収納管120との間の封止性を高めるため、絶縁ブロック162の外周にOリング等を装着してもよい。また、絶縁ブロック162を貫通するリード161の一端には、露出させた超電導導体層112の端部が接続され、リード161の他端には、引き出し導体部172の接続部171が接続される。これにより、超電導導体層112と接続部171とがリード161を介して電気的に接続される。そして、給電部170における引き出し導体部172の他端側を電源に接続することで、電源から給電部170(引き出し導体部172)を介して超電導ケーブル100に電力が供給される。この例では、リード161と超電導導体層112との接続は、常電導導体のスリーブ163を使用している。具体的には、スリーブ163の一端側に超電導導体層112の端部を挿入してハンダ接続すると共に、スリーブ163の他端側にリード161の一端を挿入して圧縮接続することで、リード161と超電導導体層112とを電気的に接続している。その他、リード161と超電導導体層112との接続に編組線等を使用して、リード161と超電導導体層112とを電気的に接続してもよい。また、ケーブルコア110の端部には、補強絶縁層164を形成している。
【0061】
一方、冷媒導管180は、図8に示すように、断熱容器部173から外部(常温側)に引き出されており、後述する冷媒用冷却システムに接続される。冷媒導管180は、収納管120と同様の構成とすることができる。冷媒導管180の外部に引き出された部分には、侵入熱を抑えるため、断熱部165が設けられている。この断熱部165は、断熱材により形成してもよいし、冷媒導管180自体を真空断熱層を有する断熱管としてもよい。
【0062】
(冷媒循環経路の一例)
上記した取出部150(図7参照)と給電部170(図8参照)を備える超電導ケーブル線路における冷媒循環経路の一例を、図9を用いて説明する。まず、図9に示す冷媒用冷却システム190について説明する。冷却システム190は、冷媒タンク191、冷凍機192、循環ポンプ193を備える。冷媒タンク191は、断熱容器で構成されており、冷媒を貯蔵する。冷凍機192は、冷媒タンク191に貯蔵された冷媒を冷却する。循環ポンプ193は、冷媒タンク191に貯蔵された冷媒を供給し、超電導ケーブル線路に冷媒を循環させる。この例では、各超電導ケーブル100の給電部170に設けられた冷媒導管180(図8参照)を冷媒タンク191に接続し、冷媒タンク191内の冷媒を循環ポンプ193により冷媒導管180を介して各超電導ケーブル100(収納管120)に供給する。各収納管120を通り、ケーブルコア110の冷却に利用された冷媒は、取出部150で断熱管140内に流出し、断熱管140を通って供給側に戻される。即ち、副空間(収納管120とケーブルコア110との間の空間)と主空間(断熱管140と超電導ケーブル100との間の空間)とを冷媒流路に利用し、副空間を冷媒の往路、主空間を冷媒の復路としている。断熱管140を通って戻ってきた冷媒は、断熱管140の端部に設けられた冷媒導管181を介して冷媒タンク191に戻す。冷媒タンク191内の冷媒は、ポンプ194により冷凍機192との間で循環させることで、所定温度に冷却・維持されている。
【0063】
上記した冷媒循環経路の一例では、副空間を冷媒の往路とし、主空間を冷媒の復路とする場合を例に挙げ説明したが、冷媒導管181を介して断熱管140に冷媒を供給し、主空間も冷媒の往路とすることも可能である。ただし、その場合は、超電導ケーブル線路に冷媒流路となる冷媒管(図示せず)を別途収納して、この冷媒管を冷媒の復路とし、冷媒管を通って供給側に戻ってきた冷媒を冷媒タンク191に戻すように構成する。或いは、少なくとも一つの超電導ケーブル100の取出部150で収納管120に冷媒を流入させ、この超電導ケーブル100の副空間を冷媒の復路とし、この超電導ケーブル100の収納管120を通って供給側に戻ってきた冷媒を、給電部170に設けられた冷媒導管180(図8参照)を介して冷媒タンク191に戻すように構成する。また、冷媒タンク191において、供給される冷媒が貯蔵される供給槽と、冷却に利用され戻ってきた冷媒が貯蔵される回収槽とを分離し、回収槽の冷媒をポンプ194により冷凍機192に送り、冷凍機192で所定温度に冷却した後、供給槽に戻すように構成してもよい。
【0064】
(取出部の別の例)
