説明

超音波トランスデューサ、超音波プローブおよび超音波トランスデューサの製造方法

【課題】非導電性の音響整合層の製造工程の煩雑さを回避しつつ、導通路を確保することが可能な超音波トランスデューサや超音波プローブの提供を目的とする。
【解決手段】2次元配置された複数の圧電体を備えている。圧電体それぞれには電極が設けられている。さらに電極側の第1の面と、第1の面の反対側である第2の面とを有する非導電性音響整合層を備え、また、非導電性音響整合層の第2の面側に配置された導電性音響整合層を備えている。また、導電性音響整合層に対して非導電性音響整合層と反対側に配置された基板を備えている。非導電性音響整合層の第1の面と第2の面との間には、非導電性音響整合層を貫通し、第1の面側の圧電体の中途または該第2の面側の導電性音響整合層の中途まで至る複数の溝が形成されている。また、電極と基板とは、溝を介して導通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、超音波トランスデューサ、超音波プローブ、および超音波トランスデューサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブは、複数の圧電体と、圧電体を挟んだ両面にある電極とを有している。圧電体における電極の引き出し方法は様々である。例えば、圧電体における超音波放射方向側の前面に配置された電極を、基板、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)と導通させる方法がある。FPCにより引き出された信号は、送受信回路に送信される。
【0003】
一般的にFPCのベース材料として用いられるポリイミドの音響インピーダンスは、3Mrayl程度である。また、圧電体の音響インピーダンスは、30Mrayl以上である。このように大きな差があるため、FPCを圧電体に直接接合させると音響的ミスマッチが発生する。音響的ミスマッチがあると、超音波ビームが音響インピーダンスの大きく異なる境界で反射してしまう。したがって、FPCと圧電体との間に超音波を効率よく伝搬させる中間層として音響整合層が必要となる。
【0004】
また前述の音響的ミスマッチを軽減、解消するために、複数層の音響整合層を構成することがある。この構成では、FPCの音響インピーダンス(例えば3Mrayl)から圧電体の音響インピーダンス(例えば30Mrayl)の間の、異なる音響インピーダンスを有する複数の音響整合層が段階的に積層される。
【0005】
この構成において、例えば音響整合層の第1層目に好適な音響インピーダンスを9〜15Mrayl程度するならば、このような音響インピーダンスを有する材料としてマシナブルセラミックスがある。マシナブルセラミックスは雲母を主成分としている。このマシナブルセラミックスは非導電性を有する。
【0006】
ここで、圧電体の電極からFPCまで導通路を形成しなければならない。よって第1層目に非導電性の音響整合層を配置する場合、この非導電性の音響整合層に導通路を設けなければならない。
【0007】
例えば2次元アレイの超音波トランスデューサにおいては、膨大な数の素子それぞれからFPCまで電極を引き出さなければない。そこで、従来、非導電性の音響整合層に対し、積層方向に、圧電体の数・配列に対応して導電性を有する貫通孔を設けた構成の超音波トランスデューサがあった。この超音波トランスデューサでは、音響整合層に貫通孔を圧電体の数だけ設け、その貫通孔の全面に例えばメッキ処理を施し、導通路を確保していた。
【0008】
また従来、両面に導電性膜が設けられた非導電性材料の板を形成し、その板の導電性膜の面同士を重ね合わせて非導電性音響整合層を形成する超音波トランスデューサの製造方法があった。一例として、圧電体のピッチと同様の幅を有する非導電性材料の板を形成し、その両面に導電性膜を設ける。この板を圧電体の行数または列数に対応した数だけ重ね合わせていくつかのブロックを形成し、ブロック同士をさらに重ね合わせて音響整合層を形成する。このような工程によって形成された音響整合層では、板と板の重ね合わせ面が電極とFPCとの導通路として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−130611号公報
【特許文献2】特開2009−177342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの製造方法によれば、製造工程が煩雑となってしまう。また位置合わせが困難で製造コストが高くなってしまう。例えば圧電体の数、配列に対応して貫通孔を形成する工程は、コストを増加させるおそれがあり、また貫通孔の位置精度を確保する作業は煩雑である。また、非導電性材料の板に導電性膜を形成してから重ね合わせる音響整合層の製造工程は複雑であり、また製造コストの増加を招くおそれがある。
【0011】
この実施形態は、非導電性の音響整合層の製造工程の煩雑さを回避しつつ、基板と圧電体の電極との間の導通路を確保することが可能な超音波トランスデューサ、その製造方法や超音波プローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この実施形態にかかる超音波トランスデューサは、2次元配置された複数の圧電体を備えている。圧電体それぞれには電極が設けられている。さらに電極側の第1の面と、第1の面の反対側である第2の面とを有する非導電性音響整合層を備えている。また、非導電性音響整合層における第2の面側に配置された基板を備えている。非導電性音響整合層の第1の面と第2の面との間には、非導電性音響整合層を貫通し、圧電体、導電性音響整合層または基板の中途まで至る複数の溝が設けられている。また、電極と基板とは、溝を介して導通されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの概要を示す概略斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかる音響整合層および圧電体の積層体を示した概略斜視図である。
【図3】(A)は、第1実施形態にかかる非導電性音響整合層および導電性音響整合層の積層体の溝を示した概略斜視図である。(B)は、図3(A)の溝に樹脂を充填した状態を示す概略斜視図である。
【図4】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程の一部を示した概略斜視図である。
【図5】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図4の次の工程を示す概略斜視図である。
【図6】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図5の次の工程を示す概略斜視図である。
【図7】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図6の次の工程を示す概略斜視図である。
【図8】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図7の次の工程を示す概略斜視図である。
【図9】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの概要を示す概略斜視図である。
【図10】第2実施形態にかかる音響整合層および圧電体の積層体を示した概略斜視図である。
【図11】(A)は、第2実施形態にかかる非導電性音響整合層および圧電体の積層体の溝を示した概略斜視図である。(B)は、図11(A)の溝に樹脂を充填した状態を示す概略斜視図である。
【図12】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程の一部を示した概略斜視図である。
【図13】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図12の次の工程を示す概略斜視図である。
【図14】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図13の次の工程を示す概略斜視図である。
【図15】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図14の次の工程を示す概略斜視図である。
【図16】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図15の次の工程を示す概略斜視図である。
【図17】第3実施形態にかかる超音波トランスデューサの概要を示す概略斜視図である。
【図18】第3実施形態にかかる音響整合層および圧電体の積層体を示した概略斜視図である。
【図19】(A)は、第3実施形態にかかる非導電性音響整合層および圧電体の積層体の溝を示した概略斜視図である。(B)は、図19(A)の溝に樹脂を充填した状態を示す概略斜視図である。
【図20】第3実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程の一部を示した概略斜視図である。
【図21】第3実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図20の次の工程を示す概略斜視図である。
【図22】第3実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図21の次の工程を示す概略斜視図である。
【図23】第3実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図22の次の工程を示す概略斜視図である。
【図24】第3実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図23の次の工程を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、第1〜第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ、その製造方法および超音波プローブにつき、図1〜図24を参照して説明する。
【0015】
[第1実施形態]
(超音波トランスデューサの概略構成)
