説明

超電導線材の接続構造体およびその製造方法

【課題】交流通電の超電導機器や永久電流スイッチに用いられる超電導線材同士の電気的接続において、低い接続抵抗と高いクエンチ耐性とを兼ね備えた接続構造体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の超電導多芯線材41の母材が除去されて露出した第1の超電導フィラメント6の先端領域と、前記第2の超電導多芯線材42の母材が除去されて露出した第2の超電導フィラメント6の先端領域とは、かしめ接続されたジョイント部1を構成し、前記露出した第1の超電導フィラメント6の残りの領域と、前記露出した第2の超電導フィラメント6の残りの領域とは、被覆部材5を介して接続されたバイパス部2を構成し、前記被覆部材5は、前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材4の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材同士の電気的な接続に関し、特に交流通電の超電導機器や永久電流スイッチに用いられ高いクエンチ耐性を有する接続構造体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導線材同士を電気的に接続する技術は、超電導線材を応用するにあたっての重要な技術のうちの1つである。最も簡便に接続する方法は、超電導線材同士を十分な長さでオーバーラップさせてはんだ付けする方法である(はんだ接続法と称する)。ここで、超電導線材は、一般に、超電導体からなる多数の超電導フィラメントが母材(例えば、銅やアルミニウムなど)に覆われた構造をしているため、はんだ接続法による接続では、一方の超電導フィラメントから流れてきた電流が、母材、はんだ、母材を経由して他方の超電導フィラメントへと流れ込むことになる。すなわち、はんだ接続法における接続抵抗は母材とはんだとの電気抵抗を含み、その結果、数メートル長さで超電導線材同士をオーバーラップさせた場合でも10-9Ω程度の接続抵抗となる。
【0003】
超電導線材およびそれによる超電導磁石を利用した代表的な製品として核磁気共鳴分析装置(NMR)や核磁気共鳴画像装置(MRI)があり、バイオテクノロジー分野や医療分野で広く利用されている。これらの装置は、通常、永久電流モードで運転され、磁場精度において0.1 ppm/h以下という極めて小さな磁場減衰率が要求されている。そして、永久電流モードや該磁場減衰率を達成するためには、少なくとも10-12Ω以下の低い接続抵抗での接続(いわゆる超電導接続)が必須の技術となる。
【0004】
そのような低い接続抵抗を達成する方法として、接続する超電導線材同士の接続予定部で母材を除去して超電導フィラメントを露出させ、その後、露出させた超電導フィラメント同士を重ね合わせて金属パイプに挿入し該金属パイプを加圧して潰すことで相互の超電導線フィラメントを圧着接続する方法(かしめ接続法と称する)が報告されている(例えば、特許文献1や非特許文献1参照)。かしめ接続法では、接続する相互の超電導線フィラメントが母材やはんだ等の常電導体を介さずに直接接触しているため、10-13Ω以下の接続抵抗を実現できる。このため、かしめ接続法は、接続抵抗に厳しい要求のあるNMRやMRIの超電導磁石における超電導接続部にもしばしば適用されている。
【0005】
また、特許文献2には、かしめ接続法の一種であり、接続する相互の超電導線フィラメント間に二硼化マグネシウムを含む超電導粉末を接触介在させる超電導接続構造が開示されている。特許文献2によると、超電導線接続部が高磁場中に配置されていても低い電気抵抗での接続が可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−319280号公報
【特許文献2】特開2003−022719号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】下畑賢司,山本俊二,中村史朗,川口武男:「NbTi超電導線の超電導接続」,低温工学 Vol. 30 pp. 70-75。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超電導線材や超電導磁石に通電したとき、定格電流よりも低い電流値で超電導性が突然消失するクエンチと呼ばれる現象が発生することがある。クエンチの発生は、超電導線材を用いた製品の運転安定性・信頼性に係わる問題であり、クエンチの防止は、超電導製品における最重要課題のうちの1つである。
【0009】
かしめ接続法を適用した超電導接続部(例えば、特許文献1や非特許文献1参照)は、それ以外の部分と比較してクエンチが特に発生しやすい箇所である。その原因の1つは、接続のために母材を除去したためと考えられる。母材は、超電導線材の熱容量を大きくして擾乱による温度上昇を抑制するとともに、発生した熱の拡散を促す役割がある。しかしながら、かしめ接続法は接続のためにこれを除去することから、クエンチ耐性を低下させることつながったと考えられる。また、特許文献2に記載の超電導接続構造においても、クエンチ耐性が必ずしも十分とは言えなかった。
【0010】