取出部の構造の別の例を、図10を用いて説明する。この例では、2条の超電導ケーブル100を一組として、超電導ケーブル線路の同じ箇所で各超電導ケーブル100から電力を引き出す取出部150について説明する。この取出部150は、各超電導ケーブル100に対応するように、一端側にケーブルコア110の超電導導体層112と電気的に接続される接続部151を有し、他端が常温側に引き出される2つの引き出し導体部152を備え、各引き出し導体部152の一端側(ケーブルコア110との接続側)を収納する断熱容器部153(延長部154、電気絶縁部155、嵌合部156を含む)を備える。この接続部151、引き出し導体部152及び断熱容器部153の構成は、図5〜7を用いて説明した上記取出部150と同様であり、説明を省略する。また、取出部150には、電力経路と冷媒経路とを分離するため、各超電導ケーブル100の収納管120同士を連通する冷媒連通管185が設けられると共に、接続部151と超電導導体層112との接続構造が設けられる。この接続構造は、図8を用いて説明した上記給電部170と同様であり、具体的には、各超電導ケーブルの収納管120端部において、リード161が貫通する絶縁ブロック162を収納管先端の開口部に嵌め込むことにより開口部を閉塞している。超電導導体層112と接続部151とをリード161を介して電気的に接続したり、リード161と超電導導体層112とを電気的に接続することについては、上記給電部170と同様とすることができ、その説明を省略する。そして、取出部150における各引き出し導体部152の他端側を負荷にそれぞれ接続することで、各超電導ケーブル100から引き出された電力が取出部150(各引き出し導体部152)を介して負荷に供給される。
【0065】
一方、冷媒連通管185は、図10に示すように、断熱容器部153に収納されており、一方の超電導ケーブル100の収納管120と他方の超電導ケーブル100の収納管120との間で冷媒を行き来させることが可能である。
【0066】
(給電部の別の例)
給電部の構造の別の例を、図11を用いて説明する。この例では、2条の超電導ケーブル100を一組として、超電導ケーブル線路の同じ箇所で各超電導ケーブル100に電力を引き入れる給電部170について説明する。この給電部170は、各超電導ケーブル100に対応するように、一端側に接続部171有し、他端が常温側に引き出される2つの引き出し導体部172を備え、各引き出し導体部172の一端側を収納する断熱容器部173を備える。この接続部171、引き出し導体部172及び断熱容器部173の構成は、図8を用いて説明した上記給電部170と同様であり、説明を省略する。また、給電部170には、電力経路と冷媒経路とを分離するため、各超電導ケーブル100の収納管120からそれぞれ分岐する冷媒導管180が設けられると共に、接続部171と超電導導体層112との接続構造が設けられる。具体的には、各超電導ケーブルの収納管120端部において、リード161が貫通する絶縁ブロック162を収納管先端の開口部に嵌め込むことにより開口部を閉塞しており、接続部171と超電導導体層112との接続構造については、図8を用いて説明した上記給電部170と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
一方、各冷媒導管180はそれぞれ、図11に示すように、断熱容器部173から外部(常温側)に引き出されており、後述する冷媒用冷却システムに接続される。各冷媒導管180は、収納管120と同様の構成とすることができる。冷媒導管180の外部に引き出された部分には、侵入熱を抑えるため、断熱部165が設けられている。この断熱部165は、断熱材により形成してもよいし、冷媒導管180自体を真空断熱層を有する断熱管としてもよい。
【0068】
(冷媒循環経路の別の例)
上記した取出部150(図10参照)と給電部170(図11参照)を備える超電導ケーブル線路における冷媒循環経路の一例を、図12を用いて説明する。まず、図12に示す冷媒用冷却システム190の基本構成は、図9を用いて説明した上記冷却システム190と同様に、冷媒タンク191、冷凍機192、循環ポンプ193を備える。この例では、2条の超電導ケーブル100を一組として、一方の超電導ケーブル100の副空間を冷媒の往路とし、他方の超電導ケーブル100の副空間を冷媒の復路とする。具体的には、給電部170に設けられた一方の冷媒導管180(図11参照)を冷媒タンク191に接続し、冷媒タンク191内の冷媒を循環ポンプ193により冷媒導管180を介して一方の超電導ケーブル100(収納管120)に供給する。一方の超電導ケーブル100の収納管120を通った冷媒は、取出部150に設けられた冷媒連通管185(図10参照)を介して、他方の超電導ケーブル100(収納管120)に送られ、他方の超電導ケーブル100の収納管120を通って供給側に戻される。他方の超電導ケーブル100の収納管120を通って戻ってきた冷媒は、給電部170に設けられた他方の冷媒導管180(図11参照)を介して冷媒タンク191に戻す。
