超音波モータの駆動装置
【課題】 本発明は、超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供する。
【解決手段】 電気−機械エネルギー変換素子に交流の駆動信号を供給することにより超音波振動を発生させ、該超音波振動により被駆動体を駆動する超音波モータ駆動装置において、前記超音波振動の周波数f1 より高い周波数f2 を持った交番電圧を、バースト状に断続的に出力するラッチ回路4と、このラッチ回路4からの前記交番電圧を電力増幅するパワーMOS−FET7乃至10と、このパワーMOS−FET7乃至10の出力を積分し前記交番電圧に対応した駆動信号を前記電気−機械エネルギー変換素子に供給する積分手段とを設けたことを特徴とするものである。
【解決手段】 電気−機械エネルギー変換素子に交流の駆動信号を供給することにより超音波振動を発生させ、該超音波振動により被駆動体を駆動する超音波モータ駆動装置において、前記超音波振動の周波数f1 より高い周波数f2 を持った交番電圧を、バースト状に断続的に出力するラッチ回路4と、このラッチ回路4からの前記交番電圧を電力増幅するパワーMOS−FET7乃至10と、このパワーMOS−FET7乃至10の出力を積分し前記交番電圧に対応した駆動信号を前記電気−機械エネルギー変換素子に供給する積分手段とを設けたことを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波振動を駆動源とし、この超音波振動に接する被駆動体を駆動する超音波モータに関する。
【0002】
【従来の技術】電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を印加することにより超音波振動を発生させ、この超音波振動により被駆動体を駆動する超音波モータは、様々な方式のものが提案されている。
【0003】この中の一例として、本願出願人が先に提案し、特開平6−105571号公報により開示された超音波リニアモータがある。
【0004】この超音波リニアモータは、図9に示すように、弾性体41に二つの電気−機械エネルギー変換素子である積層型圧電素子42,43を固定して超音波振動子を構成する。この積層型圧電素子42,43に、互いに90度位相の異なる交番電圧を印加すると、縦振動と屈曲振動が同時に発生する。
【0005】そして、前記縦振動と屈曲振動が合成され楕円振動が生成する位置に摺動部材45を固定し、摺動部材45による楕円振動に物体(被駆動体)46を接触させると、超音波振動子と物体46が互いに相対移動する。
【0006】この超音波リニアモータに印加する交番電圧の振幅を変えて速度を測定した実験の結果を、グラフ化して図10に示す。図10に示す結果から分かるように、この超音波リニアモータの動作速度を調整するには電圧振幅の大きさを変えればよい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、超音波リニアモータに印加する電圧の振幅を制御しようとすると、一般にアナログ方式のパワーアンプが必要になる。アナログ方式のパワーアンプは、発熱が大きく、エネルギー損失が大きい。また、ディジタル回路を使用する場合に比べて、IC回路化するのに多大な費用がかかる。
【0008】本発明は、上記従来の課題を解決し、発熱によるエネルギー損失が小さく、ディジタル処理により超音波モータに印加する電気エネルギーの大きさを調節し、これにより、超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、電気−機械エネルギー変換素子に交流の駆動信号を供給することにより超音波振動を発生させ、該超音波振動により被駆動体を駆動する超音波モータにおいて、前記超音波振動の周波数f1 より高い周波数f2 を持った交番電圧を、バースト状に断続的に出力する手段と、この手段からの前記交番電圧を電力増幅する電力増幅手段と、この電力増幅手段の出力を積分し前記交番電圧に対応した駆動信号を前記電気−機械エネルギー変換素子に供給する積分手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0010】請求項2記載の発明は、請求項1記載の超音波モータの駆動装置において、前記バースト電圧のバーストサイクル数n,周波数f2 ,パルス幅Tのいずれか一つ、又は複数を制御可能としたことを特徴とするものである。
【0011】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の超音波モータの駆動装置において、前記バースト電圧の電圧波形パターンをディジタルメモリ手段に予め記録し、該ディジタルメモリ手段から電圧波形パターンを読み出すことにより、前記バースト電圧を生成することを特徴とするものである。