図1〜図8を参照して第1実施形態における超音波トランスデューサ100の概要について説明する。図1は、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の概要を示す概略斜視図である。以下、本実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の概略構成について説明する。なお、図1において示される超音波トランスデューサ100の圧電体114の配列数は概念上示されるものである。また図示された配列全体がなす形状、例えば2次元配列における行数や列数についても一例に過ぎず、その他の構成を適用することも可能である。
【0016】
また、以下の説明においてバッキング材118から導電性音響整合層111へ向かう方向を「前方」(図1におけるz方向)と記載し、前方と反対側の方向を「後方」と記載する。また超音波トランスデューサにおける各構成部分における前方側の面を「前面」と記載し、後方側の面を「背面」と記載する。
【0017】
図1に示すように、この実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においては、圧電体114がxy面上において2次元的に配列されている。また各圧電体114の前面それぞれに対応して非導電性音響整合層110が設けられている。さらに非導電性音響整合層110における前面側に導電性音響整合層111が設けられる。また、圧電体114における背面側にはバッキング材(負荷材相)118が設けられ、かつバッキング材118と圧電体114との間には、背面基板120が設けられている。なお、超音波トランスデューサ100において、背面基板120は少なくとも送受信回路などの後段回路側までは引き出されるものであるが、図1では背面基板120のその部分の図示を省略している。
【0018】
また、図1に示すように導電性音響整合層111の前面側には前面基板122が設けられている。前面基板122のさらに前面側には音響レンズ102が設けられている。なお背面基板120と同様に、図1の前面基板122も後段回路へ延びる部分の図示が省略されている。また、圧電体114における前面側には前面電極112が設けられ、前面電極112は非導電性音響整合層110の背面に隣接する。さらに圧電体114の背面側には背面電極116が設けられる。以下、超音波トランスデューサ100を構成する各部についてそれぞれ説明する。
【0019】
〈圧電体〉
圧電体114は、背面電極116および前面電極112に印加された電圧を超音波パルスに変換する。この超音波パルスは超音波診断装置による検査対象としての被検体へ送波される。また、圧電体114は、被検体からの反射波を受け、電圧に変換する。圧電体114の材料としては、一般にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛/Pb(Zr,Ti)O)、チタン酸バリウム(BaTiO )、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)単結晶、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)単結晶等を用いることが可能である。圧電体114の音響インピーダンスは、例えば30Mrayl程度とされる。なお、図1における圧電体114は単一層によって構成されているが、複数層の圧電体114として構成することも可能である。
【0020】
〈バッキング材〉
バッキング材118は、超音波パルスの送波の際に超音波の照射方向と反対側(後方)に放射される超音波パルスを吸収し、各圧電体114の余分な振動を抑える。バッキング材118により、振動時における各圧電体114背面からの反射を抑制し、超音波パルスの送受信に悪影響を及ぼすことを回避することが可能である。なお、バッキング材118としては、音響減衰、音響インピーダンス等の観点から、PZT粉末やタングステン粉末等を含むエポキシ樹脂、ポリ塩化ビニールやフェライト粉末を充填したゴムあるいは多孔質のセラミックにエポキシ等の樹脂を含漬したもの等、任意の材料を用いることができる。
【0021】
〈前面基板、背面基板〉
前面基板122および背面基板120は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC/Flexible Printed Circuits)であり、それぞれ送受信回路等の後段回路まで至る長さを有している。また前面基板122および背面基板120それぞれの前面側および背面側の一方または双方には、後段回路と接続される配線パターン等の接続リード(不図示)が設けられている。前面基板122および背面基板120は、例えばベース材料としてポリイミドが用いられる。ポリイミドの音響インピーダンスは3Mrayl程度である。
【0022】
〈音響整合層〉
次に図2および図3を参照して本実施形態の非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111について説明する。図2は、第1実施形態にかかる音響整合層(111、110)および圧電体114の積層体を示した概略斜視図である。図3(A)は、第1実施形態にかかる非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111の積層体の溝110aを示した概略斜視図である。図3(B)は、図3(A)の溝110aに樹脂110cを充填した状態を示す概略斜視図である。
【0023】
非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111は、圧電体114と被検体の間で音響インピーダンスを整合させるものである。そのために非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111は、圧電体114と前面基板122の間に配置され(図1参照)、かつ非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111には、それぞれ互いに音響インピーダンスの異なる材料が用いられる。圧電体114と、音響レンズ102との間で段階的に音響インピーダンスを変化させることにより音響的な整合をとるためである。また非導電性音響整合層110には、切削加工が可能な材料が用いられる。
【0024】
切削加工可能かつ圧電体114に隣接させるのに好適な音響インピーダンスを有する非導電性音響整合層110としては、例えば、マシナブルガラス、マシナブルセラミックス、エポキシと酸化金属粉末の混合体、エポキシと金属粉末の混合体などがある。このような非導電性音響整合層110の音響インピーダンスは、9〜15Mrayl程度である。また非導電性音響整合層110と前面基板122との間に配置させるのに好適な音響インピーダンスを有する導電性音響整合層111の材料の一例として、例えば、カーボン(等方性黒鉛やグラファイト)がある。このような導電性音響整合層111の音響インピーダンスは、4〜7Mrayl程度である。また導電性音響整合層111の厚さ(前後方向の長さ)は、例えば150μm〜200μmである。
【0025】
図2に示すように第1実施形態の非導電性音響整合層110には、前面電極112との境界面(非導電性音響整合層110背面)から、導電性音響整合層111との境界面(非導電性音響整合層110前面)に到達する溝110aが設けられている。すなわち溝110aは非導電性音響整合層110を貫通して設けられている。さらに、この溝110aは非導電性音響整合層110の前面にとどまらず、導電性音響整合層111の中途まで貫かれている。つまり、図3(A)に示すように溝110aは非導電性音響整合層110の背面から、導電性音響整合層111の前面を介し、導電性音響整合層111の中途部分まで至るように設けられている。ここで「導電性音響整合層111の中途部分まで」とは、例えば、厚さ150μm〜220μmである導電性音響整合層111の背面から前方(図1のz方向)へ向って約10μmまでを示すものである。
【0026】
また、第1実施形態の溝110aは、素子配列方向(行方向または列方向/図1のxまたはy方向)の一側面から反対側の他側面に到達するように設けられている。すなわち溝110aは非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111を素子配列方向に貫通して設けられている。このような溝110aの構成によれば、各素子(非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111の積層体)に対して溝110aを設けるにあたり、素子配列における1行分または1列分に属する素子それぞれに対し、1回の工程で溝110aそれぞれを設けることができる(図6〜図8参照)。なお、素子配列方向とは、超音波トランスデューサ100の前後方向と直交する方向である。また、1行分または1列分に属する素子(積層体)それぞれに対し、1回で溝を設けることができれば、素子配列方向の両端に位置する素子については、必ずしも素子配列方向に貫通していなくてもよい。
【0027】
また、図3(A)に示す非導電性音響整合層110と導電性音響整合層111における溝110aの内面には、その全面にわたってメッキやスパッタなどにより導電性膜110bが設けられている。溝110aは非導電性音響整合層110の背面から、導電性音響整合層111の背面を経て、導電性音響整合層111の中途まで設けられているので、導電性膜110bは、非導電性音響整合層110の背面と、導電性音響整合層111の背面との間の電気的な導通路となる。すなわち、導電性膜110bは、溝110aの全面にわたって設けられているので、溝110aの一端から他端までが電気的に接続されることになる。結果として、非導電性音響整合層110に隣接した前面電極112は、導電性膜110bおよび導電性音響整合層111を介して前面基板122の配線パターンと導通されることになる。
【0028】
また、図3(B)に示すように非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111における溝110aの導電性膜110bのさらに内側には、樹脂110cが充填される。この樹脂110cにはエポキシ接着剤などを用いることが可能である。この樹脂110cにより溝110aを埋めることで、非導電性音響整合層110に溝110aを形成したことによる影響を抑制することが可能となる。ただし、必ずしもこの樹脂110cを溝110aに充填する必要はない。つまり、素子(積層体)の形状や超音波トランスデューサ100の振動モードとの関係によっては、音響整合層に溝110aを設けたことに起因する音響的影響を回避する必要があるが、それ以外の場合には樹脂110cを設けなくても良い。
