説明

超音波多周波振動体、超音波振動ユニット、超音波振動装置、超音波処理装置、先端面超音波放射装置、先端面超音波受波装置、及び、超音波加工装置

【課題】基準周波数の付近に複数の共振点を有し、これらの共振点の周波数で駆動することにより、各周波数の超音波を放射できる超音波多周波振動体を提供する。
【解決手段】軸線AX方向に延びる形態を有する超音波多周波振動体10は、主部11A,11B、及びこれらの間に配置された結合部12Aを有する。主部11A,11Bは、この主部を単独で取り出したと仮定したとき、基準周波数f0の超音波振動で共振する形態とされてなる。結合部12Aは、軸線AX方向の長さLSが、0<LS<λs/2を満たす。超音波多周波振動体10は、基準周波数f0の付近に、全体が共振する共振点が2ヶ以下現れる周波数特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の共振周波数で振動可能な超音波多周波振動体、これに用いる超音波振動ユニット、超音波多周波振動体を用いた超音波振動装置、これを用いた超音波処理装置、先端面超音波放射装置、先端面超音波受波装置、及び、超音波加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波の応用として、液体等に超音波を照射して、乳化、分散、破砕、化学反応促進等を起こさせたり、固体表面を洗浄するなどの処理を行うことが知られている。また、加工工具を超音波振動させて、被処理物を加工する超音波加工機も知られている。また、超音波を媒体中に放射し、また、媒体中を伝わる超音波を受波してこれを検出する魚群探知機などの超音波探査装置や超音波センサも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、攪拌槽内の槽内壁に、超音波発振子が取り付けられ、超音波が槽中心に向けて放射する反応装置が記載されている。
また、特許文献2には、有底円筒状の反応槽の中心に、超音波エネルギーを放射する円柱状または円筒状の放射体を配置し、放射体の側面、又は他端及び側面を放射面として、反応槽内に超音波を放射する反応装置が記載されている。
さらに、特許文献3には、軸線方向に径小放射部と径大放射部とが交互に並ぶ放射部を備え、この放射部に所定周波数の超音波振動を加えたとき、軸線方向に、径小放射部を腹とし、径大放射部を節とする共振をすると共に、各々の径大放射部で径方向に一次共振し、隣り合う径大放射部同士で逆相に振動する形状を有する超音波放射体、及び、これを用いた超音波処理装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−202277号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特開2003−200042号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】特開2005−186030号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の反応装置では、槽壁面の一部に超音波発振子を配置し、これから超音波を槽中心に向かって放射するものであり、超音波エネルギーの放射面積も小さいため、層内の超音波音場の分布が不均一になる。また、放射される超音波エネルギーも小さいので、反応の処理量が少ない。また槽内に超音波発振子が配置されており、処理する液体が高温あるいは低温などの場合には、発振子の性能劣化等も危惧される。
【0006】
また、特許文献2に記載の反応装置では、槽の中心から径方向外側に向かった超音波を放射するため、特許文献1よりも超音波の分布は均一に近けることができる。しかしながら、放射体の先端部分(他面)近傍では、放射体の軸線方向及びこれに直交する径方向には超音波が放射されるが、斜め先端方向には超音波が放射されない。従って、やはり、放射体周囲の超音波の音場分布は不均一となる。
さらに、放射体として、直径がλ/3〜λ/4の円柱状放射体あるいは円筒状放射体を用いている。この程度の細い径を持つ円柱などでは、長さをnλ/2となるように調整すると、共振による軸線方向の振動が励起され、軸線方向に大きく振動させることができる。従って、この円柱の先端方向へは強い超音波が放射できる。しかし、この円柱は、径が細いため、径方向には共振しておらず、径方向の振動は励起されにくい。具体的には、径方向には、縦振動による伸縮に伴い、ポアソン比に従って、径方向に伸縮する振動が現れるだけである。従って、この放射体を用いても、径方向(側面方向)への超音波振動の強度はさほど大きくできない。
【0007】
一方、特許文献3の超音波処理装置では、複数の径大放射部及び径小放射部が連なり、それぞれから超音波が放射されるため、超音波音場の分布を均一にしやすい。
しかし、そうであっても、所定周波数の超音波振動を用いるため、処理槽内に定在波が立ちやすく、超音波音場の分布を十分に均一化できず、処理ムラの生じる場合があった。
また、用途によっては、超音波を放射体の一部から放射したい場合もあるが、このような用途にあっても、所定の周波数の超音波を放射するだけでは、やはり定在波が生じるなどの理由により、流体や被処理物の処理が十分でない場合がある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、基準周波数の付近に複数の共振点を有し、これらの共振点の周波数で駆動することにより、各周波数の超音波を放射できる超音波多周波振動体を提供することを目的とする。また、これに適した超音波振動ユニットを提供することを目的とする。さらには、この超音波多周波振動体を用いて、複数の共振周波数の超音波を励振可能とした超音波振動装置を提供することを目的とする。さらには、これらを用いて、複数の共振周波数の異なる超音波を用いた超音波処理装置、先端面超音波放射装置、先端面超音波受波装置、及び、超音波加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、その解決手段は、軸線方向に延びる形態を有する超音波多周波振動体であって、Nヶ(Nは2以上の自然数)の主部であって、上記軸線方向に互いに離間して配置され、各主部は、上記軸線方向に直交する径方向に相対的に大きな径方向寸法を有してなる主部と、N−1ヶの結合部であって、各々の上記主部同士の間に配置されて、上記主部同士を結合し、隣接する上記主部よりも相対的に小さな径方向寸法を有してなる結合部と、を備え、上記主部は、この主部を単独で取り出したと仮定したとき、基準周波数f0の超音波振動で共振する形態とされてなり、上記結合部は、上記基準周波数f0の超音波振動が、この結合部を上記軸線方向に伝わるときの音速をVs、伝わる超音波振動の波長をλs(=Vs/f0)としたとき、上記軸線方向の長さLSが、0<LS<λs/2を満たし、上記基準周波数f0の付近に、この超音波多周波振動体全体が共振する共振点が、2ヶ以上、Nヶ以下現れる周波数特性を有する超音波多周波振動体である。
【0010】
本発明の超音波多周波振動体では、2ヶ以上の相対的に径大な主部と、これらの間に位置し相対的に径小の結合部とからなっている。このうち、主部は自身が基準周波数f0で共振する形態とされている。一方、結合部は、軸線方向の長さLSが、0<LS<λs/2の範囲とされている。そして、この超音波多周波振動体は、この超音波多周波振動体全体が共振することによる共振点が、2〜Nヶ現れる周波数特性を有する。
この超音波多周波振動体に、共振点が複数現れる原因は明確ではないが、この形態の超音波多周波振動体は、それぞれ基準周波数f0で共振する複数の主部を、この主部より径小で、かつ、長さがλs/2より短いために基準周波数f0では共振しない結合部で、互いに結合した形態となっている。このため、超音波多周波振動体全体として見た場合、各主部の基準周波数f0での固有振動について、縮退が解けて、この基準周波数f0付近に共振点が2〜Nヶ現れたものと考えられる。従って、基準周波数f0付近の周波数領域において、主部及び結合部における超音波振動が相互に作用し合って、この超音波多周波振動体全体が共振するモードが、2〜Nヶ現れる。
【0011】
従って、この超音波多周波振動体によれば、Nヶの主部及びN−1ヶの結合部からなる簡単な形態を有していながら、高調波ではない、複数(2〜Nヶ)の共振点を持たせることができる。
このため、本発明の超音波多周波振動体に各共振周波数を有する超音波振動を与えることで、大きな超音波振動を励起し、周囲からあるいは先端面などの部位から、外部に強力な超音波を効率よく放射することができる。また逆に、外部から、超音波を効率よく受波することができる。
【0012】
しかも、超音波振動として、各共振周波数の超音波振動を順に切り換えて、あるいは、複数の共振周波数が混在した超音波振動を与えることで、1つの超音波多周波振動体でありながら、外部に向けて、異なる周波数の超音波を効率よく放射することができる。
このため、例えば、この超音波多周波振動体を、閉空間内に配置した場合など、この超音波多周波振動体の周囲に定在波音場が形成される状態で使用した場合でも、異なる共振周波数の超音波振動を、順次あるいは同時に発生させることにより、周波数ごとに定在波の腹部及び節部の位置を変えることができ、結局、空間内の超音波音圧の偏りを抑制して、この空間内での超音波音場を均一化し、この超音波による処理(洗浄等)の不均一を抑制することができる。
【0013】
なお、主部の形態としては、結合部より径大の形態を有し、また、この主部を単独で取り出したと仮定したとき、基準周波数f0の超音波振動で共振する形態とされてなるものである。例えば具体的には、この主部を単独で取り出して周波数特性を測定した場合に、基準周波数f0で、半波長共振、全波長共振、3/2波長共振などのn/2波長共振あるいはn波長共振(nは自然数)する形態を有しているものが挙げられる。この主部の具体的形状としては、例えば、基準周波数f0で高さ方向にn/2波長共振する円柱形状あるいは角柱形状、円柱の角部をテーパ状にカットした形状で基準周波数f0で高さ方向あるいは径方向にn/2波長共振する形状、基準周波数f0で厚み方向に直交する径方向にn/2波長共振する円板(短円柱)形状、基準周波数f0で自身の径方向にn/2波長共振する球状、基準周波数f0で自身の径方向にn/2波長共振する円環形状などが挙げられる。
また、各主部は、この主部を単独で取り出したと仮定したときに、所定の周波数特性を有する形態であれり、後述するように、1つの主部が単独の超音波振動ユニットを構成したいる場合のほか、結合部あるいは他の主部と一体の部材、さらには、超音波多周波振動体全体が単一の部材をなして、切断等をしなければ、単独の主部を取り出せない形態のものをも含む趣旨である。
さらに、Nヶの主部は、上述の条件を満たす範囲で、互いに異なる形状あるいは異なる材質としても良い。但し、互いに同材質で同形状とすると、各主部の製造が容易となる利点がある。
【0014】
また、結合部の形態としては、主部より相対的に径小の形態とする。例えば具体的には、主部よりも径小の、円柱状、角柱状の形態が挙げられる。また、結合部内において、主部よりも径小である範囲内で、軸線方向に径方向寸法が変化している形態、例えば、軸線方向中央部分に向かうほど徐々に径小とした鼓状や、この逆に徐々に径大とした樽状とすることもできる。
また、その長さLSは、0<LS<λs/2とする。この結合部を伝わる基準周波数f0の超音波振動の音速をVsとしたとき、波長λsは、λs=Vs/f0で与えられる。音速Vsは、基準周波数f0の超音波振動を用いて計測するのが好ましいが、音速が変わらない範囲で、他の周波数により計測し、あるいは計測報告されたデータを用いても良い。
さらに、この結合部の長さLSは、好ましくは、λs/8<LS<3λs/8とすると良い。長さLSをλs/4に近い値とすることで、基準周波数f0の付近に生じさせる共振点の数を増やし、また、超音波多周波振動体の各共振点での動作を確実に行わせることができる。
なお、N−1ヶの結合部としては、上述の条件を満たす範囲で、互いに異なる形状あるいは異なる材質としても良い。但し、互いに同材質で合同の形状とすると、各結合部の製造が容易となる利点がある。
【0015】
また、超音波多周波振動体は、自身が、外部からの超音波振動の励振、あるいは自身に含む超音波振動子による励振により、各共振点で超音波振動するものであり、この超音波振動を利用する形態としては、各種の公知の手法によることができる。
即ち、例えば、超音波多周波振動体の主部及び結合部すべてを処理液等を貯留した処理槽内に配置して、超音波多周波振動体の各所から、超音波振動を発生させて、処理槽内で所望の処理を行うものが挙げられる。
また、超音波多周波振動体のうち最も先端側の主部の先端面を処理液に接触させて、この先端面から超音波を放射させて、所望の処理(例えば、乳化など)を起こさせるもの、先端面を処理槽の外壁面に密着させ、この処理槽の外壁を通じて内部の洗浄液等の処理液に超音波を放射して、所望の処理(例えば、各種部品の洗浄など)を行うものも挙げられる。また、最も先端側の主部の先端面を水中に没して直接、あるいは船底等に密着させ、この船底等を介して間接に超音波を水中に放射して、所望の処理(例えば、魚群探知機や超音波探査装置における超音波パルスの放射など)を行うものも挙げられる。気中に、最も先端側の主部の先端面から直接または間接に超音波を放射して、所望の処理(例えば、空中超音波センサにおける送波など)を行うものも挙げられる。