一方、交流通電する超電導機器に用いられる超電導線材や、永久電流モードで運転する超電導機器に必須な永久電流スイッチに用いられる超電導線材などにおいては、通常の超電導線材の母材(例えば無酸素銅)よりも電気抵抗率が高い母材(例えば銅ニッケル合金)を用いた超電導線材が通常使用されるため、はんだ接続法の適用は不適当と考えられる。さらに、電気抵抗率が高い金属は熱伝導率が低いことから、これらの超電導線材では、母材が付いている状態であっても通常の超電導線材よりもクエンチ耐性が低下する傾向があり、クエンチ耐性の高い接続方法および接続構造体が強く望まれていた。
【0011】
従って、本発明の目的は、交流通電の超電導機器や永久電流スイッチに用いられる超電導線材同士の電気的接続において、低い接続抵抗と高いクエンチ耐性とを兼ね備えた接続構造体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するため、複数の超電導フィラメントが母材に覆われた構造を有する第1の超電導多芯線材と第2の超電導多芯線材とを電気的に接続する接続構造体であって、
前記第1および第2の超電導多芯線材のうちの少なくとも一方は、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材であり、
前記第1の超電導多芯線材の母材が除去されて露出した第1の超電導フィラメントの先端領域と、前記第2の超電導多芯線材の母材が除去されて露出した第2の超電導フィラメントの先端領域とは、かしめ接続されたジョイント部を構成し、
前記露出した第1の超電導フィラメントの残りの領域と、前記露出した第2の超電導フィラメントの残りの領域とは、被覆部材を介して接続されたバイパス部を構成し、
前記被覆部材は、前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料からなることを特徴とする超電導線材の接続構造体を提供する。
【0013】
また、本発明は上記目的を達成するため、複数のニオブチタン合金フィラメントが母材に覆われた構造を有する第1の超電導多芯線材と第2の超電導多芯線材とを電気的に接続する接続構造体の製造方法であって、
前記第1および第2の超電導多芯線材のうちの少なくとも一方は、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材であり、
前記第1および第2の超電導多芯線材における接続予定領域の前記母材を除去して第1および第2のニオブチタン合金フィラメントを露出させるフィラメント露出工程と、
前記露出した第1および第2のニオブチタン合金フィラメントの先端領域を金属パイプ内に挿入し、前記金属パイプを押圧変形することによって前記第1および第2のニオブチタン合金フィラメント同士を圧着してジョイント部を形成するジョイント部形成工程と、
前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料である被覆部材を、前記露出した第1の超電導フィラメントの残りの領域と、前記露出した第2の超電導フィラメントの残りの領域とに被覆・一体化してバイパス部を形成するバイパス部形成工程とを有することを特徴とする超電導線材の接続構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、交流通電の超電導機器や永久電流スイッチに用いられる超電導線材同士の電気的接続において、低い接続抵抗と高いクエンチ耐性とを兼ね備えた接続構造体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】かしめ接続による超電導線材同士の従来の接続構造体の1例を示す斜視模式図である。
【図2】本発明に係る超電導線材の接続構造体の1例を示す斜視模式図とバイパス部の断面模式図である。
【図3】本発明に係る超電導線材の接続構造体を示す等価回路である。
【図4】本発明に係る超電導線材の接続構造体の他の1例を示す斜視模式図とバイパス部の断面模式図である。
【図5】本発明に係る超電導線材の接続構造体の他の1例を示す斜視模式図とバイパス部の断面模式図である。
【図6】本発明に係る超電導線材の接続構造体のジョイント部の変形例を示す断面模式図である。
【図7】超電導線材の接続構造体の通電特性を測定するためのサンプル形状を示す模式図である。
【図8】本発明に係る実施例1を示す斜視模式図とバイパス部の断面模式図である。
【図9】超電導線材の接続構造体の通電特性を測定するための試験系を示す模式図である。
【図10】比較例1の通電特性の結果(捕捉した磁束の時間変化)の1例を示すチャートである。
【図11】実施例1の通電特性の結果(捕捉した磁束の時間変化)の1例を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
【0017】
前述したように、本発明に係る超電導線材の接続構造体は、複数の超電導フィラメントが母材に覆われた構造を有する第1の超電導多芯線材と第2の超電導多芯線材とを電気的に接続する接続構造体であって、
前記第1および第2の超電導多芯線材のうちの少なくとも一方は、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材であり、
