説明

超音波手術器具

【課題】器具の遠位端上にある末端エフェクタ中に変換器を有する超音波部材を備え、任意の軸方向に振動可能な末端エフェクタを備えるよう設計された新規な構成を有する超音波手術器具を提供する。
【解決手段】ハンドルアセンブリ、本体220および末端エフェクタ222を備え、本体220は、遠位方向に延びてハンドルアセンブリを形成し、末端エフェクタ222は、組織の切断、切開、凝固および/または結紮を行うように構成される。末端エフェクタ222は、超音波部材226を備える。変換器は、この超音波部材226に隣接して、超音波部材226上または超音波部材226内に支持され、そして電源に接続される。この電源を作動する際に、変換器は、超音波部材226の振動をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第60/267,251号(2001年2月8日出願)(本明細書中で参考として援用される)に対して優先権を主張する。
【0002】
(1.技術分野)
本開示は、概して超音波手術器具に関する。より詳細には、本開示は、組織の切開、切断、凝固、結紮および/または止血を行うように構成された末端エフェクタを有し、そしてこの器具内に組み込まれた超小型機械式システム(「MEMS」)を有する超音波手術器具に関し、この器具は、開放外科処置および腹腔鏡手術手順または内視鏡手術手順において使用され得る。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の背景)
外科的用途のための超音波器具は、周知であり、そして切開、切断、結紮、組織における凝固および/または止血を行うための種々の外科処置において使用される。代表的には、超音波手術器具は、この器具を握るためのハンドピース、このハンドピースの近位端に装着された変換器、およびこの変換器から器具の本体を通って器具の末端エフェクタまで延びる振動結合器を備える。この変換器は、超音波振動数範囲の振動を生成し、この振動は、器具のハンドピースから振動結合器を介して末端エフェクタへと伝送される。この構成は、いくつかの適用において有効であるが、いくつかの欠点を有する。例えば、器具の出力は、超音波エネルギーがデバイスの近位端からデバイスの遠位端に伝送される際に減衰する。さらに、出力損失は、器具の結合およびシールにおいて増大する。公知の手術器具を扱うために、それ自体が大きくて重い変換器が必要とされる。さらに、振動結合器と器具の静止部品との間の接触は、器具に機械的な欠陥を生じる。最後に、振動結合器は、器具の遠位端から器具の近位端へと体液を引き込むポンプとして作用し、それにより使用後の器具の滅菌を困難にする。
【0004】
細長振動結合器の使用はまた、外科医に利用可能な器具の操作特性を制限する。より具体的には、振動結合器は、振動を変換器から末端エフェクタに伝送するので、関節結合(articulation)接続を振動結合器に組み込むことは困難かつ非効率的である。従って、公知の超音波器具は、代表的には関節結合する末端エフェクタを備えていない。さらに、振動は、器具の近位端にある変換器から器具の遠位端へと、剛性の振動結合器(例えば、細長チタンロッド)に沿って伝送されるので、振動エネルギーは、主に長手方向の波動でロッドに沿って伝送される。エネルギーが振動結合器の長さに沿って伝送されるにつれて発生する横方向の振動は、システム全体の効率を減少させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
超音波手術システムが提供され、このシステムは、変換器を備えた末端エフェクタ、制御モジュール、および手術器具を制御モジュールに相互接続する伝導性ケーブルを有する手術器具を含む。この制御モジュールは、電源(電気出力、a/cジェネレータ、またはバッテリーパックなどを備え得る)に接続されるように適合され、そして器具の末端エフェクタ上に位置する変換器を、超音波振動数または多重超音波振動数で独立してまたは同時に駆動するための制御回路を備える。あるいは、この制御回路は、電源中に組み込まれ得る。超音波器具は、ハンドルアセンブリ、本体部分および一体型または取り外し可能な末端エフェクタを備え、この末端エフェクタは、組織の切断、切開、結紮、止血および/または凝固を行うように構成される。この末端エフェクタは、超音波部材を備え、これは、好ましくはケイ素複合材(例えば、ケイ素−チタン複合材料)から形成される。変換器は、この末端エフェクタの超音波部材上、超音波部材内または超音波部材に隣接して支持される。この超音波部材は、種々の異なる構成を有し得、これらとしては、種々のフック形態、矩形、円形、四角形などが挙げられる。末端エフェクタはまた、クランプ部材またはシヤープローブを備え得る。1つの好ましい実施形態において、器具の内視鏡本体部分は、その長手軸の周りに回転可能であり、内視鏡本体部分の長手軸の周りで末端エフェクタを回転させる。あるいは、末端エフェクタまたは超音波部材は、器具の内視鏡本体部分と独立して回転可能であり得る。