この逆に、水中や気中からの超音波を、直接、あるいは、船底やケース部材を介して間接に、最も先端側の主部の先端面で水中の超音波を受波して、所望の処理(例えば、魚群探知機や超音波探査装置、空中超音波センサにおける超音波パルスの受波及び信号処理など)を行うものも挙げられる。
また、最も先端側の主部の先端面に、加工工具を取り付けて、加工工具に超音波振動を起こさせつつ、所定の加工を行うのに用いるものも挙げられる。
【0016】
また、超音波多周波振動体としては、各主部及び結合部を、各々ブロック状の超音波振動ユニットとし、これらを締結等により結合して、超音波多周波振動体としても良いし、主部及び結合部が適数個繋がったブロック状の超音波振動ユニットとし、これらを締結等で結合して超音波多周波振動体としても良い。また、全体を一体の部材として形成した超音波多周波振動体とすることもできる。
【0017】
さらに、超音波多周波振動体全体、あるいは、各主部及び結合部の材質としては、用途等を考慮して適宜の材質を選択すればよいが、例えば、鋼、鋳鉄など鉄系金属材、アルミニウム、ジュラルミンなどアルミニウム系金属材、インコネル、ハステロイ等の耐熱性あるいは耐蝕性を有する金属材や、アルミナ、窒化珪素、シリカ等のセラミック材、石英ガラスその他のガラスを用いることができる。
さらには、主部のいずれかに、圧電素子等からなる超音波振動子を含ませ、外部から励振することなく、超音波多周波振動体を超音波振動させることができるように構成することもできる。
【0018】
なお、超音波多周波振動体の周波数特性において、基準周波数f0の付近に現れる共振点の数は、主部及び結合部の形態、材質等の組み合わせによって異なるが、この超音波多周波振動体に望まれる性質上、少なくとも、超音波多周波振動体全体が共振する共振点が、2ヶ以上現れる組み合わせとしたものが、本発明の超音波多周波振動体に含まれる。
また、2〜Nヶの各共振点の共振周波数の値も、主部及び結合部の形態、材質等の組み合わせによって異なるが、上述のように、基準周波数f0の付近の値となる。例えば具体的には、基準周波数f0に対して、そのズレが、最大でも周波数で±20%以内の共振周波数を有するものである。
【0019】
また、請求項1に記載の超音波多周波振動体であって、前記Nヶの主部は、いずれも、同材質、同形とされてなる超音波多周波振動体とすると良い。
【0020】
本発明の超音波多周波振動体では、主部をいずれも同材質、同形としているので、超音波多周波振動体を容易に製造できる利点がある。
また、主部をいずれも同材質、同形とすることで、超音波多周波振動体の対称性が高くなり、各共振点での機械的品質係数Qmが高く、鋭い共振特性を有するものとしやすい。
【0021】
さらに、請求項2に記載の超音波多周波振動体であって、前記N−1は複数であり、前記N−1ヶの結合部は、いずれも、同材質、同形である超音波多周波振動体とすると良い。
【0022】
本発明の超音波多周波振動体では、主部のみならず、複数の結合部いずれもを、同材質、同形としている。これにより、さらに超音波多周波振動体を容易に製造できる利点がある。
また、主部のみならず、結合部いずれもを同材質、同形とすることで、超音波多周波振動体の対称性がさらに高くなり、各共振点での機械的品質係数Qmが高く、鋭い共振特性を有するものとしやすい。
【0023】
あるいは、請求項1に記載の超音波多周波振動体であって、前記Nヶの主部は、いずれも、同材質、同形で、前記軸線方向を高さ方向とし、基準周波数f0でこの高さ方向に1/2波長共振する円柱形状を有し、前記N−1ヶの結合部は、上記主部よりも径小で、上記軸線方向を高さ方向とし、その長さLSがLS=λs/4の円柱形状を有し、上記N−1が複数の場合には、上記結合部のいずれもが、同材質、同形であり、前記基準周波数f0の付近に、この超音波多周波振動体全体が共振する共振点が、Nヶ現れる周波数特性を有する超音波多周波振動体とすると良い。
【0024】
本発明の超音波多周波振動体では、Nヶの各主部を、同材質、同形で、基準周波数f0で軸線方向を高さ方向とし、この高さ方向に1/2波長共振する円柱形状としている。また、N−1ヶの結合部を、主部よりも径小で、軸線方向を高さ方向とし、その長さ(高さ)LSがλs/4の円柱形状としている。しかも、N−1が複数の場合には、結合部のいずれも、同材質、同形としている。なお、N−1が単数(つまり、N=2)の場合には、結合部が1つであるのでこのような制限は考える必要がない。そして、この超音波多周波振動体では、基準周波数f0の付近に、この超音波多周波振動体全体が共振する共振点が、Nヶ現れる周波数特性を有している。
本発明の超音波多周波振動体は、主部が軸線方向に延びる円柱形状であり、結合部も軸線方向に延びる円柱形状であるので、製造が容易である。特に、主部が互いに同形であり、また、結合部が複数の場合には結合部も互いに同形であるので、製造が容易である。
また、主部のみならず、結合部いずれをも同材質、同形としているので、超音波多周波振動体の対称性が高く、各共振点での機械的品質係数Qmが高く、鋭い共振特性を有するものにできる。
【0025】
さらに、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体であって、連結部分の無い一体に形成されてなる超音波多周波振動体とすると良い。
【0026】
本発明の超音波多周波振動体は、連結部分の無い一体の材料、例えば、金属塊、セラミック塊などからなるため、連結部分の連結ネジがゆるんだり、連結部分から超音波多周波振動体の一部が脱落するなどの心配が無く、高温下、低温下、あるいは熱サイクル、熱衝撃などがかかる等の厳しい環境下において使用しても、耐久性、信頼性が良好である。
【0027】
あるいは、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体であって、複数の同形のまたは異形の超音波振動ユニットを互いに連結してなる超音波多周波振動体とすると良い。
【0028】
本発明の超音波多周波振動体は、複数の同形または異形の超音波振動ユニットを連結して超音波多周波振動体を構成している。
このため、超音波多周波振動体の形状の変更、修理などに容易に対応することができる。
【0029】
また、各超音波振動ユニットを形成し、これらを連結して一体化し超音波多周波振動体とする方が、前述のように超音波多周波振動体を連結部分のない一体の部材からなるものとし、金属塊等から切削等で製造するよりも安価となる。また、各超音波振動ユニット毎に共振周波数などの微調整することができるなど、超音波多周波振動体の各部及び全体の周波数調整も容易となる。
【0030】
なお、この超音波多周波振動体に用いる複数の超音波振動ユニットは、互いに同形であっても異形であっても良い。また、1つの超音波振動ユニット内に、1つの主部が含まれている超音波振動ユニットとしても、複数の主部が(従ってこれらの間の結合部も)含まれている超音波振動ユニットとしても良い。
また、超音波振動ユニット同士の連結は、互いに強固に連結でき、超音波振動を適切に伝送できる手法であれば、いずれの手法でも良い。例えば、互いの連結面にネジ孔を穿設し、連結面同士を突き合わせて、両方のネジ孔に跨るように埋め込んで配置したボルトで締結する手法が挙げられる。また、一方の超音波振動ユニットに雄ネジ部を突設し、他方の超音波振動ユニットにネジ孔を凹設し、これらをネジ止めする手法を取ることもできる。また、接着剤によって接着する、あるいは接着剤による接着とボルト等による締結とを併用することもできる。
【0031】
さらに、請求項6に記載の超音波多周波振動体であって、前記複数の超音波振動ユニットは、互いを連結する連結面が、前記結合部に位置する形態、及び、上記結合部と主部との間に位置する形態、の少なくともいずれかとしてなる超音波多周波振動体とすると良い。
【0032】
本発明の超音波多周波振動体では、互いを連結する連結面が、結合部、及び、結合部と主部との間に、の少なくともいずれか位置する形態とした超音波振動ユニットを用いている。
前述したように、主部は、基準周波数f0の超音波振動で共振する形態とする必要がある。もし、1つの主部を2つ以上の超音波振動ユニットから構成されるように分割した場合、たとえこれらの超音波振動ユニットの主部となる部分を互いに密着させて主部を構成したとしても、超音波振動ユニット同士間の界面が存在するため、この界面でロスが生じやすく、一方の超音波振動ユニットから他方の超音波振動ユニットへの超音波エネルギーの伝送が効率よく行いにくい。また、結果として、共振周波数で振動させたとしても大きな振動が得られにくい。
これに比して、結合部は、径方向寸法が主部より小さいため、軸線方向の振動が励起されやすいので、超音波振動ユニット間の結合の界面が結合部内、あるいは、結合部と主部との境界部分に位置するようにすることで、主部に界面を形成する場合よりも、少ないロスで、超音波振動を超音波振動ユニット間で伝えることができる。かくして、一方の超音波振動ユニットから他方の超音波振動ユニットへの超音波エネルギーの伝送を、効率よく行うことができる。
【0033】
あるいは、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体であって、前記Nヶの主部及びN−1ヶの結合部のいずれも、超音波振動子を含まない超音波多周波振動体とすると良い。
【0034】
一般に、圧電素子等を使用する超音波振動子は、電極間などの絶縁性を保持する必要があり、また、薬液等からの腐食等を考慮する必要がある。また、外部からの物体の衝突などから保護する必要がある。また、高温あるいは低温での駆動により特性の低下が生じるなど、熱的特性にも考慮を払う必要がある。
これに対し、本発明の超音波多周波振動体は、主部及び結合部に、このような超音波振動子を含んでいない。このため、この超音波多周波振動体は、主部及び結合部を、その材質に応じた範囲で、直接、処理液等の液体、あるいは、洗浄液及び被処理物などの中に浸漬したり、高温や低温の処理流体中に浸漬あるいは露出するなどが可能となる。また、このようにして、周囲のこれら処理液等の流体に、強力な超音波を効率よく放射することができる。また逆に、外部から超音波を効率よく受波することができる。
【0035】
さらに、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体であって、前記Nヶの主部の少なくともいずれかは、自身を含む上記超音波多周波振動体を、前記2〜Nヶの共振点のうち、少なくとも2つの共振点の共振周波数で、励振可能に構成されてなる超音波振動子を含む超音波多周波振動体とすると良い。
【0036】
本発明の超音波多周波振動体は、主部の少なくともいずれかに超音波振動子を含んでいる。このため、この超音波振動子で、少なくとも2つの共振点の共振周波数について、各々の共振周波数を有する超音波振動を順に、または、複数の共振周波数を含む1つの波形に含む超音波振動を、超音波多周波振動体に発生させることができ、これらの周波数を有する超音波を外部に放射することができる。
しかも、この超音波多周波振動体では、自身の主部に超音波振動子を含んでいるから、取り扱い容易でである。また、外部から他の超音波振動子によりに励振する必要が無く、全体として、構造が簡単で、安価にできる。
【0037】
なお、主部に含ませる超音波振動子としては、公知の圧電素子、電歪素子、磁歪素子、あるいは、これらを用いた各種形態の超音波振動子を用いることができる。例えば、板形状(円板形状、角板形状)、あるいは柱形状(円柱形状、角柱形状)の圧電素子、電歪素子、磁歪素子のほか、これらの素子を金属板等で挟んだランジュバン型の超音波振動子、さらにこれらをボルトで締結したボルト締めランジュバン型超音波振動子などが挙げられる。
また、超音波振動子は、主部に含まれていれば良く、1つの主部全体が1つの超音波振動子として構成されていても、主部の一部が1つの超音波振動子として構成されていても良い。
【0038】
さらに他の解決手段は、請求項6または請求項7に記載の超音波多周波振動体をなす複数の前記超音波振動ユニットのうちの1つとなる超音波振動ユニットである。
あるいは、少なくとも前記軸線方向の端部に、同形のまたは異形の他の超音波振動ユニットまたは超音波振動源を連結可能とする連結構造を有し、上記他の超音波振動ユニットと連結することにより、請求項6または請求項7に記載の超音波多周波振動体の一部をなす超音波振動ユニットとするのが好ましい。
【0039】
本発明の超音波振動ユニットを用いることにより、超音波多周波振動体の用途、例えば、処理槽の形状や処理槽内の音場分布、超音波振動源から供給される超音波振動エネルギーの多寡などに応じて、適宜の形状のユニットを選択して、適切な性能・特性を持つ超音波多周波振動体を形成することができる。
【0040】
さらに他の解決手段は、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体と、上記超音波多周波振動体を、前記軸線方向の基端側から、前記2〜Nヶの共振点のうち、少なくとも2つの共振点の共振周波数で、励振可能に構成されてなる超音波振動源と、を備える超音波振動装置である。
