超音波振動子の駆動方法及び装置

【課題】超音波振動子の駆動方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明の駆動装置は、超音波振動子1と被振動部材2に対して周波数範囲の周波数を印加する電圧制御型発振器4と、前記超音波振動子の平面方向の寸法によって定まる共振周波数と厚み方向の寸法によって定まる共振周波数とを含む範囲の周波数を電圧制御型発振器4からスイープ出力させる制御信号発生器3を有する。電力増幅器5は電圧制御型発振器4の出力周波数の信号を増幅して超音波振動子1を駆動する。超音波振動子1に、その共振周波数を含む周波数範囲の電圧を、時間の経過とともに周波数を変化させながら印加する。周波数範囲を、前記超音波振動子の平面方向の寸法によって定まる共振周波数と、厚み方向の寸法によって定まる共振周波数とを含む範囲とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、圧電セラミック振動子のような超音波振動子の駆動方法及び装置に関するものであって、特に、超音波振動子に水平方向と厚み方向の複数の共振周波数を印加することにより、超音波振動子を上下左右方向に振動させるものである。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子は、各種の用途に使用されているが、その一つに、その振動特性を利用して物体に付着した水滴、埃などを除去するものがある。例えば、CCDカメラのレンズをカバーするカバーガラスに水滴や埃が付着すると画像が見難くなるので、撮影に先立ってカバーガラスを振動させることで水滴な埃を除去することが行われている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、このような用途に使用する超音波振動子の駆動方法や装置として、超音波振動子の共振周波数に着目して、共振周波数を含む所定周波数範囲の交番電圧を超音波振動子に印加する技術も、たとえば特許文献3に示すように提案されている。
【特許文献1】特開2006-098817号公報
【特許文献2】特開平07-151946号公報
【特許文献3】特開2005−261520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、特許文献2には、超音波振動により埃などを除去するという技術は開示されていても、超音波振動子の共振周波数に着目してその振動特性を向上させる点については一切記載がなく、そのため水滴や埃を効果的に除去することはできなかった。
【0005】
また、前記特許文献3の発明は、超音波振動子の厚み方向の共振周波数を含む範囲の周波数をスイープして印加するというだけのものであり、特許文献3の技術対象とする超音波美容・健康器のように一方向の振動を与えるものには適していても、水滴や埃の除去のような多方向からの振動を与えることが有効な機器には不適当であった。
【0006】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、超音波振動子をその水平方向及び厚み方向に振動させることで、水滴や埃などを効果的に除去することを可能とした超音波振動子の駆動方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、超音波振動子に、その共振周波数を含む周波数範囲の電圧を、時間の経過とともに周波数を変化させながら印加する超音波振動子の駆動方法において、前記周波数範囲を、前記超音波振動子の平面方向の寸法によって定まる共振周波数と、厚み方向の寸法によって定まる共振周波数とを含む範囲としたことを特徴とする。
【0008】
また、次のような構成も、本発明の一態様である。
(1) 前記周波数範囲に対する周波数の変化を1サイクルとしてこのサイクルを複数回実行する。
(2) 前記超音波振動子がリング状の部材でその外形寸法に対する共振周波数が前記周波数範囲に含まれている。
(3) 前記超音波振動子が超音波振動子と共に振動する被振動部材に固定され、この被振動部材の平面方向の寸法によって定まる共振周波数と厚み方向の寸法によって定まる共振周波数が前記周波数範囲に含まれている。
(4) 前記駆動方法を実行するための各機器を備えた超音波振動子の駆動装置。
【発明の効果】
【0009】
