説明

超音波振動子

【課題】 使用機器の低背化を図り得、超音波ホーンの出力面の振動が、その長手方向に均一であり、超音波ホーンと駆動部材と後背部材との相互の接続信頼性が高い超音波振動子を提供する。
【解決手段】 超音波振動子1は、矩形状の入力面11と出力面12とを含む超音波ホーン10と、駆動主面20D及び背面20Uを有する矩形板状で、入力面に駆動主面20Dが固着され圧電セラミック材からなる駆動部材20と、矩形板状で駆動部材の背面20Uに固着された後背部材30とを備え、縦方向Zに半波長共振すると共に、超音波ホーンが長手方向Xに共振する。超音波ホーンに形成した縦長貫通孔10Hは、縦方向Zの半波長共振の節部ZFから出力面までの寸法をL、縦長貫通孔の出力面側の端10H2から出力面までの寸法をL1としたとき、出力面側の端が、距離L1=(0.3±0.1)Lとなる部位に位置している。駆動部材は複数の分割駆動部材21,22から、後背部材は複数の分割後背部材31,32からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に長い矩形状の出力面を有する超音波ホーンを有する超音波振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの固着加工用の超音波ウェルダや各種材料の切断加工用の超音波カッタなどに用いる超音波工具ホーンとして、横断面を長細い矩形状とし、スロット(縦長の貫通孔)を開けたものが知られている(例えば、特許文献1の第1図参照)。この超音波工具ホーンは、入力面にねじ穴(めねじ)が形成されており、このねじ穴を用いて、ボルト締めランジュバン型超音波振動子(以下、BLTともいう。)を接続し、共振させて用いる。具体的には、特定周波数で入力面と出力面との間で縦方向に半波長共振するように各寸法を選択して超音波ホーンを形成しておく。更に、この特定周波数で半波長共振するBLTを、この超音波ホーンに前述のねじ穴を利用して取り付ける。BLTを特定周波数で駆動し、超音波振動を発生させると、超音波ホーンも共振して、出力面において、大きな超音波振動が得られるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2694352号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように、BLTと超音波ホーンを組合せて用いる場合には、その縦方向の全長は、1波長分の大きさとなり、超音波ウェルダなどの装置全体の低背化を図ることが難しい。また、BLTと超音波ホーンの両者を用いるので、コストアップとなる。
また、特許文献1の第1図を見れば理解できるように、超音波ホーンの入力面の一部(例えば中央部)にBLTを接続して、超音波ホーンを駆動するので、超音波ホーンの出力面の振動を、その長手方向に均一にし難い。
これらに対し、BLTに代えて、超音波ホーンの入力面に、細長い矩形状の圧電セラミック材からなる駆動素子を貼り付け、さらに、この駆動素子に細長い矩形状の後背部材を貼り付けることが考えられる。しかし、例えばアルミニウムなどの金属からなる超音波ホーンや後背部材と、駆動素子をなす圧電セラミック材との熱膨張率の違いから、超音波ホーンと駆動部材、駆動部材と後背部材との間で熱膨張差が生じる。このため、温度サイクル試験を行うなどにより、これら同士の固着に用いている接着剤が剥がれるなど、超音波ホーンと駆動部材と後背部材との相互の接続信頼性が低い場合がある。
【0005】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、使用機器の低背化を図り得、しかも超音波ホーンの出力面の振動が、その長手方向に均一であり、しかも、超音波ホーンと駆動部材と後背部材との相互の接続信頼性が高い超音波振動子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その態様は、矩形状の入力面とこの入力面に対向する矩形状の出力面とを含み、これらを結ぶ縦方向に対して、これに直交する横断面が、この横断面に沿う長手方向に長く、上記長手方向に直交する横幅方向に短い矩形状を有する超音波ホーンと、上記長手方向に長い矩形状の駆動主面及び背面を有する矩形板状で、上記入力面