説明

超音波口腔洗浄器

【課題】超音波振動による口腔内の洗浄と水流による口腔内の洗浄とを、同時に実行する超音波口腔洗浄器を提供する。
【解決手段】超音波口腔洗浄器が、ヘッド部3を備え、該ヘッド部3の内部に、水圧調整された水が導入される空洞部6を設け、該空洞部6が有する実質的に平行な2つの面のうち、一方の面6Aに接するように、該空洞部6に導入された水に、該水において超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数を有する超音波振動を伝達させる超音波振動子8を設け、該空洞部6の他方の面6Bの近傍に、該超音波振動が伝達された水を口腔内に直接噴出する噴出部7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波口腔洗浄器に関し、特に、超音波振動による口腔内の洗浄と水流による口腔内の洗浄とを、同時に実行する超音波口腔洗浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先端部分に超音波素子を埋め込み、植毛したブラシを持つ超音波歯ブラシがあった(例えば、下記の特許文献1参照)。該超音波歯ブラシは、超音波振動でブラシを微細に振動させて口腔内の食べ滓や歯垢などの除去を行う。また、従来、先端部のノズルから水を噴出して口腔内を洗浄する口腔洗浄器があった。該口腔洗浄器は、上記噴出された水の水圧によって、口腔内の食べ滓などを除去する。なお、20kHz〜60kHz程度の比較的低い周波数を放射することで、口腔などの汚れを除去する超音波洗浄装置が提案されている(例えば、下記の特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−57534号公報
【特許文献2】特開2006−75775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来技術のうち、特許文献1に記載された、植毛したブラシを持つ超音波歯ブラシは、ブラシが消耗品であり、定期的に交換する必要があるために、交換費用の発生があるという問題があった。また、特許文献2の超音波洗浄装置は、比較的低い周波数(例えば、20kHz〜60kHz程度の周波数)の超音波振動を発生させ、該水にキャビテーションを生じさせることにより洗浄効果を得ようとしており、後述する超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数を有する超音波振動を発生させる本発明とは異なる作用を用いた口腔洗浄装置である。
【0004】
一方、噴出された水の水圧を用いて口腔内を洗浄する口腔洗浄器は、口腔内の付着物を除去することができるが、歯を磨く効果は小さい。従って、従来、十分な歯磨きと洗浄とを行うためには、上述したような超音波歯ブラシと口腔洗浄器とを別々に使用しなくてはならず、手間が掛かる。
【0005】
ここで、本発明者の検討によれば、水に超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数を有する超音波振動を伝達させて、該超音波振動が伝達された水を口腔内に噴出させる口腔洗浄器が考えられる。このような口腔洗浄器を用いて、超音波振動が伝達された水を口腔内に噴出して歯磨きを行うことにより、超音波振動による口腔内の洗浄と水流による口腔内の洗浄とを同時に実行することができ、かつ、極めて高い洗浄効果を奏することができる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、超音波振動による口腔内の洗浄と水流による口腔内の洗浄とを、同時に実行する超音波口腔洗浄器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波口腔洗浄器は、超音波振動を発生させる手段を、空洞部が有する平行な2つの面のうちの一方の面に設けて、該超音波振動を発生させる手段から比較的高い周波数の超音波振動を発生させて、上記空洞部内の水に該超音波振動を伝達させる。また、本発明の超音波口腔洗浄器は、該超音波振動が伝達された水を、上記空洞部が有する他方の面の近傍に設けられた噴出部から口腔内に直接噴出する。
【0008】
すなわち、本発明は、超音波口腔洗浄器であって、ヘッド部を備え、該ヘッド部の内部に、水圧調整された水が導入される空洞部を設け、該空洞部は、互いに実質的に平行な2つの面を有し、該空洞部に導入された前記水に、該水において超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数を有する超音波振動を伝達させる超音波振動発生部を、該空洞部が有する前記2つの面のうち一方の面に接するように設け、該空洞部が有する他方の面の近傍に、該超音波振動が伝達された水を口腔内に直接噴出する噴出部を設けたことを特徴とする超音波口腔洗浄器である。
