説明

超電導線材の検査装置および検査方法

【課題】超電導線材の欠陥を感度よく検査する
【解決手段】超電導線材の検査装置は、超電導線材(20)の表面(20a)の法線方向に光を照射する青色LED(1)と、超電導線材(20)の表面(20a)の法線方向と角度をなす方向に光を照射する赤色LED(2)と、超電導線材(20)からの反射光(B1)を主として受光し、かつ超電導線材(20)からの散乱光(C2)を主として受光するカラーラインセンサ(3)と、カラーラインセンサ(3)にて受光した光の光量を積算して出力するコンピュータ(5)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材の検査装置および検査方法に関し、より特定的には、超電導線材の欠陥を感度よく検査することのできる超電導線材の検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルなどの超電導機器は、多数の超電導線材によって構成されている。超電導機器を使用する際には、超電導機器中の超電導体フィラメントを臨界温度(Tc)以下に冷却するために、たとえば液体窒素や液体ヘリウムなどの液体冷媒に超電導機器が浸漬され、極低温に保持される。一方、たとえば点検などの際には、液体冷媒から超電導機器が取り出され、室温の気体冷媒などを超電導機器の周りに流入させることにより、極低温から室温にまで温度上昇される。しかし、液体冷媒浸漬後に室温へ温度上昇する際には、超電導機器を構成する超電導線材にバルーニングが生じることがある。
【0003】
バルーニングとは、超電導線材内に浸入した液体冷媒が温度上昇によって気化し、気化したガスが外に放出されない結果、超電導線材内部の圧力が上昇し、超電導線材が膨張する現象である。バルーニングの原因は、液体冷媒に超電導機器が浸漬された際に超電導線材の表面に存在するピンホールなどの欠陥を通じて液体冷媒が線材内部へ侵入し、温度上昇とともにこの液体冷媒が気化し、膨張することにある。バルーニングが発生した箇所は、超電導線材の電流経路が分断され、臨界電流値などの超電導特性の低下を招く。なお、バルーニングの現象については、たとえばL.Masur, et al., "Long Length Manufacturing of High Performance BSCCO-2223 Tape for the Detroit Edison Power Cable Project"(非特許文献1)に開示されている。
【0004】
そこで、バルーニングの発生を防止することを目的として、超電導線材を実際に使用する前に欠陥の有無が検査されている。このような検査(試験)の1つである加圧窒素試験は、1MPa程度に加圧した液体冷媒中に所定時間超電導線材を浸漬して冷却し、その後超電導線材を室温まで急激に昇温して、バルーニングの発生の有無を検査する試験である。加圧窒素試験では、バルーニングの発生の有無により欠陥のある超電導線材か否かが検査されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】L.Masur, et al., "Long Length Manufacturing of High Performance BSCCO-2223 Tape for the Detroit Edison Power Cable Project", IEEE Trans. Appl. Superconductivity., vol.11, No.1, pp. 3256-3260.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加圧窒素試験では、超電導線材の欠陥を感度よく検査できないという問題があった。上述のように加圧窒素試験では、所定時間超電導線材を浸漬することで、欠陥のある超電導線材の内部へ液体冷媒を侵入させている。しかし、欠陥が小さい場合には、欠陥を通じて液体冷媒が線材内部へ侵入するのに時間がかかる。このため、小さな欠陥のある超電導線材には、加圧窒素試験の浸漬時間では液体冷媒が十分に侵入せず、バルーニングが発生しないことがあった。また、加圧窒素試験を複数回繰り返したとしても、やはりバルーニングが発生しないことがあった。
【0007】
一方、送電・配電ケーブルなどの超電導機器では、数十年間の使用に耐えうる耐久性が求められている。数十年間の使用の際には小さな欠陥であってもバルーニングの発生の原因になるので、小さい欠陥についても感度よく検出する必要がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、超電導線材の欠陥を感度よく検査することのできる超電導線材の検査装置および検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面における超電導線材の検査装置は、超電導線材に光を照射する照射部と、超電導線材からの光を受光する受光部と、受光部にて受光した光の光量を積算して出力する出力部とを備えている。
【0010】
本発明の超電導線材の検査方法は、超電導線材に光を照射する照射工程と、超電導線材からの光を受光する受光工程と、受光した光の光量を積算して出力する出力工程とを備えている。
【0011】
本発明の一の局面における超電導線材の検査装置および検査方法によれば、超電導線材における欠陥の部分で反射した光と、超電導線材の欠陥のない部分で反射した光とは、欠陥の大小に関わらず、互いに異なる方向に反射される。このため、欠陥の有無によって受光される光の光量が変化するので、この光量の変化に基づいて欠陥の有無を検査することができる。したがって、小さな欠陥についても検出することができるので、超電導線材の欠陥を感度よく検査することができる。
【0012】
上記検査装置において好ましくは、上記受光部は、超電導線材からの反射光を主として受光する反射光受光部である。
【0013】
上記検査方法において好ましくは、上記受光工程において、超電導線材からの反射光を主として受光する。
【0014】
超電導線材からの反射光は、欠陥の有無によってその光量が変化するので、この光量の変化に基づいて欠陥の有無を感度よく検査することができる。なお、「超電導線材からの反射光」とは、超電導線材における欠陥のない部分で反射された光を意味している。
【0015】
上記検査装置において好ましくは、上記受光部は、超電導線材からの散乱光を主として受光する散乱光受光部である。
【0016】
上記検査方法において好ましくは、上記受光工程において、超電導線材からの散乱光を主として受光する。
【0017】
超電導線材からの散乱光は、欠陥の有無によってその光量が変化するので、この光量の変化に基づいて欠陥の有無を感度よく検査することができる。なお、「超電導線材からの散乱光」とは、超電導線材における欠陥の部分でさまざまな方向へ散乱された光を意味している。
【0018】
上記検査装置において好ましくは、上記照射部は、超電導線材の表面の法線方向に光を照射する同軸照射部である。
【0019】
上記検査方法において好ましくは、上記照射工程において、超電導線材の表面の法線方向に光を照射する。
【0020】
これにより、特に超電導線材の表面キズを検出しやすくなる。
上記検査装置において好ましくは、上記照射部は、超電導線材の表面の法線方向と角度をなす方向に光を照射する斜方照射部である。
【0021】
上記検査方法において好ましくは、上記照射工程において、超電導線材の表面の法線方向と角度をなす方向に光を照射する。
【0022】
これにより、特に超電導線材のピンホールを検出しやすくなる。
上記検査装置において好ましくは、超電導線材にレーザ光を照射しながら超電導線材の長手方向に相対的に移動するレーザ光照射部と、超電導線材で反射したレーザ光を受光するレーザ光受光部と、レーザ光受光部における受光位置に基づいて超電導線材の変位に関する情報を出力するレーザ式変位計用出力部とを有するレーザ式変位計がさらに備えられている。
【0023】
上記検査装置において好ましくは、渦電流式変位計用コイルに交流を流す交流発生部と、超電導線材に渦電流を発生させながら超電導線材の長手方向に相対的に移動する渦電流式変位計用コイルと、渦電流の発生による渦電流式変位計用コイルの発振状態の変化に基づいて超電導線材の変位に関する情報を出力する渦電流式変位計用出力部とを有する渦電流式変位計がさらに備えられている。
【0024】
上記検査装置において好ましくは、超電導線材に接触しながら超電導線材の長手方向に相対的に移動し、かつ超電導線材の変位に連動するプローブと、プローブに取り付けられた鉄心と、鉄心の移動によって誘導起電力を発生する接触式変位計用コイルと、誘導起電力に基づいて超電導線材の変位に関する情報を出力する接触式変位計用出力部とを有する接触式変位計がさらに備えられている。
【0025】
上記検査方法において好ましくは、超電導線材の長手方向に沿ってレーザ光を照射する工程と、超電導線材で反射したレーザ光を受光する工程と、レーザ光を受光した位置に基づいて超電導線材の変位に関する情報を出力する工程とがさらに備えられている。
【0026】
上記検査方法において好ましくは、交流を流した渦電流式変位計用コイルを用いて超電導線材の長手方向に沿って超電導線材に渦電流を発生させる工程と、渦電流の発生による渦電流式変位計用コイルの発振状態の変化に基づいて超電導線材の変位に関する情報を出力する工程とがさらに備えられている。
【0027】
上記検査方法において好ましくは、鉄心が取り付けられたプローブを超電導線材に接触させながら超電導線材の長手方向に相対的に移動させ、プローブを超電導線材に連動させる工程と、鉄心の移動によって接触式変位計用コイルに誘導起電力を発生させ、誘導起電力に基づいて超電導線材の変位に関する情報を出力する工程とがさらに備えられている。
【0028】