【0041】
本発明の超音波振動装置では、前述の超音波多周波振動体とこれに超音波振動を与える超音波振動源とを備えている。
従って、この超音波振動装置では、超音波振動源を用いて、超音波多周波振動体を、2つ以上の周波数で超音波振動させることで、この超音波多周波振動体から、これらの周波数を有する超音波を放射させることができる。
【0042】
なお、超音波振動源としては、ボルト締めランジュバン型超音波振動子など公知の超音波振動子や、このような超音波振動子とこれに接続され超音波エネルギーを伝送するための超音波伝送体とからなるものなどが挙げられる。また、複数の超音波振動子とこれらの振動エネルギーを集積して超音波多周波振動体に伝送するためのパワー合成装置とからなる超音波振動源も含まれる。
【0043】
また、請求項11に記載の超音波振動装置であって、超音波振動源は、前記少なくとも2つの共振点の共振周波数について、各々の上記共振周波数を有する超音波振動を順に、または、複数の上記共振周波数を含む超音波振動を、上記超音波多周波振動体に与える超音波振動源である超音波振動装置とすると好ましい。
【0044】
この超音波振動装置では、少なくとも2つの共振点の共振周波数の超音波振動を順に、または、複数の共振周波数を含む1つの波形に含む超音波振動を、超音波多周波振動体に与えるので、超音波多周波振動体の各部から、あるいは最も先端側の主部の先端面から、2つ以上の周波数を有する超音波を放射することができる。
【0045】
さらに、被処理物である流体または流体及び被処理物を収容する処理槽と、上記処理槽内に、少なくとも前記超音波多周波振動体を配置してなる請求項11に記載の超音波振動装置と、を有する超音波処理装置とすると良い。
【0046】
本発明の超音波処理装置では、処理槽と、処理槽内に前述の超音波多周波振動体を配置してなる超音波振動装置とを備えている。このため、超音波多周波振動体の各所から超音波を放射できるので、処理槽内に広い範囲に亘って均一な超音波の音場を作ることができる、処理槽内で、多くの被処理物を適切に超音波処理することができる。
しかも、超音波振動装置の超音波振動源あるいは超音波多周波振動体に含まれる超音波振動子は、超音波多周波振動体の2〜Nヶの共振点のうち、少なくとも2つの共振点の共振周波数について励振可能としてなる。
このため、超音波振動源あるいは超音波振動子を励振して、各々の共振周波数を有する超音波振動を順に、または、複数の共振周波数を含む1つの波形に含む超音波振動を、超音波多周波振動体に生じさせることで、処理槽内に生じる定在波による超音波音場の分布の不均一化を抑制し、さらに処理ムラ等を抑制することができる。
【0047】
なお、被処理物としては、気体、液体のほか、流動体(流動性のある固体と液体の混合物など)、超臨界流体などの流体が挙げられる。また、水や溶剤、洗浄液などの液体その他の流体と、この液体(流体)中に浸漬された機械部品等の浸漬物とからなる、流体と浸漬物との組み合わせも挙げられる。
また、この超音波処理装置による処理としては、被処理物に対して超音波を照射することによって、所望の変化を被処理物に与えられる処理で有ればいずれの処理をも含む。例えば、超音波によるキャビテーション、振動加速度、直進流などの物理的作用及び化学反応促進作用を利用したもの、例えば、超音波洗浄や、超音波ホモジナイザ、ソノケミストリなどの液体処理が挙げられる。さらに具体的には、超音波の照射による、被洗浄物の一般洗浄や精密洗浄、乳化、分散、破砕、脱泡、化学反応の促進、汚泥処理、PCB処理など有害物質の分解・無害化、殺菌、燃料改質、バイオプロセスや電気化学プロセスにおける各種処理などが挙げられる。
【0048】
あるいは、前記超音波多周波振動体を、このうち前記軸線方向最も先端側の主部の先端面から、被放射物に直接または間接に超音波を放射する形態に配置してなる請求項11に記載の超音波振動装置を、または請求項9に記載の超音波多周波振動体を有する先端面超音波放射装置とすると良い。
【0049】
本発明の先端面超音波放射装置では、超音波多周波振動体を、このうち軸線方向最も先端側の主部の先端面から、被放射物に直接または間接に超音波を放射する形態に配置してなる。
このため、超音波多周波振動体の軸線方向最も先端側の主部の先端面から、効率よく強い超音波を放射できる。
しかも、超音波振動装置の超音波振動源あるいは超音波多周波振動体に含まれる超音波振動子は、超音波多周波振動体の2〜Nヶの共振点のうち、少なくとも2つの共振点の共振周波数について励振可能としてなる。
このため、超音波振動源あるいは超音波振動子を励振して、各々の共振周波数を有する超音波振動を順に、または、複数の共振周波数を含む1つの波形に含む超音波振動を、超音波多周波振動体に生じさせることで、順次あるいは同時に、複数の共振周波数の超音波を放射することができる。
【0050】
なお、被放射物としては、超音波の放射を受ける物で有ればよい。このような超音波の放射を受けて、所望の変化を生じる前述の被処理物のほか、自身は変化せず内部を超音波が伝搬する媒体も挙げられる。従って、具体的には、気体、液体のほか、流動体(流動性のある固体と液体の混合物など)、超臨界流体などの流体、また、超音波探傷などの対象としての金属体などの固体が挙げられる。また、水や溶剤、洗浄液などの液体その他の流体と、この液体(流体)中に浸漬された機械部品等の浸漬物とからなる、流体と浸漬物との組み合わせも挙げられる。また、媒体として作用する気体、液体、固体等も挙げられる。
また、上記から判るように、この先端面超音波放射装置としては、放射された超音波によって、前述のようにして被処理物を処理する各種の超音波処理装置が挙げられる。また、魚群探知機など超音波探査装置や超音波センサ、超音波探傷装置など、水中などの液中、あるいは気中、あるいは固体中へ超音波を放射する装置も含まれる。
【0051】
あるいは、前記超音波多周波振動体を、このうち前記軸線方向最も先端側の主部の先端面から、直接または間接に、被測定物を伝わる超音波を受波する形態に配置してなる請求項11に記載の超音波振動装置、または請求項9に記載の超音波多周波振動体を有する先端面超音波受波装置とすると良い。
【0052】
本発明の先端面超音波受波装置では、超音波多周波振動体を、このうち軸線方向最も先端側の主部の先端面から、被測定物を伝わる超音波を受波する形態に配置してなる。
このため、1つの超音波多周波振動体で、この先端面から、被測定物を伝わる超音波のうち、複数の共振周波数の超音波を効率よく受波できる。
【0053】
なお、被測定物としては、超音波が伝わり、超音波多周波振動体のうち軸線方向最も先端側の主部の先端面でこの超音波を受波できる物で有ればよく、自身は変化せず内部を超音波が伝搬する媒体、例えば、気体、液体、固体等が挙げられる。
また、この先端面超音波受波装置としては、被測定物を伝わる超音波を受波し、所定の処理を行う装置である。例えば、魚群探知機など超音波探査装置や超音波センサ、超音波探傷装置など、水中などの液中、あるいは気中、あるいは固体中からの超音波を受波する装置が含まれる。
【0054】
さらに、前記超音波多周波振動体を含む請求項11に記載の超音波振動装置、または請求項9に記載の超音波多周波振動体と、上記超音波多周波振動体のうち、少なくともいずれかの部位に取付けてなる超音波加工工具と、を備える超音波加工装置とすると良い。
【0055】
本発明の超音波加工装置では、超音波多周波振動体の少なくともいずれかの部位(例えば、軸線方向最も先端側の主部の先端面に)、超音波加工工具を取り付けてなる。
このため、超音波加工工具に超音波を効率よく伝え、所望の加工を効率よく行わせることができる。
しかも、1つの超音波多周波振動体を用いながら、超音波加工工具に、複数の共振周波数の超音波振動を与えることができるので、加工される場所や精度の偏りを防止し、より均一な加工を行うことができる。
【0056】
なお、超音波加工工具としては、超音波振動が与えられることにより、超音波振動がない場合に比して、被加工物に付加的なあるいは主位的な作用を加えることができる、あるいは、加工時の摩擦力や応力低減など何等かの効果を得ることができるように構成された加工工具であれば良い。具体的には、超音波を伴って、例えば、切断、切削、研削、研磨、孔明け、ネジ立て、ふるい通しなどを行う加工工具が挙げられ、さらに具体的には、のこぎり、ナイフ、ヤスリ、ドリル、リーマ、タップ、篩などが挙げられる。
また、この超音波加工装置としては、超音波加工工具の1種または複数種を取り付けてなるものであればよいが、各超音波加工工具を交換可能に構成されてなる物が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
(実施形態1)
本発明の実施の形態に関する第1の実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態1に係る超音波処理装置1は、超音波振動を生じる超音波振動装置2、これを駆動する超音波発振回路5、及び、処理槽60からなる。
このうち、超音波振動装置2は、超音波多周波振動体10と、この超音波多周波振動体10に超音波振動を与える超音波振動源30とを含む。この超音波振動源30は、圧電セラミックを用いた公知のボルト締めランジュバン型超音波振動子31と、これによって発生させた超音波振動を超音波多周波振動体10に伝送するための公知の超音波伝送体32とからなる。また、超音波発振回路5は、超音波振動子31を2種類の所定周波数fB1,fB2で駆動するため公知の駆動回路である。
【0058】
超音波振動源30の超音波振動子31及び超音波伝送体32は、軸線AXに沿って互いに同軸に配置され、連結ネジ36によって互いに連結されている。また、超音波放射体10は、超音波伝送体30の先端(図1(b)中、下端)と、連結ネジ7によって連結されている。
【0059】
超音波多周波振動体10は、超音波伝送体32のうちフランジ32Fよりも先端側(図1(b)中、下方)の一部と共に、処理槽60内に配置され、この処理槽60内に満たされた被処理流体Pに浸漬されている。この超音波超音波振動源30から伝えられた超音波振動により、処理槽60内の被処理流体Pに超音波を放射して、この被処理流体Pについて所望の処理(乳化、分散、破砕等)を行う。なお、処理槽60は、処理槽本体61と、この処理槽本体61の側面のうち高さ方向略中央に接続され、被処理流体Pを処理槽本体61内に流入させる流入管62と、処理槽本体61の側面のうち上部と下部に接続され、処理された被処理流体Pを処理槽本体61から排出する2本の排出管63A,63Bとからなる。
【0060】
この超音波多周波振動体10は、ステンレス鋼(SUS304)の金属塊を削り出しによって作成してなる金属ブロック体であり、図2に示すように、2つの径大な主部11A,11Bと、これらの間をつなぐ相対的に径小の結合部12Aとを有している。従って、主部11A、結合部12A、及び主部11Bは、連結部分が無く、同じ材質からなる一体の部材(超音波多周波振動体10)からなる。
このため、この超音波多周波振動体10では、連結部分の連結ネジがゆるんだり、連結部分から超音波多周波振動体の一部が脱落するなどの虞が無く、また、高温下、低温下、あるいは熱サイクル、熱衝撃などがかかる等の厳しい環境下において使用しても、耐久性、信頼性が良好である。
【0061】
超音波多周波振動体10のうち主部11A,11Bは、それぞれ、直径DD1,DD2が40mmφ、高さ(軸線AX方向の長さ)LD1,LD2が90mmの円柱形状である。従って、主部11Aと11Bは、同一材質で、互いに合同な形状を有している。このように、主部11A,11Bをいずれも同材質、同形としているので、超音波多周波振動体10を容易に製造できる。
また、主部11A,11Bをいずれも同材質、同形とすることで、超音波多周波振動体10の対称性が高くなり、後述する各共振点B1,B2での機械的品質係数Qmが高く、鋭い共振特性を有するものとしやすい。
【0062】
超音波多周波振動体10に用いたステンレスでは、その径が40mmφ程度の場合に軸線方向に伝わる超音波の音速Vdは、Vd=4900m/sである。従って、超音波の周波数を、基準周波数f0(=27.22kHz)とすれば、その超音波の波長λdはλd=180mm(=4900/27220)である。従って、この主部11A,11Bそれぞれを、単体で取り出したと仮定した場合、即ち、各主部11A,11Bに相当する40φ×90Hの円柱形状のステンレスからなる金属体を形成したと仮定した場合に、これに基準周波数f0(=27.22kHz)を加えたとき、この主部11A,11B(金属体)は、その高さ方向(軸線AX方向)に半波長共振(1/2波長共振)する形態とされている(LD1=LD2=λd/2)。
【0063】
主部11Aのうち、軸線AX方向基端側(図2中、上方)の基端側面11AKには、超音波振動源30(超音波伝送体32)と連結するための、ネジ孔11AKNが形成されており、前述のように、連結ネジ37によって、超音波伝送体32と連結させる。
この逆に、主部11Bのうち、軸線AX方向先端側(図2中、下方)の先端側面11BSは、平坦にされている。
【0064】
一方、主部11Aの先端側面11ASと主部11Bの基端側面11BKとの間に介在する結合部12Aは、直径DS1が15mmφ、高さ(軸線AX方向の長さ)LS1が45mmの円柱形状である。