【0009】
好ましくは、本発明の超音波口腔洗浄器において、前記超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数が、1MHz以上である。
【0010】
好ましくは、本発明の超音波口腔洗浄器において、前記噴出部が、複数の穴を備え、前記複数の穴のうち、前記噴出部の中心近傍に設けられた穴の大きさが、該穴とは異なる他の穴の大きさより大きい。
【0011】
好ましくは、本発明の超音波口腔洗浄器であって、前記噴出部を構成する面が所定の曲率の湾曲形状を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の超音波口腔洗浄器は、空洞部に導入された水に、超音波振動発生部によって超音波振動を伝達し、該超音波振動が伝達された水を口腔内に直接噴出する。従って、本発明の超音波口腔洗浄器によれば、超音波振動による口腔内の洗浄と水流による口腔内の洗浄とを、同時に実行することが可能となる。また、本発明の超音波口腔洗浄器は、超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数を有する超音波振動が伝達された水を口腔内に噴出するので、極めて高い洗浄効果が得られる。
【0013】
また、本発明の超音波口腔洗浄器では、噴出される水に伝達される超音波振動が有する周波数は超音波振動の加速度エネルギーが利用できる高い周波数であるので、超音波振動発生部の大きさが比較的小さくてよい。このことから、該超音波振動発生部を、空洞部が有する実質的に平行な2つの面のうち一方の面に接して配置する構成を採っている。また、該超音波振動が伝達された水を口腔内に噴出する噴出部が、該空洞部が有する他方の面の近傍に設けられているので、超音波振動の直進性が確保される。その結果、超音波振動による口腔内の洗浄効果を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の超音波口腔洗浄器が備えるヘッド部は、消耗品であるブラシ等を備えておらず、超音波振動が伝達された水を噴出部から直接口腔内に噴出する。従って、本発明の超音波口腔洗浄器によれば、ヘッド部を定期的に交換する必要がなくなる。
【0015】
また、本発明の超音波口腔洗浄器が備える噴出部が比較的平らな面を備えるようにすれば、噴出部から口腔内に対して水を噴出したときに、噴出する水の方向が揃って、噴出部の面と、歯及び歯茎との間に水が流れる。従って、噴出する水に伝達された超音波振動の加速度エネルギーを効果的に歯及び歯茎に伝えることが可能となる。更に、噴出部の噴出面からの水圧と上記歯及び歯茎との間の水の流れとによって、噴出面と歯及び歯茎との間の間隙を容易に保つことができる(ホバークラフト効果を生じさせる)。その結果、本発明の超音波口腔洗浄器の使用時に、ヘッド部をスムーズに移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の超音波口腔洗浄器の外観の一例を示す図である。図1に示す超音波口腔洗浄器は、先端部1と柄部2とを備える。先端部1中の3はヘッド部、4は首部、5は嵌合部である。また、柄部2中の11は水圧調整器、13はチューブ嵌合部である。柄部2とチューブ嵌合部13を介して接続されたチューブ14の先は、図示を省略する電動ポンプを備えた水タンク又は水道の蛇口に接続されており、該チューブ14を通じて柄部2内に水圧がかかった水が送り込まれる。先端部1と柄部2とは嵌合部5で切り離すことが可能なように構成されている。
【0018】
図2は、図1に示す超音波口腔洗浄器の断面図の例である。図2では、超音波口腔洗浄器を先端部1と柄部2とに分離した状態の断面を示している。ヘッド部3の内部には、空洞部6が設けられている。30は、例えば、樹脂等で構成される固体部である。空洞部6は、互いに実質的に平行な2つの面6A、6Bを有する。
【0019】
空洞部6の一方の面6Aに接するように超音波振動子8が設けられている。具体的には、超音波振動子8が有する面と面6Aとが接している。超音波振動子8は、チューブ14、柄部パイプ16、及び先端部パイプ15を通じて空洞部6に導入される水に、該水において超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数を有する超音波振動を伝達(又は重畳)させる。空洞部6の上記一方の面6Aに対向する他方の面6Bの近傍には、上記超音波振動が伝達された水を口腔内に直接噴出する噴出部7が設けられている。すなわち、ヘッド部3はブラシ等を備えておらず、上記水をブラシ等を介することなく噴出部7から直接口腔内に噴出する。噴出部7は、比較的平らな面(噴出面)を備える。また、噴出部7は、上記水を噴出するための穴を備える。なお、図中の18は、先端部1と柄部2とを電気的に接続するコネクタである。