これにより、超電導線材の変位に関する情報が得られるので、特に膨れ、曲がり、局所幅変動、変形などの欠陥を感度よく検査することができる。また、欠陥を数値的に計測することができ、欠陥の有無のみならず欠陥のサイズや形状を測定することができる。その結果、超電導線材の検査をより効果的に行なうことができる。
【0029】
上記検査装置において好ましくは、超電導線材の長手方向に並んで配置され、かつ超電導線材の幅方向の中心を測定する第1〜第3の重心評価計がさらに備えられている。
【0030】
上記検査方法において好ましくは、超電導線材の長手方向における第1の位置における幅方向の中心を測定する工程と、超電導線材の長手方向における第2の位置における幅方向の中心を測定する工程と、超電導線材の長手方向における第3の位置における幅方向の中心を測定する工程とがさらに備えられている。
【0031】
これにより、3つの中心が幅方向における同じ位置に存在しているか否かを判別することにより、超電導線材の幅方向の緩やかな変形(たわみ、うねり、波うちなど)を計測することができる。
【0032】
本発明の他の局面における超電導線材の検査装置は、超電導線材の表面の法線方向に光を照射する同軸照射部と、超電導線材の表面の法線方向と角度をなす方向に光を照射する斜方照射部と、超電導線材からの反射光を主として受光する反射光受光部と、超電導線材からの散乱光を主として受光する散乱光受光部と、反射光受光部および散乱光受光部にて受光した光の光量を積算して出力する出力部とを備えている。
【0033】
本発明の超電導線材の検査装置によれば、超電導線材における欠陥の部分で反射した光と、超電導線材の欠陥のない部分で反射した光とは、欠陥の大小に関わらず、互いに異なる方向に反射される。このため、欠陥の有無によって受光される光の光量が変化するので、この光量の変化に基づいて欠陥の有無を検査することができる。したがって、小さな欠陥についても検出することができるので、超電導線材の欠陥を感度よく検査することができる。特に、受光部として反射光受光部と散乱光受光部とを備えることにより、1つの受光部のみを備える場合に比べて光量の変動を検知しやすくなる。その結果、欠陥の検出精度が良好になる。また、照射部として同軸照射部と斜方照射部とを備えることにより、超電導線材の表面キズおよびピンホールの両方を検出しやすくなる。
【0034】
本発明の一の局面および他の局面における検査装置において好ましくは、上記検査装置が2つ以上備えられている。これにより、超電導線材の表面をさまざまな方向から同時に検査することができるので、検査効率が向上する。特に、テープ状の超電導線材を検査する場合には、2つの検査装置を用いて上側の面と下側の面とを同時に検査することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の超電導線材の検査装置および検査方法によれば、超電導線材の欠陥を感度よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)は超電導ケーブルの一例を示す断面図であり、(b)は(a)におけるケーブルコアの拡大図である。
【図2】超電導線材に発生するピンホールなどの欠陥を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における超電導線材の検査装置において、超電導線材に欠陥がある場合の光の進行方向を模式的に示す図である。
【図5】コンピュータにおいて行なわれる処理を処理順に示すステップ図である。
【図6】超電導線材の表面の拡大図である。
【図7】積算された光のx方向における輝度分布の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2における超電導線材の製造装置の構成を模式的に示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3の超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3における超電導線材の検査装置において、超電導線材に欠陥がある場合の光の進行方向を模式的に示す図である。
【図11】本発明の実施の形態4における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図12】超電導線材に発生する膨れなどの欠陥を模式的に示す図である。
【図13】本発明の実施の形態5における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図14】本発明の実施の形態5において、超電導線材の表面が厚み方向に変位しているか否かによる受光位置の変化を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態5における超電導線材の検査装置を用いて超電導線材の端面の変位を計測する場合を説明するための図である。
【図16】本発明の実施の形態6における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図17】(a)超電導線材の表面が厚み方向に変位していない場合におけるコイルの発振波形を模式的に示す図である。(b)超電導線材の表面が厚み方向に変位している場合におけるコイルの発振波形を模式的に示す図である。
【図18】本発明の実施の形態7における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図19】図18の接触式変位計の回路図である。
【図20】本発明の実施の形態8における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図21】本発明の実施の形態8において、超電導線材にたわみが発生していない場合の超電導線材の中心位置を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態8において、超電導線材にたわみが発生している場合の超電導線材の中心位置を示す上面図である。
【図23】本発明の実施の形態9における超電導線材の検査装置を概念的に示す図である。
【図24】本発明の実施例1において、超電導線材の長手方向における臨界電流値の分布を示す図である。
【図25】本発明の実施例1において、1回目の加圧窒素試験直後における超電導線材の長手方向における臨界電流値の分布を示す図である。
【図26】本発明の実施例2において、超電導線材に発生した欠陥を拡大して示す写真である。(a)は変色部分およびピンホールであり、(b)は表面キズである。
【図27】(a)は、図26(a)に示す変色部分およびピンホールを検査装置Aで撮影して2値化した場合の画像である。(b)は、図26(b)に示す表面キズを検査装置Bで撮影して2値化した場合の画像である。
【図28】本発明の実施例3において接触式変位計で測定された、超電導線材の長手方向における厚さ方向の変位を示す図である。
【図29】本発明の実施例4においてレーザ式変位計で測定された、超電導線材の長手方向における幅方向の変位を示す図である。
【図30】本発明の実施例5において重心評価計で測定された、両側の2つの重心評価計より計算される中心位置と、中央の重心評価計により計算される中心位置との差の超電導線材の長手方向における変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は超電導ケーブルの一例を示す断面図、(b)は(a)におけるケーブルコアの拡大図である。図1(a)、(b)を参照して、超電導ケーブル30は、ケーブルコア31と、断熱管38と、防食層39とを備えている。断熱管38および防食層39の内側に形成された冷媒流通路37内に、単芯或いは複数芯撚り合わせたケーブルコア31が挿入されている。そして、冷媒流通路37内のケーブルコア31の外周に冷媒が流通される。ケーブルコア31は、内側から順にフォーマ(複数の銅の撚り線)32と、複数の超電導線材40aと、クラフト紙35と、複数の超電導線材40bと、絶縁紙34とから構成されている。外径がたとえば20mmの複数の銅の撚り線よりなるフォーマ32の外周には、テープ状の超電導線材40a、40bの各々がスパイラル状に巻き付けられている。複数の超電導線材40a、40bは、クラフト紙35を挟んで互いに絶縁された積層構造となっている。下層である複数の超電導線材40aは、たとえば13本の超電導線材が200mmピッチで配置されている。また、上層である複数の超電導線材40bは、たとえば14本の超電導線材が200mmピッチで配置されている。超電導線材40a、40bの各々の1本あたりの断面は、たとえば縦0.21mm、横4.1mmの長方形の形状を有している。上層の超電導線材40bの外側には、たとえばポリプロピレンラミネート紙(PPLP(R))よりなる絶縁紙34で覆われている。
【0038】
次に、超電導ケーブルを構成する超電導線材の構成について説明する。
図2は、超電導線材に発生するピンホールなどの欠陥を模式的に示す図である。図2を参照して、たとえば超電導線材が多芯線の酸化物超電導線材について説明する。超電導線材20は、図1に示す超電導線材40a、40bに対応するものであり、たとえばテープ状の酸化物超電導線材である。超電導線材20は、長手方向に伸びる複数本の酸化物超電導体フィラメント21と、それらを被覆するシース部22とを有している。複数本の酸化物超電導体フィラメント21の各々の材質は、たとえばBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の組成を有しており、(ビスマスと鉛):ストロンチウム:カルシウム:銅の原子比がほぼ2:2:2:3の比率で近似して表されるBi2223相を含む材質よりなっている。シース部22の材質は、たとえば銀よりなっている。
【0039】
ここで、超電導線材20の表面には、表面キズ27や、変色部分28や、ピンホール29などの欠陥が発生することがある。これらの欠陥は、超電導線材の製造工程のうち伸線工程、圧延工程、または焼結工程などに発生するものである。ここで、変色部分28とは、酸化物超電導体フィラメント21の内容物がシース部22に漏れ出して、シース部22の厚みが局所的に薄くなり、外部から見ると変色して見える欠陥である。変色部分28は、ピンホール29の周囲に生じやすい欠陥である。