超音波多周波振動体10に用いたステンレスでは、その径が15mmφ程度の場合、軸線方向の音速VsはVs=4900m/sである。従って、超音波の周波数を、基準周波数f0(=27.22kHz)とすれば、その超音波の波長λsはλs=180mm(=4900/27220)である。従ってこの結合部12A単体(15φ×45H)で見た場合、基準周波数f0(=27.22kHz)を加えたとき、この結合部12Aは、その高さ方向(軸線AX方向)の高さ(長さ)LS1は、これを伝わる超音波の波長λsの1/4(LS1=λs/4)となっていることが判る。従って、この結合部12Aは、基準周波数f0では共振しない。
【0065】
この超音波多周波振動体10について、軸線方向の縦振動系とみなして、分布定数回路で等価回路表示して解析を行うと共に、有限要素法によるモーダル解析を行った。図3に、超音波多周波振動体の周波数特性(インピーダンス特性)を示す。また、図4に、各共振点B1,B2の共振周波数fB1,fB2で超音波多周波振動体10を励振した場合の、各部の軸線方向の変位の様子を示す。
【0066】
図3の周波数特性のグラフによれば、この超音波多周波振動体10は、主部11A、11B単体の共振周波数である基準周波数f0(=27.22kHz)では共振せず、この基準周波数f0の付近、具体的には、基準周波数f0の下及び上に、1つづつ共振点B1,B2が現れることがわかる。各共振点B1,B2の共振周波数fB1及びfB2は、それぞれ、fB1=26.12kHz,fB2=28.33kHzとなることが判る。
【0067】
また、図4(a)によれば、共振点B1で駆動した場合(B1モードの場合)、2つの主部11Aと11Bとが逆相に振動(伸縮)し、これらの間の結合部12Aは、2つの主部11Aと11Bとの間で軸線方向に大きく移動する形態で振動することが判る。
一方、図4(b)によれば、共振点B2で駆動した場合(B2モードの場合)、2つの主部11Aと11Bとは同相に振動(伸縮)し、これらの間の結合部12Aは、2つの主部11A,11Bとの間で逆相で伸縮する形態で振動することが判る。なお、このB2モードの場合、結合部12Aがあたかも1つの共振体のように振る舞うことが判る。
【0068】
本実施形態1の超音波多周波振動体10が、何故2つの共振点B1,B2を有する周波数特性となるかについて、詳細は不明であるが、以下ではないかと考えられる。即ち、超音波多周波振動体10は、径大で大きな体積(重量)を有し、基準周波数f0で共振する主部11A,11Bを2つ有している。これらの間に、径小で小さな体積(重量)で、基準周波数主部f0で共振しない結合部12Aが介在している。このため、超音波多周波振動体10全体として見た場合、各主部11A,11Bの基準周波数f0での固有振動について、縮退が解けて、この基準周波数f0付近に2つの共振点B1,B2が現れたものと考えられる。
いずれにしても、本実施形態1の超音波多周波振動体10は、2つの共振点B1,B2の共振周波数fB1及びfB2で共振し、大きく振動することが判る。
【0069】
そこで、本実施形態1に係る超音波処理装置1において、超音波発振回路5で、共振周波数fB1あるいはfB2を有する駆動波形で超音波振動子31を駆動すると、超音波多周波振動体10の主部11A,11B及び結合部12Aが、図4(a)(b)に示すように振動する。かくして、処理槽60内において、その周囲に超音波を放射することができる。
本実施形態1の超音波多周波振動体10は、図1,図2に示したように、2つの主部11A,11B及び結合部12Aを連結した、軸線AX方向に延びた形状を有し、振動モード(図4(a)(b)参照)に応じて、各部が軸線AX方向に大きく振動するので、各部から、特に、各主部11A,11Bの基端側面11AK,11BK、及び先端側面11AS,11BSから、強い超音波が放射される。このため、処理槽60内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0070】
しかも、一方の周波数(例えば共振周波数fB1)の超音波を放射させた場合に、処理槽60内に生じる定在波と、他方の周波数(例えば共振周波数fB2)の超音波を放射させた場合に、処理槽60内に生じる定在波とでは、節や腹の位置が異なる。
このため、超音波発振回路5で、共振周波数fB1を有する駆動波形の信号と、共振周波数fB2を有する駆動波形の信号とを、交互に切り換えて発生させるようにすれば、処理槽60内に生じる定在波の位置が一定せず、さらに、処理槽60内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
あるいは、超音波発振回路5によって、共振周波数fB1の成分と共振周波数fB2の成分の両者を含む駆動波形で、超音波振動子31を駆動した場合には、処理槽60内に定在波が生じにくく、さらに、処理槽60内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0071】
なお、本実施形態1の超音波処理装置1における処理としては、被処理流体Pに対して超音波を照射することによって、この被処理流体に何等かの変化を与えられる処理であれば良く、例えば、被処理流体Pに関する乳化、分散、脱泡、化学反応の促進、汚泥処理、PCB処理など有害物質の分解・無害化、殺菌、燃料改質、バイオプロセスや電気化学プロセスにおける各種処理などが挙げられる。また、被処理流体Pと共に他の被処理物を処理槽60内に投入することにより、被処理物(被洗浄物)の一般洗浄や精密洗浄、破砕などを行わせることもできる。
【0072】
(変形形態1)
ついで、実施形態1の第1の変形形態を、図5〜図7を参照して説明する。本変形形態1は、実施形態1とは、超音波多周波振動体の形態が異なるのみであり、他は同様であるので、本変形形態1にかかる超音波多周波振動体110の形態及び周波数特性等の説明を主として行う。
【0073】
この超音波多周波振動体110も、ステンレス鋼(SUS304)の金属塊を削り出しによって一体に作成してなる金属ブロック体であり、図5に示すように、3つの径大な主部111A,111B,111Cと、これらの間をつなぐ2つの相対的に径小の結合部112A,112Bとを有している。
【0074】
超音波多周波振動体110のうち主部111A,111B,111Cは、それぞれ、直径DD1,DD2,DD3が40mmφ、高さ(軸線AX方向の長さ)LD1,LD2,LD3が90mmの円柱形状である。従って、3つの主部111A,111B,111Cは、同一材質で、互いに合同な形状を有している。このように、主部111A,111B,111Cをいずれも同材質、同形としているので、超音波多周波振動体110を容易に製造できる。
また、主部111A,111B,111Cをいずれも同材質、同形とすることで、超音波多周波振動体110の対称性が高くなり、後述する各共振点C1,C2,C3での機械的品質係数Qmが高く、鋭い共振特性を有するものとしやすい。
【0075】
超音波多周波振動体110でも、40mmφ程度の棒中をその軸線方向に伝わる基準周波数f0(=27.22kHz)の超音波の音速VdはVd=4900m/s、波長λdはλd=180mmであるため、それぞれの主部111A,111B,111C単体(40φ×90H)で見たとき、各主部111A,111B,111Cは、基準周波数f0(=27.22kHz)で、軸線AX方向に半波長共振する形態とされている(LD1=LD2=LD3=λd/2)。
【0076】
なお、主部111Aの基端側面111AKにも、超音波伝送体32と連結するための、ネジ孔111AKNが形成されている。この逆の主部111Cの先端側面111CSは、平坦にされている。
【0077】
一方、結合部112A,112Bは、それぞれ直径DS1,DS2が15mmφ、高さ(軸線AX方向の長さ)LS1,LS2が45mmの円柱形状である。従って、2つの結合部112A,112Bは、同一材質で、互いに合同な形状を有している。このように、超音波多周波振動体110では、主部のみならず、複数の結合部112A,112Bをいずれも、同材質、同形としている。これにより、さらに超音波多周波振動体110を容易に製造できる利点がある。
また、主部のみならず、結合部112A,112Bをいずれも同材質、同形とすることで、超音波多周波振動体110の対称性がさらに高くなり、各共振点C1〜C3での機械的品質係数Qmが高く、鋭い共振特性を有するものとしやすい。
【0078】
超音波多周波振動体110でも、15mmφ程度の棒中を軸線方向に伝わる基準周波数f0(=27.22kHz)の超音波の音速VsはVs=4900m/s、波長λsはλs=180mmである。従って、結合部112A,112B単体(15φ×45H)で見た場合、基準周波数f0(=27.22kHz)を加えたとき、結合部112A,112Bは、その高さ方向(軸線AX方向)に、基準周波数f0の超音波の波長λsに対し、ちょうどその1/4の長さ(LS1=LS2=λs/4)となっていることが判る。従って、この結合部112A,112Bは、基準周波数f0では共振しない。
【0079】
この超音波多周波振動体110について、軸線方向の縦振動系とみなして、分布定数回路で等価回路表示して解析を行うと共に、有限要素法によるモーダル解析を行った。図6に、超音波多周波振動体の周波数特性(インピーダンス特性)を示す。また、図7に、各共振点C1,C2,C3の共振周波数fC1,fC2,fC3で超音波多周波振動体110を励振した場合の、各部の軸線方向の変位の様子を示す。
【0080】
図6の周波数特性のグラフによれば、この超音波多周波振動体110は、主部111A、111B,111C単体の共振周波数である基準周波数f0(=27.22kHz)の付近、具体的には、基準周波数f0あるいはそのごく近傍に1つ、さらに基準周波数f0の下及び上に1づつの合計3つの共振点C1,C2,C3が現れることが判る。各共振点C1,C2,C3の共振周波数fC1,fC2,及びfC3は、それぞれ、fC1=25.69kHz,fC2=27.23kHz、fC3=28.76kHzとなることが判る。
【0081】
また、図7(a)によれば、共振点C1で駆動した場合(C1モードの場合)、3つの主部111A,111B,111Cが順に逆相に振動(伸縮)する。また、これらの間の2つの結合部112A,112Bは、これを挟む2つの主部の間で軸線方向に大きく移動する形態で振動することが判る。
【0082】
次に、図7(b)によれば、共振点C2で駆動した場合(C2モードの場合)、両端の主部111Aと111Cとは、逆相であるが大きく振動(伸縮)する一方、中央の主部111Bはあまり振動しないことが判る。また、これらの間の結合部112A,112Bは、両端の主部111Aあるいは主部111Cの振動に連れて伸縮する形態で振動することが判る。
【0083】
さらに、図7(c)によれば、共振点C3で駆動した場合(C3モードの場合)、3つの主部111A,111B,111Cは互いに同相に振動(伸縮)し、これらの間の2つの結合部112A,112Bは、それぞれ、これらを挟む2つの主部の間で逆相で伸縮する形態で振動することが判る。なお、このC3モードの場合、結合部112A,112B、それぞれがあたかも1つの共振体のように振る舞うことが判る。
【0084】
本変形形態1の超音波多周波振動体110が、何故3つの共振点C1,C2,C3を有する周波数特性となるかについて、詳細は不明であるが、いずれにしても、本変形形態1の超音波多周波振動体110は、3つの共振点C1,C2,C3の共振周波数fC1,fC2,及びfC3で共振し、大きく振動することが判る。
【0085】
そこで、本変形形態1に係る超音波多周波振動体110を、前述の実施形態1に係る超音波処理装置1と同様な超音波処理装置に適用し、超音波振動子31を共振周波数fC1,fC2,あるいはfC3で励振すれば、処理槽内において、その周囲に超音波を放射することができる。
本変形形態1の超音波多周波振動体110は、図7(a)〜(c)に示したように、各部が軸線AX方向に大きく振動するので、各部から、特に、各主部111A,111B,111Cの基端側面111AK,111BK,111CK、及び先端側面111AS,111BS,111CSから超音波が放射される。このため、処理槽内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0086】
しかも、3つのうちのいずれかの共振周波数(例えば共振周波数fC1)の超音波を放射させた場合に、処理槽内に生じる定在波と、他の共振周波数(例えば共振周波数fC2)の超音波を放射させた場合に、処理槽内に生じる定在波とでは、節や腹の位置が異なる。
このため、超音波発振回路で、3つの共振周波数のうち少なくとも2つの共振周波数を選択し、これらの共振周波数を有する駆動波形の信号を、順に切り換えて発生させるようにすれば、処理槽内に生じる定在波の位置が一定せず、さらに、処理槽内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
あるいは、超音波発振回路によって、3つの共振周波数のうち少なくとも2つの共振周波数を選択し、これらの共振周波数の成分を共に含む駆動波形の信号で、超音波振動子31を駆動した場合には、処理槽内に定在波が生じにくく、さらに、処理槽内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0087】