【0020】
柄部2は、超音波発振器9、充電式電池10、電源スイッチ12、水圧調整器11、柄部パイプ16を備える。電源スイッチ12がオンになると、充電式電池10から超音波発振器9に対して電源が投入される。該電源の投入によって超音波発振器9と超音波振動子8とで構成される超音波発振回路により超音波振動子8を超音波振動させる。超音波振動子8に水圧調整器11は、柄部パイプ16を流れる水の水圧(又は水量)を調整する。柄部パイプ16は、嵌合部5において先端部1の先端部パイプ15に連通する。
【0021】
図2に示す超音波口腔洗浄器の動作について説明する。チューブ14から送り込まれた水は、チューブ嵌合部13、柄部パイプ16を通り、水圧調整器11によって水圧調整される。該水圧調整された水は、嵌合部5及び先端部パイプ15を通って、空洞部6に送り込まれる。超音波振動子8が、空洞部6に送り込まれた水において超音波振動の加速度エネルギーが利用できる高い周波数(例えば、1MHz以上の周波数)を有する超音波振動を発生し、該発生した超音波振動を上記水に伝達させる。本発明の一実施形態によれば、上記所定の周波数は、1.6MHzである。
【0022】
上記加速度エネルギーについて説明する。1MHz以上の高い周波数を有する超音波振動を水に伝達すると、該水に大きな加速度が得られる。該得られた加速度によるエネルギーが加速度エネルギーである。上記得られる加速度の大きさは、以下の式1から求めることができる。
【0023】
a=(2πf)2 ε ・・・式1
式1において、aは加速度、fは周波数、εは洗浄媒体(水)の変位である。式1を見ると、周波数の高い超音波は低い超音波と比較して、洗浄媒体(水)に極めて大きな加速度を与えることができることがわかる。
【0024】
なお、超音波洗浄に関する従来技術として、比較的低い周波数(例えば、20kHz〜60kHz程度の周波数領域の周波数)を有する超音波振動を水に伝達してキャビテーションによる気泡を発生させ、該気泡の破裂時のエネルギーを利用して口腔内の洗浄を行う方法が提案されている。一方、本発明は、例えば、1MHz以上の高い周波数を有する超音波振動を水に伝達させるので、該水にキャビテーションを発生させない。言い換えると、本発明の超音波口腔洗浄器が水に伝達する超音波振動の加速度エネルギーが利用できる高い周波数では、式1に示されるように小さな変位ε、すなわち小さな超音波振動の出力で十分な加速度エネルギーが得られるため、水にキャビテーションを発生させない。すなわち、本発明は、キャビテーションによるエネルギーを利用する超音波洗浄技術ではなく、上述した加速度エネルギーを利用する超音波洗浄技術である。本発明の超音波口腔洗浄器は、加速度エネルギーが利用できる高い周波数の超音波振動が伝達された水を口腔内に噴出することによって、大きな洗浄作用を奏する。
【0025】
次に、噴出部7から、上記超音波振動が伝達された水が口腔内に直接噴出される。従って、本発明の超音波口腔洗浄器によれば、上記噴出された水に伝達されている超音波振動によって口腔内が洗浄され(例えば、歯垢が除去され)、同時に、該水の水流によって口腔内が洗浄される。
【0026】
特に、周知のように、超音波振動は、波動の進行方向について直進性を有しているが、超音波振動子8が、比較的高い周波数の超音波振動を発生させるので、該超音波振動の波動の直進性が進む。また、図2に示すように、水に該超音波振動を伝達させる超音波振動子8が、面6Aに接するように設けられ、また、該超音波振動が伝達された水を噴出する噴出部7が面6Bの近傍に設けられていることから、上記波動の直進性が進んだ超音波振動を、噴出部7からの該水の噴出を通じて、超音波振動の発生元である超音波振動発生部(超音波振動子8)から該超音波振動の出力先である口腔内に対して真っ直ぐに向かうようにすることができる。その結果、超音波振動による口腔内の洗浄効果を向上させることができる。
【0027】
また、本発明の超音波口腔洗浄器が備えるヘッド部3は、消耗品であるブラシ等を備えておらず、超音波振動が伝達された水を噴出部7から直接口腔内に噴出するので、ヘッド部3を定期的に交換する必要がない。
【0028】
また、上述したように、噴出部7は比較的平らな面を備えるので、噴出部7から口腔内に対して水を噴出したときに、噴出する水の方向が揃って、噴出部7の面と、歯及び歯茎との間に水が流れる。従って、噴出する水に伝達された超音波振動の加速度エネルギーを効果的に歯及び歯茎に伝えることが可能となる。更に、噴出部7の噴出面からの水圧と上記水の流れとによって、噴出面と歯及び歯茎との間の間隙を容易に保つことができる(いわば、ホバークラフト効果を生じさせる)。その結果、本発明の超音波口腔洗浄器の使用時に、ヘッド部3をスムーズに移動させることができる。
