説明

超音波処置具および超音波処置装置

【課題】意図する領域に選択的に超音波を作用させる。
【解決手段】周波数が異なる交番電圧が印加されることにより異なる振動モードの超音波振動を発生する柱状の超音波振動子5と、該超音波振動子5に一端が接続され超音波振動子5の長手方向に延びるプローブ3と、超音波振動子5を各振動モードにおける超音波振動の節の位置において保持可能な保持部8とを備える超音波処置具を提供する。また、超音波処置具と、超音波振動子5に周波数の異なる交番電圧を供給する電圧供給部と、該電圧供給部により超音波振動子5に供給される交番電圧を択一的に選択する振動モード選択手段とを備える超音波処置装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波処置具および超音波処置装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体内に挿入したプローブを超音波振動させることにより脂肪を乳化・破砕する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4472759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、プローブの先端部の他にプローブの長手方向の略中心にも超音波振動の腹が存在し、プローブの前方の領域と側方の領域とに超音波が作用する。したがって、プローブの先端部によって脂肪を乳化・粉砕するように構成されているものの、プローブの側方に存在する組織にも超音波が意図せずに作用してしまうという不都合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、意図する領域に選択的に超音波を作用させることができる超音波処置具および超音波処置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、周波数が異なる交番電圧が印加されることにより異なる振動モードの超音波振動を発生する柱状の超音波振動子と、該超音波振動子に一端が接続され前記超音波振動子の長手方向に延びるプローブと、前記超音波振動子を各前記振動モードにおける超音波振動の節の位置において保持可能な保持部とを備える超音波処置具を提供する。
【0007】
本発明によれば、超音波振動子が、印加された交番電圧の周波数に応じた振動モードで超音波振動を発生し、該超音波振動がプローブに伝達されることにより、プローブの近傍の組織を処置することができる。超音波振動子は、その超音波振動の節の位置において保持部により保持されることにより、安定して振動することができる。
【0008】
この場合に、プローブのいずれの位置が超音波振動の腹となって十分に強く超音波振動するかが、振動モードによって異なる。したがって、超音波振動子を駆動する振動モードによって超音波を作用させる領域を選択し、意図する領域に選択的に超音波を作用させることができる。
【0009】
上記発明においては、前記異なる振動モードが、前記超音波振動子が縦振動する縦振動モードと、前記超音波振動子が屈曲振動する屈曲振動モードであることとしてもよい。
このようにすることで、超音波振動子が長手方向に変位する縦振動モードにおいてはプローブの先端において強い超音波振動が発生するので、プローブ先端の前方に配置された組織を効率良く処置するができる。一方、超音波振動子が幅方向に変位する屈曲振動モードにおいては、プローブの途中位置において強い超音波振動が発生するので、プローブの側方に配置された組織を効率良く処置するができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記超音波振動子が、角柱状の弾性体と、該弾性体の一側面に固定された単一の圧電素子と、前記弾性体の他の一の側面に固定された一対の圧電素子とを備え、該一対の圧電素子が、分極方向が互いに逆方向となるように配置されていることとしてもよい。
このようにすることで、縦振動モードにおいては単一の圧電素子に交番電圧を印加して弾性体に1次の縦振動を発生させ、屈曲振動モードにおいては一対の圧電素子に交番電圧を印加することにより弾性体に2次の屈曲振動を発生させることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記保持部が、前記超音波振動子の、前記縦振動モードと前記屈曲振動モードとに共通する節の位置を保持することとしてもよい。