(変形形態2)
ついで、実施形態1の第2の変形形態を、図8〜図10を参照して説明する。本変形形態2は、実施形態1及び変形形態1と、超音波多周波振動体の形態が異なるのみであり、他は同様であるので、本変形形態2にかかる超音波多周波振動体210の形態及び周波数特性等の説明を主として行う。
【0088】
この超音波多周波振動体210も、ステンレス鋼(SUS304)の金属塊を削り出しによって一体に作成してなる金属ブロック体であり、図8に示すように、4つの径大な主部211A,211B,211C,211Dと、これらの間をつなぐ3つの相対的に径小の結合部212A,212B,212Cとを有している。
【0089】
超音波多周波振動体210のうち主部211A,211B,211C,211Dは、それぞれ、直径DD1〜DD4が40mmφ、高さ(軸線AX方向の長さ)LD1〜LD4が90mmの円柱形状である。従って、4つの主部211A,211B,211C,211Dは、同一材質で、互いに合同な形状を有している。
超音波多周波振動体210でも、それぞれの主部211A,211B,211C,211D単体(40φ×90H)で見たとき、各主部211A,211B,211C,211Dは、基準周波数f0で、軸線AX方向に半波長共振する形態とされている(LD1=LD2=LD3=LD4=λd/2)。
【0090】
なお、主部211Aの基端側面211AKにも、超音波伝送体32と連結するための、ネジ孔211AKNが形成されている。この逆の主部211Dの先端側面211DSは、平坦にされている。
【0091】
一方、結合部212A,212B,212Cは、いずれも、直径DS1,DS2,DS3が15mmφ、高さ(軸線AX方向の長さ)LS1,LS2,LS3が45mmの円柱形状である。従って、3つの結合部212A,212B,212Cは、同一材質で、互いに合同な形状を有している。
超音波多周波振動体210でも、結合部212A,212B,212C単体(15φ×45H)で見た場合、各結合部212A,212B,212Cは、その高さ方向(軸線AX方向)に基準周波数f0の超音波の波長λsに対し、その1/4の長さ(LS1=LS2=LS3=λs/4)となっていることが判る。従って、この結合部212A,212B,212Cも、基準周波数f0では共振しない。
【0092】
この超音波多周波振動体210について、軸線方向の縦振動系とみなして、分布定数回路で等価回路表示して解析を行うと共に、有限要素法によるモーダル解析を行った。図9に、超音波多周波振動体の周波数特性(インピーダンス特性)を示す。また、図10に、各共振点D1,D2,D3,D4の共振周波数fD1,fD2,fD3,fD4で超音波多周波振動体410を励振した場合の、各部の軸線方向の変位の様子を示す。
【0093】
図9の周波数特性のグラフによれば、この超音波多周波振動体210は、主部211A,211B,211C,211D単体の共振周波数である基準周波数f0(=27.22kHz)の付近、具体的には、基準周波数f0の下及び上に2づつ合計4つの共振点D1,D2,D3,D4が現れることが判る。各共振点D1,D2,D3,D4の共振周波数fD1,fD2,fD3,及びfD4は、それぞれ、fD1=25.48kHz,fD2=26.55kHz、fD3=27.90kHz、fD4=28.970kHzとなることが判る。
【0094】
また、図10(a)によれば、共振点D1で駆動した場合(D1モードの場合)、4つの主部211A,211B,211C,211Dが順に逆相に振動(伸縮)する。また、これらの間の3つの結合部212A,212B,212Cは、これを挟む2つの主部の間で軸線方向に大きく移動する形態で振動することが判る。
【0095】
次に、図10(b)によれば、共振点D2で駆動した場合(D2モードの場合)、中央の2つの主部211Bと211Cとは、互いに同相で振動(伸縮)する一方、両端の主部211A,211Dは、これらの主部211B及び211Cと逆相に振動(伸縮)する。また、両側の結合部212A及び212Cは、これを挟む2つの主部の間で軸線方向に大きく移動する形態で振動する。一方、結合部212Bは、これを挟む主部211Bと212Cとの間で逆相で伸縮する形態で振動する。つまり、この結合部212Bは、あたかも1つの共振体のように振る舞うことが判る。
【0096】
さらに、図10(c)によれば、共振点D3で駆動した場合(D3モードの場合)、基端側の2つの主部211Aと211Bとは、互いに同相で振動(伸縮)する。また、先端側の2つの主部211Cと211Dも、互いに同相で振動(伸縮)する。但し、主部211A及び211Bと、主部211C及び211Dとは、互いに逆相に振動(伸縮)する。また、中央の結合部212Bは、これを挟む2つの主部211Bと211Cの間で、軸線方向に大きく移動する形態で振動する。一方、両側の結合部212A及び212Cは、これを挟む主部との間で逆相で伸縮する形態で振動する。つまり、これらの結合部212A及び212Cは、あたかも1つの共振体のように振る舞うことが判る。
【0097】
またさらに、図10(d)によれば、共振点D4で駆動した場合(D4モードの場合)、4つの主部211A,211B,211C,211Dは互いに同相に振動(伸縮)し、これらの間の3つの結合部212A,212B,212Cは、それぞれ、これらを挟む2つの主部の間で逆相で伸縮する形態で振動する。つまり、3つの結合部212A,212B,212Cは、それぞれがあたかも1つの共振体のように振る舞うことが判る。
【0098】
本変形形態2の超音波多周波振動体210が、何故4つの共振点D1〜D4を有する周波数特性となるかについて、詳細は不明であるが、いずれにしても、本変形形態2の超音波多周波振動体210は、4つの共振点D1〜D4の共振周波数fD1,fD2,fD3,及びfD4で共振し、大きく振動することが判る。
【0099】
そこで、本変形形態2に係る超音波多周波振動体210を、前述の実施形態1に係る超音波処理装置1と同様な超音波処理装置に適用し、超音波振動子31を共振周波数fD1,fD2,fD3,あるいはfD4で励振すれば、処理槽内において、その周囲に超音波を放射することができる。
本変形形態2の超音波多周波振動体210は、図10(a)〜(d)に示したように、各部が軸線AX方向に大きく振動するので、各部から、特に、各主部211A,211B,211C,211Dの基端側面211AK,211BK,211CK,211DK、及び先端側面211AS,211BS,211CS,211DSから超音波が放射される。このため、処理槽内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0100】
しかも、4つのうちのいずれかの周波数(例えば共振周波数fD1)の超音波を放射させた場合に、処理槽内に生じる定在波と、他の周波数(例えば共振周波数fD2)の超音波を放射させた場合に、処理槽内に生じる定在波とでは、節や腹の位置が異なる。
このため、超音波発振回路で、4つの共振周波数のうち少なくとも2つの共振周波数を選択し、これらの共振周波数を有する駆動波形の信号を、順に切り換えて発生させるようにすれば、処理槽内に生じる定在波の位置が一定せず、さらに、処理槽内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
あるいは、超音波発振回路によって、4つの共振周波数のうち少なくとも2つの共振周波数を選択し、これらの共振周波数の成分を共に含む駆動波形の信号で、超音波振動子31を駆動した場合には、処理槽内に定在波が生じにくく、さらに、処理槽内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0101】
(変形形態3)
ついで、変形形態3に係る超音波多周波振動体310について、図11を参照して説明する。
本変形形態3の超音波多周波振動体310は、図11を図8と対比すれば容易に理解できるように、変形形態2に係る超音波多周波振動体210と外形は同一である。但し、変形形態2に係る超音波多周波振動体210では、4つの主部211A〜211D及び結合部212A〜212Cが、単一の金属塊から削り出されて一体に形成されていた。
これに対し、本変形形態3の超音波多周波振動体310は、4つの主部311A〜311D及び結合部312A〜312Cが、それぞれ別個の超音波振動ユニットU1〜U7として分離されている点で異なる。
【0102】
具体的には、各主部311A〜311Dに対応する超音波振動ユニットU1,U3,U5,U7のうち、基端側面311AK〜311DKにネジ孔311AKN〜311DKNが、また、先端側面311AS〜311CSにネジ孔311ASN〜311CSNを形成されている。従って、3つの主部311A〜311Cに対応する超音波振動ユニットU1,U3,U5は、同一形状で互いに交換使用可能であり、超音波多周波振動体310の組立や修理等の取り扱いが容易になる利点がある。
【0103】
なお、主部311Aの基端側面311AKに穿孔したネジ孔311AKNは、超音波伝送体32等との連結に使用する(図1参照)。一方、最も先端側の主部311Dに対応する超音波振動ユニットU7の先端側面311DSには、ネジ孔を穿孔しない。
但し、この超音波振動ユニットU7の先端側面311DSにもネジ孔を穿孔しておくこともでき、このようにすると、他の超音波振動ユニットU1,U3,U5と同一形状となるので、これらと相互に交換使用可能となり、さらに超音波多周波振動体310の組立や修理等の取り扱いが容易になる利点がある。
【0104】
一方、各結合部312A〜312Cに対応する超音波振動ユニットU2,U4,U6の軸線AX方向の両端(図中、上下端)にも、ネジ孔312AKN〜312CKN及びネジ孔312ASN〜312CSNが形成されている。従って、3つの結合部312A〜312Cに対応する超音波振動ユニットU2,U4,U6は、同一形状で互いに交換使用可能であり、超音波多周波振動体310の組立や修理等の取り扱いが容易になる。
【0105】
そして、これら7ヶの超音波振動ユニットU1〜U7は、互いに対向するネジ孔311ASN等を6ヶの連結ネジ316A〜316Fを用いて、互いに連結し、超音波多周波振動体310を構成している。
【0106】
本変形形態3の超音波多周波振動体310及び各超音波振動ユニットU1〜U7は、上述のように構成されているので、例えば、主部及び結合部の数の変更など、超音波多周波振動体の形状の変更、各部の修理交換などに容易に対応することができる。
また、本変形形態3のように、各超音波振動ユニットU1〜U7を形成し、これらを連結して一体化し超音波多周波振動体310を構成する方が、前述の変形形態2のように、連結部分のない一体の部材からなる超音波多周波振動体210を形成するよりも、製造容易で量産に向いており、安価となる。また、各超音波振動ユニットU1等毎に、長さ等の寸法や共振周波数などの微調整することができるなど、超音波多周波振動体310の各部及び全体の周波数調整も容易となる。
【0107】
(変形形態4)
ついで、変形形態4に係る超音波多周波振動体410について、図12を参照して説明する。
本変形形態4の超音波多周波振動体410は、前述の図8及び図12と対比すれば容易に理解できるように、変形形態2,3に係る超音波多周波振動体210と外形は同一である。但し、変形形態3に係る超音波多周波振動体310では、7つの超音波振動ユニットU1〜U7に分離されていた。
これに対し、本変形形態4の超音波多周波振動体410は、3つの超音波振動ユニットU11〜U13に分離されている点で異なる。
【0108】
具体的には、超音波振動ユニットU11は、主部411A及び411Bと、これらの間に位置する結合部412Aを併せたものに相当している。また、超音波振動ユニットU13は、主部411C及び411Dと、これらの間に位置する結合部412Cを併せたものに相当している。一方、超音波振動ユニットU11は、結合部412Bに相当している。
また、超音波振動ユニットU11の両端、即ち、主部411Aの基端側面411AK及び主部411Bの先端側面411BSには、それぞれネジ孔411AKN,411BSNが形成されている。また、超音波振動ユニットU13の両端、即ち、主部411Cの基端側面411CK及び主部411Dの先端側面411DSには、それぞれネジ孔411CKN,411DSNが形成されている。またこれに対応して、超音波振動ユニットU12の両端にも、ネジ孔412BKN,412BSNが形成されている。
【0109】
このようにされているので、超音波振動ユニットU11とU13とは、同一形状で互いに交換使用可能であり、超音波多周波振動体410の組立や修理等の取り扱いが容易になっている。
なお、本変形形態4では、超音波振動ユニットU13のうち、最も先端側の主部411Dに対応する先端側面411DSにも、ネジ孔411DSNを穿孔してあるが、これは、上述のように、超音波振動ユニットU11とU13とを同一形状にするためである。
【0110】
そして、これら3ヶの超音波振動ユニットU11〜U13は、互いに対向するネジ孔411BSN等を2つの連結ネジ416A,416Bを用いて、互いに連結し、超音波多周波振動体410を構成している。
【0111】
