説明

超音波プローブのガイド装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内視鏡の監視下で超音波検査を行うための超音波プローブを作動させて、超音波プローブをガイドし、かつ超音波信号を減衰させることなく送受信させるための超音波プローブのガイド装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】医療用等として用いられている超音波検査装置としては、体外皮から超音波信号の送受信を行うように構成したものの他に、体内に挿入して検査すべき部位の近傍位置から超音波の送受信を行う超音波プローブが用いられるようになってきており、また内視鏡の挿入部に設けた鉗子その他の処置具を挿通させるためのチャンネル部に挿通させる等内視鏡と共に体内に挿入することができるようにした極く細径の超音波プローブも開発されている。このように、内視鏡と共に体内に挿入される超音波プローブは、内視鏡の監視下で操作することができることから、その操作性が極めて良好であり、しかも内視鏡による観察と超音波検査とを平行して行うことができるので、検査・診断をより効率的に、しかも精度良く行うことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、超音波検査を行う際においては、超音波プローブに設けた超音波振動子から体内に向けて入射される送信信号及び体内からの反射エコー信号を減衰させないようにするためには、超音波振動子が体内の腔壁から離間して、その間に空気層が介在しないように保持しなければならない。然るに、超音波プローブを内視鏡のチャンネル部に挿通させて、その先端部を導出させたときに、必ずしも超音波振動子を直接体内の腔壁に当接させることができない場合がある。特に、リニア走査等のように超音波振動子を移動させながら走査する場合には、その動きの途中で超音波振動子が体腔壁から離間してしまうおそれがある。さらには、体腔壁近傍位置を検査する場合には、スタンドオフが必要なことから、超音波振動子を体腔壁から離間させなければならないこともある。
【0004】ここで、超音波振動子を超音波伝播媒体中で走査させるようにすれば、超音波信号の減衰を防止することができるか、またはその減衰を最小限度に抑制することができる。この超音波伝播媒体としては、生体内に供給されるという関係等から、水、特に気泡を含まない脱気水が好適に用いられる。然るに、体内に水を供給したとしても、それを当該の体腔内に留めておくことができず、直ちに流れ出すことになり、超音波検査を行っている間中此部に留めておくことは不可能である。超音波振動子を確実に超音波伝播媒体中で走査させるために、バルーンと呼ばれる可撓性容袋を用いることは従来から知られている。このように、バルーンを用いれば、超音波媒体が流出することがなくなるので都合が良いが、前述した如く、内視鏡のチャンネル部を介して挿入される超音波プローブにあっては、細径化の要請から、この超音波プローブの先端に直接バルーンを装着し、このバルーン内に超音波伝播媒体を供給するための配管等を設けることは極めて困難である。このために、バルーンは内視鏡の挿入部に被着させるようにしなければならず、鉗子等の処置具を用いることができないことになり、またバルーンが邪魔になって内視鏡による観察に支障を来すという問題がある。
【0005】本発明は叙上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、超音波プローブを有効にガイドすると共に、超音波振動子を確実に超音波伝播媒体中で、しかも超音波伝播媒体のみが介在する状態超音波信号の送受信を行うことができる超音波プローブのガイド装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前述の目的を達成するために、本発明は、内視鏡の挿入部を挿通可能な可撓性を有するガイドチューブに超音波プローブを挿通させるプローブ挿通路を形成し、このガイドチューブ内における超音波振動子の作動位置に超音波伝播媒体を滞留させるための液溜め部を形成すると共に、超音波送受信信号を透過さるアコースティックウインドーを開口して設ける構成としたことをその特徴とするものである。
【0007】