【0012】請求項1記載の発明によれば、前記超音波振動の周波数f1 より高い周波数f2 を持った交番電圧を、バースト状に断続的に出力し、電力増幅手段により電力増幅した後、積分手段により電力増幅手段の出力を積分し前記交番電圧に対応した駆動信号を前記電気−機械エネルギー変換素子に供給するものであるから、超音波モータに印加する駆動信号の大きさを調節し、これにより、超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0013】請求項2記載の発明は、請求項1記載の超音波モータの駆動装置において、前記バースト電圧のバーストサイクル数n,周波数f2 ,パルス幅Tのいずれか一つ、又は複数を制御可能としたので、超音波モータに印加する駆動信号を多様に変化させて超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0014】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の超音波モータの駆動装置において、前記バースト電圧の電圧波形パターンをディジタルメモリ手段に予め記録し、該ディジタルメモリ手段から電圧波形パターンを読み出すことにより、前記バースト電圧を生成するので、発熱によるエネルギー損失が小さく、ディジタル処理により超音波モータを駆動できる超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】[実施の形態1]
[構成]図1は、本発明の実施の形態1の超音波モータ駆動装置を示すものであり、この超音波モータ駆動装置は、超音波振動子を励振する超音波周波数f1 の256倍の周波数のクロックを発生する発振器1の出力が、8ビットカウンタ2に入力され、8ビットカウンタ2のカウント値は8ビットのパラレル出力となって、波形メモリとしてのROM3のアドレス端子の下位8ビットに入力される。ROM3のアドレスの上位5ビットには、波形選択回路5をラッチ回路6を介して接続している。
【0017】前記ROM3の出力データのうちD0 とD1 の2ビットが、ラッチ回路4によりラッチされる。ラッチ回路4の一方の出力はパワーMOS−FET7,8のゲートに接続される。ラッチ回路4の他方の出力はパワーMOS−FET9,10のゲートに接続される。
【0018】パワーMOS−FET7,8は、それぞれソースが正電位とGNDに接続され、ドレインが互いに接続されて、インダクタ11を介して出力A端子となる。
【0019】同様に、パワーMOS−FET9,10は、それぞれソースが正電位とGNDに接続され、ドレインが互いに接続されて、インダクタ12を介して出力B端子となる。出力A端子及び出力B端子には、超音波モータの圧電素子が接続されるが、この超音波モータに関しては従来技術で述べたものと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0020】[作用]前記発振器1が超音波周波数f1 の256倍の周波数のクロックを発生すると、カウンタ2がこのクロックの立ち上がりエッジをカウントし、そのカウント値を8ビットのパラレルデータとして出力する。カウンタ2は、0から255までカウントすると、再度0になり再びクロックをカウントする。つまり、絶えず発振器1の発生するクロックを0から255の間でカウントし続けることになる。
【0021】前記ROM3には、図2に示すような波形データが書き込まれている。図2はROM3のデータD0 ,D1 を、横軸をアドレスとして、00h からFFh まで8ビット分づつ区切って示したものである。
【0022】前記カウンタ2の出力値をROM3の下位8ビットをアドレスとして入力すると、ROM3は、予め記録された波形データを繰り返し出力する。つまり、発振器1の発生するクロックに同期して、波形データを出力することになる。言い換えると、超音波振動子の駆動周波数f1 より高い周波数である、図2に示すような周波数f2 のパルス波形を、バースト状に周期1/f1 で断続的に発生させることになる。
【0023】また、ROM3の上位5ビットアドレスは、波形選択回路5がラッチ回路6を介して接続され、波形選択回路5で選択した波形パターン(図2に示す各波形パターン)に切り替える。波形選択回路5は、00h から1Fh までデータが切り替えられるものであれば何でもよく、例えばマイクロコンピュータやディップスイッチ等を用いることができる。尚、ラッチ回路6は、アドレスの切り替えをクロックに同期させるために必要になる。
【0024】前記ROM3の出力は、ラッチ回路4により、発振器1の発生するクロックの立ち下がりエッジでラッチされる。ラッチ回路4は、ROM3にアドレスを入力してから出力データが確定する間、データが不定になる時間があるが、この間だけ旧データを保持するために必要になる。
【0025】前記ラッチ回路4の出力で、パワーMOS−FET7,8及びパワーMOS−FET9,10をスイッチングさせることにより電力増幅し、超音波モータを駆動する電力を得る。前記インダクタ11,12と、超音波モータの電気−機械エネルギー変換素子としての圧電素子との組み合わせにより、積分回路が構成される。つまり、一般に圧電素子は図3に示すコイルL,抵抗R,コンデンサCの直列回路と、コンデンサC0との並列接続からなる等価回路で示され、その構造に由来するキャパシタ成分(Cd)を有する。
