説明

超音波式流量計

【課題】 周辺素子のスペック及びコストを抑え消費電力を抑えつつ、時間計測において高精度の分解能を得ることができる超音波式流量計の提供。
【解決手段】 計測波wの発信から受信までの総時間xを計測するラフ・クロック1と、計測波wの受信から計測波受信直後のラフ・クロック・パルス1pの検出までの超過時間aを計測するメイン・クロック2と、計測波受信直後のメイン・クロック・パルス2pの検出から前記計測波受信直後のラフ・クロック・パルス1pの検出までの誤差時間bを計測する遅延整合手段3と、計測波wの受信から計測波受信直後のラフ・クロック・パルス1pの検出までに出力したメイン・クロック・パルス2pの数分に相当する倍数時間dから誤差時間bを減じた残りの時間を総時間xから減じたものを前記所要時間yとして出力する演算手段4を備えた超音波式流量計。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
超音波式流量計に関するものであって、特に、低コスト低消費電力で高分解能な超音波伝搬時間の計測を行う超音波式流量計の実現に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計では、流体が流通する流路の上流及び下流に、一対の超音波センサを、当該流路を横切り、且つ相互に対向する位置関係で設置し、流体が流れる方向(順方向)に発信波形を通過させる際の所要時間と、流体の流れに逆らう方向(逆方向)に発信波形を通過させる際の所要時間の差に基づいて流体の流量を検出するものである。
【0003】
超音波流量計の必要精度は1ns以下であり、一般的には1GHz以上の発振器が必要である。超音波流量計の計測精度が低い場合、例えば、比較的低い発振器による低周波クロックを用いると、当該クロックに応じた誤差が生じ、多数回の計測を経て得た情報を平均化して精度を補償する必要が生じる。その結果、計測回数に応じた消費電力が必要となり、電源の早期消耗の一因となる。
【0004】
一方、前記必要精度を得るに足る1GHz以上の発振器を搭載し高周波クロックを用いると、周辺素子に当該クロックに対応し得る能力が必要となり、設備コストが増大する他、当該周辺素子の消費電力も増大する。
【0005】
そこで、遅延時間に変化を与えつつ複数回の計測結果の平均を得ることにより計測精度を高める手法(第一の手法)や、高周波数クロックと低周波クロックを併せ持ち、それらを適宜切り替えて高周波数クロックの稼働時間を最小限に抑える手法(第二の手法)や(例えば下記特許文献1参照)、計測精度を決定するクロックの原発周波数を低く抑えて、当該原発周波数となるクロックを遅延させた複数のシフトクロックを発生するリングオシレータを用いて形成した逓倍クロックを形成する手法(例えば下記特許文献2参照)など、計測精度を求めつつ消費電力を抑える手法が案出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−213971号公報
【特許文献2】特開2008−215906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1に記載の第一の手法の様に、遅延時間に変化を与えつつ複数回の計測結果の平均を得るとすれば、一の計測結果を得るにあたって複数の発信が必要となり消費電力がかさむこととなる。また、第二の手法の様に、高周波数クロックを依然として最終の分解能のよりどころとする手法では、高周波クロックの稼働時間は削減されるものの、クロック周辺素子のスペックを下げることができない。また、前記特許文献2の様に逓倍クロックを形成する手法で計測精度を維持するためには、依然として高周波数のクロックが必要となることから、逓倍クロック周辺素子のスペックを抑え消費電力を抑えるという目的に対して得られる効果としては不十分であった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、周辺素子のスペック及びコストを抑え消費電力を抑えつつ、時間計測において高精度の分解能を得ることができる超音波式流量計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明による超音波流量計は、流路の上流及び下流に、一対の超音波センサを、当該流路を横切り、且つ相互に対向する位置関係となるように設置し、流体が流れる方向に計測波を通過させる際の所要時間と、流体の流れに逆らう方向に計測波を通過させる際の所要時間の往路差に基いて流体の流量を検出する超音波式流量計である。
