説明

超音波便秘改善器用ヘッド

【課題】 通常の温度環境下で或いは温度差のある環境下で長期間使用してもケースの接着面とそれに接着固定した圧電振動子との接着が剥離し難く、両者の間に隙間が生じ難くした。
【解決手段】 樹脂製のヘッドケースの収容部に圧電振動子が設けられた超音波便秘改善器用ヘッドにおいて、圧電振動子を接着固定する収容部の接着面を、接着剤での接着が強固になるように改質し、改質された接着面に圧電振動子の接着面を接着固定した。接着面を水素結合し易い極性基に改質した。収容部の接着面に接着固定された圧電振動子を、ヘッドケースに固定した押し具により接着面に押し付けるようにした。圧電振動子を改質されない接着面に接着固定し、その圧電振動子をヘッドケースに固定した押し具により接着面に押し付けるようにした。押し具をリング状にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は超音波を背中から腰椎付近に当てて便秘を改善する超音波便秘改善器用ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
古来より便秘に悩む人は多く、その改善手段として各種医薬品が開発されている。医薬品以外にも、超音波を利用した便秘改善器(特許文献1)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4722216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の超音波便秘改善器は、超音波を利用して排便を促す機器として、その効果が実証されていることから、今後はさらに広く普及することが期待されている。
【0005】
前記超音波便秘改善器は、超音波振動するヘッドを使用者の第3腰椎から第5腰椎付近に宛がって使用するものである。そのヘッドは超音波振動を発生する圧電振動子が樹脂製のケース内に密着固定されている。ケースの材質は圧電振動子の振動が伝わり易く、耐熱性、抗菌性等に優れたものが適し、それら特性を備えたポリアセタールが使用されている。ポリアセタールはその分子構造上、圧電振動子と接着しにくいため、ヘッドを長期間使用したり、温度差のある環境下で長期間保管したりすると、圧電振動子とケースとの間に隙間が生ずるおそれがある。超音波は空気中を伝搬しにくいという性質があるため、隙間ができると超音波振動が腰椎付近に伝達し難くなる。従って、ケースがポリアセタール以外の樹脂製の場合も圧電振動子との密着性が要求される。
【0006】
本発明の解決課題は、圧電振動子とケースが密着し、長期間の使用によっても圧電振動子とケースの間に隙間が生じ難い超音波便秘改善器用ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波便秘改善器用ヘッドは、請求項1記載のように、樹脂製ケースの収容部内に圧電振動子が密着固定されたものであって、収容部の圧電振動子との密着面を密着し易い性質に改質し、当該改質面に圧電振動子を接着剤で接着して密着固定させたものである。改質方法には各種手段がある。例えば、UV照射による表面処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、プライマー処理、プラズマ処理による改質、イオンプレーティング処理、スパッタリング処理等のいずれの手法で行っても良いが、請求項2記載のように、OH基、カルボニル基等の水素結合し易い極性基が接着面の表面に発生し易い方法或いは吸着し易い方法が好ましい。本発明における改質には、接着面に接着剤との濡れ特性に優れた塗料をコーティングして成膜すること、接着面を微細に粗面化して接着剤の食いつきを良くすること、その他、接着剤による接着面と圧電振動子との接着を強固にする処理の全てを含む。
【0008】
本発明の超音波便秘改善器用ヘッドは、請求項3記載のように、圧電振動子を接着面に押し付け可能な押し具を設けることもできる。この場合、押し具は請求項4記載のように、改質されない接着面に圧電振動子を接着固定し、ヘッドケースに固定された押し具により圧電振動子を接着面に押し付けるようにすることもできる。請求項5記載のように圧電振動子の周縁部のみを押し付け可能な環状(リング)にしたりすることもできる。押し具を使用する場合、圧電振動子は改質した密着面に接着固定することも、改質しない密着面に接着固定することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の超音波便秘改善器用ヘッドは次のような効果がある。
(1)圧電振動子と接着し易いように改質した接着面に圧電振動子を接着するので、圧電振動子の接着が確実且つ強固になり、長期間使用したり、温度差の大きな環境下で保管したりしても、圧電振動子とヘッドケースとの間に隙間が生じ難くなり、隙間発生により振動が伝達しにくくなることがない。
(2)接着面をOH基、カルボニル基等の水素結合し易い極性基に改質すれば接着が一層確実になり、確実な振動伝達を長期間確保できる。
(3)圧電振動子をケースの接着面に押し付ける押し具を設けた場合、圧電振動子と接着面との間に隙間が発生し難くなるため超音波振動の伝達が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】超音波便秘改善器用ヘッドの一例を示すものであって、(a)は収容部の内底面に改質面を形成し、その改質面に圧電振動子を取り付けた場合の分解斜視図、(b)は収容部に圧電振動子を収容した状態を示す斜視図、(c)はその組立て断面図。