【0029】
なお、不要な振動を抑制するためのサブダイスとして溝110aを使用する場合は、サブダイスに対応する溝110aは空隙のままにしてもよく、若しくは所望の媒質を充填するようにしてもよい。また、導電性膜110bが溝110aの内側全面にわたって設けられている例を説明したが、必ずしもこれに限られない。すなわち非導電性音響整合層110を通して前面電極112と導電性音響整合層111が導通されていればよいので、例えば溝110aの内面のうち、非導電性音響整合層110の背面側端部から、導電性音響整合層111に至る部分までを通るように、導電性膜110bを部分的に形成してもよい。また、導電性膜110bに限らず、接続リードを設けることが可能であればそのような構成を採用することも可能である。
【0030】
また、図1〜図3(B)に示す非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111の各積層体においては溝110aがそれぞれ1つ設けられているが、複数の溝110aを設けることが可能であればそのような構成を採用することも可能である。また、図1〜図3(B)に示される溝110aは、超音波トランスデューサ100における超音波の放射方向(素子の前後方向)に対して平行に設けられているが、必ずしもこのような構成に限らず、例えば、素子の前後方向に対し、傾斜するように設けることも可能である。
【0031】
また図1の超音波トランスデューサ100においては、後方から前方へ、圧電体114、非導電性音響整合層110、導電性音響整合層111、前面基板122、音響レンズ102の順に配置されているが、このような構成に限らず音響整合層を3層以上とすることも可能である。例えば、後方から前方へ非導電性音響整合層110、導電性音響整合層111、前面基板122を順に配置し、さらに音響レンズ102との間の音響整合の観点から、前面基板122の前方に音響整合層を配置することも可能である。
【0032】
溝110aの溝幅は、素子幅の約30%程度、例えば10μm程度とするのが好適である。すなわち、溝110aの溝幅をこのように設定することで、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサ100の振動モード、導電性膜110bの形成作業において有効である。ここで「素子」とは、圧電体114、非導電性音響整合層110、導電性音響整合層111の積層体(図2を参照)である。また「素子幅」とは、超音波トランスデューサ100の溝110aの配列方向(例えば図1のx方向またはy方向)における、素子の長さである。また、図示されている素子は、断面略正方形のものであるが、これに限られず、例えば断面略長方形のものであってもよい。
【0033】
〈音響レンズ〉
音響レンズ102(図1参照)は、送受信される超音波を収束してビーム状に整形するものである。音響レンズ102の素材としては、音響インピーダンスが生体に近いシリコーンなどが使用される。
【0034】
(超音波トランスデューサの製造方法の概略)
次に図4〜図8を参照し、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造方法、特に非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111に溝110aを設ける工程を主として説明する。図4〜図8は、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造工程を示した概略斜視図である。
【0035】
《ブロック接続/図4・図5》
図1〜図3に例示されるように本実施形態の超音波トランスデューサ100における音響整合層は、非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111を積層して構成されている。この音響整合層を形成するにあたり、図4に示すように、非導電性音響整合層110に必要な材料で構成された非導電性材料ブロック1101を用いる。同様に導電性音響整合層111に必要な材料で構成された導電性材料ブロック1111を用いる。
【0036】
これら非導電性材料ブロック1101および導電性材料ブロック1111の最も広い面同士を重ね合わせ、接続する。図5に示すように、これらを接続することによって音響整合層ブロックが形成される。なお後の工程で、非導電性材料ブロック1101および導電性材料ブロック1111には、共に行列方向に分割溝が形成され、それにより図1に示すように所望の素子数と同数の積層体が形成される。
【0037】
《溝形成/図6》
非導電性材料ブロック1101と導電性材料ブロック1111を接続したら、この音響整合層ブロックに対し、(2次元配列分割後(図8)における)行方向または列方向(図1におけるx方向またはy方向)に所定のピッチで溝110aを設ける。すなわち図6に示すように、非導電性材料ブロック1101における接続面と反対側の面から、非導電性材料ブロック1101を貫通し、導電性材料ブロック1111の中途まで至る溝110aを設ける。なお、「接続面」とは導電性材料ブロック1111との接続面を示す。
【0038】
また溝110aは、超音波トランスデューサ100の素子ピッチに対応したピッチで複数設けられる。言い換えると、素子配列の行方向に並べて溝110aを設ける場合は、少なくとも行数分だけ溝110aを設けることになる。また素子配列の列方向に並べて溝110aを設ける場合は、少なくとも列数分だけ溝110aを設けることになる。なお、図6における音響整合層ブロックの溝110aの数は、概念上示されるものである。また溝110aを、必ずしも図6に示されるように素子配列と平行に設けなくてもよく、素子配列に対して傾斜させて設けることも可能である。また、図6に示される溝110aは、超音波トランスデューサ100における超音波の放射方向(素子の前後方向)に対して平行に設けられているが、必ずしもこのような構成に限らず、例えば、素子の前後方向に対し、傾斜するように設けることも可能である。
【0039】
溝110aの形成における、導電性材料ブロック1111の切り込み深さの量の一例としては、厚さ150μm〜200μmの導電性材料ブロック1111に対して10μm程度である。また、切り込み幅(溝110aの幅)を、素子幅の約30%以下とし、かつ、10μm以上とすると、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサ100の振動モード、導電性膜110bの形成作業などにおいて有効である。このような条件における、素子幅に対しての切り込み幅の一例としては、素子幅350μmに対して、50μm幅とすることが考えられる。また切り込み幅のピッチは0.4mm程度とすることが可能である。なお、超音波トランスデューサ100の完成品の状態における導電性音響整合層111の厚さを薄くしたい場合には、次のような工程による。
【0040】
まず、あらかじめ仕様値(完成品の導電性音響整合層111の厚さ)より厚い導電性材料ブロック1111によって音響整合層ブロックを形成する。
【0041】
次に、上述のように非導電性材料ブロック1101を貫通し、導電性材料ブロック1111の中途に至る溝110aを設ける。
【0042】
次に、音響整合層ブロックにおける導電性材料ブロック1111の接続面と反対側の面を切削または研磨し、所望の厚さとする。なお、導電性材料ブロック1111の切込み量は、これら切削または研磨によって削られる厚さに応じて設定されるものである。
【0043】
《導電性膜形成》
非導電性材料ブロック1101および導電性材料ブロック1111の積層体としての音響整合層ブロックに溝110aを設けたら、溝110aに導電性膜110bを設ける。導電性膜110bは例えばメッキやスパッタなどにより、溝110aの内面の全面にわたって設ける。これにより、溝110aの一端から他端までが電気的に導通される。さらに、非導電性音響整合層110に隣接した前面電極112は、導電性膜110bおよび導電性音響整合層111を介して前面基板122の配線パターンと導通される。
【0044】
なお、導電性膜110bは必ずしも溝110aの内側全面に設けなくても良い。例えば溝110aの内面のうち、一部側面であって、溝110aの一端(背面側端部)から、他端(導電性音響整合層111側端部)に至る部分までを通るように、導電性膜110bを設けてもよい。また、前面電極112から導電性音響整合層111まで、溝110aを通した接続リードを設けることが可能であれば、導電性膜110bの代わりに接続リードを設けてもよい。
【0045】
《樹脂充填》
音響整合層ブロックの溝110aに導電性膜110bを形成したら、溝110aにおける導電性膜110bのさらに内側に、樹脂110cを充填する。樹脂110cにはエポキシ接着剤などを用いることが可能である。ただし、素子(積層体)の形状や超音波トランスデューサ100の振動モードによっては、溝110aによる音響的な影響が少ない場合があり、その場合は樹脂110cを設けなくてもよい。また、溝110aを不要振動抑制のためのサブダイスとして使用する場合は、サブダイスに対応する溝110aは空隙のままにしてもよく、若しくは所望の媒質を充填するようにしてもよい。
【0046】
《圧電体接続/図7》
非導電性材料ブロック1101および導電性材料ブロック1111の積層体としての音響整合層ブロックに溝110aを設け、導電性膜110b、樹脂110cを設けたら、その音響整合層ブロックと圧電体材料ブロック1141とを接続する。つまり、図7に示すように非導電性材料ブロック1101における導電性材料ブロック1111との接続面と反対側の面に対し、圧電体材料ブロック1141を接続する。なお、圧電体材料ブロック1141の前面にはあらかじめ前面電極112となる層が設けられているものとする。同じく圧電体材料ブロック1141の背面にはあらかじめ背面電極116となる層が形成されているものとする。また圧電体材料ブロック1141には、後の工程で行列方向に分割溝が形成され、超音波トランスデューサ100として所望の圧電体114の素子数となるように分割される(図1参照)。
【0047】