【0010】
本発明による超音波流量計は、計測波の発信から受信までの総時間を計測するラフ・クロックと、計測波の受信から計測波受信直後のラフ・クロック・パルスの検出までの超過時間を計測するメイン・クロックと、計測波受信直後のメイン・クロック・パルスの検出から前記計測波受信直後のラフ・クロック・パルスの検出までの誤差時間を計測する遅延整合手段と、超過時間から誤差時間を減じた残りの時間を総時間から減じたものを前記所要時間として出力する演算手段を備え、
前記遅延整合手段は、直列に接続した遅延ゲートと、計測波受信直後のメイン・クロック・パルスの検出後、最も早くメイン・クロック・パルスを出力した遅延ゲートの順位をカウントするカウンタと、前記順位を時間に換算する変換手段と、
を備えることを特徴とする。
尚、前記パルスを検出する際は、立ち上がりエッジ、立下りエッジ、又は中間点のいずれを検出しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明による超音波流量計によれば、ラフ・クロックとメイン・クロックを切り替えることによって、メイン・クロックの稼働時間を短縮することができると共に、更に、メイン・クロックの周期を下回る遅延時間の遅延ゲートを計測時間の一単位とした遅延整合手段を具備することによって、メイン・クロックの低周波数化が可能となり、低消費電力で高分解能の時間計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による超音波式流量計に用いる所要時間計測手法の原理を示したタイミングチャートである。
【図2(A)(B)】(A):本発明による超音波式流量計の一例を示すブロック図並びに(B):発信波及び受信波の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による超音波流量計の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図2(A)は、流体(この例ではガス)が流通する流路(例えば管路)Aを斜めに横切る形で一対の超音波センサ(以下センサと記す)B,Bを配置した超音波式流量計の一例を示したものである。
【0014】
この例は、一方のセンサBからバースト波(計測波)wを発信し、他方のセンサBで当該バースト波wを受信し、発信から受信に至るまでの所要時間を計測することによって、流路Aを流通するガスの流量を計測するものである。
【0015】
当該例は、バースト波wの発信から受信までの総時間xを計測するラフ・クロック1と、バースト波wの受信から計測波受信直後のラフ・クロック・パルス1pの立ち上がり検出までの超過時間aを計測するメイン・クロック2と、計測波受信直後のメイン・クロック・パルス2pの立ち上がり検出から前記計測波受信直後のラフ・クロック・パルス1pの立ち上がり検出までの誤差時間bを計測する遅延整合手段3と、バースト波wの受信から計測波受信直後のラフ・クロック・パルス1pの検出までに出力したメイン・クロック・パルス2pの数分に相当する倍数時間dから誤差時間bを減じた残りの時間を総時間xから減じたものを前記所要時間yとして出力する演算手段4を備えている。
【0016】
前記ラフ・クロック1、メイン・クロック2、及び遅延整合手段3(図1参照)の起動は、クロック制御手段8で制御されている。
ラフ・クロック1は、数MHz程度の方形パルス波(ラフ・クロック・パルス1p)を発振する電気回路であり、メイン・クロック2は、数十MHzから数百MHz程度の方形パルス波(メイン・クロック・パルス2p)を発振する電気回路であり、前記遅延整合手段3は、直列に多数接続した遅延ゲート5と、カウンタ6と、変換手段7とからなるものである。
【0017】
遅延ゲート5は、当該遅延ゲートを通過することにより入力と出力に1ns未満の遅延時間cが発生する素子であって、メイン・クロック2の周波数に応じて数十個から数百個を直列に接続した形で具備する。各遅延ゲートの出力は、各々メイン・クロック・パルス2pと対となる形で比較回路に入力し、当該比較回路で両者の一致・不一致を出力する。
尚、一致とは、例えば、各遅延ゲートの出力を、各々メイン・クロック・パルス2pと対となる形でANDゲートに入力し、出力からHi出力を得た際の立ち上がりを検出した場合が挙げられる。