このようにすることで、振動モードを変更した際に保持部によって保持する位置を変更する必要がなく、操作を容易にすることができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記保持部が、前記超音波振動子の前記節の位置を保持する保持位置と解放する解放位置との間で移動可能に設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、振動モードによって節の位置が移動する場合に、各振動モードに応じて保持部により保持する節と解放する節とを容易に変更することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記超音波振動子を収容し、前記節と対応する位置に壁厚方向に貫通するネジ穴が形成された筒状のケースを備え、前記保持部が、前記ネジ穴に締結されるネジを備えることとしてもよい。
このようにすることで、ネジ穴にネジを締めるまたは緩めることにより、超音波振動子の各節の位置をケースに対して容易に保持または解放させることができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記超音波振動子が、角柱状の弾性体と、該弾性体の一の側面に固定された圧電素子とを備え、該圧電素子の前記ネジ穴と対応する位置に、厚さ方向に貫通し前記ネジの先端部が挿入される貫通穴が形成されていることとしてもよい。
このようにすることで、ネジを締めたときに、ネジの先端部が圧電素子を貫通して弾性体の側面に押し当てられる。これにより、ネジの先端によって押圧されることによる圧電素子の破損を防ぐことができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記ネジに設けられ、該ネジと前記超音波振動子との接触を検知して報知する報知手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、ネジにより超音波振動子がケースに対して確実に保持されていること、および、いずれの位置のネジにより超音波振動子が保持されているかを操作者は容易に認識することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記振動モードを示す表示部を備えることとしてもよい。
このようにすることで、現在いずれの振動モードによって超音波振動子が駆動されているかを操作者が容易に識別することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記超音波振動子を収容する筒状のケースを備え、前記保持部が、ボールを半径方向内方に向けて前記ケースに設けられたボールプランジャを備え、前記超音波振動子は、側面の前記節の位置に前記ボールが嵌合する溝が形成されていることとしてもよい。
【0018】
このようにすることで、ケース内で超音波振動子を長手方向に移動させると、溝にボールプランジャのボールが嵌る位置で超音波振動子の位置が保持され、超音波振動が節の位置においてボールプランジャによってケースに保持される。このように超音波振動子をスライドさせる簡便な操作のみでケースに保持させる超音波振動子の位置を容易に変更することができる。
【0019】
また、上記発明においては、前記保持部が、前記超音波振動子の側面の前記節の位置に設けられたバルーンと、該バルーン内と連通し前記超音波振動子の基端側に延びる配管とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、管路を介して流体をバルーンに供給してバルーンを膨張させることにより、バルーンを介して超音波振動子が周辺の組織によって支持され、超音波振動子の位置および姿勢を安定に保持することができる。また、振動モードに応じて膨張させるバルーンの位置を選択することにより、超音波振動子の節の位置を組織に対して保持させることができる。
【0020】
また、上記発明においては、前記プローブの各振動モードにおける腹の位置に、対応する前記振動モードを示す表示が付されていることとしてもよい。
このようにすることで、各振動モードにおいて、プローブのいずれの位置において強い超音波振動が発生するかを容易に認識することができる。
【0021】
また、本発明は、上記に記載の超音波処置具と、前記超音波振動子に前記周波数の異なる交番電圧を供給する電圧供給部と、該電圧供給部により前記超音波振動子に供給される前記交番電圧を択一的に選択する振動モード選択手段とを備える超音波処置装置を提供する。
【0022】
本発明によれば、振動モード選択手段によって一方の振動モードを選択し、選択された振動モードと対応する周波数の交番電圧を電圧供給部が超音波振動子に印加することにより、所望の振動モードで超音波振動子を駆動し、プローブを超音波振動させることによって組織を処置することができる。
この場合に、プローブのいずれの位置が十分に強く超音波振動するかが振動モードによって異なる。したがって、超音波振動子を駆動する振動モードによって超音波を作用させる領域を選択し、意図する領域に選択的に超音波を作用させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、意図する領域に選択的に超音波を作用させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波処置装置の全体構成図である。
