説明

超音波トモグラフィシステム

【課題】分割したトランスデューサプローブを含むシステムを提供する。
【解決手段】分割したトランスデューサプローブ14は、試験試料12中へと超音波励起信号を送信し、超音波励起信号と試験試料12との相互作用から得られるエコー信号を受信することに適合した複数のトランスデューサセグメントを含む。本システムは、また、分割したトランスデューサプローブから受信したエコー信号に対応するデータを受信し、試験試料の少なくとも1つのボリュームスライスに対応する画像を再構成するためにトモグラフィ再構成法を利用することに適合した処理システムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する主題は、全体として非破壊試験システムに関係し、特に、非破壊試験用の超音波トモグラフィシステムに関係する。
【背景技術】
【0002】
多くの工業用検査用途では、パイプ、パイプアレイ、等などの工業用部品の品質を判断するために画像化技術に依存している。例えば、クラック、空洞または他の不完全性の存在などの対象物内の1つまたは複数の欠陥の存在および/または位置を判断するために、かかる検査技術を利用することができる。欠陥の存在について対象物を検査するために利用することができる画像診断技術は、超音波トモグラフィである。超音波トモグラフィは、関心のある対象物の音響特性を探査し、何らかの検出可能な欠陥を含む対象物の対応する画像を生成するために超音波を利用する画像診断技術である。音波パルスの発生および戻ってくるエコーの検出を、トランスデューサプローブ内に設置したトランスデューサを介して典型的には実現する。トランスデューサプローブは、送信のために電気的エネルギーを機械的エネルギーへと変換することが可能であり、受信目的のために機械的エネルギーを電気的エネルギーへと変換して戻すことがやはり可能な電気機械素子を典型的には含む。
【0003】
生憎、ある用途では、検査する対象物のサイズと比較して欠陥のサイズが相対的に小さく、これが検査した対象物の再構成した画像において欠陥の存在を検出することを困難にしている。さらにその上に、多くの事例では、複数の小さな欠陥がぎっしりと密に配置されることがあり、欠陥を統合した領域が超音波検査によって検出可能である場合があるが、個々の欠陥のサイズがシステムの分解能よりも小さいことがある。対象物内に存在する欠陥を識別する能力が、対象物の得られた画像の品質および分解能に大いに依存するので、上記の欠点を克服する改善したシステムに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
当初に権利を主張した発明と範囲において一致するある種の実施形態を下記に要約する。これらの実施形態は、権利を主張した発明の範囲を限定することを目的とはせずに、むしろこれらの実施形態が本発明の可能性のある形式の簡潔な要約を提供することだけを目的としている。実際に、本発明は、以下に説明する実施形態と類似するまたは異なる場合がある様々な形式を包含することができる。
【0005】
第1の実施形態では、システムは、試験試料中へと超音波励起信号を送信し、超音波励起信号と試験試料との相互作用から得られるエコー信号を受信することに適合した複数のトランスデューサセグメントを有する分割したトランスデューサプローブを含む。本システムは、また、分割したトランスデューサプローブから受信したエコー信号に対応するデータを受信し、試験試料の少なくとも1つのボリュームスライスに対応する画像を再構成するためにトモグラフィ再構成法を利用することに適合した処理システムを含む。
【0006】
第2の実施形態では、方法は、試験試料へ回転可能な非軸対称音場を送るステップと、回転可能な非軸対称音場と試験試料との相互作用から得られるエコー信号を受信するステップとを含む。本方法は、また、非軸対称音場を徐々に回転させるステップと、試験試料に回転した音場を送るステップと、徐々に回転した非軸対称音場と試験試料との相互作用から得られるエコー信号をさらに受信するステップとを含む。本方法は、また、試験試料の少なくとも1つのボリュームスライスに対応する画像を再構成するために、受信したエコー信号およびトモグラフィ再構成法を利用するステップをさらに含む。
【0007】
第3の実施形態では、方法は、ほぼゼロ度の入口角で試験試料へ回転可能な非軸対称音場を送るステップを含む。
【0008】
第4の実施形態では、方法は、可変の入口角で試験試料へ回転可能な非軸対称音場を送るステップを含む。音場は、複数の様々な入口角でくまなく試験試料へ送られる場合がある。ある種の実施形態では、入口角は、フェーズドアレイ技術によって制御される。
【0009】
第5の実施形態では、方法は、試験試料に対して2回回転対称、3回回転対称、4回回転対称、またはn回回転対称を示す回転可能な非軸対称音場を送るステップを含む。一実施形態では、ほぼ1:2またはほぼ1:2よりも大きなアスペクト比を有する非常に非対称な2回対称が送られる場合がある。例えば、ほぼ1:5以上のアスペクト比が利用される場合がある。
【0010】