【0040】
次に、本実施の形態における超電導線材20の検査装置について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。図3を参照して、本実施の形態における超電導線材の検査装置は、照射部としての青色LED(Light Emitting Diode)1と、受光部としてのカラーラインセンサ3と、出力部としてのコンピュータ5と、ミラー7とを備えている。青色LED1およびカラーラインセンサ3は、超電導線材20の垂直真上における所定の位置に配置されている。カラーラインセンサ3の受光窓13は超電導線材20の表面20aの法線方向を向いている。また、ミラー7は、カラーラインセンサ3と超電導線材20との間に配置されている。コンピュータ5は、カラーラインセンサ3に電気的に接続されている。
【0041】
次に、本実施の形態における超電導線材20の検査方法について説明する。
青色LED1は、超電導線材20の長手方向に沿ってミラー7へ青色光を照射する。ミラー7は、超電導線材20の表面20aの法線方向に青色LED1からの光を反射する。これによって、青色LED1は、超電導線材20の表面20aの法線方向に照射光A1を照射する同軸照射部となる。
【0042】
超電導線材20に欠陥がない場合には、超電導線材20に照射された照射光A1は、入射角に等しい反射角を持って同一方向に反射される。本実施の形態では、表面20aの法線方向に反射光B1が発生する。この反射光B1は、ミラー7を透過してカラーラインセンサ3によって受光される。
【0043】
一方、図4を参照して、超電導線材20に欠陥がある場合には、超電導線材20に照射された照射光A1は、表面20aからさまざまな方向に散乱される。この光が散乱光C1である。このように、超電導線材20に欠陥がある場合には、散乱光C1が発生し、カラーラインセンサ3によって受光される光の光量が変化する。
【0044】
ここで、本実施の形態において、カラーラインセンサ3は反射光B1を主に受光する位置に配置されている。このため、超電導線材20に欠陥がある場合には、カラーラインセンサ3では散乱光C1の一部のみが受光されるので、通常、受光される光量は減少する。つまり、カラーラインセンサ3は、反射光B1を主として受光する反射光受光部である。
【0045】
カラーラインセンサ3にて受光した光量のデータは、コンピュータ5に送られ、積算して出力される。そして、光量の積算データに基づいて超電導線材20の欠陥の有無が検査される。次に、コンピュータ5において行なわれる上記処理の一例について具体的に説明する。
【0046】
図5は、コンピュータにおいて行なわれる処理を処理順に示すステップ図である。図6は、超電導線材の表面の拡大図である。図5および図6を参照して、超電導線材20の表面20aが、たとえば10.0μm程度の幅で幅方向(x方向)に区分され、2048個のラインに分けられる。そして、それぞれのラインで反射してカラーラインセンサ3で受光された光の光量が積算されて出力される(ステップ1)。
【0047】
図7は、積算された光のx方向における輝度分布を示す図である。図5〜図7を参照して、続いて、積算された光のx方向における輝度分布に基づいてエッジ部25が検出される(ステップS2)。すなわち、超電導線材20がテープ状である場合、表面20aのエッジ部25は曲面になっているので、カラーラインセンサ3で受光される光の光量が表面20aの中央部とは著しく異なっている。このため、エッジ部25における光量の変化を欠陥と誤認しないために、エッジ部25が検出される必要がある。具体的には、積算された光のx方向における輝度分布にエッジ検出しきい値を設け、このエッジ検出しきい値を超えた領域がエッジ部であると判断され、不感帯とされる。図7においてエッジ検出しきい値を超えているのは、図7中左右にある不感帯と示した部分と、幅Wで示した領域とである。したがって、ステップS2では、これら2つの領域がエッジ部であると判断される。また、図7中左右にある不感帯と示した部分と、幅Wで示した領域とを除いた残りの領域が仮の検査領域であると判断される。
【0048】
続いて、検査領域における欠陥を検出する(ステップS3)。具体的には、積算された光のx方向における輝度分布に欠陥しきい値を設け、検査領域おいて欠陥しきい値を超えた部分の幅を計測する。欠陥しきい値を超えた部分が複数存在する場合には個々の部分の幅を計測する。そして、欠陥しきい値を超えた部分の幅が一定幅以上である場合には、それを欠陥であると判定する。図7では、仮の検査領域には欠陥しきい値を超える部分は存在しないので、ステップS3においては欠陥が検出されない。
【0049】
続いて、エッジ部付近における欠陥を検出する(ステップS4)。すなわち、仮の検査領域の幅と実際の超電導線材の幅とを比較し、仮の検査領域の幅が実際の超電導線材の幅よりも一定値以上小さい場合には、エッジ部付近に欠陥があると判断される。図7では、仮の検査領域の幅が実際の超電導線材の幅よりも一定値以上小さいので、幅Wで示した領域は検査領域に存在する欠陥であると判断される。以上の方法により、超電導線材20の表面20aに存在する欠陥の有無が検査される。
【0050】
本実施の形態の超電導線材の検査装置および検査方法によれば、超電導線材20における表面キズ27や、変色部分28や、ピンホール29などの欠陥で反射した散乱光C1と、超電導線材20の欠陥のない部分で反射した反射光B1とは、欠陥の大小に関わらず、互いに異なる方向に反射される。このため、欠陥の有無によってカラーラインセンサ3で受光される光の光量が変化するので、この光量の変化に基づいて欠陥の有無を検査することができる。したがって、小さな欠陥についても検出することができるので、超電導線材20の欠陥を感度よく検査することができる。また、欠陥の有無を目視によって検査する場合に比べて迅速に検査することができる。
【0051】
本実施の形態の検査装置において、カラーラインセンサ3は、超電導線材20からの反射光B1を主として受光する反射光受光部である。
【0052】
本実施の形態の検査方法においては、超電導線材20からの反射光B1を主として受光する。
【0053】
超電導線材20からの反射光B1は、欠陥の有無によってその光量が変化するので、この光量の変化に基づいて欠陥の有無を感度よく検査することができる。
【0054】
本実施の形態の検査装置において、青色LED1は、超電導線材20の表面の法線方向に光を照射する同軸照射部である。
【0055】
本実施の形態の検査方法においては、超電導線材20の表面の法線方向に光を照射する。
【0056】
これにより、特に超電導線材20の表面キズ27を検出しやすくなる。
なお、本実施の形態ではコンピュータ処理の一例を示したが、本発明はこのようなコンピュータ処理に限定されるものではなく、少なくとも受光部にて受光した光の光量が積算して出力されればよい。
【0057】
また、本実施の形態では、照射部として青色LEDを用いる場合について示したが、青色LEDの代わりに赤色LEDを用いてもよく、これ以外の波長を持った光を照射する照射部を用いてもよい。
【0058】
さらに、青色LED1およびカラーラインセンサ3の位置関係は任意であり、反射光を受光する位置に受光部が配置されていれば本実施の形態と同様の効果が得られる。また、少なくとも超電導線材からの光を受光する位置に受光部が配置されていればよい。
【0059】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における超電導線材の製造装置の構成を模式的に示す図である。図8を参照して、本実施の形態における超電導線材の検査装置は、照射部として青色LEDの代わりに赤色LED2を備えている。赤色LED2は、超電導線材20の垂直真上における所定の位置に配置されている。
【0060】
また、カラーラインセンサ3の位置および受光窓13の方向は、実施の形態1の場合と同様である。具体的には、カラーラインセンサ3は、超電導線材20の垂直真上における所定の位置に配置されており、その受光窓13は表面20aの法線方向に向いている。
【0061】
なお、これ以外の超電導線材の検査装置の構成は、実施の形態1の検査装置の構成とほぼ同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0062】
次に、本実施の形態における超電導線材の検査方法について説明する。
赤色LED2は、超電導線材20の表面20aの法線方向と角度をなす方向に照射光A2を照射する。つまり、赤色LED2は斜方照射部である。超電導線材20に欠陥がない場合には、赤色LED2から超電導線材20へ照射された照射光A2は、入射角に等しい反射角を持って反射される。本実施の形態では、反射光B2が発生する。このとき、カラーラインセンサ3では反射光B2がわずかに受光される。
【0063】
一方、超電導線材20に欠陥がある場合には、表面20aからさまざまな方向に散乱光C2が発生する。そして、散乱光C2の一部がカラーラインセンサ3で受光される。このように、超電導線材20に欠陥がある場合には、散乱光C2が発生し、カラーラインセンサ3によって受光される光の光量が変化する。
【0064】
ここで、本実施の形態において、カラーラインセンサ3は散乱光C2を主に受光する位置(反射光B2を受光し難い位置)に配置されている。このため、超電導線材20に欠陥がある場合には、カラーラインセンサ3で受光される光量は通常増加する。つまり、カラーラインセンサ3は、超電導線材20からの散乱光C2を主として受光する散乱光受光部である。
【0065】
カラーラインセンサ3にて受光した光量のデータは、コンピュータ5に送られ、光量が積算して出力される。そして、光量の積算データに基づいて実施の形態1と同様の方法により、超電導線材20の欠陥の有無が検査される。
