説明

超電導コイル及びその製造方法

【課題】超電導テープ線材の基板と補強テープ線材の熱膨張率の相違に起因する超電導層の引張応力を低減して、超電導コイルの許容電流値を適正に保持することができる超電導コイルを提供する。
【解決手段】巻枠31の巻芯33に設けた第1電極端子34に対し超電導テープ線材11及び補強テープ線材21を積層して連結し、前記巻枠31を回転して、ボビン45から超電導テープ線材11をバックテンションを負荷させないで巻き戻しつつ前記巻芯33の外周面に巻き取る。又、ボビン47から補強テープ線材21をバックテンションを負荷させた状態で巻き戻しつつ前記巻芯33の外周面に前記超電導テープ線材11とともに巻き付ける。両超電導テープ線材11、補強テープ線材21の巻回終了後に超電導テープ線材11、補強テープ線材21の終端部を第2電極端子35に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば超電導電力貯蔵装置、磁気共鳴画像診断装置、核磁気共鳴装置、磁気浮上装置等の各種の機器に用いられる超電導コイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻枠の巻芯に超電導テープ線材を巻回して製造された超電導コイルに通電した場合、図9(a)に示すように、コイルCに流れる電流が円環状になり、この通電電流によりコイルCの内側に磁束が発生する。この磁束により、図9(b)に示すようにコイルCにはローレンツ力がコイルCの半径方向外方に作用し、コイルCにフープ応力が生じ、この応力によってコイルCにはその長手方向に引張応力が作用する。この引張応力が作用すると、図10に示すように応力が零とした場合の超電導コイルの許容電流値を1とすると、引張応力が例えば0.2%の場合には、若干電流が増加するがそれよりも引張応力が大きくなると、許容電流値が低下する。反対に、コイルCに圧縮応力が作用する場合にはその圧縮応力の増大に伴って許容電流値が低下する。
【0003】
前記の問題を解決するために、特許文献1には、次のような技術が提案されている。即ち、可撓性のあるテープ状の基材上に酸化物超電導層を形成し、前記酸化物超電導層が基材の長手方向に関して圧縮の予歪を有しているテープ状の酸化物超電導線及びこの超電導線を巻芯に巻回した超電導コイルが提案されている。そして、超電導コイルの通電時に、前述したコイルに作用するフープ応力によって前記酸化物超電導層に引張応力が作用した場合に、前記酸化物超電導層の圧縮の予歪が相殺されて、酸化物超電導層の歪が打ち消され、許容電流値が低下するのを防止するようになっている。
【特許文献1】特開平3−138817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示された酸化物超電導線は、テープ状の基材の片面に酸化物超電導層を積層した構成及び前記酸化物超電導層の表面に安定化層を形成した構成を対象としているので、これ以外の構成の酸化物超電導線に適用可能な技術が望まれていた。これについて、以下に説明する。
【0005】
超電導コイルの能力を向上させるために、該コイルに通電される電流は、増大する必要がある。この通電電流の許容値が高くなると、前述したフープ応力も大きくなり、コイルに作用する引張応力も大きくなる。このため、近年、超電導テープ線材を、例えばハステロイ等の引張強度に優れたテープ状の基板と、該基板の片面に形成された超電導層と、該超電導層の表面に形成された安定化層とにより構成している。又、カーボンファイバーを平織してエポキシ樹脂等で扁平状に一体形成し、この補強シート材を裁断して引張強度に優れた補強テープ線材を製造する。そして、巻枠の巻芯に取り付けられた第1電極端子に対し、超電導テープ線材及び前記補強テープ線材の始端部を連結した後、前記巻芯に対し前記両テープ線材を積層状態で共巻きし、終端部をコイル基板に取り付けられた第2電極端子に連結することにより、前記フープ応力によって発生するコイルの引張応力を抑制する対策が考えられている。
【0006】