【0006】
別の好ましい実施形態において、手術器具は、関節結合部材を備え、これは、関節結合リンクを使用して、本体部分の長手軸に対して横方向に位置付けられた旋回部材の周りで旋回され得る。好ましくは変換器を備える末端エフェクタは、この関節結合部材に固定され、そして関節結合リンクの往復運動に応じて関節結合部材と共に旋回可能であり、末端エフェクタを関節結合する(すなわち、器具の長手軸に対する末端エフェクタの角度を変化させる)。
【0007】
より特定すれば、本発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
手術器具であって、以下:
ハンドル;
上記ハンドルから遠位方向に延びる細長本体部分であって、上記細長本体は、カニューレまたは本体オリフィスを通過するように寸法決めされかつ構成される、細長本体部分;
上記細長本体部分の遠位端上に支持される末端エフェクタであって、上記末端エフェクタは、変換器および共振部材を有する超音波部材を備え、上記共振部材は、上記変換器に作動可能に接続されており、そして組織の切開、切断、凝固、結紮および/または止血を行うように構成される操作表面を備える、末端エフェクタ、
を備える、手術器具。
(項目2)
項目1に記載の手術器具であって、上記末端エフェクタは旋回可能なクランプを備え、上記旋回可能なクランプは、上記共振部材の操作表面から間隔を空けられた開位置と、上記共振部材の操作表面と並列した配置の閉位置との間で、上記超音波部材の共振部材に対して移動可能である、手術器具。
(項目3)
上記超音波部材が、Jフック形態を有する、項目1に記載の手術器具。
(項目4)
上記超音波部材が、Lフック形態を有する、項目1に記載の手術器具。
(項目5)
上記超音波部材が、矩形形態を有する、項目1に記載の手術器具。
(項目6)
上記超音波部材が、へら状形態を有する、項目1に記載の手術器具。
(項目7)
上記変換器が、ケイ素プレートの周りに位置付けられる複数のPZT結晶を備える、項目1に記載の手術器具。
(項目8)
上記共振部材が、ケイ素/金属複合材から形成される、項目7に記載の手術器具。
(項目9)
項目1に記載の手術器具であって、上記細長本体部分の遠位端に旋回可能に装着された関節結合部材をさらに備え、上記末端エフェクタは、上記関節結合部材により支持されており、ここで上記関節結合部材は、上記末端エフェクタの関節結合を行うために旋回可能である、手術器具。
(項目10)
手術される組織の状態をモニタリングするために、上記超音波部材上に位置付けられたセンサをさらに備える、項目1に記載の手術器具。
(項目11)
上記状態が温度である、項目10に記載の手術器具。
(項目12)
上記状態が、超音波または電気インピーダンスである、項目10に記載の手術器具。
(項目13)
超音波手術システムであって、以下:
内視鏡超音波器具であって、ハンドル、細長本体部分および末端エフェクタを備え、上記末端エフェクタは、変換器を有する超音波部材を備え、そして上記細長本体部分は、カニューレまたは本体オリフィスを通して挿入可能であるように寸法決めされかつ構成される、内視鏡超音波器具;
電源に係合するように適合された制御モジュールであって、上記制御モジュールは、上記変換器を1以上の超音波振動数で駆動するための電子制御回路を備える、制御モジュール;および
上記制御モジュールおよび上記超音波器具を相互接続する、電気ケーブル、
を備える、超音波手術システム。
(項目14)
項目13に記載の超音波手術システムであって、上記超音波器具内に位置付けられた導体をさらに備え、上記導体は、上記変換器と連絡している遠位端および上記電気ケーブルに係合するように適合された近位端を有する、超音波手術システム。
(項目15)
上記導体が、同軸ケーブルを備える、項目14に記載の超音波手術システム。
(項目16)
項目15に記載の超音波手術システムであって、手術される組織の特性を感知するために、上記超音波部材上に位置付けられたセンサをさらに備え、ここで上記制御モジュールが、上記センサと相互作用して上記超音波器具の操作を制御するフィードバック回路を備える、超音波手術システム。
(項目17)
上記末端エフェクタが、関節結合のために上記手術器具上に支持される、項目13に記載の超音波手術システム。
(項目18)
