説明

超電導線製造用ダイス及びこの超電導線製造用ダイスを用いた超電導線の製造方法

【課題】超電導線の製造を容易に行うことのできる超電導線製造用ダイスを得ること及びこの超電導線製造用ダイスを用いた超電導線の製造方法を提供すること。
【解決手段】NbTi系超電導棒9と板状のNb系金属薄板6を同時にアプローチ角2α=15°のダイス1に通すことでNb系金属薄板6が筒状に変形されてNbTi系超電導棒9の周囲にNb系金属筒状体7を形成しながら銅系金属管8中に挿入することにより、図6(b)に示す銅系金属管8の内側にNb系金属筒状体7及びNbTi系超電導棒9が配設された超電導組み立て体4を製作し、超電導組み立て体4を伸線加工してかつ熱処理してNbTi系の超電導線を製造する。Nb系金属薄板6をダイス1に通すことにより筒状に成形してNb系金属筒状体7を形成するので、超電導組み立て体4を容易に製作できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線製造用ダイス及びこの超電導線製造用ダイスを用いた超電導線の製造方法に係り、特にNbTi系あるいはNbSn系等の金属系超電導線を製造するための超電導線製造用ダイス及びこの超電導線製造用ダイスを用いた超電導線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の金属系超電導線の1つとして知られるNbTi合金系超電導線は、通常、NbTiロッドを無酸素銅パイプ中に挿入して伸線加工を施し、これを単芯線として所望本数の単芯線を無酸素銅からなる安定化材のパイプに挿入して更に伸線加工を施し、所望の線径に仕上げることで製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の金属系超電導線として、NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導線が知られている。
これらの中で代表的なものとして知られるNbSn系超電導線は、通常、内部錫拡散法、外部錫拡散法、ブロンズ法、チューブ法、インサイチュー法などの方法により製造されている。
このうち、内部錫拡散法は、Nbロッドを無酸素銅パイプ中に挿入して伸線加工を施し、これを単芯線として所望本数の単芯線を得た後、無酸素銅管の内部に錫ロッドが挿入された部材の周りに所望本数の単芯線を配置し無酸素銅パイプ中に複合し、更に伸線加工を必要回数繰り返し、これを複合線として所望本数の複合線を安定化材である無酸素銅パイプに挿入して更に伸線加工を施し、最後に熱処理により銅への錫の拡散(ブロンズ化)、および、Nbと錫の反応を行って多数のNbSn超電導フィラメントをブロンズマトリックス中に生成させる方法である。他のNbSn系超電導線の製造方法も、銅またはブロンズマトリックス中にNbフィラメントを埋設し、最終的にNbと錫との反応を行って、多数のNbSn超電導フィラメントをブロンズマトリックス中に生成させている。
【0004】
従って、これらの各方法で得られるいずれの系の超電導線にあっても、その内部構造は、外周部に無酸素銅からなる安定化材(安定化銅)を備え、その内側の銅やブロンズなどからなるマトリックスの内部に、NbTiや熱処理によりNbSnなどの超電導体となるNbロッドなどが多数埋設された構造になっており、伸線加工により所望の線径に仕上げることを特徴としている。
【0005】
【特許文献1】特開平2−10611号公報(第2頁左下欄第3行〜右下欄第1行及び第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NbTi合金系超電導線は、臨界電流特性を向上させるため、伸線加工途中に熱処理を行う必要がある。この熱処理の際に、NbTiフィラメントの外周部が周囲のCuマトリックスと反応してCuTiに置き換わることがある。CuTiは硬く加工性が悪いため、NbTiフィラメントの外周部の一部が反応しただけでも、伸線加工性が著しく悪化してしまう。そのため、NbTiフィラメントの周りをNbで覆うことでCuとの反応を防止している場合が多い。
【0007】
実際の作業は、NbTiロッドにNbシートを手で巻き付けた後、無酸素銅パイプ中に挿入して単芯線を作ることが多い。この場合、Nbシートを手で円筒状に丸めながらNbTiロッドとともに無酸素銅パイプ中に押し込みNbTiロッドが手で丸めたNbシートで包まれるようにする手作業が必要となり、作業時間が長くかかるという問題点があった。また、Nbシートを丸める際にしわが入ったり、傷が入ったりするため、伸線加工途中に断線を生じるという大きな問題点があった。
【0008】
また、NbSnに代表される化合物系超電導線は、超電導体自体が脆く加工性を持たないため、伸線加工後に熱処理により超電導体を生成させている。例えば、内部錫拡散法の場合は、前述の通り、Nbロッドと錫ロッドが無酸素銅中に埋設されたCu/Nb/Sn複合体を安定化材である無酸素銅パイプ(安定化銅)中に挿入した後、伸線加工し、最後に熱処理によりNbと錫の反応を行ってNbSn超電導線としている。この際、安定化銅への錫拡散による汚染を防ぐため、Cu/Nb/Sn複合体の外周部にNbやTaのバリヤ層を設けることが必要である。
【0009】
バリヤ層としてNbやTaのパイプ材を用いる場合もあるが、高価なため、NbやTaのシート材を用いる場合が多い。実際の作業は、複数のCu/Nb/Sn複合体を束ね、その周りにNbやTaシートを手で巻き付けた後、無酸素銅パイプ中に挿入している。この場合、NbやTaシートを手で丸めながら複数のCu/Nb/Sn複合体とともに無酸素銅管中に押し込む手作業となり、作業時間が長くかかるという問題点があった。また、NbやTaシートを丸める際にしわが入ったり、傷が入ったりするため、伸線加工途中に断線を生じるという大きな問題点があった。