【0029】
図3は、噴出部の構成の一例を示す図である。本発明の超音波口腔洗浄器が備える噴出部7は、図3に示すように、20及び21といった複数の穴を備える。そして、噴出部7の中心近傍に設けられた穴21の大きさ(径)が、該穴21とは異なる他の穴20の大きさ(径)より大きい。噴出部7を図3に示すような構成とすることにより、例えば穴20が目詰まりした際に、該目詰まりした穴20を掃除し、掃除された滓等を径の大きい穴21から排出することができる。また、径の大きい穴21から噴出する水の水量が大きいので、該水への超音波の伝達が安定化する。
【0030】
なお、本発明の超音波口腔洗浄器が備える噴出部7は、図3に示す構成に限定されるものではない。超音波口腔洗浄器が備える噴出部7が、水を噴出する任意の数の任意の大きさの穴を備える構成を採るようにしてもよい。
【0031】
図4は、噴出部の形状の一例を示す図である。この例では、超音波口腔洗浄器を横から見たときの噴出部7の形状について説明する。本発明の一実施形態によれば、噴出部7を構成する面が、図4(A)又は図4(B)に示すように、所定の曲率の湾曲形状を有するようにしてもよい。特に、噴出部7を構成する面が図4(A)に示すような形状を有する場合、該噴出部7から水が歯及び歯茎に対して噴出されるときに、図4(A)中に示す凹部171に水が溜まるため、噴出部7が平らな噴出面を有する場合に比べて、噴出面と歯及び歯茎との間の間隙をさらに容易に保つことができる(ホバークラフト効果が大きくなる)。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の超音波口腔洗浄器の外観の一例を示す図である。
【図2】超音波口腔洗浄器の断面図の例である。
【図3】噴出部の構成の一例を示す図である。
【図4】噴出部の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 先端部
2 柄部
3 ヘッド部
4 首部
5 嵌合部
6 空洞部
6A、6B 面
7 噴出部
8 超音波振動子
9 超音波発振器
10 充電式電池
11 水圧調整器
12 電源スイッチ
13 チューブ嵌合部
14 チューブ
15 先端部パイプ
16 柄部パイプ
17 電気配線
18 コネクタ
20、21 穴
30 固体部
171 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波口腔洗浄器であって、
ヘッド部を備え、
該ヘッド部の内部に、水圧調整された水が導入される空洞部を設け、
該空洞部は、互いに実質的に平行な2つの面を有し、
該空洞部に導入された前記水に、該水において超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数を有する超音波振動を伝達させる超音波振動発生部を、該空洞部が有する前記2つの面のうち一方の面に接するように設け、該空洞部が有する他方の面の近傍に、該超音波振動が伝達された水を口腔内に直接噴出する噴出部を設けた
ことを特徴とする超音波口腔洗浄器。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波口腔洗浄器において、
前記超音波振動の加速度エネルギーが利用できる所定の周波数が、1MHz以上であることを特徴とする超音波口腔洗浄器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超音波口腔洗浄器において、
前記噴出部が、複数の穴を備え、前記複数の穴のうち、前記噴出部の中心近傍に設けられた穴の大きさが、該穴とは異なる他の穴の大きさより大きい
ことを特徴とする超音波口腔洗浄器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波口腔洗浄器において、前記噴出部を構成する面が所定の曲率の湾曲形状を有する
ことを特徴とする超音波口腔洗浄器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−131339(P2009−131339A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308120(P2007−308120)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(591027732)東栄電気工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】