第6の実施形態では、装置は、分割したトランスデューサプローブを含む。トランスデューサプローブは、アレイが4回回転対称、5回回転対称、6回回転対称、またはn回回転対称を示すように配列したトランスデューサセグメントのアレイを含み、8以上のnを有するn回対称が利用される場合がある。いくつかの実施形態では、nは、ほぼ16以上であり、例えば、ほぼ32以上である。ある種の実施形態では、nが2または4の倍数である場合がある。トランスデューサプローブは、トランスデューサセグメントの複数の対向する対を含む。これらの対は、1組、2組、3組、4組またはそれよりも多くの隣接するトランスデューサ素子を含む場合がある。ある種の実施形態では、トランスデューサセグメントは、実質的に同じ形状およびサイズである場合がある。トランスデューサセグメントの対向する対は、回転可能な非軸対称音場を発生させるために作動するように適合している。
【0011】
第7の実施形態では、装置は、円形の分割したトランスデューサプローブを含む。トランスデューサプローブは、円形の分割したトランスデューサプローブの回転中心点の周りに円形に配置されたトランスデューサセグメントのアレイを含み、アレイがトランスデューサセグメントの2組、4組、6組または任意の他の適切な数の複数の対向する対を有する。トランスデューサセグメントの対向する対は、回転可能な非軸対称音場を発生させるために作動するように適合している。いくつかの実施形態では、トランスデューサセグメントは、円形の分割したトランスデューサプローブの内径の周りに円形に配置される。
【0012】
第8の実施形態では、分割したトランスデューサプローブは、回転可能な非軸対称音場を発生させるために利用される場合がある。トランスデューサプローブは、アレイが2回回転対称、3回回転対称、4回回転対称、またはn回回転対称を示すように配列したトランスデューサセグメントのアレイを含む。例えば、一実施形態では、2回対称を示す場合がある。トランスデューサプローブは、トランスデューサセグメントの2組、4組、6組または任意の他の適切な数の複数の対向する対を含む。トランスデューサセグメントの対向する対は、回転可能な非軸対称音場を発生させるために作動するように適合している。一実施形態では、トランスデューサプローブは、円形に分割され、トランスデューサセグメントが、円形の分割したトランスデューサプローブの内径の周りに円形に配置される。
【0013】
本発明のこれらのおよびその他の特徴、態様および長所は、添付した図面を参照して下記の詳細な説明を読むと、より良く理解されるようになるであろう。図面では、類似の参照符号は、図面全体を通して類似の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】分割したプローブを利用する超音波試験システムの一実施形態の概略図である。
【図2】図1の分割したプローブとともに使用することができる制御および処理システムの一実施形態を図示するブロック図である。
【図3】図1の超音波試験システムにおいて使用することができる分割したトランスデューサプローブの一実施形態の図である。
【図4】図3の分割したトランスデューサプローブを用いて発生させることができる回転可能な非軸対称音場の一実施形態の図である。
【図5】図3の分割したトランスデューサプローブを使用することによって試験試料の再構成画像を生成するために使用することができる方法の一実施形態の流れ図である。
【図6】第1のプローブ位置における試験試料中の欠陥の周りの音場回転の一実施形態を図示する概略図である。
【図7】図6の音場を用いて生成することができる行列の一実施形態の図である。
【図8】第2のプローブ位置における試験試料中の欠陥の周りの音場回転の一実施形態を図示する概略図である。
【図9】図8の音場を用いて生成することができる行列の一実施形態の図である。
【図10】第3のプローブ位置における試験試料中の欠陥の周りの音場回転の一実施形態を図示する概略図である。
【図11】図10の音場を用いて生成することができる行列の一実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の1つまたは複数の具体的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を与えることを目指して、実際の実装形態のすべての特徴を明細書中では説明しない場合がある。任意のかかる実際の実装形態の開発において、いずれかのエンジニアリングプロジェクトまたは設計プロジェクトにおけるように、実装形態ごとに変わることがあるシステムに関係する制約およびビジネスに関係する制約に伴うコンプライアンスなどの開発者に特有なゴールを達成するために、数多くの実装形態に特有な判断を行わなければならないことを、認識すべきである。その上、かかる開発の取り組みは、複雑であり長時間を必要とするはずであるが、それにもかかわらず、この開示の恩恵を受ける当業者にとって設計、製作、および製造の日常的な業務であるはずであることを、認識すべきである。
【0016】
本発明の様々な実施形態の要素を導入するときに、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」、および「前記(said)」が、要素の1つまたは複数があることを意味するように意図している。用語「備える(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」は、包括的であり、列挙した要素の他に追加の要素があり得ることを意味するように意図している。
【0017】