【0010】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、超電導線の製造を容易に行うことのできる超電導線製造用ダイスを得ること及びこの超電導線製造用ダイスを用いた超電導線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る超電導線製造用ダイスにおいては、外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造するための超電導組み立て体を製作するために用いられるものであって、超電導組み立て体は銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導棒状体が配設されたものであり、所定のアプローチ角を有し板状のNb系金属板を通過させることによって銅系金属管の内側に配設されるNb系金属筒状体を形成するダイス孔を形成するためのダイス孔形成部を有するものである。
【0012】
そして、この発明に係る超電導線の製造方法においては、外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、板状のNb系金属板を請求項1又は請求項2に記載の超電導線製造用ダイスに通すことで筒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、その中にNbTi系超電導体を挿入して、銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導体が配設された超電導組み立て体を製作し、超電導組み立て体を伸線及び熱処理を行うことにより超電導線を製造するものである。
【0013】
さらに、この発明に係る超電導線の製造方法においては、外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、NbTi系超電導棒状体の周りをNb系金属板が包むようにNbTi系超電導棒状体とNb系金属板とを同時に請求項1又は請求項2に記載の超電導線製造用ダイスに通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導棒状体が配設された超電導組み立て体を製作し、超電導組み立て体を伸線及び熱処理を行うことにより超電導線を製造するものである。
【0014】
また、この発明に係る超電導線製造用ダイスにおいては、NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造するための複合体組み立て体を製作するために用いられるものであって、複合体組み立て体は銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に複合棒状体が配設されたものであり、所定のアプローチ角を有し板状のTa系又はNb系金属板を通過させることによって銅系金属管の内側に配設される筒状のTa系又はNb系金属筒状体を形成するためのダイス孔を形成するダイス孔形成部を有するものである。
【0015】
そして、この発明に係る超電導線の製造方法においては、NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、Ta系又はNb系金属板を請求項5又は請求項6に記載の超電導線製造用ダイスに通すことで筒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、その中に伸線及び熱処理を行うことによりA15型化合物系超電導素線に変化させる複合棒状体を挿入し、銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に複合棒状体が配設された複合体組み立て体を製作し、複合体組み立て体を伸線及び熱処理を行い複合棒状体をNbSn系超電導素線に変化させ超電導線を製造するものである。
【0016】
さらに、この発明に係る超電導線の製造方法においては、NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、伸線及び熱処理を行うことによりA15型化合物系超電導素線に変化させる複合棒状体をTa系又はNb系金属板が包むように複合棒状体とTa系又はNb系金属板とを同時に請求項5又は請求項6に記載の超電導線製造用ダイスに通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に複合棒状体が配設された複合体組み立て体を製作し、複合体組み立て体を伸線及び熱処理を行い複合棒状体をNbSn系超電導素線に変化させ超電導線を製造するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る超電導線製造用ダイスにおいては、外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造するための超電導組み立て体を製作するために用いられるものであって、超電導組み立て体は銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導棒状体が配設されたものであり、所定のアプローチ角を有し板状のNb系金属板を通過させることによって銅系金属管の内側に配設されるNb系金属筒状体を形成するダイス孔を形成するためのダイス孔形成部を有するものであるので、超電導組み立て体を容易に製作できひいては超電導線を容易に製造することができる。