に上記駆動主面が固着され、圧電セラミック材からなる駆動部材と、上記長手方向に長い矩形板状で、上記駆動部材の上記背面に固着された後背部材と、を備え、所定周波数で上記駆動部材を駆動したときに、上記縦方向に半波長共振すると共に、上記超音波ホーンが上記長手方向に共振する形態に構成されてなる超音波振動子であって、上記超音波ホーンは、自身を上記横幅方向に貫通し、上記縦方向に延びた形状の縦長貫通孔であって、上記超音波振動子を上記半波長共振させた場合に、上記縦方向に生じる節部と上記出力面との間で、かつ、上記長手方向に生じる共振の腹部に位置する、1または複数の縦長貫通孔を有し、上記縦長貫通孔は、上記縦方向の半波長共振の節部から上記出力面までの距離をLとし、上記縦長貫通孔の上記出力面側の端部から上記出力面までの距離をL1としたとき、上記出力面側の端部が、距離L1=(0.3±0.1)Lとなる部位に位置し、上記駆動部材は、上記長手方向、上記縦長貫通孔の位置で互いに離間する、複数の分割駆動部材からなり、上記後背部材は、上記長手方向、上記縦長貫通孔の位置で互いに離間する、複数の分割後背部材からなる超音波振動子である。
【0007】
この超音波振動子では、全体の縦方向寸法が半波長共振の大きさとなる。このため、超音波ホーンの縦方向寸法だけで半波長の大きさに達し、BLTを含めると1波長分の寸法となる、特許文献1に記載の超音波工具ホーンを用いた場合に比して、超音波振動子全体の縦方向寸法の低背化を図ることができる。
このため、これを用いた超音波ウェルダなどの装置の低背化をも図ることができる。
しかも、距離L1を上述のように規定しているので、超音波ホーンの出力面の振動が、縦方向の振動で、かつその振動の振幅が長手方向に均一な超音波振動を励起できる。
加えて、駆動部材として上述の分割駆動部材を、また、後背部材として上述の分割後背部材を用いることで、固着寸法を小さくし、熱膨張率の差異に起因する熱膨張差による固着特性の低下を防止し、超音波ホーンと駆動部材と後背部材との相互の接続信頼性が高い超音波振動子を得ることができる。
【0008】
なお、この超音波振動子において、超音波ホーンは、その節部に縦方向に直交する方向に延びるフランジを有するものとしても、有さないものとしても良い。
【0009】
さらに、上述の超音波振動子であって、前記超音波ホーンは、前記縦方向の半波長共振の節部に、前記縦方向に直交する方向に突出するフランジを有する超音波振動子とすると良い。
【0010】
超音波ホーンに上述のフランジを設けることで、超音波振動子の振動を妨げることなく、超音波振動子を容易に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る超音波振動子の正面図である。
【図2】実施形態に係る超音波振動子の側面図である。
【図3】実施形態に係る超音波振動子を共振させた場合に、出力面に生じる振動分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る超音波振動子について、図1〜図3を参照しつつ説明する。本実施形態の超音波振動子1は、超音波ホーン10と圧電素子20と後背部材30とからなり、所定の共振周波数Frで共振する。なお、図1及び図2において、図中、上下方向を縦方向Zとする。また、図1において、図中、左右方向を長手方向Xとする。また図2のうち、図中、左右方向を横幅方向Yとする。
【0013】
この超音波振動子1のうち、超音波ホーン10は、アルミニウム材からなり、縦方向Zの一方端面(図中上端面)が、長手方向Xに長い矩形状の入力面11とされ、他方端面(図中下端面)が、長手方向Xに長い矩形状の出力面12とされている。なお、図1及び図2に示すように、入力面11は、長手方向Xの寸法が2・A1、横幅方向Yの寸法がW1である。また、出力面12は、長手方向Xの寸法が同じく2・A1であるが、横幅方向Yの寸法がW2(W2<W1)である。また、縦方向Zに直交する仮想の横断面KFが、この横断面KFに沿う長手方向Xに長く、これに直交する横幅方向Yに短い矩形状を有している。
【0014】