開示した実施形態は、試験試料の内部に存在する欠陥の存在および/または数量を特定するために、超音波エネルギーを用いて試験試料を非破壊で探査することが可能な超音波トモグラフィ検査システムに向けられている。この目的で、開示した実施形態は、試験試料中へと向けることができる回転可能な非軸対称音場を発生させることができる分割したトランスデューサプローブを含む。例えば、一実施形態では、円形の分割したトランスデューサプローブは、トランスデューサセグメントの対向する対を含むことができ、各トランスデューサセグメントおよびトランスデューサセグメントが対になるセグメントが、同時に信号を送信し、受信することができる。得られる音場は、実質的に楕円形である場合がある。トランスデューサの隣接した対向する対、4個、または他の適切な組み合わせを順に作動させることによって、実質的に楕円形の音場を回転させる。回転角は、トランスデューサの分割に依存する。各回転角に対して、プローブは、音場と試験試料との相互作用から得られるエコー信号を受信し、処理システムへエコー信号を表すデータを伝達する。処理システムは、集めたエコー信号に対してトモグラフィ再構成法を使用することができ、試験試料のボリュームスライスに対応する一連の画像を再構成することができ、さらにこれらの画像を統合して、試験試料のボリューム表示を再構成することができる。すなわち、処理システムは、様々な既知のトモグラフィ再構成法のうちのいずれかを利用して、ボリューム表示を再構成することができる。例えば、処理システムは、エコー信号を利用して、円弧に沿って逆にエコー信号の捕捉プロセスをエミュレートするアルゴリズムを実行することができる。開示した実施形態を通して実現した再構成したボリューム表示は、回転可能な非軸対称音場により試験試料の再構成したスライスの分解能を高めることができ、これによって欠陥の同定がさらに良好に可能になるので、既存の超音波トモグラフィ検査システムを用いて求めたものよりも利点を提供することができる。
【0018】
ここで図面を参照して、図1は、試験試料12を非破壊で探査して、試験試料12の内部の特徴に関する構造的な情報を得ることができる試験システム10の一実施形態を図示する概略図である。例えば、1つまたは複数の欠陥の存在および/または位置を同定するために、試験システム10を使用することができる。試験システム10は、試験試料12の表面16上に設置される分割したプローブ14およびデータ接続部20を介して分割したプローブ14に連結された制御および処理システム18を含む。下記により詳細に論じるように、ある種の実施形態では、制御および処理システム18は、制御および処理システム18が電力および制御信号を分割したプローブ14に供給することならびに分割したプローブ14からのエコー信号を受信することの両方を可能にする様々な構成要素を含むことができる。このために、制御および処理システムは、キーボード、データ捕捉および処理制御部、画像ディスプレイパネル、ユーザインターフェース、等などの様々な入力装置および出力装置を含むことができる。
【0019】
さらに、データ接続部20が制御および処理システム18と分割したプローブ14との間でディジタルデータまたはアナログデータを送信できることに、留意すべきである。このようにして、データ接続部20は、分割したプローブ14と制御および処理システム18との間のデータの双方向交換を容易にすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、制御および処理システム18は、分割したプローブ14へ制御信号を送信し、超音波検査法の間に試験試料から戻ってくるエコー信号を表すディジタルデータまたはアナログデータの行列を受信することができる。
【0020】
ある種の実施形態では、分割したプローブ14は、超音波励起信号を生成し、超音波励起信号と試験試料12との相互作用から得られるエコー信号を受信するトランスデューサセグメントのアレイを含む。分割したプローブ14の各個別のトランスデューサセグメントは、一般に送信のために電気的エネルギーを機械的エネルギーへと変換することが可能であり、受信目的で機械的エネルギーを電気的エネルギーへと変換することがさらに可能である。当業者には理解されるように、ある種の実施形態では、トランスデューサセグメントは、超音波信号の効率的な送信、検出、および処理を可能にする1つまたは複数の構成要素を有することができる。さらに、各トランスデューサセグメントは、ピエゾ電気セラミック、整合層、音響吸収部、等などの従来からの構成要素を含むことができる。加えて、トランスデューサセグメントを、広帯域幅トランスデューサ、共鳴トランスデューサ、等などの、超音波トモグラフィを用いて使用するために適した任意のタイプのものとすることができる。実際に、当業者には既知の様々なトランスデューサセグメントを、ここに開示した実施形態において使用することができ、与えられた用途のために分割したプローブ14のトランスデューサセグメントの構成を、実装形態に特有であるとすることができる。
【0021】