しかしながら、前記超電導テープ線材と補強テープ線材を共巻した超電導コイルには、次のような新たな問題があることが判明した。すなわち、超電導コイルが作動されて常温状態から極低温状態に切り替えられると、超電導テープ線材のハステロイよりなる基板の冷却時の熱収縮率が大きく、一方、カーボンファイバーよりなる補強テープ線材の熱収縮率が小さいので、超電導テープ線材の基板の熱収縮によって収縮しようとする超電導層の収縮が補強テープ線材によって抑制され、該超電導層に引張応力が負荷される。従って、超電導コイルの許容電流値が低下し、超電導コイルに十分な電流を流して高磁場化あるいはエネルギー高密度化を図ることができず、コイルのコンパクト化、低コスト化を十分に図ることができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、前記従来の技術に存する問題点を解消して、超電導コイルが低温状態で運転される場合に、超電導テープ線材の基板と補強テープ線材の熱膨張率の相違に起因する超電導層の引張応力をなくして、超電導コイルの許容電流値を適正に保持することができる超電導コイル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、テープ状の基板の片面に超電導層を形成してなる超電導テープ線材と、前記基板の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数の補強テープ線材と、コイル基板、巻芯、第1電極端子及び第2電極端子を備えた巻枠とにより構成された超電導コイルにおいて、前記巻枠の巻芯の外周面に積層状態で巻回された前記超電導テープ線材及び補強テープ線材の始端部を第1電極端子に連結し、終端部を前記第2電極端子に連結し、前記超電導テープ線材には引張応力を負荷せず、補強テープ線材に引張応力を負荷させたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、テープ状の基板の片面に超電導層を形成してなる超電導テープ線材と、前記基板の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数の補強テープ線材と、コイル基板、巻芯、第1電極端子及び第2電極端子を備えた巻枠とを用いた超電導コイルの製造方法において、常温下において、前記巻枠の巻芯の外周面に対し前記超電導テープ線材及び補強テープ線材を積層状態で巻回する工程と、前記工程において、前記超電導テープ線材にはその長手方向に引張応力を負荷させず、前記補強テープ線材に対しその長手方向に引張応力を負荷させる工程と、前記補強テープ線材に引張応力を負荷させた状態で、両テープ線材の始端部と終端部を前記第1及び第2電極端子に連結する工程とを含むことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記巻枠の第1電極端子に対し前記超電導テープ線材及び補強テープ線材の始端部を連結して、両テープ線材を前記巻芯の外周面に積層状態で巻回し、両テープ線材の終端部を第2電極端子に連結することを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、前記基板はハステロイ、ステンレススチール及びニッケル・タングステン合金の材料の群から一種選択され、前記補強テープ線材は、テープ状の樹脂に対し多数本のカーボンファイバー又はガラスファイバーを長手方向に埋設して構成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項において、前記補強テープ線材には、コイルの冷却通電状態において、前記基板、超電導層及び補強テープ線材に作用する熱収縮応力、超電導コイルに作用するフープ応力を打ち消し合い、超電導層に作用する応力が零になるように、かつ補強テープ線材の弾性限界内において引張応力が負荷されていることを要旨とする。
【0013】
(作用)
本発明によれば、常温下において、熱膨張率の大きい超電導テープ線材には引張応力を負荷せず、熱膨張率の小さい補強テープ線材に引張応力を負荷させた。このため、超電導コイルが作動されて常温状態から低温状態に移行する過程で、補強テープ線材が冷却によって収縮し易くなる。従って、超電導テープ線材の基板の冷却による収縮に追従して、補強テープ線材も適正に収縮され、超電導層の収縮が適正に行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、超電導コイルが低温状態で運転される場合に、超電導テープ線材の基板と補強テープ線材の熱膨張率の相違に起因する超電導層の引張応力をなくして、超電導コイルの許容電流値を適正に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した超電導コイルの製造方法の一実施形態を図1〜図8にしたがって説明する。
超電導コイルを製造するための超電導テープ線材11、補強テープ線材21、巻枠31及び製造装置41について順次説明する。
【0016】
最初に、図1及び図2に基づいて超電導テープ線材11の構造について説明する。