項目13に記載の超音波手術システムであって、ここで上記超音波部材は、フレーム、共振構造および上記変換器を備え、ここで上記変換器は、上記共振構造と接触して位置付けられ、そして上記共振構造は、組織の切開、切断、結紮および/または凝固を行うための操作表面を備える、超音波手術システム。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書に開示される超音波手術器具の種々の好ましい実施形態は、図面を参照して記載される。
【0009】
【図1−1】図1は、本明細書に開示される超音波手術システムの1つの実施形態の概略図であり、組織における切断、切開、結紮、凝固および/または止血を行うための手術器具を含む。
【図1−2】図1Aは、本明細書に開示される超音波器具の超音波部材の1つの好ましい代替の実施形態の側面図である。図1Bは、本明細書に開示される超音波器具の超音波部材の別の好ましい代替の実施形態の側面図である。図1Cは、本明細書に開示される超音波器具の超音波部材の別の好ましい代替の実施形態の側面図である。図1Dは、図1Cの切断線X−Xに沿った断面図である。図1Eは、図1Cの切断線X−Xに沿って見た場合の、図1Dに示される超音波部材の代替の実施形態の断面図である。図1Fは、図1Cの切断線X−Xに沿って見た場合の、図1Dに示される超音波部材の別の代替の実施形態の断面図である。図1Gは、図1Cの切断線X−Xに沿って見た場合の、図1Dに示される超音波部材のさらに別の代替の実施形態の断面図である。図1Hは、本明細書に開示される超音波部材の別の代替の実施形態の頂面図である。図1Iは、本明細書に開示される超音波部材の別の実施形態の側面斜視図である。図1Jは、本明細書に開示される超音波部材の別の実施形態の側面斜視図である。図1Kは、本明細書に開示される超音波部材の別の実施形態の側面図である。
【図2】図2は、本明細書に開示される超音波器具の超音波部材の1つの好ましい実施形態の模式的頂面図である。
【図3】図3は、本明細書に開示される超音波手術器具の別の好ましい実施形態の遠位端を部分的に取り除いた側面図であり、関節結合している末端エフェクタを備える。
【図4】図4は、図3に示される本明細書に開示される超音波手術器具の遠位端を部分的に取り除いた頂面図である。
【図4A】図4Aは、関節結合状態にある、図4に支援される超音波器具の遠位体を部分的に取り除いた頂面図である。
【図5】図5は、本明細書中に開示される超音波手術器具の超音波部材の好ましい実施形態の頂面図である。
【図6】図6は、本明細書に開示される超音波器具の別の好ましい実施形態の近位部分を部分的に取り除いた側面断面図である。
【図7】図7は、図6に示される超音波器具の遠位端を部分的に取り除いた側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明に開示された超音波手術器具の好ましい実施形態は、図面を参照して詳細に記載され、この図面において、同様の参照番号は、いくつかの図面の各々において同じかまたは対応する要素を示す。
【0011】
図1は、一般に10で示される超音波外科システムの概略図を示す。システム10は、超音波器具12、制御モジュール14および伝導ケーブル16を備え、伝導ケーブル16は、器具12を制御モジュール14と相互接続する。超音波器具12は、開放外科手順、内視鏡外科手順および腹腔鏡外科手順のための構成を取り得、そしてハンドルアセンブリ18、細長本体20および末端エフェクタ22を備える。ハンドルアセンブリ12は、ピストル型のグリップ構成を有し得るが、他のハンドル構成(例えば、インラインハンドル、鉛筆型グリップ、標準的なハサミグリップ、新規の人間工学的設計のグリップなど)が想定される。回転ノブ13は、公知の様式で細長本体20の回転を容易にするために提供され得る。末端エフェクタ22は、旋回クランプ部材24および直線状超音波部材26を備える。あるいは、末端エフェクタの超音波部材は、種々の他の構成(とりわけ、種々の異なる断面形態(図1D〜1G)を有するJフック(図1A)、Lフック(図1B)、ハサミ(図1C)、ヘラ(図1H)、弓形(図1Iおよび1J)ならびに長方形(図1K)が挙げられる)を想定し得る。末端エフェクタはまた、1997年8月14日出願の米国特許第6,024,750号に開示されるブレードのような湾曲ブレードおよび/または1996年10月4日出願の米国特許第6,036,667号に開示されるような角のあるブレードを有するように構成され得る(これらは両方とも、本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0012】
