説明

超音波振動子

【課題】 使用機器の低背化を図り得、しかも超音波ホーンの出力面の振動が、その長手方向に均一な超音波振動子を提供する。
【解決手段】 超音波振動子1は、矩形状の入力面11と出力面12とを含む超音波ホーンと、矩形状の駆動主面20D及び背面20Uを有する矩形板状で、入力面に駆動主面20Dが固着された駆動部材20と、を備え、所定周波数Frで、縦方向Zに半波長共振すると共に、超音波ホーン10が長手方向Xに共振する形態に構成されてなる。超音波ホーン10は、縦長貫通孔10Hを有している。この縦長貫通孔10Hは、入力面11側の端部10H1が、節部ZFよりも入力面11側に位置し、出力面12側の端部10H2が、距離L1=(0.05±0.03)Lとなる部位に位置する。かつ、長手方向Xの共振の腹部XHにそれぞれ位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に長い矩形状の出力面を有するホーンを有する超音波振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの固着加工用の超音波ウェルダや各種材料の切断加工用の超音波カッタなどに用いる超音波工具ホーンとして、横断面を長細い矩形状とし、スロット(縦長の貫通孔)を開けたものが知られている(例えば、特許文献1の第1図参照)。この超音波工具ホーンは、入力面にねじ穴(めねじ)が形成されており、このねじ穴を用いて、ボルト締めランジュバン型超音波振動子(以下、BLTともいう。)を接続し、共振させて用いる。具体的には、特定周波数で入力面と出力面との間で縦方向に半波長共振するように各寸法を選択して超音波ホーンを形成しておく。更に、この特定周波数で半波長共振するBLTを、この超音波ホーンに前述のねじ穴を利用して取り付ける。BLTを特定周波数で駆動し、超音波振動を発生させると、超音波ホーンも共振して、出力面において、大きな超音波振動が得られるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2694352号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように、BLTと超音波ホーンを組合せて用いる場合には、その縦方向の全長は、1波長分の大きさとなり、超音波ウェルダなどの装置全体の低背化を図ることが難しい。また、BLTと超音波ホーンの両者を用いるので、コストアップとなる。
また、特許文献1の第1図を見れば理解できるように、超音波ホーンの入力面の一部(例えば中央部)にBLTを接続して、超音波ホーンを駆動するので、超音波ホーンの出力面の振動を、その長手方向に均一にし難い。
【0005】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、使用機器の低背化を図り得、しかも超音波ホーンの出力面の振動が、その長手方向に均一な超音波振動子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その態様は、矩形状の入力面とこの入力面に対向する矩形状の出力面とを含み、これらを結ぶ縦方向に対して、この縦方向に直交する横断面が、この横断面に沿う長手方向に長く、上記長手方向に直交する横幅方向に短い矩形状を有する、超音波ホーンと、上記長手方向に長い矩形状の駆動主面及び背面を有する矩形板状で、上記入力面に上記駆動主面が固着された圧電セラミック材からなる駆動部材と、を備え、所定周波数で上記駆動部材を駆動したときに、上記縦方向に半波長共振すると共に、上記超音波ホーンが、上記長手方向に共振する形態に構成されてなる超音波振動子であって、上記超音波ホーンは、自身を上記横幅方向に貫通し、上記縦方向に延びた形状の縦長貫通孔を有し、上記縦長貫通孔は、上記入力面側の端部が、上記縦方向の半波長共振の節部よりも上記入力面側に位置し、上記縦方向の半波長共振の節部から上記出力面までの距離をLとし、上記出力面側の端部から上記出力面までの距離をL1としたとき、上記出力面側の端部が、距離L1=(0.05±0.03)Lとなる部位に位置すると共に、上記長手方向の共振の腹部に位置してなる超音波振動子である。
【0007】