前記第1の超電導多芯線材の母材が除去されて露出した第1の超電導フィラメントの先端領域と、前記第2の超電導多芯線材の母材が除去されて露出した第2の超電導フィラメントの先端領域とは、かしめ接続されたジョイント部を構成し、
前記露出した第1の超電導フィラメントの残りの領域と、前記露出した第2の超電導フィラメントの残りの領域とは、被覆部材を介して接続されたバイパス部を構成し、
前記被覆部材は、前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料からなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記の発明に係る超電導線材の接続構造体において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の超電導フィラメントがニオブチタン合金であり、該超電導線材の母材が銅ニッケル合金、銅マンガン合金、または銅マンガンニッケル合金のいずれかであり、前記被覆部材が銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、およびこれらの元素から構成される合金のいずれかである。
(2)前記バイパス部は、前記被覆部材の外周に前記被覆部材と異なる外層部材が更に配設されており、前記外層部材は、前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも熱伝導率が高い金属材料からなる。
(3)前記外層部材が銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、およびこれらの元素から構成される合金のいずれかである。
(4)前記バイパス部は、前記第1の超電導フィラメントと前記被覆部材との間、および前記第2の超電導フィラメントと前記被覆部材との間に前記被覆部材と異なる中間層が更に配設されており、前記中間層は、前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料からなる。
(5)前記中間層が銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、およびこれらの元素から構成される合金のいずれかである。
(6)前記ジョイント部における前記第1の超電導フィラメントと前記第2の超電導フィラメントとの間に介在超電導体が当接して設けられ、前記介在超電導体は、前記接続構造体の運転環境下において、前記第1および第2の超電導フィラメントよりも低い臨界電流密度を有している。
(7)前記介在超電導体はプレート形状であり、前記介在超電導体の一方の主表面に前記第1の超電導フィラメントが電気的に接続され、前記介在超電導体の他方の主表面に前記第2の超電導フィラメントが電気的に接続されている。
(8)上記の超電導線材の接続構造体を具備する超電導機器である。
(9)上記の超電導線材の接続構造体を具備する核磁気共鳴分析装置または核磁気共鳴画像装置である。
【0019】
上述の接続構造体に加えて、本発明に係る超電導線材の接続構造体の製造方法は、複数のニオブチタン合金フィラメントが母材に覆われた構造を有する第1の超電導多芯線材と第2の超電導多芯線材とを電気的に接続する接続構造体の製造方法であって、
前記第1および第2の超電導多芯線材のうちの少なくとも一方は、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材であり、
前記第1および第2の超電導多芯線材における接続予定領域の前記母材を除去して第1および第2のニオブチタン合金フィラメントを露出させるフィラメント露出工程と、
前記露出した第1および第2のニオブチタン合金フィラメントの先端領域を金属パイプ内に挿入し、前記金属パイプを押圧することによって前記第1および第2のニオブチタン合金フィラメント同士を圧着してジョイント部を形成するジョイント部形成工程と、
前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料である被覆部材を、前記露出した第1の超電導フィラメントの残りの領域と、前記露出した第2の超電導フィラメントの残りの領域とに被覆・一体化してバイパス部を形成するバイパス部形成工程とを有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記の発明に係る超電導線材の接続構造体の製造方法において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(10)前記バイパス部形成工程の後に、前記被覆部材の外周に前記被覆部材と異なる金属材料からなる外層パイプを被せ、前記外層パイプを押圧することによって前記被覆部材と一体化した外層部材を形成する外層部材配設工程を更に有する。
【0021】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明をより詳細に説明する。はじめに、従来の接続構造体について説明する。図1は、かしめ接続による超電導線材同士の従来の接続構造体の1例を示す斜視模式図である。
【0022】