【0066】
本実施の形態の検査装置において、カラーラインセンサ3は、超電導線材20からの散乱光C2を主として受光する散乱光受光部である。
【0067】
本実施の形態の検査方法においては、超電導線材20からの散乱光C2を主として受光する。
【0068】
超電導線材からの散乱光は、欠陥の有無によってその光量が変化するので、この光量の変化に基づいて欠陥の有無を検査することができる。
【0069】
なお、赤色LED2およびカラーラインセンサ3の位置関係は任意であり、少なくとも散乱光を受光する位置に受光部が配置されていれば本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0070】
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3の超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。図9を参照して、本実施の形態の超電導線材の検査装置は、同軸照射部としての青色LED1と、斜方照射部としての赤色LED2と、反射光受光部および散乱光受光部としてのカラーラインセンサ3と、出力部としてのコンピュータ5と、ミラー7とを備えている。青色LED1、赤色LED2、およびカラーラインセンサ3は、超電導線材20の垂直真上における所定の位置に配置されている。カラーラインセンサ3の受光窓13は超電導線材20の表面20aの法線方向を向いている。
【0071】
なお、これ以外の超電導線材の検査装置の構成は、実施の形態1の検査装置の構成とほぼ同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0072】
次に、本実施の形態における超電導線材の検査方法について説明する。
青色LED1は、実施の形態1と同様の方法によって、超電導線材20の表面20aの法線方向に照射光A1を照射する。赤色LED2は、超電導線材20の表面20aの法線方向と角度をなす方向に照射光A2を照射する。
【0073】
超電導線材20に欠陥がない場合には、超電導線材20に照射された青色の照射光A1と赤色の照射光A2との各々は、入射角に等しい反射角を持って同一方向に反射される。本実施の形態では、表面20aの法線方向に青色の反射光B1が発生し、表面20aと角をなす方向に赤色の反射光B2が発生する。このうち、青色の反射光B1は、ミラー7を透過してカラーラインセンサ3によって受光される。また、カラーラインセンサ3では赤色の反射光B2がわずかに受光される。
【0074】
一方、図10を参照して、超電導線材20に欠陥がある場合には、超電導線材20に照射された照射光A1、A2の各々は、表面20aからさまざまな方向に散乱される。この光が散乱光C1、C2である。そして、散乱光C1、C2の一部がカラーラインセンサ3で受光される。このように、超電導線材20に欠陥がある場合には、散乱光C1、C2が発生し、カラーラインセンサ3によって受光される青色光および赤色光の光量がそれぞれ変化する。
【0075】
ここで、本実施の形態において、カラーラインセンサ3は散乱光C1に比べて反射光B1を主に受光する位置に配置されている。このため、超電導線材20に欠陥がある場合には、カラーラインセンサ3で受光される青色光は減少する。つまり、カラーラインセンサ3は、反射光B1を主として受光する反射光受光部である。
【0076】
また、本実施の形態において、カラーラインセンサ3は反射光B2に比べて散乱光C2を主に受光する位置に配置されている。このため、超電導線材20に欠陥がある場合には、カラーラインセンサ3で受光される赤色光は減少する。つまり、カラーラインセンサ3は、散乱光C2を主として受光する散乱光受光部である。
【0077】
カラーラインセンサ3にて受光した光量のデータは、コンピュータ5に送られ、実施の形態1の場合と同様の方法により積算して出力される。そして、光量の積算データに基づいて超電導線材20の欠陥の有無が検査される。
【0078】
本実施の形態では、青色LED1から発生する光の波長と、赤色LED2から発生する波長とが互いに異なるため、カラーラインセンサ3において青色光および赤色光の両方を受光しても、コンピュータ5においてそれぞれの波長の光を分けて解析し、光量を積算して別々に出力することができる。その結果、カラーラインセンサ3は反射光受光部および散乱光受光部の両方の役割を果たすことができる。もちろん、青色光を受光するための反射光受光部と赤色光を受光するための散乱光受光部とを別々に備えてもよい。
【0079】
本実施の形態の超電導線材の検査装置によれば、カラーラインセンサ3において反射光B1および散乱光C2を受光することにより、1つの光のみを受光する場合に比べて光量の変動を検知しやすくなる。その結果、欠陥の検出精度が良好になる。また、照射部として青色LED1と赤色LED2との両方を備えることにより、超電導線材の表面キズおよびピンホールの両方を検出しやすくなる。
【0080】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。図11を参照して、本実施の形態の超電導線材の検査装置は、実施の形態3における検査装置と同様の構成を有する検査装置を2つ備えている。2つの検査装置は、超電導線材20の表面20a側および裏面20b側にそれぞれ配置されている。
【0081】
超電導線材20の表面20a側の検査装置は、青色LED1と、赤色LED2と、カラーラインセンサ3と、コンピュータ5と、ミラー7とを備えている。青色LED1から青色の照射光A1を超電導線材の表面20aに照射し、主としてその反射光B1をカラーラインセンサ3で受光する。また、赤色LED2から赤色の照射光A2を超電導線材の表面20aに照射し、主としてその散乱光C2をカラーラインセンサ3で受光する。
【0082】
また、超電導線材20の裏面20b側の検査装置は、青色LED1aと、赤色LED2aと、カラーラインセンサ3aと、コンピュータ5aと、ミラー7aとを備えている。青色LED1aから青色の照射光A3を超電導線材の表面20aに照射し、主としてその反射光B3をカラーラインセンサ3で受光する。また、赤色LED2から赤色の照射光A4を超電導線材の表面20aに照射し、主としてその散乱光C4をカラーラインセンサ3で受光する。
【0083】
なお、本実施の形態の2つの検査装置の構成およびこれらの検査装置の各々の検査方法は、実施の形態3における超電導線材の検査装置および検査方法とほぼ同様である。よってその説明は繰り返さない。
【0084】
本実施の形態の超電導線材の検査装置は、テープ状の超電導線材20を検査する場合などに、表面20aと裏面20bとを同時に検査することができ、検査効率が向上する。
【0085】
なお、本実施の形態においては、検査装置を2つ備える場合について示したが、本発明は、検査装置を3つ以上備えてもよい。検査装置を増やせば、たとえば丸線のような超電導線材を検査する場合でも、超電導線材の表面を全周にわたって同時に検査することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、実施の形態3の検査装置を2つ備える場合について示したが、実施の形態3の検査装置の代わりに、実施の形態1の検査装置または実施の形態2の検査装置を2つ備えてもよい。
【0087】
(実施の形態5)
実施の形態1〜4に示す検査装置(以下、光方式検査装置と記すこともある)は、図2に示すピンホール29などの欠陥の検出に特に適したものであった。しかし、超電導線材20には、ピンホールなどの欠陥の他、図12に示すような膨れ23や曲がり24などの欠陥や、局所幅変動、変形、たわみ、うねり、波うちなどの欠陥が発生することがある。これらの欠陥は、超電導線材の製造工程のうち伸線工程、圧延工程、または焼結工程などに発生するものである。特に膨れ23は、超電導線材20の原材料粉末に付着している吸着物が焼結工程中に気化し、気化することによって吸着物の体積が増加して発生するものである。そこで、以下の実施の形態5〜8においては、欠陥のうち特に膨れ、曲がり、局所幅変動、変形、たわみ、うねり、波うちなどの欠陥を感度よく検査することのできる検査装置および検査方法について説明する。これらの欠陥はピンホールなどの欠陥に比べて大きな変形を伴なうような欠陥である。
【0088】
図13は、本発明の実施の形態5における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。図13を参照して、本実施の形態における超電導線材の検査装置は、実施の形態1〜4のいずれかに示す光方式検査装置の他に、レーザ式変位計41をさらに備えている。レーザ式変位計41は、レーザ光照射部としての半導体レーザ43と、レーザ光受光部としての光位置検出素子(PSD:Position Sensitive Device)44と、レーザ式変位計用出力部としてのコンピュータ45とを有している。半導体レーザ43およびPSD44はセンサヘッド42の先端に取り付けられており、センサヘッド42は超電導線材20の表面20aの上部に配置されている。半導体レーザ43およびPSD44はセンサヘッド42を介してコンピュータ45と電気的に接続されている。
【0089】
次に、レーザ式変位計41による超電導線材20の検査方法について説明する。
半導体レーザ43は、超電導線材20にレーザ光Dを照射しながら、超電導線材20の長手方向に相対的に移動される。図13では半導体レーザ43は固定されており、超電導線材20が図中右方向に移動されている。これにより、超電導線材20の長手方向に沿ってレーザ光Dが照射される。レーザ光Dは、超電導線材20の表面20aで反射され、レーザ光EがPSD44で受光される。
【0090】