この超音波振動子では、全体の縦方向寸法が半波長共振の大きさとなる。このため、超音波ホーンの縦方向寸法だけで半波長の大きさに達し、BLTを含めると1波長分の寸法となる、特許文献1に記載の超音波工具ホーンを用いた場合に比して、超音波振動子全体の縦方向寸法の低背化を図ることができる。
このため、これを用いた超音波ウェルダなどの装置の低背化をも図ることができる。
しかも、距離L1を上述のように規定しているので、超音波ホーンの出力面の振動が、縦方向の振動で、かつその振動の振幅が長手方向に均一な超音波振動を励起できる。
【0008】
なお、この超音波振動子において、超音波ホーンは、その節部に縦方向に直交する方向に延びるフランジを有するものとしても、有さないものとしても良い。
【0009】
さらに、超音波振動子であって、前記超音波ホーンは、前記縦方向の半波長共振の節部に、前記縦方向に直交する方向に突出するフランジを有する超音波振動子とすると良い。
【0010】
超音波ホーンに上述のフランジを設けることで、超音波振動子の振動を妨げることなく、超音波振動子を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る超音波振動子の正面図である。
【図2】実施形態に係る超音波振動子の側面図である。
【図3】実施形態に係る超音波振動子を共振させた場合に、出力面に生じる振動分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る超音波振動子について、図1〜図3を参照しつつ説明する。本実施形態の超音波振動子1は、超音波ホーン10と圧電素子20とからなり、所定の共振周波数Frで共振する。なお、図1及び図2において、図中、上下方向を縦方向Zとする。また、図1において、図中、左右方向を長手方向Xとする。また図2のうち、図中、左右方向を横幅方向Yとする。
【0013】
この超音波振動子1のうち、超音波ホーン10は、アルミニウム材からなり、縦方向Zの一方端面(図中上端面)が、長手方向Xに長い矩形状の入力面11とされ、他方端面(図中下端面)が、長手方向Xに長い矩形状の出力面12とされている。なお、図1及び図2に示すように、入力面11は、長手方向Xの寸法が2・A1、横幅方向Yの寸法がW1である。また、出力面12は、長手方向Xの寸法が同じく2・A1であるが、横幅方向Yの寸法がW2(W2<W1)である。また、縦方向Zに直交する仮想の横断面KFが、この横断面KFに沿う長手方向Xに長く、これに直交する横幅方向Yに短い矩形状を有している。
【0014】
また、この超音波ホーン10は、ホーン部13と、ホーン部13の縦方向Zの図中上方に位置し、圧電素子20を固着する台座ともなる基部16とを有している。加えて、ホーン部13の縦方向Zの上方端には、縦方向Zに直交する周囲に向けて、寸法W4分だけ突出してなるフランジ14が形成されている。このフランジ14は、超音波振動子1を、共振周波数Frで縦方向Zに半波長共振させた場合に、音響的に節部ZFとなる位置に設けられている。このため、超音波振動子1を縦方向Zに半波長共振させた場合でも、このフランジ14にはほとんど振動が生じないので、このフランジ14を把持しても、共振に影響を与えない。このため、このフランジ14を用いて、超音波振動子1を、適切かつ容易に保持することができる。
【0015】
また、圧電素子20を所定の共振周波数Frで駆動し、超音波振動子1を縦方向Zに縦振動の半波長共振させた場合、この超音波振動子1の縦方向の全長L0は、音響的にλz/2の長さに、また、このフランジ14から出力面12に至るホーン部13の縦方向Zの寸法Lは、音響的にλz/4の長さに相当している。なお、λzは、超音波振動子1に、縦方向Zに励起される超音波振動の波長を指す。
加えて、この超音波ホーン10(ホーン部13)は、上述の共振をさせた場合に、長手方向Xにも共振するように寸法が選択されている。
【0016】
この超音波ホーン10のうち、ホーン部13は、出力面12側(図中下方)に向けて、横幅方向Yの寸法が小さくなる先細の部分の先端(出力面側)に、横幅方向Yの寸法が変化しない板状の部分を加えた形状を有している。
【0017】
加えて、このホーン部13及び基部16には、これらを横幅方向Yに貫通し、縦方向Zに延び、幅(長手方向X寸法)A3の、縦長形状の縦長貫通孔10H(本実施形態では3つ)を備えている。