【0069】
上記した冷媒循環経路の別の例では、取出部150に設けた冷媒連通管185(図10参照)により、ある超電導ケーブル100の副空間を冷媒の往路とし、別の超電導ケーブル100の副空間を冷媒の復路とするため、断熱管140内、即ち主空間を真空とすることが可能である。また、この主空間も冷媒流路に利用してもよい。例えば、図9を用いて説明した上記冷媒循環経路の一例のように、断熱管140に冷媒導管181(図12参照)を設け、この冷媒導管181を介して断熱管140に冷媒を供給して、主空間を冷媒の往路とすると共に、超電導ケーブル線路に冷媒管(図示せず)を別途収納して、この冷媒管を主空間の冷媒の復路となるように構成してもよい。或いは、少なくとも一つの取出部150において、超電導ケーブル100の収納管120内の空間と断熱管140内の空間とを連通するようにして、断熱管140を通った冷媒をこの超電導ケーブル100の収納管120内に流入させ、この超電導ケーブル100の副空間を主空間の冷媒の復路ともなるように構成してもよい。
【0070】
(接続部と超電導導体層との接続構造の更に別の例)
図8、図10や図11を用いて説明した上記取出部150や上記給電部170における接続部(151,171)と超電導導体層112との接続構造では、貫通するリード161を有する絶縁ブロック162を使用する場合を例に挙げて説明したが、ここでは、図13を用いて、接続部と超電導導体層との接続構造の更に別の例を説明する。なお、図13は、要部のみを示し、上記取出部150や上記給電部170のところで説明した接続部(151,171)、引き出し導体部(152,172)及び断熱容器部(153,173)等その他の部分については図示を省略している。図13に示す接続構造では、収納管120の端部において、露出させた超電導導体層112の端部が挿通される貫通孔166を有する絶縁ブロック167を使用し、これを収納管先端の開口部に嵌め込むことにより開口部を閉塞している。この絶縁ブロック167は、収納管120側にケーブルコア110の端部が挿入される挿入穴が形成されており、ケーブルコア110の端部がこの挿入穴に保持されている。絶縁ブロック167は、エポキシ樹脂などの固体絶縁材料で形成されており、収納管120との間の封止性を高めるために外周にOリング等を装着してもよい。また、超電導導体層112の端部が絶縁ブロック167の貫通孔166に挿通され、収納管120の外側に引き出された超電導導体層112の端部が上記接続部に電気的に接続される。この例では、超電導導体層112の端部を常電導導体のスリーブ168に挿入してハンダ接続し、このスリーブ168の外側から上記接続部を取り付け、超電導導体層112と上記接続部とをスリーブ168を介して接続する。その他、編組線等を使用して、スリーブ168と上記接続部とを電気的に接続してもよい。図13に示すこの接続構造は、貫通するリード161を有する絶縁ブロック162を使用する構造に比較して簡易であり、特に低電圧用途に有効である。なお、この構造の場合は、超電導導体層112の端部が収納管120の外側に引き出された状態となるため、収納管120の外側の空間、即ち断熱容器部(図8、図10及び図11参照)に冷媒が流通するように、主空間を冷媒流路に利用する。
【0071】
(給電部の更に別の例)
給電部の構造の更に別の例を、図14を用いて説明する。この例では、図11を用いて説明した上記給電部170と同様に、2条の超電導ケーブル100を一組として、超電導ケーブル線路の同じ箇所で各超電導ケーブル100に電力を引き入れる給電部170について説明する。図14に示す給電部170は、超電導ケーブル線路の給電部を設ける箇所で、断熱管140から分岐断熱管145が分岐している。分岐断熱管145は、断熱管140と同様、真空断熱層を有する断熱管であり、断熱管140内の空間と分岐断熱管145内の空間とは連通している。また、断熱管140から分岐断熱管145に超電導ケーブル100が引き入れられ、分岐断熱管145の端部145eから超電導ケーブル100の端部が貫通して外部(常温側)に引き出されている。