ここで図14を参照して、超電導線材20の表面20aが厚み方向に変位していない(欠陥のない)場合には、レーザ光Dは位置P1で反射し、レーザ光E1がPSD44で受光される。一方、膨れ46などの欠陥が発生し超電導線材20の表面20aが厚み方向に変位している場合には、レーザ光Dは位置P2で反射し、レーザ光E2がPSD44で受光される。つまり、PSD44におけるレーザ光Eの受光位置は超電導線材20の表面20aの変位によって変化し、欠陥の有無、サイズ、および形状によって変化する。
【0091】
PSD44はレーザ光Eの受光位置のデータをコンピュータ45に送信する。コンピュータ45は、受光位置のデータに基づいて、三角測量法を用いて超電導線材20の表面20aの位置(つまりレーザ光Dの反射位置)を計算し、超電導線材20の表面20aの変位に関する情報を出力する。その結果、超電導線材20の表面20aの欠陥が検出される。
【0092】
本実施の形態における超電導線材20の検査装置は、超電導線材20の表面20aにレーザ光Dを照射しながら超電導線材20の長手方向に相対的に移動する半導体レーザ43と、超電導線材20で反射したレーザ光Eを受光するPSD44と、PSD44における受光位置に基づいて超電導線材20の変位に関する情報を出力するコンピュータ45とを有するレーザ式変位計41をさらに備えている。
【0093】
本実施の形態における超電導線材20の検査方法は、超電導線材20の長手方向に沿ってレーザ光Dを照射する工程と、超電導線材20の表面20aで反射したレーザ光Eを受光する工程と、レーザ光Eを受光した位置に基づいて超電導線材20の変位に関する情報を出力する工程とをさらに備えている。
【0094】
本実施の形態における超電導線材20の検査装置および検査方法によれば、超電導線材20の表面20aの変位に関する情報が得られるので、特に膨れ、曲がり、局所幅変動、変形などの欠陥を感度よく検査することができる。また、欠陥を数値的に計測することができ、欠陥の有無のみならず欠陥のサイズや形状を測定することができる。その結果、超電導線材の検査をより効果的に行なうことができる。
【0095】
なお、光方式検査装置およびレーザ式変位計を以下のように用いて超電導線材20の検査を行なってもよい。たとえば光方式検査装置で欠陥の発生部分を検査し、その場所の情報をレーザ式変位計に伝達し、レーザ式変位計において欠陥のサイズや形状を測定してもよい。また、たとえばレーザ式変位計で曲がりなどの大きな欠陥の有無を検査し、光方式検査装置においてピンホールなどの小さな欠陥の有無を検査してもよい。このように用途によって光方式検査装置およびレーザ式変位計の各々の感度を調節すれば、コンピュータによる信号処理時間の短縮を図ることができ、検査効率が向上する。
【0096】
また、本実施の形態におけるコンピュータ45としての機能はコンピュータ5(図3)によって果たされてもよい。この場合、半導体レーザ43およびPSD44はコンピュータ5と電気的に接続される。これにより、1台のコンピュータによって検査を行なうことができる。
【0097】
さらに、レーザ光Dを超電導線材20の表面20aに照射する代わりに、図15に示すように超電導線材20の端面20cに照射してもよい。これにより、超電導線材20の端面20cの変位を計測することができ、超電導線材20の幅を検査することができる。
【0098】
(実施の形態6)
図16は、本発明の実施の形態6における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。図16を参照して、本実施の形態における超電導線材の検査装置は、実施の形態1〜4のいずれかに示す光方式検査装置の他に、渦電流式変位計51をさらに備えている。渦電流式変位計51は、交流発生部および渦電流式変位計用出力部としての本体53と、渦電流式変位計用コイルとしてのコイル52aとを有している。プローブ52は超電導線材20に近接して表面20aの上部に配置されており、コイル52aはプローブ52の先端に取り付けられている。コイル52aはプローブ52を介して本体53と電気的に接続されている。
【0099】
次に、渦電流式変位計51による超電導線材20の検査方法について説明する。
本体53からコイル52aに交流電圧が印加されると、コイル52aには交流電流が流れ、コイル52aから発生する磁場58は周期的に変動する。この磁場58の変動により超電導線材20の表面20aには渦電流54が発生する。プローブ52は超電導線材20の表面20aに渦電流54を発生させながら超電導線材20の長手方向に相対的に移動される。図16ではプローブ52は固定されており、超電導線材20が図中右方向に移動されている。これにより、超電導線材20の長手方向に沿って超電導線材20の表面20aに渦電流54が発生する。この渦電流54の影響を受けて、コイル52aの発振状態は基準となる発振波形(渦電流による影響のない状態での発振波形)から変化する。
【0100】
ここで、超電導線材20の表面20aが厚み方向に変位していない(欠陥のない)場合には、コイル52aから超電導線材20の表面20aまでの距離は大きく、渦電流54の影響は小さいので、コイル52aの発振状態の変化は図17(a)に示すように小さい。図17(a)においてコイルの発振波形57は、基準となる発振波形56からわずかに変化する。具体的には、発振波形57の振幅は発振波形56の振幅よりもわずかに小さくなり、発振波形57の位相は発振波形56の位相からわずかにずれる。一方、膨れ55などの欠陥が発生し超電導線材20の表面20aが厚み方向に変位している場合には、コイル52aから超電導線材20の表面20aまでの距離は小さく、渦電流54の影響は大きくなるので、コイル52aの発振状態の変化は図17(b)に示すように大きくなる。具体的には、発振波形57の振幅は発振波形56の振幅に比べて非常に小さくなり、発振波形57の位相は発振波形56の位相から大きくずれる。つまり、コイル52aの発振状態の変化の度合いは超電導線材20の表面20aの変位によって変化し、欠陥の有無、サイズ、および形状によって変化する。
【0101】
本体53は、渦電流54の発生によるコイル52aの発振状態の変化に基づいて、超電導線材20の表面20aの位置を計算し、超電導線材20の表面20aの変位に関する情報を出力する。その結果、超電導線材20の表面20aの欠陥が検出される。
【0102】
本実施の形態における超電導線材20の検査装置は、コイル52aに交流を流す本体53と、超電導線材20に渦電流54を発生させながら超電導線材20の長手方向に相対的に移動するコイル52aと、渦電流54の発生によるコイル52aの発振状態の変化に基づいて超電導線材20の変位に関する情報を出力する本体53とを有する渦電流式変位計51をさらに備えている。
【0103】
本実施の形態における超電導線材20の検査方法は、交流を流したコイル52aを用いて超電導線材20の長手方向に沿って超電導線材20に渦電流54を発生させる工程と、渦電流54の発生によるコイル52aの発振状態の変化に基づいて超電導線材20の変位に関する情報を出力する工程とをさらに備えている。
【0104】
本実施の形態における超電導線材20の検査装置および検査方法によれば、超電導線材20の表面20aの変位に関する情報が得られるので、特に膨れ、曲がり、局所幅変動、変形などの欠陥を感度よく検査することができる。また、欠陥を数値的に計測することができ、欠陥の有無のみならず欠陥のサイズや形状を測定することができる。その結果、超電導線材の検査をより効果的に行なうことができる。
【0105】
また、超電導線材20が幅方向(図16中紙面に垂直な方向)に変位している場合にも渦電流54の発生状態は変化し、コイル52aの発振状態が変化する。したがって、渦電流式変位計51によれば、超電導線材20の厚み方向の変位に加えて幅方向の変位をも計測することができる。
【0106】
なお、本実施の形態においては、コイル52aに交流を流す交流発生部と、渦電流54の発生によるコイル52aの発振状態の変化に基づいて超電導線材20の変位に関する情報を出力する渦電流式変位計用出力部とがともに本体53である場合について示したが、交流発生部および渦電流式変位計用出力部は別々の構成であってもよい。また、本実施の形態においては、コイル52aの振幅の変化および位相の変化の両方に基づいて超電導線材20の表面20aの位置が計算されているが、コイル52aの振幅の変化または位相の変化のいずれか一方のみに基づいて超電導線材20の表面20aの位置が計算されてもよい。
【0107】
また、光方式検査装置および渦電流式変位計を以下のように用いて超電導線材20の検査を行なってもよい。たとえば光方式検査装置で欠陥の発生部分を検査し、その場所の情報を渦電流式変位計に伝達し、渦電流式変位計において欠陥のサイズや形状を測定してもよい。また、たとえば渦電流式変位計で曲がりなどの大きな欠陥の有無を検査し、光方式検査装置においてピンホールなどの小さな欠陥の有無を検査してもよい。このように用途によって光方式検査装置および渦電流式変位計の各々の感度を調節すれば、コンピュータによる信号処理時間の短縮を図ることができ、検査効率が向上する。
【0108】
さらに、本実施の形態における渦電流式変位計用出力部としての機能はコンピュータ5(図3)によって果たされてもよい。この場合、コイル52aはコンピュータ5と電気的に接続される。これにより、1台のコンピュータによって検査を行なうことができる。
【0109】
(実施の形態7)
図18は、本発明の実施の形態7における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す断面図である。図18を参照して、本実施の形態における超電導線材の検査装置は、実施の形態1〜4のいずれかに示す光方式検査装置の他に、接触式変位計61をさらに備えている。接触式変位計61は、プローブ64と、鉄心65と、1次コイル63と、接触式変位計用コイルとしての2つの2次コイル62aおよび62bと、接触式変位計用出力部としての本体66と、筐体67とを有している。プローブ64はその先端が超電導線材20の表面20aに接触するように配置されており、プローブ64の上部には鉄心65が取り付けられている。筐体67は中空部分67aのある円筒形状を有している。プローブ64の上部および鉄心65は中空部分67aの内部に配置されており、中空部分67aの内部において図中上下方向にスライド可能である。筐体67には上から順に2次コイル62a、1次コイル63、および2次コイル62bの各々が巻きつけられている。1次コイル63および2次コイル62a,62bの各々は本体66と電気的に接続されている。