【0026】このような圧電素子にインダクタLを直列接続すると、図4に示すようになり、図4に破線で示した回路部分が積分回路として動作する。この結果、図5に示すように、前記パワーMOS−FET7,8及びパワーMOS−FET9,10のスイッチング波形のパルス幅Tが小さいときには、出力A,出力Bからの積分波形である圧電素子に印加される電圧波形の振幅は、比較的小さい振幅になる。
【0027】一方、図5に示すように、パルス幅Tが大きいときには出力A,出力Bからの積分波形である圧電素子に印加される電圧波形の振幅は大きくなる。このようにして、波形選択回路5で波形を選択すると、結果的に超音波モータの圧電素子に印加する電圧振幅が変化し、超音波モータの動作速度を変化させることができる。
【0028】また、図2から類推できるように、波形選択回路5の出力の上位1ビットにより、積分波形、即ち、超音波モータに印加する2相の電圧の位相差が+90度と−90度とに変化し、この結果、超音波モータの動作方向を変更することができる。
【0029】[効果]本実施の形態1によれば、前記波形選択回路5で波形を選択して、超音波モータの超音波振動周波数f1 より高い周波数f2 の出力パルスのパルス幅Tを変えることにより、モータの速度を容易に切り替えることが可能となる。
【0030】また、前記波形選択回路5により波形を選択して超音波モータの動作方向も切り替えることができる。尚、本実施の形態1においては、波形メモリとしてROM3を用いたが、SRAMやEEPROM等を用いても同様の構成を取りうることはいうまでもなく、他にも例えばカウンタ2,メモリ3,ラッチ回路4等を1チップのゲートアレイにする等の構成も採用可能である。
【0031】[実施の形態2]
[構成]次に、図6を参照して実施の形態2の構成について説明する。図6に示す超音波モータ駆動装置は、超音波振動子を励振する超音波周波数f1 の256倍の周波数のクロックを発生する発振器21の出力が、8ビットのカウンタ22に入力され、このカウンタ22のカウント値は8ビットのパラレル信号となって、波形メモリとしてのROM23のアドレス端子の下位8ビットに入力される。
【0032】前記ROM23のアドレスの上位5ビットには、マイクロコンピュータ25のパラレル出力をラッチ回路26を介して接統する。ROM23の出力データのうちD0 とD1 の2ビットが後段のラッチ回路24に接続され、ROM23の出力をラッチする。また、ラッチ回路24の一方の出力はパワーMOS−FET27,28のゲートに接続される。
【0033】前記ラッチ回路24の他方の出力は、パワーMOS−FET29,30のゲートに接続される。パワーMOS−FET27,28は、それぞれソースが正電位とGNDに接続され、ドレインが互いに接続されて、インダクタ31を介して出力A端子となる。同様に、パワーMOSFET29,30は、それぞれソースが正電位とGNDに接続され、ドレインが互いに接続されて、インダクタ32を介して出力B端子となる。
【0034】前記マイクロコンピュータ25には、A/D(アナログ−ディジタル)変換器33を接続して、サーミスタ等の温度センサのアナログ値が取り込めるようにしている。また、前記発振器21はその発信周波数をマイクロコンピュータ25の制御で変化させられるような構成とっている。
【0035】また、前記マイクロコンピュータ25には、偏差カウンタ34が接続されている。この偏差カウンタ34は、超音波モータの動作量をパルス列で出力する市販のエンコーダを接続するエンコーダ入力端子と、超音波モータの移動量をパルス列で指令する市販のモータコントローラを接続する指令パルス入力端子を有している。前記出力A端子及び出力B端子には、超音波モータの圧電素子が接続されるが、この超音波モータに関しては従来技術で述べたものと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0036】[作用]一般に、超音波モータは、温度によりその最適駆動周波数が変化する。マイクロコンピュータ25は、A/D変換器33を介してサーミスタ等の温度センサの温度データを取り込み、この温度計測結果から超音波モータの最適駆動周波数f1 を算出し発振器21の発振周波数がf1 ×256になるように周波数をセットする。この動作は一定時間間隔で絶えず実行され、最適な駆動周波数f1 の256倍に発振器21の発振周波数が更新される。
【0037】前記発振器21の発信出力をカウンタ22でカウントしてROM23の下位8ビットのアドレスを発生させ、さらに、5ビットの上位アドレスをマイクロコンピュータ25で発生させて、ラッチ回路24を介してパワーMOS−FET27,28及びパワーMOS−FET29,30をスイッチングする動作は、実施の形態1と同様である。
【0038】前記偏差カウンタ34の指令パルス入力端子から、超音波モータの動作指令パルスが入力されると、偏差カウンタ34に偏差が発生し、これを打ち消すようにマイクロコンピュータ25が5ビットの出力を発生する。これがラッチ回路26を介してROM23の上位アドレスとなり、ROM23に予め記録した図8に示すような波形パターンのデータが出力される。
