説明

超音波式生体監視装置

【課題】生体の呼吸や心拍を測定するとき、非接触でリアルタイムに測定できる超音波式生体監視装置を提供する。
【解決手段】
発信と受信の超音波センサを設け、保育器や新生児用ベッドを使用する生体の呼吸・心拍を非接触で検知する。超音波センサから発信した超音波信号が生体の測定部で反射し、その超音波信号が受信センサへ届くまでの時間を距離として計算する。生体の胸部は呼吸や鼓動の影響で、微細に動いている。その結果、送信センサ・受信センサと測定部との距離が微細に変動する事が、これを連続して測定を行ったデータ波形としてとらえ、そこで得られた呼吸と心拍の波形を電子回路上でアルゴリズムを用いて分離・計算したものをリアルタイムに表示する。この時、生体が移動したことにより変位を検知できなかったり動きを止めた場合、アラームが鳴るなどして周知させる事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス状の超音波を利用し、その反射波を検知するセンサを用いて、生体の呼吸と心拍を、監視・測定することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
保育器や新生児用ベッドを使用する未熟児や新生児の呼吸や心拍の測定は、医療機器や医師・看護士が目視や聴診器などで、一定時間の周期で行っている。
【0003】
従来、人体の心拍を検知するときは、光のセンサを人体に接触させて測定するものがあり、これにより生体の心拍を測定し、異常を検知する事が出来る。(特許文献1参照)
【0004】
さらに、超音波を発するセンサとしては圧電センサとして、圧電体を用いてこれに電圧を加えることによって超音波を発したり検知するものである。これによって、生体の動きを検知する事が出来る。また、生体の移動距離を検知する事が出来る。
【0005】
これらの方法は、粘着物などを利用しているので、生体の皮膚が痛む問題がある。皮膚の弱い未熟児などの新生児に対し、粘着性のあるものを直接皮膚に使用して心拍を測定するには、皮膚が痛むリスクを背負わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−332338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、医療現場では人手不足による問題が多くある。患者の状態を把握する為に呼吸や心拍の測定は欠かせないもので、周期的に看護担当者が目視や、聴診器などを使用して呼吸や心拍を測定しており、その高度な経験を要する労力を必要としている。
【0008】
本発明は、未熟児などの生体に非接触でも高精度な計測ができ、測定値をリアルタイムに測定・表示できる超音波式生体監視装置を提供する事を課題としている。
【0009】
これは、医師、看護士、医療機器の補助となるためになされたものである。
【0010】
従来の方法は、未熟児や低体重児など保育器に入る新生児にとって、心拍を測定する為に粘着性のあるものが皮膚に直接触れるのは、肌の表面が傷んでしまう原因となる。
【0011】
しかしながら皮膚が痛むことがあっても、生命の維持を随時確認することが最優先であることから、やむを得なく皮膚に接触する機器での測定が行われている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
生体に非接触で呼吸・心拍を測定し、かつ高精度に変位を確認できれば、生体に負担がかからない。
【0013】
保育器や新生児用ベッドを使用する生体を監視することにおいて、超音波を使用して受信と発信について各1個以上の超音波センサを備え、この超音波センサには、前記生体の上方向に配置されパルス状の超音波を発信し、前記生体が呼吸した時と心臓の鼓動の複数の僅かな変位を読み取ることが可能である。それをもとに読み取られた生体の情報をモニタに表示する事を特徴とする。
【0014】
この場合の生体の変位の測定は、呼吸・鼓動により生ずる胸部の動きを、アルゴリズムを用いて、呼吸の波形の中に含まれる心拍の小さな波形を分ける処理をする。
【0015】
このような構造の超音波センサは、受信センサを測定部位の上方上部になるように、保育器の内壁又は新生児用ベッドの上部に設置する。