本変形形態4の超音波多周波振動体410及び超音波振動ユニットU11〜U13も、前述の変形形態3の超音波多周波振動体310及びユニットU1〜U7と同様の効果を得ることができる。
即ち、主部及び結合部の数の変更など、超音波多周波振動体の形状の変更、各部の修理交換などに容易に対応することができる。また、前述の変形形態2のように、連結部分のない一体の部材からなる超音波多周波振動体210を形成するよりも、製造容易で量産に向いており、安価となる。また、各超音波振動ユニットU11等毎に、長さ等の寸法や共振周波数などの微調整することができるなど、超音波多周波振動体410の各部及び全体の周波数調整も容易である。
【0112】
前記した変形形態3では、超音波多周波振動体310に用いる超音波振動ユニットU1等を、基本的に各主部及び結合部に対応させた形状としたので、各超音波振動ユニットU1等は、基本形状として2種類の形態を有するものとなった。また、上記した本変形形態4では、超音波多周波振動体410に用いる超音波振動ユニットU11等を、上述の形態としたので、各超音波振動ユニットU11等は、2種類の形態を有するものとなった。
しかし、各超音波振動ユニットは、互いに同形であっても異形であっても良い。また、変形形態3,4からも判るように、1つの超音波振動ユニット内に、1つの主部が含まれている超音波振動ユニット(例えばU1)としても、複数の主部及びこれらの間の結合部が含まれている超音波振動ユニット(例えばU11)としても良い。
【0113】
また、変形形態3の超音波多周波振動体310では、各ユニットU1等を互いを連結する連結面を、各主部と結合部との間の位置、つまり、各主部の基端側面311BK等あるいは先端側面311AS等に一致させた。同様に、本変形形態4の超音波多周波振動体410では、各ユニットU11等を互いを連結する連結面を、主部411Bの先端側面411BS及び主部411Cの基端側面411CKに一致させた。
このため、主部311A等の内部に連結面を位置させる場合に比して、界面でのロスが生じにくく、超音波振動を超音波振動ユニットU1,U11等同士の間で効率的に伝えることができる。
なお、本変形形態3,4では、各ユニットU1等の連結面を、各主部と結合部との間に位置させたが、例えば、結合部312A,412B等の軸線AX方向中央などに連結面を位置させることもできる。
【0114】
また、本変形形態3,4では、超音波振動ユニットU1等、相互の連結手法として、上述の変形形態3,4で示した、互いの連結面にネジ孔を穿設し、連結面同士を突き合わせて、両方のネジ孔に跨るように埋め込んで配置した連結ネジ(ボルト)で締結する手法を採用した。そのほか、一方の超音波振動ユニットに雄ネジ部を突設し、他方の超音波振動ユニットにネジ孔を凹設し、これらをネジ止めする手法を取ることもできる。また、接着剤によって接着する、あるいは接着剤による接着と連結ネジ等による締結とを併用することもできる。
また、変形形態3,4に係る超音波多周波振動体310,410は、変形形態2の超音波多周波振動体210と同様にして、超音波処理装置等に適用することができる。
【0115】
(変形形態5)
ついで、変形形態5を、図13を参照して説明する。
本変形形態5に係る超音波処理装置501は、実施形態1に係る超音波処理装置1(図1参照)と対比すれば容易に理解できるように、超音波を発生する超音波振動装置502の構成、さらに具体的には、超音波多周波振動体10に超音波振動を与える超音波振動源530の構成、及びこれを駆動する超音波発振回路505が異なるのみであるので、この部分を主として説明し、他の説明は省略する。
【0116】
上述したように、本変形形態5に係る超音波処理装置501は、超音波処理装置1におけるのと同様の処理槽60及び超音波多周波振動体10を備えるほか、超音波振動源530及び超音波発振回路505を有する。
このうち、超音波振動源530は、圧電セラミックを用いた公知のボルト締めランジュバン型超音波振動子531A,531Bと、これらで発生させた超音波振動を合成してより強力な超音波振動とする公知のパワー合成装置538、及び超音波振動を超音波多周波振動体10に伝送するための公知の超音波伝送体32とからなる。
また、超音波発振回路505は、超音波振動子531A,531Bを2種類の所定周波数fB1,fB2で駆動するため公知の駆動回路であるが、前述の超音波発振回路5に比して、2つの超音波振動子531A,531B同相で駆動するため、より出力を大きく取れるものである。
【0117】
パワー合成装置538のうち、パワー集成板538Aは、略円環状の金属ブロックであり、その側面のうち、ちょうどその軸線AXを挟んで対向する位置に、超音波振動子531Aと531Bとが、連結ネジ536A,536Bを用いて連結されている。また、パワー集成板538Aの内側には、略円柱状の変換コラム538Bが締まり嵌め状態で密着して挿入されている。
このため、2つの超音波振動子531A,531Bを同相で振動させると、パワー集成板538Aが共振して、径方向振動(図13(c)において水平方向振動)を生じる。すると、このパワー集成板538Aに嵌挿された変換コラム538Bが、軸線AX方向に共振する。かくして、この軸線AX方向の振動を、超音波伝送体32を介して超音波多周波振動体10に伝えるのである。
【0118】
この際、超音波伝送体32から取り出しうる超音波エネルギは、概略、2つの超音波振動子531A,531Bがら出力された超音波エネルギの和になる。かくして、本変形形態5の超音波処理装置501では、2つの超音波振動子531A,531Bを用いることで、実施形態1の超音波処理装置1よりも強力な超音波を、超音波多周波振動体10から放射させることができ、被処理流体Pをより強力な超音波で処理することができる。
【0119】
なお、本変形形態5及び図13においては、超音波振動源530に接続する超音波多周波振動体として、2つの主部11A,11B及び1つの結合部12Aを有する超音波多周波振動体10を用いた例を示した。
しかし、他の超音波多周波振動体、例えば、変形形態1,2(図5、図8参照)の超音波多周波振動体110,210等を用いることもできる。
【0120】
(実施形態2)
ついで、実施形態2に係る先端面超音波放射装置601を、図14を参照して説明する。本実施形態2の先端面超音波放射装置601は、具体的には、被処理流体P内に浸漬した部材(部品等、図示しない)を超音波洗浄する超音波洗浄機である。この先端面超音波放射装置601は、実施形態1に係る超音波振動装置2(図1参照)、超音波発振回路5,及び被処理流体Pを貯留した貯留槽660を備えている。超音波振動装置2は、超音波多周波振動体10とこれを励振する超音波振動源30からなる。貯留槽660の底板660Bには、超音波多周波振動体10のうち、先端側(図14において上方)の主部11Bの先端面11BSが密着して固着されてなる。
【0121】
従って、超音波発振回路5によって、超音波振動源30を励振して超音波振動を発生させ、超音波多周波振動体10を共振周波数fB1あるいはfB2で共振させると、底板660Bを介して間接に、被処理流体P内に超音波が放射される。従って、被処理流体Pと共に金属部品などの部材を貯留槽660内に投入すれば、このような部材を超音波洗浄することができる。本実施形態2でも用いる超音波多周波振動体10は、図1,図2に示したように、2つの主部11A,11B及び結合部12Aを連結した、軸線AX方向に延びた形状を有し、振動モード(図4(a)(b)参照)に応じて、先端面11BSが軸線AX方向に大きく振動するので、この先端面11BSから強い超音波を放射することができる。
【0122】
しかも、本実施形態2の先端面超音波放射装置601では、超音波発振回路5で、共振周波数fB1を有する駆動波形の信号と、共振周波数fB2を有する駆動波形の信号とを、交互に切り換えて発生させるようにすれば、貯留槽660に貯留された被処理流体P内に生じる定在波の位置が一定せず、さらに、貯留槽660内の超音波音場の大きさを均一としやすい。従って、さらに均一に部材を超音波洗浄することができる。
あるいは、超音波発振回路5によって、共振周波数fB1の成分と共振周波数fB2の成分の両者を含む駆動波形で、超音波振動子31を駆動した場合でも、貯留槽660内に定在波が生じにくく、さらに、貯留槽660内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0123】
なお、本実施形態2の先端面超音波放射装置601では、被処理流体Pに対して超音波を照射することによって、この被処理流体Pと共に貯留槽660内に投入した部材の超音波洗浄を行うものとして説明した。
しかし、本実施形態2の先端面超音波放射装置601でも、貯留槽660内に貯留した被処理流体Pに何等かの変化を与えられる処理を行うことができればよく、例えば、被処理流体Pに関する乳化、分散、脱泡、化学反応の促進、汚泥処理、PCB処理など有害物質の分解・無害化、殺菌、燃料改質、バイオプロセスや電気化学プロセスにおける各種処理などが挙げられる。また、被処理流体Pと共に他の被処理物を貯留槽660内に投入することにより、被処理物の破砕などを行わせることもできる。
【0124】
(変形形態6)
ついで、変形形態6に係る先端面超音波放射装置701を、図15を参照して説明する。本変形形態6の先端面超音波放射装置701も、具体的には、被処理流体P内に浸漬した部材(部品等)を超音波洗浄する超音波洗浄機である。
この先端面超音波放射装置701は、前述の実施形態2に係る先端面超音波放射装置601とは、超音波振動装置702及び超音波多周波振動体710が異なるものである。そこで、これらについて説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0125】
本変形形態6の超音波多周波振動体710は、主部711A,711B及びこれらの間に介在する結合部712Aからなり、2つの超音波振動ユニットU71,U72からなる。このうち、超音波振動ユニットU72は、主部711Bと結合部712Aを含み、実施形態1に係る超音波多周波振動体10の主部11B及び結合部12Aと、同材質で同形状である。但し、その基端(結合部712Aの基端)には、ネジ孔712AKNが形成されている。
【0126】
一方、図15を参照すれば容易に理解できるように、超音波振動ユニットU71は、単体で、主部711Aとなっている。この主部711Aは、超音波多周波振動体10の主部11Aとは異なり、全体が、圧電素子を用いたいわゆるボルト締めランジュバン型超音波振動子とされている。従って、この主部711A(超音波振動ユニットU71)は、超音波発振回路5で駆動することにより、超音波振動を発生させることができる。このため、前述の実施形態2の先端面超音波放射装置601(図14参照)と異なり、超音波振動子31を含む超音波振動源30を備えなくとも、超音波振動を発生させることができる。その一方で、この主部711Aは、主部711B及び超音波多周波振動体10の主部11Aと同じく、基準周波数f0の超音波振動を加えたとき、軸線AX方向に半波長共振(1/2波長共振)するように各部の寸法が選択されている。かくして、この主部711Aは、超音波多周波振動体710を超音波振動させる超音波振動源としても、基準周波数f0で軸線AX方向に半波長共振する共振体としても機能する。従って、実施形態1の超音波多周波振動体10と同様に、超音波多周波振動体710も、共振周波数fB1及びfB2で共振する。
【0127】
超音波振動ユニットU71とU72とは、結合部712Aの基端に形成したネジ孔712AKNと、超音波振動ユニットU71(主部711A)の先端側面711ASに形成したネジ孔711ASNとを連結ネジ716で連結して、超音波多周波振動体710を構成している。この超音波多周波振動体710は、それ自身で超音波振動可能な超音波振動装置702にもなっている。
【0128】
本変形形態6の先端面超音波放射装置701は、上述の超音波振動装置702のほか、実施形態2と同様の、超音波発振回路5及び被処理流体Pを貯留した貯留槽660を備えている。貯留槽660の底板660Bには、超音波多周波振動体710のうち、先端側(図15において上方)の主部711Bの先端面711BSが密着して固着されてなる。
【0129】
従って、超音波発振回路5によって、主部711Aを励振して超音波振動を発生させ、超音波多周波振動体710を共振周波数fB1あるいはfB2で共振させると、被処理流体P内に超音波が放射されるので、部材を貯留槽660内に投入すれば、このような部材を超音波洗浄することができる。
【0130】
しかも、本変形形態6の先端面超音波放射装置701でも、主部711Aを、共振周波数fB1を有する駆動波形と、共振周波数fB2を有する駆動波形とを、交互に切り換えて駆動すれば、被処理流体P内に生じる定在波の位置が変動するので、さらに貯留槽660内の超音波音場の大きさを均一としやすい。従って、さらに均一に部材を超音波洗浄することができる。
あるいは、共振周波数fB1の成分と共振周波数fB2の成分の両者を含む駆動波形で、主部711Aを駆動した場合でも、貯留槽660内に定在波が生じにくく、さらに、貯留槽660内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0131】
(変形形態7)