動作中には、試験試料12を探査して、試験試料12の構造中の1つまたは複数の欠陥の存在を同定するおよび/または定量化するために、分割したプローブ14を使用することができる。例えば、試験試料12中のクラック、空洞、または他の不完全性の存在を同定するために、分割したプローブ14を利用することができる。そのために、分割したプローブ14を試験試料12の表面16上の適切な位置に設置することができ、分割したプローブ14のトランスデューサセグメントを、所望のパターンで始動させて、試験試料12中へと伝送される回転可能な非軸対称音場を生成することができる。一旦始動させると、分割したプローブ14内のトランスデューサセグメントの対は、試験試料12の構造的な情報に対応するエコー信号を受信することができる。引き続いて、トランスデューサ素子の隣り合った対を作動させる。これらの隣接するトランスデューサ素子を始動させることは、試験試料に送られる音場の回転につながる。トランスデューサ素子の対を順に連続的に動かすことによって、音場の開始配置に導くほぼ180°だけ音場を回転させることができる。一旦、2回回転対称を示す音場の180°回転によって実現することができる所望の送信および受信サイクルが終わると、分割したプローブ14を、様々な位置へと試験試料12の表面のあちこちに移動させて、試験試料12のボリュームに対応するデータを取得することができる。例えば、分割したプローブ14を、矢印22によって示したように、試験試料12の幅に沿って、または試験試料12の長さに沿って移動させて、試験試料12の表面16上の様々な場所から同様なデータを取得することができる。
【0022】
図2は、分割したプローブ14を制御するためおよび/または電力を与えるために使用することができる図1の制御および処理システム18の一実施形態を図示するブロック図である。図示した実施形態では、制御および処理システム18は、制御および処理システム18の構成要素間でのデータ通信を可能にするインターフェース回路24を含む。図示したシステム18内の構成要素は、プロセッサ26、補助プロセッサ28、メモリ30、補助メモリ32、コントローラ34、補助装置36、ディスプレイシステム38、およびディスプレイ40を含むが、いずれかの実施形態における構成要素が、実装形態に特有であり、利用する分割したプローブ14のタイプなどの要因に依存することがある。
【0023】
動作中に、制御および処理システム18が情報を受信しているときに、インターフェース回路24は、データ接続部20を介して分割したプローブ14からデータを受信する。インターフェース回路24は、励起信号が試験試料12と相互作用した後で分割したプローブ14によって受信されたエコー信号に対応するデータを受信することができる。このデータは、次に、プロセッサ26および/または補助プロセッサ28へ送信され、そこではトモグラフィ再構成法を利用して、試験試料12のボリュームスライスに対応する画像を再構成することができる。これらのボリュームスライスを、次に、試験試料12のボリューム表示を再構成するために統合することができる。ある種の実施形態では、プロセッサ26は、上記の機能を実行することに適合した信号処理回路を含むことができ、補助プロセッサ28は、データをさらに処理するために、例えば、再構成したスライスまたは再構成したボリューム表示をフィルタ処理するためにプログラムされた回路を含むことができる。そのためには、プロセッサ26および/または補助プロセッサ28は、様々な適切なマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、または他の所望の回路を含むことができる。さらに、ある種の実施形態では、補助プロセッサ28を、プロセッサ26の回路と統合することができる。さらに、プロセッサ26は、試験システムのオペレーティング機能を制御するアルゴリズムをやはり実行することができる。
【0024】
試験試料12の生成したボリュームスライスおよび/または完全なボリューム表示を、次にインターフェース回路24を介してディスプレイシステム38へ送信することができる。ディスプレイシステム38は、ディスプレイ40上に試験試料12のボリューム表示を表示することに適合した回路を一般に含む。例えば、ディスプレイシステム38は、受信したデータを記憶するためのメモリ、グラフィックカード、オペレータと通信するためのユーザインターフェース、等を含むことができる。
【0025】
加えて、インターフェース回路24は、分割したプローブ14、プロセッサ26および/またはディスプレイシステム38から受信したデータをメモリ30または補助メモリ32に記憶させることができる。ある種の実施形態では、プロセッサ26および/または補助プロセッサ28によって実行されるプログラムに関係するデータを記憶するために、メモリ30を利用することができ、受信した画像データおよび/またはプロセッサ26による実行の前にメモリ30中へとロードすることができるデータを記憶するために、補助メモリ32を利用することができる。メモリ30および/または補助メモリ32は、コンピュータ可読媒体、読出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶メモリ、光記憶メモリ、またはこれらの組み合わせ、などの揮発性メモリまたは不揮発性メモリを含むことができる。
【0026】
