説明

超音波プローブおよび超音波検査装置

【課題】2次元アレイプローブに適したpMUT(Piezoelectric Micromachining Ultrasound Transducer)素子の高感度化、広帯域化を実現する。
【解決手段】振動部に外力を加えて共振周波数が調整可能な構成とする。送信時には、各MUT素子に異なる外力を加えることにより広帯域化する。また受信時には、送信からの時間の経過に応じて共振周波数をシフトさせ、エコーの深さに合わせた効果的な周波数帯で受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MUT(Micromachining Ultrasound Transducer)素子を用いる超音波プローブおよび、それを用いた超音波検査装置に関する。特に、生体の体内観察を3次元的に行うための超音波プローブの広帯域化、高感度化に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査装置は、超音波プローブから超音波ビームを被検体に送出し、被検体内部で反射した超音波信号(以後、超音波エコー)を超音波プローブで受信して、被検体内部の情報を得る装置である。この超音波検査装置では、超音波プローブから送信される超音波の周波数が高い程分解能が高くなるが、生体の体内観察を行う場合、超音波の到達深度は、超音波の周波数が高い程浅く、低い程深くなる。そのため、深部から浅部まで高分解能な画像を得るために、広帯域の超音波を送受信可能な超音波プローブが望まれている。
【0003】
超音波プローブは、従来、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックからなる圧電振動子を多数配列して構成される。この構成において、送受信される超音波の帯域を広げる方法として、スライス方向に共振周波数の異なる振動子を配列する構成(例えば、特許文献1)、あるいは、アレイ方向に共振周波数の異なる振動子を配列する構成(例えば、特許文献2)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、このような方法は、振動子が1列に配列された1次元プローブでは実現できるものの、近年、要望の高まっている2次元アレイプローブでは実現が困難である。従来の1次元プローブの構造をそのまま2次元化するには、微細加工、配線、電気的インピーダンスの点で課題があり、そこに、スライス方向に分布を持つ振動子や、厚みの異なる振動子を加えると、難易度がさらに上がり現実的ではない。
【0005】
このような2次元アレイプローブに適した構成として、近年、pMUT(Piezoelectric Micromachining Ultrasound Transducer:圧電型トランスデューサ)素子、および、cMUT(Capacitive Micromachining Ultrasound Transducer:静電容量型トランスデューサ)素子が注目されている。これらのトランスデューサは半導体製造技術を用いて形成されており、アレイ数増加の可能性や回路との集積化の容易性などが長所となっている。一方、このようなトランスデューサは、超音波プローブとして用いる場合、共振周波数の高さ、送受信される周波数帯域の広さ、送信出力および受信感度の大きさ、等を同時に満たすことが難しいという課題を有している。
【0006】
この対策として、pMUTでは、圧電層を構造化することで感度を向上させる構成が提案されている(例えば、特許文献4)。また、cMUTでは、メンブレン表面に凹部を設け、メンブレンの密度を下げることにより、共振周波数の保持と感度向上の両立を狙った構成が提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−121390号公報
【特許文献2】特開2005−277988号公報
【特許文献3】特開2011−15423号公報
【特許文献4】特開2009−182838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したように、特許文献1、2に記載された従来のバルク型構成の振動子は、微細加工、配線、電気的インピーダンス等の課題があり、2次元アレイプローブに適していない。
【0009】
また、特許文献3に記載したcMUTは、受信感度の向上と広帯域特性を実現できるものの、送信素子としてみたときには、出力される超音波の音圧は従来のバルク型構成と比較して大きく劣る。
【0010】