ついで、変形形態7に係る先端面超音波放射装置801を、図16を参照して説明する。本変形形態7の先端面超音波放射装置801も、具体的には、被処理流体P内に浸漬した部材(部品等)を超音波洗浄する超音波洗浄機である。
この先端面超音波放射装置801は、前述の実施形態2及び変形形態6に係る先端面超音波放射装置601,701とは、超音波振動装置802、超音波多周波振動体810、及び超音波発振回路805が異なるものである。そこで、これらについて説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0132】
本変形形態7の超音波多周波振動体810は、超音波振動ユニットU81,U82,U83からなる。これらは、それぞれ主部811A、結合部812A、及び主部811Bに対応している。このうち、超音波振動ユニットU82は、結合部812Aに対応しており、実施形態1に係る超音波多周波振動体10の結合部12Aと、同材質で同形状である。但し、その両端には、それぞれネジ孔812AKN,812ASNが形成されている。
【0133】
一方、図16を参照すれば容易に理解できるように、超音波振動ユニットU81及びU83は、単体で、主部811A,811Bに対応している。この主部811A,811Bは、それぞれ、前述の変形形態6に係る超音波多周波振動体710の主部711Aと同じく、全体が、圧電素子を用いたいわゆるボルト締めランジュバン型超音波振動子とされている。従って、この主部811A,811Bを超音波発振回路805で駆動することにより、超音波振動を発生させることができる。従って、前述の変形形態6と同様、超音波振動子31を含む超音波振動源30を備えなくとも、超音波振動を発生させることができる。
【0134】
その一方で、この主部811A,811Bは、いずれも、基準周波数f0の超音波振動を加えたとき、軸線AX方向に半波長共振(1/2波長共振)するように各部の寸法が選択されている。かくして、この主部811A,811Bは、それぞれが、超音波多周波振動体810を超音波振動させる超音波振動源としても、基準周波数f0で軸線AX方向に半波長共振する共振体としても機能する。従って、超音波多周波振動体10と同様に、超音波多周波振動体810も、共振周波数fB1及びfB2で共振する。
【0135】
超音波振動ユニットU81,U82,U83は、結合部812Aの両端に形成したネジ孔812AKN,812ASNと、超音波振動ユニットU81(主部811A)の先端側面811ASに形成したネジ孔811ASN、及び、超音波振動ユニットU83(主部811B)の基端側面811AKに形成したネジ孔811AKNとを、それぞれ連結ネジ816A,816Bで連結して、超音波多周波振動体810を構成している。この超音波多周波振動体810は、それ自身で超音波振動可能な超音波振動装置802にもなっている。
【0136】
本変形形態7の先端面超音波放射装置801は、上述の超音波振動装置802のほか、実施形態2及び変形形態6と同様の、被処理流体Pを貯留した貯留槽660を備えている。貯留槽660の底板660Bには、超音波多周波振動体810のうち、先端側(図16において上方)の主部811Bの先端面811BSが密着して固着されてなる。
【0137】
従って、超音波発振回路805によって、主部811A及び811Bを励振して超音波振動を発生させ、超音波多周波振動体810を共振周波数fB1あるいはfB2で共振させると、底板660Bを介して間接に、被処理流体P内に超音波が放射される。従って、被処理流体Pと共に金属部品などの部材を貯留槽660内に投入すれば、このような部材を超音波洗浄することができる。
【0138】
しかも、本変形形態7の先端面超音波放射装置801でも、超音波発振回路805で、共振周波数fB1を有する駆動波形の信号と、共振周波数fB2を有する駆動波形の信号とを、交互に切り換えて発生させるようにすれば、貯留槽660に貯留された被処理流体P内に生じる定在波の位置が一定せず、さらに、貯留槽660内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
あるいは、超音波発振回路805によって、共振周波数fB1の成分と共振周波数fB2の成分の両者を含む駆動波形で、超音波振動子31を駆動した場合でも、貯留槽660内に定在波が生じにくく、さらに、貯留槽660内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0139】
(実施形態3)
ついで、実施形態3に係る先端面超音波放射装置901を、図17を参照して説明する。
本実施形態3の先端面超音波放射装置901は、具体的には、被処理流体Pを乳化する超音波ホモジナイザである。この先端面超音波放射装置901は、実施形態1に係る超音波振動装置2(図1参照)、超音波発振回路5,及び被処理流体Pを貯留した貯留槽960を備えている。超音波振動装置2は、超音波多周波振動体10とこれを励振する超音波振動源30からなる。本実施形態3の先端面超音波放射装置901は、超音波多周波振動体10の先端側の主部11Bの先端面11BSを、貯留槽960に貯留され被処理流体Pに浸漬して使用する。
【0140】
従って、超音波発振回路5によって、超音波振動源30を励振して超音波振動を発生させ、超音波多周波振動体10を共振周波数fB1あるいはfB2で共振させると、直接、被処理流体P内に超音波が放射され、被処理流体Pが乳化される。
【0141】
本実施形態3でも用いる超音波多周波振動体10は、先端面11BSから強い超音波を放射することができる。
しかも、本実施形態3の先端面超音波放射装置901では、超音波発振回路5で、共振周波数fB1を有する駆動波形の信号と、共振周波数fB2を有する駆動波形の信号とを、交互に切り換えて発生させるようにすれば、被処理流体P内に生じる定在波の位置が一定せず、さらに、貯留槽960内の超音波音場の大きさを均一として、被処理流体Pをより均一に乳化できる。
あるいは、超音波発振回路5によって、共振周波数fB1の成分と共振周波数fB2の成分の両者を含む駆動波形で、超音波振動子31を駆動した場合でも、貯留槽960内に定在波が生じにくく、さらに、貯留槽960内の超音波音場の大きさを均一としやすい。
【0142】
(実施形態4)
ついで、実施形態4に係る超音波加工装置1001を、図18を参照して説明する。本実施形態4の超音波加工装置1001は、具体的には、超音波加工工具1071〜1074を付け換えて、様々な超音波加工を行う超音波加工装置である。この超音波加工装置1001は、実施形態1に係る超音波振動装置2(図1参照)、超音波発振回路5のほか、付け換え可能な超音波加工工具1071〜1074を備えている。超音波振動装置2は、超音波多周波振動体10とこれを励振する超音波振動源30からなる。本実施形態4の超音波加工装置1001は、超音波多周波振動体10の先端側の主部11Bの先端面11BSに形成したネジ孔11BSNを用いて、各超音波加工工具1071〜1074を付け換えて使用する。このうち、1071はヤスリ、1072がリーマ、1073はのこぎりである。また、1074は篩であり、ふるい網1074Aが張架されてなる。
【0143】
従って、超音波多周波振動体10の先端に、超音波加工工具1071〜1074のいずれか(例えばヤスリ1071)を取り付けて、超音波発振回路5によって、超音波振動源30を励振して超音波振動を発生させ、超音波多周波振動体10を共振周波数fB1あるいはfB2で共振させると、主部11Bの先端面11BSに取り付けられた超音波加工工具(例えばヤスリ1071)が、これらの周波数で超音波振動する。これにより、図示しない被加工物を加工するに当たり、超音波振動による効果が重畳される。
【0144】
特に、本実施形態4の超音波加工装置1001では、超音波発振回路5を用いて、共振周波数fB1を有する駆動信号と、共振周波数fB2を有する駆動信号とを、交互に発生させれば、加えられる超音波振動によって超音波加工工具1071〜1074に生じる定在波の位置を切り換えることができるので、さらに、超音波加工を均一に行うことができる。
あるいは、超音波発振回路5によって、共振周波数fB1の成分と共振周波数fB2の成分の両者を含む駆動波形で、超音波振動子31を駆動した場合でも、超音波加工工具1071〜1074に定在波が生じにくく、さらに超音波加工を均一に行うことができる。
【0145】
(実施形態5)
ついで、実施形態5に係る先端面超音波放射装置1101を、図19を参照して説明する。本実施形態5の先端面超音波放射装置1101は、具体的には、水WTの上に浮かべたボートSHの船外に設置し、水中の魚群等を探知する魚群探知機である。この先端面超音波放射装置1101は、前述の変形形態6に係る超音波振動装置702(図15参照)、駆動処理装置1105、及び、超音波振動装置702を囲むケース1160を備えている。超音波振動装置702は、前述のように超音波振動子を兼用する主部711A、結合部712A、及び主部711Bを有する超音波多周波振動体710でもある。
【0146】
本実施形態5の先端面超音波放射装置1101は、駆動処理装置1105で生成した共振周波数fB1あるいはfB2のバースト波状の駆動信号により、間欠的に超音波振動させられる。これにより、超音波多周波振動体710の先端から、ケース1160の底板1160Bを介して、水中に周波数がfB1あるいはfB2の超音波が放射される。
また、超音波多周波振動体710が駆動されていない期間には、水中からの超音波(エコー)を底板1160Bを介して、超音波多周波振動体710で受波し、主部711Aで電気信号に変換する。この電気信号を駆動処理装置1105で信号処理して、魚群の有無や水底の様子など、水中の様子をモニタ等に表示する。従って、本実施形態5の先端面超音波放射装置1101は、先端面超音波受波装置としても機能している。
【0147】
特に、本実施形態5の先端面超音波放射装置(先端面超音波受波装置)1101では、超音波多周波振動体710が2つの共振周波数fB1及びfB2を有しているので、駆動処理装置1105で、バースト波状の駆動信号の周波数を、水中の状況などに応じて、観測しやすい共振周波数fB1及びfB2のいずれかに切り換えて使用することができる。
あるいは、共振周波数fB1を有するバースト波状の駆動信号と、共振周波数fB2を有するバースト波状の駆動信号とを、交互に発生させれば、超音波多周波振動体710から異なる周波数の超音波を交互に発射することができ、また、異なる周波数の超音波(エコー)を交互に受波することができる。これにより、水中に存在する魚群等、あるいは水底などの物体の周波数の異なる超音波に対する特性の違い、放射された超音波が物体に当たるときの超音波の位相などによる挙動の違いによって、物体のあるいは水中の様子のさらに詳細な情報を得ることができる。
あるいは、超音波発振回路5によって、共振周波数fB1の成分と共振周波数fB2の成分の両者を含むバースト波状の駆動信号で超音波振動子31を駆動しし、2つの周波数を有する超音波が放射でき、また受波することもできる。
【0148】
以上において、本発明を実施形態1〜5、及び変形形態1〜7に即して説明したが、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態等では、主部11A等を円柱形状としたが、この主部単独で見たと仮定した場合、基準周波数f0で共振する形態のうちで、角柱状、円板状、球状、円環状などの形態とすることもできる。
同様に、上述の実施形態等では、結合部12A等を円柱形状としたが、主部11A等より径小で、この結合部の長さLS(LS1等)が、0<Ls<λs/4となる範囲で、角柱状、鼓状、樽状などの形態とすることもできる。
【0149】
また、上述した実施形態等では、主部11A等及び結合部12A等を、ステンレスで作成した例を示したが、処理する被処理物や処理条件などに応じて適宜の材質を選択すれば良く、例えば、ハステロイ、インコネル、チタン、チタン合金、アルミニウム、ジュラルミンなどの金属や、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックなどを用いることができる。
また、変形形態6,7では、主部711A,811A,811Bにおいて、全体が、圧電素子を用いたボルト締めランジュバン型超音波振動子とされたものを示したが、主部の一部が超音波振動子とされているものであっても良い。また、圧電素子に代えて、磁歪材料、電歪材料を用いた超音波振動子などを用いることもできる。
【0150】
また、上述の実施形態1等では、主部11A等の軸線AX方向の寸法LD1等を、いずれも、基準周波数f0の超音波の波長λdに対し、半波長の長さ(LD1=LD2=LD3=LD4=λd/2)とした。しかし、主部11A等は、基準周波数f0の超音波で共振するならば、その長さをLD1=LD2=LD3=LD4=λdとするなど、各主部の寸法を全波長共振、さらには、3/2波長共振する長さとすることもできる。