【図2】図1の超音波処置具が備える超音波発生部およびプローブの(a)平面図、(b)IIa−IIa断面図、(c)IIb−IIb断面図および(d)IIc−IIc断面図である。
【図3】(a)縦振動モードおよび(b)屈曲振動モードにおける超音波振動子およびプローブの動作を説明する図である。
【図4】図2の超音波振動子が備える圧電素子の変形例を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る超音波処置装置が備える超音波発生部の構成を示す(a)平面図および(b)V−V断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る超音波処置装置が備える超音波発生部の構成を示す(a)平面図および(b)VI−VI断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る超音波処置装置が備える超音波発生部の構成を示す(a)平面図、(b)VIIa−VIIa断面図および(c)VIIb−VIIb断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る超音波処置装置が備える超音波発生部の構成を示す(a)平面図および(b)VIII−VIII縦断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る超音波処置装置が備える超音波振動子の構成を示す斜視図である。
【図10】図9の超音波振動子の屈曲振動モードにおける動作を説明する図である。
【図11】図9の超音波振動子を備える超音波発生部の縦断面図である。
【図12】本発明の第7の実施形態に係る超音波処置装置が備える超音波発生部の構成を示す(a)平面図、(b)側面図および(c)正面図である。
【図13】図12の超音波発生部を備える超音波処置具の(a)縦振動モードおよび(b)屈曲振動モードによる使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の第1の実施形態に係る超音波処置具1および該超音波処置具1を備える超音波処置装置100について図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態に係る超音波処置装置100は、図1に示されるように、超音波を発生する超音波発生部2と体内に挿入される直棒状のプローブ3とを備える超音波処置具1と、該超音波処置具1がケーブル4を介して接続された制御装置(電圧供給部)20とを備えている。
【0026】
超音波発生部2は、図2に示されるように、角柱状の弾性体51と該弾性体51の一側面に固定された平板状の圧電素子52とを備える超音波振動子5と、該超音波振動子5を収容するケース6とを備えている。
弾性体51は、ステンレス、チタン合金、アルミ等の金属からなり、一側面に鏡面処理が施されている。
【0027】
圧電素子52は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる。圧電素子52の表面および裏面には電極としての金属膜が形成され、矢印Pで示される表面側の正極から裏面側の負極へ向かう方向に分極している。圧電素子52の裏面は、エポキシ樹脂等の接着剤によって弾性体51の鏡面処理された一側面に接着されている。圧電素子52に形成された正極と弾性体51の基端面にはそれぞれ配線4a,4bが接続され、これらの配線4a,4bはケーブル4内を通って制御装置20と接続されている。弾性体51の先端面からは該弾性体51の略中心軸に沿ってプローブ3が延びている。該プローブ3は、弾性体51と一体に形成され、弾性体51と同一の材料からなる。
【0028】
ケース6は、硬質な材料からなり、用途に応じた長手方向の寸法を有している。すなわち、プローブ3および超音波発生部2を、例えば、軟性の内視鏡のチャネル内に挿入して使用する場合(内科的な治療に使用する場合)には、湾曲したチャネル内においても十分な操作性が得られるように、十分に短く形成される。一方、超音波発生部2を体外に配置してプローブ3のみを体内に挿入して使用する場合(外科的な治療に使用する場合)には、ケース6の寸法は特に制限されない。
【0029】
ケース6の側壁には、超音波振動子5の4つの側面と対向し超音波振動子5の縦振動の節および屈曲振動の節(後述)と対応する位置に、壁厚方向に貫通したネジ穴7a,7bが形成され、これらのネジ穴7a,7bにはネジ(保持部)8が挿入されている。以下、縦振動の節の位置に設けられたネジ穴7aを第1のネジ穴7a、屈曲振動の節の位置に設けられたネジ穴7bを第2のネジ穴7bともいう。
【0030】
