説明

超電導線材の製造方法および超電導線材の接続方法

【課題】接続抵抗を低減できる超電導線材の製造方法を提供する。
【解決手段】基板1の主表面上に中間層を形成する。中間層上に超電導層3を形成する。超電導層の露出表面をドライエッチングする。超電導層の露出表面には、超電導層の成膜時にできた異層や非配向層、成膜後に大気中の水分に曝されることにより形成されたアモルファス層など、超電導線材5cの接続抵抗の原因となる不純物が存在する。超電導層の露出表面をドライエッチングすることで、これらの不純物を除去することができ、超電導線材同士を接続する際に生じる接続抵抗を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材の製造方法および超電導線材の接続方法、たとえば超電導線材同士の接続抵抗を低減できる超電導線材の製造方法および超電導線材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導線材は、金属からなる基板上に中間層を積層し、さらに中間層上に超電導層を積層している。中間層や超電導層は、たとえばPLD法などの物理蒸着法やTFA−MOD法などの有機金属堆積法(MOD法)により形成されている。
【0003】
MRI用マグネット、NMR用マグネット、およびシリコン引き上げ炉用マグネットなどの産業用マグネットには、長尺化された上記のような超電導線材が必要となる。そのため、超電導線材を接続して、長尺化を図る必要がある。しかし、永久電流モード通電を行なう場合には、超電導線材の接続部の抵抗をゼロに近づける必要がある。
【0004】
超電導線材の接続方法として、特許文献1には、はんだ接続法として、酸化物超電導導体の接続構造および接続方法が開示されている。特許文献1には、基板と、基板上に形成された酸化物超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とからなる複数の超電導線材の安定化層同士についてはんだを介して接続される接続構造および接続方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、拡散接合法として、酸化物超電導線材の接続方法が開示されている。特許文献2には、酸化物超電導線材の外周面を導電性金属層で被覆してなる超電導線材同士の一部を重ね合わせて、重ね合わせにより対接する部分の少なくともいずれか一方の導電性金属の厚さを最大95%除去し、除去した導電性金属層面にペースト層を被着形成し、熱処理を施して接続する方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、酸化物超電導導体の接続方法が開示されている。特許文献3には、基板と基板上に形成された超電導層とを備える2の超電導線材の端部で超電導層を除去して基板を露出させ、基板同士を接合して、露出部分に酸化物超電導層を形成する接続方法が開示されている。
【0007】
特許文献4には、超電導線材の接続方法が開示されている。特許文献4には、基板と基板上に形成された超電導層と、超電導層上に形成された安定化層とを備える複数の超電導線材が、超電導層を成長させてなる接続層により接続されている、超電導線材の接続構造および接続方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−133067号公報
【特許文献2】特開平7−192837号公報
【特許文献3】特開2001−319750号公報
【特許文献4】特開2008−66399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示の酸化物超電導導体の接続方法は、はんだを介して2つの超電導線材を接続させるはんだ接続法を採用しているが、はんだを超電導層に直接接続させることは困難である。そのため、銀安定化層や銅安定化層などの安定化層を超電導層上に形成し、安定化層同士をはんだを介して接続する。この場合には、安定化層とはんだとの間に電気抵抗が残存してしまうという問題がある。このように電気抵抗が残存すると、接続部が超電導状態を保つ永久電流ジョイントは困難である。
【0010】
上記特許文献2に開示の酸化物超電導線材の接続方法では、超電導層上に形成した安定化層同士を拡散接合させる拡散接合法を採用しているが、拡散接合法は、はんだ接合法に比べて接続抵抗値は低減されるものの、安定化層を介しての接続抵抗が低減できない。すなわち、導電性金属とペースト層との間に電気抵抗が残存してしまうという問題がある。そのため、永久電流ジョイントは困難である。
【0011】
上記特許文献3に開示の酸化物超電導導体の接続方法では、超電導層を除去しているので、あらたに超電導層を形成した部分と、端部以外の超電導層の部分との接続部分において、その結晶成長をそれぞれ別の基板上で行なっている。また、基板同士を加熱圧接により接続して、接続した基板端部の上に超電導層を形成している。そのため、基板の加熱圧接によって基板の結晶性が乱れてその上に成長させた超電導層は結晶性が低下し、さらには成長した結晶の組成の相違から接続抵抗がまだ残存してしまうという問題がある。
【0012】
上記特許文献4に開示の超電導線材の接続方法では、超電導層上に形成した安定化層を除去して超電導層を露出させるが、安定化層の除去の際に、超電導層の超電導特性に影響を与える可能性があるという問題がある。超電導特性が劣化した場合、その抵抗率は安定化層を上回る可能性が大きい。