また、この超音波ホーン10は、ホーン部13と、ホーン部13の縦方向Zの図中上方に位置し、圧電素子20を固着する台座となる台座部15とを有している。加えて、ホーン部13の縦方向Zの上方端には、縦方向Zに直交する周囲に向けて、寸法W4分だけ突出してなるフランジ14が形成されている。このフランジ14は、超音波振動子1を、共振周波数Frで縦方向Zに半波長共振させた場合に、音響的に節部ZFとなる位置に設けられている。このため、超音波振動子1を縦方向Zに半波長共振させた場合でも、このフランジ14にはほとんど振動が生じないので、このフランジ14を把持しても、共振に影響を与えない。このため、このフランジ14を用いて、超音波振動子1を、適切かつ容易に保持することができる。
【0015】
また、圧電素子20を所定の共振周波数Frで駆動し、超音波振動子1を縦方向Zに縦振動の半波長共振させた場合、この超音波振動子1の縦方向の全長L0は、音響的にλz/2の長さに、また、このフランジ14から出力面12に至るホーン部13の縦方向Zの寸法Lは、音響的にλz/4の長さに相当している。なお、λzは、超音波振動子1に、縦方向Zに励起される超音波振動の波長を指す。
加えて、この超音波ホーン10(ホーン部13)は、上述の共振をさせた場合に、長手方向Xにも共振するように寸法が選択されている。
【0016】
この超音波ホーン10のうち、ホーン部13は、出力面12側(図中下方)に向けて、横幅方向Yの寸法が小さくなる先細の部分の先端(出力面側)に、横幅方向Yの寸法が変化しない板状の部分を加えた形状を有している。
【0017】
加えて、このホーン部13には、このホーン部13を横幅方向Yに貫通し、縦方向Zに延び、幅(長手方向X寸法)A3の、縦長形状の縦長貫通孔10H(本実施形態では3つ)を備えている。
この縦長貫通孔10Hは、縦方向Zに見て、フランジ14と出力面12との間に配置されている。本実施形態では、具体的には、上端である入力面側端10H1が、縦方向Zに見て、フランジ14より僅かに出力面12側(図中、下方)に位置している。また、下端である出力面側端10H2から出力面12に至る縦方向Zの寸法L1は、L1=0.3Lの大きさにされている。
【0018】
また、縦長貫通孔10Hは、ホーン部13の長手方向Xについて、中心線(X=0)に対称(図1において左右対称)に形成されている。即ち、3つの縦長貫通孔10Hの1つは、ホーン部13の長手方向Xの中心(X=0)に、他の2つは長手方向Xの中心から、それぞれ距離A2だけ離れた部位に形成されている。これら3つの縦長貫通孔10Hの位置は、この超音波振動子1を縦方向Zに半波長共振させると共に、超音波ホーン10を長手方向Xに共振させたとき、この長手方向Xに生じる共振の腹部XHの位置にそれぞれ対応している。
【0019】
また、超音波振動子1のうち、圧電素子20は、具体的には、厚みがT1であり、長手方向X寸法がホーン部13と同じ2・A1、横幅方向Y寸法がW3(=W1)の矩形板状で、PZT系の圧電セラミックス材からなる。この圧電素子20は、その厚み方向(縦方向Z)に直交する駆動主面20D及び背面20Uに、図示しない電極層が形成され、かつ、この厚み方向に分極されている。この圧電素子20は、本実施形態では、長手方向Xに4分割されて、長手方向Xの寸法がA5の分割圧電素子21が2つと、長手方向Xの寸法がA6の分割圧電素子22が2つとから構成されている。これにより、各分割圧電素子21,22は、各々その厚み方向(縦方向Z)に直交する、矩形状の分割駆動主面21D,22D及び矩形状の分割背面21U,22Uを有している。また、この分割駆動主面21D,22D及び分割背面21U,22Uには、図示しない電極層が形成され、各々厚み方向に分極されている。
この圧電素子20(分割圧電素子21,22)は、駆動主面20D(分割駆動主面21D,22D)が、前述した超音波ホーン10の台座部15の入力面11に、図示しない接着剤を介して固着されている。なお、各分割圧電素子21,22は、幅A4のスリット20Sを介して互いに離間しつつ、長手方向Xに列置されている。
【0020】
また、超音波振動子1のうち、後背部材30は、具体的には、厚みがT2であり、長手方向X寸法がホーン部13及び圧電素子20と同じ2・A1、横幅方向Y寸法が圧電素子と同じW3(=W1)の矩形板状で、アルミニウム材からなる。本実施形態では、この後背部材30も、圧電素子20と同様、4分割されて、長手方向Xの寸法がA5の分割後背部材31が2つと、長手方向Xの寸法がA6の分割後背部材32が2つとから構成されている。