前記のような構成を有する本発明の超音波振動子の駆動方法及び装置では、周波数を変化させる範囲内に、超音波振動子または超音波振動子と被振動部材の水平方向及び厚み方向の2つの共振周波数が含まれているので、周波数の変化に従い、超音波振動子または超音波振動子と被振動部材をその水平方向及び厚み方向の両方向から振動する。その結果、超音波振動子や被振動部材に付着した水滴や埃を効果的に除去することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態を図面に従って具体的に説明する。図1は、本実施形態の超音波振動子の模式的な斜視図である。この図1において、符号1はリング状をした超音波振動子で、その寸法は外径L1、内径L2、厚みL3である。2は、前記超音波振動子1のリングの切り口の一面に固定された矩形の被振動部材で、その一辺の寸法がL4、前記超音波振動子1とこの被振動部材2との合計の厚みがL5である。
【0011】
前記超音波振動子1の外径の共振周波数はf1、一体化された超音波振動子1と被振動部材2とによって定まる水平方向の共振周波数はf2、超音波振動子1の厚さ方向の共振周波数はf3、一体化された超音波振動子1と被振動部材2とによって定まる厚さ方向の共振周波数はf4である。
【0012】
前記超音波振動子1には、図示しない電極が設けられ、その電極からリード線が引き出されている。このリード線には、図2に示すような制御信号発生器3、電圧制御型発振器4、電力増幅器5とを備えた駆動回路が接続され、本実施形態の超音波振動子1の駆動装置を構成している。
【0013】
前記電圧制御型発振器4は制御信号発生器3からの制御信号電圧に比例した発振周波数を出力し、電力増幅器5は前記電圧制御型発振器4の出力周波数の信号を増幅して超音波振動子1を駆動する。制御信号発生器3は、その出力電圧が一定周期で可変する信号発生器であり、前記電圧制御型発振器4に対して、次の4つの周波数を含む範囲の周波数を前記電圧制御型発振器4が出力するように、前記電圧制御型発振器4を制御する。
【0014】
(1) 超音波振動子1の平面方向の寸法によって定まる共振周波数。
(2) 超音波振動子1の厚み方向の寸法によって定まる共振周波数。
(3) 一体化された超音波振動子1と被振動部材2の平面方向の寸法によって定まる共振周波数。
(4) 一体化された超音波振動子1と被振動部材2のと厚み方向の寸法によって定まる共振周波数。
【0015】
なお、本実施形態では、制御信号発生器3は、前記4つの周波数を含む範囲で電圧制御型発振器4を制御したが、前記電圧制御型発振器4の出力周波数を前記(1) (2) の2つの周波数を含む範囲で制御することも可能である。
【0016】
この制御信号発生器3による制御は、超音波振動子1または一体化された超音波振動子1と被振動部材2の共振周波数を含んだ一定範囲の周波数を一定時間でスイープするものであるが、この一定範囲のスイープを数サイクル繰り返すものとする。また、一定範囲のスタート及びストップ周波数としては、その周波数に固定された場合に、超音波振動子1がほとんど発熱しない周波数を選択することが、エネルギー損失及び機器の発熱の観点から好ましい。
【0017】
この一定範囲としては、一例として、外径が15mm、厚さ2mmのリング状超音波振動子1と、一辺が20mm、厚さ1mmのガラス製被振動部材2を一体化した場合、50〜600kHz程度の範囲で、できるだけ狭い範囲が良い。また、1サイクルのスイープ時間は、超音波振動子1や制御回路の応答時間の制限を考慮してできるだけ短い時間、即ち、一定周波数範囲で、超音波振動子1や被振動部材2の振動速度の最高値が得られる時間が好ましく、前記寸法の振動子の場合、例えば300msec程度である。
【0018】
図3の(a) (b) は、周波数の変化と時間の関係の一例を示すグラフで、グラフ中の一山が周波数スイープの1サイクルを示しており、本実施形態では、グラフのピークと谷との間に前記(1) から(4) の周波数がすべて含まれ、て前記1サイクルが300msecで実行されている。
【0019】
このような構成を有する本実施形態では、周波数のスイープに伴い電圧制御型発振器4から水平方向の共振周波数f1,f2が印加されると、図4(a) の周波数変位分布と振動方向を示す図に見られるように、超音波振動子1や被振動部材2はその水平方向に振動する。一方、周波数のスイープに伴い電圧制御型発振器4から厚さ方向の共振周波数f3,f4が印加されると、図4(b) に見られるように、超音波振動子1や被振動部材2はその厚さ方向に振動する。
【0020】
その結果、このようなスイープを数サイクル繰り返すことにより、超音波振動子1や被振動部材2には水平方向及び厚み方向の2つの振動が繰り返し加わることになり、これらに付着した水滴や埃などを効果的に除去することができる。
【0021】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、次のような他の実施の形態も包含する。
(1) 超音波振動子1の形状がリング状でなく、板状、ブロック状のもの。