【0013】
以上のように、特許文献1〜4では、超電導線材同士の接合方法を工夫することにより接続抵抗の低減を図ってきたが、さらなる接続抵抗の低減が求められている。
【0014】
そこで本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、接続抵抗を低減できる超電導線材の製造方法および超電導線材の接続方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の基板の製造方法は、以下の工程を備える。基板の主表面上に超電導層を形成する。超電導層の露出表面をドライエッチングする。
【0016】
本発明の基板の製造方法は、以下の工程を備える。基板の主表面上に中間層を形成する。中間層上に超電導層を形成する。超電導層の露出表面をドライエッチングする。
【0017】
超電導層の露出表面には、超電導層の成膜時にできた異層や非配向層、成膜後に大気中の水分に曝されることにより形成されたアモルファス層など、超電導線材の接続抵抗の原因となる不純物が存在する。本発明は超電導層の露出表面をドライエッチングすることで、これらの不純物を除去することができ、超電導線材同士を接続する際に生じる接続抵抗を低減することができる。
【0018】
本発明の基板の製造方法において好ましくは、ドライエッチングする工程において、エッチングガスとしてアルゴンを用いる。さらにアルゴンガスを励起して、プラズマ化したアルゴンガスを用いることで、超電導層に異相を作ることなく効率的にエッチングを行うことができる。
【0019】
本発明の基板の製造方法において好ましくは、ドライエッチングする工程において、超電導層の露出表面を0.01〜1μmの厚さで除去する。超電導層の露出表面を0.01〜1μmの厚さで除去すると、超電導線材の不純物を十分に取り除くことができるため、接続抵抗を低減させることができる。
【0020】
本発明の超電導線材の接続方法は、以下の工程を備える。基板と、基板の主表面上に形成され、かつ露出表面を有する超電導層とを含む一の超電導線材を準備する。一の超電導線材における超電導層の露出表面をドライエッチングする。超電導層をドライエッチングする工程の後で、一の超電導線材の露出表面と、他の超電導線材の露出表面とを接続する。
【0021】
超電導層の露出表面をドライエッチングした超電導線材を用いることで、超電導線材同士を接続する際に生じる接続抵抗を低減することができる。
【0022】
本発明の超電導線材の接続方法において好ましくは、一の超電導線材の露出表面と、他の超電導線材の露出表面とをはんだづけする。はんだづけは操作が簡便であり、超電導線材の接続に適している。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、超電導層の露出表面の不純物を除去しているため、超電導線材同士を接続する際に生じる接触抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における超電導線材の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2における超電導線材の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3における超電導線材の接続方法を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施例における超電導線材の接続抵抗の測定方法を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0026】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1における超電導線材の製造方法を概略的に示す断面図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1における超電導線材の製造方法を説明する。
【0027】
本発明の実施の形態1における超電導線材5aの製造方法は以下の工程を備えている。図1(a)に示すように、基板1を準備する。図1(b)に示すように、次に基板1の主表面上に超電導層3を形成する。次に超電導層3の露出表面をドライエッチングする。図1(c)に示すように、次に超電導層3上に安定化層4を形成する。
【0028】
(超電導層を形成する工程)
図1(a)に示すように、まず、基板1を準備する。
【0029】
基板1の超電導層3と対向する側の面は平坦であることが好ましい。たとえば基板1の当該面の表面粗さRaは、50nm以下であることが好ましい。50nm以下とすることによって、当該面上に優れた超電導層3を形成できる。
【0030】
基板1を構成する材料は金属であることが好ましい。基板1は、配向金属基板を用いることがさらに好ましい。なお、配向金属基板とは、基板表面の面内の2軸方向に関して、結晶方位が揃っている基板を意味する。配向金属基板としては、たとえばNi(ニッケル)、Cu(銅)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Ag(銀)、およびAu(金)のうち2以上の金属からなる合金が好適に用いられる。これらの金属を他の金属または合金と積層することもでき、たとえば高強度材料であるSUSなどの合金を用いることもできる。なお、基板1の材料は特にこれに限定されず、たとえば金属以外の材料を用いてもよい。基板1は、たとえば長尺な帯状の形状を有している。