また、特許文献4に記載したpMUT素子は、cMUTより大きな送信出力が期待できるものの、広帯域特性との両立に関しては全く言及されていない。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、MUT素子、特に、pMUTの送信出力、および、受信感度を向上させるとともに、それぞれ広帯域の特性を両立した2次元アレイプローブを提供する。この超音波プローブを用いることにより、広範囲で明瞭な超音波画像が得られる超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の超音波プローブは、複数の単位振動子と、外力発生部とを備え、前記単位振動子は2次元的に配列されており、少なくとも一つの前記単位振動子は、少なくとも、台座部と前記台座部上に形成された振動部と上面に第1の電極が形成され前記振動部の上面に形成された圧電体膜から構成される複数のMUT(Micromachining Ultrasound Transducer)素子を有し、前記複数のMUT素子は、互いに電気的に接続されており、前記台座部には空間が設けられており、前記外力発生部は、前記振動部に外力を加える構成とする。
【0013】
この構成により、単位振動子で送受信される超音波の中心周波数を調整することができる。
【0014】
また、この構成において、超音波の送信時には、同一の単位振動子内の一部のMUT素子に、他のMUT素子とは異なる外力を加えるように制御可能とする。これにより、同一の単位振動子内から、少なくとも2つの中心周波数の異なる超音波が発生し、広帯域の超音波を送信することができる。
【0015】
また、超音波の受信時には、超音波を被検体内に送信した後の時間経過に応じて、振動部に加える外力を制御可能とする。これにより、受信感度の高い周波数帯を、超音波エコーが返ってくる深さに応じて効果的に設定することができ、見かけ上、広帯域かつ高感度の特性が得られる。
【0016】
また、本発明の超音波検査装置は、上記超音波プローブと、上記超音波プローブで検出した信号をデジタル変換する受信部と、上記受信部でデジタル変換された信号を用いてビームフォーミング処理を行う信号処理部と、上記信号処理部で得られた3次元データに基づいて3次元画像を生成する画像処理部と、上記3次元画像を表示する表示部を備えた構成とする。この構成により、広範囲で明瞭な超音波画像が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の超音波プローブおよび超音波検査装置は、送受信する超音波の中心周波数を調整するこができるため、検査する部位の深さなど、用途に合わせて周波数帯を設定することができる。このため、1本のプローブで複数の用途に使用できるため経済的である。
【0018】
また、同一の単位振動子内に含まれる複数のMUT素子を、それぞれ異なる中心周波数の超音波が発生するように制御すると、広帯域の超音波を送信することができる。さらに、受信時には、時間の経過とともに受信感度の高い周波数帯をシフトさせることにより、超音波エコーの返ってくる深さに応じた設定が行え、見かけ上、広帯域かつ高感度の信号検出が可能となる。
【0019】
したがって、本発明にかかる超音波プローブを用いることにより、浅い部位から深い部位まで広範囲で高画質な超音波検査装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる超音波検査装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1にかかる超音波プローブの全体構成を示す構成図
【図3】本発明の実施の形態1にかかる振動子ユニットの構造を示した説明図で、(a)は上面図、(b)はAA断面における側面図
【図4】本発明の実施の形態2にかかる超音波検査装置の概略構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態2にかかる超音波プローブの全体構成を示す構成図
【図6】本発明の実施の形態2にかかる振動子ユニットの構造を示した断面図
【図7】本発明の実施の形態3にかかる振動子ユニットの構造を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1にかかる超音波検査装置10の概略構成を示すブロック図である。超音波検査装置10は、超音波を被検体11に送信するとともに、被検体11の内部で反射した超音波信号を受信する超音波プローブ12と、超音波を送信するための駆動信号を発生して超音波プローブ12に供給するとともに、超音波プローブ12で検出した信号を増幅およびデジタル変換して出力する送受信部13と、送受信部13から出力された信号を用いてデジタルビームフォーミングを行う信号処理部14と、信号処理部14で生成された3次元データに基づいて、3次元画像のレンダリング処理等を施す画像処理部15と、処理を施された画像データに基づいて画像を表示する画像表示部16と、所定のタイミングで駆動信号を発生するように送受信部13を制御する制御部17と、超音波プローブ12の振動子ユニットの背面側の気圧を調節する外力調整部18を有している。