【0018】
そして、この発明に係る超電導線の製造方法においては、外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、板状のNb系金属板を請求項1又は請求項2に記載の超電導線製造用ダイスに通すことで筒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、その中にNbTi系超電導体を挿入して、銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導体が配設された超電導組み立て体を製作し、超電導組み立て体を伸線及び熱処理を行うことにより超電導線を製造するものであるので、超電導組み立て体を容易に製作できひいては超電導線を容易に製造することができる。
【0019】
さらに、この発明に係る超電導線の製造方法においては、外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、NbTi系超電導棒状体の周りをNb系金属板が包むようにNbTi系超電導棒状体とNb系金属板とを同時に請求項1又は請求項2に記載の超電導線製造用ダイスに通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導棒状体が配設された超電導組み立て体を製作し、超電導組み立て体を伸線及び熱処理を行うことにより超電導線を製造するものであるので、超電導組み立て体を容易に製作できひいては超電導線を容易に製造することができる。また、NbTi系超電導棒状体とNb系金属板とを超電導線製造用ダイスに通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管中に挿入するので、作業時間を短縮できる。
【0020】
また、この発明に係る超電導線製造用ダイスにおいては、NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造するための複合体組み立て体を製作するために用いられるものであって、複合体組み立て体は銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に複合棒状体が配設されたものであり、所定のアプローチ角を有し板状のTa系又はNb系金属板を通過させることによって銅系金属管の内側に配設される筒状のTa系又はNb系金属筒状体を形成するためのダイス孔を形成するダイス孔形成部を有するものであるので、複合体組み立て体を容易に製作できひいては超電導線を容易に製造することができる。
【0021】
そして、この発明に係る超電導線の製造方法においては、NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、Ta系又はNb系金属板を請求項5又は請求項6に記載の超電導線製造用ダイスに通すことで筒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、その中に伸線及び熱処理を行うことによりA15型化合物系超電導素線に変化させる複合棒状体を挿入し、銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に複合棒状体が配設された複合体組み立て体を製作し、複合体組み立て体を伸線及び熱処理を行い複合棒状体をNbSn系超電導素線に変化させ超電導線を製造するものであるので、複合体組み立て体を容易に製作できひいては超電導線を容易に製造することができる。
【0022】
さらに、この発明に係る超電導線の製造方法においては、NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、伸線及び熱処理を行うことによりA15型化合物系超電導素線に変化させる複合棒状体をTa系又はNb系金属板が包むように複合棒状体とTa系又はNb系金属板とを同時に請求項5又は請求項6に記載の超電導線製造用ダイスに通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に複合棒状体が配設された複合体組み立て体を製作し、複合体組み立て体を伸線及び熱処理を行い複合棒状体をNbSn系超電導素線に変化させ超電導線を製造するものであるので、複合体組み立て体を容易に製作できひいては超電導線を容易に製造することができる。また、複合棒状体とTa系又はNb系金属板とを超電導線製造用ダイスに通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管中に挿入するので、作業時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
図1〜5は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1はNbTi系の超電導線を製造するための超電導線製造用のダイスの構成図、図2はNbTi系の超電導線を製造するための超電導組み立て体の製作方法を説明するための説明面である。図3は図2に引き続いて行われる超電導組み立て体の製作方法を示す説明図である。図4は超電導組み立て体の横断面図である。図5は、種々のアプローチ角2αを有するダイスを用いて超電導組み立て体の製作を行った結果を示す説明図である。
【0024】