【作用】このような構成を採用することによって、まず内視鏡の挿入部をガイドチューブの先端から所定量突出させた状態にして体内に挿入し、所定の観察対象部にまで導いて、超音波検査を行うべき位置、即ち超音波振動子の作動位置を特定する。而して、このように照明窓,観察窓等を設けた内視鏡の挿入部をガイドチューブの外に導出させることにより、この内視鏡による観察視野を十分に確保することができる。そこで、内視鏡による監視下でガイドチューブにおけるアコースティックウインドーが超音波検査を行うべき位置となるように調整する。この状態で、ガイドチューブ内に脱気水等の超音波伝播媒体を供給する。ガイドチューブには液溜め部が形成されていることから、この液溜め部に供給された超音波伝播媒体がアコースティックウインドーを設けた部位に滞留させることができる。ここで、この脱気水の供給は、ガイドチューブに脱気水供給路を形成することによって行うこともできるが、例えば内視鏡のチャンネル部または送気送水管を介しても供給することができる。そして、内視鏡により脱気水を供給する場合には、その挿入部をガイドチューブ内に退入させた状態で行う。
【0008】そこで、超音波プローブをプローブ挿通路を介してガイドチューブ内におけるアコースティックウインドーに対面する超音波振動子の作動位置まで導いて、超音波振動子は超音波伝播媒体中に埋没させ、アコースティックウインドーを介して直接体腔壁に対面させる。この状態で、超音波振動子により超音波信号の送受信を行うと、体内に入射される超音波パルス及び体内からの反射エコーの減衰を極度に低く抑制することができる。また、体腔壁直下の位置を検査する場合等のように、スタンドオフが必要な場合には、超音波振動子を体腔壁から浮かせた状態にすることによって、所望のスタンドオフを持たせることも可能となる。
【0009】ここで、超音波プローブはそのコードの部分が可撓性を有していることから、繰り返し操作を行っている間には、曲げ癖等が生じることがある。このために、その先端部本体のアコースティックウインドーと対面する位置への狙撃性が悪くなることがある。然るに、プローブ挿通路をアコースティックウインドーの部位まで延在させておくことによって、このたとえ超音波プローブに曲げ癖があっても、超音波振動子を確実にアコースティックウインドーに対面させることができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1において、1は内視鏡、10は超音波プローブ、20は超音波プローブ10をガイドするためのガイド装置としてのプローブガイドをそれぞれ示す。内視鏡1は、周知のように、術者等が把持して操作を行うための本体操作部2に体腔等に挿入される挿入部3を連設してなるものであって、この挿入部3は体腔等の内部に挿通されて、検査,診断を行うことができるようになっている。従って、この挿入部3の先端部には、周知のように、照明窓,観察窓等が設けられており、また鉗子等の処置具を挿通して、細胞を採取したり、簡単な治療を行ったりするために、挿入部3内に設けたチャンネル部における導出部が開口している。
【0011】超音波プローブ10は、可撓性を有するコード11の先端に先端部本体12を連設してなるものであって、この先端部本体12に超音波振動子13が装着されている。ここで、この超音波振動子13は小型化の要請から単板の振動子を用いて、それを手動操作やモータ等の駆動手段を用いて直線方向に変位させることによって、リニア走査を行わせるものである。
【0012】この超音波プローブ10を超音波検査を行うべき部位にまでガイドするためにプローブガイド20が用いられる。このプローブガイド20は、可撓性があり、滑りの良好な部材で、しかも洗浄性,耐薬品性の優れたフッ素子樹脂等からなるチューブからなるガイド本体21を有し、このガイド本体21は、図2及び図3に示したように、その外径に対して偏心した部位に内視鏡1の挿入部3が挿通可能な内径寸法を有する断面円形の内視鏡挿通路22が形成されると共に、厚肉部には超音波プローブ10を挿通させるためのプローブ挿通路23が形成されている。また、ガイド本体21の厚肉部における先端近傍位置には凹部が形成されており、この凹部が超音波伝播媒体溜め部として、例えば脱気水を溜める脱気水溜め部24となっている。従って、この脱気水溜め部24の位置が超音波振動子13の作動位置となる。そして、プローブ挿通路23の先端はこの脱気水溜め部24に開口している。この脱気水溜め部24の下方位置には、アコースティックウインドーを形成する開口25が設けられている。この開口25は、図4に示したように、基端側、即ちプローブ挿通路23の開口端側の部分が細く、先端側に向かって拡開する台形状に形成されている。なお、このアコースティックウインドーとしての開口23には、超音波の透過性が極めて高いシリコン樹脂等の薄膜により覆うようにしてもよい。