また、送受信部13、信号処理部14、画像処理部15、画像表示部16、制御部17は、検査装置本体19に格納されており、超音波プローブ12との間は、複数の信号線のケーブルをひとまとめにして被覆したプローブケーブルで接続されている。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる超音波プローブ12の全体構成を示す構成図である。図2に示すように超音波プローブ12は、プローブケース21の内部に超音波を送受波する振動子ユニット22と、振動子ユニット22の背面の気圧を所定の圧力に保つ圧力室23と、振動子ユニット22内の単位振動子に対して独立に電気信号を入出力するための複数の信号線がプリントされたプリント基板24とを備えている。また、超音波プローブ12は、プローブケーブル25を介して検査装置本体19に接続されている。
【0024】
ここで、外力調整部18は、圧力室23内部の圧力を調整できるように構成されている。
【0025】
また、振動子ユニット22は、複数のpMUT素子からなる単位振動子を2次元的に配列した振動子アレイで構成され、各単位振動子にパルス状の電圧を印加することにより、超音波パルスが発生するように構成されている。このとき、送受信部13から各単位振動子の電極に遅延処理を施された駆動電圧を供給することにより、発生した超音波をフォーカスおよび偏向することができる。この構成により、超音波プローブ12は3次元方向に超音波を送信してセクタ走査が行えるように構成されている。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる振動子ユニット22の構造を示した説明図で、(a)は上面図、(b)はAA断面における側面図である。
【0027】
図3(a)に示すように振動子ユニット22は、例えばpMUT素子31を4つ含む単位振動子32を2次元に配列して構成されている。また各pMUT素子は、図3(b)に示すように、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)等の金属薄膜から成る上部電極33、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック等からなる圧電体膜34、銅(Cu)、クロム(Cr)等の金属膜からなり、下部電極を兼ねた振動板35、剛性を有する素材で構成された台座36で構成されている。台座36の間の空間37は圧力室23と同じ気圧となるように構成され、外力調整部18で圧力室23内の気圧を調整することにより、振動板35の両側に気圧差を生じさせ、振動板35に外力を与えるように構成されている。このように振動板35に外力を与えると、振動子ユニット22の共振周波数を調整することができる。
【0028】
また図3(a)に示すように、pMUT素子31の上部電極33は、単位振動子ごとに連結され、引き出し部33aから個別に図2に示したプリント基板24に接続される。また、振動板35の引き出し部35aも同様にプリント基板24に接続される。この構成により、単位振動子ごとに独立して圧電体膜34に電圧を印加することができる。
【0029】
なお、上記した上部電極33、圧電体膜34、振動板35の素材は一例であり、同様の機能を有する素材であれば、いかなる素材を用いてもよい。
【0030】
次に、このように構成された本実施の形態1の超音波検査装置10の動作について図1〜図3を用いて具体的に説明する。
【0031】
図1、図2において、まず、制御部17が所定のタイミングで駆動信号を発生するように送受信部13を制御し、送受信部13は超音波をフォーカス及び偏向させるための遅延処理を行い、プローブケーブル25内にまとめられた信号線を経由して超音波プローブ12に駆動信号を送信する。
【0032】
遅延処理された駆動信号は、プリント基板24を経由して振動子ユニット22に送られ、各単位振動子から所定の時間差で超音波を発することにより所定の波面が形成され、被検体11内に超音波ビームが送信される。
【0033】
この超音波を送信する動作を、図3を用いて具体的に説明する。まず、送受信部13から振動子ユニット22に駆動信号が送信されると、それに応じて、圧電体膜34を挟むように構成された上部電極33と振動板35の間にパルス状の電圧が印加される。圧電体膜34は、厚み方向に電圧を印加されると、それと直行する方向に伸縮して振動板35を撓ませ、この振動により超音波が発生する。
【0034】
ここで、振動子ユニット22で発生する超音波の中心周波数は、振動板35の剛性(ばね定数)によってきまる。したがって、超音波を送信する際に空間37の気圧を調整して振動板35に外力を与えると、発生する超音波の共振周波数をずらすことができる。本実施例では、用途に合わせて予め送受信する超音波の中心周波数を調整して検査を行う。これにより、周波数帯の異なる複数のプローブを交換しながら検査する必要が無くなり、1本のプローブで複数の検査部位に対応できる。