また、上述の実施形態1等では、結合部12A等の軸線AX方向の寸法LS1等を、いずれも、基準周波数f0の超音波の波長λsに対し、1/4波長の長さ(LS1=LS2=LS3=λs/4)とした。しかし、結合部12A等は、基準周波数f0の超音波の波長λsに対し、半波長以下の長さであれば良い(0<LS1=LS2=LS3<λs/2)。またさらに好ましくは、結合部の長さを、実施形態等のように、λs/4に近い値、λs/8<LS1=LS2=LS3<3λs/8)とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】実施形態1にかかる超音波多周波振動体、超音波振動装置、及び超音波処理装置を示す図であり、(a)は処理槽の上面を透視した状態における平面図、(b)は処理槽を破断して示す正面図である。
【図2】実施形態1に係る超音波多周波振動体の正面図である。
【図3】実施形態1に係る超音波多周波振動体の周波数特性を示すグラフである。
【図4】実施形態1に係る超音波多周波振動体の振動の様子を示す説明図であり、(a)は共振周波数fB1で振動させたときの振動モード(B1モード)における振動の様子を、(b)は共振周波数fB2で振動させたときの振動モード(B2モード)における振動の様子を示す。各図に示されている曲線は、超音波多周波振動体の各部についての軸線AX方向の変位(振幅)を示す。
【図5】変形形態1に係る超音波多重振動体の形状を示す正面図である。
【図6】変形形態1に係る超音波多周波振動体の周波数特性を示すグラフである。
【図7】変形形態1に係る超音波多周波振動体の振動の様子を示す説明図であり、(a)は共振周波数fC1で振動させたときの振動モード(C1モード)における振動の様子を、(b)は共振周波数fC2で振動させたときの振動モード(C2モード)における振動の様子を、(c)は共振周波数fC3で振動させたときの振動モード(C3モード)における振動の様子を示す。各図に示されている曲線は、超音波多周波振動体の各部についての軸線AX方向の変位(振幅)を示す。
【図8】変形形態2に係る超音波多重振動体の形状を示す正面図である。
【図9】変形形態2に係る超音波多周波振動体の周波数特性を示すグラフである。
【図10】変形形態2に係る超音波多周波振動体の振動の様子を示す説明図であり、(a)は共振周波数fD1で振動させたときの振動モード(D1モード)における振動の様子を、(b)は共振周波数fD2で振動させたときの振動モード(D2モード)における振動の様子を、(c)は共振周波数fD3で振動させたときの振動モード(D3モード)における振動の様子を、(d)は共振周波数fD4で振動させたときの振動モード(D4モード)における振動の様子を示す。各図に示されている曲線は、超音波多周波振動体の各部についての軸線AX方向の変位(振幅)を示す。
【図11】変形形態3に係り、超音波振動ユニット及びこれを連結した超音波多周波振動体の形状を示す正面図である。
【図12】変形形態4に係り、超音波振動ユニット及びこれを連結した超音波多周波振動体の形状を示す正面図である。
【図13】変形形態5にかかる超音波多周波振動体、超音波振動装置、及び超音波処理装置を示す図であり、(a)は処理槽の上面を透視した状態における平面図、(b)は処理槽を破断して示す正面図(c)は処理槽を破断して示す側面図である。
【図14】実施形態2に係り、実施形態1に係る超音波多周波振動体及び超音波振動体(図1参照)を用いた、先端面超音波放射装置(超音波洗浄機)を示す説明図である。
【図15】変形形態6に係り、超音波多周波振動体及び超音波振動体を用いた、先端面超音波放射装置(超音波洗浄機)を示す説明図である。
【図16】変形形態7に係り、超音波多周波振動体及び超音波振動体を用いた、先端面超音波放射装置(超音波洗浄機)を示す説明図である。
【図17】実施形態3に係り、実施形態1に係る超音波多周波振動体及び超音波振動体(図1参照)を用いた、先端面超音波放射装置(超音波ホモジナイザ)を示す説明図である。
【図18】実施形態4に係り、実施形態1に係る超音波多周波振動体及び超音波振動体(図1参照)を用いた、超音波加工装置を示す説明図である。
【図19】実施形態5に係り、変形形態6に係る超音波多周波振動体及び超音波振動体(図14参照)を用いた、先端面超音波放射装置及び先端面超音波受波装置(魚群探知機)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0152】
AX 軸線
P 被処理流体(被処理物)
SH ボート
WT 水
B1,B2,C1,C2,C3,D1,D2,D3,D4 共振点
B1,fB2、fC1,fC2,fC3,fD1,fD2,fD3,fD4 (共振点における)共振周波数
1,501 超音波処理装置
601,701,801,901,1101 先端面超音波放射装置
1001 超音波加工装置
1101 先端面超音波受波装置
2,502,702,802 超音波振動装置
5,505,805 超音波発振回路
1105 駆動処理装置
10,110,210,310,710,810 超音波多周波振動体
11A,11B,111A,111B,111C,211A,211B,211C,211D,311A,311B,311C,311D,411A,411B,411C,411D,711A,711B,811A,811B 主部
711A,811A,811B 超音波振動子
11AK,11BK,111AK,111BK,111CK,211AK,211BK,211CK,211DK,311AK,311BK,311CK,311DK,411CK (主部の)基端側面
11AS,11BS,111AS,111BS,111CS,211AS,211BS,211CS,211DS,311AS,311BS,311CS,311DS,411BS,711AS,711BS (主部の)先端側面
311BK,311CK,311DK,311AS,311BS,311CS,411BS,411CK 連結面
11AKN,111AKN,211AKN,311AKN (超音波振動源との結合用の)ネジ孔
11BSN (超音波加工工具結合用の)ネジ孔
311BKN,311CKN,311DKN,411CKN (主部の基端側面に形成したユニット同士の結合用の)ネジ孔
311ASN,311BSN,311CSN,411BSN,711ASN (主部の先端側面に形成したユニット同士の結合用の)ネジ孔
12A,112A,112B,212A,212B,212C,312A,312B,312C,412A,412B,412C,712A 結合部
312AKN,312BKN,312CKN,412BK,712AKN (結合部の基端側に形成したユニット同士の結合用の)ネジ孔
312ASN,312BSN,312CSN,412BSN (結合部の先端側に形成したユニット同士の結合用の)ネジ孔
DD1,DD2,DD3,DD4 主部の直径
LD1,LD2,LD3,LD4 主部の高さ(軸線方向長さ)
DS1,DS2,DS3 結合部の直径
LS1,LS2,LS3 結合部の高さ(軸線方向長さ)
U1,U2,U3,U4,U5,U6,U7,U11,U12,U13,U71,U72,U81,U82,U83 超音波振動ユニット
316A,316B,316C,316D,316E,316F,416A,416B,716 (超音波振動ユニット同士を連結する)連結ネジ
30,530 超音波振動源
31,531A,531B 超音波振動子
32 超音波伝送体
32F フランジ部
36,37,536A,536B 連結ネジ
538 パワー合成装置
538A パワー集成板
538B 変換コラム
60 処理槽
61 処理槽本体
62 流入管
63 流出管
660,960 貯留槽
660B (貯留槽の)底板
1160 ケース
1160B (ケースの)底板
1161 整合層
1071,1072,1073,1074 超音波加工工具
1071 ヤスリ
1072 リーマ
1073 のこぎり
1074 篩
1074A ふるい網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる形態を有する超音波多周波振動体であって、
Nヶ(Nは2以上の自然数)の主部であって、
上記軸線方向に互いに離間して配置され、
各主部は、上記軸線方向に直交する径方向に相対的に大きな径方向寸法を有してなる
主部と、
N−1ヶの結合部であって、
各々の上記主部同士の間に配置されて、上記主部同士を結合し、
隣接する上記主部よりも相対的に小さな径方向寸法を有してなる
結合部と、を備え、
上記主部は、
この主部を単独で取り出したと仮定したとき、基準周波数f0の超音波振動で共振する形態とされてなり、
上記結合部は、
上記基準周波数f0の超音波振動が、この結合部を上記軸線方向に伝わるときの音速をVs、伝わる超音波振動の波長をλs(=Vs/f0)としたとき、
上記軸線方向の長さLSが、0<LS<λs/2を満たし、
上記基準周波数f0の付近に、この超音波多周波振動体全体が共振する共振点が、2ヶ以上、Nヶ以下現れる周波数特性を有する
超音波多周波振動体。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波多周波振動体であって、
前記Nヶの主部は、
いずれも、同材質、同形とされてなる
超音波多周波振動体。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波多周波振動体であって、
前記N−1は複数であり、
前記N−1ヶの結合部は、
いずれも、同材質、同形である
超音波多周波振動体。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波多周波振動体であって、
前記Nヶの主部は、
いずれも、同材質、同形で、前記軸線方向を高さ方向とし、基準周波数f0でこの高さ方向に1/2波長共振する円柱形状を有し、
前記N−1ヶの結合部は、
上記主部よりも径小で、上記軸線方向を高さ方向とし、その長さLSがLS=λs/4の円柱形状を有し、
上記N−1が複数の場合には、上記結合部のいずれもが、同材質、同形であり、
前記基準周波数f0の付近に、この超音波多周波振動体全体が共振する共振点が、Nヶ現れる周波数特性を有する
超音波多周波振動体。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体であって、
連結部分の無い一体に形成されてなる
超音波多周波振動体。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体であって、
複数の同形のまたは異形の超音波振動ユニットを互いに連結してなる
超音波多周波振動体。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波多周波振動体であって、
前記複数の超音波振動ユニットは、
互いを連結する連結面が、
前記結合部に位置する形態、及び、上記結合部と主部との間に位置する形態、の少なくともいずれかとしてなる
超音波多周波振動体。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体であって、
前記Nヶの主部及びN−1ヶの結合部のいずれも、超音波振動子を含まない
超音波多周波振動体。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体であって、
前記Nヶの主部の少なくともいずれかは、
自身を含む上記超音波多周波振動体を、前記2〜Nヶの共振点のうち、少なくとも2つの共振点の共振周波数で、励振可能に構成されてなる超音波振動子を含む
超音波多周波振動体。
【請求項10】
請求項6または請求項7に記載の超音波多周波振動体をなす複数の前記超音波振動ユニットのうちの1つとなる
超音波振動ユニット。
【請求項11】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の超音波多周波振動体と、
上記超音波多周波振動体を、前記軸線方向の基端側から、前記2〜Nヶの共振点のうち、少なくとも2つの共振点の共振周波数で、励振可能に構成されてなる超音波振動源と、を備える
超音波振動装置。
【請求項12】
被処理物である流体または流体及び被処理物を収容する処理槽と、
上記処理槽内に、少なくとも前記超音波多周波振動体を配置してなる請求項11に記載の超音波振動装置と、を有する
超音波処理装置。
【請求項13】
前記超音波多周波振動体を、
このうち前記軸線方向最も先端側の主部の先端面から、被放射物に直接または間接に超音波を放射する形態に配置してなる
請求項11に記載の超音波振動装置を、または請求項9に記載の超音波多周波振動体を有する
先端面超音波放射装置。
【請求項14】
前記超音波多周波振動体を、
このうち前記軸線方向最も先端側の主部の先端面から、直接または間接に、被測定物を伝わる超音波を受波する形態に配置してなる
請求項11に記載の超音波振動装置、または請求項9に記載の超音波多周波振動体を有する
先端面超音波受波装置。
【請求項15】
前記超音波多周波振動体を含む請求項11に記載の超音波振動装置、または請求項9に記載の超音波多周波振動体と、
上記超音波多周波振動体のうち、少なくともいずれかの部位に取付けてなる超音波加工工具と、を備える
超音波加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−36586(P2008−36586A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217287(P2006−217287)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】