【0013】本実施例はこのように構成されるものであって、次にその作用について説明する。まず、内視鏡1の挿入部3をプローブガイド20のガイド本体21における内視鏡挿通路22内に挿通し、図2に仮想線で示したように、挿入部3をこのガイド本体21の先端部から僅かに覗かせた状態に組み込む。この状態で、挿入部3とプローブガイド20とをアセンブリしたものを患者の体内に挿入して、所定の検査,診断を行うべき部位まで導く。ここで、挿入部3はガイド本体21の先端部から突出しているので、この挿入部3の先端に設けた観察窓による観察視野が妨げられることはなく、その挿入操作及び内視鏡検査に支障を来すことはない。また、挿入部3に設けたチャンネル部を介して鉗子その他の処置具を挿通し、細胞採取や治療等を行うのに格別支障を来すおそれもない。
【0014】そこで、超音波検査を行うに当っては、まず挿入部3を、図2に実線で示したように、プローブガイド20内に引き込んで、超音波検査を行うべき部位を内視鏡1により特定して、この部位にガイド本体21の液溜め部24の部位に設けた開口25を体腔壁に密着させる。この操作は内視鏡1による観察下で行われるので、極めて迅速に、しかも正確に開口25を超音波検査を行うべき部位に配置させることができる。そこで、挿入部3をガイド本体21内に引き込んで、開口25が形成されている位置より基端側に変位させる。この状態で、ガイド本体21におけるプローブ挿通路23内に超音波プローブ10を挿入し、その先端部本体12をこのプローブ挿通路23の先端の開口部分から所定量導出させる。なお、このプローブ挿通路23は超音波プローブ10を挿通するためだけに用いられることから、内視鏡1とプローブガイド20とを組み込む際に、超音波プローブ10も同時にプローブ挿通路23に組み込むようにすることもできる。而して、内視鏡1によって液溜め部24を観察することができるので、超音波プローブ10の先端部本体12に設けた超音波振動子13を最良の位置に配置するように位置調整を行うことができる。
【0015】そこで、超音波プローブ10を押し引き操作することによって、超音波振動子13をリニア走査させるが、この間において、この超音波振動子13が体腔壁から離間して、その間に空気が介在すると、超音波の送受信時において超音波の減衰が大きくなってしまう。この超音波の減衰を防止するためには、超音波振動子13と体腔壁との間に超音波伝播媒体となる液体を介装させる必要がある。このために、超音波伝播媒体として体内に格別影響を与えない水、特に超音波信号の減衰防止という観点から、気泡等がない脱気水を用いる。
【0016】ここで、超音波検査を行うに当っては、患者をベッドの上に寝かせた状態で検査が行われることから、患者に適宜の姿勢を取らせることによって、ガイド本体21はほぼ水平な状態とすることができるようになる。そして、このガイド本体21の先端部には脱気水溜め部24が形成されており、さらにこのガイド本体21に設けた開口23は体腔壁と密着した状態となっていることから、脱気水をこの脱気水溜め部24に供給すると、脱気水は確実に脱気水溜め部24に貯留されることになる。この脱気水の供給は、内視鏡1のチャンネル部を介して供給することができ、またプローブ挿通路23を介して供給することもでき、これ以外でも、例えば観察窓の洗浄を行うための送気送水路により供給することも可能である。
【0017】超音波プローブ10を押し引き操作して、超音波振動子13をリニア走査させる際において、そのリニア走査を行う方向が挿入部3から突出する方向に走査させる場合には、超音波振動子13を開口25の基端側の位置に置き、また引き込む方向に走査させる場合には、開口25の先端側に位置させる。そこで、この超音波プローブ10をその軸線方向に変位させ、この間に超音波振動子13から超音波パルスを開口25を介して体内に向けて入射し、その反射エコーを受信し、この超音波受信信号を超音波観測装置に伝送して、所定の信号処理を行うことによって、超音波画像をモニタ装置に表示することができる。
【0018】而して、超音波振動子13は脱気水中に置かれており、しかもこの超音波振動子13と体腔壁との間には超音波伝播媒体としての脱気水のみしか介在していないので、超音波振動子13を体腔壁に当接させなくとも、超音波送受信信号が減衰するのを可及的に防止することができ、高画質の超音波画像をモニタ装置に表示することができる。また、体腔壁直下の位置を超音波検査する場合には、スタンドオフを持たせるために、超音波振動子13を体腔壁から所定量離間させた状態で超音波の送受信する場合においても、この超音波振動子13を脱気水中に保持することができることから、それと体腔壁との間に空気が介在することがなく、超音波送受信信号の減衰を最小限に抑制することができる。