【0035】
超音波プローブ12から送信された超音波は、被検体11内部の反射組織で反射され、超音波エコーとなって被検体11の表面に伝搬し、振動子ユニット22を振動させる。
【0036】
超音波エコーによって各pMUT素子の振動板35が振動すると、圧電体膜34は平面内で引張、圧縮されて歪を生じ、この歪に応じて圧電体膜34の厚み方向に電圧を発生する。このとき、上部電極33と振動板35の間の電圧を検出することにより、超音波エコーに応じた振動を検出することができる。さらにこのとき、空間37の気圧を調整して特定の周波数帯、一般には送信した超音波の中心周波数帯で振動し易くしておくと、受信感度が向上する。
【0037】
再び図1に戻り、超音波プローブ12で検出された信号は送受信部13に送られ、送受信部13で増幅、およびデジタル変換され、信号処理部14で超音波の送信経路(以後、音線)に沿った領域のビームフォーミング処理が行われる。
【0038】
以上の動作は超音波プローブ12から送信される超音波の音線を被検体内で走査しながら行われ、検査領域全体の情報が演算されて、信号処理部14内の画像メモリに保存される。画像メモリに保存された3次元データは、画像処理部15で3次元画像のレンダリング処理が施され、画像表示部16に画像が表示される。
【0039】
以上に説明したように本実施の形態1の超音波検査装置10は、超音波を被検体内に送受信する際に、用途に応じて中心周波数を自由に設定できる。これにより、被検体内部の浅い部位を見たい場合、あるいは、深い部位を見たい場合にプローブを交換することなく、最適な周波数帯を選択して検査を行うことができる。したがって、1本のプローブで幅広い用途に使用できるので経済的である。
【0040】
なお、本実施の形態では、検出した信号のAD変換を検査装置本体19内の送受信部13で行うとしたが、超音波プローブ12内の単位振動子32の数が多い場合、アナログ信号のまま検出信号を送信しようとすると、多くの信号線が必要となり、プローブケーブル25が太く硬くなってしまう。この結果、ハンドリングが悪くなってしまうため、送受信部13の機能の一部、または全部は超音波プローブ12と一体に設け、デジタル変換した信号をプローブケーブル25で通信するように構成してもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、気圧を利用して振動板35に外力を与える構成としたが、上部電極33と振動板35の間にバイアス電圧を印加して圧電体膜34を歪ませ、振動板35に応力を与えるようにしてもよい。このように構成しても、共振周波数を調整できるので、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0042】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なるのは外力制御部、および超音波プローブ12のみであるため、それ以外の構成要素の説明は省略する。また、実施の形態1と同じ構成要素は同じ番号を付し、説明を省略する。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態2にかかる超音波検査装置の概略構成を示すブロック図である。このブロック図において実施の形態1と異なるのは、検査装置本体19に格納された外力制御部20のみである。この外力制御部20は、超音波プローブ12で超音波を送受信する際に、pMUT素子の振動部へ与える外力を制御するように構成されている。
【0044】
図5は、本発明の実施の形態2にかかる超音波プローブ12の全体構成を示す構成図である。図5に示すように超音波プローブ12は、プローブケース21の内部に超音波を送受波する振動子ユニット22と、振動子ユニット22の共振周波数を調整するための磁歪素子41と、プリント基板24とを備えている。また、超音波プローブ12は、プローブケーブル25を介して検査装置本体19に接続されている。
【0045】
図6は、本発明の実施の形態2にかかる振動子ユニット22の構造を示した断面図である。実施の形態1と同様に、各pMUT素子は、上部電極33、圧電体膜34、振動板35、台座36を備えて構成されており、単位振動子32を2次元的に配列して構成されている。また、上部電極33は、単位振動子ごとに連結され、単位振動子ごとに独立して電圧を印加するように構成されている。
【0046】
振動子ユニット22の構造において、実施の形態1と異なるのは、台座36の間に配置された弾性材料で構成されたバッキング材42、一部のpMUT素子のバッキング材42の背面に配置されたバッキング材43、バッキング材43に連結された磁歪素子41、および基台44を備えて構成されていることである。
【0047】