超音波部材は、エッチングプロセス(例えば、等方性エッチング、深反応性イオンエッチングなど)を使用して形成され得る。適切なエッチングプロセスは、1994年10月31日出願の米国特許第5,728,089号(これもまた、本明細書中でその全体が参考として援用される)に開示される。あるいは、他の公知の手段が使用されて、種々の異なる機械的プロセスを備える超音波部材を形成し得る。
【0013】
例示されるように、制御モジュール14は、電気的出口(示さず)との係合のための電源コード15を備え得る。あるいは、モジュール14は、バッテリーパックからの出力、またはa/cジェネレータからの出力を受けるために適合され得る。ジェネレータまたは他の電源が、制御モジュール14に組み込まれ得ることもまた、想定される。
【0014】
モジュール14は、1以上の超音波周波数で、器具12上に位置付けられた変換器(示さず)を駆動するための電子制御回路を備える。保護的回路は、患者、外科医またはシステムハードウェアに対する損傷を予防するために提供される。モジュール14はまた、ユーザに情報を提供し、そしてユーザからの情報を受容するために、ディスプレイ回路およびハードウェアを備える。この情報は、器具の末端エフェクタに位置付けられたセンサ(示さず)から獲得され得る。このセンサは、手術される組織の温度、または超音波もしくは電気的インピーダンスをモニタリングするために提供され得る。フィードバック回路は、より有効な連結、切断、切開、凝固などを提供するために提供された任意のセンサと相互作用するように提供され得る。例えば、フィードバック回路は、センサが、組織温度または超音波もしくは電気的インピーダンスが、所定の最大値を超えた場合に、システムの作動を終了し得る。超音波インピーダンスは、温度上昇に起因する組織の硬化と共に上昇する。同様に、電気的インピーダンスは、過熱に起因して組織の水レベルが減少する場合に減少する。フィードバック回路は、選択的に起動および停止され得、そして/または器具の作動の際に外科医にさらなる可動性を提供するために、外科医によって制御もしくはモニタリングされ得る。さらに、制御モジュール14は、器具12またはそのハードウェアを試験および/または修正を補助するための診断回路を備え得る。
【0015】
超音波器具12の作動は、コンピュータの使用によって自動的に制御され得ることが企図される。本発明において開示されたシステムの1つの好ましい代替的実施形態において、コンピュータ21は、超音波器具の末端エフェクタ上に位置付けられたセンサからデータを受け取る。上記のように、センサは、手術される組織の異なる特徴(とりわけ、温度および/または超音波もしくは電気的インピーダンスが挙げられる)をモニタリングするために備えられ得る。コンピュータ21は、好ましくは、センサから受けたアナログ信号を処理し、そしてアナログ信号をデジタル信号に変換するための回路を備え得る。この回路は、アナログ信号を増幅およびフィルタにかける手段を備える。その後、デジタル信号は評価され得、そして超音波器具の作動が調節されて、組織における所望の効果または組織に対する所望の効果を達成し得、そして周りの組織に対する損傷を防ぎ得る。コンピュータ21は、制御モジュール14に組み込まれ得るか、または制御モジュール14に連結されて、所望のまたは適切な器具12の作動の変動をもたらし得る。
【0016】
図2は、末端エフェクタ22の超音波部材26の上部または側面の概略図を示す。超音波部材26は、本体部分30を備え、本体部分30は、好ましくは、ケイ素材料で作製された構成成分から形成される。あるいは、チタンまたは他の金属のような材料は、いくつかの様式でケイ素に結合または連接されて、耐破損性を改善し得る。超音波用途に適切なケイ素以外の他の材料が、超音波部材26を形成するために使用され得ることが想定される。変換器32(好ましくは、圧電性変換器)は、超音波部材26上に担持されるか、また超音波部材26に結合されるか、または超音波部材26内に結合される。圧電性変換器32は、電気的コネクタ(好ましくは、ケーブル34)によって電源および制御モジュール14に接続される。ケーブル34は、器具12の本体20を通って変換器32から近位に伸び得(図1)、そしてこの器具のハンドルアセンブリ18の開口部(示さず)を通って器具12を出ていき得る。
【0017】
上記のように、超音波部材26は、種々の異なる構成(図1A〜1K)を想定し得、そして任意の公知の様式で器具12の遠位部分に装着され得る。例えば、超音波部材26は、器具12の本体20の遠位末端内に支持される基板またはシャフトまたは据付部材(示さず)に、例えば、スナップフィット接続、ネジセットまたはクリンピングまたはスエージによって、固定され得る。部材26の近位末端上に形成されたか、または部材26の近位末端上またはその中に配置されたスレッドシャンク40または他の装着構造は、器具12の遠位末端への超音波部材26の装着を提供し得る。