図1に示したように、かしめ接続による従来の接続構造体14は、2本の超電導多芯線材4の母材がそれぞれ除去されて露出した超電導フィラメント6(第1の超電導フィラメント61、第2の超電導フィラメント62)が金属パイプ(例えば、無酸素銅パイプ15’)内に挿入され、該金属パイプが押圧変形されて超電導フィラメント6同士が圧着接合されたジョイント部1を有している。ジョイント部1は、超電導フィラメント6同士が直接接合していることから、10-13Ω以下の非常に低い接続抵抗が得られる。
【0023】
また、従来の接続構造体14では、ジョイント部1近傍の機械的保護やワイヤームーブメントの抑制を目的として、しばしばジョイント部1近傍の超電導多芯線材4がはんだ16で固定される。なお、一般的に、超電導フィラメント6とはんだ16とは濡れ性があまり良くないことから、はんだ固定は主に母材が被覆されている領域(母材が除去されていない領域)で行われる。
【0024】
ここで、超電導多芯線材4の母材が共に無酸素銅のような電気抵抗率の低い材料からなる場合には、ジョイント部1で常電導領域(クエンチの芽)が生じた際に、はんだ固定部分がはんだ接続として機能してクエンチの拡大を抑制する効果(すなわち、クエンチ耐性が向上する効果)が期待できる。しかしながら、前述したように、交流通電用や永久電流スイッチ用の超電導線材においては、超電導フィラメント間の電気的結合を抑制するために電気抵抗率が高い母材(例えば、銅ニッケル合金、銅マンガン合金、または銅マンガンニッケル合金)を使用することから、従来の接続構造体14ではクエンチ耐性が極めて弱いことが、本発明者等の調査・研究で確認された(詳細は後述する)。
【0025】
図2は、本発明に係る超電導線材の接続構造体の1例を示す斜視模式図とバイパス部の断面模式図である。本発明に係る超電導線材の接続構造体11では、2本の超電導多芯線材4(第1の超電導多芯線材41、第2の超電導多芯線材42)のうちの少なくとも一方が交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材であり、2本の超電導多芯線材4の母材がそれぞれ除去されて露出した超電導フィラメント6の先端領域が金属パイプ15(例えば、無酸素銅パイプ15’)内に挿入され、該金属パイプ15が押圧変形されて超電導フィラメント6同士が圧着接合されたジョイント部1を有している。また、図2に示したように、露出した超電導フィラメント6の残りの領域では、被覆材料5を介して接続されたバイパス部2が形成されている。このとき、被覆材料5は、接続構造体11の運転環境下において、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料(例えば、銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、またはこれらの元素から構成される合金)からなる。
【0026】
(接続構造体の製造方法)
本発明に係る超電導線材の接続構造体11の製造プロセスの1例は、次のようなものである。なお、言うまでもなく下記に限定されるものではない。
(i)2本の超電導多芯線材4(第1の超電導多芯線材41、第2の超電導多芯線材42)における接続予定領域の母材を硝酸などで溶解して、超電導フィラメント6(第1の超電導フィラメント61、第2の超電導フィラメント62)を露出させる(フィラメント露出工程)。
(ii)露出させた超電導フィラメント6の先端領域を金属パイプ15内に挿入し、第1の超電導フィラメント61と第2の超電導フィラメント62とをかしめ接続法によって接続してジョイント部1を形成する(ジョイント部形成工程)。
(iii)露出させた超電導フィラメント6の残りの領域に対して被覆部材5を被覆して、被覆部材5と超電導フィラメント6とが一体化したバイパス部2を形成する(バイパス部形成工程)。より具体的には、露出させた超電導フィラメント6の残りの領域の束の外周にスズ、インジウム、ビスマス、またはこれらの合金からなる被覆材料5を被せた後に、その外周に銅またはアルミニウムのパイプを被せ、該パイプを加圧変形させて被覆材料5が超電導フィラメント6間の隙間に十分入り込むようにして一体化する。なお、被覆部材5と超電導フィラメント6とを一体化した後、一体化に用いたパイプを除去してもよいし、除去しなくてもよい。
【0027】
(本発明の効果の考察)
次に、本発明の効果について等価回路でモデル化して説明する。図3は、本発明に係る超電導線材の接続構造体を示す等価回路である。図3に示したように、ジョイント部1の抵抗をRjと表記し、バイパス部2の抵抗をRbと表記し、ジョイント部1とバイパス部2とからなる接続構造体ループ3のインダクタンスをLjと表記する。また、2本の超電導多芯線材4(第1の超電導多芯線材41、第2の超電導多芯線材42)に接続される超電導コイルのインダクタンスをLc(一般的には10〜100 H程度)とする。
【0028】
例えば、接続構造体11に接続された超電導コイル(超電導磁石)を永久電流モード運転で運転する場合を想定する。永久電流モードの定常時には「Rj << Rb」であるため、電流はジョイント部1を流れる。ここで、ジョイント部1で常電導領域(クエンチの芽)が生じたとする。このとき、次のような過程に従う。
(a)ジョイント部1における常電導領域の発生に伴ってRjが大きくなりRjNとなる(Rj < RjN)。