さらにその上に、試験システム10の動作中に特定の出力を与えるように設計されたコードとともに、様々な制御パラメータをメモリ30中に記憶することができる。例えば、メモリ30は、所与のシステムに接続された補助装置36に応じてコントローラ34が選択的にアクセスすることができる実行可能なアルゴリズムを記憶することができる。補助装置36は、キーボード、プリンタ、記録装置、ネットワークインターフェース装置、これらの組み合わせ、または試験システム10において望まれる場合がある任意の他の外部装置を含むことができる。さらに、コントローラ34は、システム内に含まれる特定の補助装置36に対応するアルゴリズムをアクセスするためにメモリ30をアクセスすることができる。
【0027】
図3は、回転可能な非軸対称音場を発生させるために、図1の試験システム10において使用することができる円形の分割したトランスデューサプローブ42の一実施形態を図示する。円形の分割したトランスデューサプローブ42は、外径44および内径46を有し、円形のアレイに配列された複数のトランスデューサセグメント48を含む。ある種の実施形態では、1つまたは複数の製造パラメータに応じて、円形プローブ42の内径46をほぼゼロとすることができる。トランスデューサセグメント48の円形アレイは、対向するトランスデューサセグメントの複数の対を含み、下記にさらに詳細に説明するように、各対の中のトランスデューサセグメントを、互いに同時に信号を受信し、送信するように適合させることができる。図示した実施形態では、第1のトランスデューサセグメント50および第2のトランスデューサセグメント52が対向するトランスデューサセグメントの対を形成する。すなわち、第1のトランスデューサセグメント50および第2のトランスデューサセグメント52は、内径46について分割したトランスデューサプローブ42の対向する側に配置される。トランスデューサセグメントの対50および52だけを、図示した実施形態において強調しているが、円形アレイ内に対向して配置したトランスデューサセグメント48の各セットが、対向するトランスデューサセグメントの対を形成する。図示した実施形態において、各対が2個のセグメントを含むが、いくつかの実施形態では、各対が複数のセグメントを含む(例えば、対が、別の2個のセグメントに対向する2個のセグメントを含む)ことができることに、留意すべきである。
【0028】
図3の分割したトランスデューサプローブ42は円形の形状であるが、分割したトランスデューサプローブを、様々な適切な形状およびサイズのうちの任意のものとすることができることに、留意すべきである。加えて、トランスデューサセグメントを、分割したトランスデューサプローブの全体の形状を収容するような寸法に形成することができる。例えば、一実施形態では、分割したプローブを長方形とすることができ、したがって、トランスデューサセグメントを同様に長方形の形状にすることができる。実際に、分割したトランスデューサプローブの形体を実装形態に特有なものとすることができ、選択する形体を、試験試料のサイズおよび形状によって部分的にまたは全体として決定することができる。
【0029】
動作中には、図4に図示したように、図3の分割したトランスデューサプローブ42を、回転可能な非軸対称音場54を生成するために使用することができる。回転可能な非軸対称音場54は、1つまたは複数の欠陥の存在、無いこと、位置、および/または数量について試料を非破壊で試験するために試験試料中へと送信することができる非軸対称等圧線56を含む。すなわち、非軸対称音場は、実質的に楕円形である。一実施形態では、非軸対称音場54を発生させるために、分割したトランスデューサプローブ42を、試験試料上の所望の位置に設置し、所望のトランスデューサセグメントを作動させて、試験試料中へと送信する超音波励起信号を生成する。一実施形態では、対向するトランスデューサセグメントの対50および52を始動させ、戻ってくるエコー信号をトランスデューサセグメント48のうちの所望の2個によって受信する。対向するトランスデューサセグメントのすべての対が戻ってくるエコー信号を受信するまで、このプロセスを順次繰り返すことができる。別の一実施形態では、しかしながら、円形アレイ内のすべてのトランスデューサセグメント48を、互いに同時に始動させることができ、対向するトランスデューサセグメントの各対が、戻ってくるエコー信号を他とは無関係に受信する。データが分割したプローブ42の位置において捕捉される方式にかかわらず、非軸対称音場の複数の回転角についてデータを受信する。一旦データを受信すると、分割したプローブ42を、試験試料表面上の次の位置へと動かし、処理を繰り返す。このようにして、試験試料の内部構造ボリューム全体に関するデータを取得することができ、制御および処理システム18によって処理して、欠陥の存在および数量を同定することができる。
【0030】
図5は、試験試料の構造についての欠陥情報を取得するために、分割したプローブを用いて試験試料を探査するために利用することができる方法58を図示する流れ図である。方法58を、試験試料の表面上の第1の位置において試験試料上に分割したプローブを設置するステップ(ブロック60)によって開始することができる。2個以上のトランスデューサセグメントを、次に始動させることができ(ブロック62)、したがって試験試料中へと回転可能な非軸対称音場を送信することができる。上記のように、トランスデューサセグメントを、対で順に始動させることができる、またはアレイ内のすべてのトランスデューサセグメントを、同時に始動させることができる。非軸対称音場と試験試料との相互作用から得られるエコー信号を、トランスデューサセグメントの対によって次に受信する(ブロック64)。次に、さらなる始動させていないトランスデューサセグメントが存在するかどうかを判断するステップ(ブロック66)によって、方法58を続けることができる。始動させていないトランスデューサセグメントが存在する場合には、対向するトランスデューサセグメントのさらなる対を始動させることができ(ブロック62)、処理を繰り返すことができる。