【0018】
変換器32は、任意の軸(例えば、x軸、y軸またはx軸とy軸との間の任意の軸)に沿った振動をもたらすために、超音波部材26上、またはその内側、またはそれに隣接して位置づけられ得る。超音波部材26は、切開、切断、凝固、連結をもたらすように、および/または組織の止血をもたらすように構成された、一般に42で示される作動表面を備える。あるいは、超音波部材26は、異なる作業(例えば、切断および凝固)を実行するための複数の作動表面を備え得る。器具12を備えるシステム10は、種々の外科的適用(一般的な手順、産婦人科手術手順、泌尿器科手術手順、胸部手術手順、心臓手術手順および神経学的手術手順を含む)において使用され得る。器具12は、内視鏡手術手順および開放手術手順の両方を実行するために構成され得、そして公知の様式の指スイッチまたは足ペダルを介して起動され得る。この起動デバイスは、器具12の起動をもたらすための、ワイヤレスの伝達回路を備え得る。
【0019】
この器具の遠位端上、またはこの中、またはこれに隣接して変換器を提供することによって、以下の利益が実現され得る:a)チタンから形成される細長振動連結器の必要性が、実質的に除去されて、器具の費用を低減する;b)器具の本体部分の長さが、結果として起こる器具の性能の変化を実質的に伴わずに変化(例えば、短縮または延長)され得る(例えば、器具振動連結器が電気的コンダクタにより置換されているので、本体の長さを変化した後に、かなりの費用で器具を元に戻す必要がない);c)超音波エネルギーがより効率的に患者に伝達され、従って、エネルギー出力要求を低下させ得る;d)器具の使い捨ての部分は、容易に変化され得、そして再利用が制限されたか、またはそれらの間の任意の程度の再利用可能性のハンドル、器具全体と共に、器具端部のみを備え得る;e)ハンドルアセンブリは、変換器を支持しないので、このハンドルアセンブリは、より人間工学的に構成され得る;そしてf)器具の近位末端上の大きい変換器の代わりに、器具の遠位末端上か、その中か、またはそれに隣接する小さい変換器を使用することは、器具の重量を実質的に減少させ、そして繊細な外科手順の間に特に管理することを容易にする。
【0020】
図3および4は、112で一般に示される本発明により開示された超音波手術器具の別の好ましい実施形態の遠位末端を示す。器具112は、超音波部材126およびクランピングジョー124を有する末端エフェクタ122、中空スルーボアを規定する本体部分120、関節部材150および関節結合リンク152を備える(図4)。超音波部材126は、変換器132を備える。好ましくは、この変換器は、可能な限り超音波部材112の遠位端に隣接して位置付けられる。ワイヤ160は、変換器132を電源(示さず)に相互接続する。末端エフェクタ122は、関節部材150内に支持され、そして関節部材150は、突出部154aの周りの部材154によって、本体部分120に旋回可能に支持される。関節結合リンク152は、旋回部材154から離れた位置で、関節部材150に旋回可能に接続される遠位末端を有する。関節結合リンク152は、本体120内を直線的に移動可能であり、突出部154の周りで、旋回部材150を旋回させ末端エフェクタ122の曲げをもたらすように構成される。関節部材150は、5°と175°との間、好ましくは30°と120°との間の角度にわたる曲げをもたらす。変換器132は、末端エフェクタ122の超音波部材126上に支持されるので、超音波器具112の末端エフェクタ122は、超音波部材の振動作動を妨害せずに曲がり得る(図4Aを参照のこと)。
【0021】
図5は、100で一般に示される超音波部材の1つの好ましい実施形態を示し、これは、超音波外科システム10の本発明により開示された超音波手術器具における使用のために適切である。超音波部材100は、好ましくは、圧電性積層構造であり、フレーム102、共振構造104および変換器106を備える。あるいは、圧電以外の他の伝導機構(熱応力、電気ひずみ、磁気ひずみまたは光学駆動機構を含む)が使用され得る。変換器106は、好ましくは、ケイ素プレート110によって分離されたPZT結晶の対108を備える。あるいは、PZT結晶以外の結晶を使用して、出力を機械的振動をもたらすように変換し得ることが想定される。適切な結合剤またはプロセス(例えば、溶接結合、拡散結合、接着剤など)を使用して、結晶108をプレート110に固定する。共振構造104は、好ましくは、ケイ素または金属の共振構造またはケイ素/金属複合材料から形成される。構造104は、好ましくは、第一および第二の共振部材104aおよび104bを備える。部材104aおよび104bの近位末端は、一緒になって変換器106を受けるための空洞を規定する。