(2) 被振動部材2がカメラのカバーガラスなどの水滴や埃を除去するもの以外に、撹拌、振動を要求される用途全般に使用されるもの。
(3) スイープするパターン(図3のグラフ)を、振動対象に応じて変化させたもの。
(4) 超音波振動子1と被振動部材2の共振周波数を決定するにあたり、被振動部材2に付着した水滴や埃の位置、重量などを考慮したもの。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の超音波振動子と被振動部材の一例を示す斜視図。
【図2】本発明の超音波振動子の駆動装置の一例を示すブロック図。
【図3】本発明において、スイープする周波数のパターンを示すグラフ。
【図4】本発明における超音波振動子及び被振動部材に加わる周波数の変位分布と振動方向を示す図。
【符号の説明】
【0023】
1…超音波振動子
2…被振動部材
3…制御信号発生器
4…電圧制御型発振器
5…電力増幅器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子に、その共振周波数を含む周波数範囲の電圧を、時間の経過とともに周波数を変化させながら印加する超音波振動子の駆動方法において、
前記周波数範囲を、前記超音波振動子の平面方向の寸法によって定まる共振周波数と、厚み方向の寸法によって定まる共振周波数とを含む範囲としたことを特徴とする超音波振動子の駆動方法。
【請求項2】
前記周波数範囲に対する周波数の変化を1サイクルとして、このサイクルを複数回実行することを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子の駆動方法。
【請求項3】
前記超音波振動子がリング状の部材で、その外形寸法に対する共振周波数が、前記周波数範囲に含まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波振動子の駆動方法。
【請求項4】
前記超音波振動子が、超音波振動子と共に振動する被振動部材に固定され、この前記超音波振動子と被振動部材の平面方向の寸法によって定まる共振周波数と、厚み方向の寸法によって定まる共振周波数が、前記周波数範囲に含まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波振動子の駆動方法。
【請求項5】
超音波振動子に、その共振周波数を含む周波数範囲の電圧を、時間の経過とともに周波数を変化させながら印加する超音波振動子の駆動装置において、
前記超音波振動子に対して周波数範囲の周波数を印加する電圧制御型発振器と、
この電圧制御型発振器に対して、前記超音波振動子の平面方向の寸法によって定まる共振周波数と、厚み方向の寸法によって定まる共振周波数とを含む周波数を出力させる制御信号発生器とを有することを特徴とする超音波振動子の駆動装置。
【請求項6】
前記超音波振動子が、超音波振動子と共に振動する被振動部材に固定され、
前記制御信号発生器が、超音波振動子と被振動部材の平面方向の寸法によって定まる共振周波数と厚み方向の寸法によって定まる共振周波数を含む範囲の周波数を前記電圧制御型発振器が出力するように、前記電圧制御型発振器を制御するものであることを特徴とする請求項5に記載の超音波振動子の駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2009−233625(P2009−233625A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
処理操作;運輸 | 機械的振動の発生または伝達一般 | 機械的振動の発生または伝達一般 | 振動数が亜音波,音波,超音波級の機械的振動を発生させる方法または装置 | 電気的エネルギーを利用するもの | 圧電効果,電気ひずみを利用するもの
【出願番号】特願2008−85796(P2008−85796)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所
【Fターム(参考)】
機械的振動の発生装置 | 目的、効果 | 耐環境性の向上(耐熱性、耐水性等)
機械的振動の発生装置 | 用途 | 医療用
機械的振動の発生装置 | 電気的振動素子 | 圧電型 | 単一の圧電板からなるもの
機械的振動の発生装置 | 電気的振動素子の駆動 | 発振部(電気的振動の発生回路等) | 発振周波数をスイープするもの
機械的振動の発生装置 | 電気的振動素子の駆動 | 電圧帰還を行うもの
機械的振動の発生装置 | 電気的振動素子の駆動 | その他
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