【0039】ROM23に予め記録した図8に示す波形パターンのデータはパルス幅は固定しておき、パルス数nと、周波数f2(換言するとパルスとパルスの間隔)を変化させている。ROM23で発生する波形でスイッチングされた波形は、実施の形態1と同じようにインダクタ31又は32と超音波モータの圧電素子の組み合わせからなる積分回路により積分される。
【0040】図8の上欄に示すように、パルス数nが少ない時には、積分された波形、即ち、超音波モータに印加される電圧の振幅は小さく、反対にパルス数nが多いときには図8の下欄に示すように、振幅が大きくなる。これにより超音波モータの速度も変化する。
【0041】出力A端子及び出力B端子から超音波モータの駆動電圧が出力されると、超音波モータが動作し、この超音波モータに取り付けられたエンコーダからその動作量に比例したパルスが偏差カウンタ24のエンコーダ入力端子に入力され、偏差カウンタ34の偏差を減算する。また、マイクロコンピュータ25からラッチ回路26を介してROM23への出力は、偏差カウンタ34の偏差の大小によりその値が変化するように予めプログラムされており、いわゆるPID(比例積分微分)動作による演算が行われる。これにより、偏差カウンタ34の指令パルス入力端子に入力された指令パルスにより制御されるサーボ回路が構成される。
【0042】[効果]本実施の形態2により、マイクロコンピュータ25で波形を選択して、パルス数nとパルス周波数f2 を変えることにより、超音波モータの速度と動作方向を切り替えながら動作する、超音波モータの駆動装置(サーボモータドライバ)が実現する。尚、本実施の形態2ではパルス数nとパルス周波数f2 を変えているが、図9に示すようにパルス幅Tも変化させてもよい。
【0043】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0044】請求項2記載の発明によれば、超音波モータに印加する駆動信号を多様に変化させて超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0045】請求項3記載の発明によれば、駆動装置をディジタル回路化でき、発熱によるエネルギー損失が小さく、ディジタル処理により超音波モータを駆動できる超音波モータ駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の超音波モータ駆動装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1のROMの記憶データを示す波形図である。
【図3】本発明の実施の形態1の圧電素子の等価回路図である。
【図4】本発明の実施の形態1の積分回路を示す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態1の超音波モータ駆動装置の出力波形を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2の超音波モータ駆動装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2のROMの記憶データを示す波形図である。
【図8】本発明の実施の形態2の超音波モータ駆動装置の出力波形を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2の超音波モータ駆動装置の出力波形の他例を示す図である。
【図10】従来の超音波モータを示す概略図である。
【図11】従来の超音波モータの駆動電圧と速度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 発振器
2 カウンタ
3 ROM
4 ラッチ回路
5 波形選択回路
7 パワーMOS−FET
8 パワーMOS−FET
9 パワーMOS−FET
10 パワーMOS−FET
21 発振器
22 カウンタ
23 ROM
24 ラッチ回路
25 マイクロコンピュータ
26 ラッチ回路
27 パワーMOS−FET
28 パワーMOS−FET
29 パワーMOS−FET
30 パワーMOS−FET
34 偏差カウンタ
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波振動を駆動源とし、この超音波振動に接する被駆動体を駆動する超音波モータに関する。
【0002】
【従来の技術】電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を印加することにより超音波振動を発生させ、この超音波振動により被駆動体を駆動する超音波モータは、様々な方式のものが提案されている。
【0003】この中の一例として、本願出願人が先に提案し、特開平6−105571号公報により開示された超音波リニアモータがある。
【0004】この超音波リニアモータは、図9に示すように、弾性体41に二つの電気−機械エネルギー変換素子である積層型圧電素子42,43を固定して超音波振動子を構成する。この積層型圧電素子42,43に、互いに90度位相の異なる交番電圧を印加すると、縦振動と屈曲振動が同時に発生する。
【0005】そして、前記縦振動と屈曲振動が合成され楕円振動が生成する位置に摺動部材45を固定し、摺動部材45による楕円振動に物体(被駆動体)46を接触させると、超音波振動子と物体46が互いに相対移動する。