【0110】
図19は図18の接触式変位計の回路図である。図19を参照して、1次コイル63が一定周波数の交流電圧で励磁されると、鉄心65により2次コイル62a,62bの各々に交流の誘起電圧が発生する。鉄心65の上下方向の位置によって2次コイル62a,62bの各々に発生する誘起電圧は変化する。本体66は2つの誘起電圧の差(交流電圧)を検波して増幅し、直流電圧に変換する。つまり、接触式変位計61は差動トランスの原理を利用している。
【0111】
次に、接触式変位計61による超電導線材20の検査方法について説明する。
図18および図19を参照して、プローブ64は超電導線材20の表面20aに接触しながら超電導線材20の長手方向に相対的に移動される。図18ではプローブ64は固定されており、超電導線材20が図18中右方向に移動されている。
【0112】
ここで、超電導線材20の表面20aが厚み方向に変位していない(欠陥のない)場合には、2次コイル62aと2次コイル62bとの中間部分に鉄心65は位置しており、2次コイル62a,62bには同じ大きさの誘起電圧が発生する。その結果、本体66で得られる直流電圧は0Vとなる。一方、膨れ68などの欠陥が発生し超電導線材20の表面20aが厚み方向に変位している場合には、プローブ64および鉄心65は表面20aの変位に連動して図18および図19中上下方向にスライドする。プローブ64が上方向にスライドした場合、鉄心65は2次コイル62aの方に移動し、2次コイル62aには2次コイル62bよりも大きな誘起電圧が発生する。その結果、本体66で得られる直流電圧は正の値となる。プローブ64が下方向にスライドした場合、鉄心65は2次コイル62bの方に移動し、2次コイル62bには2次コイル62aよりも大きな誘起電圧が発生する。その結果、本体66で得られる直流電圧は負の値となる。プローブ64の変位が大きいほど本体66で得られる直流電圧の大きさは大きくなる。
【0113】
本体66は、直流電圧の正負および大きさに基づいて超電導線材20の表面20aの変位に関する情報を出力する。その結果、超電導線材20の表面20aの欠陥が検出される。
【0114】
本実施の形態における超電導線材20の検査装置は、超電導線材20に接触しながら超電導線材20の長手方向に相対的に移動し、かつ超電導線材20の変位に連動するプローブ64と、プローブ64に取り付けられた鉄心65と、鉄心65の移動によって誘導起電力を発生する2次コイル62a,62bと、誘導起電力に基づいて超電導線材20の変位に関する情報を出力する本体66とを有する接触式変位計61をさらに備えている。
【0115】
本実施の形態における超電導線材20の検査方法は、鉄心65が取り付けられたプローブ64を超電導線材20に接触させながら超電導線材20の長手方向に相対的に移動させ、プローブ64を超電導線材20に連動させる工程と、鉄心65の移動によって2次コイル62a,62bに誘導起電力を発生させ、誘導起電力に基づいて超電導線材20の変位に関する情報を出力する工程とをさらに備えている。
【0116】
本実施の形態における超電導線材20の検査装置および検査方法によれば、超電導線材20の表面20aの変位に関する情報が得られるので、特に膨れ、曲がり、局所幅変動、変形などの欠陥を感度よく検査することができる。また、欠陥を数値的に計測することができ、欠陥の有無のみならず欠陥のサイズや形状を測定することができる。その結果、超電導線材の検査をより効果的に行なうことができる。
【0117】
なお、本実施の形態においては、接触式変位計が図19に示す回路を有している場合について示したが、本発明の接触式変位計はこのような回路を有するものに限られるものではなく、コイルに発生する誘導起電力に基づいて超電導線材20の変位に関する情報を出力するものであればよい。
【0118】
なお、光方式検査装置および接触式変位計を以下のように用いて超電導線材20の検査を行なってもよい。たとえば光方式検査装置で欠陥の発生部分を検査し、その場所の情報を接触式変位計に伝達し、接触式変位計において欠陥のサイズや形状を測定してもよい。また、たとえば接触式変位計で曲がりなどの大きな欠陥の有無を検査し、光方式検査装置においてピンホールなどの小さな欠陥の有無を検査してもよい。このように用途によって光方式検査装置および接触式変位計の各々の感度を調節すれば、コンピュータによる信号処理時間の短縮を図ることができ、検査効率が向上する。
【0119】
また、本実施の形態における本体66としての機能はコンピュータ5(図3)によって果たされてもよい。この場合、1次コイル63および2次コイル62a,62bの各々はコンピュータ5と電気的に接続される。これにより、1台のコンピュータによって検査を行なうことができる。
【0120】
(実施の形態8)
図20は、本発明の実施の形態8における超電導線材の検査装置の構成を模式的に示す図である。図20を参照して、本実施の形態における超電導線材の検査装置は、実施の形態1〜4のいずれかに示す光方式検査装置の他に、3つの重心評価計71〜73をさらに備えている。重心評価計71〜73の各々は、超電導線材20の長手方向に沿ってこの順序で配置されており、レーザ光を照射するための照射部74aと、照射部74aから照射されたレーザ光を受光するための受光部74bとを有している。照射部74aの各々は超電導線材20の表面20aの上部に配置されており、受光部74bの各々は超電導線材20の裏面20bの下部に配置されている。一対の照射部74aと受光部74bとは同軸配置されている。また、重心評価計71〜73は共通のコンピュータ75を有しており、重心評価計71〜73の受光部74bの各々はコンピュータ75と電気的に接続されている。
【0121】
次に、重心評価計71〜73による超電導線材20の検査方法について説明する。
図21は超電導線材20にたわみが発生していない場合の超電導線材の中心位置を示す図であり、図22は超電導線材20にたわみが発生している場合の超電導線材の中心位置を示す図である。
【0122】
図20および図21を参照して、重心評価計71の照射部74aから、超電導線材20の表面20aに対してレーザ光F1が照射される。レーザ光F1のスポット径は超電導線材20の幅(図21中縦方向の長さ)よりも大きくなっている。レーザ光F1のうち超電導線材20に照射された光は表面20aで反射するので受光部74bで受光されず、レーザ光F1のうち超電導線材20に照射されなかった光(図21中G1で示される部分の光)のみが受光部74bで受光される。コンピュータ75は、受光部74bの受光パターンG1に基づいて、レーザ光F1の照射位置における超電導線材20の幅および幅方向の中心(重心)位置H1を測定し、出力する。
【0123】
重心評価計72および73の各々は、重心評価計71と同様の原理で、レーザ光F2およびF3の各々の照射位置における超電導線材20の幅および幅方向の中心位置H2、H3を測定し、出力する。
【0124】
ここで、レーザ光F1の照射位置からレーザ光F3の照射位置までの間において超電導線材20が幅方向に変位していない(欠陥のない)場合には、レーザ光F1〜F3の各々の照射位置における中心位置H1〜H3は、いずれも超電導線材20の長手方向に平行な直線L上にある。一方図22に示すように、レーザ光F1の照射位置からレーザ光F3の照射位置までの間においてたとえばたわみ76などの欠陥が発生し、超電導線材20が幅方向に変位している場合には、中心位置H1〜H3のうちいずれか(図では中心位置H2)が直線L上から外れる。その結果、中心位置H1〜H3に基づいて超電導線材20の表面20aの欠陥が検出される。
【0125】
本実施の形態における検査装置は、超電導線材20の長手方向に並んで配置され、かつ超電導線材20の幅方向の中心を測定する重心評価計71〜73をさらに備えている。
【0126】
本実施の形態における検査方法は、超電導線材20の長手方向におけるレーザ光F1の照射位置における幅方向の中心位置H1を測定する工程と、超電導線材20の長手方向におけるレーザ光F2の照射位置における幅方向の中心位置H2を測定する工程と、超電導線材20の長手方向におけるレーザ光F3の照射位置における幅方向の中心位置H3を測定する工程とをさらに備えている。
【0127】
これにより、全ての中心位置H1〜H3が直線L上に存在しているか否かを判別することにより、超電導線材の幅方向の長周期の変形(たとえばたわみ、うねり、波うちなど)を計測することができる。したがって、実施の形態1〜4の光方式検査装置と組み合わせることによりさまざまな種類の欠陥を検出することができ、検査工程の効率化を図ることができる。
【0128】
また、重心評価計71〜73の各々によれば、受光部74bの受光パターンによって、レーザ光F1〜F3の各々の照射位置における超電導線材20の幅方向の変化も検出することができる。
【0129】
なお、本実施の形態においては、重心評価計71〜73が受光部74bの受光パターンによって中心位置を測定する場合について示したが、重心評価計の原理はこのようなものに限定されるものではなく、重心評価計としては超電導線材20の幅方向の中心位置を測定するものであればよい。
【0130】
また、本実施の形態におけるコンピュータ75としての機能はコンピュータ5(図3)によって果たされてもよい。この場合、受光部74bの各々はコンピュータ5と電気的に接続される。これにより、1台のコンピュータによって検査を行なうことができる。
【0131】