あるいは、共振構造104は、一片の材料から一体形成され得る。PZT結晶108ならびに共振部材104aおよび104bの嵌合表面は、適切な結合剤または結合プロセス(ガラス結合剤、接着剤など)を使用して一緒に固定される。フレーム102は、本体112(これは、好ましくは、金属、セラミックなどを含む剛性材料から形成される)を備え、そして共振構造104および変換器106アセンブリを受けるように寸法決めおよび構成された空洞114を備える。結合層118(これは、好ましくは、導電性材料から形成される)は、共振部材104aおよび104bの近位部分とフレーム102との間に位置付けられて、静止したフレーム102に対して移動可能である変換器106を結合させる。フレーム102の近位末端は、スルーボア120を備え、このスルーボア120は、電気的コンダクタ122(例えば、ワイヤまたは同軸ケーブル)の通過を可能にし、変換器106に出力を提供する様に寸法決めされる。電気的コンダクタは、好ましくは、高電圧高周波テフロン(登録商標)絶縁ケーブルであるが、他のコンダクタの使用も想定される。コンダクタ122の遠位末端は、可撓性伝導性ワイヤ124によってプレート110に接続され、この可撓性伝導性ワイヤ124は、フレーム102と変換器106との間の相対的移動を制限しない。
【0022】
上記のように、共振構造104の形状は、図5に示された形状とは異なり得る。より具体的には、共振構造104の遠位作動表面126は、図1A〜図1Kに示される構成のいずれかまたは本明細書に示されない任意の他の構成を想定し得、これらの構成は、特定の外科手順を実行するために有利であり得る。さらに、クランプは、組織の握りを容易にするために提供され得る。
【0023】
超音波部材100は、高周波範囲および低周波範囲の両方で起動され得る。低周波範囲(約20〜100KHz)において、この器具は、組織の切断をもたらすために、組織中にキャビテーションを引き起こす。高周波範囲(1MHzより高い)において、この器具は、組織の加熱および凝固のために使用され得る。高周波および低周波の起動は、両方の周波数を発生し得る出力増幅器によって同時に生じ得る。複数の周波数を提供することは、減少した熱伝播および改善した凝固および止血を伴う、組織における改善された切断を提供し得る。
【0024】
上記のように、出力損失および非効率は、超音波エネルギー発生PZT要素を、末端エフェクタの超音波部材に隣接して、またはその上に、またはその中に配置することによって、従来の超音波器具と比較して実質的に減少される。従来の器具は、組織切断をもたらすために40〜50ワットの出力を必要とし得るが、本発明により開示される超音波器具は、組織の切断をもたらすために20〜30ワットの出力のみを必要とすることが想定される。さらに、本発明により開示される積層構造の超音波部材100が、従来の器具よりも高い周波数で作動可能であることが想定される。より高い周波数の使用は、所定の出力設定での凝固速度を増し得ると考えられるので、出力要求量は、より高い周波数での器具の作動によってさらに減少され得る。
【0025】
図6および7は、一般に212により示される本発明により開示される超音波器具の別の好ましい実施形態を示す。超音波器具212は、ハンドルアセンブリ218(図6)、細長本体220および末端エフェクタ222(図7)を備える。ハンドルアセンブリ218は、定位型ハンドル部分260および旋回可能ハンドル部分262を備える。旋回可能ハンドル262は、旋回部材266の周りでハンドルアセンブリ218の本体部分264に旋回可能に取り付けられ、そして図6において矢印「A」によって示される方向で付勢バイアス部材268の付勢に対してハンドル260に向かってハンドル262を移動させることによって、非起動位置(図6)から起動位置に移動可能である。リンク270は、ハンドル262の旋回移動を、直線駆動部材272に転換する。リンク270は、旋回可能ハンドル262にピン274によって旋回可能に固定された第一の末端を有し、そして駆動部材272にピン276によって旋回可能に固定された第二の末端を有する。旋回可能ハンドル262の起動位置への移動の際に、直線駆動部材272は、図6の矢印「B」により示される方向で移動する。
【0026】
可撓性クランプロッドまたはリンク252は、駆動部材272に固定された近位末端を有する。クランプリンク252は、好ましくは、形状記憶材料または弾力性のある材料から形成され、そして旋回可能なクランプ部材224に接続された遠位末端を有する(図7)。クランプ部材224は、旋回部材278により取り付け部材250内に旋回可能に固定される。クランプリンク252の遠位末端は、旋回部材278から離れた位置で、ピン280によって旋回可能なクランプ部材224に旋回可能に接続される。使用の際に、ハンドル262が、矢印「A」により示される方向(図6)で移動して、矢印「B」により示される方向で駆動部際272を移動させる場合、クランプリンク270は、図6および7において矢印「C」によって示される方向で遠位に進められる。クランプリンク270の遠位方向の移動は、クランプ部材224を、旋回部材278の周りで、図7の矢印「D」によって示される方向で、超音波部材226と並列して整列されたクランプされた位置まで旋回させる。