(b)「RjN > Rb」となると、ジョイント部1の電流はバイパス部2に移る(Rbは、典型的には10-8〜10-7Ωの程度である)。
(c)ジョイント部1におけるジュール発熱が収まり冷却されるため、ジョイント部1は超電導状態に復帰する(Rj << Rb)。
(d)電流が再びジョイント部1に戻る。
【0029】
上記の過程による超電導磁石における磁場減衰率について説明する。電流がジョイント部1からバイパス部2に移動するのに掛る所要時間Δtj→bは「Δtj→b = Lj/RjN」であり、この間の磁場の減衰時定数τj→bは「τj→b = Lc/RjN」と表わされる。一方、電流がバイパス部2からジョイント部1に復帰するのに掛る所要時間Δtb→jは「Δtb→j = Lj /Rb」であり、この間の磁場の減衰時定数τb→jは「τb→j=Lc/Rb」と表わされる。したがって、超電導磁石の中心磁束密度は上記(a)〜(d)の過程を経て、式1で与えられる割合で減衰する。なお、B0:初期磁束密度、ΔB:(a)〜(d)過程1サイクルの磁束密度変化量とする。
【0030】
【数1】

【0031】
本発明に係る超電導線材の接続構造体11は、被覆部材5として交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率の低い金属材料を用いていることから、バイパス部2の抵抗Rbを小さくすることができる。そのため、バイパス部2に電流が移ったときでもジュール発熱を抑制することができる。また、バイパス部2では、各超電導フィラメント6が熱伝導性に優れた被覆部材5で覆われているため、熱を速やかに逃すことができる。これらの効果によって、バイパス部2におけるクエンチを防止することができる。
【0032】
さらに、Lcは前述したように10〜100 Hの程度であり、Ljはジョイント部1とバイパス部2とを十分に近づければ10-9 H程度まで小さくすることができる。よって、式1から概算すると、(a)〜(d)過程1サイクルによる磁場減衰率ΔB/Bは、わずか1 ppb程度である。これは、NMR分析装置やMRI装置の稼働上で問題とならないレベルである。
【0033】
以上のことから、本発明に係る超電導線材の接続構造体は、かしめ接続法で作製したジョイント部で常電導領域が発生してもその拡大が防止され、永久電流モード運転する超電導磁石の中心磁束密度の減衰が微小量に抑制されるという効果がある。言い換えると、本発明に係る超電導線材の接続構造体は、NMR分析装置やMRI装置などの超電導機器での使用に適していると言える。
【0034】
(本発明の第2の実施形態)
図4は、本発明に係る超電導線材の接続構造体の他の1例を示す斜視模式図とバイパス部の断面模式図である。図4に示したように、第2の実施形態に係る接続構造体12は、バイパス部2において、被覆部材5と異なる外層部材7が被覆部材5の外周に配設されている点でのみ第1の実施形態に係る接続構造体11と異なる。外層部材7は、接続構造体の運転環境下において、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも熱伝導率が高い金属材料からなり、例えば、銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、またはこれらの元素から構成される合金が好適に用いられる。
【0035】
第2の実施形態に係る接続構造体12は、第1の実施形態に係る接続構造体11と同様の効果に加えて、被覆部材5の外周に外層部材7を配設することでバイパス部2の熱容量が大きくなることから、バイパス部2に電流が移ったときの温度上昇が抑制される。これにより、バイパス部2のクエンチが更に防止される効果がある。
【0036】
(本発明の第3の実施形態)
図5は、本発明に係る超電導線材の接続構造体の他の1例を示す斜視模式図とバイパス部の断面模式図である。図5に示したように、第3の実施形態に係る接続構造体13は、バイパス部2において、被覆部材5と異なる中間層8が被覆部材5と超電導フィラメント6との間に配設されている点でのみ第1の実施形態に係る接続構造体11と異なる。中間層8は、接続構造体の運転環境下において、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料からなり、例えば、銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、またはこれらの元素から構成される合金が好適に用いられる。
【0037】
第3の実施形態に係る接続構造体13は、第1の実施形態に係る接続構造体11と同様の効果に加えて、被覆材料5と超電導フィラメント6との間に中間層8を配設することで被覆材料5と超電導フィラメント6との密着性が高まることから、バイパス部2の抵抗Rbを更に低減することができる。なお、中間層8の形成プロセスとしては、例えば、蒸着などの気相成膜法が好適に用いられる。
【0038】
(本発明の第4の実施形態)
図6は、本発明に係る超電導線材の接続構造体のジョイント部の変形例を示す断面模式図である。図6に示したように、第4の実施形態に係るジョイント部1’は、第1の超電導フィラメント61と第2の超電導フィラメント62との間にプレート形状の介在超電導体17が当接して設けられている。また、介在超電導体17は、接続構造体の運転環境下において、第1の超電導フィラメント61および第2の超電導フィラメント62よりも低い臨界電流密度を有している。