【0019】ここで、超音波プローブ10のコード11の部分は可撓性を持たせなければならないことから、それが挿入部3の先端に設けた導出部から突出する部分が長くなればなる程、先端部本体12が上下左右に位置ずれを起こす可能性がある。然るに、超音波プローブ10はプローブガイド20のガイド本体21におけるプローブ挿通路23に挿通されて、脱気水溜め部24の直近位置に開口していることから、超音波振動子13を装着した先端部本体12があまり位置ずれを起こすようなことがない。ただし、このプローブ挿通路23の導出口部分から離れると、位置ずれ量がその分だけ大きくなる。従って、開口25を基端側が狭く、先端側に向けて大きくなるような、台形状に形成しておくことによって、開口面積を少なくして、しかも超音波プローブ10における先端部本体12が位置ずれしたとしても、超音波振動子13を確実に開口23に対面する状態に保持することができる。
【0020】次に、図5は本発明の第2の実施例を示すものであって、本実施例にあっては、プローブガイド30におけるガイド本体31における内視鏡挿通部32をガイド本体31の外径と同心円状に形成し、このガイド本体31の内面の一部に内向きの厚肉部を形成し、この厚肉部内に超音波プローブ10を挿通させるプローブ挿通路33を形成している。そして、このプローブ挿通路33の先端部分は閉塞されており、このプローブ挿通路33の先端部分全体が液溜め部となる。また、ガイド本体31におけるこのプローブ挿通路33の先端部分の位置にはアコースティックウインドー35が形成されている。さらに、プローブ挿通路33には注射器等からなる脱気水供給手段36が接続可能となっている。
【0021】このように構成することによっても、前述した第1の実施例と同様に、超音波プローブ10における超音波振動子13を超音波伝播媒体中において、減衰することなく超音波の送受信を行うことができる。また、超音波伝播媒体としての脱気水を内視鏡1を介して供給する場合には、図5に仮想線で示したように、ガイド本体31の先端部分における厚肉部にプローブ挿通路33に通じる導水路37を形成すればよい。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、内視鏡の挿入部及び超音波プローブが挿通可能な可撓性ガイドチューブの先端部における超音波振動子の作動位置に超音波伝播媒体を滞留させることができる液溜め部を形成すると共に、アコースティックウインドーを開口して設ける構成としたので、内視鏡の挿入部と共に、しかも内視鏡とは別個の経路に沿って超音波プローブを有効にガイドすることができ、また超音波検査を行うに当って、超音波振動子と体腔内壁との間には超音波伝播媒体のみが介在されているから、超音波信号を減衰させることなく送受信することができることになり、また、体腔壁直下の位置を検査する場合等、スタンドオフを持たせるに当って、超音波振動子を体腔壁から浮かせて、体腔内壁に対して任意の距離だけさせれることによって、所望のスタンドオフを持たせることができる等の諸効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す超音波プローブのガイド装置を内視鏡及び超音波プローブと共に示す外観図である。
【図2】内視鏡及び超音波プローブを挿通させた状態で示すガイド装置の先端部分の断面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】ガイド本体の先端部分の底面図である。
【図5】本発明の第2の実施例を示す内視鏡及び超音波プローブを挿通させた状態でのガイド装置の先端部分の断面図である。
【符号の説明】
1 内視鏡
10 超音波プローブ
13 超音波振動子
20,30 プローブガイド
21,31 ガイド本体
22,32 内視鏡挿通路
23,33 プローブ挿通路
24 脱気水溜め部
25 開口
35 アコースティックウインドー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内視鏡の挿入部を挿通可能な可撓性を有するガイドチューブに超音波プローブを挿通させるプローブ挿通路を形成し、このガイドチューブ内における超音波振動子の作動位置に超音波伝播媒体を滞留させるための液溜め部を形成すると共に、超音波送受信信号を透過さるアコースティックウインドーを開口して設ける構成としたことを特徴とする超音波プローブのガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2697331号
【登録日】平成9年(1997)9月19日
【発行日】平成10年(1998)1月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−45575
【出願日】平成3年(1991)2月20日
【公開番号】特開平4−263845
【公開日】平成4年(1992)9月18日
【出願人】(000005430)富士写真光機株式会社 (2,231)
【参考文献】
【文献】特開 昭57−168648(JP,A)
【文献】特開 昭57−49437(JP,A)
【文献】特開 昭63−302836(JP,A)