また、実施の形態1〜8では、検査対象物がテープ状の多芯線の酸化物超電導線材である場合について説明したが、検査対象物は、1本の酸化物超電導体フィラメントがシース部により被覆された単芯線構造の酸化物超電導線材であってもよい。また、検査対象物は、テープ状の超電導線材の他、圧延加工が施されていない丸線の超電導線材であってもよい。
【0132】
さらに、実施の形態1〜8では検査対象物がビスマス系の酸化物超電導線材である場合について示したが、ビスマス系の酸化物超電導線材の他、イットリウム系の酸化物超電導線材であってもよく、金属系の超電導線材であってもよい。本発明は、任意形状の超電導線材の検査に広く適用することができる。
【0133】
(実施の形態9)
図23は、本実施の形態における超電導線材の検査装置を概念的に示す図である。図23を参照して、本実施の形態の検査装置は、送りリール81と、巻取りリール82と、実施の形態1の光方式検査装置10と、実施の形態8の重心評価計71〜73と、実施の形態5の2つのレーザ式変位計41と、実施の形態6の渦電流式変位計51とを備えている。本実施の形態における超電導線材の検査装置において、超電導線材20は送りリール81から巻取りリール82へ送られ、その間に種々の検査(インライン検査)がなされる。
【0134】
始めに超電導線材20は、超電導線材20の両側面に配置された渦電流式変位計51によってその端面20cの変位を測定され、たとえば曲がりなどの欠陥の有無が検査される。次に超電導線材20は、超電導線材20の表面20a側および裏面20b側の各々に配置されたレーザ式変位計41によって厚み方向の変位が測定され、たとえば膨れなどの欠陥の有無が検査される。レーザ式変位計41の代わりに渦電流式変位計51や実施の形態7の接触式変位計61が用いられてもよい。次に超電導線材20は3つの重心評価計71〜73によって長周期のたわみなどが検査される。また、幅方向の変形の有無もあわせて検査される。次に超電導線材20は、超電導線材20の表面20a側および裏面20b側の各々に配置された光方式検査装置10によって、表面20aおよび裏面20bにおけるピンホールなどの欠陥の有無が検査される。その後、超電導線材20は巻取りリール82に巻き取られる。
【0135】
このように、実施の形態1〜8における検査装置を適宜組み合わせることにより、超電導線材20に発生するさまざまな欠陥の有無を検査することができ、検査工程の効率化を図ることができる。
【0136】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、加圧窒素試験と、本発明の超電導線材の検査装置および検査方法とを比較して、本発明の(光方式)検査装置および検査方法の効果を確認した。具体的には、始めに以下の方法によって超電導線材を製造した。
【0137】
Bi2CO3、PbO、SrCO3、CaCO3、およびCuOの原料粉末を、原子比がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.3:1.9:2.0:3.0となるように調整した。この原料粉末に対して熱処理と粉砕とを繰り返し、Bi2223相と非超電導相とにより構成される粉末を作製した。次に、この粉末を銀パイプ内に充填し、銀パイプを伸線加工して単芯のクラッド線を得た。次に、得られたクラッド線を61本束ねて銀パイプに挿入し、この銀パイプを伸線加工した。これにより、原料粉末がフィラメント状に充填された多芯線を得た。次に、この多芯線を圧延加工し、銀比1.5、芯61本、幅4.2mm、厚さ0.24mm、長さ400mのテープ状の多芯線を得た。次に、温度840℃の大気中において、テープ状の多芯線を50時間熱処理した。その後、多芯線を室温まで冷却し、8%の圧下率で再び圧延加工した。続いて、温度835℃の大気中において再び多芯線を50時間熱処理し、超電導線材を得た。
【0138】
次に、上記方法によって得られた超電導線材について、長手方向の臨界電流値の分布を4m間隔で測定した。臨界電流値は1cm当たり1μVの電圧を印加した場合の値である。臨界電流値の測定の結果、図24に示すように、線材の長手方向についての臨界電流値の分布はほぼ均一であった。
【0139】
続いて、超電導線材の表面に存在する表面キズや、変色部分や、ピンホールなどの欠陥を目視にて検査した。その結果、超電導線材の表面には100μm以上の直径の欠陥が17個存在した。
【0140】
続いて、超電導線材に対して、従来の検査方法である加圧窒素試験を複数回繰り返し、バルーニングの発生から欠陥の有無を検査した。加圧窒素試験の回数と、バルーニングの発生した箇所の数との関係を表1に示す。また、1回目の加圧窒素試験直後において、長手方向の臨界電流値の分布を4m間隔で測定した。この結果を図25に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1および図25を参照して、1回目の加圧窒素試験の直後においては、線材の長手方向位置が約40m、約280m、および約320mの3箇所において、バルーニングが発生している。つまり、1回の加圧窒素試験では、17個の欠陥のうち3個の欠陥しか検出できなかった。また、10回の加圧窒素試験を行なっても、17個の欠陥のうち9個の欠陥しか検出できなかった。このことから、加圧窒素試験では、全ての欠陥を検出することができないことが分かる。
【0143】
続いて、実施の形態1に示す超電導線材の検査装置および検査方法を用いて、欠陥の有無を検査した。その結果、17個の欠陥の全てを検出することができた。以上の結果から、本発明の超電導線材の検査装置および検査方法は、従来の加圧窒素試験に比べて、小さな欠陥のある超電導線材を感度よく検査することができることが分かる。
【0144】
(実施例2)
本実施例では、超電導線材の照射部が同軸照射部であることの効果と、斜方照射部であることの効果とを調べた。具体的には、実施例1と同様の方法により超電導線材を製造した。得られた超電導線材には、図26(a)に示すような変色部分28およびピンホール29や、図26(b)に示すような表面キズ27が発生していることが目視にて確認された。続いて、この超電導線材について、以下の3つの検査装置を用いて欠陥を検査した。この結果を表2に示す。
【0145】
検査装置A:実施の形態1の構成の検査装置(同軸照射部を備えた検査装置)。
検査装置B:実施の形態2の構成の検査装置(斜方照射部を備えた検査装置)。
【0146】
検査装置C:照射部としてドーム照明を用いた検査装置。なお、ドーム照明とは、LEDに比べて光の指向性が弱い照明であり、LEDに比べて広範囲に光を照射する照明である。
【0147】
【表2】

【0148】
表2を参照して、検査装置A〜Cのいずれを用いた場合でも、欠陥を検出することができた。特に検査装置Aでは表面変色およびピンホールを感度よく検出することができた。検査装置Aを用いた場合には、図26(a)の変色部分28およびピンホール29が、図27(a)に示すように明確に検出された。また、特に検査装置Bでは表面キズを感度よく検出することができた。検査装置Bを用いた場合には、図26(b)の表面キズ27が、図27(b)に示すように明確に検出された。
【0149】
(実施例3)
本実施例では、実施の形態7に示す接触式変位計の効果を確認した。具体的には、始めに以下の方法によって超電導線材を製造した。
【0150】
Bi2CO3、PbO、SrCO3、CaCO3、およびCuOの原料粉末を、原子比がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.3:1.9:2.0:3.0となるように調整した。この原料粉末に対して熱処理と粉砕とを繰り返し、Bi2223相と非超電導相とにより構成される粉末を作製した。次に、この粉末を銀パイプ内に充填し、銀パイプを伸線加工して単芯のクラッド線を得た。次に、得られたクラッド線を61本束ねて銀パイプに挿入し、この銀パイプを伸線加工した。これにより、原料粉末がフィラメント状に充填された多芯線を得た。次に、この多芯線を圧延加工し、銀比2.5、芯61本、幅4.0mm、厚さ0.26mm、長さ1300mのテープ状の多芯線を得た。次に、温度840℃の大気中において、テープ状の多芯線を50時間熱処理した。その後、多芯線を室温まで冷却し、10%の圧下率で再び圧延加工した。その結果、幅4.2mm、厚さ0.24mmの多芯線を得た。続いて、温度835℃の大気中において再び多芯線を50時間熱処理し、超電導線材を得た。
【0151】
続いて、実施の形態1に示す光方式検査装置および検査方法を用いて、欠陥の有無を検査した。その結果、ピンホールや表面キズなどの欠陥は検出されなかった。次に、実施の形態7に示す接触式変位計およびこれを用いた検査方法を用いて、超電導線材の厚さ方向の変位を測定した。変位の測定は超電導線材の長手方向に沿って2mmごとに行なわれた。この結果を図28に示す。
【0152】
図28を参照して、線材厚みが0.25mmを超える部分が7箇所検出された。変位測定後にこれらの箇所を目視にて観察したところ、熱処理によって発生した膨れが確認された。膨れは超電導電流を低下させる不良部である。
【0153】
以上の結果から、本発明の渦電流式変位計によれば、膨れなどの欠陥を精度よく検出できることが分かる。
【0154】
(実施例4)
本実施例では、実施の形態5に示すレーザ式変位計の効果を確認した。具体的には、実施例3で製造した超電導線材20に対し、実施の形態5に示すレーザ式変位計およびこれを用いた検査方法を用いて、超電導線材の幅方向の変位を測定した。変位の測定は超電導線材の長手方向に沿って2mmごとに行なわれた。この結果を図29に示す。
【0155】
図29を参照して、線材の幅が4.25mmを超える部分が4箇所検出された。変位測定後にこれらの箇所を目視にて観察したところ、局所的に幅が大きくなっていることが確認された。
【0156】
以上の結果から、本発明のレーザ式変位計によれば、幅方向の変形などの欠陥を精度よく検出できることが分かる。
【0157】
(実施例5)