そして、分岐断熱管145から引き出された超電導ケーブル100の収納管120端部において、電力経路と冷媒経路とを分離するため、図11を用いて説明した上記給電部170と同様に、収納管120から分岐する冷媒導管180を設けると共に、接続部171(図11参照)と超電導導体層112との接続構造を設けることで、給電部170を構成する。具体的には、リード161が貫通する絶縁ブロック162を収納管120の開口部に嵌め込むことにより開口部を閉塞しており、接続部と超電導導体層112との接続構造については、図11を用いて説明した上記給電部170と同様であるので、その説明を省略する。図14に示す給電部170の場合、断熱管140(分岐断熱管145)から超電導ケーブル100の端部が外部に引き出されているため、超電導ケーブル100の端部処理や接続部と超電導導体層112との接続作業が行い易い。なお、この例では、分岐断熱管145から引き出された超電導ケーブル100の端部において、ケーブルコア110を収納する収納管120が真空断熱層を有する断熱管で構成されている。
【0072】
超電導ケーブル線路において、負荷の数が増加する、即ち回線数が増加すると、その分超電導ケーブルの条数も増やす必要があり、その場合、断熱管のサイズも大きくする必要がある。そこで、複数の超電導ケーブル線路を並列に構成してもよい。例えば図15は、電源S11…S1nから超電導ケーブル100を介して負荷L11…L1nに電力を供給する超電導ケーブル線路と、電源S21…S2nから超電導ケーブル100を介して負荷L21…L2nに電力を供給する超電導ケーブル線路と、を並列に構成した一例を示す。これにより、1つの超電導ケーブル線路における断熱管140のサイズを小さくすることができる。
【0073】
また、上述した超電導ケーブル線路では、いずれか1条の超電導ケーブル100を電流の往路とし、別の1条の超電導ケーブル100を電流の帰路として、2条一組で1回線を構成した場合を例に説明したが、ケーブルコアに外側超電導導体層を有する場合は、この外側超電導導体層を電流の帰路とすることで、1条の超電導ケーブルで1回線を構成することできる。この場合、取出部は、引き出し導体部を2つ設けるようにして、収納管から引き出したケーブルコアの端部を段剥ぎ処理して、外側超電導導体層と超電導導体層とを露出させ、それぞれに接続部を取り付け、引き出し導体部を接続するとよい。
【0074】
さらに、特開2004−265715号公報に記載されるように、ケーブルコアの超電導導体層を層間絶縁層を介在させて多層構造とすることで、1条の超電導ケーブルで複数回線を構成することが可能である。この場合も、取出部に各超電導導体層に応じた複数の引き出し導体部を設けておき、段剥ぎ処理して露出させた各超電導導体層にそれぞれ接続部を取り付け、引き出し導体部を接続することで、各超電導導体層から個々に電力を引き出すことが可能である。
【0075】
<変形例1>
上記した実施例1では、超電導ケーブルの収納管が一重管である場合、上記した実施例2では、超電導ケーブルの収納管を二重管構造の断熱管である場合についてそれぞれ説明したが、超電導ケーブルの長手方向における収納管の少なくとも一部を一重管構造とし、それ以外の部分を二重管構造として、収納管を部分的に二重管構造(断熱管)としてもよい。例えば図16に示すように、超電導ケーブル100の長手方向の中央部を一重管構造の収納管120とし、超電導ケーブル100の長手方向の端部を二重管構造の収納管130とすることが挙げられる。なお、図16では、簡単のため、断熱管140内に1条の超電導ケーブル100しか図示していないが、実際には多条の超電導ケーブル100が配置されている。
【0076】
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、本発明の範囲は上述した構成に限定されるものではない。例えば、超電導ケーブルを収納する断熱管は、断面円形状のものを用いる他、断面円形状以外の形状、例えば断面多角形状や断面楕円形状のものを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の超電導ケーブル線路は、電源から複数の負荷に電力を供給する線路に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
100 超電導ケーブル
110 ケーブルコア
111 フォーマ 112 超電導導体層 113 電気絶縁層