この後背部材30(分割後背部材31,32)は、前述した圧電素子20の背面20Uに、具体的には、各々の分割圧電素子21,22の分割背面21U,22U1に、図示しない接着剤を介して固着されている。従って、各分割後背部材31,32も、幅A4のスリット30Sを介して互いに離間しつつ、長手方向Xに列置されている。
なお、図1から容易に理解できるように、このスリット20S及びスリット30Sの長手方向Xの位置は、ホーン部13に形成した縦長貫通孔10Hの長手方向Xの位置に対応している。即ち、長手方向Xに見て、スリット20S及びスリット30Sは、縦長貫通孔10Hの位置に形成されている。
【0021】
前述したように、圧電素子20(分割圧電素子21,22)は、圧電セラミックス材からなるため、アルミニウム材からなる超音波ホーン10及び後背部材30(分割後背部材31,32)に比して熱膨張率が小さい。このため、超音波ホーン10に圧電素子20(分割圧電素子21,22)を固着し、圧電素子20(分割圧電素子21,22)に後背部材30(分割後背部材31,32)固着した場合、これらの間には、熱膨張差が発生する。
しかるに、圧電素子20を分割しないで、長手方向Xに長い寸法のままとした場合には、超音波振動子を低温、高温、あるいは低温と高温の温度サイクルなど、常温と異なる温度や大きな温度変化に曝した場合に、長手方向Xに熱膨張差が累積して、超音波ホーン10と圧電素子20、あるいは圧電素子20と後背部材30との間に大きな熱応力が発生する。このため、超音波ホーン10と圧電素子20、あるいは圧電素子20と後背部材30との間で、接着剥がれが生じるなど、これらの部材間の接続信頼性が低下する場合がある。
【0022】
これに対して、本実施形態の超音波振動子1は、圧電素子20及び後背部材30が、それぞれ長手方向Xに小さい寸法の分割圧電素子21,22及び分割後背部材31,32に分割されている。このため、超音波ホーン10と分割圧電素子21,22、及び、分割圧電素子21,22と分割後背部材31,32との間に熱膨張差が発生した場合でも、長手方向Xに熱膨張差が累積した大きな値となることがない。このため、超音波ホーン10と分割圧電素子21,22、あるいは分割圧電素子21,22と分割後背部材31,32との間で、接着剥がれが生じることが無く、これらの部材間で高い接続信頼性を得ることができる。
【0023】
しかも、本実施形態のように、分割圧電素子21,22及び分割後背部材31,32は、長手方向Xに見て、縦長貫通孔10Hの位置に形成された、スリット20S及びスリット30Sによって、互いに離間している。このため、各分割圧電素子21,22で発生した駆動力は、スリット20S及び縦長貫通孔10Hの存在により、それぞれまっすぐ縦方向Zに伝わり、出力面12に届く。これにより、出力面12の長手方向X或いは横幅方向Yの振動を抑制し、確実に、縦方向Zに往復運動させることができる。
【0024】
なお、各分割圧電素子21,22の分割駆動主面21D,22Dに形成された電極層(図示しない)は、超音波ホーン10と電気的に導通している。また、各分割圧電素子21,22の分割背面21U,22Uに形成された電極層(図示しない)は、分割後背部材31,32とそれぞれ電気的に導通している。
このため、この超音波振動子1(各分割圧電素子21,22)を駆動するには、超音波ホーン10と各分割後背部材31,32との間に駆動電圧を印加すればよい。
【0025】
この超音波振動子1(分割圧電素子21,22)を、共振周波数Fr(=40kHz)で駆動した場合に、出力面12に生じる超音波振動の長手方向Xの分布の例を、図3に示す。
なお、本実施形態において、各寸法は、L=40.0mm、L1=12.0mm、L0=48.0mm、W1=W3=12.0mm、W2=2.0mm、T1=8.0mm,T2=7.0mm、A1=50.0mm、A2=31.5mm、A3=3.0mm、A4=1.0mmとした。
【0026】
この図3のグラフによれば、長手方向Xの原点X=0を中心に、振動分布がほぼ左右対称となっていることが判る。超音波振動子1の形態が、長手方向Xの原点(X=0)を中心に左右対称の形状となっているためである。また、その振動(Z方向変位)は、長手方向Xに見て、4.0μmp-pを中心に3.8〜4.2μmp-pの範囲(±5.0%)に収まっており、この超音波振動子1において、Z方向変位は、長手方向Xに均一であると言える。