この縦長貫通孔10Hは、縦方向Zに見て、入力面11と出力面12との間に配置されている。本実施形態では、具体的には、上端である入力面側端10H1は、節部ZFよりも入力面11側に、さらに具体的には、縦方向Zに見て、入力面11より僅かに出力面12側(図中、下方)に位置している。また、下端である出力面側端10H2から出力面12に至る縦方向Zの寸法L1は、L1=0.05Lの大きさにされている。
【0018】
また、縦長貫通孔10Hは、ホーン部13の長手方向Xについて、中心線(X=0)に対称(図1において左右対称)に形成されている。即ち、3つの縦長貫通孔10Hの1つは、ホーン部13の長手方向Xの中心(X=0)に、他の2つは長手方向Xの中心から、それぞれ距離A2だけ離れた部位に形成されている。これら3つの縦長貫通孔10Hの位置は、この超音波振動子1を縦方向Zに半波長共振させると共に、超音波ホーン10を長手方向Xに共振させたとき、この長手方向Xに生じる共振の腹部XHの位置にそれぞれ対応している。
【0019】
また、超音波振動子1のうち、圧電素子20は、具体的には、厚みがT1であり、長手方向X寸法がホーン部13より僅かに短い2・A4(<2・A1)、横幅方向Y寸法もホーン部13より僅かに短いW3(<W1)の矩形板状で、PZT系の圧電セラミックス材からなる。この圧電素子20は、その厚み方向(縦方向Z)に直交する駆動主面20D及び背面20Uに、図示しない電極層が形成され、かつ、この厚み方向に分極されている。
この圧電素子20は、駆動主面20Dが、前述した超音波ホーン10の基部16の入力面11に、図示しない接着剤を介して固着されている。
【0020】
なお、圧電素子20の駆動主面20Dに形成された電極層(図示しない)は、超音波ホーン10と電気的に導通している。
このため、この超音波振動子1(圧電素子20)を駆動するには、超音波ホーン10と圧電素子20の背面20Uとの間に駆動電圧を印加すればよい。
【0021】
この超音波振動子1を、共振周波数Fr(=40kHz)で駆動した場合に、出力面12に生じる超音波振動の長手方向Xの分布の例を、図3に示す。
なお、本実施形態において、各寸法は、L=40.0mm、L1=2.0mm、L0=67.0mm、W1=12.0mm、W2=2.0mm、W3=10.0mm、T1=2.0mm、A1=50.0mm、A2=31.5mm、A3=3.0mm、A4=49.0mmとした。
【0022】
この図3のグラフによれば、長手方向Xの原点X=0を中心に、振動分布がほぼ左右対称となっていることが判る。超音波振動子1の形態が、長手方向Xの原点(X=0)を中心に左右対称の形状となっているためである。また、その振動(Z方向変位)は、長手方向Xに見て、0.31〜0.41μmp-p(0.36±0.05μmp-p)の範囲(±14%)に収まっており、この超音波振動子1において、Z方向変位は、長手方向Xに均一であると言える。
【0023】
このように、本実施形態では、超音波振動子1は、矩形状の入力面11とこの入力面に対向する矩形状の出力面12とを含み、これらを結ぶ縦方向Zに対して、この縦方向Zに直交する横断面KFが、この横断面KFに沿う長手方向Xに長く、長手方向Xに直交する横幅方向Yに短い矩形状を有する、超音波ホーン10と、長手方向Xに長い矩形状の駆動主面20D及び背面20Uを有する矩形板状で、入力面に駆動主面20Dが固着された圧電セラミック材からなる駆動部材である圧電素子20と、を備えている。しかも、所定周波数Frで圧電素子20を駆動したときに、縦方向Zに半波長共振すると共に、超音波ホーン10が、長手方向Xに共振する形態に構成されてなる。超音波ホーン10は、自身を横幅方向Yに貫通し、縦方向Zに延びた形状の縦長貫通孔10Hを有している。この縦長貫通孔10Hは、入力面11側の端部10H1が、縦方向Zの半波長共振の節部ZFよりも入力面11側に位置している。かつ、縦方向Zの半波長共振の節部ZFから出力面12までの距離をLとし、出力面12側の端部10H2から出力面12までの距離をL1としたとき、出力面12側の端部10H2が、距離L1=(0.05±0.03)Lとなる部位に位置すると共に、長手方向Xの共振の腹部XHにそれぞれ位置している。
【0024】
この超音波振動子1では、全体の縦方向寸法L0が半波長共振の大きさとなる。このため、超音波ホーンの縦方向寸法だけで半波長の大きさに達し、BLTを含めると1波長分の寸法となる、特許文献1に記載の超音波工具ホーンを用いた場合に比して、超音波振動子1全体の縦方向寸法の低背化を図ることができる。