図2(c)に示されるように、周方向に並ぶ4つのネジ8を締めて各ネジ8の先端が超音波振動子5の側面に接触する位置(保持位置)まで移動させることにより、超音波振動子5が節の位置においてケース6に保持される。一方、図2(d)に示されるように、周方向に並ぶ4つのネジ8を緩めて各ネジ8の先端が超音波振動子5の側面から十分に離れる位置(解放位置)まで移動させることにより、超音波振動子5の節の位置がケース6内において解放される。
【0031】
制御装置20は、縦振動モードおよび屈曲振動モードのうち一方を選択する振動モード選択スイッチ(振動モード選択手段)21と、超音波処置具1への交番電圧の出力を操作者による操作に従ってオンオフするフットスイッチ22とを備えている。制御装置20は、振動モード選択スイッチ21により縦振動モードを示す「A」が選択された場合には、超音波振動子5の1次の縦振動の共振周波数と略同一の周波数を有する第1の交番電圧を発生する。一方、制御装置20は、振動モード選択スイッチ21により屈曲振動モードを示す「B」が選択された場合には、超音波振動子5の1次の屈曲振動の共振周波数と略同一の周波数を有する第2の交番電圧を発生する。
【0032】
図中、符号23は、振動モード選択スイッチ21により選択されている振動モードを表示するモード表示窓(表示部)を示している。符号24は、制御装置20からの交番電圧の出力の大きさを調節する出力調節ダイヤルを示している。符号25は、制御装置20からの交番電圧の出力の大きさを表示する出力表示窓を示している。
【0033】
制御装置20から超音波振動子5に配線4a,4bを介して第1または第2の交番電圧が印加されると、圧電素子52が伸縮し、該圧電素子52の伸縮に追従して弾性体51が変形することにより、超音波振動子5が超音波振動を発生する。発生した超音波振動はプローブ3に伝達され、該プローブ3が超音波振動する。図3(a),(b)は、超音波振動子5を縦振動モードおよび屈曲振動モードによりそれぞれ駆動したときの節と腹の位置を示している。
【0034】
縦振動モードにおいては、図3(a)に示されるように、超音波振動子5がその長さ方向に変位させられる。このときに、超音波振動子5の長手方向の略中心位置およびプローブ3の途中位置が縦振動の節N1,N2となり、プローブ3の先端近傍が縦振動の腹L1となる。したがって、プローブ3の超音波振動の変移量は、先端近傍の領域X1において十分に大きくなる。
【0035】
一方、屈曲振動モードにおいては、図3(b)に示されるように、超音波振動子5がその幅方向に変位させられる。このときに、超音波振動子5の両端側およびプローブ3の途中位置が節N3〜N5となり、プローブ3の先端側が腹L2となる。したがって、プローブ3の超音波振動の変移量は、途中位置の側方の領域X2において十分に大きくなる。
【0036】
ここで、各振動モードにおいてプローブ3がより強く超音波振動する位置、すなわち、各振動の腹L1,L2となる位置に、対応する振動モードを示す表示として、例えば、「A」および「B」の文字9が付されていてもよい。また、ネジ穴7a,7bの近傍にも、各ネジ穴7a,7bがいずれの振動モードに対応しているかを示す表示として、「A」および「B」の文字9が付されていてもよい。
【0037】
次に、このように構成された超音波処置装置100の作用について、体内の脂肪を超音波によるキャビテーション効果を利用して分解する場合を例に挙げて説明する。
本実施形態に係る超音波処置装置100を使用して体内の脂肪を分解するには、まず、操作者は、分解すべき脂肪の位置に応じて使用する振動モードを振動モード選択スイッチ21により選択し、選択した振動モードに対応する位置のネジ8を締める。
【0038】
具体的には、プローブ3の挿入方向に対して前方に分解すべき脂肪が存在する場合は、モード切り替えスイッチ21により縦振動モードである「A」を選択し、第1のネジ穴7aに挿入されているネジ8を締める。次いで、プローブ3を体内に挿入し、プローブ3の先端近傍の領域X1に分解すべき脂肪が配されるようにプローブ3の先端を脂肪に近接して配置し、フットスイッチ22を踏む。これにより、制御装置20から超音波振動子5へ第1の交番電圧の印加が開始され、プローブ3の先端部の近傍が振動し、脂肪が分解される。このときに、超音波振動子5は、縦振動の節の位置においてネジ8によりケース6に保持されているので、安定して振動することができる。
【0039】