《分割溝形成/図8》
溝110aが設けられた音響整合層ブロックと圧電体材料ブロック1141とを接続したら、その積層体に対し行列方向に分割溝を設ける。つまり、図8に示すように音響整合層ブロックおよび圧電体材料ブロック1141の積層方向に沿って行方向に所定のピッチで分割溝を形成し、複数行のブロックに分割する。さらに音響整合層ブロックおよび圧電体材料ブロック1141の積層方向に沿って列方向に所定のピッチで分割溝を設ける。その結果、図8のような圧電体114、非導電性音響整合層110、導電性音響整合層111の積層体を2次元配列してなる素子群が形成される。なお、図8は、図4〜図7と天地逆に示されている。
【0048】
《基板接続》
図8に示すように2次元アレイの素子群を形成したら、導電性音響整合層111それぞれの前面に前面基板122を接続し、同様に圧電体114における背面電極116の背面に背面基板120を接続する。これによって、前面基板122の配線パターンと各導電性音響整合層111とが電気的に接続される。また背面基板120の配線パターンと背面電極116とが電気的に接続される。
【0049】
《バッキング材接続》
2次元アレイの素子群の前面および背面に基板を接続したら、背面基板120の背面にバッキング材118を接続する。なお、圧電体114、背面基板120およびバッキング材118の間の構成としては、図1に示されるものに限られず、必要に応じて信号処理を行う電子回路や背面整合層などの構造物を介在させることが可能である。
【0050】
《音響レンズ接続》
2次元アレイの素子群の前面および背面に基板を接続したら、バッキング材118の接続と同時または前後して、前面基板122の前面に音響レンズ102を接続する。なお、上述のように音響整合層を3層以上で構成する場合は、音響レンズ102の前面に音響整合層を配置しても良い。また、前面基板122と音響レンズ102を隣接させず、前面基板122の前面に音響整合層を配置し、その音響整合層の更に前面に音響レンズ102を配置することも可能である。
【0051】
(超音波トランスデューサと外部装置との接続)
次に、第1実施形態の超音波トランスデューサ100を有する超音波プローブと、超音波診断装置本体との接続構成の一例について説明する。なお、以下の説明においては図示を省略する。超音波プローブは、内部に超音波トランスデューサ100が設けられ、超音波診断装置本体と超音波プローブとを電気的に接続するためのインターフェース(ケーブル等)を有している。また超音波トランスデューサ100は、前面基板122の配線パターンおよび背面基板120の配線パターンと、超音波プローブのインターフェースとを通じて、超音波診断装置本体と電気的に接続されており、超音波の送受信にかかる信号を相互に伝達している。
【0052】
なお超音波プローブ内には、送受信回路等の電子回路が設けられた回路基板や、インターフェースと当該電子回路とを接続する接続用基板が設けられていてもよい。この場合は、超音波プローブと本体を接続するインターフェース、接続用基板の配線パターン、電子回路、前面基板122や、背面基板120の配線パターンを介して、前面電極112や背面電極116と超音波診断装置本体の制御部との間で信号が送受信される。
【0053】
例えば超音波診断装置本体は、その制御部からインターフェースを通じて超音波トランスデューサ100の駆動制御にかかる電気信号を超音波プローブに送る。この電気信号は、接続用基板を介して回路基板の電子回路に送信される。電子回路は、超音波診断装置本体制御部からの信号に基づき、前面基板122や背面基板120を通じて圧電体114に電圧を印加する。このとき、前面基板122の配線パターン、導電性音響整合層111および非導電性音響整合層110の溝110aを通じて、前面電極112に電圧が印加される。このようにして圧電体114に電圧が印加され、超音波パルスが被検体に送信される。
【0054】
また、例えば超音波トランスデューサ100は、被検体からの反射波を受信すると、背面基板120等を介して、圧電体114が変換した電気信号を電子回路に送信する。電子回路はこの電気信号に所定の処理(遅延加算、増幅等)を行い、さらに接続用基板、インターフェースを介して超音波診断装置本体の制御部へ電気信号を送信する。この電気信号を基に超音波診断装置は超音波画像を生成する。また、前面電極112と電子回路との間では、前面基板122の配線パターン、導電性音響整合層111および非導電性音響整合層110の溝110aを通じて、電気信号が伝達される。
【0055】
(作用・効果)
以上説明した第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100および超音波プローブの作用および効果について説明する。
【0056】
上記説明したように第1実施形態の超音波トランスデューサ100では、圧電体114の前方に配置された非導電性音響整合層110それぞれに、前面電極112との境界面から、少なくとも導電性音響整合層111との境界面まで至る貫通された溝110aが設けられている。さらにこの溝110aは非導電性音響整合層110前面にとどまらず、導電性音響整合層111の中途まで連続している。すなわち、図3(A)に示すように溝110aは非導電性音響整合層110の背面から、導電性音響整合層111の前面を介し、導電性音響整合層111の中途まで至るように設けられている。また、溝110aの内面における、少なくとも非導電性音響整合層110背面側の端部(溝110a後方端部)から、導電性音響整合層111に至る部分までを通るように導電性膜110bが設けられている。
【0057】
このような非導電性音響整合層110有する超音波トランスデューサ100の製造工程では、次のような工程のみで、前面電極112から前面基板122までの導通路を設けることが可能である。すなわち、非導電性材料ブロック1101と導電性材料ブロック1111とを積層させ、次に2次元配列分割後における素子の行方向または列方向において、行数または列数分の溝110aを形成し、次に圧電体材料ブロック1141を接続し、次に、これらの積層体に対し行列方向に分割溝を設けることによって、圧電体114、非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111の積層体を備えて構成される素子の2次元配列を形成する。
【0058】
このような製造工程によって製造される超音波トランスデューサ100によれば、非導電性音響整合層110の導通路の形成、ひいては超音波トランスデューサ100の製造工程の煩雑さを回避することができること、前面電極112から前面基板122までの導通路を形成することの双方を達成可能となる。すなわち、導電性音響整合層111の中途まで至る溝110a、導電性膜110bを有する構成であれば、その製造工程において、前面電極112から導電性音響整合層111までの導通路を確実に形成することができるだけでなく、その導通路を形成する工程は、音響整合層ブロックに溝110aを設けてから圧電体材料ブロック1141を積層するだけなので、簡便である。
【0059】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ200および超音波トランスデューサ200が設けられた超音波プローブについて図9〜図16を参照して説明する。図9は、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ200の概要を示す概略斜視図である。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主として説明し、その他重複する部分については説明を割愛する場合がある。また、図9において示される超音波トランスデューサ200の素子数は概念上示されるものである。また行数や列数についても一例に過ぎず、その他の構成を適用することも可能である。
【0060】
(超音波トランスデューサの概略構成)
図9に示すように、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ200においても、圧電体214がxy面上において2次元的に配列されている。この圧電体214の前面側に前面電極212が設けられ、背面側に背面電極216が設けられる。また各圧電体214の前面それぞれに対応して非導電性音響整合層210が設けられている。さらに非導電性音響整合層210における前面側に導電性音響整合層211が設けられる。また、圧電体214における背面側にはバッキング材218が設けられ、かつバッキング材218と圧電体214との間には、背面基板220が設けられている。また、図9に示すように導電性音響整合層211の前面側には前面基板222が設けられている。また前面基板222のさらに前面側には音響レンズ202が設けられている。なお、図1と同様に、図9においても、前面基板222および背面基板220は部分的に図示が省略されている。
【0061】
(非導電性音響整合層と圧電体の構成)
次に、図10、図11(A)および図11(B)を参照して、第2実施形態の超音波トランスデューサ200における非導電性音響整合層210、圧電体214について説明する。図10は、第2実施形態にかかる音響整合層(211、210)および圧電体214の積層体を示した概略斜視図である。図11(A)は、第2実施形態にかかる非導電性音響整合層210および圧電体214からなる積層体の溝210aを示した概略斜視図である。図11(B)は、図11(A)の溝210aに樹脂210cを充填した状態を示す概略斜視図である。
【0062】
第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ200における、前面電極212と導電性音響整合層211との間の導通路(溝210a)は、図10に示すように、非導電性音響整合層210前面から圧電体214の中途まで設けられている。すなわち、図11(A)に示すように溝210aは、非導電性音響整合層210における導電性音響整合層211との境界面(非導電性音響整合層210前面)から非導電性音響整合層210を貫通し、前面電極212との境界面(非導電性音響整合層210背面)を経て、圧電体214の前面を貫いて圧電体214の中途に到るように設けられている。ここで「圧電体214の中途まで」とは、例えば、厚さ400μm〜550μmである圧電体214の前面位置から後方(図9のz方向と反対方向)約10μmに至る位置(溝210aの底部)を示すものである。