114 しゃへい層(外側超電導導体層) 115 保護層
120 収納管
130 収納管
131 内管 132 外管
140 断熱管
141 内管 142 外管
145 分岐断熱管 145e 端部
150 取出部
151 接続部 152 引き出し導体部
153 断熱容器部 154 延長部
155 電気絶縁部 156 嵌合部
161 リード 162 絶縁ブロック
163 スリーブ 164 補強絶縁層
165 断熱部
166 貫通孔 167 絶縁ブロック 168 スリーブ
170 給電部
171 接続部 172 引き出し導体部
173 断熱容器部 174 延長部
175 電気絶縁部 176 嵌合部
180,181 冷媒導管 185 冷媒連通管
190 冷媒用冷却システム
191 冷媒タンク 192 冷凍機 193 循環ポンプ
194 ポンプ
S11…S1n 電源 L11…L1n 負荷
200 超電導ケーブル 220 断熱管
300 超電導ケーブル 320 収納管 340 断熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から複数の負荷に電力を供給する超電導ケーブル線路であって、
超電導線材で形成された超電導導体層を有するケーブルコアが収納管内に収納された多条の超電導ケーブルと、
真空断熱層を有し、前記多条の超電導ケーブルを収納する1つの断熱管と、
前記各負荷に接続され、前記各超電導ケーブルから電力を引き出す複数の取出部と、を備えることを特徴とする超電導ケーブル線路。
【請求項2】
前記取出部が、超電導ケーブル線路の長手方向に離間して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項3】
前記ケーブルコアを収納する前記収納管が、真空断熱層を有する断熱管であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項4】
前記多条の超電導ケーブルを収納する前記断熱管と前記超電導ケーブルとの間の空間を真空としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項5】
前記多条の超電導ケーブルを収納する前記断熱管と前記超電導ケーブルとの間の空間を冷媒流路としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項6】
前記ケーブルコアを収納する前記収納管と前記ケーブルコアとの間の空間を冷媒流路とし、
前記断熱管と各超電導ケーブルとの間の空間を主空間とし、前記収納管と前記ケーブルコアとの間の空間を副空間としたとき、主空間と副空間のいずれか一方の空間を冷媒の往路とし、他方の空間を冷媒の復路としたことを特徴とする請求項5に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項7】
前記ケーブルコアを収納する前記収納管と前記ケーブルコアとの間の空間に冷媒を充填したことを特徴とする請求項5に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項8】
前記ケーブルコアを収納する前記収納管と前記ケーブルコアとの間の空間を予備の冷媒流路としたことを特徴とする請求項7に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項9】
前記超電導ケーブルが、直流超電導ケーブルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項10】
前記超電導ケーブルの長手方向の少なくとも一部において、前記ケーブルコアを収納する前記収納管が、真空断熱層を有する断熱管であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項11】
前記超電導ケーブルの長手方向端部において、前記ケーブルコアを収納する前記収納管が、真空断熱層を有する断熱管であることを特徴とする請求項10に記載の超電導ケーブル線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−73831(P2013−73831A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212972(P2011−212972)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】