一方、プローブ3の挿入方向に対して側方に脂肪が存在する場合は、モード切り替えスイッチ21により屈曲振動モードである「B」を選択し、第2のネジ穴7bに挿入されているネジ8を締める。次いで、プローブ3を体内に挿入し、プローブ3の側方の領域X2に分解すべき脂肪が配されるようにプローブ3の略中心位置を脂肪に近接して配置し、フットスイッチ22を踏む。これにより、制御装置20から超音波振動子5へ第2の交番電圧の印加が開始され、プローブ3の略中心位置から該略中心位置の近傍が振動し、脂肪が分解される。このときに、超音波振動子5は、屈曲振動の節の位置においてネジ8によりケース6に保持されているので、安定して振動することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、プローブ3と分解すべき脂肪との位置関係に応じて振動モードを選択することで、脂肪に効果的に超音波を作用させて分解することができるという利点がある。また、縦振動モードにおいてはプローブ3の長手方向の略中心位置が縦振動の節となり、プローブ3の先端近傍に配置された脂肪に選択的に超音波を作用させることができるという利点がある。
【0041】
なお、本実施形態においては、1枚の圧電素子52が用いられることとしたが、これに代えて、図4に示されるように、複数枚(図示する例では4枚)の圧電素子521が用いられることとしてもよい。この構成において、複数枚の圧電素子521は、矢印Pで示される分極方向が一致するように配置される。
このようにしても、超音波振動子501は、上述した圧電素子52を用いた場合と同様に、1次の縦振動と1次の屈曲振動を発生することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態に係る超音波処置装置について図5を参照して説明する。
なお、第2の実施形態および後述する第3〜第7の実施形態については、上述した第1の実施形態と異なる点を主に説明し、第1の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
本実施形態に係る超音波処置装置は、第1の実施形態に係る超音波処置装置100において、超音波発生部2の構成を変更したものであり、図5(a),(b)に示されるように、圧電素子522が、ネジ穴7a,7bに対応する位置に厚さ方向に貫通する貫通穴52aを有している。
【0043】
本実施形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて、ネジ8が締められたときにネジ8の先端は貫通穴52a内を通って弾性体51に押し付けられるので、ネジ8の締め付けによる圧電素子522の破損を防止することができる。
【0044】
次に、本発明の第3の実施形態に係る超音波処置装置について図6を参照して説明する。
本実施形態に係る超音波処置装置は、第1の実施形態に係る超音波処置装置100において、超音波発生部2の構成を変更したものである。すなわち、第1の実施形態においては、ケース6の、屈曲振動の2つの節N3,N4のうち一方に対応する位置に第2のネジ穴7bが形成されているが、これに代えて、本実施形態においては、図6(a),(b)に示されるように、ケース601の、両方の節N3,N4に対応する位置に第2のネジ穴7bが形成されている。
【0045】
本実施形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて、超音波振動子503が屈曲振動する際に、ケース601に対して超音波振動子503をより安定に保持することができる。
【0046】
次に、本発明の第4の実施形態に係る超音波処置装置について図7を参照して説明する。
本実施形態に係る超音波処置装置は、第1の実施形態に係る超音波処置装置100において、超音波発生部2の構成を変更したものである。すなわち、第1の実施形態においては、超音波振動子5をケース6に保持する保持部としてネジ8を採用しているが、これに代えて、本実施形態においては、図7(a)〜(c)に示されるように、ボール10aを半径方向内方に向けてケース602に設けられたボールプランジャ(保持部)10を備え、超音波振動子504の側面の節N1,N3,N4の位置にボール10aが嵌合する溝51aが形成されている。
【0047】
本実施形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて以下の効果を奏する。すなわち、ケース602内において超音波振動子504を長手方向(矢印B参照。)にスライドさせると、ボール10aが溝51aに嵌合する位置で超音波振動子504がケース602に保持され、図中の破線が示す位置に超音波振動子504が位置決めされる。それと同時にプローブの表示Bがケース602の内部に隠れて表示Aだけになるので、操作者は、制御装置20のモード表示窓23を視認しなくとも、破線が示す位置が縦振動モードであるということを認識できる。このように、超音波振動子504をスライドさせてボール10aを嵌合させる溝51aを変更するだけで、超音波振動子504のケース602に保持される位置を容易に変更することができる。
【0048】
次に、本発明の第5の実施形態に係る超音波処置装置について図8を参照して説明する。