【図2】超音波便秘改善器用ヘッドの他例を示すものであって、(a)は収容部に改質面を設けるとともに、その改質面に取り付けた圧電振動子を押圧可能な押し具を設けた場合の分解斜視図、(b)は押し具の拡大図、(c)は押し具の断面図。
【図3】(a)は超音波便秘改善器用ヘッドの断面図、(b)はその部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
本発明の超音波便秘改善器用ヘッドの実施形態の一例について、図1(a)〜(c)を参照して説明する。この超音波便秘改善器用ヘッド(以下「ヘッド」という。)1は、コードCの先端を超音波を発生する便秘改善器本体(図示しない)に取り付けて使用するものであり、超音波振動する圧電振動子2と、圧電振動子2を収容可能な収容部1bを備えたヘッドケース1a(以下「ケース」という。)と、ケース1aの裏面を閉塞する蓋1cを備えており、収容部1bの内面(接着面)3は圧電振動子2が接着しやすい性質に改質してある。
【0012】
前記ケース1aは使用者の第3腰椎と第4腰椎の間や第4腰椎と第5腰椎間の間、第3腰椎〜第5腰椎などに宛がうことができる大きさの楕円形の皿状であり、圧電振動子2を収容するための2つの収容部1bがケース1aの長手方向に間隔をあけて設けられている。収容部1bは円盤状の圧電振動子2を1つずつ収容できるようにケース1aの他の部分よりも一段窪ませて形成してある。収容部1bの内径は圧電振動子2の外形よりも少し大きくし、圧電振動子2を収容部1b内に収容した際に、収容部1bの内周壁面5と圧電振動子2の外周面との間に隙間6ができるようにしてある。ケース1aの開口部にはケース1aの裏面を閉塞する蓋1cがビスやねじなどの固定手段でケース1aの周縁部の止め孔1dに固定されている。
【0013】
前記ケース1aは圧電振動子2の超音波振動が伝達され易い硬質樹脂、例えば、ポリアセタール(市販のポリアセタール:ジュラコン:ポリプラスチック社製品)で成形するのが適する。蓋1cはポリアセタールのほか、ポリプロピレン(PP樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS樹脂)といった各種材質製とすることもできる。ケース1aや蓋1cが軟質材の場合は、圧電振動子2から発振される超音波振動が吸収されて腰椎に伝達されにくくなる。
【0014】
図1(a)〜(c)に示すケース1aの接着面3は表面改質されている。表面改質方法は接着剤(例えば、シアノアクリレート系接着剤、シアノアクリ酸エチル系接着剤、エポキシ系接着剤など)による接着面3と圧電振動子2との接着性(濡れ特性)が向上する手段であればいずれの手段で行ってもよく、UV光を利用した表面処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、プライマー処理、プラズマ処理による改質、イオンプレーティング処理、スパッタリング処理等による成膜処理、濡れ特性に優れた改質剤を接着面3にコーティングして成膜するコーティング処理、OH基やカルボニル基等のように水素結合し易い極性基が接着面3の表面に発生或いは吸着する方法であってもよい。この他に、接着面3を微細に粗面化して接着剤の食いつきを良くすること、その他、接着剤による接着面と圧電振動子との接着を強固にする処理の全ての方法を含む。
【0015】
前記改質処理された接着面3には、収容部1b内に収容された圧電振動子2が接着剤で密着されている。この場合、圧電振動子2の全面が前記のように改質された接着面3に密着されて、圧電振動子2の超音波振動が接着面3に伝達されて、接着面3が超音波振動するようにしてある。接着剤には、例えば、シアノアクリレート系接着剤、シアノアクリ酸エチル系接着剤、エポキシ系接着剤などを用いることができる。接着面3の超音波振動は、ヘッド1を宛がった使用者の第3腰椎と第4腰椎の間、第4腰椎と第5腰椎間の間、第3腰椎〜第5腰椎、それらの付近に伝達される。この振動伝達により前記腰椎やその付近にある便秘改善を促進させる神経が刺激されて便秘が改善されるものと思われる。
【0016】
前記圧電振動子2は超音波信号発振回路(図示しない)で発振された信号が印加されることにより、電気エネルギーを物理的な振動(超音波)に変換する振動子であり、既存のものを使用することができる。圧電振動子2には例えば、共振周波数が1.5MHzと2.0MHzの2つの圧電振動子2を使用することができる。この場合、超音波信号発振回路の発振周波数は1.5MHzと2.0MHzの2つの信号を発振できるようにしておく。超音波信号発振回路の発振周波数は圧電振動子2の共振周波数により決定される。2つの圧電振動子2は同時に振動しても交互に振動してもよい。
【0017】
ケース1aの中央付近には、圧電振動子2の外側(上)に配置した中継基板7がビスやねじなどの固定具によってケース1aに固定してある。中継基板7には圧電振動子2に接続されたリード線8と、コードCの心線10が接続されており、図示しない本体からの信号が心線10から圧電振動子2に加えられると、圧電振動子2が振動してヘッド1が超音波振動するようにしてある。
【0018】
実施形態1の超音波便秘改善器用ヘッドを組み立てるには例えば次のようにする。
(1)収容部1bの接着面3にUV光を照射して接着面3を改質する。
(2)改質された接着面3に接着剤で圧電振動子2の接着面全面を接着固定する。
(3)ケース1aの中央付近に中継基板7を配置し、中継基板7をビスやねじなどの固定具によってケース1aに固定する。中継基板7には圧電振動子2のリード線8と接続コード9の心線10を接続する。