この超電導テープ線材11を構成するテープ状の基板12は、引張強度に優れたハステロイにより形成されている。前記基板12の片面にはGd−Zr−Oよりなる第1中間層13がイオンビームアシスト蒸着法等の気相法により形成されている。該第1中間層13の表面には酸化セシウム(CeO)よりなる第2中間層14がPLD(パルスレーザーデポジション)法又はEB法により形成されている。前記第2中間層14の表面には、超電導層15がCVD(Chemical Vapor Deposition )法,PLD法あるいはMOD(Metal-organic deposition)法により形成されている。この超電導層15の材料としては、イットリウム系(Y,Gd等)によるY−Ba−Cu−O系等がある。それらは400〜1000℃の熱処理によって超電導特性を発現する。さらに、前記超電導層15の表面には、安定化層としても機能する銀よりなる保護層16が蒸着により形成されている。この実施形態においては、前記保護層16の表面には銅よりなる安定化層17がAgを含有すハンダ18により接着されている。
【0017】
この実施形態においては、前記超電導テープ線材11の幅寸法を例えば10mmとしている。又、前記基板12、第1中間層13、第2中間層14、超電導層15、保護層16及び安定化層17の各厚さ寸法を順に、50〜100μm、0.5〜1μm、0.5〜1μm、1〜2μm、3〜5μm、50〜200μmとしている。
【0018】
前記補強テープ線材21は図1に示すように形成されている。この補強テープ線材21は図3に示すように多数本のカーボンファイバー22を扁平状に平織して幅広い帯状のファイバシートを形成し、このシートを図1に示すように所定幅のテープ状に裁断して製造される。
【0019】
この実施形態においては、前記補強テープ線材21の幅寸法を例えば10mm、厚さ寸法を式100〜200μmとしている。前記補強テープ線材21の熱膨張係数は、後に補強テープ線材21に含浸されるエポキシ樹脂23ではなくカーボンファイバー22の熱膨張係数に左右され、該カーボンファイバー22の熱膨張係数は、前記超電導テープ線材11の基板12を形成するハステロイの熱膨張係数よりも小さい。この発明では基板12の熱膨張係数よりも補強テープ線材21の熱膨張係数が小さい関係にある材料の組み合わせが対象となる。
【0020】
次に、前記巻枠31について説明する。この巻枠31は図4に示すように絶縁性を有するFRP等の強化プラスチックよりなるコイル基板32の片面に対し、同じくFRP等の強化プラスチックよりなる円筒状の巻芯33を連結するとともに、前記巻芯33の外周面に第1電極端子34を取り付け、前記コイル基板32の外周側に第2電極端子35を取り付けて構成されている。
【0021】
次に、図5及び図6に基づいて超電導コイルの製造装置41について説明する。
この製造装置41のケース42には、前記巻枠31を所定位置において回転させるためのモータ43を備えた巻芯回転機構部44が設けられている。同じくケース42には図6に示すように前記超電導テープ線材11をリール状に巻き取ったボビン45を所定位置において回転可能に支持するボビン支持軸46が備えられている。さらに、前記ケース42には前記補強テープ線材21を巻き取ったボビン47を所定位置において回転可能に支持する回転支持機構48が装着されている。この回転支持機構48はモータ49を備え、その回転支持軸49aにより前記ボビン47が支持される。
【0022】
次に、前記超電導テープ線材11、補強テープ線材21、巻枠31及び製造装置41を用いて常温状態で行われる超電導コイルの製造方法について説明する。
最初に、図6に示すように、前記巻芯回転機構部44のモータ43の回転支持軸43aに巻枠31を同期回転可能に装着する。次に、前記ボビン支持軸46に前記ボビン45を回転可能に支持するとともに、前記モータ49の回転支持軸49aに前記ボビン47を同期回転可能に装着する。そして、ボビン45から巻き戻した超電導テープ線材11の先端部及び前記ボビン47から巻き戻した補強テープ線材21の先端部を重ね合わせて、前記巻芯33に設けた第1電極端子34にボルトによって連結する。この状態において、前記巻芯回転機構部44のモータ43を駆動して回転支持軸43aにより前記巻枠31を図6において反時計回り方向に回転する。そして、前記モータ43の回転支持軸43aの回転数及び前記モータ49の回転支持軸49aの回転数を制御して、前記補強テープ線材21にバックテンションが作用するように前記ボビン47を回転させて、補強テープ線材21を巻き戻す。前記補強テープ線材21には、その引張強度の所定割合の引張応力が負荷されるように前記バックテンションが付与される。即ち、超電導コイルの冷却通電状態において、前記基板12、超電導層15及び補強テープ線材21に作用する熱収縮応力、超電導コイルに作用するフープ応力を打ち消し合い、超電導層15に作用する応力が零になるように、かつ補強テープ線材21の弾性限界内において引張応力が負荷されている。具体的には前記補強テープ線材21の引張強度が例えば4900MPaとすると、補強テープ線材21に例えば2450MPaのバックテンションが負荷される。