【0006】この超音波リニアモータに印加する交番電圧の振幅を変えて速度を測定した実験の結果を、グラフ化して図10に示す。図10に示す結果から分かるように、この超音波リニアモータの動作速度を調整するには電圧振幅の大きさを変えればよい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、超音波リニアモータに印加する電圧の振幅を制御しようとすると、一般にアナログ方式のパワーアンプが必要になる。アナログ方式のパワーアンプは、発熱が大きく、エネルギー損失が大きい。また、ディジタル回路を使用する場合に比べて、IC回路化するのに多大な費用がかかる。
【0008】本発明は、上記従来の課題を解決し、発熱によるエネルギー損失が小さく、ディジタル処理により超音波モータに印加する電気エネルギーの大きさを調節し、これにより、超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、電気−機械エネルギー変換素子に交流の駆動信号を供給することにより超音波振動を発生させ、該超音波振動により被駆動体を駆動する超音波モータにおいて、前記超音波振動の周波数f1 より高い周波数f2 を持った交番電圧を、バースト状に断続的に出力する手段と、この手段からの前記交番電圧を電力増幅する電力増幅手段と、この電力増幅手段の出力を積分し前記交番電圧に対応した駆動信号を前記電気−機械エネルギー変換素子に供給する積分手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0010】請求項2記載の発明は、請求項1記載の超音波モータの駆動装置において、前記バースト電圧のバーストサイクル数n,周波数f2 ,パルス幅Tのいずれか一つ、又は複数を制御可能としたことを特徴とするものである。
【0011】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の超音波モータの駆動装置において、前記バースト電圧の電圧波形パターンをディジタルメモリ手段に予め記録し、該ディジタルメモリ手段から電圧波形パターンを読み出すことにより、前記バースト電圧を生成することを特徴とするものである。
【0012】請求項1記載の発明によれば、前記超音波振動の周波数f1 より高い周波数f2 を持った交番電圧を、バースト状に断続的に出力し、電力増幅手段により電力増幅した後、積分手段により電力増幅手段の出力を積分し前記交番電圧に対応した駆動信号を前記電気−機械エネルギー変換素子に供給するものであるから、超音波モータに印加する駆動信号の大きさを調節し、これにより、超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0013】請求項2記載の発明は、請求項1記載の超音波モータの駆動装置において、前記バースト電圧のバーストサイクル数n,周波数f2 ,パルス幅Tのいずれか一つ、又は複数を制御可能としたので、超音波モータに印加する駆動信号を多様に変化させて超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0014】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の超音波モータの駆動装置において、前記バースト電圧の電圧波形パターンをディジタルメモリ手段に予め記録し、該ディジタルメモリ手段から電圧波形パターンを読み出すことにより、前記バースト電圧を生成するので、発熱によるエネルギー損失が小さく、ディジタル処理により超音波モータを駆動できる超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】[実施の形態1]
[構成]図1は、本発明の実施の形態1の超音波モータ駆動装置を示すものであり、この超音波モータ駆動装置は、超音波振動子を励振する超音波周波数f1 の256倍の周波数のクロックを発生する発振器1の出力が、8ビットカウンタ2に入力され、8ビットカウンタ2のカウント値は8ビットのパラレル出力となって、波形メモリとしてのROM3のアドレス端子の下位8ビットに入力される。ROM3のアドレスの上位5ビットには、波形選択回路5をラッチ回路6を介して接続している。
【0017】前記ROM3の出力データのうちD0 とD1 の2ビットが、ラッチ回路4によりラッチされる。ラッチ回路4の一方の出力はパワーMOS−FET7,8のゲートに接続される。ラッチ回路4の他方の出力はパワーMOS−FET9,10のゲートに接続される。
【0018】パワーMOS−FET7,8は、それぞれソースが正電位とGNDに接続され、ドレインが互いに接続されて、インダクタ11を介して出力A端子となる。