【0031】
そして、図1(b)に示すように、基板1の表面上に、超電導層3を、たとえば気相法および液相法、またはそれらの組み合わせにより形成する。超電導層3としては、たとえばHoBCOなどからなる層を形成する。気相法としては、たとえばレーザ蒸着法、スパッタリング法、および電子ビーム蒸着法などが挙げられる。液相法としては、たとえば有機金属堆積法などが挙げられる。レーザ蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム法、および有機金属堆積法の少なくとも1つの方法により行なわれると、結晶配向性および表面平滑性に優れた表面を有する超電導層3を形成することができる。
【0032】
超電導層3を構成する材料は特に限定されないが、たとえばRE−123系の超電導体とすることが好ましい。なお、RE−123系の超電導体とは、REBa2Cu3y(yは6〜8、より好ましくは6.8〜7、REとはイットリウム、またはGd、Sm、Hoなどの希土類元素を意味する)として表される超電導体を意味する。このようにすれば、フレキシブルな金属からなる基板1上に中間層2および超電導層3を形成すると、大きな臨界電流値および臨界電流密度を示す超電導線材5を実現できる。
【0033】
(超電導層の露出表面をドライエッチングする工程)
次に、超電導層3の露出表面をドライエッチングする。超電導層3の露出表面には、たとえば成膜時にできた異層や非配向層が存在する。さらに、成膜後に大気に曝された際に水分と反応して形成されたアモルファス層が存在していたり、大気中の埃などが付着している。これらの超電導層3の露出表面に存在する異層、非配向層、アモルファス層などの汚染層および超電導層3の露出表面に付着した埃などは、複数の超電導線材5を接続した際の接続抵抗の原因となる。そこで超電導層3の露出表面をドライエッチングして、汚染層や埃を除去することで接続抵抗を低減することができる。
【0034】
ドライエッチングは被エッチング物を載置した電極に高周波電力を印加し、発生した負の自己バイアス電圧により、プラズマから生成されたイオンを加速して被エッチング物に衝撃させる反応性イオンエッチングと、エッチング物にバイアスを印加せずにプラズマより生成したラジカルにより被エッチング物をエッチングするプラズマエッチングに大別される。ドライエッチングの種類は特に限定されないが、超電導層表面にエッチングによる異相を作らないという観点から、反応性イオンエッチングを用いることが好ましい。
【0035】
ドライエッチング装置としては、ダウンフロー型ケミカルドライエッチング装置、陽極結合平行平板型PE装置および円筒バレル型PE装置などを用いることができる。なかでも、陽極結合平行平板型PE装置を用いることが長物の表面にエッチングを施すことが容易であるという理由から好ましい。また、エッチングによる超電導層表面の汚染層の除去後、直ちに安定化層を形成するために、ドライエッチング装置は、スパッタ成膜装置も兼ね備えていることが好ましい。
【0036】
エッチングガスの種類は特に限定されないが、アルゴンを用いてこれをプラズマ励起したものを用いることが好ましい。
【0037】
ドライエッチング工程におけるエッチング装置内のガス圧力は、10-1〜1Torrが好ましい。
【0038】
ドライエッチング工程において、超電導層3の露出表面を約0.01〜1μmの厚さで除去することが好ましい。すなわち、たとえば超電導層3を2μmの厚みで形成した場合、ドライエッチング後の超電導層3の厚みが1〜1.99μmとなるように超電導層3表面を除去することが好ましい。表面状態を高速電子線回折(RHEED:Reflection High Energy Electron Diffraction)装置などで観察し、最適なエッチング量を調整することがさらに望ましい。
【0039】
そして、表面をドライエッチングした超電導層3上に、安定化層4をたとえば物理蒸着法や電気めっき法などにより形成する。安定化層4を形成することで、超電導層3の露出表面を保護することができる。
【0040】
安定化層4は、たとえばAg(銀)やAu(金)、それらの合金などからなる層を形成する。
【0041】
<実施の形態2>
図2は、本発明の実施の形態2における超電導線材の製造方法を概略的に示す断面図である。図2を参照して、本発明一実施の形態2における超電導線材の製造方法を説明する。
【0042】
本発明の実施の形態2における超電導線材5bの製造方法は以下の工程を備えている。図2(a)に示すように、基板1を準備する。図2(b)に示すように、次に基板1の主表面上に中間層2を形成する。図2(c)に示すように、次に中間層2上に超電導層3を形成する。次に超電導層3の露出表面をドライエッチングする。図2(d)に示すように、次に超電導層3上に安定化層4を形成する。
【0043】
(中間層を形成する工程)
図2(a)に示すように、まず、基板1を準備する。基板1は実施の形態1と同じものを用いる。
【0044】
基板1の中間層2と対向する側の面は平坦であることが好ましい。たとえば基板1の当該面の表面粗さRaは、50nm以下であることが好ましい。50nm以下とすることによって、当該面上に優れた中間層2を形成できる。