【0039】
超電導線材は、一般的に、使用環境における最大経験磁場でその臨界電流がある程度のマージンを持つように設計される(または、そうなるように機器(例えば超電導コイル)を設計する)。一方、超電導線材同士の接続構造体は、設置場所の空間的な制約や超電導安定性の観点から、低磁場領域に設置されることが通常である。そのため、接続構造体の設置される低磁場領域では、接続構造体内の超電導フィラメントが運転電流に対して過大な臨界電流を有することになり、多数の超電導フィラメントの内の極一部を利用するだけで運転電流を輸送することが可能と考えられる。そのため、時間が経過するにつれて、超電導フィラメント6間の電流分布は良好な接合界面を有する超電導フィラメントのみに偏っていくと考えられる。その結果、クエンチの芽が生じた時に、過度の偏流に起因した大きなジュール熱が起こり易いと考えられる。
【0040】
上述したように、第4の実施形態に係るジョイント部1’では、第1および第2の超電導フィラメント61,62の間に該超電導フィラメントよりも低い臨界電流密度を有する介在超電導体17を配設しているため、介在超電導体17の臨界電流密度の制約により輸送電流が超電導フィラメント6の極一部に偏流することを抑制し、均等な電流分布に近づく。その結果、輸送電流における過度の偏流に起因する大きなジュール熱を抑制し、ジョイント部におけるクエンチの発生を抑制することができる効果がある。なお、言うまでもなく、第4の実施形態は前述の第1〜第3の実施形態のいずれとも組み合わせることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明の具体例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
図7は、超電導線材の接続構造体の通電特性を測定するためのサンプル形状を示す模式図である。図7に示したように、測定サンプルは2本の超電導多芯線材4から構成されている。第1の超電導多芯線材41は、超電導フィラメント6の材質がニオブチタン合金であり、母材の材質が無酸素銅である。第2の超電導多芯線材42は、超電導フィラメント6の材質がニオブチタン合金であり、母材の材質が銅ニッケル合金(Cu-10mass%Ni)である。第1の超電導多芯線材41は途中にループ部を形成し、第2の超電導多芯線材42は直状のままとした。また、ループ部を挟んで互いに反対側の2箇所で接続構造体を形成して第1の超電導多芯線材41と第2の超電導多芯線材42とを接続した。なお、第1の超電導多芯線材41と第2の超電導多芯線材42とは、母材の材質以外は同じ構成とした。
【0043】
比較例1として、従来の接続構造体14(図1参照)を次のような手順で作製した。第1および第2の超電導多芯線材41,42のそれぞれ両端部35 mmを硝酸に浸漬して母材を溶解し、超電導フィラメントを露出させた。次に、露出した第1および第2の超電導フィラメント61,62を重ねて無酸素銅パイプ15’(肉厚5 mm、長さ25 mm)に挿入した。該無酸素銅パイプ15’を一軸加圧して潰すことで、無酸素銅パイプ15’内で2つの超電導フィラメント61,62を一体化(圧着)させたジョイント部1を形成した。また、母材を除去した境界から25 mm長さで2本の超電導多芯線材41,42の母材同士をはんだ16で固定した。
【0044】
実施例1として、第2の実施形態に係る接続構造体12’(図8参照)を次のような手順で作製した。図8は、本発明に係る実施例1を示す斜視模式図とバイパス部の断面模式図である。第1および第2の超電導多芯線材41,42のそれぞれ両端部50 mmを硝酸に浸漬して母材を溶解し、超電導フィラメントを露出させた。次に、露出した第1および第2の超電導フィラメント61,62を重ね、露出した超電導フィラメントの先端領域(先端からの距離が0〜25 mmの領域)を無酸素銅パイプ15’(肉厚5 mm、長さ25 mm)に挿入した。該無酸素銅パイプ15’を一軸加圧して潰すことで、無酸素銅パイプ15’内で2つの超電導フィラメント61,62を一体化(圧着)させたジョイント部1を形成した。
【0045】
次に、露出した第1および第2の超電導フィラメント61,62の残りの領域(先端からの距離が25〜50 mmの領域)に被覆部材5’としてインジウムシートを巻き付けた。巻き付けたインジウムシートの外周に予め挿入しておいた無酸素銅パイプ15”(肉厚5 mm、長さ25 mm)を被せた。その後、インジウムの被覆部材5’が各超電導フィラメント6の隙間に十分入り込むように該無酸素銅パイプ15”を一軸加圧して潰してバイパス部2を形成した。
【0046】
上記で作製した測定サンプルの通電特性は、次のようにして測定した。図9は、超電導線材の接続構造体の通電特性を測定するための試験系を示す模式図である。図9に示したように、クライオスタット20内に誘導コイル21、サンプルヒータ22、ホール素子23から構成される試験系を組み、測定サンプルのループ部が誘導コイル21の領域内に入るように測定サンプルを設置した。クライオスタット20内に液体ヘリウムを満たして次の手順で測定サンプルに通電した。
【0047】