図1において、超電導線製造用のダイス1は、外径D、厚さTの円板状で、中央部にダイス孔1aを形成するダイス孔形成部1bを有する。また、ダイス孔1aの各部寸法は、マウス角θ1、アプローチ角2α、ベル径φ1、リリース角θ2である。図2は、ダイス1にNb系金属薄板6を通すことにより筒状に成形されたNb系金属筒状体7が銅系金属管8中に配置される様子を示している。その後、図3に示すようにNb系金属筒状体7中にNbTi系超電導棒9を挿入する。そして、最終的に図4に示すように、銅系金属管8中に筒状に成形されたNb系金属筒状体7が配設され、そのNb系金属筒状体7の内側にNbTi系超電導棒9が挿入された超電導組み立て体4が製作される。なお、詳細は後述するが、この後超電導組み立て体4を伸線及び熱処置加工して超電導線が製造される。
【0025】
次に、ダイス1を用いた超電導組み立て体4の製作方法を説明する。
ダイス1及びダイス孔1aの寸法として、外径D=150mm、厚さT=60mm、マウス角θ1=70°、アプローチ角2α=15°、ベル径φ1=21mm、リリース角θ2=70°を有する市販の伸線用超硬ダイスを用意する。また、幅70mm、長さ1100mm、厚み0.15mmのNb系金属薄板6と、外径35mm、内径22mm、長さ1000mmの銅系金属管8と、直径20mm、長さ1000mmのNbTi系超電導棒9を用意する。
【0026】
まず、図2に示すように、ダイス1の中心軸と銅系金属管8の中心軸を合わせ、ダイス1の出口(リリース角θ2)側が銅系金属管8の方向を向くように両者を密着させた状態で図示しない作業台にしっかりと固定する。次に、Nb系金属薄板6の端を丸めるようにしてダイス1に徐々に挿入していく。Nb系金属薄板6のダイス1への挿入にともない、Nb系金属薄板6がダイス孔1aにて円筒状に変形されNb系金属筒状体7が形成されながら銅系金属管8中へ挿入されていく。この作業を銅系金属管8の後端からNb系金属筒状体7が出始めるまで続ける。銅系金属管8の後端からNb系金属筒状体7が出始めたら、銅系金属管8の後端から出たNb系金属筒状体7を引くことで、ダイス1からNb系金属筒状体7を完全に離脱させ、Nb系金属筒状体7を銅系金属管8中に配設される。
【0027】
銅系金属管8の後端からはみ出したNb系金属筒状体7(約100mm)を除去した後、ダイス1を作業台から外し、図3に示すように、NbTi系超電導棒9を銅系金属管の内側に配置された8Nb系金属筒状体7の中へ挿入していくことで、図4に示す横断面形状を有する超電導組み立て体4を得る。最後に、超電導組み立て体4を直径1mmになるまで断面減少率20%(32パス)で伸線加工し、長さ1000mのNbTi系の超電導線(単芯線)を得た。このNbTi系の超電導線の伸線加工性は非常に良好であった。直径1mmのNbTi系の超電導線を任意の位置から切り出し、横断面を観察したところ、NbTi系超電導体棒9の外周部にあるNb系金属筒状体7層は破れもなく、良好な横断面形状をしていた。
【0028】
以上では、超電導線製造用のダイス1としてアプローチ角2α=15°のものを用いたたが、Nb系金属薄板6がダイス1を円滑に通過するため筒状に成形されながら銅系金管8中に挿入でき銅系金属管8中にNb系金属筒状体7を配置できるため、従来の手作業でNb系金属薄板6を丸めながらNbTi系超電導棒9とともに銅系金属管8中に押し込む場合のように、Nb系金属筒状体7にしわが入ったり、傷が入ったりすることを防止できた。
【0029】
また、アプローチ角2αについて、Nb系金属薄板6の加工性への影響を確認するため、アプローチ角2α=2°、4°、6°、10°、20°、26°、29°、31°、35°のダイス1を用いて、上述と同様に超電導線の製造を行った。結果を図5に示す。アプローチ角2αが15°より小さくなるにともない、ダイス1への挿入時にNb系金属薄板6に働く摩擦力が徐々に大きくなるため、Nb系金属薄板6がダイス1を通過しづらくなり、加工時間が長くかかるようになった。しかし、アプローチ角2αが5°以上である6°、10°の場合は、Nb系金属薄板6がダイス1を通ることにより筒状のNb系金属筒状体7に成形されながら銅系金属管8中に挿入され、上述のアプローチ角2αが15°の場合と同様の効果を奏することがわかった。
【0030】
しかしながら、アプローチ角2αが5°未満である2°、4°の場合は、Nb系金属薄板6をダイス1への挿入する時にNb系金属薄板6に働く摩擦力が大きくなりすぎ、Nb系金属薄板6がダイス1を通過できず、筒状に加工することができなくなった。また、逆にアプローチ角2αとして、15°より大きいものを用いて、同様の加工を行ったが、アプローチ角2αが大きくなるに従い、ダイス1への挿入時にNb系金属薄板6に大きな曲げの力が働くようになるため、Nb系金属薄板6がダイス1を通過しづらくなり、加工時間が長くかかるようになったものの、アプローチ角2αが30°以下である29°、26°、20°の場合は、Nb系金属薄板6がダイス1を通ることにより筒状に成形されながら銅系金属管8中に挿入でき、同様に良好なNb系金属筒状体7を製作することができた。しかしながら、アプローチ角2αが30°より大きくなる31°、35°の場合は、Nb系金属薄板6をダイス1に挿入する際、無理な力が加わり、形成されたNb系金属筒状体7にしわが入るため、製品として使用することができなかった。
【0031】
このように、ダイス1として、アプローチ角2αが6°以上、29°以下のものを用いて、良好な超電導組み立て体4を製作することができた。アプローチ角2αとして、6°より小さいものを用いると、Nb系金属薄板6に働く摩擦力が大きくなりすぎるため、Nb系金属薄板6がダイス1を通過できず、Nb系金属薄板6を筒状に加工してNb系金属筒状体7を形成することができない。また、逆に、29°より大きいものを用いると、Nb系金属薄板6をダイス1に挿入する際、無理な力が加わり、Nb系金属筒状体7にしわが入るため、超電導組み立て体4として不適切なものとなりこの超電導組み立て体4からは製品として適した超電導線を製造することができない。