【0063】
また、第2実施形態の溝210aは、素子配列方向(行方向または列方向/図9のxまたはy方向)の一側面から反対側の他側面に到達するように設けられている。すなわち溝210aは非導電性音響整合層210および圧電体214を素子配列方向に貫通して設けられている。このような溝210aの構成によれば、各素子(非導電性音響整合層210および圧電体214の積層体)に対する溝210aの形成において、素子配列における1行分または1列分に属する素子それぞれに対し、1回で溝を設けることができる(図14〜図16参照)。なお、素子配列方向とは、超音波トランスデューサ200の前後方向と直交する方向である。また、1行分または1列分に属する素子それぞれに対し、1回で溝を設けることができれば、素子配列方向の両端に位置する素子(積層体)については、必ずしも素子配列方向に貫通していなくてもよい。
【0064】
また、図11(A)に示す非導電性音響整合層210および圧電体214の積層体における溝210aの内面には、その全面にわたってメッキやスパッタなどにより導電性膜210bが設けられている。溝210aが非導電性音響整合層210の前面から、前面電極212、圧電体214の前面を介し、圧電体214の中途まで設けられており、かつ導電性膜210bが、非導電性音響整合層210の前面から導電性音響整合層211に到るまで連続している。すなわち、導電性膜210bは溝210aの全面にわたっているので、溝210aの一端から他端までが電気的に導通されることになる。結果として、前面電極212が導電性膜210bの後方側と接しており、かつ非導電性音響整合層210の前面に隣接した導電性音響整合層211と導通される。さらに、前面電極212は導電性音響整合層211を介して前面基板222の接続リードと導通されることになる。
【0065】
また、図11(B)に示すように第2実施形態においても、非導電性音響整合層210と導電性音響整合層211における溝210aの導電性膜210bのさらに内側には、樹脂210cが充填される。この樹脂210cの充填により非導電性音響整合層210に溝210aを設けたことによる影響を抑制することが可能となる。ただし、素子(積層体)の形状や超音波トランスデューサ200の振動モードによっては、音響整合層の溝210aによる音響的影響が少ない場合があり、その場合には樹脂210cを設けなくても良い。
【0066】
なお、溝210aをサブダイスとして使用する場合は、その溝210aは空隙のままにしてもよく、若しくは所望の媒質を充填するようにしてもよい。また、前面電極212と導電性音響整合層211が導通されていればよいので、例えば溝210aの内面のうち、非導電性音響整合層210の前面側端部から、圧電体214に至る部分までを通るように導電性膜210bが部分的に設けられていればよい。また、接続リードを設けることが可能であればそのような構成を採用することも可能である。
【0067】
また、図9〜図11(B)に例示される構成に限らず複数の溝210aを設けることも可能である。また、音響整合層を3層以上とすることも可能であり、例えば、前面基板222の前方に音響整合層を配置することも可能である。なお、溝210aの好適な幅(配列方向の長さ/図9のx方向またはy方向の長さ)については、第1実施形態と同様である。
【0068】
(超音波トランスデューサの製造方法の概略)
次に図12〜図16を参照し、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造方法、特に非導電性音響整合層210および圧電体214の溝210aを設ける工程を主として説明する。図12〜図16は、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ200の製造工程を示した概略斜視図である。
【0069】
《ブロック接続/図12・図13》
図9〜図11(A)・図11(B)に例示されるように、第2実施形態の超音波トランスデューサ200における音響整合層は、非導電性音響整合層210および導電性音響整合層211を積層して構成されている。ただし、第2実施形態においては、この積層された音響整合層を形成する前に、図12に示すように、非導電性材料ブロック2101と、圧電体材料ブロック2141を積層する。なお、圧電体材料ブロック2141の前面にはあらかじめ前面電極212となる層が形成されているものとする。同じく圧電体材料ブロック2141の背面にはあらかじめ背面電極216となる層が形成されているものとする。
【0070】
すなわち図13に示すように、まず非導電性材料ブロック2101および圧電体材料ブロック2141の最も広い面同士を重ね合わせ、接続する。なお後の工程で、この積層体には、共に行列方向(図9におけるx方向またはy方向)に分割溝が設けられ、それにより図9に示すように圧電体214の素子数と同数の積層体が形成される。
【0071】
《溝形成/図14》
非導電性材料ブロック2101と圧電体材料ブロック2141を接続したら、これらの積層体に溝210aを設ける。すなわち図14に示すように、非導電性材料ブロック2101における接続面と反対側の面(非導電性材料ブロック2101前面)から、非導電性材料ブロック2101を貫通し、圧電体材料ブロック2141の中途まで至る溝210aを設ける。なお、「接続面」とは圧電体材料ブロック2141との接続面を示す。
【0072】
第1実施形態と同様にこの溝210aは、超音波トランスデューサ200の素子ピッチに対応したピッチで複数設けられる。なお、図14における音響整合層ブロックの溝210aの数は、概念上示されるものである。また溝210aは、必ずしも図14に示されるように素子配列と平行に設けなくてもよく、素子配列に対して傾斜して設けることも可能である。
【0073】
溝210aを設けるにあたっての圧電体材料ブロック2141の切り込み量の一例としては、厚さ400μm〜550μmの圧電体材料ブロック2141に対して10μm程度である。また溝210aを設けるにあたり、切り込み幅を、素子幅の約30%以下とし、かつ10μm以上とすると、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサ200の振動モード、導電性膜210bの形成作業などにおいて有効である。
【0074】
なお、第2実施形態の導電性膜210bの形成工程、樹脂210cの形成工程は第1実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0075】
《導電性音響整合層接続/図15》
非導電性材料ブロック2101および圧電体材料ブロック2141の積層体における溝210aを形成したら、その音響整合層ブロックと圧電体材料ブロック2141とを接続する。つまり、図15に示すように非導電性材料ブロック2101における圧電体材料ブロック2141との接続面と反対側の面(非導電性材料ブロック2101前面)に対し、導電性材料ブロック2111を接続する。
【0076】
《分割溝形成/図16》
非導電性材料ブロック2101および圧電体材料ブロック2141の積層体と、導電性材料ブロック2111とを接続したら、さらにその積層体に対し行列方向に分割溝を設ける。その結果、図16のような圧電体214、非導電性音響整合層210、導電性音響整合層211の積層体を2次元配列してなる素子群が形成される。
【0077】
なお、第2実施形態の前面基板222および背面基板220の接続工程、バッキング材218の接続工程ならびに、音響レンズ202の接続工程は第1実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0078】
(作用・効果)
以上説明した第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ200を含む超音波プローブの作用及び効果について説明する。
【0079】
上記説明したように第2実施形態の超音波トランスデューサ200では、圧電体214の前方に配置された非導電性音響整合層210それぞれに、導電性音響整合層211との境界面から、圧電体214との境界面まで至る溝、すなわち非導電性音響整合層210を貫通する溝210aが設けられている。さらにこの溝210aは圧電体214前面にとどまらず、圧電体214の中途まで連続している。すなわち、図11(A)に示すように溝210aは、圧電体214の中途部分から、非導電性音響整合層210を介し、導電性音響整合層211の前面まで至るように設けられている。また、溝210aの内面には、少なくとも圧電体214の当該中途部分(溝210a後方端部)から、非導電性音響整合層210を通じて、導電性音響整合層211に至る部分までを通るように導電性膜210bが設けられている。
【0080】
このような非導電性音響整合層210有する超音波トランスデューサ200の製造工程では、次のような工程のみで、前面電極212から前面基板222までの導通路を形成することが可能である。すなわち、非導電性材料ブロック2101と圧電体材料ブロック2141とを積層させ、次に2次元配列分割後における素子の行方向または列方向において、行数または列数分の溝210aを形成し、次に導電性材料ブロック2111を接続し、次に、これらの積層体に対し行列方向に分割溝を設けることによって、圧電体214、非導電性音響整合層210および導電性音響整合層211の積層体を備えて構成される素子の2次元配列を形成する。
【0081】
このような製造工程によって製造される超音波トランスデューサ200によれば、導電性音響整合層211の導通路の形成工程、ひいては超音波トランスデューサ200の製造工程の煩雑さを回避することができること、前面電極212から前面基板222までの導通路を形成することの双方を達成可能となる。すなわち、圧電体214の中途部分まで至る溝210a、導電性膜210bを有する構成によって、前面電極212から導電性音響整合層211までの導通路が確実に形成されるだけでなく、その溝210a形成工程は、非導電性材料ブロック2101と圧電体材料ブロック2141の積層体に溝210aを形成してから導電性材料ブロック2111を積層するだけなので、簡便である。