【0045】
そして、図2(b)に示すように、基板1の表面上に中間層2を形成する。中間層2を備えていると、超電導層3の結晶配向性が良好になるとともに、基板1と超電導層3との間に元素拡散反応が生じない。したがって、超電導線材5の製造方法は、基板1と超電導層3との間に中間層2を形成する工程を備えていることが好ましい。
【0046】
中間層2の成膜方法としては、任意の成膜方法を用いることができるが、たとえばパルスレーザ蒸着法(Pulsed Laser Deposition:PLD法)などの物理蒸着法を用いることができる。
【0047】
中間層2の超電導層3が形成される側の表面は平坦であることが好ましい。たとえば、中間層2の当該表面の表面粗さは50nm以下とすることが好ましい。表面粗さRaを50nm以下とすることによって、その表面上に優れた超電導層3を形成できる。
【0048】
中間層2を構成する材料は、岩塩型、蛍石型、ペロブスカイト型、およびパイロクロア型の少なくともいずれか1つの結晶構造を有する酸化物であることが好ましい。このような結晶構造を有する酸化物として、酸化セリウム(CeO2)、酸化ホルミニウム(Ho23)、酸化イットリウム(Y23)、および酸化イッテルビウム(Yb23)などの希土類元素酸化物、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化マグネシウム(MgO)、およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、BZO(BaZrO3)、酸化アルミニウム(Al23)などのLn−M−O化合物(Lnは1種以上のランタノイド元素、MはSr、Zr、およびGaの中から選ばれる1種以上の元素、Oは酸素)が挙げられる。特に、中間層2を構成する材料が、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マグネシウム(MgO)、およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などが結晶定数および結晶配向の観点から好適に用いられる。
【0049】
これらの材料は、超電導層3との反応性が極めて低く、超電導層3と接触している境界面においても超電導層3の超電導特性を低下させない。特に、基板1を構成する材料として金属を用いる場合には、表面に結晶配向性を有する基板1と超電導層3との配向性の差を緩和して、超電導層3を高温で形成する際に、表面に結晶配向性を有する配向金属からなる基板1から超電導層3への金属原子の流出を防止する役割を果たすことができる。なお、中間層2を構成する材料は特にこれに限定されない。
【0050】
また、中間層2は、良好な結晶配向性を有していることが好ましい。良好な結晶配向性を有する材料としては、上記材料が挙げられる。
【0051】
また、中間層2は、複数の層により構成されていてもよい。中間層2が複数の層により構成される場合、中間層2を構成するそれぞれの層は互いに異なる材質または一部が同じ材質により構成されていてもよい。
【0052】
(超電導層を形成する工程)
そして、図2(c)に示すように、中間層2の表面上に、超電導層3を、実施の形態1と同様の方法で形成する。
【0053】
(超電導層表面をドライエッチングする工程)
次に、超電導層3の露出表面を、実施の形態1と同様の方法でドライエッチングする。
【0054】
そして、表面をドライエッチングした超電導層3上に、安定化層4を、実施の形態1と同様の方法で形成する。
【0055】
<実施の形態3>
図3は、本発明の実施の形態3における超電導線材の接続方法を概略的に示す断面図である。図3を参照して、本発明の実施の形態3における超電導線材の接続方法を説明する。
【0056】
本発明の実施の形態3における超電導線材の接続方法は以下の工程を備えている。図3(a)に示すように、基板1と、基板1の主表面上に形成され、かつ露出表面を有する超電導層3とを含む一の超電導線材5cを準備する。次に、一の超電導線材5cにおける超電導層3の露出表面をドライエッチングする。図3(b)に示すように、次に超電導層3をドライエッチングする工程の後で、一の超電導線材5cの露出表面と、他の超電導線材5c´の露出表面とを接続する。
【0057】
(超電導線材を準備する工程)
図3(a)に示すように、まず、基板1と、基板1の主表面上に形成され、かつ露出表面を有する超電導層3とを含む一の超電導線材5cを準備する。
【0058】
基板1上に超電導層3を形成する工程は、実施の形態1と同様の工程により行うことができる。
【0059】
(超電導層の露出表面をドライエッチングする工程)
次に、超電導層3の露出表面をドライエッチングする。
【0060】
超電導層3の露出表面をドライエッチングする工程は、実施の形態1と同様の工程により行うことができる。
【0061】
なお、超電導層3の上に、さらに安定化層(図示せず)を形成してもよい。
(超電導線材を接続する工程)
次に、露出表面をドライエッチングした一の超電導線材5cの超電導層の露出表面と、他の超電導線材5c´の超電導層の露出表面とを接続する。実施の形態3では超電導層3は超電導線材5cの表面に露出している場合を示している。なお、超電導線材5cが超電導層3上に安定化層を有する場合は、超電導層3の露出表面は、安定化層を介して接続することになる。