まず、サンプルヒータ22を加熱し、測定サンプルの一部(超電導多芯線材4の一部)の超電導性を消失させた。この状態で誘導コイル21に通電し、測定サンプルのループ部を貫通するように磁束を発生させた。次に、サンプルヒータ22の加熱を止めて測定サンプルの超電導性を復帰させた後、誘導コイル21の通電を止めると測定サンプルのループ部内の磁束が保存されるように超電導多芯線材4に電流が流れる。このとき、ループ部の中心磁束密度をホール素子23で計測し、その時間変化を記録した。
【0048】
図10は、比較例1の通電特性の結果(捕捉した磁束の時間変化)の1例を示すチャートである。図10に示したように、測定開始から約300秒経過時に中心磁束密度の不連続な減少が突然起こった。これは、従来の接続構造体14においてクエンチが発生し、測定サンプルに保持されていた磁気エネルギーがジュール熱となって消失したためと考えられた。このときの磁場減衰率は約90%であった。
【0049】
図11は、実施例1の通電特性の結果(捕捉した磁束の時間変化)の1例を示すチャートである。図11に示したように、測定開始から約1500秒経過時に中心磁束密度の不連続な減少が突然起こった。これも、第2の実施形態に係る接続構造体12’においてクエンチが発生したことに起因すると考えられた。ただし、このときの磁場減衰率はわずか1%程度であった。なお、他の実施形態に係る接続構造体においても、同様の結果が得られることを別途確認した。
【0050】
上記の結果を図3に示した等価回路で考察する。測定サンプルのインダクタンスは10-7 H程度であり、ジョイント部1とバイパス部2とからなるループ3のインダクタンスは10-9 H程度である。これらインダクタンスと電気抵抗率とを式1に代入して計算すると、実施例1に関しては磁場減衰率がよく一致した。すなわち、図3の等価回路で説明したモデルの現象が起きていると考えられた。また、この接続構造体12’を一般的な超電導磁石(10〜100 H)に適用したとすると、式1からその磁場減衰率は0.1 ppb程度となることが示唆される。これは、NMR分析装置やMRI装置で要求されるレベルを十分満足している。
【0051】
一方、比較例1に関しては、式1の結果と一致しなかった。これは、ジョイント部1で常電導領域が生じてはんだ固定部に電流が移った際、はんだ固定部におけるジュール発熱が大き過ぎて熱拡散が追い付かず、はんだ固定部の温度が上昇して測定サンプル全体にクエンチが進展したためと考えられた。
【0052】
以上説明したように、本発明に係る超電導線材の接続構造体は、ジョイント部1で常電導領域(クエンチの芽)が発生してもその拡大が防止され、永久電流モード運転する超電導磁石の磁場減衰率を極小に抑制できるという効果を実証した。すなわち、低い接続抵抗と高いクエンチ耐性とを兼ね備えていると言える。そのため、本発明に係る超電導線材の接続構造体は、NMR分析装置やMRI装置をはじめとして、大型超電導マグネット、電力貯蔵装置、磁気分離装置、磁気浮上列車、超電導発電機、核融合炉用マグネットなどの超電導機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1,1’… ジョイント部、2…バイパス部、
3…ジョイント部とバイパス部とからなる接続構造体ループ、
4…超電導多芯線材、41…第1の超電導多芯線材、42…第2の超電導多芯線材、
5,5’…被覆部材、6…超電導フィラメント、
61…第1の超電導フィラメント、62…第2の超電導フィラメント、
7…外層部材、8…中間層、11,12,12’,13,14…接続構造体、
15…金属パイプ、15’,15”…無酸素銅パイプ、16…はんだ、17…介在超電導体、
20…クライオスタット、21…誘導コイル、22…サンプルヒータ、23…ホール素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超電導フィラメントが母材に覆われた構造を有する第1の超電導多芯線材と第2の超電導多芯線材とを電気的に接続する接続構造体であって、
前記第1および第2の超電導多芯線材のうちの少なくとも一方は、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材であり、
前記第1の超電導多芯線材の母材が除去されて露出した第1の超電導フィラメントの先端領域と、前記第2の超電導多芯線材の母材が除去されて露出した第2の超電導フィラメントの先端領域とは、かしめ接続されたジョイント部を構成し、
前記露出した第1の超電導フィラメントの残りの領域と、前記露出した第2の超電導フィラメントの残りの領域とは、被覆部材を介して接続されたバイパス部を構成し、
前記被覆部材は、前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料からなることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導線材の接続構造体において、
前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の超電導フィラメントがニオブチタン合金であり、
該超電導線材の母材が銅ニッケル合金、銅マンガン合金、または銅マンガンニッケル合金のいずれかであり、