ここで、バッキング材43は、単位振動子32に含まれるpMUT素子の少なくとも1つに配置され、磁歪素子41が歪むと、バッキング材43、およびバッキング材42を介して所定の振動板に外力が加わるように構成されている。すなわち、本実施の形態では、磁歪素子41の歪の制御により、所定の振動板に外力を与え、共振周波数を制御できるように構成されている。
【0048】
なお、各pMUT素子は同一の構造で構成され、外力が加わらないときに共振周波数が一致するように構成されている。
【0049】
次に、このように構成された本実施の形態の超音波検査装置10の動作について図4〜図6を用いて具体的に説明する。
【0050】
まず、実施の形態1と同様に、検査装置本体19の送受信部13から超音波プローブ12に駆動信号が送信され、振動子ユニット22の各単位振動子にパルス状の電圧が印加される。このとき、圧電体膜34には、厚み方向に電圧が印加され、それと直行する方向に伸縮して振動板35を撓ませ、この振動により超音波が発生する。
【0051】
このとき、外力制御部20から駆動信号を送信して、磁歪素子41の周囲に巻かれたコイルに電流を流すと、磁歪素子41が歪んで変形し、単位振動子32内の少なくとも1つのpMUT素子は振動板35に外力を受ける。外力を受けたpMUT素子は、振動板35の剛性が変わるため、同じ単位振動子内の他のpMUT素子と共振周波数がずれ、中心周波数の異なる超音波を送信することとなる。このため、単位振動子32からは、帯域の広い超音波が送信される。
【0052】
超音波プローブ12から送信された超音波は、被検体11内部の反射組織で反射され、超音波エコーとなって被検体11の表面に伝搬し、振動子ユニット22を振動させる。
【0053】
超音波エコーによって各pMUT素子の振動板35が振動すると、圧電体膜34は平面内で引張、圧縮されて歪を生じ、この歪に応じて圧電体膜34の厚み方向に電圧を発生する。このとき、上部電極33と振動板35の間の電圧を検出することにより、超音波エコーに応じた振動を検出することができる。
【0054】
ところで、超音波プローブ12から送信される超音波は、周波数が高い程高い分解能が得られるが、その到達深度は、周波数が高い程浅く、低い程深くなる。したがって、超音波を被検体内に送信後、短時間で検出される信号は高い周波数成分を有するが、時間と共に検出される信号の高周波成分は低下する。そこで、超音波送信後の時間経過に応じて、振動子ユニット22の受信感度の周波数特性を高い周波数帯から低い周波数帯にずらしていくと、見かけ上、広い周波数帯域で高い受信感度を実現できる。
【0055】
本実施の形態では、外力制御部20により、超音波送信後の時間経過に応じて磁歪素子41を制御して一部のpMUT素子の振動板35に外力を与え、pMUT素子の共振周波数を時間経過に応じてずらす。これにより、受信感度の中心周波数が時間経過に応じて変わり、浅い部位から深い部位まで広範囲で発生する超音波エコーが感度よく検出される。
【0056】
次に、超音波プローブ12で検出された信号は送受信部13に送られ、送受信部13で増幅、およびデジタル変換され、信号処理部14で超音波の音線に沿った領域のビームフォーミング処理が行われる。
【0057】
以上の動作は超音波プローブ12から送信される超音波の音線を被検体内で走査しながら行われ、検査領域全体の情報が演算されて、信号処理部14内の画像メモリに保存される。画像メモリに保存された3次元データは、画像処理部15で3次元画像のレンダリング処理が施され、画像表示部16に画像が表示される。
【0058】
以上に説明したように本実施の形態2の超音波検査装置10は、超音波を被検体内に送信する際に、単位振動子に含まれるpMUT素子の一部の共振周波数をずらすことにより、広帯域の超音波を送信することができる。また、超音波エコーを受信する際には、時間の経過に応じて、受信感度の周波数特性をずらすことにより、浅い部位から深い部位まで広範囲で発生する超音波エコーを高感度に検出することができる。これにより、広範囲で高画質の3次元画像を取得可能な超音波検査装置が実現できる。
【0059】
なお、本実施の形態では、外力の発生に磁歪素子を用いたが、圧電素子など、変形量を制御可能な素子を用いれば同様な効果が得られる。
【0060】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2と異なるのは超音波プローブ12のみであるため、それ以外の構成要素の説明は省略する。また、実施の形態1と同じ構成要素は同じ番号を付し、説明を省略する。
【0061】
図7は、本発明の実施の形態3にかかる振動子ユニット22の構造を示した断面図である。実施の形態2と同様に、各pMUT素子は、上部電極33、圧電体膜34、振動板35、台座36を備えて構成されており、単位振動子32を2次元的に配列して構成されている。また、上部電極33は、単位振動子ごとに連結され、単位振動子ごとに独立して電圧を印加するように構成されている。