【0032】
以上のように、この実施の形態1によれば、超電導組み立て体4として、Nb系金属薄板6をダイス1に通すことにより筒状に成形しながら銅系金属管8中に挿入してNb系金属筒状体7を配設した後、Nb系金属筒状体7の中にNbTi系超電導棒9を挿入することにより超電導組み立て体4を製作することにより、従来のように手作業でNb系金属薄板6を丸めながらNbTi系超電導棒9とともに銅系金属管8中に押し込む作業に比べ、作業性が著しく改善され、作業時間が短縮できた。さらに、Nb系金属薄板6を手で丸めながら押し込む際、Nb系金属薄板6にしわが入ったり、傷が入ったりすることを防止できるため、超電導組み立て体4を伸線加工する途中に断線を生じることもなく、安定した品質の超電導線が得られた。
【0033】
また、アプローチ角2αが6°以上、29°以下であるダイス1を用い、Nb系金属薄板6をダイス1に通すことにより円筒状のNb系金属筒状体7に成形しながら銅系金属管8中に挿入した後、NbTi系超電導棒9を挿入して超電導組み立て体4を製作するようにしたので、外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導組み立て体4の製作を容易に行うことができるダイス1を得ることができる。
【0034】
さらに、外周部にNbバリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導を製造するに際し、超電導組み立て体4を製作し、この超電導組み立て体4を伸線加工してNbTi系の超電導線を製造する方法において、Nb系金属薄板6をダイス1に通すことにより筒状に成形しながらNb系金属筒状体7を形成し銅系金属管8中に挿入配置した後、NbTi系超電導棒9を挿入することで超電導組み立て体4を製作するようにしたので、超電導組み立て体4の作業性が改善され製作作業時間が大幅に短縮される。また、手作業による製作の影響を受けることなく超電導組み立て体4を容易に製作することができ、ひいては超電導線を容易に製造できることになる。
【0035】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2である超電導組み立て体の製作方法を示す説明図である。図6において、NbTi系超電導棒9を心棒とし、その周りにNb系金属筒状体7が形成されるようにNbTi系超電導棒9とNb系金属薄板6を同時にダイス1に通すことでNbTi系超電導棒9の周囲に円筒状のNb系金属筒状体7が形成されながら銅系金属管8中に挿入されていく。その他の構成については、実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
アプローチ角2αが15°のダイス1(図1参照)を用い、実施の形態1と同様な方法によりNbTi系の超電導線を製造した。ただし、この実施の形態2では、図6に示すように、NbTi系超電導棒9を心棒とし、Nb系金属薄板6がダイス1を通過することにより円筒状のNb系金属筒状体7が形成されNbTi系超電導棒9を包むように、NbTi系超電導棒9とNb系金属薄板6を同時にダイス1に徐々に挿入していく点が異なる。この実施の形態2においても、最終的に直径1mm、長さ1000mのNbTi系の超電導線(単芯線)を得ることができた。このNbTi系の超電導線の伸線加工性は、実施の形態1と同様、非常に良好であった。また、直径1mmのNbTi系の超電導線を任意の位置から切り出し、横断面を観察したところ、実施の形態1と同様、NbTi系超電導体棒9の外周部にあるNb系金属筒状体7層は破れもなく、良好な横断面形状をしていた。また、ダイス1のアプローチ角2αを2°から35°まで変化させて、同様にNb系金属薄板6を製作したが、実施の形態1と同様にアプローチ角2αが6°〜29°の範囲において、良好な超電導組み立て体4が得られた。この後、超電導組み立て体4を伸線加工及び熱処理してNbTi系の超電導線を得る。
【0037】
この実施の形態2では、複合体組み立て体5として、NbTi系超電導棒9を心棒とし、その周りにNb系金属筒状体7が配置されるようにNbTi系超電導棒9とNb系金属薄板6を同時にダイス1に通すことにより銅系金属管8中に挿入し組み立てることにより、従来のように手作業でNb系金属薄板6を円筒状に丸めながらNbTi系超電導棒9とともに銅系金属管8中に押し込む作業に比べ、作業性が著しく改善され、作業時間が短縮される。さらに、Nb系金属薄板6を手で丸めながら押し込む際、しわが入ったり、傷が入ったりしたNb系金属筒状体7が形成されることを防止できるため、伸線加工途中に断線を生じることもなく、安定した品質の超電導線が得られた。
【0038】
また、NbTi系超電導棒9を心棒とし、その周りにNb系金属筒状体7が形成されるようにNbTi系超電導棒9とNb系金属薄板6を同時にダイス1に通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管8中に挿入し超電導組み立て体4を製作するので、銅系金属管8中にNb系金属筒状体7とNbTi系超電導棒9を同時進行で配設できるため、作業時間を短縮できる。また、超電導組み立て体4の製作作業の作業性が改善され、手作業による悪影響を受けることなく容易に超電導線を製造できる超電導線の製造方法を提供することができる。
【0039】
実施の形態3.