本発明は、以上の構成からなる超音波式生体監視装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の超音波式生体監視装置では生体の上部に超音波センサを設置するようにしたので、未熟児などの新生児が動くことによる超音波の変位を測定することができ、それにより情報をリアルタイムに表示することができる。また、表示部を見ただけで呼吸・心拍の状態が容易に確認できる。また、医師、看護士の目視で呼吸を数える事や、鼓動を数える事など周期的に測定する手間を省こくとができる。さらに、生体の動きが確認できない場合は警告音で知らせることにより、測定時間外に起こりうる生体の変化も見逃すことなく認識することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の使用例である。
【図2】本発明の1個の受信センサを備えた変位測定ユニットの横から見た断面図(a)と、下側から見た図(b)である。
【図3】本発明の変位測定ユニットの角度を表した図である。
【図4】本発明の複数個の受信センサを備えた変位測定ユニットの横から見た断面図(c)と、下側から見た図(d)である。
【図5】本発明の変位測定ユニットの角度を表した図である。
【図6】本発明の表示ユニットの図である。
【図7】本発明の変位測定ユニット・表示ユニットを一体化した図である。
【図8】生体から得られる呼吸・心拍の波形である。
【図9】保育器に本発明の超音波式生体監視装置を取り付けた場合(e)と、新生児用ベッドに本発明の超音波式生体監視装置を取り付けた場合(f)の超音波伝搬経路を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の超音波式生体監視装置の構成の利用例である。この超音波式生体監視装置は、この保育器2の測定位置の上部に発信センサ5・受信センサ6を1個以上設けた超音波センサ3を備えている。生体1は、未熟児などの新生児である。生体1は、例えば保育器2の内部に寝かされており、超音波センサ3は、生体1の情報であって、保育器の内壁に取り付けられている。超音波センサ3には測定された情報を表示可能なモニタ4が接続されている。
変位測定ユニットの形状として、ほぼ平らな表面の測定個所に対しては、図2の発信センサ5一つ、受信センサ6が一つの簡易的なもので対応できる。
【0019】
受信センサ6の角度は図3で示したように、発信センサ5の発信部位が対象物に対しほぼ平行に設置された場合に、受信センサ6を内側に向け平行方向に対して0度から30度が好ましい。この範囲の角度が、生体1を非接触で測定するのに適した角度である。
【0020】
このときの超音波センサ3及び表示モニタ4は、測定部位の上方上部になるよう、超音波センサ3及び表示モニタ4は、例えば保育器2の内部に、落下しないように設置する。
【0021】
図4は、超音波センサ3の他の形状を表したものの1例である。この超音波センサ3は、曲面が多く移動する生体1に対して、測定面に対する向きや凹凸の変化が起きている場合でも測定できるような構造にしたものである。
【0022】
この超音波センサ3には、受信センサ6が複数設けられており、生体1の測定面が前後左右に傾いていても、図5の中央部にある発信センサ5が超音波を発信し生体で反射した超音波を、複数の受信センサ6のいずれかに到達しその移動量で変位を測定する事が可能な配置となっている。尚、受信センサ6の数は限定されていないが2〜6個が好ましい。
【0023】
また、図5について発信センサ5の外側に設置されている受信センサ6は、発信用センサ5の発信面に対して内側に0度〜30度までの複数とも同じ角度に調整が可能である。
【0024】
図6について、超音波センサ3に接続されているモニタ4には、アナログ回路7とデジタル回路8が組み込まれている。この回路から、超音波信号の発信を行い、その信号が受信センサ6へ届いた時間を計算して、表示画面9に表す。
【0025】
超音波センサ3及びモニタ4の材質は、ABS・アクリル樹脂・ポリカーボネート・スチロール、ガラス等が挙げられる。
【0026】
次に、超音波信号の伝搬について説明する。図9に示すように、まず発信センサ5から、測定部位に向かい超音波信号14を発する。測定部位に届いた超音波信号14は、生体1の測定部位から受信センサ6へ到達する。
【0027】
この時の超音波は、超音波を生体1の測定部位に向かって発信し、測定部位からの超音波の反射を受信センサ6に受信するまでの時間を距離に置き換えてその変動を測定部位の動きとしてとらえたものである。
【0028】
発信センサ3から発信し反射して受信するまでにかかった時間を専用アルゴリズムを用いた計算で生体1の情報とし、その測定内容をリアルタイムでモニタ4に表示し続ける。