実施形態に係る超音波処置装置は、第1の実施形態に係る超音波処置装置100において、超音波発生部2の構成を変更したものである。すなわち、本実施形態において、超音波発生部は、いずれのネジ8によって超音波振動子5が保持されているかを識別する機構を備えている。例えば、図8(a),(b)に示されるように、各ネジ8は、+端子がネジ8の先端に、−端子が弾性体51にそれぞれ接続された電球(報知手段)11を備える。ネジ8が締められてネジ8の先端が圧電素子52に接触すると、その接触が電球11によって検知されて該電球11が点灯するようになっている。
【0049】
本実施形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて以下の効果を奏する。すなわち、操作者は、制御装置20のモード表示窓23を視認しなくとも、超音波振動子5を保持しているネジ8が、振動モードを示す表示「A」および「B」(符号9)のどちらにあるかを確認するだけで、振動モードの状態を容易に認識することができる。また、電球11の点灯により、各ネジ8が十分に締められていることを確認することができる。
【0050】
次に、本発明の第6の実施形態に係る超音波処置装置について図9〜図11を参照して説明する。
実施形態に係る超音波処置装置は、第1の実施形態に係る超音波処置装置100において、超音波振動子5の構成を変更したものである。すなわち、第1の実施形態においては、縦振動と屈曲振動とを共通の圧電素子52を利用して発生させているが、これに代えて、本実施形態においては、図9に示されるように、弾性体51の2つの側面に圧電素子525,526が固定され、一方の側面の圧電素子525により縦振動を発生させ、他方の側面の圧電素子526により屈曲振動を発生させる。ここで、他方の側面には、2次の屈曲振動が発生するように、一対の圧電素子526は、矢印Pで示される分極方向が互いに反対となるように配置される。
【0051】
本実施形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて以下の効果を奏する。すなわち、このように構成された超音波振動子505の圧電素子526に第2の交番電圧を印加すると、図10に示されるように、超音波振動子505には2次の屈曲振動が発生する。ここで、2次の屈曲振動の節N6〜N10のうち、超音波振動子505の略中心位置の節N7は、1次の縦振動の節N1と共通である。したがって、図11に示されるように、この1つの節N7(節N1)と対応する位置にネジ穴7を設け、超音波振動子505の節N7の位置をネジ8で保持することにより、両方の振動モードにおいて超音波振動子505はケース603に安定に保持される。これにより、振動モードの変更に伴うネジ8の操作を不要にし、超音波発生部2を体内に挿入したまま振動モードを変更することができる。
【0052】
次に、本発明の第7の実施形態に係る超音波処置装置について図12および図13を参照して説明する。
実施形態に係る超音波処置装置は、第1の実施形態に係る超音波処置装置100において、超音波発生部2の構成を変更したものである。すなわち、第1の実施形態においては、超音波振動子5をケース6に保持する保持部としてネジ8を採用することとしたが、これに代えて、本実施形態においては、図12(a)〜(c)に示されるように、ケース6を省略し、各振動の節の位置において超音波振動子の側面に設けられたバルーン12を備えている。
【0053】
図12(a)〜(c)には、図9に示される超音波振動子505の節N7の位置にバルーン12を設けた構成を例示している。バルーン12は、プローブ3の節N9(N2)の位置にも設けられていてもよい。各バルーン12には、該バルーン12内と体外に配置される図示しないポンプとの間で流体を搬送するチューブ(配管)13が接続されている。
【0054】
管腔などの比較的狭い空間においてバルーン12内に流体を加圧しながら供給してバルーン12を膨張させることにより、図13(a),(b)に示されるように、超音波振動子505がバルーン12を介して腔壁などの周辺の組織Yに支持される。これにより、超音波振動子505およびプローブ3の節の位置が組織Yに対して保持されるようになっている。図13(a)は、縦振動モードによりプローブ3の前方に配置される脂肪Zを分解する場合、図13(b)は、屈曲振動モードによりプローブ3の側方に配置される脂肪Zを分解する場合を示している。なお、図13(a),(b)において配線4a,4bおよびチューブ13の図示は省略されている。
【0055】
本実施形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて以下の効果を奏する。すなわち、このようにしてケース6を省略して超音波振動子505、バルーン12およびチューブ13から超音波発生部201を構成することにより、超音波発生部201を細径化して管腔のような比較的狭い体腔内にも容易に挿入可能な構成とすることができる。また、膨張させるバルーン12の大きさを調節することにより、超音波発生部201およびプローブ3を所望の姿勢に容易に維持することができる。