図7、図8は実施の形態3を示すものであり、図7は複合体組み立て体の製作過程を説明するための説明図である。図8は、種々のアプローチ角2αを有するダイス1を用いて複合体組み立て体の製作を行った結果を示す説明図である。図7(c)において、複合体組み立て体5は、銅系金属管8の内側にNb系金属筒状体7にて外周を覆われたCu/Nb/Sn複合棒10を収容したものである。この実施の形態3において、実施の形態1で用いたNbTi系超電導棒9の代わりにCu/Nb/Sn複合棒10を用い、実施の形態1と同様な方法によりNbSn系超電導線を製造した。すなわち、実施の形態1と同様、外径D=150mm、厚さT=60mm、マウス角θ1=70°、アプローチ角2α=15°、ベル径φ1=21mm、リリース角θ2=70°のダイス1を用意し、実施の形態1と同様な方法で、外径35mm、内径22mm、長さ1000mmの銅系金属管中に、幅65mm、長さ1100mm、厚み1mmのNb系金属薄板16を、図7(a)に示すようにダイス1にてNb系金属筒状体17に成形しながら挿入した。Nb系金属薄板16の厚みが増加したが、実施の形態1と同様、Nb系金属筒状体17を銅系金属管8中に良好に収めることができた。
【0040】
次に、直径18mm、長さ1000mmのCu/Nb/Sn複合棒19を用意する。このCu/Nb/Sn複合棒19はCuマトリックスの中心にφ8.0mmのSn芯(Sn体積分率20%)を有し、その周りにφ0.509mmのNb芯が313本(Nb体積分率25%)配置された構造となっている。Cu/Nb/Sn複合棒19を図7(b)に示すようにNb系金属筒状体17が配置された銅系金属管8の中に挿入していくことで、NbSn系超電導線を製造するための図7(c)に示すように複合体組み立て体5を得た。最後に、複合体組み立て体5を直径1mmになるまで断面減少率20%(32パス)で伸線加工し、長さ1000mのNbSn系超電導線を得た。このNbSn系超電導線の伸線加工性は非常に良好であった。直径1mmのNbSn系超電導線を任意の位置から切り出し、横断面を観察したところ、Cu/Nb/Sn複合棒19の外周部にあるNb系金属薄板16層は破れもなく、良好な横断面形状をしていた。
【0041】
以上では、NbSn系超電導線を製造するための超電導線製造用のダイス1としてアプローチ角2α=15°のものを用い、Nb系金属薄板16がダイス1を良好な状態で通ることにより筒状に成形されながら銅系金属管8中に挿入配設できたため、従来のように手作業でNb系金属薄板16を丸めながらCu/Nb/Sn複合棒19とともに銅系金属管8中に押し込む作業のように、Nb系金属薄筒状体にしわが入ったり、傷が入ったりすることを防止できた。
【0042】
また、アプローチ角2αについて、Nb系金属薄板16の加工性への影響を確認するため、アプローチ角2α=2°、4°、6°、10°、20°、26°、29°、31°、35°のダイス1を用いて、上述と同様に複合体組み立て体5の製作を行った。その結果を図8に示す。アプローチ角2αが15°より小さくなるに従い、ダイス1への挿入時にNb系金属薄板16に働く摩擦力が徐々に大きくなるため、Nb系金属薄板16がダイス1を通過しづらくなり、加工時間が長くかかるようになったものの、アプローチ角2αが5°以上である6°、10°の場合は、Nb系金属薄板16がダイス1を通ることにより円筒状に成形されてNb系金属筒状体17が形成されながら銅系金属管8中に挿入され、良好な複合体組み立て体5が得られた。しかしながら、アプローチ角2αが5°より小さくなる2°、4°の場合は、ダイス1への挿入時にNb系金属薄板16に働く摩擦力が大きくなりすぎ、Nb系金属薄板16がダイス1を通過できず、筒状に加工することができなくなった。
【0043】
また、逆にアプローチ角2αとして、15°より大きいものを用いて、同様の加工を行ったが、アプローチ角2αが大きくなるに従い、ダイス1への挿入時にNb系金属薄板16に大きな曲げの力が働くようになるため、Nb系金属薄板16がダイス1を通過しづらくなり、加工時間が長くかかるようになったものの、アプローチ角2αが30°以下である29°、26°、20°の場合は、Nb系金属薄板16がダイス1を通ることにより筒状に成形されながら銅系金属管8中に挿入され、上述と同様の効果を奏することがわかった。しかしながら、アプローチ角2αが30°より大きくなる31°、35°の場合は、Nb系金属薄板16をダイス1に挿入する際、無理な力が加わり、Nb系金属薄板16にしわが入ったため、製品として適用することができなかった。
【0044】
このように、この実施の形態3では、NbSn系超電導線を製造するためのダイス1として、アプローチ角2αが6°以上、29°以下のものを用いて、良好な複合体組み立て体5を製作することができた。アプローチ角2αとして、4°以下のものを用いると、Nb系金属薄板16に働く摩擦力が大きくなりすぎるため、Nb系金属薄板16がダイス1を通過できず、筒状に加工することができない。また、逆に、31°以上のものを用いると、Nb系金属薄板16をダイス1に挿入する際、無理な力が加わり、Nb系金属薄板16にしわが入ったため、複合体組み立て体5の品質に問題が生じ、超電導線の製作に適するものとならなかった。
【0045】
以上のように、この実施の形態3では、NbSn系の超電導線を製造するための複合体組み立て体5として、Nb系金属薄板16をダイス1に通すことによりNb系金属筒状体17を筒状に成形しながら銅系金属管8中に挿入した後、Cu/Nb/Sn複合棒19を挿入することで複合体組み立て体5を製作したことにより、従来の手作業でNb系金属薄板16を丸めながらCu/Nb/Sn複合棒19とともに銅系金属管8中に押し込む作業に比べ、作業性が著しく改善され、作業時間が短縮できた。さらに、Nb系金属薄板16を手で丸めながら押し込む際、しわが入ったり、傷が入ったりしたNb系金属筒状体17が形成されることを防止できるため、複合体組み立て体5を伸線加工する途中に断線を生じることもなかった。
【0046】
また、アプローチ角2αが6°以上、29°以下であるダイス1を用いることにより、Nb系金属薄板16をダイス1に通すことによりNb系金属筒状体17を筒状に成形しながら銅系金属管8中に挿入した後、Cu/Nb/Sn複合棒19を挿入することで複合体組み立て体5を製作するようにしたので、複合体組み立て体5の製作を容易に行うことができ超電導線を容易に製造できるダイス1を得ることができる。
【0047】
さらに、外側にNb系金属筒状体17が設けられたCu/Nb/Sn複合棒19が銅系金属の内部に配設された複合体組み立て体5を製作し、複合体組み立て体5を伸線加工及び熱処理してNbSn系超電導線を製造する方法において、Nb系金属薄板16をダイス1に通すことにより筒状に成形しながら銅系金属管8中に挿入した後、Cu/Nb/Sn複合棒19を挿入することで複合体組み立て体5を組み立てるようにしたので、複合体組み立て体5の組立作業性が改善され、手作業による組み立ての悪影響を受けることなく容易に製作することができる。
【0048】
実施の形態4.