【0031】
しかしながら、すべてのトランスデューサセグメントを始動させた場合には、分割したトランスデューサを、所望の追加の位置へと試験試料の表面に沿って移動させることができる(ブロック68)。ブロック62〜66に関連して上に説明したように、捕捉処理を、各追加の位置のところで次に繰り返すことができる(ブロック70)。試験試料のボリュームに対応するデータのセットを捕捉した後で、データを制御および処理回路へ送信することができ、試験試料の画像を再構成するために逆投影アルゴリズムを利用することができる(ブロック72)。再構成した画像を、試験試料のボリュームスライスまたは試験試料の全体のボリューム表示とすることができる。
【0032】
図示した方法58は、また、試験試料中の欠陥の存在、無いこと、位置、および/または数量を決定するステップ(ブロック74)を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、試験システムが、制御および処理回路を介して欠陥の存在、無いこと、位置、および/または数量を決定することができるが、他の実施形態では、このステップをオペレータによって実行することができることに、留意すべきである。すなわち、ある種の実施形態では、試験システムを、試験試料についての構造的な情報に対応するデータを捕捉し、処理することに適合させることができ、オペレータが、データを解析して、構造に関する欠陥情報を取得することができる。
【0033】
図6〜図11は、試験試料の表示を再構成するために使用することができるトモグラフィ再構成法の一実施形態を模式的に図示する。具体的には、図6は、試験試料中に存在することがある欠陥78を探査するために使用される回転した音場76を図示する。分割したプローブを試験試料の表面上の第1の位置に設置している間に、回転した音場76を発生させる。示したように、回転した音場76は、第1の音場回転79、第2の音場回転80、第3の音場回転82、および第4の音場回転84を含む。各音場回転のところで、音場と試験試料との相互作用から得られるエコー信号を取得する。図7に示したように、第1のスキャン位置から受信した情報を取り込む行列86を生成する。行列86を、いくつかの実施形態では、メモリ30または補助メモリ32中に記憶することができる。例えば、音場回転79、80および82が、欠陥78と相互に影響しないので、これらの音場回転は、行列86に対する実際的な値に寄与しない。しかしながら、音場回転84が欠陥78と相互作用するという理由で、この相互作用が記録され、受信した信号の強度を、行列86のブロック88、90および92中に記憶する。
【0034】
分割したプローブを、次に、矢印94によって図示したように、この部分に沿った第2の位置へと移動する。すなわち、分割したプローブを、図1に矢印22によって示したように、試験試料に沿って動かす。引き続いて、図8に示したように、もう1つの回転した音場96を発生させる。前のように、回転した音場96は、第1の音場回転98、第2の音場回転100、第3の音場回転102、および第4の音場回転104を含む。ここで再び、各音場回転のところで、音場と試験試料との相互作用から得られるエコー信号を取得する。図9に示したような、もう1つの行列106を生成する。行列106は、音場76を用いて探査することから取得したプローブ行列および音場96を用いて探査することから取得したシフトさせたプローブ行列の総計を表す。例えば、分割したプローブが第2の位置に設置されるときには、音場回転100、102および104は、欠陥78と相互に影響せず、したがって、これらの音場回転は、行列106に対する実際的な値に寄与しない。しかしながら、音場回転98が欠陥78と相互作用し、この相互作用が、第2のプローブ位置に対応する第2のプローブ行列中に記録される。この第2のプローブ行列をシフトさせ、第1のプローブ行列に加算して行列106を生成する。行列106のブロック108、90および110は、音場96を用いて探査した後の記録した信号の強度を反映する。
【0035】
分割したプローブを、矢印112によって図示したように、この部分に沿ったもう1つの位置へと再び移動する。すなわち、分割したプローブを、図1に矢印22によって示したように、試験試料の幅に沿ってさらに動かす。図10に示したように、追加の回転した音場114を次に発生させる。回転した音場114は、分割したプローブが第3の位置に設置されるときには欠陥78と相互に影響しない音場回転116、118および120を含む。加えて、音場114は、欠陥78と相互作用する音場回転122を含み、この相互作用を第3のプローブ位置に対応する第3のプローブ行列中に記録する。図11に示したように、この第3のプローブ行列をシフトさせ、行列106に加算して行列124を生成する。行列124のブロック126、90および128は、音場114を用いて探査した後の記録した信号の強度を反映する。このようにして、行列124は、第1のプローブ行列、シフトさせた第2のプローブ行列、およびシフトさせた第3のプローブ行列からの情報を含む。この処理をすべての所望のスキャン位置について繰り返し、このようにして、試験試料の再構成したスライスを得る。複数のプローブ行列中に記憶された情報を反映する画像行列を生成した後で、1つまたは複数のフィルタを、画像品質をさらに改善させるために使用することができることに、留意すべきである。例えば、一実施形態では、シェップ−ローガン(Shepp−Logan)フィルタなどのエッジシャープニングフィルタを利用することができる。