【0023】
一方、前記ボビン支持軸46に支持されたボビン45から超電導テープ線材11を実質的にバックテンションを負荷しない状態で巻き戻しながら前記巻芯33の外周面に前記超電導テープ線材11と前記補強テープ線材21を積層させた状態でコイル状に複数回巻き付ける。
【0024】
前記巻芯33に対する超電導テープ線材11及び補強テープ線材21の巻き付け動作が終了した後、補強テープ線材21にバックテンションが付与されたままの状態で、両テープ線材11,21の終端部となる部分を前記第2電極端子35にボルトによって連結する。その後、超電導テープ線材11及び補強テープ線材21を切断し、図7に示す超電導コイルの製造を終了する。
【0025】
図7に示す超電導コイルの両テープ線材11,21は、図8(a)に示すように、超電導テープ線材11の基板12がコイルの内側に、安定化層17が外側に位置し、かつ補強テープ線材21が前記安定化層17の外側に位置する状態となっている。
【0026】
なお、前記超電導コイルの製造に際しては、前記超電導テープ線材11の基板12の下面にポリイミト樹脂よりなる絶縁テープが接触された状態で、該絶縁テープが超電導テープ線材11とともにコイル状に巻回されるが、この絶縁テープは図示されていない。
【0027】
前記実施形態の超電導コイルの製造方法によれば、以下のような作用、効果を得ることができる。
(1)前記実施形態では、前記巻枠31の巻芯33に超電導テープ線材11及び補強テープ線材21を積層して巻き取る際に、前記補強テープ線材21にバックテンションを付与した状態で行うようにした。このため、図7に示す超電導コイルの製造を終了した後、該コイルを使用状態に保持したとき、超電導テープ線材11及び補強テープ線材21が低温の臨界温度(例えば64〜77K)に冷却される過程で、熱膨張係数の大きい超電導テープ線材11の冷却による熱収縮によって前記超電導層15に圧縮応力が負荷される。このとき、熱膨張係数の小さい前記補強テープ線材21には常温下において予め引張応力が負荷されているので、前記超電導テープ線材11の冷却による熱収縮動作に追従して前記補強テープ線材21が前記引張応力により円滑に収縮される。この結果、超電導テープ線材11の超電導層15に引張応力が生じるのを防止することができるとともに、前記超電導テープ線材11の基板12の熱収縮によって超電導層15に圧縮応力が発生する。従って、超電導コイルが通電作動されたとき、前記超電導層15に作用するフープ応力によって生じる引張応力は前記圧縮応力により緩和されて、応力が低減された状態となり、超電導層15の許容電流値を適正に保持することができる。
【0028】
(2)前記実施形態では、図8(a)に示すように超電導テープ線材11の安定化層17側に、つまり超電導テープ線材11の外周側に補強テープ線材21を積層したので、補強機能を向上することができる。
【0029】
なお、前記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 図8(b)に示すように、超電導テープ線材11の基板12がコイルの外側に安定化層17がコイルの内側に位置するように、かつ前記安定化層17の内側に補強テープ線材21が位置するようにしてもよい。この実施形態においては超電導テープ線材11の基板12が外側に位置しているので、前記超電導層15に通電されたときのフープ応力を前記基板12で支持し易くなり、この結果、超電導層15及び保護層16の接合界面の剥離を抑制することができる。
【0030】
・ ダブルパンケーキ型の超電導コイル筒あるいはソレノイド型の超電導コイルに具体化してもよい。
・ 前記超電導テープ線材11の第1及び第2中間層13,14を省略したり、安定化層17を省略したりしてもよい。
【0031】
・ 前記超電導テープ線材11の基板12の材料として、例えば、ステンレススチール、ニッケル・タングステン合金等を用いてもよい。