【0019】同様に、パワーMOS−FET9,10は、それぞれソースが正電位とGNDに接続され、ドレインが互いに接続されて、インダクタ12を介して出力B端子となる。出力A端子及び出力B端子には、超音波モータの圧電素子が接続されるが、この超音波モータに関しては従来技術で述べたものと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0020】[作用]前記発振器1が超音波周波数f1 の256倍の周波数のクロックを発生すると、カウンタ2がこのクロックの立ち上がりエッジをカウントし、そのカウント値を8ビットのパラレルデータとして出力する。カウンタ2は、0から255までカウントすると、再度0になり再びクロックをカウントする。つまり、絶えず発振器1の発生するクロックを0から255の間でカウントし続けることになる。
【0021】前記ROM3には、図2に示すような波形データが書き込まれている。図2はROM3のデータD0 ,D1 を、横軸をアドレスとして、00h からFFh まで8ビット分づつ区切って示したものである。
【0022】前記カウンタ2の出力値をROM3の下位8ビットをアドレスとして入力すると、ROM3は、予め記録された波形データを繰り返し出力する。つまり、発振器1の発生するクロックに同期して、波形データを出力することになる。言い換えると、超音波振動子の駆動周波数f1 より高い周波数である、図2に示すような周波数f2 のパルス波形を、バースト状に周期1/f1 で断続的に発生させることになる。
【0023】また、ROM3の上位5ビットアドレスは、波形選択回路5がラッチ回路6を介して接続され、波形選択回路5で選択した波形パターン(図2に示す各波形パターン)に切り替える。波形選択回路5は、00h から1Fh までデータが切り替えられるものであれば何でもよく、例えばマイクロコンピュータやディップスイッチ等を用いることができる。尚、ラッチ回路6は、アドレスの切り替えをクロックに同期させるために必要になる。
【0024】前記ROM3の出力は、ラッチ回路4により、発振器1の発生するクロックの立ち下がりエッジでラッチされる。ラッチ回路4は、ROM3にアドレスを入力してから出力データが確定する間、データが不定になる時間があるが、この間だけ旧データを保持するために必要になる。
【0025】前記ラッチ回路4の出力で、パワーMOS−FET7,8及びパワーMOS−FET9,10をスイッチングさせることにより電力増幅し、超音波モータを駆動する電力を得る。前記インダクタ11,12と、超音波モータの電気−機械エネルギー変換素子としての圧電素子との組み合わせにより、積分回路が構成される。つまり、一般に圧電素子は図3に示すコイルL,抵抗R,コンデンサCの直列回路と、コンデンサC0との並列接続からなる等価回路で示され、その構造に由来するキャパシタ成分(Cd)を有する。
【0026】このような圧電素子にインダクタLを直列接続すると、図4に示すようになり、図4に破線で示した回路部分が積分回路として動作する。この結果、図5に示すように、前記パワーMOS−FET7,8及びパワーMOS−FET9,10のスイッチング波形のパルス幅Tが小さいときには、出力A,出力Bからの積分波形である圧電素子に印加される電圧波形の振幅は、比較的小さい振幅になる。
【0027】一方、図5に示すように、パルス幅Tが大きいときには出力A,出力Bからの積分波形である圧電素子に印加される電圧波形の振幅は大きくなる。このようにして、波形選択回路5で波形を選択すると、結果的に超音波モータの圧電素子に印加する電圧振幅が変化し、超音波モータの動作速度を変化させることができる。
【0028】また、図2から類推できるように、波形選択回路5の出力の上位1ビットにより、積分波形、即ち、超音波モータに印加する2相の電圧の位相差が+90度と−90度とに変化し、この結果、超音波モータの動作方向を変更することができる。
【0029】[効果]本実施の形態1によれば、前記波形選択回路5で波形を選択して、超音波モータの超音波振動周波数f1 より高い周波数f2 の出力パルスのパルス幅Tを変えることにより、モータの速度を容易に切り替えることが可能となる。
【0030】また、前記波形選択回路5により波形を選択して超音波モータの動作方向も切り替えることができる。尚、本実施の形態1においては、波形メモリとしてROM3を用いたが、SRAMやEEPROM等を用いても同様の構成を取りうることはいうまでもなく、他にも例えばカウンタ2,メモリ3,ラッチ回路4等を1チップのゲートアレイにする等の構成も採用可能である。
【0031】[実施の形態2]
[構成]次に、図6を参照して実施の形態2の構成について説明する。図6に示す超音波モータ駆動装置は、超音波振動子を励振する超音波周波数f1 の256倍の周波数のクロックを発生する発振器21の出力が、8ビットのカウンタ22に入力され、このカウンタ22のカウント値は8ビットのパラレル信号となって、波形メモリとしてのROM23のアドレス端子の下位8ビットに入力される。
【0032】前記ROM23のアドレスの上位5ビットには、マイクロコンピュータ25のパラレル出力をラッチ回路26を介して接統する。ROM23の出力データのうちD0 とD1 の2ビットが後段のラッチ回路24に接続され、ROM23の出力をラッチする。また、ラッチ回路24の一方の出力はパワーMOS−FET27,28のゲートに接続される。