図9は、実施の形態9である複合体組み立て体5の製作過程を説明するための説明図である。この実施の形態4においては、実施の形態2で用いたNbTi系超電導棒9の代わりにCu/Nb/Sn複合棒19を用い、実施の形態2と同様な方法によりNbSn系超電導線を製造する。Cu/Nb/Sn複合棒19を心棒とし、その周りにNb系金属薄板16から成形されたNb系金属筒状体17が配置されるようにCu/Nb/Sn複合棒19とNb系金属薄板16を同時にダイス1に徐々に挿入していく。この実施の形態4においても、最終的に直径1mm、長さ1000mのNbSn系超電導線を得ることができた。このNbSn系超電導線の伸線加工性は、実施の形態3と同様、非常に良好であった。直径1mmのNbSn系超電導線を任意の位置から切り出し、横断面を観察したところ、Cu/Nb/Sn複合棒19の外周部にあるNb系金属薄板16層は破れもなく、良好な横断面形状をしていた。
【0049】
この実施の形態4では、NbSn系超電導線を製造するための複合体組み立て体5として、Cu/Nb/Sn複合棒19を心棒とし、その周りにNb系金属薄板16が巻き付くようにCu/Nb/Sn複合棒19とNb系金属薄板16を同時にダイス1に通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管8中に挿入し組み立てることにより、従来のように手作業でNb系金属薄板16を丸めながらCu/Nb/Sn複合棒19とともに銅系金属管8中に押し込む作業に比べ、組立作業性が著しく改善され、組立作業時間が短縮できた。さらに、Nb系金属薄板16を手で丸めながら押し込む際、Nb系金属薄板16にしわが入ったり、傷が入ったりすることを防止できるため、伸線加工途中に断線を生じることもなかった。
【0050】
この実施の形態4によれば、外周部にNbバリヤ層を有するNbSn系超電導素線が銅系金属の内部に配設された複合体組み立て体5を組み立て、複合体組み立て体5を伸線加工してNbSn系超電導線を製造する方法において、Cu/Nb/Sn複合棒19を心棒とし、その周りにNb系金属薄板16が巻き付くようにCu/Nb/Sn複合棒19とNb系金属薄板16を同時にダイス1に通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管8中に挿入し組み立てたので、複合体組み立て体5の組立作業性が改善され、手作業による組み立ての悪影響を受けることなく比較的簡潔な作業で製造できる超電導線の製造方法を提供することができる。
【0051】
なお、以上の各実施の形態3では、超電導線製造用のダイス1として、市販の伸線用超硬ダイス1を用いる場合について説明したが、市販の伸線用ダイヤモンドダイスでもよい。
【0052】
なお、実施の形態3及び4では、NbSn系超電導線の製造方法として、1本のCu/Nb/Sn複合体棒を用いる場合について説明したが、複数本のCu/Nb/Sn複合体棒を束ねたものでもよく、同様の効果を奏する。
【0053】
また、実施の形態3及び4では、NbSn系超電導線の製造方法として、Nb系金属薄板16を用いる場合について説明したが、Ta系金属薄板16等の錫の拡散を防ぐ効果を有した加工性に優れる他の金属薄板16でもよく、同様の効果を奏する。
【0054】
さらに、実施の形態3及び4では、NbSn系超電導線を製造する場合について説明したが、NbSn系超電導線の製造方法に限定されることなく、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導線等のいずれの系の超電導線の製造方法にも適用できる。要するに、板状のNb系金属板をダイスにて筒状にして成形しながら筒状のNb系金属筒状体として銅系金属管などの中に配置する工程を有するものであれば、本願発明の超電導線製造用ダイス及びこの超電導線製造用ダイスを用いた超電導線の製造方法を適用することにより、同様の効果を奏する。
【0055】
以上の各実施の形態における超電導組み立て体4、複合体組み立て体5等を製作する際の各種材料との直径、外径、内径、長さ、複合数等を変化させ、さらに最終径を変化させても、同様の効果を奏するのはいうまでもない。
【0056】
また、以上の各実施の形態では、超電導線の製造方法として、超電導組み立て体あるいは複合体組み立て体5を伸線加工する場合について説明したが、超電導組み立て体あるいは複合体組み立て体5を伸線加工した後、その複数本をさらに銅系金属管8内に収束した複合体組み立て体5とし、超電導組み立て体あるいは複合体組み立て体5を伸線加工してもよく、実施の形態1から4と同様の効果を奏する。
【0057】
なお、この発明において、銅系金属とは、純銅、または、加工性を阻害しない程度の少量のSn等の添加元素を含む銅をいう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施の形態1における超電導線製造用のダイス1の構成図である。
【図2】実施の形態1における超電導組み立て体の製作方法を示す説明図である。
【図3】実施の形態1における超電導組み立て体の製作方法を示す説明図である。
【図4】実施の形態1における超電導組み立て体の構成を示す横断面図である。
【図5】種々のアプローチ角2αを有するダイス1を用いて超電導組み立て体の製造を行った結果を示す説明図である。
【図6】実施の形態2における複合体組み立て体5の製作方法を示す説明図である。
【図7】実施の形態3における複合体組み立て体5の製作過程を説明するための説明図である。
【図8】種々のアプローチ角2αを有するダイス1を用いて複合体組み立て体5の製作を行った結果を示す説明図である。