本実施例では、実施の形態8に示す重心評価計の効果を確認した。具体的には、実施例3で製造した超電導線材20に対し、実施の形態8に示す3つの重心評価計およびこれを用いた検査方法を用いて、超電導線材の幅方向の中心位置を測定した。そしちぇ、両側の2つの重心評価計(図20における重心評価計71および73)により計算される中心位置と、中央の重心評価計(図20における重心評価計72)により計算される中心位置との差を出力した。この結果を図30に示す。
【0158】
図30を参照して、28m付近の線材部位においてピークが検出された。検査後にこの箇所を観察したところ、曲率半径20000m以上の曲がりが確認された。
【0159】
以上の結果から、本発明の重心評価計によれば、長周期の線材の曲がりを精度よく検出できることが分かる。
【0160】
以上に開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態および実施例ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、任意形状の超電導線材の検査に広く適用することができ、特にテープ状の酸化物超電導線材の検査に好適である。
【符号の説明】
【0162】
1,1a 青色LED、2,2a 赤色LED、3,3a カラーラインセンサ、5,5a,45,75 コンピュータ、7,7a ミラー、10 光方式検査装置、13 受光窓、20,40a,40b 超電導線材、20a 超電導線材表面、20b 超電導線材裏面、20c 超電導線材端面、21 酸化物超電導体フィラメント、22 シース部、23,46,55,68 膨れ、24 曲がり、25 エッジ部、27 表面キズ、28 変色部分、29 ピンホール、30 超電導ケーブル、31 ケーブルコア、32 フォーマ、34 絶縁紙、35 クラフト紙、37 冷媒流通路、38 断熱管、39 防食層、41 レーザ式変位計、42 センサヘッド、43 半導体レーザ、44 PSD、51 渦電流式変位計、52,64 プローブ、52a コイル、53,66 本体、54 渦電流、56,57 発振波形、58 磁場、61 接触式変位計、62a,62b 2次コイル、63 1次コイル、65 鉄心、67 筐体、67a 中空部分、71〜73 重心評価計、74a 照射部、74b 受光部、76 たわみ、81 送りリール、82 巻取りリール、A1〜A4 照射光、B1〜B3 反射光、C1,C2,C4 散乱光、D,E,E1,E2,F1〜F3 レーザ光、G1 受光パターン、H1〜H3 中心位置、L 直線、P1,P2 位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材(20)に光を照射する照射部(1,2)と、
前記超電導線材からの光を受光する受光部(3)と、
前記受光部にて受光した光の光量を積算して出力する出力部(5)とを備える、超電導線材の検査装置(10)。
【請求項2】
前記受光部(3)は、前記超電導線材(20)からの反射光(B1)を主として受光する反射光受光部である、請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置。
【請求項3】
前記受光部(3)は、前記超電導線材(20)からの散乱光(C2)を主として受光する散乱光受光部である、請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置。
【請求項4】
前記照射部(1)は、前記超電導線材(20)の表面(20a)の法線方向に光を照射する同軸照射部である、請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置。
【請求項5】
前記照射部(3)は、前記超電導線材(20)の表面(20a)の法線方向と角度をなす方向に光を照射する斜方照射部である、請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置。
【請求項6】
請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置を2つ以上備える、超電導線材の検査装置。
【請求項7】
前記超電導線材(20)にレーザ光(D)を照射しながら前記超電導線材の長手方向に相対的に移動するレーザ光照射部(43)と、前記超電導線材で反射した前記レーザ光(E)を受光するレーザ光受光部(44)と、前記レーザ光受光部における受光位置に基づいて前記超電導線材の変位に関する情報を出力するレーザ式変位計用出力部(45)とを有するレーザ式変位計(41)をさらに備える、請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置。
【請求項8】
渦電流式変位計用コイル(52a)に交流を流す交流発生部(53)と、前記超電導線材(20)に渦電流(54)を発生させながら前記超電導線材の長手方向に相対的に移動する前記渦電流式変位計用コイルと、前記渦電流の発生による前記渦電流式変位計用コイルの発振状態の変化に基づいて前記超電導線材の変位に関する情報を出力する渦電流式変位計用出力部(53)とを有する渦電流式変位計をさらに備える、請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置。
【請求項9】
前記超電導線材(20)に接触しながら前記超電導線材の長手方向に相対的に移動し、かつ前記超電導線材の変位に連動するプローブ(64)と、前記プローブに取り付けられた鉄心(65)と、前記鉄心の移動によって誘導起電力を発生する接触式変位計用コイル(62a、62b)と、前記誘導起電力に基づいて前記超電導線材の変位に関する情報を出力する接触式変位計用出力部(66)とを有する接触式変位計をさらに備える、請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置。
【請求項10】
前記超電導線材(20)の長手方向に並んで配置され、かつ前記超電導線材の幅方向の中心(H1〜H3)を測定する第1〜第3の重心評価計(71〜73)をさらに備える、請求の範囲第1項に記載の超電導線材の検査装置。
【請求項11】
超電導線材(20)の表面(20a)の法線方向に光を照射する同軸照射部(1)と、
前記超電導線材(20)の表面(20a)の法線方向と角度をなす方向に光を照射する斜方照射部(2)と、
前記超電導線材(20)からの反射光(B1)を主として受光する反射光受光部(3)と、
前記超電導線材(20)からの散乱光(C2)を主として受光する散乱光受光部(3)と、
前記反射光受光部および前記散乱光受光部にて受光した光の光量を積算して出力する出力部(5a)とを備える、超電導線材の検査装置。
【請求項12】
請求の範囲第11項に記載の超電導線材の検査装置を2つ以上備える、超電導線材の検査装置。
【請求項13】
超電導線材(20)に光を照射する照射工程と、
前記超電導線材からの光を受光する受光工程と、
受光した光の光量を積算して出力する出力工程とを備える、超電導線材の検査方法。
【請求項14】
前記受光工程において、前記超電導線材(20)からの反射光を主として受光する、請求の範囲第13項に記載の超伝導線材の検査方法。
【請求項15】
前記受光工程において、前記超電導線材(20)からの散乱光を主として受光する、請求の範囲第13項に記載の超伝導線材の検査方法。
【請求項16】
前記照射工程において、前記超電導線材(20)の表面(20a)の法線方向に光を照射する、請求の範囲第13項に記載の超電導線材の検査方法。
【請求項17】
前記照射工程において、前記超電導線材(20)の表面(20a)の法線方向と角度をなす方向に光を照射する、請求の範囲第13項に記載の超電導線材の検査方法。
【請求項18】
前記超電導線材(20)の長手方向に沿ってレーザ光(D)を照射する工程と、
前記超電導線材で反射した前記レーザ光(E)を受光する工程と、
前記レーザ光を受光した位置に基づいて前記超電導線材の変位に関する情報を出力する工程とをさらに備える、請求の範囲第13項に記載の超電導線材の検査方法。
【請求項19】
交流を流した渦電流式変位計用コイル(52a)を用いて前記超電導線材(20)の長手方向に沿って前記超電導線材に渦電流(54)を発生させる工程と、
前記渦電流の発生による前記渦電流式変位計用コイルの発振状態の変化に基づいて前記超電導線材の変位に関する情報を出力する工程とをさらに備える、請求の範囲第13項に記載の超電導線材の検査方法。
【請求項20】
鉄心(65)が取り付けられたプローブ(64)を前記超電導線材(20)に接触させながら前記超電導線材の長手方向に相対的に移動させ、前記プローブを前記超電導線材に連動させる工程と、前記鉄心の移動によって接触式変位計用コイル(62a、62b)に誘導起電力を発生させ、前記誘導起電力に基づいて前記超電導線材の変位に関する情報を出力する工程とをさらに備える、請求の範囲第13項に記載の超電導線材の検査方法。
【請求項21】
前記超電導線材(20)の長手方向における第1の位置における幅方向の中心(H1)を測定する工程と、
前記超電導線材の長手方向における第2の位置における幅方向の中心(H2)を測定する工程と、
前記超電導線材の長手方向における第3の位置における幅方向の中心(H3)を測定する工程とをさらに備える、請求の範囲第13項に記載の超電導線材の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−197009(P2011−197009A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111436(P2011−111436)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2007−514529(P2007−514529)の分割
【原出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】