【0036】
制御および処理システムが行列124を利用して、試験試料の1つまたは複数のボリュームスライスを生成することができることに、留意すべきである。このようにして、本明細書において説明した分割したプローブを、トモグラフィ再構成法と組み合わせて利用することができて、試験試料についてのボリューム情報を非破壊で取得することができる。再び、試験試料を探査するために回転可能な非軸対称音場を利用することによって、試験システムの分解能を、従来型のシステムと比較して向上させることができ、したがって、試験試料中に存在する欠陥のより優れた分解能を潜在的に可能にする。
【0037】
この明細書は、本発明を開示するために最良の形態を含む例を使用し、ならびに任意の装置またはシステムを作成することや使用すること、および任意の組み込んだ方法を実行すること含めて、本発明を当業者が実行することをやはり可能にするために例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者なら思い付く別の例を含むことができる。かかる別の例が特許請求の範囲の文面から逸脱しない構造的要素を有する場合には、またはかかる別の例が特許請求の範囲の文面と見せ掛けだけの差異を有する等価な構造的要素を含む場合には、かかる別の例は、特許請求の範囲の範囲内であるように意図している。
【符号の説明】
【0038】
10 試験システム
12 試験試料
14 分割したプローブ
16 表面
18 制御および処理システム
20 データ接続部
22 移動方向を示す矢印
24 インターフェース回路
26 プロセッサ
28 補助プロセッサ
30 メモリ
32 補助メモリ
34 コントローラ
36 補助装置
38 ディスプレイシステム
40 ディスプレイ
42 円形の分割したトランスデューサプローブ
44 外径
46 内径
48 トランスデューサセグメント
50 第1のトランスデューサセグメント
52 第2のトランスデューサセグメント
54 非軸対称音場
56 非軸対称等圧線
58 方法
60 方法ステップ
62 方法ステップ
64 方法ステップ
66 方法ステップ
68 方法ステップ
70 方法ステップ
72 方法ステップ
74 方法ステップ
76 回転した音場
78 欠陥
79 音場回転
80 音場回転
82 音場回転
84 音場回転
86 行列
88 行列ブロック
90 行列ブロック
92 行列ブロック
94 移動を示す矢印
96 回転した音場
98 音場回転
100 音場回転
102 音場回転
104 音場回転
106 行列
108 行列ブロック
110 行列ブロック
112 移動を示す矢印
114 回転した音場
116 音場回転
118 音場回転
120 音場回転
122 音場回転
124 行列
126 行列ブロック
128 行列ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験試料中へと超音波励起信号を送信し、前記超音波励起信号と前記試験試料との相互作用から得られるエコー信号を受信するように構成された複数のトランスデューサセグメントを備えた分割したトランスデューサプローブと、
前記分割したトランスデューサプローブから前記受信したエコー信号に対応するデータを受信し、前記試験試料の少なくとも1つのボリュームスライスに対応する画像を再構成するためにトモグラフィ再構成法を利用するように構成された処理システムと
を備えたシステム。
【請求項2】
前記処理システムが、前記試験試料の複数のボリュームスライスを再構成するために前記トモグラフィ再構成法を利用し、前記試験試料のボリューム表示を再構成するために前記複数のボリュームスライスを統合するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記分割したトランスデューサプローブが、円形の配列に空間的に配列されたトランスデューサセグメントの対向する対のアレイを備え、トランスデューサセグメントの各対向する対が、第1のトランスデューサセグメントおよび前記第1のトランスデューサセグメントと対向する第2のトランスデューサセグメントを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
トランスデューサセグメントの前記対向する対の各々の前記第1のトランスデューサセグメントおよび前記第2のトランスデューサセグメントが、互いに同時に前記超音波励起信号を送信し、互いに同時に前記エコー信号を受信するように構成される、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
トランスデューサセグメントの前記対向する対が、前記超音波励起信号を同時に送信するように構成され、前記エコー信号が、対向するトランスデューサセグメントの各対によって順次受信されるように構成される、請求項3記載のシステム。