【0033】前記ラッチ回路24の他方の出力は、パワーMOS−FET29,30のゲートに接続される。パワーMOS−FET27,28は、それぞれソースが正電位とGNDに接続され、ドレインが互いに接続されて、インダクタ31を介して出力A端子となる。同様に、パワーMOSFET29,30は、それぞれソースが正電位とGNDに接続され、ドレインが互いに接続されて、インダクタ32を介して出力B端子となる。
【0034】前記マイクロコンピュータ25には、A/D(アナログ−ディジタル)変換器33を接続して、サーミスタ等の温度センサのアナログ値が取り込めるようにしている。また、前記発振器21はその発信周波数をマイクロコンピュータ25の制御で変化させられるような構成とっている。
【0035】また、前記マイクロコンピュータ25には、偏差カウンタ34が接続されている。この偏差カウンタ34は、超音波モータの動作量をパルス列で出力する市販のエンコーダを接続するエンコーダ入力端子と、超音波モータの移動量をパルス列で指令する市販のモータコントローラを接続する指令パルス入力端子を有している。前記出力A端子及び出力B端子には、超音波モータの圧電素子が接続されるが、この超音波モータに関しては従来技術で述べたものと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0036】[作用]一般に、超音波モータは、温度によりその最適駆動周波数が変化する。マイクロコンピュータ25は、A/D変換器33を介してサーミスタ等の温度センサの温度データを取り込み、この温度計測結果から超音波モータの最適駆動周波数f1 を算出し発振器21の発振周波数がf1 ×256になるように周波数をセットする。この動作は一定時間間隔で絶えず実行され、最適な駆動周波数f1 の256倍に発振器21の発振周波数が更新される。
【0037】前記発振器21の発信出力をカウンタ22でカウントしてROM23の下位8ビットのアドレスを発生させ、さらに、5ビットの上位アドレスをマイクロコンピュータ25で発生させて、ラッチ回路24を介してパワーMOS−FET27,28及びパワーMOS−FET29,30をスイッチングする動作は、実施の形態1と同様である。
【0038】前記偏差カウンタ34の指令パルス入力端子から、超音波モータの動作指令パルスが入力されると、偏差カウンタ34に偏差が発生し、これを打ち消すようにマイクロコンピュータ25が5ビットの出力を発生する。これがラッチ回路26を介してROM23の上位アドレスとなり、ROM23に予め記録した図8に示すような波形パターンのデータが出力される。
【0039】ROM23に予め記録した図8に示す波形パターンのデータはパルス幅は固定しておき、パルス数nと、周波数f2(換言するとパルスとパルスの間隔)を変化させている。ROM23で発生する波形でスイッチングされた波形は、実施の形態1と同じようにインダクタ31又は32と超音波モータの圧電素子の組み合わせからなる積分回路により積分される。
【0040】図8の上欄に示すように、パルス数nが少ない時には、積分された波形、即ち、超音波モータに印加される電圧の振幅は小さく、反対にパルス数nが多いときには図8の下欄に示すように、振幅が大きくなる。これにより超音波モータの速度も変化する。
【0041】出力A端子及び出力B端子から超音波モータの駆動電圧が出力されると、超音波モータが動作し、この超音波モータに取り付けられたエンコーダからその動作量に比例したパルスが偏差カウンタ24のエンコーダ入力端子に入力され、偏差カウンタ34の偏差を減算する。また、マイクロコンピュータ25からラッチ回路26を介してROM23への出力は、偏差カウンタ34の偏差の大小によりその値が変化するように予めプログラムされており、いわゆるPID(比例積分微分)動作による演算が行われる。これにより、偏差カウンタ34の指令パルス入力端子に入力された指令パルスにより制御されるサーボ回路が構成される。
【0042】[効果]本実施の形態2により、マイクロコンピュータ25で波形を選択して、パルス数nとパルス周波数f2 を変えることにより、超音波モータの速度と動作方向を切り替えながら動作する、超音波モータの駆動装置(サーボモータドライバ)が実現する。尚、本実施の形態2ではパルス数nとパルス周波数f2 を変えているが、図9に示すようにパルス幅Tも変化させてもよい。
【0043】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0044】請求項2記載の発明によれば、超音波モータに印加する駆動信号を多様に変化させて超音波モータの動作速度を任意に調節可能な超音波モータ駆動装置を提供できる。
【0045】請求項3記載の発明によれば、駆動装置をディジタル回路化でき、発熱によるエネルギー損失が小さく、ディジタル処理により超音波モータを駆動できる超音波モータ駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の超音波モータ駆動装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1のROMの記憶データを示す波形図である。