【0062】
本実施の形態において、実施の形態2と異なるのは、台座36の間の空間37を挟んで振動板35の反対側に白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)等の金属薄膜から成る電極51が形成された基板52が配置されていることである。ここで、電極51は、少なくとも2系統の電極51a、電極51bからなり、各単位振動子には両方の系統の電極が含まれるように構成されている。また、電極51a、電極51bは、配線53a、配線53bで同じ系統の電極と接続され、系統ごとに独立して電圧を印加できるように構成されている。
【0063】
なお、電極51と振動板35は、少なくとも圧電体膜34が振動しない状態では、離間しており、電極51と振動板35の間に電圧を印加することにより静電気力(静電引力)を生じさせ、振動板35に外力を与えられるように構成されている。また、各pMUT素子は同一の構造で構成され、外力が加わらないときに共振周波数が一致するように構成されている。
【0064】
次に、このように構成された本実施の形態3の超音波検査装置10の動作について図7を用いて具体的に説明する。
【0065】
まず、実施の形態1と同様に、検査装置本体の送受信部から超音波プローブに駆動信号が送信され、振動子ユニット22の各単位振動子にパルス状の電圧が印加される。このとき、圧電体膜34には、厚み方向に電圧が印加され、それと直行する方向に伸縮して振動板35を撓ませ、この振動により超音波が発生する。
【0066】
ここで、電極51に電圧を印加しておくと、電極51と振動板35の間に静電気力が発生する。この静電気力は、両電極間の間隔の2乗に反比例し、印加電圧の2乗に比例して増大するため、印加電圧が大きく、間隔が狭くなるほど振動板35の復元力は小さくなり共振周波数が低周波側にシフトすることとなる。
【0067】
このとき、電極51a、51bに夫々異なる電圧を印加すると、単位振動子32内のpMUT素子からは、夫々中心周波数の異なる超音波が送信される。このため、単位振動子32からは、帯域の広い超音波が送信される。
【0068】
超音波プローブ12から送信された超音波は、被検体11内部の反射組織で反射され、超音波エコーとなって被検体11の表面に伝搬し、振動子ユニット22を振動させる。
【0069】
超音波エコーによって各pMUT素子の振動板35が振動すると、圧電体膜34は平面内で引張、圧縮されて歪を生じ、この歪に応じて圧電体膜34の厚み方向に電圧を発生する。このとき、上部電極33と振動板35の間の電圧を検出することにより、超音波エコーに応じた振動を検出することができる。
【0070】
このとき、電極51a、および、51bに同じ電圧を印加し、さらに、時間の経過とともに、印加する電圧を変化させる。具体的には、超音波送信後の時間経過に応じて、振動子ユニット22の受信感度の周波数特性を高い周波数帯から低い周波数帯にずらすように制御する。このように制御すると、見かけ上、広い周波数帯域で高い受信感度を実現できる。これにより、浅い部位から深い部位まで広範囲で発生する超音波エコーが感度よく検出される。
【0071】
次に、超音波プローブ12で検出された信号は送受信部13に送られ、送受信部13で増幅、およびデジタル変換され、信号処理部14で超音波の音線に沿った領域のビームフォーミング処理が行われる。
【0072】
以上の動作は超音波プローブ12から送信される超音波の音線を被検体内で走査しながら行われ、検査領域全体の情報が演算されて、信号処理部内の画像メモリに保存される。画像メモリに保存された3次元データは、画像処理部で3次元画像のレンダリング処理が施され、画像表示部に画像が表示される。
【0073】
以上に説明したように本実施の形態3の超音波検査装置10は、静電ばね効果によって、振動板35のばね定数を実質的に変化させて、共振周波数を調整することにより、送受信特性を改善させることができる。具体的には、超音波を被検体内に送信する際に、単位振動子に含まれるpMUT素子の一部の共振周波数をずらすことにより、広帯域の超音波を送信することができる。また、超音波エコーを受信する際には、時間の経過に応じて、受信感度の周波数特性をずらすことにより、浅い部位から深い部位まで広範囲で発生する超音波エコーを高感度に検出することができる。
【0074】
さらに、実施の形態2と異なり、すべてのpMUT素子の共振周波数を制御できるので、送信する超音波の帯域の制御、および、受信感度の中心周波数制御をより正確に行うことができ、より広範囲で高画質の3次元画像を取得可能な超音波検査装置が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上本発明によれば、広帯域にわたって高感度な2次元アレイプローブを実現できる。これにより、浅い部位から深い部位まで広範囲で高画質な超音波診断装置を実現できる。