・ 前記補強テープ線材21の材料として、例えば、前記カーボンファイバー22に代えて、ガラスファイバー、ステンレススチール、ニッケル・タングステン合金等の群の中の一種を選択してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の超電導コイルの製造方法に用いられる超電導テープ線材及び補強テープ線材の部分斜視図。
【図2】超電導テープ線材の拡大縦断面図。
【図3】補強テープ線材の拡大縦断面図。
【図4】超電導コイルの巻枠の斜視図。
【図5】超電導コイルの製造装置を示す正面図。
【図6】超電導コイルの製造方法を説明する正面図。
【図7】超電導コイルの正面図。
【図8】(a)(b)は超電導コイルの部分拡大縦断面図。
【図9】(a)は超電導コイルに流れる電流と磁束との関係を示す線図、(b)は超電導コイルに作用するフープ応力を説明する線図。
【図10】超電導コイルの超電導層に作用する歪と許容電流値との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0033】
11,21…テープ線材、11…超電導テープ線材、12…基板、15…超電導層、21…補強テープ線材、22…カーボンファイバー、31…巻枠、32…コイル基板、33…巻芯、34…第1電極端子、35…第2電極端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の基板の片面に超電導層を形成してなる超電導テープ線材と、前記基板の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数の補強テープ線材と、コイル基板、巻芯、第1電極端子及び第2電極端子を備えた巻枠とにより構成された超電導コイルにおいて、
前記巻枠の巻芯の外周面に積層状態で巻回された前記超電導テープ線材及び補強テープ線材の始端部を第1電極端子に連結し、終端部を前記第2電極端子に連結し、前記超電導テープ線材には引張応力を負荷せず、補強テープ線材に引張応力を負荷させたことを特徴とする超電導コイル。
【請求項2】
テープ状の基板の片面に超電導層を形成してなる超電導テープ線材と、前記基板の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数の補強テープ線材と、コイル基板、巻芯、第1電極端子及び第2電極端子を備えた巻枠とを用いた超電導コイルの製造方法において、
常温下において、前記巻枠の巻芯の外周面に対し前記超電導テープ線材及び補強テープ線材を積層状態で巻回する工程と、
前記工程において、前記超電導テープ線材にはその長手方向に引張応力を負荷させず、前記補強テープ線材に対しその長手方向に引張応力を負荷させる工程と、
前記補強テープ線材に引張応力を負荷させた状態で、両テープ線材の始端部と終端部を前記第1及び第2電極端子に連結する工程と
を含むことを特徴とする超電導コイルの製造方法。
【請求項3】
請求項2において、前記巻枠の第1電極端子に対し前記超電導テープ線材及び補強テープ線材の始端部を連結して、両テープ線材を前記巻芯の外周面に積層状態で巻回し、両テープ線材の終端部を第2電極端子に連結することを特徴とする超電導コイルの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記基板はハステロイ、ステンレススチール及びニッケル・タングステン合金の材料の群から一種選択され、前記補強テープ線材は、テープ状の樹脂に対し多数本のカーボンファイバー又はガラスファイバーを長手方向に埋設して構成されていることを特徴とする超電導コイルの製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項において、前記補強テープ線材には、コイルの冷却通電状態において、前記基板、超電導層及び補強テープ線材に作用する熱収縮応力、超電導コイルに作用するフープ応力を打ち消し合い、超電導層に作用する応力が零になるように、かつ補強テープ線材の弾性限界内において引張応力が負荷されていることを特徴とする超電導コイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−188109(P2009−188109A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25337(P2008−25337)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構超電導応用基盤技術研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)