【0056】
以上、本発明に係る超音波処置具および超音波処置装置の第1〜第7の実施形態について説明したが、これらの実施形態を適宜組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 超音波処置具
2,201 超音波発生部
3 プローブ
4 ケーブル
4a,4b 配線
5,501〜505 超音波振動子
6,601〜603 ケース
7a,7b ネジ穴
8 ネジ(保持部)
9 文字(表示)
10 ボールプランジャ(保持部)
10a ボール
11 電球(報知手段)
12 バルーン(保持部)
13 チューブ(配管)
20 制御装置(電圧供給部)
21 振動モード選択スイッチ(振動モード選択手段)
22 フットスイッチ
23 モード表示窓
24 出力調節ダイヤル
25 出力表示窓
51,511 弾性体
51a 溝
52,521〜526 圧電素子
52a 貫通穴
100 超音波処置装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が異なる交番電圧が印加されることにより異なる振動モードの超音波振動を発生する柱状の超音波振動子と、
該超音波振動子に一端が接続され前記超音波振動子の長手方向に延びるプローブと、
前記超音波振動子を各前記振動モードにおける超音波振動の節の位置において保持可能な保持部とを備える超音波処置具。
【請求項2】
前記異なる振動モードが、前記超音波振動子が縦振動する縦振動モードと、前記超音波振動子が屈曲振動する屈曲振動モードである請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項3】
前記超音波振動子が、角柱状の弾性体と、該弾性体の一の側面に固定された単一の圧電素子と、前記弾性体の他の一の側面に固定された一対の圧電素子とを備え、
該一対の圧電素子が、分極方向が互いに逆方向となるように配置されている請求項2に記載の超音波処置具。
【請求項4】
前記保持部が、前記超音波振動子の、前記縦振動モードと前記屈曲振動モードとに共通する節の位置を保持する請求項3に記載の超音波処置具。
【請求項5】
前記保持部が、各前記超音波振動子の前記節の位置を保持する保持位置と解放する解放位置との間で移動可能に設けられている請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項6】
前記超音波振動子を収容し、前記節と対応する位置に壁厚方向に貫通するネジ穴が形成された筒状のケースを備え、
前記保持部が、前記ネジ穴に締結されるネジを備える請求項5に記載の超音波処置具。
【請求項7】
前記超音波振動子が、角柱状の弾性体と、該弾性体の一の側面に固定された圧電素子とを備え、
該圧電素子の前記ネジ穴と対応する位置に、厚さ方向に貫通し前記ネジの先端部が挿入される貫通穴が形成されている請求項6に記載の超音波処置具。
【請求項8】
前記ネジに設けられ、該ネジと前記超音波振動子との接触を検知して報知する報知手段を備える請求項6または請求項7に記載の超音波処置具。
【請求項9】
前記振動モードを示す表示部を備える請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項10】
前記超音波振動子を収容する筒状のケースを備え、
前記保持部が、ボールを半径方向内方に向けて前記ケースに設けられたボールプランジャを備え、
前記超音波振動子は、側面の前記節の位置に前記ボールが嵌合する溝が形成されている請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項11】
前記保持部が、前記超音波振動子の側面の前記節の位置に設けられたバルーンと、該バルーン内と連通し前記超音波振動子の基端側に延びる配管とを備える請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項12】
前記プローブの各振動モードにおける腹の位置に、対応する前記振動モードを示す表示が付されている請求項1に記載の超音波処置具。
【請求項13】
請求項1に記載の超音波処置具と、
前記超音波振動子に前記周波数の異なる交番電圧を供給する電圧供給部と、
該電圧供給部により前記超音波振動子に供給される前記交番電圧を択一的に選択する振動モード選択手段とを備える超音波処置装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−99418(P2013−99418A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244619(P2011−244619)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】