【請求項6】
前記分割したトランスデューサプローブが、回転可能な非軸対称音場として前記超音波励起信号を送信するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記処理システムが、前記試験試料の前記再構成した画像の視覚表示を表示するように構成されたディスプレイシステムを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記処理システムが、前記試験試料中に存在する欠陥の存在、前記試験試料中に存在する欠陥が無いこと、前記試験試料中に存在する欠陥の位置、または前記試験試料中に存在する欠陥の数量のうちの少なくとも1つを決定するために、前記再構成した画像を評価するように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
円形の分割したトランスデューサプローブを備え、
前記円形の分割したトランスデューサプローブが、前記円形の分割したトランスデューサプローブの内径の周りに円形に配置され、トランスデューサセグメントの複数の対向する対を備えたトランスデューサセグメントのアレイを備え、
トランスデューサセグメントの前記複数の対向する対が、回転可能な非軸対称音場を発生させるために作動するように構成される、システム。
【請求項10】
トランスデューサセグメントの前記対向する対の各々が、前記回転可能な非軸対称音場と試験試料との相互作用から得られるエコー信号を同時に受信するように構成された第1のトランスデューサセグメントおよび第2のトランスデューサセグメントを備える、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記円形の分割したトランスデューサプローブから前記受信したエコー信号に対応するデータを受信し、前記試験試料の少なくとも1つのボリュームスライスに対応する画像を再構成するためにトモグラフィ再構成法を利用するように構成されたプロセッサを備えた、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記試験試料の複数のボリュームスライスを再構成するためにトモグラフィ再構成法を利用し、前記試験試料のボリューム表示を再構成するために前記複数のボリュームスライスを統合するように構成される、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記試験試料中に存在する欠陥の存在、前記試験試料中に存在する欠陥が無いこと、前記試験試料中に存在する欠陥の位置、または前記試験試料中に存在する欠陥の数量のうちの少なくとも1つを決定するために、前記再構成した画像を評価するように構成される、請求項10記載のシステム。
【請求項14】
試験試料へ回転可能な非軸対称音場を送信するステップと、
前記回転可能な非軸対称音場と前記試験試料との間の相互作用から得られるエコー信号を受信するステップと、
前記試験試料の少なくとも1つのボリュームスライスに対応する画像を再構成するために、前記受信したエコー信号およびトモグラフィ再構成法を利用するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記試験試料へ前記回転可能な非軸対称音場を送信するステップが、分割したトランスデューサプローブの2個以上の分割したトランスデューサを作動させるステップを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記エコー信号を受信するステップが、分割したトランスデューサプローブの対向するトランスデューサセグメントの対から前記エコー信号を受信するステップを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記試験試料の表面上に分割したトランスデューサプローブを設置するステップを含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記試験試料の前記表面に沿った複数の位置へと前記分割したトランスデューサプローブを移動するステップを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記画像を再構成するために前記受信したエコー信号および前記トモグラフィ再構成法を利用するステップが、前記複数の位置の各々に対応する前記受信したエコー信号の数値表示の行列を生成するステップと、前記生成した行列を総計するステップとを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのボリュームスライスから前記試験試料のボリューム表示を再構成するステップと、ディスプレイ上に前記ボリューム表示を表示するステップとを含む、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−88430(P2013−88430A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−219939(P2012−219939)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】