【0082】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ300および超音波トランスデューサ300が設けられた超音波プローブについて図17〜図24を参照して説明する。図17は、第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ300の概要を示す概略斜視図である。なお、第3実施形態については、第1実施形態および第2実施形態と異なる部分を主として説明し、その他重複する部分については説明を割愛する場合がある。また、図17において示される超音波トランスデューサ300の素子数は概念上示されるものである。また行数や列数についても一例に過ぎず、その他の構成を適用することも可能である。
【0083】
(超音波トランスデューサの概略構成)
図17に示すように、第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ300においても、圧電体314がxy面上において2次元的に配列され、前面電極312および背面電極316が設けられる。また各圧電体314の前面それぞれに対応して、前方へ向かって順に、非導電性音響整合層310、導電性音響整合層311、前面基板322、音響レンズ302が設けられる。また、圧電体314における背面側にはバッキング材318が設けられ、かつバッキング材318と圧電体314との間には、背面基板320が設けられている。なお、図1と同様に図17においても、前面基板322および背面基板320は部分的に図示が省略されている。
【0084】
(前面電極の構成)
第3実施形態における前面電極312は、第1実施形態および第2実施形態における前面電極112、前面電極212と比較して厚く形成されている。例えば、第1実施形態の前面電極112および第2実施形態における前面電極212の厚さを約1μm程度としたときに、この前面電極312の厚さは、約20μm程度である。このように前面電極312を厚く形成するのは、次に述べるように、この実施形態において前面電極312の中途まで溝310aを設けるためである。
【0085】
(非導電性音響整合層〜前面電極〜圧電体間の構成)
次に、図18、図19(A)および図19(B)を参照して、第3実施形態の超音波トランスデューサ300における非導電性音響整合層310、圧電体314について説明する。図18は、第3実施形態にかかる音響整合層(311、310)、前面電極312および圧電体314の積層体を示した概略斜視図である。図19(A)は、第3実施形態にかかる非導電性音響整合層310、前面電極312および圧電体314の積層体の溝310aを示した概略斜視図である。図19(B)は、図19(A)の溝310aに樹脂を充填した状態を示す概略斜視図である。
【0086】
第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ300における、前面電極312から導電性音響整合層311までの導通路(溝310a)は、図18に示すように、非導電性音響整合層310前面から前面電極312の中途部分まで設けられている。ここで、この実施形態における前面電極312は例えばその厚さが、約20μmであるので、第1実施形態および第2実施形態と同様に、前面電極312に約約10μm程度の溝を設けることが可能である。
【0087】
図19(A)に示すように溝310aは、非導電性音響整合層310における導電性音響整合層311との境界面(非導電性音響整合層310前面)から、非導電性音響整合層310と前面電極312との境界面(非導電性音響整合層310背面)を経て、非導電性音響整合層310を貫通し、前面電極312の前面を貫いて前面電極312の中途部分に到るように設けられている。ここで「前面電極312の中途部分」とは、例えば、前面電極312の前面から後方(図17のz方向と反対方向)へ向かって(溝310aの深さ)約10μmの位置を示すものである。
【0088】
また、第3実施形態の溝310aは、素子配列方向(行方向または列方向/図17のxまたはy方向)の一側面から反対側の他側面に到達するように設けられている。すなわち溝310aは非導電性音響整合層310および前面電極312を素子配列方向に貫通して設けられている。このような溝310aの構成によれば、各素子(非導電性音響整合層310および前面電極312の積層体)に対する溝310aの形成において、素子配列における1行分または1列分に属する素子それぞれに対し、1回で溝を設けることができる(図22〜図24参照)。なお、素子配列方向とは、超音波トランスデューサ300の前後方向と直交する方向である。また、1行分または1列分に属する素子それぞれに対し、1回で溝を設けることができれば、素子配列方向の両端に位置する素子については、必ずしも素子配列方向に貫通していなくてもよい。
【0089】
また、図19(A)に示す溝310aの内面には、その全面にわたってメッキやスパッタなどにより導電性膜310bが設けられている。溝310aが非導電性音響整合層310の前面から、前面電極312の前面を経て、前面電極312の中途部分まで設けられており、導電性膜310bは、前面電極312の中途部分から導電性音響整合層311に到るまで連続している。すなわち、導電性膜310bは、溝310aの全面にわたって設けられているので、溝310aの一端から他端までが電気的に導通されることになる。結果として、前面電極312が導電性膜310bの後方側端部と接しており、かつ非導電性音響整合層310の前面に隣接した導電性音響整合層311と導通される。さらに、前面電極312は導電性音響整合層311を介して前面基板322の配線パターン等の接続リードと導通されることになる。
【0090】
また、図19(B)に示すように第3実施形態においても、非導電性音響整合層310と導電性音響整合層311における溝310aの導電性膜310bのさらに内側には、樹脂310cが充填される。この樹脂310cの充填により非導電性音響整合層310に溝310aを形成したことによる影響を抑制することが可能となる。ただし、素子(積層体)の形状や超音波トランスデューサ300の振動モードによっては、樹脂310cの充填をすることで、溝310aがあることによる音響的影響が生じる事態を回避する必要があるが、それ以外の場合には樹脂310cを設けなくても良い。
【0091】
なお、溝310aをサブダイスとして使用する場合は、その溝310aは空隙のままにしてもよく、若しくは所望の媒質を充填するようにしてもよい。また、前面電極312と導電性音響整合層311が導通されていればよいので、例えば溝310aの内面のうち、非導電性音響整合層310の前面側端部から、前面電極312に至る部分までを通るように導電性膜310bが設けられていればよい。また、接続リードを設けることが可能であればそのような構成を採用することも可能である。
【0092】
また、図17〜図19(B)に例示される構成に限らず複数の溝310aを設けることも可能である。また、音響整合層を3層以上とすることも可能であり、例えば、前面基板322の前方に音響整合層を配置することも可能である。なお、溝310aの好適な溝幅については、第1実施形態および第2実施形態と同様である。
【0093】
(超音波トランスデューサの製造方法の概略)
次に図20〜図24を参照し、第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ300の製造方法、特に非導電性音響整合層310および前面電極312の溝310aを設ける工程を主として説明する。図20〜図24は、第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ300の製造工程を示した概略斜視図である。
【0094】
《ブロック接続/図20・図21》
図17〜図19(A)・図19(B)に例示されるように、第3実施形態の超音波トランスデューサ300における音響整合層は、非導電性音響整合層310および導電性音響整合層311を積層して構成されている。ただし第3実施形態においても、図20に示すように、この積層された音響整合層を形成する前に、非導電性材料ブロック3101、前面電極板3121および圧電体材料ブロック3141を積層する。この前面電極板3121の厚さは例えば約20μm程度である。なお、圧電体材料ブロック3141の背面にはあらかじめ背面電極316となる層が形成されているものとする。
【0095】
すなわち図21に示すように、まず前面電極板3121が設けられた圧電体材料ブロック3141と非導電性材料ブロック3101との最も広い面同士を重ね合わせ、接続する。なお後の工程で、この積層体には、共に行列方向(図17におけるx方向またはy方向)に分割溝が形成され、図17に示すように所定の素子数と同数の積層体が形成される。
【0096】
《溝形成/図22》
非導電性材料ブロック3101と前面電極板3121が設けられた圧電体材料ブロック3141とを接続したら、これらの積層体に溝310aを設ける。すなわち図22に示すように、非導電性材料ブロック3101における接続面と反対側の面(非導電性材料ブロック3101前面)に対し、非導電性材料ブロック3101を貫通し、前面電極板3121の中途まで至る溝310aを設ける。なお、「接続面」とは圧電体材料ブロック3141との接続面を示す。
【0097】
第1実施形態および第2実施形態と同様にこの溝310aは、超音波トランスデューサ300の素子ピッチに対応したピッチで複数設けられる。なお、図22における溝310aの数は、概念上示されるものである。また溝310aを、必ずしも図22に示されるように素子配列と平行に設けなくてもよく、素子配列に対して傾斜して設けることも可能である。
【0098】
溝310aの形成における前面電極板3121の切り込み量の一例としては、厚さ20μmの前面電極板3121に対して10μm程度である。また、溝310a形成における切り込み幅を、素子幅の約30%以下とし、かつ10μm以上とすると、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサ300の振動モード、導電性膜310bの形成作業などにおいて有効である。
【0099】
なお、第2実施形態の導電性膜310bの形成工程、樹脂310cの形成工程から非導電性材料ブロック3101、圧電体材料ブロック3141および導電性材料ブロック3111の積層体に分割溝を構成する工程までは第2実施形態と同様であるため(図23および図24参照)、説明を割愛する。
【0100】