前記被覆部材が銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、およびこれらの元素から構成される合金のいずれかであることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の超電導線材の接続構造体において、
前記バイパス部は、前記被覆部材の外周に前記被覆部材と異なる外層部材が更に配設されており、
前記外層部材は、前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも熱伝導率が高い金属材料からなることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項4】
請求項3に記載の超電導線材の接続構造体において、
前記外層部材が銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、およびこれらの元素から構成される合金のいずれかであることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の超電導線材の接続構造体において、
前記バイパス部は、前記第1の超電導フィラメントと前記被覆部材との間、および前記第2の超電導フィラメントと前記被覆部材との間に前記被覆部材と異なる中間層が更に配設されており、
前記中間層は、前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料からなることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項6】
請求項5に記載の超電導線材の接続構造体において、
前記中間層が銅、アルミニウム、インジウム、スズ、ビスマス、およびこれらの元素から構成される合金のいずれかであることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の超電導線材の接続構造体において、
前記ジョイント部における前記第1の超電導フィラメントと前記第2の超電導フィラメントとの間に介在超電導体が当接して設けられ、
前記介在超電導体は、前記接続構造体の運転環境下において、前記第1および第2の超電導フィラメントよりも低い臨界電流密度を有していることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の超電導線材の接続構造体において、
前記介在超電導体はプレート形状であり、
前記介在超電導体の一方の主表面に前記第1の超電導フィラメントが電気的に接続され、前記介在超電導体の他方の主表面に前記第2の超電導フィラメントが電気的に接続されていることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の超電導線材の接続構造体を具備していることを特徴とする超電導機器。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の超電導線材の接続構造体を具備していることを特徴とする核磁気共鳴分析装置または磁気共鳴画像装置。
【請求項11】
複数のニオブチタン合金フィラメントが母材に覆われた構造を有する第1の超電導多芯線材と第2の超電導多芯線材とを電気的に接続する接続構造体の製造方法であって、
前記第1および第2の超電導多芯線材のうちの少なくとも一方は、交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材であり、
前記第1および第2の超電導多芯線材における接続予定領域の前記母材を除去して第1および第2のニオブチタン合金フィラメントを露出させるフィラメント露出工程と、
前記露出した第1および第2のニオブチタン合金フィラメントの先端領域を金属パイプ内に挿入し、前記金属パイプを押圧変形することによって前記第1および第2のニオブチタン合金フィラメント同士を圧着してジョイント部を形成するジョイント部形成工程と、
前記接続構造体の運転環境下において、前記交流通電用または永久電流スイッチ用の超電導線材の母材よりも電気抵抗率が低い金属材料である被覆部材を、前記露出した第1の超電導フィラメントの残りの領域と、前記露出した第2の超電導フィラメントの残りの領域とに被覆・一体化してバイパス部を形成するバイパス部形成工程とを有することを特徴とする超電導線材の接続構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の超電導線材の接続構造体の製造方法において、
前記バイパス部形成工程の後に、前記被覆部材の外周に前記被覆部材と異なる金属材料からなる外層パイプを被せ、前記外層パイプを押圧することによって前記被覆部材と一体化した外層部材を形成する外層部材配設工程を更に有することを特徴とする超電導線材の接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−150978(P2012−150978A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8579(P2011−8579)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】