【0027】
このように、本実施形態では、超音波振動子1は、矩形状の入力面11とこの入力面11に対向する矩形状の出力面12とを含み、これらを結ぶ縦方向Zに対して、これに直交する横断面KFが、この横断面KFに沿う長手方向Xに長く、長手方向Xに直交する横幅方向Yに短い矩形状を有する超音波ホーン10を備えている。また、長手方向Xに長い矩形状の駆動主面20D(21D,22D)及び背面20U(21U,22U)を有する矩形板状で、入力面11に駆動主面20D(21D,22D)が固着され、圧電セラミック材からなる駆動部材である圧電素子20(21,22)と、長手方向Xに長い矩形板状で、圧電素子20(21,22)の背面20U(21U,22U)に固着された後背部材30(31,32)と、を備えている。さらに、所定の共振周波数Frで圧電素子20(21,22)を駆動したときに、縦方向Zに半波長共振すると共に、超音波ホーン10が長手方向Xに共振する形態に構成されてなる。このうち、超音波ホーン10は、自身を横幅方向Yに貫通し、縦方向Zに延びた形状の縦長貫通孔10Hであって、超音波振動子1を半波長共振させた場合に、縦方向Zに生じる節部ZFと出力面12との間で、かつ、長手方向Xに生じる共振の腹部XHに、それぞれ位置する縦長貫通孔10Hを有する。この縦長貫通孔10Hは、縦方向Zの半波長共振の節部ZFから出力面12までの距離をLとし、縦長貫通孔10Hの出力面側の端部10H2から出力面12までの距離をL1としたとき、出力面側の端部10H2が、距離L1=(0.3±0.1)Lとなる部位に位置している。圧電素子20は、長手方向X、縦長貫通孔10Hの位置で互いに離間する、複数の分割駆動部材である分割圧電素子21,22からなる。後背部材30は、長手方向X、縦長貫通孔10Hの位置で互いに離間する、複数の分割後背部材31,32からなる。
【0028】
この超音波振動子1では、全体の縦方向寸法L0が半波長共振の大きさとなる。このため、超音波ホーンの縦方向寸法だけで半波長の大きさに達し、BLTを含めると1波長分の寸法となる、特許文献1に記載の超音波工具ホーンを用いた場合に比して、超音波振動子1全体の縦方向寸法の低背化を図ることができる。
このため、これを用いた超音波ウェルダなどの装置の低背化をも図ることができる。
しかも、距離L1を上述のように規定しているので、超音波ホーンの出力面の振動が、縦方向の振動で、かつその振動の振幅が長手方向に均一な超音波振動を励起できる。
加えて、駆動部材として上述の分割駆動部材を、また、後背部材として上述の分割後背部材を用いることで、固着寸法を小さくし、熱膨張率の差異に起因する熱膨張差による固着特性の低下を防止し、超音波ホーンと駆動部材と後背部材との相互の接続信頼性が高い、超音波ホーン付きの超音波振動子を得ることができる。
【0029】
さらに本実施形態では、超音波ホーン10のうち、縦方向Zの半波長共振の節部ZFに、縦方向Zに直交する方向に突出するフランジ14を有する超音波振動子1としている。
【0030】
このように超音波ホーン10に上述のフランジ14を設けることで、超音波振動子1の振動を妨げることなく、超音波振動子1を容易に保持することができる。
【0031】
次いで、本実施形態に係る超音波振動子1の製造について説明する。
予め、超音波ホーン10のほか、分割済みの圧電素子20(21,22)及び分割済みの後背部材30(31,32)を用意し、超音波ホーン10の入力面11と圧電素子20(21,22)の駆動主面20D(21D,22D)とを対向させ、接着剤で固着すると共に、圧電素子20(21,22)の背面20U(21U,22U)と後背部材30(31,32)を対向させて、接着剤で固着する。
かくして、超音波振動子1が完成する。
【0032】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、寸法L1をL1=0.3Lの大きさとしたが、L1=0.2L〜0.4L、即ち、L1=(0.3±0.1)Lの範囲で、超音波振動子1を縦方向Zに半波長共振させた場合に、出力面12の長手方向Xの振動分布を、ほぼ均一にできることが判っている。即ち、L1=(0.3±0.1)Lとすると良い。