【図3】本発明の実施の形態1の圧電素子の等価回路図である。
【図4】本発明の実施の形態1の積分回路を示す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態1の超音波モータ駆動装置の出力波形を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2の超音波モータ駆動装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2のROMの記憶データを示す波形図である。
【図8】本発明の実施の形態2の超音波モータ駆動装置の出力波形を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2の超音波モータ駆動装置の出力波形の他例を示す図である。
【図10】従来の超音波モータを示す概略図である。
【図11】従来の超音波モータの駆動電圧と速度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 発振器
2 カウンタ
3 ROM
4 ラッチ回路
5 波形選択回路
7 パワーMOS−FET
8 パワーMOS−FET
9 パワーMOS−FET
10 パワーMOS−FET
21 発振器
22 カウンタ
23 ROM
24 ラッチ回路
25 マイクロコンピュータ
26 ラッチ回路
27 パワーMOS−FET
28 パワーMOS−FET
29 パワーMOS−FET
30 パワーMOS−FET
34 偏差カウンタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気−機械エネルギー変換素子に交流の駆動信号を供給することにより超音波振動を発生させ、該超音波振動により被駆動体を駆動する超音波モータにおいて、前記超音波振動の周波数f1 より高い周波数f2 を持った交番電圧を、バースト状に断続的に出力する手段と、この手段からの前記交番電圧を電力増幅する電力増幅手段と、この電力増幅手段の出力を積分し前記交番電圧に対応した駆動信号を前記電気−機械エネルギー変換素子に供給する積分手段とを設けたことを特徴とする該超音波モータの駆動装置。
【請求項2】 前記バースト電圧のバーストサイクル数n、周波数f2 、パルス幅Tのいずれか一つ、又は複数を制御可能としたことを特徴とする請求項1記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項3】 前記バースト電圧の電圧波形パターンをディジタルメモリ手段に予め記録し、該ディジタルメモリ手段から電圧波形パターンを読み出すことにより、前記バースト電圧を生成することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項1】 電気−機械エネルギー変換素子に交流の駆動信号を供給することにより超音波振動を発生させ、該超音波振動により被駆動体を駆動する超音波モータにおいて、前記超音波振動の周波数f1 より高い周波数f2 を持った交番電圧を、バースト状に断続的に出力する手段と、この手段からの前記交番電圧を電力増幅する電力増幅手段と、この電力増幅手段の出力を積分し前記交番電圧に対応した駆動信号を前記電気−機械エネルギー変換素子に供給する積分手段とを設けたことを特徴とする該超音波モータの駆動装置。
【請求項2】 前記バースト電圧のバーストサイクル数n、周波数f2 、パルス幅Tのいずれか一つ、又は複数を制御可能としたことを特徴とする請求項1記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項3】 前記バースト電圧の電圧波形パターンをディジタルメモリ手段に予め記録し、該ディジタルメモリ手段から電圧波形パターンを読み出すことにより、前記バースト電圧を生成することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波モータの駆動装置。
【図1】
【図3】
【図2】
【図4】
【図6】
【図10】
【図11】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図3】
【図2】
【図4】
【図6】
【図10】
【図11】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開平9−289784
【公開日】平成9年(1997)11月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−101684
【出願日】平成8年(1996)4月23日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【公開日】平成9年(1997)11月4日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)4月23日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
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