また、第3実施形態の前面基板322および背面基板320の接続工程、バッキング材318の接続工程ならびに、音響レンズ302の接続工程は第1実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0101】
(作用・効果)
以上説明した第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ300を含む超音波プローブの作用及び効果について説明する。
【0102】
上記説明したように第3実施形態の超音波トランスデューサ300では、圧電体314の前方に配置された非導電性音響整合層310それぞれに、導電性音響整合層311との境界面から、少なくとも前面電極312との境界面まで至る貫通された溝310aが設けられている。さらにこの溝310aは前面電極312前面にとどまらず、前面電極312の中途まで連続している。すなわち、図19(A)に示すように溝310aは、前面電極312の中途部分から、非導電性音響整合層310を介し、導電性音響整合層311の前面まで至るように設けられている。また、溝310aの内面には、少なくとも前面電極312の当該中途部分(溝310a後方端部)から、非導電性音響整合層310を通じて、導電性音響整合層311に至る部分までを通るように導電性膜310bが設けられている。
【0103】
このような非導電性音響整合層310有する超音波トランスデューサ300の製造工程では、次のような工程のみで、前面電極312から前面基板322までの導通路を形成することが可能である。すなわち、非導電性材料ブロック3101と、前面電極板3121が設けられた圧電体材料ブロック3141とを積層させ、次に2次元配列分割後における素子の行方向または列方向において、行数または列数分の溝310aを形成し、次に導電性材料ブロック3111を接続し、次に、これらの積層体に対し行列方向に分割溝を設けることによって、圧電体314、前面電極312、非導電性音響整合層310および導電性音響整合層311の積層体を備えて構成される素子の2次元配列を形成する。
【0104】
このような製造工程によって製造される超音波トランスデューサ300によれば、導電性音響整合層311の導通路の形成工程、ひいては超音波トランスデューサ300の製造工程の煩雑さを回避することができること、前面電極312から前面基板322までの導通路を形成することの双方を達成可能となる。すなわち、前面電極312の中途まで至る溝310a、導電性膜310bを有する構成によって、前面電極312から導電性音響整合層311までの導通路が確実に形成されるだけでなく、その溝310a形成工程は、非導電性材料ブロック3101、前面電極板3121および圧電体材料ブロック3141の積層体に溝310aを形成してから導電性材料ブロック3111を積層するだけなので、簡便である。
【0105】
[変形例]
次に、上述した第1実施形態〜第3実施形態の超音波トランスデューサの変形例について、説明する。
【0106】
(第1変形例)
図1、図9、図17に示すように上述の超音波トランスデューサにおいては、非導電性音響整合層(110、210または310)の前方または後方に配置された構造物の中途に至る溝(110a、210aまたは310a)が設けられて、導通路が形成された。しかしながらこの構成に限られず、例えば、導電性音響整合層の前面から導電性音響整合層および非導電性音響整合層を貫通して、圧電体の中途(または厚みのある前面電極の中途)まで至る溝を設けることも可能である。
【0107】
この変形例においては、例えば素子の2次元配列を形成するための分割溝形成後、または非導電性材料ブロック、導電性材料ブロック、圧電体材料ブロックの積層後の時点で、導通路としての溝を設けることが可能である。ただし、この変形例では、導電性音響整合層の溝による、例えば音響的な影響させないようにする必要がある。この変形例においても非導電性音響整合層の導通路の形成の煩雑さを回避することができること、前面電極から前面基板までの導通路を形成することの双方を達成可能となる。
【0108】
(第2変形例)
図1、図9、図17に示すように上述の超音波トランスデューサにおいては、非導電性音響整合層(110、210または310)の前面側に導電性音響整合層(111、211または311)を配置し、さらに導電性音響整合層の前面側に前面基板(122、222または322)を配置する構成であり、非導電性音響整合層と前面基板とは、導電性音響整合層を介して電気的接続をとっている。しかしながら、このような構成に限らず、導電性音響整合層を含まず非導電性音響整合層の前面側に前面基板を設ける構成であってもよい。
【0109】
なお、第1実施形態における超音波トランスデューサ100においては、非導電性音響整合層110の背面から導電性音響整合層111に到達する溝110aが設けられている。第1実施形態の超音波トランスデューサ100にこの変形例を適用した場合、溝110aは導電性音響整合層111ではなく、前面基板122の中途まで至るように設けられる。
【0110】
また、この変形例にかかる超音波トランスデューサの製造方法につき、上記第1実施形態〜第3実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0111】
《超音波トランスデューサ100への適用例》
この変形例を超音波トランスデューサ100へ適用する場合、まず、非導電性材料ブロック1101の前面に前面基板122を接続する。次に、非導電性材料ブロック1101における接続面と反対側の面(非導電性材料ブロック1101の背面)から、非導電性材料ブロック1101を貫通し、前面基板122の中途まで至る溝110aを設ける。次に、溝110aそれぞれに対し、導電性膜110bを設け、樹脂110cを充填する。次に、非導電性材料ブロック1101と圧電体材料ブロック1141とを接続する。次に、非導電性材料ブロック1101と圧電体材料ブロック1141との積層体に対し行列方向に分割溝を設ける。この分割溝の形成工程では、前面基板122を含めて分割する場合と、前面基板122を分割しない場合とに分かれる。
【0112】
前面基板を122を含めて分割する場合は、分割された前面基板122それぞれを送受信回路等の電子回路と導通させる配線基板を、例えば前面基板122のさらに前面側に配置してもよい。
【0113】
前面基板122を分割しない場合は、前面基板122の中途まで至る分割溝を形成してもよく、前面基板122を削らないように、非導電性材料ブロック1101および圧電体材料ブロック1141のみを分割してもよい。
【0114】
《超音波トランスデューサ200への適用例》
この変形例を第2実施形態の超音波トランスデューサ200へ適用する場合、まず、非導電性材料ブロック2101と、あらかじめ前面電極212となる層および背面電極216となる層が形成された圧電体材料ブロック2141を積層する。次に、非導電性材料ブロック2101における接続面と反対側の面(非導電性材料ブロック2101前面)から、非導電性材料ブロック2101を貫通し、圧電体材料ブロック2141の中途まで至る溝210aを設ける。次に、溝210aそれぞれに対し、導電性膜210bを設け、樹脂210cを充填する。次に、非導電性材料ブロック2101および圧電体材料ブロック2141の積層体に対し行列方向に分割溝を設ける。次に、2次元配列に分割された非導電性音響整合層210の前面に対し、前面基板222を接続し、同様に圧電体214における背面電極216の背面に背面基板220を接続する。
【0115】
《超音波トランスデューサ300への適用例》
この変形例を第3実施形態の超音波トランスデューサ300へ適用する場合、まず、非導電性材料ブロック3101と、あらかじめ前面電極板3121および背面電極316となる層が形成された圧電体材料ブロック3141を積層する。次に、非導電性材料ブロック3101における接続面と反対側の面(非導電性材料ブロック3101前面)から、非導電性材料ブロック3101を貫通し、前面電極板3121の中途まで至る溝310aを設ける。次に、溝310aそれぞれに対し、導電性膜310bを設け、樹脂310cを充填する。次に、非導電性材料ブロック3101および圧電体材料ブロック3141の積層体に対し行列方向に分割溝を設ける。次に、2次元配列に分割された非導電性音響整合層310の前面に対し、前面基板322を接続し、同様に圧電体314における背面電極316の背面に背面基板320を接続する。
【0116】
この変形例が適用された第1実施形態〜第3実施形態の超音波トランスデューサにおいても非導電性音響整合層の導通路の形成の煩雑さを回避することができること、前面電極から前面基板までの導通路を形成することの双方を達成可能となる。
【0117】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
100、200、300 超音波トランスデューサ
102、202、302 音響レンズ
110、210、310 非導電性音響整合層
110a、210a、310a 溝
110b、210b、310b 導電性膜
110c、210c、310a 樹脂
111、211、311 導電性音響整合層
112、212、312 前面電極
114、214、314 圧電体
116、216、316 背面電極
118、218、318 バッキング材
120、220、320 背面基板
122、222、322 前面基板
1101、2101、3101 非導電性材料ブロック
1111、2111、3111 導電性材料ブロック
1141、2141、3141 圧電体材料ブロック
3121 前面電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配置された複数の圧電体と、
前記複数の圧電体それぞれに設けられた電極と、
前記電極側の第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有し、前記圧電体に応じて2次元配置された非導電性音響整合層と、
前記第2の面側に配置された導電性音響整合層と、
前記導電性音響整合層に対して前記非導電性音響整合層と反対側に配置された基板と、を備え、
前記第1の面と前記第2の面との間において前記非導電性音響整合層を貫通し、該第1の面側の前記圧電体の中途、または該第2の面側の前記導電性音響整合層の中途まで至る複数の溝が形成され、
前記電極と前記基板とは、前記溝を介して導通されていること、
を特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項2】