【符号の説明】
【0076】
10 超音波検査装置
11 被検体
12 超音波プローブ
13 送受信部
14 信号処理部
15 画像処理部
16 画像表示部
17 制御部
18 外力調整部
19 検査装置本体
20 外力制御部
21 プローブケース
22 振動子ユニット
23 圧力室
24 プリント基板
25 プローブケーブル
31 pMUT素子
32 単位振動子
33 上部電極
34 圧電体膜
35 振動板
36 台座
37 空間
41 磁歪素子
42 バッキング材
43 バッキング材
51 電極
51a,51b 電極
52 基板
53a,53b 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の体内観察を行うための超音波プローブであって、
複数の単位振動子と、
外力発生部とを備え、
前記単位振動子は2次元的に配列されており、
少なくとも一つの前記単位振動子は、少なくとも、台座部と前記台座部上に形成された振動部と上面に第1の電極が形成され前記振動部の上面に形成された圧電体膜から構成される複数のMUT(Micromachining Ultrasound Transducer)素子を有し、
前記複数のMUT素子は、互いに電気的に接続されており、
前記台座部には空間が設けられており、
前記外力発生部は、前記振動部に外力を加えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記外力発生部が前記振動部に加える力を調節する外力調整部をさらに備え、
体内観察部位の深さに応じて、前記振動部に加える外力を調整可能であることを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記外力発生部が前記振動部に加える力を制御する外力制御部をさらに備え、
超音波の送信時と受信時において、前記振動部に加える力を制御可能であることを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項4】
超音波の受信時において、
前記外力制御部は、超音波を前記被検体内に送信した後の時間経過に応じて、前記振動部に加える外力を制御可能であることを特徴とする請求項3記載の超音波プローブ。
【請求項5】
超音波の送信時において、
前記外力制御部は、同一の単位振動子内の一部のMUT素子に、他のMUT素子とは異なる外力を加えることが可能であることを特徴とする請求項3記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記外力発生部は、前記台座部の空間の気圧を調整する圧力調整器を備え、前記振動部の両側に気圧差を生じさせて外力を与えるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記外力発生部は、前記台座部の空間内に設けられたバッキング材と、前記バッキング材を介して前記振動部に外力を与える磁歪素子を備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記外力発生部は、前記台座部の空間内に設けられたバッキング材と、前記バッキング材を介して振動部に外力を与える圧電素子を備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記外力発生部は、前記台座部の空間を挟んで、前記振動部の反対側に第2の電極を備えることを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記外力発生部は、前記第1の電極と前記振動部の間にバイアス電圧を印加することにより外力を発生させることを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項11】
請求項1〜請求項10に記載の超音波プローブと、前記超音波プローブで検出した信号をデジタル変換する受信部と、前記受信部でデジタル変換された信号を用いてビームフォーミング処理を行う信号処理部と、前記信号処理部で得られた3次元データに基づいて3次元画像を生成する画像処理部と、前記3次元画像を表示する表示部を備えた超音波検査装置。
【請求項12】
超音波プローブで検出した信号をデジタル変換する受信部が、前記超音波プローブ内に配置されていることを特徴とする請求項11記載の超音波検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−93760(P2013−93760A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234879(P2011−234879)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】