【0033】
また、上述の実施形態では、超音波ホーン10のホーン部13にフランジ14を設けた例を示したが、フランジを設けない形態の超音波ホーンを用いても良い。この場合にも、超音波振動子を保持するにあたり、縦方向Zにおいてフランジ14に相当する縦方向Zの節部ZFを把持するのが好ましい。
【0034】
また、上記実施形態では、台座部15にも若干スリットを形成した形態を示したが、圧電素子20(21,22)、及び後背部材30(31,32)が分割されていれば良く、台座部15にまでスリットが形成されていなくとも良い。
また、上述の実施形態では、既に分割した分割圧電素子21,22を超音波ホーン10に固着し、及び分割圧電素子21,22に分割後背部材31,32を固着した。しかし、長手方向にXに長い、圧電素子20及び後背部材30を超音波ホーン10に固着し、その後、分割しても良い。このようにすると、分割圧電素子21,22及び分割後背部材31,32を確実に、しかも、分割位置を容易に揃えて形成することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 超音波振動子
10 超音波ホーン
11 入力面
12 出力面
13 ホーン部
14 フランジ
15 台座部
10H 縦長貫通孔
10H1 (縦長貫通孔の)入力面側端
10H2 (縦長貫通孔の)出力面側端
20 圧電素子(駆動部材)
20D (圧電素子の)駆動主面
20U (圧電素子の)背面
21,22 分割圧電素子(分割駆動部材)
21D,22D (分割圧電素子の)駆動主面
21U,22U (分割圧電素子の)背面
30 後背部材
31,32 分割後背部材
20S 圧電素子間スリット
30S 後背部材間スリット
X 長手方向
Y 横幅方向
Z 縦方向
ZF 節部
XH 腹部
Fr 共振周波数(所定周波数)
KF 横断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の入力面とこの入力面に対向する矩形状の出力面とを含み、
これらを結ぶ縦方向に対して、これに直交する横断面が、この横断面に沿う長手方向に長く、上記長手方向に直交する横幅方向に短い矩形状を有する
超音波ホーンと、
上記長手方向に長い矩形状の駆動主面及び背面を有する矩形板状で、上記入力面に上記駆動主面が固着され、圧電セラミック材からなる駆動部材と、
上記長手方向に長い矩形板状で、上記駆動部材の上記背面に固着された後背部材と、を備え、
所定周波数で上記駆動部材を駆動したときに、
上記縦方向に半波長共振すると共に、
上記超音波ホーンが上記長手方向に共振する形態に構成されてなる
超音波振動子であって、
上記超音波ホーンは、
自身を上記横幅方向に貫通し、上記縦方向に延びた形状の縦長貫通孔であって、
上記超音波振動子を上記半波長共振させた場合に、
上記縦方向に生じる節部と上記出力面との間で、かつ、
上記長手方向に生じる共振の腹部に位置する、1または複数の縦長貫通孔を有し、
上記縦長貫通孔は、
上記縦方向の半波長共振の節部から上記出力面までの寸法をLとし、
上記縦長貫通孔の上記出力面側の端から上記出力面までの寸法をL1としたとき、
上記出力面側の端が、距離L1=(0.3±0.1)Lとなる部位に位置し、
上記駆動部材は、
上記長手方向、上記縦長貫通孔の位置で互いに離間する、複数の分割駆動部材からなり、
上記後背部材は、
上記長手方向、上記縦長貫通孔の位置で互いに離間する、複数の分割後背部材からなる
超音波振動子。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波振動子であって、
前記超音波ホーンは、
前記縦方向の半波長共振の節部に、前記縦方向に直交する方向に突出するフランジを有する
超音波振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−210578(P2012−210578A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77353(P2011−77353)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】