【0018】
カウンタ6は、更に、各遅延ゲートの出力の立ち上がり(又は立ち下りの何れか一方)を検出してカウント動作を行い、計測波受信直後のメイン・クロック・パルス2pの検出後、最も早くメイン・クロック・パルス2pを出力した遅延ゲートGの順位をカウントする。
変換手段7は、当該カウント動作で得たカウント値(周期数)を時間に換算して演算手段4へ出力する。
【0019】
当該例におけるクロック制御手段8は、第一に、バースト波wを発振させるスタートパルスの立ち上がりをトリガーとしてラフ・クロック1を発振させ、例えば、バースト波wの受信後一定の時間を経て停止させ、第二に、バースト波wの受信をトリガーとしてメイン・クロック2を発振させ、計測波受信直後のラフ・クロック・パルス1pの立ち上がり検出後一定の時間を経て停止させ、第三に、計測波受信直後のメイン・クロック・パルス2pの立ち上がりをトリガーとしてカウンタ6のカウント動作をリセット・スタートさせ、計測波受信直後のメイン・クロック・パルス2pの検出後、最も早くメイン・クロック・パルス2pを出力した遅延ゲート5の出力を受けてカウンタ6のカウント動作を終了させる。
【0020】
本発明による超音波式流量計は、上記の如くラフ・クロック1、メイン・クロック2、及び遅延整合手段3を制御することによって、比較的低い周波数のクロックによって、1ns未満の計測精度を得ることができる。
また、高い計測精度を得る為に、1GHz以上のクロックを要することなく、ガス等の超音波式流量計について、低コスト、低消費電力化が可能となる。
【符号の説明】
【0021】
1 ラフ・クロック,1p ラフ・クロック・パルス,
2 メイン・クロック,2p メイン・クロック・パルス,
3 遅延整合手段,
4 演算手段,
5 遅延ゲート,
6 カウンタ,
7 変換手段,
8 クロック制御手段,
A 流路,B 超音波センサ,G ゲート,
w 計測波,
x 総時間,y 所要時間,
a 超過時間,b 誤差時間,c 遅延時間,d 倍数時間,



【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路(A)の上流及び下流に、一対の超音波センサ(B,B)を、当該流路(A)を横切り、且つ相互に対向する位置関係となるように設置し、流体が流れる方向に計測波(w)を通過させる際の所要時間と、流体の流れに逆らう方向に計測波(w)を通過させる際の所要時間の往路差に基いて流体の流量を検出する超音波式流量計において、
計測波(w)の発信から受信までの総時間(x)を計測するラフ・クロック(1)と、
計測波(w)の受信から計測波受信直後のラフ・クロック・パルス(1p)の検出までの超過時間(a)を計測するメイン・クロック(2)と、
計測波受信直後のメイン・クロック・パルス(2p)の検出から前記計測波受信直後のラフ・クロック・パルス(1p)の検出までの誤差時間(b)を計測する遅延整合手段(3)と、
計測波(w)の受信から計測波受信直後のラフ・クロック・パルス(1p)の検出までに出力したメイン・クロック・パルス(2p)の数分に相当する倍数時間(d)から誤差時間(b)を減じた残りの時間を総時間(x)から減じたものを前記所要時間(y)として出力する演算手段(4)を備え、
前記遅延整合手段(3)は、
直列に接続した遅延ゲート(5)と、
計測波受信直後のメイン・クロック・パルス(2p)の検出後、最も早くメイン・クロック・パルス(2p)を出力した遅延ゲート(G)の順位をカウントするカウンタ(6)と、
前記順位を時間に換算する変換手段(7)と、
を備えることを特徴とする超音波式流量計。



【図1】
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【図2(A)(B)】
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【公開番号】特開2013−96901(P2013−96901A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241277(P2011−241277)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000222211)東洋ガスメーター株式会社 (34)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】