(4)ケース1aの開口部(裏面)に蓋1cを被せ、その蓋1cをビスやねじなどの固定具でケース1aに固定する。
【0019】
(実施形態2)
本発明の超音波便秘改善器用ヘッドの実施形態の他例について、図2及び図3を参照して説明する。この実施形態のヘッド1の基本構造は実施形態1のヘッド1と同様である。異なるのは、収容部1aの改質された接着面3に接着固定された圧電振動子2を、押し具11で接着面3に押し付けたことである。
【0020】
図2(a)〜(c)に示す押し具11は円形リング状(環状)であり、収容部1b内に収まる外径としてある。図3(a)、(b)に示すように、押し具11はその内面(図3(b)では下面)を圧電振動子2の上面に接触させ、外周面11bを接着剤によって内周壁面5に固定することにより圧電振動子2を接着面3に押し付けてある。図2(b)に示すように、押し具11の内周壁には他の部分よりも一段窪んだ切欠き部11aが形成され、その切欠き部11aに指をかけて押し具11を収容部1b内から取り出せるようにしてある。この押し具11は各種材質製とすることができるが、接着を強固なものとするためにはケース1aと同じ材質とするのが好ましい。押し具11は円形リング状に限らず、圧電振動子2を接着面3に押し付けることができれば他の形状であっても良い。
【0021】
実施形態2の超音波便秘改善器用ヘッドを組み立てるには例えば次のようにする。
(1)ケース1aの収容部1b内に圧電振動子2を収容し、圧電振動子2を収容部1aの接着面3に接着固定する。
(2)圧電振動子2の上面外周部にリング状の押し具11を被せ、押し具11を圧電振動子2の上面に接着剤で接着し、押し具11の外周面を収容部1bの内周壁面5に接着剤で固定する。
(3)ケース1aの中央付近に中継基板7を配置し、ビスやねじなどの固定具によって中継基板7をケース1aに固定する。中継基板7には圧電振動子2に接続されたリード線8とコードCの心線10を接続する。
(4)ケース1aの開口部(裏面)に蓋1cを被せ、その蓋1cをビスやねじなどの固定具でケース1aに固定する。
【0022】
(実施形態3)
実施形態3の超音波便秘改善器用ヘッドの基本的構成は実施形態2と同じであり、異なるのは、ヘッド1の収容部1bの接着面3を改質しないことである。
【0023】
(実施形態4)
本発明の超音波便秘改善器用ヘッドでは、圧電振動子2に前記共振周波数と異なる共振周波数のものを使用することもできる。この場合は、超音波信号発振回路の発振周波数も圧電振動子2の共振周波数と同じ周波数の超音波信号を発振できるようにする。
【0024】
圧電振動子2はケース1に1つだけ取付けることも、共振周波数が同じものを2つ以上取付けることも、共振周波数が異なるものを2つ以上取付けることもできる。2つ以上取付ける場合はそれら圧電振動子2を同時に振動させることも時間差を設けて交代で振動させることもできる。
【0025】
ケース1aは使用者の第3腰椎と第4腰椎の間や第4腰椎と第5腰椎間の間、第3腰椎〜第5腰椎、それらの付近に宛がうことができる大きさであれば、収容部1bが一つのものでもよく、外形も円形とか他の形状とすることもできる。
【0026】
ケース1aに押し具11を取付ける場合は、押し具11の外周面11bをビスなどの固定具で取付けることもできる。
【符号の説明】
【0027】
1 超音波便秘改善器用ヘッド
1a ヘッドケース
1b 収容部
1c 蓋
1d (ケースの)止め孔
2 圧電振動子
3 接着面
5 内周壁面
6 隙間
7 中継基板
8 リード線
10 心線
11 押し具
11a 切欠き部
11b (押し具の)外周面
C コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のヘッドケースの収容部に圧電振動子が設けられた超音波便秘改善器用ヘッドにおいて、収容部は圧電振動子が接着される接着面が、接着剤での接着が強固になるように改質され、改質された接着面に圧電振動子の接着面が接着固定されたことを特徴とする超音波便秘改善器用ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の超音波便秘改善器用ヘッドにおいて、接着面が水素結合し易い極性基に改質されたことを特徴とする超音波便秘改善器用ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の超音波便秘改善器用ヘッドにおいて、収容部の接着面に接着固定された圧電振動子が、ヘッドケースに固定された押し具により前記接着面に押し付けられたことを特徴とする超音波便秘改善器用ヘッド。
【請求項4】
樹脂製のヘッドケースの収容部に圧電振動子が設けられた超音波便秘改善器用ヘッドにおいて、収容部の改質されない接着面に接着固定された圧電振動子が、ヘッドケースに固定された押し具により前記接着面に押し付けられたことを特徴とする超音波便秘改善器用ヘッド。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の超音波便秘改善器用ヘッドにおいて、押し具が収容部内の圧電振動子の周縁部を接着面に押し付け可能なリングであることを特徴とする超音波便秘改善器用ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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