【0027】
図6に示されるように、関節結合リンク253は、ハンドルアセンブリ218の本体部分264内にスライド可能に位置付けられる。リンク253は、本体部分264中に形成されるスロット282を通して伸びる近位末端253aを備える。スライド部材284は、リンク253の近位末端253aに固定され、そして関節結合リンク253の遠位の移動をもたらすように、矢印「E」によって示される方向で本体部分264の外側表面に沿って移動可能である。
【0028】
図7を参照して、取り付け部材250は、旋回部材284によって細長本体220の遠位末端に旋回可能に固定される。旋回部材284の各々は、第一および第二の突出部284aおよび284bをそれぞれ備える。突出部284aは、細長本体220に旋回可能に固定され、そして突出部284bは、取り付け部材250に旋回可能に固定され、その結果、取り付け部材250は、横軸Yの周りで細長本体220に関して旋回可能である。関節結合リンク253の遠位末端は、取り付け部材250の内部表面から外に向かって伸びる突出部(示さず)に係合される。この突出部は、旋回軸Yから側方に離れる。リンク253が、遠位または近位に移動する場合、取り付け部材250は、旋回軸Yの周りで、関節位置まで旋回する。図4Aを参照のこと。好ましい実施形態において、取り付け部材250および従って末端エフェクタ222は、約150°の円弧にわたって曲げられ得る。
【0029】
末端エフェクタ222は、クランプ部材224および超音波部材226を備える。超音波部材224は、任意の公知の固定技術(クリンピング、スエージ、ネジなど)を使用して、取り付け部材250内に固定される。超音波部材224は、概略的に示されているが、作動表面126がブレード構成を備えること以外は、超音波部材100と実質的に同じである。上記のように、取り付け部材250は、関節結合リンク253によって軸Yの周りで旋回可能であり、超音波部材224を備える末端エフェクタ222もまた、旋回する、すなわち横軸Yの周りで曲げられる。
【0030】
種々の改変が、本明細書に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、末端エフェクタの超音波部材の構成は、本明細書に示されることを必要としないが、特定の外科的適用に適するように改変され得る。さらに、変換器は、器具の遠位末端において末端エフェクタの超音波部材の近位に取り付けられ得、超音波部材に直接取り付けられる必要はない。従って、上の記載は、限定として解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の例示としてのみ解釈される。当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲および精神内の他の改変を想定する。
【符号の説明】
【0031】
10 超音波外科システム
12 超音波器具
13 回転ノブ
14 制御モジュール
15 電源コード
16 伝導ケーブル
18 ハンドルアセンブリ
20 細長本体
22 末端エフェクタ
24 旋回クランプ部材
26 超音波部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1に示される超音波外科システム。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−5851(P2012−5851A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178631(P2011−178631)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【分割の表示】特願2008−79368(P2008−79368)の分割
【原出願日】平成14年2月8日(2002.2.8)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【出願人】(503287904)ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファウンデーション (ワーフ) (2)
【Fターム(参考)】