このため、これを用いた超音波ウェルダなどの装置の低背化をも図ることができる。
しかも、距離L1を上述のように規定しているので、超音波ホーン10の出力面12の振動が、縦方向Zの振動で、かつその振動の振幅が長手方向Xに均一な超音波振動を励起できる。
【0025】
さらに本実施形態では、超音波ホーン10のうち、縦方向Zの半波長共振の節部ZFに、縦方向Zに直交する方向に突出するフランジ14を有する超音波振動子1としている。
【0026】
このように超音波ホーン10に上述のフランジ14を設けることで、超音波振動子1の振動を妨げることなく、超音波振動子1を容易に保持することができる。
【0027】
次いで、本実施形態に係る超音波振動子1の製造について説明する。
予め、超音波ホーン10のほか、圧電素子20を用意し、超音波ホーン10の入力面11と圧電素子20の駆動主面20Dとを対向させ、接着剤で固着する。
かくして、超音波振動子1が完成する。
【0028】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、寸法L1をL1=0.05Lの大きさとしたが、L1=0.02L〜0.08L、即ち、L1=(0.05±0.03)Lの範囲で、超音波振動子1を縦方向Zに半波長共振させた場合に、出力面12の長手方向Xの振動分布をほぼ均一にできることが判っている。即ち、L1=(0.05±0.03)Lとすると良い。
【0029】
また、上述の実施形態では、超音波ホーン10のホーン部13にフランジ14を設けた例を示したが、フランジを設けない形態の超音波ホーンを用いても良い。この場合にも、超音波振動子を保持するにあたり、縦方向Zにおいてフランジ14に相当する縦方向Zの節部ZFを把持するのが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1 超音波振動子
10 超音波ホーン
11 入力面
12 出力面
13 ホーン部
14 フランジ
16 基部
10H 縦長貫通孔
10H1 (縦長貫通孔の)入力面側端
10H2 (縦長貫通孔の)出力面側端
20 圧電素子(駆動部材)
20D (圧電素子の)駆動主面
20U (圧電素子の)背面
30 後背部材
X 長手方向
Y 横幅方向
Z 縦方向
ZF 節部
XH 腹部
Fr 共振周波数(所定周波数)
KF 横断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の入力面とこの入力面に対向する矩形状の出力面とを含み、
これら結ぶ縦方向に対して、この縦方向に直交する横断面が、この横断面に沿う長手方向に長く、上記長手方向に直交する横幅方向に短い矩形状を有する、
超音波ホーンと、
上記長手方向に長い矩形状の駆動主面及び背面を有する矩形板状で、上記入力面に上記駆動主面が固着された圧電セラミック材からなる駆動部材と、を備え、
所定周波数で上記駆動部材を駆動したときに、
上記縦方向に半波長共振すると共に、
上記超音波ホーンが、上記長手方向に共振する形態に構成されてなる
超音波振動子であって、
上記超音波ホーンは、
自身を上記横幅方向に貫通し、上記縦方向に延びた形状の縦長貫通孔を有し、
上記縦長貫通孔は、
上記入力面側の端部が、上記縦方向の半波長共振の節部よりも上記入力面側に位置し、
上記縦方向の半波長共振の節部から上記出力面までの距離をLとし、
上記出力面側の端部から上記出力面までの距離をL1としたとき、
上記出力面側の端部が、距離L1=(0.05±0.03)Lとなる部位に位置すると共に、
上記長手方向の腹部に位置してなる
超音波振動子。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波振動子であって、
前記超音波ホーンは、
前記縦方向の半波長共振の節部に、前記縦方向に直交する方向に突出するフランジを有する
超音波振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−210575(P2012−210575A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77333(P2011−77333)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】