【0029】
超音波信号は、測定部位で反射し伝搬されるが、凹凸や移動がある場合、測定部位から反射される超音波信号がどの方向に反射しても何れかの受信センサ6へ到達され、非接触でもごく微量な変位を検知する事ができる。
【0030】
また、未熟児などの生体1の皮膚が心拍あるいは呼吸による皮膚の表面の変位は非常に小さく、その動きをリアルタイムに検知する事が必要になるので、高い分解能と応答性が必要になる。
【0031】
次に図9に基づいて、信号処理について説明する。はじめに、発信センサ5が、発信回路により超音波信号が発信し、受信センサ6により受信される。その信号により、呼吸・心拍の検波を行う。
【0032】
次に、図8に基づいて、呼吸・心拍の信号について説明する。図8の実線で示された呼吸波形12・心拍波形13は、超音波センサ3を測定対象の上方上部に取り付けた時に得られるものである。この波形には呼吸と心拍の情報が混在しており、それぞれの波形を分離・数値化してモニタ4に表示する事ができる。
【0033】
これは、時間分解能5nsecでサンプリング周期が3msecの測定ができ、ミクロン単位の位置変位が検出できる。尚、アルゴリズムと超音波センサ3の組み合わせが重要となる。
【0034】
以上のことから、図1の箱状の保育器2や新生児用ベッドを使用する生体1への距離を位置変位として測定でき、かつミクロン単位までの変位が検出できる周波数200kHzの超音波が最適な周波数である事が確認できた。
【0035】
以上の過程で、生体1の僅かな動きを読み、装置の表示部4には生体1の微細な表面の動きを呼吸、心拍としてリアルタイムで表示される。
【0036】
そこで、生体の動きが止まった場合や生体が移動したことにより測定対象となる生体1がおらず、モニタ4に反応が見られない場合、外部に知らせたりすることで、迅速に異常状態を認識することができ、その後的確な行動をすることによって、人体検知に対する利便性、正確性、信頼性を向上させることができる。
【0037】
また、図7について、発信センサ5と受信センサ6が設けられた超音波センサ3に表示画面及び回路が設けられたモニタ4を設ける事により、超音波センサ3とモニタ4をケーブルなどで別々に設置しなくてもよくなり、保育器2以外の新生児用ベッドへの取付も容易になる。
【0038】
本発明にかかる超音波式生体監視装置を説明したが、他の変形例も可能である。例えば、上記実施の形態では、保育器2を用いて説明したが、新生児用ベッドの場合では、アーム11を付ける事によって同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、医療機器の簡易的、補助的役割としても使用できる。また、超音波の反射波を正確に検知し、それらの反射波を時間から距離に変換することから、医療機器のみならず、水やガラスなどの光の変位計では測定できない物質でも、ミクロン単位で測定することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 生体
2 保育器
3 超音波センサ
4 モニタ
5 発信センサ
6 受信センサ
7 アナログ回路
8 デジタル回路
9 心拍と呼吸の表示画面
10 超音波センサと表示モニタの一体型ユニット
11 アーム
12 呼吸波形
13 心拍波形
14 超音波伝搬経路
15 新生児用ベッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保育器や新生児用ベッドを使用する生体を監視することにおいて、超音波を使用して受信と発信について各1個以上の超音波センサを備え、この超音波センサには、前記生体の上方向に配置されパルス状の超音波を発信し、前記生体が呼吸した時と心臓の鼓動の複数の僅かな変位を読み取ることが可能であり、それをもとに読みとられた生体の情報をモニタに表示する事を特徴とした、超音波式生体監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−158517(P2010−158517A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280057(P2009−280057)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(507294395)株式会社ホクシンエレクトロニクス (7)
【Fターム(参考)】