2次元配置された複数の圧電体と、
前記複数の圧電体それぞれに設けられた電極と、
前記電極側の第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有し、前記圧電体に応じて2次元配置された非導電性音響整合層と、
前記第2の面側に配置された基板と、を備え、
前記第1の面と前記第2の面との間において前記非導電性音響整合層を貫通し、該第1の面側の前記圧電体の中途、または該第2の面側の前記基板の中途まで至る複数の溝が形成され、
前記電極と前記基板とは、前記溝を介して導通されていること、
を特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記複数の溝は、前記非導電性音響整合層を貫通し、前記第2の面に接する前記導電性音響整合層の中途まで至るように形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記複数の溝は、前記非導電性音響整合層を貫通し、前記第2の面に接する前記基板の中途まで至るように形成されていること、
を特徴とする請求項2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記複数の溝は、前記非導電性音響整合層および前記電極を貫通し、前記第1の面に接する前記圧電体の中途まで至るように形成されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
2次元配置された複数の圧電体と、
前記複数の圧電体それぞれに設けられた電極と、
前記電極側の第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有し、前記圧電体に応じて2次元配置された非導電性音響整合層と、
前記第2の面側に配置された基板と、を備え、
前記第1の面と前記第2の面との間において前記非導電性音響整合層を貫通し、該第1の面側の前記電極の中途まで至る複数の溝が形成され、
前記電極と前記基板とは、前記溝を介して導通されていること、
を特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記複数の溝は、前記非導電性音響整合層を貫通し、前記第1の面に接する前記電極の中途まで至るように形成されていること、
を特徴とする請求項6に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記複数の溝の内面には、前記第1の面から前記第2の面に至るように導電性材料が設けられていること、
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記複数の溝は、前記2次元配置された前記非導電性音響整合層の直交する2つの方向の一方、または両方に形成され、かつ該非導電性音響整合層の複数に亘って貫通して設けられていること、
を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
非導電性音響整合層に対し、基板、導電性音響整合層または電極が設けられた圧電体を積層することにより積層体を形成する工程と、
前記積層体における積層面と反対側の面から前記非導電性音響整合層を貫通し、積層された前記基板の中途、前記導電性音響整合層の中途または前記圧電体の中途まで至る溝を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項11】
前記積層体は、前記非導電性音響整合層および前記導電性音響整合層からなり、
前記積層体の前記非導電性音響整合層における前記反対側の面に前記圧電体を積層する工程と、
積層された前記積層体および前記圧電体を、直交する2つの方向に分割する工程と、をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項10に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項12】
前記積層体は、前記非導電性音響整合層および前記基板からなり、
前記積層体の前記非導電性音響整合層における前記反対側の面に前記圧電体を積層する工程と、
積層された前記積層体および前記圧電体のうち、少なくとも前記非導電性音響整合層および該圧電体を、直交する2つの方向に分割する工程と、をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項10に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項13】
前記積層体は、前記非導電性音響整合層および前記圧電体からなり、
前記積層体の前記非導電性音響整合層における前記反対側の面に前記導電性音響整合層を積層する工程と、
積層された前記積層体および前記導電性音響整合層を、直交する2つの方向に分割する工程と、をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項10に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項14】
前記積層体は、前記非導電性音響整合層および前記圧電体からなり、
積層された前記積層体を、直交する2つの方向に分割する工程と、
前記積層体の前記非導電性音響整合層における前記反対側の面に前記基板を積層する工程と、をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項10に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項15】
非導電性音響整合層に対し、電極が設けられた圧電体を積層することにより積層体を形成する工程と、
前記積層体における積層面と反対側の面から前記非導電性音響整合層を貫通し、積層された前記圧電体における前記電極の中途まで至る溝を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項16】
前記積層体の前記非導電性音響整合層における前記反対側の面に前記導電性音響整合層を積層する工程と、
積層された前記積層体および前記導電性音響整合層を、直交する2つの方向に分割する工程と、をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項15に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項17】
前記積層体は、前記非導電性音響整合層、前記電極および前記圧電体からなり、
積層された前記積層体を、直交する2つの方向に分割する工程と、
前記積層体の前記非導電性音響整合層における前記反対側の面に前記基板を積層する工程と、をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項15に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項18】
超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサと外部装置との間のインターフェースと、を備え、
前記超音波トランスデューサは、
2次元配置された複数の圧電体と、
前記複数の圧電体それぞれに設けられた電極と、
前記電極側の第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有し、前記圧電体に応じて2次元配置された非導電性音響整合層と、
前記第2の面側に配置された導電性音響整合層と、
前記導電性音響整合層に対して前記非導電性音響整合層と反対側に配置された基板と、を有し、
さらに前記超音波トランスデューサは、前記第1の面と前記第2の面との間において前記非導電性音響整合層を貫通し、該第1の面側前記圧電体の中途、または該第2の面側の前記導電性音響整合層の中途まで至る複数の溝が形成され、かつ前記電極と前記基板とは、該溝それぞれを介して導通されていること、
を特徴とする超音波プローブ。
【請求項19】
超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサと外部装置との間のインターフェースと、を備え、
前記超音波トランスデューサは、
2次元配置された複数の圧電体と、
前記複数の圧電体それぞれに設けられた電極と、
前記電極側の第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有し、前記圧電体に応じて2次元配置された非導電性音響整合層と、
前記第2の面側に配置された基板と、を有し、
さらに前記超音波トランスデューサは、前記第1の面と前記第2の面との間において前記非導電性音響整合層を貫通し、該第1の面側の前記圧電体の中途、または該第2の面側の前記基板の中途まで至る複数の溝が形成され、かつ前記電極と前記基板とは、該溝それぞれを介して導通されていること、
を特徴とする超音波プローブ。
【請求項20】
超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサと外部装置との間のインターフェースと、を備え、
前記超音波トランスデューサは、
2次元配置された複数の圧電体と、
前記複数の圧電体それぞれに設けられた電極と、
前記電極側の第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有し、前記圧電体に応じて2次元配置された非導電性音響整合層と、
前記第2の面側に配置された基板と、を有し、
さらに前記超音波トランスデューサは、前記第1の面と前記第2の面との間において前記非導電性音響整合層を貫通し、該第1の面側の前記電極の中途まで至る複数の溝が形成され、かつ前記電極と前記基板とは、該溝それぞれを介して導通されていること、
を特徴とする超音波プローブ。

【図21】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−156911(P2012−156911A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15941(P2011−15941)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】