【0062】
超電導線材5cと接続される他の超電導線材5c´は、超電導線材5cと同様の工程で準備されることが好ましい。すなわち、超電導線材5cと他の超電導線材5c´の超電導層3のそれぞれの表面がドライエッチングされていると、接続抵抗をより低減することができる。
【0063】
超電導線材5cと他の超電導線材5c´の接続方法は特に制限されないが、はんだによる接合や、接触部の材料を拡散させ接合する拡散接合などを用いることができる。中でもはんだづけを用いることが好ましい。
【0064】
超電導線材5cと他の超電導線材5c´を接続する場合、接続部位の長さLは5cm以上であることが好ましい。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
実施例1では、実施の形態1における超電導線材の製造方法にしたがって、超電導線材5を得た。
【0066】
具体的には、まず、基板として、Ni合金からなり、厚さ150μm、幅10mm、長さ100mmを準備した。そして基板上に中間層として、酸化セリウム(CeO2)層、安定化ジルコニア層、酸化セリウム層をこの順序で電子ビーム蒸着法により形成した。そして、中間層上に、PLD法により、酸素分圧200mTorrの雰囲気で820℃の基板温度で、2μmの厚さのGdBa2Cu3OX(Gd−123)層からなる超電導層を形成した。
【0067】
上記の超電導層を形成した基板を、プラズマエッチング装置とスパッタ成膜装置を兼ねている真空チャンバに入れる。前記装置はアルゴン(Ar)を入れることによりアルゴンプラズマを発生させて試料表面をエッチングした後、酸素(O2)を入れることにより酸素プラズマを発生させて銀(Ag)ターゲットをエッチングし、Agを試料表面に蒸着させることができる。
【0068】
まず、真空チャンバにアルゴンガスを入れ、ガス圧力1Torrで超電導層表面を1分間エッチングした。エッチング後の超電導層表面を反射高速電子回折装置にて解析し、表層に清浄なGd−123層が露出したことを確認した。エッチング後の超電導層の厚みは1.8μmである。
【0069】
次に、真空チャンバ内のアルゴンガスを酸素に置換し、前記の露出したGd−123層上に安定化層として銀層をスパッタ蒸着した。銀層の設定膜厚は6μmである。
【0070】
上記の工程を繰り返すことで、実施例1の超電導線材を合計2枚作製した。
(比較例1)
実施例1と、超電導層表面をエッチングする工程を除く以外は同様の工程で、比較例1の超電導線材を合計2枚作製した。
【0071】
(測定方法)
図4で示すように、実施例1で作製した2枚の超電導線材5の超電導層を安定化層を介してはんだにて接続した。超電導線材5の接続部位の長さLは1cmであった。接続した超電導線材を液体窒素に浸し、I−V特性の測定を行い抵抗値を求めた。
【0072】
比較例1についても、実施例1と同様にして抵抗値の測定を行った。
(測定結果)
実施例1の抵抗値は1μΩであり、比較例1の抵抗値は2μΩであった。
【0073】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 基板、2 中間層、3 超電導層、4 安定化層、5,5a,5b,5c,5c´ 超電導線材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主表面上に超電導層を形成する工程と、
前記超電導層の露出表面をドライエッチングする工程とを備えた、超電導線材の製造方法。
【請求項2】
基板の主表面上に中間層を形成する工程と、
前記中間層上に超電導層を形成する工程と、
前記超電導層の露出表面をドライエッチングする工程とを備えた、超電導線材の製造方法。
【請求項3】
前記ドライエッチングする工程において、エッチングガスとしてアルゴンを用いる、請求項1または2に記載の超電導線材の製造方法。
【請求項4】
前記ドライエッチングする工程において、前記超電導層の露出表面を0.01〜1μmの厚さで除去する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導線材の製造方法。
【請求項5】
基板と、前記基板の主表面上に形成され、かつ露出表面を有する超電導層とを含む一の超電導線材を準備する工程と、
前記一の超電導線材における超電導層の露出表面をドライエッチングする工程と、
前記超電導層をドライエッチングする工程の後で、前記一の超電導線材の前記露出表面と、他の超電導線材の露出表面とを接続する工程とを備えた、超電導線材の接続方法。
【請求項6】
前記超電導線材を接続する工程は、前記一の超電導線材の前記露出表面と、他の超電導線材の露出表面とをはんだづけする工程を含む、請求項5に記載の超電導線材の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−18596(P2011−18596A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163507(P2009−163507)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「イットリウム系超電導電力機器技術開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】