【図9】実施の形態4における複合体組み立て体5の製作過程を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ダイス1、4 超電導組み立て体、5 複合体組み立て体、6 Nb系金属薄板、7 Nb系金属筒状体、8 銅系金属管、9 NbTi系超電導棒、
16 Nb系金属薄板、17 Nb系金属筒状体、19 Cu/Nb/Sn複合棒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造するための超電導組み立て体を製作するために用いられるものであって、上記超電導組み立て体は銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導棒状体が配設されたものであり、所定のアプローチ角を有し板状のNb系金属板を通過させることによって上記銅系金属管の内側に配設される上記Nb系金属筒状体を形成するダイス孔を形成するためのダイス孔形成部を有する超電導線製造用ダイス。
【請求項2】
上記ダイス孔形成部は、上記アプローチ角が6度以上29度以下であるダイス孔を形成するものであることを特徴とする請求項1に記載の超電導線製造用ダイス。
【請求項3】
外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、板状のNb系金属板を請求項1又は請求項2に記載の超電導線製造用ダイスに通すことで筒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、その中にNbTi系超電導体を挿入して、銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導体が配設された超電導組み立て体を製作し、上記超電導組み立て体を伸線及び熱処理を行うことにより上記超電導線を製造する超電導線の製造方法。
【請求項4】
外周部にNb系金属バリヤ層を有するNbTi系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、NbTi系超電導棒状体の周りをNb系金属板が包むように上記NbTi系超電導棒状体と上記Nb系金属板とを同時に請求項1又は請求項2に記載の超電導線製造用ダイスに通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、銅系金属管の内側に筒状のNb系金属筒状体とこのNb系金属筒状体の内部にNbTi系超電導棒状体が配設された超電導組み立て体を製作し、上記超電導組み立て体を伸線及び熱処理を行うことにより上記超電導線を製造する超電導線の製造方法。
【請求項5】
NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造するための複合体組み立て体を製作するために用いられるものであって、上記複合体組み立て体は銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に上記複合棒状体が配設されたものであり、所定のアプローチ角を有し板状のTa系又はNb系金属板を通過させることによって上記銅系金属管の内側に配設される上記筒状のTa系又はNb系金属筒状体を形成するためのダイス孔を形成するダイス孔形成部を有する超電導線製造用ダイス。
【請求項6】
上記ダイス孔形成部は、上記アプローチ角が6度以上29度以下であるダイス孔を形成するものであることを特徴とする請求項5に記載の超電導線製造用ダイス。
【請求項7】
NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、Ta系又はNb系金属板を請求項5又は請求項6に記載の超電導線製造用ダイスに通すことで筒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、その中に伸線及び熱処理を行うことにより上記A15型化合物系超電導素線に変化させる複合棒状体を挿入し、上記銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に上記複合棒状体が配設された複合体組み立て体を製作し、上記複合体組み立て体を伸線及び熱処理を行い上記複合棒状体を上記NbSn系超電導素線に変化させ上記超電導線を製造する超電導線の製造方法。
【請求項8】
NbSn系、NbGe系、VGa系、NbAl系などのA15型化合物系超電導素線が銅系金属の内部に配設された超電導線を製造する方法であって、伸線及び熱処理を行うことにより上記A15型化合物系超電導素線に変化させる複合棒状体をTa系又はNb系金属板が包むように上記複合棒状体と上記Ta系又はNb系金属板とを同時に請求項5又は請求項6に記載の超電導線製造用ダイスに通すことにより丸棒状に成形しながら銅系金属管中に挿入し、上記銅系金属管の内側に筒状のTa系又はNb系金属筒状体とこのTa系又はNb系金属筒状体の内部に上記複合棒状体が配設された複合体組み立て体を製作し、上記複合体組み立て体を伸線及び熱処理を行い上記複合棒状体を上記NbSn系超電導素線に変化させ上記超電導線を製造する超電導線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−27706(P2008−27706A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198246(P2006−198246)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】